特許第5873887号(P5873887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873887
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】成形品製造装置及び成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20160216BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20160216BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20160216BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B29C45/14
   B29C45/17
   B29C33/12
   B29C45/26
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-78132(P2014-78132)
(22)【出願日】2014年4月4日
(65)【公開番号】特開2014-240185(P2014-240185A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2015年6月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-103070(P2013-103070)
(32)【優先日】2013年5月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 伸行
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−046154(JP,A)
【文献】 特開2000−263583(JP,A)
【文献】 特開2003−170469(JP,A)
【文献】 特開平04−101833(JP,A)
【文献】 特開平08−047932(JP,A)
【文献】 特開2010−027890(JP,A)
【文献】 特開2007−160736(JP,A)
【文献】 特開2009−269189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 33/00−33/76
B29C 43/00−43/58
B29C 70/00−70/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性プリプレグを縦の姿勢で保持するチャック装置、及び、前記チャック装置を搬送する搬送機構を有する搬送装置と、
前記搬送装置で搬送された前記熱可塑性プリプレグを加熱する加熱装置と、
前記搬送装置で搬送された前記熱可塑性プリプレグに穿刺する、進退可能な位置決めピンを備える開閉可能な金型と、
前記搬送装置を制御して前記熱可塑性プリプレグを前記加熱装置及び前記金型内へ搬送し、前記金型に搬送された前記熱可塑性プリプレグを前記位置決めピンを制御して前記熱可塑性プリプレグに穿刺し、前記チャック装置を制御して前記位置決めピンが穿刺された前記熱可塑性プリプレグの保持を解除し、前記金型を閉じる制御装置と、
を備えることを特徴とする成形品製造装置。
【請求項2】
搬送装置のチャック装置により熱可塑性プリプレグを縦の姿勢で保持し、
前記搬送装置の搬送機構により、加熱装置に前記熱可塑性プリプレグを搬送し、
前記熱可塑性プリプレグを前記加熱装置で加熱し、
前記搬送機構により、前記加熱装置で加熱された前記熱可塑性プリプレグを、進退可能な位置決めピンを備える開閉可能な金型に搬送し、
前記位置決めピンにより、前記金型内に前記搬送装置で搬送された前記熱可塑性プリプレグを穿刺し、
前記チャック装置による前記熱可塑性プリプレグの保持を解除し、
前記金型を閉じて前記熱可塑性プリプレグを成形する、
ことを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項3】
前記位置決めピンは、前記成形時に前記金型のキャビティの一部を構成することを特徴とする請求項2に記載の成形品の製造方法。
【請求項4】
前記位置決めピンは、前記金型内の、成形品の耳部を構成する部分に配置されることを特徴とする請求項2に記載の成形品の製造方法。
【請求項5】
