特許第5873890号(P5873890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873890
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】ステントを編組するためのマンドレル
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/90 20130101AFI20160216BHJP
【FI】
   A61F2/90
【請求項の数】7
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2014-94637(P2014-94637)
(22)【出願日】2014年5月1日
(62)【分割の表示】特願2011-548215(P2011-548215)の分割
【原出願日】2010年1月26日
(65)【公開番号】特開2014-176733(P2014-176733A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2014年5月1日
(31)【優先権主張番号】61/147,307
(32)【優先日】2009年1月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】リルバーン、スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】ノートン、ポール ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ズプコフスカ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ベダード、ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ハーディング、グレン ディ.
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−519307(JP,A)
【文献】 特表2006−506201(JP,A)
【文献】 特表2002−535075(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0193141(US,A1)
【文献】 米国特許第05405377(US,A)
【文献】 特表2001−517536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いくつかのステントフィラメント(20)からステント(24)を編組するためのマンドレル(22)であって:
基端(46)から先端(44)に向かって長手方向に延びる外側表面と周長とを有する筒状部材と、
先端(44)において周長に沿って配置された複数の固定突出部(48)と、
基端(46)と固定突出部(48)との間において筒状部材の外側表面から突起した複数の突出部(52,56)と、を備え、
隣接する突起した突出部は、ステントフィラメントの少なくとも1つを受承するためのチャネルを形成し、
突起した突出部の少なくとも1つは、四角錐の形状をなす、マンドレル。
【請求項2】
突起した突出部の少なくとも1つは、頂部が切断されているかまたは丸みを帯びている上部を有する、請求項1に記載のマンドレル。
【請求項3】
固定突出部は、スクリュー、ピン、タブおよび移動止めからなる群から選択される、請求項1に記載のマンドレル。
【請求項4】
固定突出部の少なくとも1つは、丸面を有する突起タブである、請求項1に記載のマンドレル。
【請求項5】
筒状部材は先端側部分および長手方向に延びる部分を含み、先端側部分は先端と長手方向に延びる部分との間にあり、長手方向に延びる部分は先端側部分と基端との間にある、請求項1に記載のマンドレル。
【請求項6】
先端側部分は長手方向に延びる部分よりも大きい直径を有する、請求項5に記載のマンドレル。
【請求項7】
先端側部分と長手方向に延びる部分との間に移行領域をさらに含む、請求項5に記載のマンドレル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非外傷性ステントならびに同ステントを製造するための方法、装置およびシステムに関する。より具体的には、本発明は、非外傷性の編組ステントならびに同ステントを製造するための編組方法、編組用マンドレルおよび編組機に関する。
【背景技術】
【0002】
編組ステントは、概して平滑なマンドレル上で編組されてきた。編組中のワイヤの端部は、一般的に通常編組用マンドレルの末端を越えたところで集結され、ワイヤはそこで次に、通常は結束またはテープ固定によりマンドレル末端部分に固定され、その後、手作業または機械のいずれかにより編組が開始される。
【0003】
編組角度は、ステントワイヤがマンドレル上に配置される角度によって制御された。しかしながら、多くのステントは金属ワイヤを使用しており、金属ワイヤは編組中に該ワイヤに力が加わる結果として編組中に位置変化または移動を生じることがある。このことは、特にフレア状ステント、フランジ付きステント、またはテーパ状ステントのうち少なくともいずれかのような、直径の変化を伴って編組されるステントについて、ステントを通じて編組角度の変動をもたらす可能性がある。編組角度の変動は、そのように形成されたステントの径方向の拡張力もしくは圧縮力または展開力の不適当な変動をもたらし得る。そのような変動は、ステント全域の開口部の大きさ(例えばセルの大きさ)の統一性に影響を及ぼすことがある。
【0004】
ステントの製作に使用されるワイヤは、一般に巻き枠からマンドレルへと供給される。このように、編組工程の間にマンドレルに十分な材料を供給し、その後得られた長いステントを切断して複数のより小さなステントにすることにより、複数のステントを形成することが可能であった。長いステントが編組された後、マンドレルの末端を越えたところで集結されたワイヤ部分はトリミングされた。そのような過剰ワイヤのトリミングは不必要に材料を浪費する。多くの初期のステントはステンレス鋼ワイヤで単純に編組され、このような過剰なワイヤ材料を廃棄するコストは最小限であった。しかしながら、最近では、ニチノールまたはニチノール複合材のようなより高価な材料のステントワイヤが使用されている。廃棄される材料のコストはより一層大きくなってきている。
【0005】