前記金型内に成形材料を射出し、前記熱可塑性プリプレグとともに一体成形することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート部材を用いて成形品を製造する成形品製造装置及び成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型にインサート部材である熱可塑性プリプレグを配置してプレスすることで熱可塑性プリプレグを賦形し、成形品を製造する技術が知られている。また、熱可塑性プリプレグを賦形し、さらに、射出成形によってボスやリブ等の成形部を形成する成形品を製造する技術も知られている。
【0003】
熱可塑性プリプレグは、繊維材料と熱可塑性樹脂材料によりシート状に形成されており、加熱することで賦形が可能となる。このような熱可塑性プリプレグの加熱においては、熱可塑性プリプレグを横の姿勢で搬送手段上に載置して搬送する搬送装置により、加熱装置及び金型へ搬送する成形品製造装置が知られている。
【0004】
また、熱可塑性プリプレグは、金型にインサートされるときに、熱可塑性プリプレグに予め設けられた位置決め穴に、金型に設けられた位置決めピンを挿入して位置決めされる。
【0005】
また、インサート部材を搬送する搬送装置として、熱可塑性プリプレグ等のインサート部材を、真空吸引手段等によりインサート部材を保持可能な搬送ヘッドを用いる技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。この搬送ヘッドを用いる搬送装置は、搬送ヘッドが設けられた可動アームを回動及び移動することで、インサート部材の向きを変更して搬送可能に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−270199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した成形品製造装置では、以下の問題があった。即ち、熱可塑性プリプレグは、加熱後に金型にインサートされることから、熱可塑性プリプレグ自身が軟らかくなっており(軟化状態になっており)、粘度を持つことから、上述した搬送装置を用いると、受け渡しの際に、搬送ヘッドに対して熱可塑性プリプレグが移動し、位置ずれが発生する虞がある。
【0008】
金型に設けられた位置決めピンを熱可塑性プリプレグの位置決め穴に挿入して金型内に熱可塑性プリプレグをインサートするときに位置ずれが発生していると、熱可塑性プリプレグが落下する虞がある。
【0009】
また、前サイクルにおいて溶融した熱可塑性プリプレグの樹脂材料が搬送装置の熱可塑性プリプレグと接着した部位に付着していると、位置決めピンが位置決め穴に所定の挿入量が挿入されず、落下する虞もある。
【0010】
このような熱可塑性プリプレグの落下を防止するために、インサート動作を低速で行い、ずれを防止することで対応することも可能であるが、成形サイクルが長くなる、という問題がある。
【0011】
そこで本発明は、軟化状態又は溶融状態のインサート部材を確実に金型にインサートすることが可能な成形品製造装置及び成形品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の成形品製造装置及び成形品の製造方法は次のように構成されている。
【0013】
本発明の一態様の成形品製造装置は、熱可塑性プリプレグを縦の姿勢で保持するチャック装置、及び、前記チャック装置を搬送する搬送機構を有する搬送装置と、前記搬送装置で搬送された前記熱可塑性プリプレグを加熱する加熱装置と、前記搬送装置で搬送された前記熱可塑性プリプレグに穿刺する、進退可能な位置決めピンを備える開閉可能な金型と、前記搬送装置を制御して前記熱可塑性プリプレグを前記加熱装置及び前記金型内へ搬送し、前記金型に搬送された前記熱可塑性プリプレグを前記位置決めピンを制御して前記熱可塑性プリプレグに穿刺し、前記チャック装置を制御して前記位置決めピンが穿刺された前記熱可塑性プリプレグの保持を解除し、前記金型を閉じる制御装置と、を備える。
【0014】
本発明の一態様の成形品の製造方法は、搬送装置のチャック装置により熱可塑性プリプレグを縦の姿勢で保持し、前記搬送装置の搬送機構により、加熱装置に前記熱可塑性プリプレグを搬送し、前記熱可塑性プリプレグを前記加熱装置で加熱し、前記搬送機構により、前記加熱装置で加熱された前記熱可塑性プリプレグを、進退可能な位置決めピンを備える金型に搬送し、前記位置決めピンにより、前記金型内に前記搬送装置で搬送された前記熱可塑性プリプレグを穿刺し、前記チャック装置による前記熱可塑性プリプレグの保持を解除し、前記金型を閉じて前記熱可塑性プリプレグを成形する。
【0015】
本発明の一態様の成形品は、搬送装置によりインサート部材を縦の姿勢で、位置決めピンを備える金型に搬送し、前記位置決めピンにより前記搬送装置で搬送された前記インサート部材を穿刺し、前記金型で前記インサート部材を賦形することで成形される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、軟化状態又は溶融状態のインサート部材を確実に金型にインサートすることが可能な成形品製造装置、成形品の製造方法及び成形品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る成形品製造装置の構成を模式的に示す斜視図。
図2】同成形品製造装置に用いられる要部構成を模式的に示す正面図。
図3】同成形品製造装置に用いられる要部構成を模式的に示す側面図。
図4】同成形品製造装置に用いられる要部構成であって、成形品の製造工程の構成を模式的に示す断面図。
図5】同成形品製造装置に用いられる要部構成であって、成形品の製造工程の構成を模式的に示す断面図。
図6】同成形品製造装置に用いられる要部構成であって、成形品の製造工程の構成を模式的に示す断面図。
図7】同成形品製造装置に用いられるインサート部材の一例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係る成形品製造装置1を、図1乃至図6を用いて説明する。
図1は本発明の一実施の形態に関わる成形品製造装置1の構成を模式的に示す斜視図、図2は成形品製造装置1に用いられる要部構成、具体的にはチャック32の構成を模式的に示す正面図、図3はチャック32の構成を模式的に示す側面図、図4は成形品製造装置1に用いられる要部構成、具体的にはチャック32、金型51及び熱可塑性プリプレグ100の構成であって、成形品の製造工程の構成を模式的に示す断面図、図5はチャック32、金型51及び熱可塑性プリプレグ100の構成であって、成形品の製造工程の構成を模式的に示す断面図、図6は金型51及び熱可塑性プリプレグ100の構成であって、成形品の製造工程の構成を模式的に示す断面図である。
【0019】
図1に示すように、成形品製造装置1は、例えば、保管部11と、搬送装置12と、加熱装置13と、金型装置14と、射出装置15と、制御装置19と、を備えている。成形品製造装置1は、工場内等の敷設範囲2に配置されるとともに、金型装置14及び射出装置15がベース3上に配置される。成形品製造装置1は、インサート部材である熱可塑性プリプレグ100を加熱後に金型装置14により賦形するとともに、射出装置15により射出成形することで成形品を製造可能に形成されている。
【0020】
インサート部材である熱可塑性プリプレグ100は、シート状に形成されている。熱可塑性プリプレグ100は、ガラスや炭素等の繊維材料及び熱可塑性の樹脂材料により形成されている。熱可塑性プリプレグ100は、図1においてはその平面形状を方形状に形成されているが、成形品の形状に賦形するのに適した形状に形成されている。熱可塑性プリプレグ100は、例えば、方形状、三角形状及び楕円形状等や、成形品を形成可能な異形状に形成される。
【0021】
保管部11は、熱可塑性プリプレグ100を複数保管可能に形成されている。保管部11は、例えば、熱可塑性プリプレグ100を縦の姿勢で保管可能に形成されている。なお、保管部11は、例えば、熱可塑性プリプレグ100を横の姿勢で保管するとともに横姿勢から縦姿勢に変更可能に形成されていてもよい。
【0022】
ここで、熱可塑性プリプレグ100の縦姿勢とは、熱可塑性プリプレグ100の主面が略重力方向に沿った姿勢、即ち、上下方向に延設する姿勢、又は、これら姿勢と同等の姿勢である。また、熱可塑性プリプレグ100の横の姿勢とは、熱可塑性プリプレグ100の主面が略水平方向に沿った姿勢、即ち、成形品製造装置1の設置面に沿った姿勢又はこれら姿勢と同等の姿勢である。
【0023】
搬送装置12は、熱可塑性プリプレグ100を縦の姿勢で、熱可塑性プリプレグ100の保管部11から加熱装置13及び金型装置14へ順次搬送可能に形成されている。具体的には、搬送装置12は、チャック装置21と、搬送機構22と、を備えている。