したがって、材料コストを最小限とし、かつ編組角度などのステント構成における変動も最小限とするステントの編組方法を提供することが、当分野において必要とされている。さらに、別々のワイヤの長さから非外傷性の端部を備えたステントを編組して、ステントの編組角度と非外傷性端部の大きさおよび方向とが制御可能に提供されて統一性を備えた非外傷性ステントを生産すると同時に、非外傷性のステントの大量生産を可能にする方法を提供することが、当分野において必要とされている。さらに、ステントの仕様をより緊密に制御するためにステント製造を最適化すること、例えば材料管理の最適化、および所望どおりの任意の特定の量の特別仕様のステントを作出する能力、が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、先行技術の望ましくない問題を回避かつ解決する、編組方法、編組用マンドレル、編組機および編組ステントを提供する。本発明の編組ステントは、ほぼ制御された編組角度、例えばほぼ一定の編組角度を、望ましい場合には、例えばテーパ状部、フレア状部またはフランジ付き部分のうち少なくともいずれかのような直径変化を有する部分(直径変更部分)を含む該ステントの長手方向の拡がり全体にわたって有している。例えば、ほぼ一定の編組角度(例えば限定するものではないが110°)は、直径変更部分を含むステントの長手方向の拡がり全体にわたって必要とされる場合がある。さらに、本発明の編組ステントは、直径変更部分であって、編組角度が、ある直径変更部分においては別の直径変更部分と比較して制御可能なように異なっているか、または1つ以上の直径変更部分においてステントの長手方向の拡がりと比較して制御可能なように異なっているかのうち少なくともいずれかである、直径変更部分を有することができる。さらに、この発明的ステントの制御された編組角度は、一端におけるある角度(例えば限定するものではないが90°)から、反対側の第2端における異なる角度(例えば限定するものではないが120°)へと変化することが可能であり、端部の角度だけでなく両端部の間の移行部の角度すべてが制御される。そのような発明的ステントは、本発明の方法およびデバイス、とりわけ特有の設計の溝部および突出部を有する編組用マンドレル、ならびにそのような特有の設計のマンドレル上でステントフィラメントを編組するために接線方向にステントフィラメントを送達するための一定力(constant force)編組用キャリアを含む方法およびデバイスによって生産される。
【0008】
本発明の1つの実施形態では、ステントを編組する方法が提供される。該方法は、(a)いくつかの細長いフィラメントであって、それぞれが、対向する両端部と、両端部の間の中間部分とを有するフィラメント、を提供するステップと;(b)いくつかの引張型(tensioned)編組用キャリアを提供するステップと;(c)対向する基端および先端を有する編組用マンドレルであって、編組用マンドレルの先端に周方向に間隔をおいて配置されたいくつかの固定突出部を含んでなる編組用マンドレル、を提供するステップと;(d)フィラメントのうちの1つの中間部分を、固定突出部のうちの1つに対して固定可能なように(securably)配置するステップと;(e)その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの一方を引張型編組用キャリアのうちの1つに対して固定するステップであって、該フィラメントがその1つの一定力編組用キャリアに巻き取られることなく行われる、ステップと;(f)その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの他方を、異なる第2の引張型編組用キャリアに対して固定するステップであって、該フィラメントが第2の引張型編組用キャリアに巻き取られることなく行われる、ステップと;(g)フィラメントの中間部分全てが固定突出部のうちの異なる1つに対して固定可能なように配置されるまで、かつ、いくつかのフィラメントのそれぞれの端部が引張型編組用キャリアのうちの異なる1つに対して固定されるまで、ステップ(d)〜(f)を繰り返すステップと;(h)一定力キャリアをマンドレルの周りで、例えば略円運動かつ蛇行運動で移動させるステップと;(i)フィラメントを編組して編組ステントを形成するために、一定力キャリアの動きに対してほぼ垂直な方向にマンドレルを長手方向に前進させるステップと、を含む。マンドレルを前進させるステップは、引張型編組用キャリアの垂直方向の運動に対してマンドレルを移動させること、マンドレルに関して引張型編組用キャリアを長手方向に移動させること、およびこれらの組み合わせを含むことができる。引張型編組用キャリアはそれぞれ、ステントフィラメントを解除可能に固定するための、伸縮自在のキャリアフィラメントを備えていてもよい。引張型編組用キャリアはそれぞれ、伸縮自在のキャリアフィラメントを周りに巻き付けることが可能なホイールを備えることもできる。
【0009】
本発明の別の実施形態では、ステントを編組する方法は、(a)いくつかの細長いフィラメントであって、それぞれが、対向する両端部と、対向する両端部の間の中間部分とを有するフィラメント、を提供するステップと;(b)いくつかの編組用キャリアを提供するステップと;(c)対向する基端および先端を有する編組用マンドレルであって、先端に周方向に間隔をおいて配置されたいくつかの固定突出部を含んでなり、さらに複数の溝部を含んでなる編組用マンドレル、を提供するステップと;(d)フィラメントのうちの1つの中間部分を、マンドレルの先端の固定突出部のうちの1つに対して固定可能なように配置するステップと;(e)その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの一方を、編組用キャリアのうちの1つに対して固定するステップと;(f)その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの他方を、異なる第2の編組用キャリアに対して固定するステップと;(g)フィラメントの中間部分全てが固定突出部のうちの異なる1つに対して固定可能なように配置されるまで、かつ、いくつかのフィラメントのそれぞれの端部が編組用キャリアのうちの異なる1つに対して固定されるまで、ステップ(d)〜(f)を繰り返すステップと;(h)編組用キャリアをマンドレルの周りで、例えば略円運動かつ蛇行運動で移動させるステップと;(i)フィラメントを編組して編組ステントを形成するために、編組用キャリアの動きに対してほぼ垂直な方向に関してマンドレルを長手方向に前進させるステップと;(j)編組ステップ(h)〜(i)の間に編組用キャリアからフィラメントへ一定の張力を付与するステップと、を含んでなる。