【0024】
チャック装置21は、例えば、搬送機構22に設けられた支持部31と、複数のチャック32と、チャック32を開閉する開閉手段33と、冷却装置34と、を備えている。チャック装置21は、複数のチャック32により、熱可塑性プリプレグ100を複数の位置で挟持可能に形成されている。
【0025】
図2及び図3に示すように、支持部31は、複数のチャック32を支持可能に形成されている。支持部31は、搬送機構22により移動可能に形成される。図2及び図3に示すように、チャック32は、開閉手段33により駆動されることで、その先端を開閉可能に形成されている。チャック32は、少なくとも熱可塑性プリプレグ100を保持する先端の幅が狭く形成される。また、複数のチャック32は、図2に実線及び二点鎖線で示すように、互いの距離を調整可能に、支持部31に支持される。
【0026】
チャック32は、例えば、支持部31に設けられた固定爪部32aと、固定爪部32aに対して近接又は離反する移動爪部32bと、を備えている。移動爪部32bは、開閉手段33により駆動される。固定爪部32a及び移動爪部32bは、例えば、耐熱性の良い材料で形成されている。固定爪部32a及び移動爪部32bは、例えば、ステンレス材やアルミ材等により形成されている。
【0027】
チャック32は、固定爪部32a及び移動爪部32bの先端間に熱可塑性プリプレグ100の端部が位置した状態で、開閉手段33により移動爪部32bが駆動され、閉状態となる。チャック32は、当該閉状態が維持されることで、熱可塑性プリプレグ100を保持可能に形成されている。チャック32は、熱可塑性プリプレグ100を金型51に搬送し、インサートするときに、金型51と干渉しない形状に形成されている。
【0028】
例えば、チャック32は、固定爪部32a及び移動爪部32bの外面間の幅が短く、且つ、その長さが長く形成されている。チャック32は、熱可塑性プリプレグ100を金型51にインサートするときに、金型51に干渉するまでの金型51の開状態から閉状態への移動距離を長く確保することが可能に形成されている。チャック32は、例えば、金型51と固定爪部32a及び移動爪部32bのみが対向する構成に形成される。
【0029】
開閉手段33は、移動爪部32bを移動させることでチャック32の開閉を行う駆動源であって、例えば、空圧シリンダ等が用いられる。開閉手段33は、制御装置19に信号線Sを介して電気的に接続されている。
【0030】
冷却装置34は、チャック32を冷却可能に形成されている。冷却装置34は、例えば、エアをチャック32に噴射することで、チャック32を冷却可能に形成されている。冷却装置34は、制御装置19に信号線Sを介して電気的に接続されている。
【0031】
冷却装置34は、少なくとも固定爪部32a及び移動爪部32bの熱可塑性プリプレグ100に接触する部位及びその周辺部を冷却可能に形成されている。冷却装置34は、支持部31に支持されるか、又は、保管部11にチャック32が移動する前工程でチャック32を冷却可能な位置に配置される。
【0032】
搬送機構22は、チャック装置21のチャック32を保管部11、加熱装置13及び金型装置14へ順次搬送する機構であり、例えば、支持部31をスライド移動可能に形成されている。搬送機構22は、例えばレールや、多関節ロボット等である。搬送機構22は、制御装置19に信号線Sを介して電気的に接続されている。
【0033】
図1に示すように、加熱装置13は、例えば、熱可塑性プリプレグ100を加熱可能な、間隔を空けて互いに対向する一対の加熱部41と、加熱部41を支持する支持部42と、を備えている。一対の加熱部41は、熱可塑性プリプレグ100を加熱する加熱面41aが、熱可塑性プリプレグ100の主面に沿って配置される。
【0034】
即ち、一対の加熱部41は、縦姿勢で配置される。一対の加熱部41は、チャック32の固定爪部32a及び移動爪部32bの先端の一部及びチャック32に保持された熱可塑性プリプレグ100が通過可能な間隔を有して対向する。
【0035】
加熱部41は、それら対向する加熱面41aに、例えば、赤外線ヒータが単数又は複数設けられ、加熱部41の間を通過する、又は、加熱部41の間で停止する熱可塑性プリプレグ100を所定の温度に加熱可能に形成されている。なお、ここで、所定の温度とは、熱可塑性プリプレグ100を、金型装置14において賦形可能な温度である。
【0036】
金型装置14は、開閉可能な金型51と、金型51を開閉する型締装置52と、を備えている。
【0037】
金型51は、例えば、固定型53と、移動型54と、位置決めピン55と、を備えている。固定型53は、例えば、移動型54と対向する面に、成形品の一部の形状に形成されたキャビティ53aと、キャビティ53aに接続され、射出装置15と対向する面に形成されたゲート53bと、を備えている。移動型54は、固定型53に対して移動可能に形成されている。移動型54は、固定型53に対向する面に、成形品の一部の形状に形成されたキャビティ54aが形成されている。
【0038】
位置決めピン55は、例えば、固定型53に進退可能に設けられる。位置決めピン55は、熱可塑性プリプレグ100が移動型54の移動に伴って固定型53に向って移動するときに、熱可塑性プリプレグ100に穿刺可能、且つ、熱可塑性プリプレグ100を固定可能に形成される。
【0039】
位置決めピン55は、例えば、金型51が閉状態となったときに、移動型54のキャビティ54aに配置された状態を維持することで、その外面によって、成形品の一部の形状を形成する。また、位置決めピン55は、金型51が閉状態となった後にキャビティ53a,54aから進退可能に設けることで、成形品の形状に応じてその外面により成形品の一部の形状を形成しない構成とすることが可能である。
【0040】
金型51は、閉状態において、固定型53及び移動型54のキャビティ53a,54aによって、成形品の形状の空間が形成される。
【0041】
型締装置52は、金型51を開閉可能、且つ、型締め可能に形成されている。型締装置52は、成形品を成形する成形装置である。型締装置52は、例えば、固定盤56と、固定盤56に対して移動可能な移動盤57と、移動盤57を移動させるトグル機構58と、トグル機構58を駆動させる駆動源59と、を備えている。
【0042】
固定盤56は、固定型53を支持可能に形成されている。移動盤57は、移動型54を支持可能に形成されている。トグル機構58は、駆動源59により駆動されることで、移動盤57を固定盤56に対して進退させる。駆動源59は、トグル機構58を駆動可能に形成されている。駆動源59は、制御装置19に信号線Sを介して電気的に接続されている。
【0043】
射出装置15は、例えば、ハウジング61と、シリンダ62と、スクリュ63と、ホッパ64と、移動手段65と、駆動装置66と、シリンダ加熱装置67と、を備えている。射出装置15は、金型装置14の金型51内に樹脂材料(成形材料)を射出することで、型締装置52とともに成形品を成形する成形装置である。
【0044】
ハウジング61は、シリンダ62、スクリュ63及びホッパ64を支持可能、且つ、内部に駆動装置66を収納可能に形成されている。シリンダ62は、その内部にスクリュ63を収納する。シリンダ62は、その先端に射出ノズル62aを備えている。射出ノズル62aは、金型51に形成されたゲート53bに接続可能に形成されている。スクリュ63は、シリンダ62内で回転可能、且つ、シリンダ62に対して進退可能に形成されている。
【0045】
ホッパ64は、射出成形を行う、溶融される樹脂材料(成形材料)が収容される。ホッパ64は、収容された樹脂材料をシリンダ62内に供給可能に形成されている。
【0046】
移動手段65は、例えば、ベース3上に配置され、固定型53及び固定盤56に向って延設された複数のレール71と、ハウジング61の下部に設けられ、レール71をスライド移動可能な複数のガイド72と、を備えている。移動手段65は、ガイド72がレール71に案内されることで、ハウジング61及びハウジング61に支持された各構成をレール71に沿って金型装置14に進退可能に形成される。
【0047】
駆動装置66は、例えば、スクリュ63を回転させる第1駆動装置74と、スクリュ63をシリンダ62に対して進退させる第2駆動装置75と、ハウジング61をレール71に沿って金型装置14に対して進退させる第3駆動装置76と、を備えている。
【0048】
第1駆動装置74は、スクリュ63を回転させることで、ホッパ64から供給された樹脂材料を定量供給可能に形成されている。第1駆動装置74、第2駆動装置75及び第3駆動装置76は、制御装置19に信号線Sを介して電気的に接続されている。
【0049】