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態では、ステントを編組する方法は、(a)いくつかの細長いフィラメントであって、それぞれが、対向する両端部と、対向する両端部の間の中間部分とを有するフィラメント、を提供するステップと;(b)いくつかの引張型編組用キャリアを提供するステップと;(c)対向する基端および先端を有する編組用マンドレルであって、先端に周方向に間隔をおいて配置されたいくつかの固定突出部を含んでなり、さらに複数の溝部を含んでなる編組用マンドレル、を提供するステップと;(d)フィラメントのうちの1つの中間部分を、編組用マンドレルの先端の固定突出部のうちの1つに対して固定可能なように配置するステップと;(e)その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの一方を、引張型編組用キャリアのうちの1つに対して固定するステップであって、該フィラメントがその1つの引張型編組用キャリアに巻き取られることなく行われる、ステップと;(f)その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの他方を、異なる第2の引張型キャリアに対して固定するステップであって、該フィラメントがその第2の引張型キャリアに巻き取られることなく行われる、ステップと;(g)フィラメントの中間部分全てが固定突出部のうちの異なる1つに対して固定可能なように配置されるまで、かつ、いくつかのフィラメントのそれぞれの端部が引張型キャリアのうちの異なる1つに対して固定されるまで、ステップ(d)〜(f)を繰り返すステップと;(h)引張型キャリアをマンドレルの周りで、例えば略円運動かつ蛇行運動で移動させるステップと;(i)フィラメントを編組して編組ステントを形成するために、フィラメントを溝部の中に接線方向に配置することによりフィラメントを編組するために引張型キャリアの動きに対してほぼ垂直な方向に関してマンドレルを長手方向に前進させるステップと、を含んでなる。
【0011】
本発明のさらに別の実施形態では、編組ステントが提供される。編組ステントは、管状壁構造物を形成するように相互に編組された複数の細長いフィラメントを含んでなり、該フィラメントは、フィラメントが交差している位置において形成された編組角度で相互に編組され;該管状壁構造物は、第1の直径を有する第1の部分、第1の直径とは異なる第2の直径を有する第2の部分、および第1の部分と第2の部分との間に配置された移行部分を含んでなり;第1の部分、第2の部分および移行部分における編組角度はほぼ等しいことを特徴とする。別例として、これらの部分の編組角度は異なっていて、ただし制御されていてもよい。さらに、本発明のステントは、直径変更部分またはフレア状もしくはフランジ付き部分のうち少なくともいずれかを有するステントに限定はされない。一定の直径またはほぼ一定の直径も提供されうる。そのような一定またはほぼ一定の直径のステントでは、セルの構成、例えば編組角度、セルの大きさなど、の許容性が向上する(すなわち変動がより小さくなる)。
【0012】
さらに、本発明の管状ステントを編組するための編組用マンドレルは、対向する基端および先端を有する長尺状管状部材と;該先端に間隔を置いた位置に周方向に配置された、編組機からのフィラメントを係合するための固定突出部と;該部材の長手方向の長さに沿った複数の環状または環状配置された溝部とを、望ましくは含んでなる。溝部は部材の長手方向軸から約5°〜約85°の角度をなして伸びることができる。
【0013】
本発明の最適化された編組技術および編組用構成要素を使用することにより、製造者は特別仕様のステントを作製することが可能となる。そのような特別仕様のステントは、任意の1組の仕様、例えば限定するものではないが編組角度、ステント直径、ステント長さ、ステント形状などに特化されうる。さらに、そのような特別仕様のステントは、最適化された製造技術で生産可能であり、これにより、先行技術と比較して改善された品質管理を伴った特別仕様のステントが提供される。
【0014】
本発明の上記およびその他の特徴および利点は、本発明の例示の実施形態についての以降の詳細な説明から明白となろう。詳細な説明は添付図面に関連づけて読むべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の編組機の側面概略図。
図2図1の編組機の2−2軸に沿って得られた正面図。
図3図2の編組機の代替実施形態を示す図。
図4A】本発明によるステントを示す図。
図4B】1本ごとに浮き沈みさせた編組構成を例示する図4Aのステントの分解立体図。
図4C】2本ごとに浮き沈みさせた編組構成を例示する図4Aのステントの分解立体図。
図4D】フィラメント対を1対ごとに浮き沈みさせた編組構成を例示する図4Aのステントの分解立体図。
図5】本発明の編組用マンドレルの側面図。
図6】本発明による、ほぼ一定の直径を有する編組用マンドレルを示す図。
図7】突起したマンドレル突出部を示している、図5のマンドレルの一部分の分解立体図。
図8図7の突起したマンドレル突出部の細部を示す図。
図9図7の突起したマンドレル突出部の細部を示す図。
図10図7の突起したマンドレル突出部の細部を示す図。
図11図5または図6の編組用マンドレルの先端の一部分の分解立体図であって、該先端の突起した突出部を示している図。
図12図11の突起した突出部の平面図。
図13】ステントフィラメントの中間部分が突起した突出部に固定されている編組用マンドレルを示す図。
図14】本発明のマンドレル上で編組されているステントフィラメントを示す図。
図15】本発明の編組用マンドレルの基端部の分解立体図。
図16A】本発明の編組用マンドレルの移行部分の部分的分解立体図。
図16B】本発明の編組用マンドレルの移行部分の部分的分解立体図。
図17】突起した突出部のない本発明の編組用マンドレルを示す図。
図18】編組用マンドレルの先端にステントフィラメントを固定するための代替実施形態を示す図。
図19】編組用マンドレルの先端にステントフィラメントを固定するための代替実施形態を示す図。
図20】編組用マンドレルの先端にステントフィラメントを固定するための代替実施形態を示す図。
図21】編組用マンドレルの先端にステントフィラメントを固定するための代替実施形態を示す図。
図22】本発明の一定力キャリアの概略図。
図23図1において言及されたクリップの概略図。
図24】本発明の一定力ボビンキャリアの代替実施形態の概略図。
図25】本発明のステントを形成する方法の概略図。
図26】本発明のステントを形成する別の方法の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の編組機10の側面概略図である。編組機10の一定の特徴、例えばモータ、制御装置、安全装置などは、簡潔にするため図示されていない。しかしながら本発明の編組機10は、そのような特徴を限定なしで適切に備えることができる。編組機10はいくつかのノッチギア12を備えている。ノッチギア12はそれぞれ、1つ以上、典型的には1対の、該ギア上に配置された引張型編組用キャリアまたは一定力編組用キャリア14を備えることができる。引張型または一定力編組用キャリア14は伸縮自在のキャリアフィラメント16を有する。伸縮自在のキャリアフィラメント16は、クリップ18によってステント形成フィラメント20に対して解除可能なように固定される。ステント形成フィラメント20は、本発明のステント24を形成するためにマンドレル22の上で編組される。
【0017】