シリンダ加熱装置67は、シリンダ62を加熱可能に形成されている。シリンダ加熱装置67は、シリンダ62に装着されている。シリンダ加熱装置67は、シリンダ62を加熱することで、ホッパ64から供給された樹脂材料を溶融可能に形成されている。シリンダ加熱装置67は、制御装置19に信号線Sを介して電気的に接続されている。
【0050】
制御装置19は、搬送装置12、金型装置14及び射出装置15を制御可能に形成されている。具体的には、制御装置19は、搬送機構22を制御することで、チャック32(支持部31)の移動動作を制御可能に形成されている。制御装置19は、開閉手段33を制御することで、チャック32の開閉動作を制御可能に形成されている。制御装置19は、冷却装置34を制御することで、チャック32の冷却を制御可能に形成されている。
【0051】
制御装置19は、駆動源59を制御することで、トグル機構58を駆動し、移動型54の進退動作を制御可能に形成されている。制御装置19は、第1駆動装置74、第2駆動装置75及び第3駆動装置76を制御することで、スクリュ63の回転動作及び進退動作、並びに、ハウジング61の進退動作(射出装置15の進退動作)を制御可能に形成されている。制御装置19は、シリンダ加熱装置67を制御することで、シリンダ62の加熱動作を制御可能に形成されている。
【0052】
次に、このように構成された成形品製造装置1を用いて成形品を製造する方法を説明する。
先ず、チャック32を保管部11に移動させるとともに、チャック32を開状態とする。なお、本サイクル前に、熱可塑性プリプレグ100を加熱装置13に搬送した場合には、冷却装置34によりチャック32を冷却する。
【0053】
次に、図2及び図3に示すように、チャック32をさらに移動させて、熱可塑性プリプレグ100の周縁(縁部、端部)に固定爪部32a及び移動爪部32bの先端を位置させる。次に、図2及び図3に示すように、二点鎖線で示すように、移動爪部32bを移動させることでチャック32を閉状態とし、熱可塑性プリプレグ100をチャック32により保持する。次に、チャック32を移動させて、熱可塑性プリプレグ100を一対の加熱部41の間に移動させ、熱可塑性プリプレグ100を所定の温度に加熱する。
【0054】
次に、チャック32を移動させて、熱可塑性プリプレグ100を金型51に搬送し、図4に示すように、熱可塑性プリプレグ100を金型51の固定型53及び移動型54間に配置する。このとき、熱可塑性プリプレグ100が所定の位置となるように、熱可塑性プリプレグ100を配置する。
【0055】
次に、トグル機構58を駆動し、移動型54を固定型53に向って移動させる。このとき、図5に示すように移動型54により熱可塑性プリプレグ100を固定型53に向って押圧し、熱可塑性プリプレグ100に固定型53に設けられた位置決めピン55を所定の長さだけ穿刺する。穿刺するとき、チャック32を移動型54と同期して固定型53側に移動させる構成であってもよい。
【0056】
なお、ここで、所定の長さとは、熱可塑性プリプレグ100を位置決めピン55に固定可能な長さであればよく、例えば、5mm乃至10mmの長さである。また、チャック32は、位置決めピン55が熱可塑性プリプレグ100を所定の長さで固定する又は保持するまで、固定爪部32a及び移動爪部32bが金型51に干渉しない形状に形成されている。
【0057】
次に、チャック32を開状態として熱可塑性プリプレグ100の保持を解除し、チャック32を金型51から離反させる。次に、さらにトグル機構58を駆動し、移動型54を固定型53に向って移動させ、金型51を閉状態(型締状態)とする。これにより、熱可塑性プリプレグ100がプレスされ、キャビティ53a,54aの形状に賦形される。
【0058】
また、併せて、第3駆動装置76を駆動してハウジング61を移動させ、固定型53に形成されたゲート53bに射出ノズル62aを接続させるとともに、シリンダ62内にホッパ64から供給され溶融された樹脂材料(成形材料)を、ゲート53bを介して射出する。これにより、図6に示すように、キャビティ53a,54a内に樹脂材料が射出され、キャビティ53a,54aの形状に樹脂材料が供給され、賦形された熱可塑性プリプレグ100と一体に成形される。
【0059】
次に、成形された熱可塑性プリプレグ100及び樹脂材料を冷却し、成形品が成形される。次に、移動型54を移動させ、金型51を開状態とし、固定型53又は移動型54に設けられた突き出しピンにより成形品を金型51から取り出す。
【0060】
また、型締めから成形品の取出しまでの間に、冷却装置34によりチャック32を冷却し、再び熱可塑性プリプレグ100を加熱装置13に搬送し、次の成形で用いる熱可塑性プリプレグ100を加熱しておく。以後、同様の工程を繰り返す。これらの工程を繰り返すことにより順次成形品が製造される。
【0061】
このように構成された成形品製造装置1によれば、搬送装置12は、熱可塑性プリプレグ100を縦の姿勢で搬送し、位置決めピン55により熱可塑性プリプレグ100が固定される又は保持されるまで、チャック32により熱可塑性プリプレグ100を保持する。これにより、金型51への熱可塑性プリプレグ100のインサート時に、熱可塑性プリプレグ100が落下することを防止可能となる。
【0062】
また、位置決めピン55により熱可塑性プリプレグ100を穿刺して固定することから、予め熱可塑性プリプレグ100に位置決め用の孔部を設ける必要がなく、熱可塑性プリプレグ100の加工費を低減することが可能となる。また、位置決め穴に位置決めピン55を挿入する構成でないことから、熱可塑性プリプレグ100を金型51内に配置するときに、僅かに位置ずれがあっても、確実に固定することが可能となる。
【0063】
また、成形品製造装置1は、熱可塑性プリプレグ100の金型51への搬送、位置決め、位置決めピン55への固定、チャック32の離反及び成形を、一連のサイクルで行うことが可能となり、インサート動作の短縮が可能となる。
【0064】
これらのように、成形品製造装置1は、熱可塑性プリプレグ100の落下を防止し、且つ、確実に金型51にインサートすることが可能となり、安定した成形サイクルの実現が可能となる。
【0065】
また、位置決めピン55は、射出成形のキャビティの一部を構成することが可能となり、金型51の自由度を向上することが可能となる。例えば、位置決めピン55により、成形品の円筒状のボスを形成すること、及び、位置決めピン55の外周面に雌螺子状にタップ加工を施すことで、成形品に螺子穴を形成すること等が可能となる。この穴は、軟化状態又は溶融状態で開けられるため、繊維材料を痛めることがなく、高い強度を得られる。
【0066】
また、例えば、位置決めピン55は、キャビティ53a,54aに対して進退可能とすることで、成形品の形状に応じて射出成形時に熱可塑性プリプレグ100から引抜くことも可能となる。なお、位置決めピン55により形成される熱可塑性プリプレグ100の穴は、射出成形で閉塞することが可能となる。また、位置決めピン55は、進退可能とすることで、金型51を閉塞してプレスするときに、熱可塑性プリプレグ100の絞り範囲にあるときは、絞られ始める前に位置決めピンを後退して引抜くことで、絞り加工が可能となる。
【0067】
上述したように本発明の一実施形態に係る成形品製造装置1によれば、軟化状態又は溶融状態の熱可塑性プリプレグ100を確実に金型51にインサートすることが可能となる。
【0068】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、位置決めピン55の配置は、熱可塑性プリプレグ100が型締めによる賦形成形に影響されることがない位置であれば、熱可塑性プリプレグ100のいずれの位置であってもよい。また、位置決めピン55の配置は、成形品に位置決めピン55による跡が形成されても、当該位置決めピン55による跡が成形品の製品価値を落とさない程度のものであれば、熱可塑性プリプレグ100のいずれの位置であってもよい。例えば、位置決めピン55が1つである場合には、位置決めピン55は、熱可塑性プリプレグ100の重心軸上に配置される。
【0069】
また、成形品に位置決めピン55による跡が残ることを避けるために、熱可塑性プリプレグ100で成形品を成形したときに、製品とならない部分、例えば、図7に一例で示すように、インサート部材100の外周縁から突出して形成された成形時にのみ設ける耳部100a等の部位に位置決めピン55を穿刺可能に、位置決めピン55を配置する構成であってもよい。このような位置決めピン55の配置とすることで、成形品の製造後の後工程において、当該耳部を除去することにより、成形品の製品部分に位置決めピン55の穿刺による影響を与えることがない。このため、成形品の品質の向上が図れる。なお、図7のインサート部材100は、その外周縁から突出する耳部100aを有する構成を説明したが、これに限定されず、インサート部材100の外周縁の一部を耳部とし、成形品の製造後に当該外周縁の一部を除去する構成であってもよい。