ステント形成フィラメント20は、編組管状構造物すなわちステント24を形成するために、典型的には1本ごとに浮き沈みさせるパターンで編組される。他の編組配置構成も可能であり、例えば限定するものではないが図4Cおよび4Dに示されたものが挙げられる。編組操作は、図1の編組機10の2−2軸に沿って得られた正面図である図2に概略的に示されている。本明細書中で使用されるように、編組という用語は製織などを含むことに注意されたい。図2は、略円形の構成26に配置構成された20個のノッチギア12を有するものとして編組機10を示している。編組機10と共に使用されるノッチギア12の数は20個に限定されず、任意の適切な数のノッチギア12が使用可能である。図2の矢印AおよびBによって図示されるように、ノッチギア12はそれぞれ該ノッチギアに隣接するノッチギア12とは反対方向に回転するようになされている。ノッチギア12のこの逆回転動作は、1つのノッチギア12から隣接または並置されたノッチギア12へと正弦曲線式に編組用キャリア14を通過させることにより、望ましくはノッチギア12がなす円の中心である長手方向軸Lの周りで、キャリア14を回転させるかまたは周方向に移動させる。ノッチギア12およびキャリア14の円形の構成26により、1本ごとに浮き沈みさせる方式でマンドレル22の上でフィラメント20を編組してステント24を形成するための、キャリア14の略円形であるが正弦曲線状の運動が達成される。
【0018】
図3に示されるように、必ずしもすべてのキャリア14が共に配置されたフィラメント16,20を有する必要はない。例えば、キャリア14’はフィラメント16,20を有していない一方でキャリア14はフィラメント16,20を有することも可能である。そのような方式においては、同じ編組機10を使用しながら、ステント24を作製するフィラメント20の数を変更することができる。
【0019】
編組中、周囲に編組ステント24が形成されるマンドレル22は、ノッチギア12がなす円26のほぼ中心であり、かつその周りをキャリア14が回転する長手方向軸Lにほぼ沿って、制御された方式で移動される。図1は側面からそのような構成を示している。編組中、図1に示されるように、フィラメント20は編組機10からマンドレル22へと略円錐形の形態をなして伸びる。しかしながら、本発明はそのように限定されるわけではない。例えば、代替として、または追加として、マンドレルは適所に固定されたままで、編組機または織機がマンドレルの長さを移動されてもよい。
【0020】
図2に示されるように、2つのキャリア14がその略円形であるが正弦曲線状の動きに沿って互いに交差するにつれて、該キャリアのそれぞれのフィラメント20は、ノッチギア12の円26の外径28の上のキャリア14に関係したフィラメント20が、ノッチギア12の円26の内径30の上のキャリア14に関係したフィラメント20に対して径方向に外側(組み立てられているステントの軸に関して)に配置されるように、重なりを形成する。ノッチギア12の円26の外径28に面して図示されたキャリア14は概ね反時計回転の方向に移動し、ノッチギア12の円26の内径30の方に配置されたキャリア14は概ね時計回りの方向に移動する。
【0021】
キャリア14とマンドレル22との間を伸びるフィラメント16,20によって形成された円錐形の内側に含まれる空間であってマンドレル22が占める空間を含む空間は、図1に示されるように、本明細書中では「編組ゾーン」32とも称される。マンドレル22に対するフィラメント16,20の角度αおよびαは所望通りに変更可能であるが、αおよびαは、編組されるステントの編組角度βがおよそ110°である場合、それぞれおよそ55°の角度を構成することが好ましい。これらの角度は、とりわけマンドレル22に対するキャリア14の正確な径方向の配置に応じて変化し得る。さらに、これらの角度は限定的ではなく、鋭角または鈍角の編組角度βを含む、任意の適切な編組角度βである。例えば、編組角度βは、約10°から約170°まで、望ましくは約30°から約150°まで、好ましくは約100°から約120°まで様々であってよい。本明細書中で使用されるように、移動しているマンドレルの位置調整に関して使用されるような語句「長手方向軸にほぼ沿って」は、マンドレルが完全に編組ゾーンの中央に置かれる必要はなく、単に、マンドレルとキャリアとの間のフィラメントの角度がフィラメントのもつれを伴わずに機能的な編組物を作出する編組動作を可能にするように、長手方向軸Lに十分に近接して位置調整される必要があることを意味している。
【0022】
図4Aは本発明によるステント24を示す。ステント24は第1の非外傷性端部34および反対側の第2の非外傷性端部38を備えることができる。第1の非外傷性端部は、フィラメント20をフィラメント20の長さの中間部分または中間部分付近で屈曲させてそこに屈曲部36を形成することにより形成可能である。第2の反対側の非外傷性端部38は、フィラメント20を屈曲させて閉ループ39とすることにより形成可能である。閉ループ39を形成しているフィラメント20は、溶接部41によって相互に(one and the other)固定されてもよい。本発明のステント24は、ステントフィラメント20を接合するために溶接部41の使用に限定されることはなく、ハイポチューブの使用、フィラメントの撚糸または結束などのような他の機械的手段が適切に使用されてもよい。本発明のステント24はさらに、1つ以上の外側に向かってフレア状をなした部分またはフランジが付いた部分40を備えることもできる。そのような事例では、フレア状部分40の直径は、ステント24の長手方向に拡がる部分42の直径より大きい。ステント24の長手方向に拡がる部分42は、一定の直径(ほぼ一定の直径を含む)であってよい。そのようなステント構成は非限定的であり、本発明のシステム、デバイスおよび方法を用いて他のステント構成が達成されてもよい。例えば、ステント24は、両端部34,38において外側に向かってフレア状をなした部分を備えてもよく、ステント24の長手方向に拡がる部分42の代わりに、または該部分と共に、テーパ状の構成を有してもよい。
【0023】
さらに、フランジ付き部分40および長手方向に拡がる部分42を含むステント24全体にわたる編組角度βは、ほぼ一定である。例えば、図4Aに示されるように、編組角度βは約110°±3°、望ましくは約110°±1°である。先行技術のステントは一般に、ステントのフレア状部分またはフランジ付き部分のようなステント移行領域において±10°以上の変動を有する。しかしながら、そのような変動は、径方向拡張力、径方向圧縮力または展開力のようなステントの性能において不適当な変動を示す。本発明は、そのような不適当な変動を、とりわけ、引張型もしくは一定力編組用キャリア14(図22の記載と併せて以下にさらに詳細に説明される)、一定力ボビンキャリア110(図24の記載と併せて以下にさらに詳細に説明される)、突起した突出部52,56,(任意選択で)70を有する編組用マンドレル22(図5〜16Bの記載と併せて以下にさらに詳細に説明される)、または、マンドレル22の上のステントフィラメント保持用固定突出部48(図6、14および15の記載と併せて以下にさらに詳細に説明される)、のうち少なくともいずれかの使用を通じて回避する。
【0024】