【0070】
また、これらの要旨に基づいていれば、位置決めピン55は、例えば3つ設け、これらの位置決めピン55の軸心が三角形を描く配置で設ける構成であってもよい。
【0071】
また、上述した例では、位置決めピン55の詳細な形状は述べていないが、位置決めピン55は、熱可塑性プリプレグ100を穿刺する際に熱可塑性法プリプレグ100の繊維が損傷することを防止するために、先端が鋭角な細いピンを用いることが望ましい。
【0072】
また、上述した例では、成形品製造装置1は、射出装置15を備え、金型装置14及び射出装置15による熱可塑性プリプレグ100の賦形及び射出成形によって成形品を成形する構成を説明したがこれに限定されない。例えば、成形品製造装置1は、射出装置15を備えず、金型装置14のみ備える構成(例えば、プレス機(プレス成形機))とし、熱可塑性プリプレグ100の賦形のみで成形品を成形する構成であってもよい。
【0073】
また、上述した例では、搬送装置12は、2つのチャック32によって熱可塑性プリプレグ100の周縁を保持する構成のみを説明したが、これに限定されない。例えば、チャック32は、上下にそれぞれ2箇所に設ける構成であっても、熱可塑性プリプレグ100の上縁に3箇所以上設ける構成であってもよい。また、チャック32の周縁の保持する位置は、熱可塑性プリプレグ100の形状に応じて適宜設定可能であり、また、固定爪部32a及び移動爪部32bの先端の形状に関しても、適宜設定可能である。ただし、チャック32は、熱可塑性プリプレグ100を保持可能であれば、熱可塑性プリプレグ100に接触する面積は極力小さいほうが好ましい。
【0074】
さらに、上述した例では、位置決めピン55は進退可能な構成を説明したがこれに限定されない。例えば、位置決めピン55が成形品の成形時にキャビティ53a,54aに位置してもよい成形品にのみ用いる金型51であれば、位置決めピン55は、進退せず固定型53に固定される構成であってもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] インサート部材を縦の姿勢で搬送する搬送装置と、
前記搬送装置で搬送された前記インサート部材に穿刺する位置決めピンを備える金型と、
を備えることを特徴とする成形品製造装置。
[2] 搬送装置によりインサート部材を縦の姿勢で、位置決めピンを備える金型に搬送し、
前記位置決めピンにより前記搬送装置で搬送された前記インサート部材を穿刺し、
前記金型で前記インサート部材を成形する、
ことを特徴とする成形品の製造方法。
[3] 前記位置決めピンは、前記成形時に前記金型のキャビティの一部を構成することを特徴とする[2]に記載の成形品の製造方法。
[4] 前記位置決めピンは、前記金型内の、成形品の耳部を構成する部分に配置されることを特徴とする[2]に記載の成形品の製造方法。
[5] 前記金型内に成形材料を射出し、前記インサート部材とともに一体成形することを特徴とする[2]乃至[4]のいずれか一に記載の成形品の製造方法。
[6] 搬送装置によりインサート部材を縦の姿勢で、位置決めピンを備える金型に搬送し、前記位置決めピンにより前記搬送装置で搬送された前記インサート部材を穿刺し、前記金型で前記インサート部材を賦形することで成形されたことを特徴とする成形品。
【符号の説明】
【0075】
1…成形品製造装置、2…敷設範囲、3…ベース、11…保管部、12…搬送装置、13…加熱装置、14…金型装置、15…射出装置(成形装置)、19…制御装置、21…チャック装置、22…搬送機構、31…支持部、32…チャック、32a…固定爪部、32b…移動爪部、33…開閉手段、34…冷却装置、41…加熱部、41a…加熱面、42…支持部、51…金型、52…型締装置(成形装置)、53…固定型、53a…キャビティ、53b…ゲート、54…移動型、54a…キャビティ、55…位置決めピン、56…固定盤、57…移動盤、58…トグル機構、59…駆動源、61…ハウジング、62…シリンダ、62a…射出ノズル、63…スクリュ、64…ホッパ、65…移動手段、66…駆動装置、67…シリンダ加熱装置、71…レール、72…ガイド、74…第1駆動装置、75…第2駆動装置、76…第3駆動装置、100…熱可塑性プリプレグ(インサート部材)、S…信号線。
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図1