図4Aのステント24の、1本ごとに浮き沈みさせる編組構成は、図4Bの分解立体図に示されている。図4Bに示されるように、フィラメント20は、1/1交差を有する編組パターン、すなわち1本ごとに浮き沈みするパターンで互い違いになっている。しかしながら、ステント24はそのように限定はされない。図4Cに示されるように、ステント24は2本ごとに浮き沈みするパターンに編組されたフィラメント20を備えることもできる。当分野において既知のその他の編組パターンも適切に使用されうる。さらに、図4Dに例示されるように、ステント24は、1本ごとに浮き沈みするパターンをなした1対のフィラメント20’を使用することにより編組されてもよい。フィラメント20’は同じであっても異なっていてもよい、すなわち、寸法、形状または構成材料のうち少なくともいずれかが同じであっても異なっていてもよい。さらに、フィラメント20’は、他の編組パターン、例えば限定するものではないが2本ごとに浮き沈みするパターンに適切に編組されてもよい。望ましくは、編組されるフィラメント20,20’は、編組パターンにおいて相互に(one and the other)非連動的に係合する。そのような非連動的編組パターンは、必要に応じて、編組フィラメント20,20’の交差点における相互撚糸、相互ルーピング、相互係合などを排除する。必要に応じ、編組または製織フィラメント20,20’は連動する方式に編組または製織されてもよい。
【0025】
望ましくは、フィラメント20は、任意の適切な移植可能な材料、例えば限定するものではないがニチノール、ステンレス鋼、Elgiloy(登録商標)のようなコバルト系合金、白金、金、チタン、タンタル、ニオブ、ポリマー材料およびこれらの組み合わせから製造される。有用なポリマー材料には、例えば、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリメチルアセテート、ポリアミド、ナフタランジカルボキシレン(naphthalane dicarboxylene)誘導体、天然絹糸、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、例えば延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、フッ化エチレンプロピレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ナフタレンジカルボン酸誘導体、例えばポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレートおよびトリメチレンジオールナフタレート、ポリウレタン、ポリウレア、シリコーンゴム、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルデヒド、天然ゴム、ポリエステル共重合体、スチレンブタジエン共重合体、ポリエーテル、例えば完全または部分的にハロゲン化されたポリエーテル、ならびにこれらの共重合体および組み合わせが挙げられる。さらに、ポリマー系ステント材料の有用かつ非限定的な例には、ポリ(L‐ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L‐ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(L‐ラクチド‐co‐D,L‐ラクチド)(PLLA/PLA)、ポリ(L‐ラクチド‐co‐グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(D,L‐ラクチド‐co‐グリコリド)(PLA/PGA)、ポリ(グリコリド‐co‐トリメチレンカーボネート)(PGA/PTMC)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチラート(PHBT)、ポリ(ホスファゼン)ポリ(D,L‐ラクチド‐co‐カプロラクトン)(PLA/PCL)、ポリ(グリコリド‐co‐カプロラクトン)(PGA/PCL)、ポリリン酸エステルなどが挙げられる。ポリマー材料から作られるワイヤはさらに、放射線不透過性物質、例えばポリマー材料に組み入れることが可能な金属をベースとした粉末、粒子またはペーストを含むこともできる。例えば、放射線不透過性物質はポリマー組成物とブレンドされて、該ポリマー組成物からポリマー製ワイヤが形成され、続いて本明細書中に記載されるようなステントが製作されてもよい。別例として、放射線不透過性物質は金属製ステントまたはポリマー製ステントの表面に適用されてもよい。いずれの実施形態においても、様々な放射線不透過性物質ならびにその塩および誘導体、例えば、限定するものではないが、数例を挙げるならばビスマス、バリウムおよびその塩、例えば硫酸バリウム、タンタル(tantulaum)、タングステン、金、白金ならびにチタンが使用されうる。さらなる有用な放射線不透過性物質は米国特許第6,626,936号明細書に見出すことが可能であり、同特許文献は参照により全体が本願に組み込まれる。放射線不透過性物質として有用な金属錯体も企図される。ステントは、所望の最終生成物および用途に応じて、ワイヤに沿って所望の範囲に選択的に放射線不透過性とされてもよいし、完全に放射線不透過性とされてもよい。さらに、フィラメント20は、放射線不透過性または視認性の改善のために、タンタル、金、白金、イリジウムまたはこれらの組み合わせの内核と、ニチノールの外側部材または外側層とを有して、複合ワイヤを提供する。望ましくは、内核は白金であり外側層はニチノールである。より望ましくは、白金の内核は、横断面全体の百分比に基づいてワイヤのおよそ少なくとも10%に相当する。さらに、マルテンサイト相およびオーステナイト相におけるニチノールの加熱、成形および冷却などによる形状記憶処理がなされていないニチノールも、外側層として有用である。そのような複合ワイヤのさらなる詳細は、米国特許出願公開第2002/0035396A1号明細書に見出すことが可能であり、同文献の内容は参照により本願に組み込まれる。好ましくは、フィラメント20は、ニチノール、または白金の中核とニチノールの外側層とを有する複合ワイヤから作られる。
【0026】
図5は、本発明による編組用マンドレル22の側面図である。該編組用マンドレル22は、管状の、典型的にはステンレス鋼のような金属の、先端44(編組機10に配置された時にノッチギア12の円26より先端側)と反対側の基端46(編組機10に配置された時にノッチギア12の円26より基端側)とを有する筒状部材である。先端44は固定突出部48を備え、該突出部は、下記に説明されるように、編組の開始に先立ってステントフィラメント20を係合するのに役立つ。先端44は、マンドレル22の長手方向に伸びる部分54よりも直径が大きい先端側部分50をさらに備えている。フィラメント20が編組された後、先端側マンドレル部分50はフレア状のステント部分40を形成し、長手方向に伸びるマンドレル部分54は長手方向に拡がるステント部分42を形成する。先端側マンドレル部分50および長手方向に伸びるマンドレル部分54はいずれも、突起したマンドレル突出部52および56をそれぞれ備えることができる。後述のように、突起したマンドレル突出部52,56は、編組中にフィラメント20を受承するためのガイドを形成するのに有用である。直径がより大きな部分には、フレア状部分、階段状部分などが挙げられる。さらに、直径がより大きな部分は、マンドレル22の長さに沿って任意の場所に配置可能である。さらに、マンドレル22は、直径がより大きな部分を複数有してもよく、該部分は同じであっても異なっていてもよい。
【0027】
しかしながら、本発明は、二段階の大きさを有するかまたはフレア状をなしたマンドレル22を使用するものに限定はされない。例えば、図6に示されるように、編組用マンドレル22’は直径がほぼ一定のマンドレルであってもよく、該マンドレルは直径がほぼ一定のステント24を編組するのに有用である。マンドレル22,22’について図示された形状は限定的なものではなく、他の形状のマンドレル、例えば二段階にフレア状をなすかまたはフランジ付きのマンドレル、テーパ状をなしたマンドレルなどが適切に使用されてもよい。さらに、突起したマンドレル突出部52,56は、編組用マンドレル22の編組用の長さまたは周長のうち少なくともいずれか一方の全体に沿って存在する必要はない。編組用マンドレル22の選択部分には、生産されるステント24の特徴に応じて、突起したマンドレル突出部52,56が存在しないか、または一部存在しなくてもよい。
【0028】
図7は、突起したマンドレル突出部52,56をさらに示している、マンドレル22の一部分の分解立体図である。突起したマンドレル突出部52,56は、マンドレル22の上に規則的パターンで配列されて、隣接または並置する突起したマンドレル突出部52,56が編組時にステントフィラメント20を受承するためのガイドまたはチャネル58を形成するようになっている。図8〜10は、本発明の突起したマンドレル突出部52,56をさらに詳述する。図8に示されるように、突起したマンドレル突出部52,56は、正方形または長方形の底面60と4つの三角形の側面62とを有する、正四角錐または四角錐の形状をなしている。図9に示されるように、突起したマンドレル突出部52,56は頂部が切断された上部64を有していてもよい。必要であれば、上部64はやや丸みを帯びていてもよい(図示せず)。頂部が切断されているかまたは丸みを帯びているかのうち少なくともいずれかである上部64は、マンドレル22からステント24を容易に取り外すのに有用である。例えば、マンドレル22からステント24を取り外すために、ステント24は、ステント24の直径を増大させるように長手方向に圧縮される場合がある。その後、ステントフィラメント20は、頂部が切断されているかまたは丸みを帯びているかのうち少なくともいずれかである上部64の上を越えることにより、ステント24をマンドレル22から解放することができる。例えばステントフィラメント20の編組角度または突起したマンドレル突出部52,56の高さのうち少なくともいずれかに応じて、突起したマンドレル突出部52,56の頂部が切断されて、マンドレル22の、頂部が切断されているかまたは丸みを帯びているかのうち少なくともいずれかである上部64をそのように形成することができる。頂部が切断されているかまたは丸みを帯びているかのうち少なくともいずれかである上部64は、マンドレル22のガイドまたはチャネル58の中へステントフィラメント20を誘導するために有用な場合もある。さらに、図10に示されるように、突起したマンドレル突出部52,56は、マンドレル22のガイドまたはチャネル58をさらに画成するために正方形または長方形の基部66をさらに備えてもよい。突起したマンドレル突出部52,56のそのような特徴は、マンドレルのガイドまたはチャネル58を形成して、編組時にステントフィラメント20の正確な配置が、例えばフレア状部分またはテーパ状部分のようなマンドレル22の寸法変動部分全体にわたるステントフィラメント20の正確な配置が、達成されるようにするために有用である。しかしながら、本発明は正四角錐または四角錐の形状の突起したマンドレル突出部52,56の使用に限定されるものではなく、その他の適切な形状をなした突出部が適切に使用されてもよい。例えば、取り外し可能なピンまたは突出部など、ピンまたは突出部が適切に使用されてもよい。突起したマンドレル突出部52,56は、レーザー切断、機械切断、化学エッチングなどによって、マンドレルの一部を切断またはエッチングで取り除くことにより形成されてもよい。さらに、ガイドまたはチャネル58はマンドレルに溝部として形成されてもよい。さらに、チャネル58を形成する突起したマンドレル突出部52,56は、編組用マンドレル自体に解除可能なように固定できるカラーまたはスリーブ上にあってもよい。
【0029】
図11は、編組用マンドレル22の先端44の一部分の分解立体図である。固定突出部48は突起タブ48’であるものとして示されている。突起タブ48’は、マンドレル22上における外形および尖状面を全体的になくすことにより、ステントフィラメント20の固定を容易にするための、かつ安全性のための、丸面49を有している。図12に示されるように、突起タブ48’は、ステントフィラメント20を突起タブ48’の下位部分51の周囲で折り曲げるのに有用である。突起タブ48’の下位部分51は、そこにステントフィラメントワイヤ20を固定するために、丸面49よりも凹設される。さらに、突起タブ48’の下位部分51は、ステント24の先端34における屈曲部36の形状が突起タブ48’の下位部分51の形状に相当するような輪郭とされてもよい。しかしながら、本発明は固定突出部48としてそのような記載された突起タブ48’の下位部分51に限定されるものではなく、後述のように、固定突出部48のための他の構成も適切に使用可能である。さらに、本発明は、1つの突起タブ48’の周りに1つのステントフィラメント20を固定することに限定されてはいない。例えば、必要であれば、2つ以上のステントフィラメント20(同じであってもよいし、異なる材料または仕様のうち少なくともいずれか一方を含むなど、異なっていてもよい)が1つの突起タブ48’の周りに固定され、次いで本発明の技術に従って編組されてもよい。
【0030】
図13は、突起した突出部48’にステントフィラメント20の中間部分が固定されている編組用マンドレル22を示している。さらに、ステントフィラメント20は、並置の突起した突出部52,56の間に形成されたマンドレル22のチャネル58の内部に配置されている。図14は、マンドレル20の上で編組されているステントフィラメント20を示す。さらに、編組用マンドレル22の一端、例えば基端46は、スリーブ47によって編組機10のマンドレル22’に解除可能なように固定されてもよい。他の配置構成も、編組用マンドレル22を編組機10のマンドレル22’に固定するために適切に使用されうる。
【0031】
図15は、編組用マンドレル22の基端46の分解立体図である。編組用マンドレル22の基端は、ステント24の閉ループ39を形成するのに有用な突出部45を備えることができる。そのような閉ループは、フィラメント20を突出部45の周りで折り曲げることにより形成可能である(図示せず)。そのような閉ループ39を形成するための詳細は、リアナ(Leanna)らの米国特許出願公開第2005/0049682A1号明細書;クレール(Clerc)らの米国特許出願公開第2005/0256563A1号明細書;およびノートン(Norton)らの同第2006/0116752A1号明細書に見出すことが可能であり、前記文献の内容は参照により本願に組み込まれる。
【0032】
図5〜15の編組用マンドレル22は、単一のステントを製造するのに有用なものとして示されている。しかしながら、本発明の編組用マンドレル22はそのように限定されてはいない。例えば、異なるマンドレル領域であって、それぞれが、ステント部分の編組を開始するための固定突出部48と;特定区域内でステントフィラメント20を受承かつ制御するためのチャネル58と;本発明の非外傷性ステント24を完成させるための突出部45とを有しているマンドレル領域を提供することにより、単一のマンドレル22上でいくつかのステント24が生産されてもよい。その数個または多数のステント24(すなわち2個以上)は同一であってもよいし、ステント直径およびステント長さなどの異なるステント構成を有していてもよい。換言すれば、本発明の技術およびデバイスにより、高度に特別仕様化することが可能な1または複数のステントの製造が可能となる。ステントのそのような特別仕様化が可能な態様には、限定するものではないが、ステント長さ、ステント直径、ステントの曲率、ステントの幾何学的形状、例えば非外傷性のステント端部の幾何学的形状などの特別仕様化が挙げられる。
【0033】
図16Aおよび16Bは、本発明の編組用マンドレル22の一部分の部分的分解立体図である。図16Aに示されるように、先端側マンドレル部分50は長手方向に伸びるマンドレル部分54の直径より大きな直径を有する。先端側マンドレル部分50と長手方向に伸びるマンドレル部分54との間の移行部53は、マンドレル22の直径の、単純な階段式の減径である。図16Bに示されるように、移行領域68は、より大きな先端側部分50とより小さな長手方向に伸びるマンドレル部分54との間に配置される。移行領域68は、上記2つの直径の間の、傾斜した、望ましくは円錐形の領域である。移行領域68は、上記の形状の突起した突出部52,56に類似の、突起したマンドレル突出部70をさらに備えていてもよい。
【0034】
本発明の態様について、突起した突出部52,56を有するマンドレル22,22’を使用するものとして説明してきたが、本発明はそのように限定はされない。例えば、図17に示されるように、望ましい場合には、上述の突起した突出部52,56が無いかまたはほとんど無い編組用マンドレル22”が適切に使用されてもよい。それでもなお、そのようなマンドレル22”は、その先端44に上述の固定突出部48および基端46に突出部45(図示せず)を備えていてもよい。
【0035】
図18〜21は、編組用マンドレル22の先端44にステントフィラメント20を固定するための固定突出部48の代替実施形態を例証している。これらの実施形態は、編組用マンドレル22の先端44に解除可能に固定されてもよいし、または場合によっては編組用マンドレル22の先端44と一体的に形成されてもよく、例えば上述の突起タブ’48であるがこれに限定はされない。図18〜19は、編組用マンドレル22の先端44にステントフィラメント20を固定するためのワゴンホイールの配置構成72を示す。ワゴンホイール72は、周囲にステントフィラメント20を配置可能なピン74を備えることができる。ステントフィラメント20はピン74の内側部分76の周りに配置されてもよいが、必要であれば、ステントフィラメント20は外側ピン部分77に配置されてもよい。ワゴンホイール72は、波状表面78をさらに備えていてもよい。波状表面78は、ワゴンホイール72の内部におけるステントフィラメント20の位置決めに有用である。さらに、波状表面78の形状は、ステント24の屈曲部36の所望の角度に一致するように変更可能である。
【0036】
図20は、先端に穴部80を有するマンドレル22”を示している。スクリュー、ピン、タブ、移動止めなど(図示せず)が、ステントフィラメント20(図示せず)を固定するために穴部80の中へ挿入されてもよい。図21に示されるように、キャップ82が図20の実施形態と共に使用されてもよい。キャップ82は、図20に関連して記載されたピンまたはスクリューを受承する複数の半円形のノッチ84を有していてもよい。キャップ82は、ステント24の屈曲部36の設定および配向、構成または角度のうち少なくともいずれかに有用な、角度のある表面または傾斜した表面86をさらに備えることができる。ステントフィラメント20を固定するための突出物のこの実施形態は、一体的に形成されてマンドレル22”とされるものとして示されているが、穴部80は、他の記載のマンドレル22,22’のうち任意のものに一体的に形成されてもよいし、編組用マンドレル22,22’,22”のうちいずれにも解除可能に固定されうる個別のデバイスとして形成されてもよい。
【0037】
図22は、本発明の引張型または一定力編組用キャリア14の概要図である。一定力キャリア14は、ホイール90,92,94,96およびばね98を保持するためのフレーム88を備えることができる。伸縮自在のキャリアフィラメント16は、ホイール92に対して固定可能なように巻回された一端を有することができる。伸縮自在のキャリアフィラメント16は、図のように、ホイール94,96を介して一定力キャリア14を出ることができる。ホイール94,96は、伸縮自在のキャリアフィラメント16を編組ゾーン32へと誘導する際に有用である。ばね98は概して、一つには伸縮自在のキャリアフィラメント16に一定の張力を提供するために、ホイール90からホイール92へと一定の力を与える。伸縮自在のキャリアフィラメント16自体は、ばね98によって与えられた張力と連通するように、ホイール92にコイル状に絡みつくかまたは巻き付くことができる。さらに、ステント24が編組されるにつれて、編組ゾーン32内でのステントフィラメント20の移動に対応するために、伸縮自在のキャリアフィラメント16はホイール92から解けるかまたは巻き戻されることができる。一定力キャリア12のフレーム88の底部89は、図1〜2に概略的に示されるようなノッチギア14に対して解除可能なように固定されうる。図22の一定力キャリア14は、ステントを形成するフィラメント(ステント形成フィラメント)20が巻回されたボビンを備えていない。換言すれば、図22の一定力キャリア14は、ステント形成フィラメント20ではなく伸縮自在のキャリアフィラメント16を備えている。
【0038】
一定力または引張型編組用キャリア14は、別々の長さのステント形成フィラメント20を編組するのに有用である。一定力または引張型編組用キャリア14を使用して、全てまたはほぼ全てのステント形成フィラメント20が編組ゾーン32内に直接配置される。したがって、ステント形成フィラメント20にかかる一定の張力またはほぼ一定の張力は、編組ゾーン32内で直接的に制御かつ維持される。先行技術の編組技術は、そのような編組ゾーン内におけるフィラメント張力の直接制御を有していないことから、編組角度およびステントセル寸法がより大きく変動する可能性がある。
【0039】
図23は、図1と併せて上記に記載されたクリップ18の一実施形態の模式図である。該クリップ18は簡易脱着式クリップとして示されているが、ステント形成フィラメント20を伸縮自在のキャリアフィラメント16に固定するために任意のクリップまたは固定機構を適切に使用することができる。伸縮自在のキャリアフィラメント16は、固定可能に配置されて、クリップ18に対して解除可能に固定されてもよい。ステント形成フィラメント20は、望ましくはクリップ18に対して解除可能に固定される。ノブ102とクリップ18の本体104との間にばね100が使用されてもよい。ノブ102を、ばね100の力に反してクリップ本体104に向かって移動させると、フィラメント係合部分(図示せず)をクリップ18の本体104内で移動させることによりステント形成エレメント20がクリップ18から解放される。
【0040】
図24は、本発明に従って使用可能な一定力ボビンキャリア110の代替実施形態を概略的に示している。一定力ボビンキャリア110は、ステント形成フィラメント20が巻回されるボビン114を備えている。一定力ボビンキャリア110は、ステント形成フィラメント20に一定の張力を提供するラッチばね116を備えている。ラッチばね116は一般に、ステント形成フィラメント20を誘導するための小穴(図示せず)または小型ホイールを備えている。ラッチばね116は一般に、ステント形成フィラメント20に張力を提供するため、ベクトルによって図示されるように、ボビン114から離れるように移動可能である。ステント形成フィラメント20はその後、第1ホイール118および第2ホイール120の周りを移動する。ステント形成ワイヤ20は、一定力ボビンキャリア110を出て、本発明に従ってステント24を編組するための編組ゾーン32へと向かう。典型的には、ステント形成フィラメント20は、1つのボビン114から部分的に引き出され、次にこの引き出された部分が別の一定力ボビンキャリア110の別のボビン114(図示せず)に再巻回される。一定力ボビンキャリア110がノッチギア12に固定された後、ステント形成フィラメント20の中間部分は、本発明に従ってステントを編組するために編組用マンドレル22の固定突出部48に係合される。しかしながら、この代替実施形態は、ステントフィラメントをボビン114に再巻回しなければならないため、より多くの時間を必要とする可能性がある。
【0041】
一定力ボビンキャリア110を、先端側固定突出部48および編組用チャネル58を有する編組用マンドレル22,22’と共に使用することにより、本発明のステントを編組するための適切な張力制御が提供される。しかしながら、一定力編組用キャリア110は、引張型編組用キャリア14の使用と比較してより長いフィラメント20を必要とする可能性がある。そのため、ボビンキャリア110を使用するとフィラメント20のより多くの部分が編組ゾーン32の外側になる可能性があり、このことから、編組ゾーン32内部におけるフィラメント20への張力の直接制御がより弱まる可能性がある。
【0042】
さらに別例の実施形態では、一定力キャリア14と一定力ボビンキャリア110との組み合わせを使用可能であり、この場合ステントフィラメント20を別のボビン114に再巻回する代わりに、ボビン114を出たステントフィラメントはクリップ18を介して一定力キャリア14に対して解除可能なように固定されればよい。
【0043】
望ましくは、一定力キャリア14および一定力ボビンキャリア110は、本発明の他の実施形態と併せて、マンドレル22上でのステント24の編組中にフィラメント16,20に制御された張力を提供するように構成かつ制御される。有用な張力には、約1/8または0.125重量ポンド(約0.5ニュートン)〜約10重量ポンド(約45ニュートン)のほぼ一定の張力が含まれる。望ましくは、張力は約1/4または0.25重量ポンド(約1ニュートン)〜約10重量ポンド(約22ニュートン)である。好ましくは、張力は約1/2または0.5重量ポンド(約2ニュートン)〜約3重量ポンド(約13ニュートン)である。一般に、フィラメント20の直径が大きいほどより大きな張力が付与されることになろう。編組中およびその後の処理ステップの際にフィラメント20をマンドレル22の上にしっかり保持するための、最小限の力のレベルが必要である。あまりに大きな力が加わると、フィラメント20は、特にステントがマンドレル22上で加熱処理を受ける場合にマンドレル22上で伸長または変形を生じる場合があり、これはフィラメントまたはワイヤのネッキングと呼ばれる。そのようなネッキングは、フィラメントまたはワイヤを弱体化して恐らくはフィラメントまたはワイヤの破損をもたらすので、望ましくない。これら上述の張力は、金属フィラメント20を編組するのに有用であることが望ましい。非金属、例えばポリマーのフィラメント20がステント24を形成するために編組される場合、適用される張力は金属フィラメント20に関する値よりも小さくてよい。例えば、約0.5重量ポンド(約2ニュートン)〜約1重量ポンド(約2ニュートン)の張力が、ポリマーのフィラメント20を編組するのに有用である。
【0044】
図25は、本発明のステント24を編組する方法を示している。ステップ200では、いくつかの細長いステントフィラメントが提供される。各々のフィラメントは、対向する両端部と、対向する両端部の間の中間部分とを有する。ステップ210では、いくつかの引張型編組用キャリアが提供される。ステップ220では、対向する基端および先端を有する編組用マンドレルが提供される。編組用マンドレルは、該編組用マンドレルの先端にいくつかの周方向に間隔を置いて配置された固定突出部を備えることが可能であり、かつ任意選択で、編組中にステントフィラメントを受承するための複数の溝部またはチャネルを備えることができる。ステップ230では、フィラメントのうちの1つの中間部分が、固定突出部のうちの1つに対して固定可能なように配置される。ステップ240では、その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの一方が引張型編組用キャリアのうちの1つに固定されるが、その1つのフィラメントはその1つの引張型編組用キャリアに巻き取られない。ステップ250では、その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの他方が異なる第2の引張型キャリアに固定されるが、その1つのフィラメントはその第2の引張型キャリアに巻き取られない。ステップ260では、フィラメントの中間部分全てが異なる1つの固定突出部に対して固定可能なように配置されるまで、かつ、その数のフィラメントのそれぞれの端部が引張型キャリアのうちの異なる1つに固定されるまで、ステップ230〜250が繰り返される。ステップ270では、引張型キャリアは略円運動かつ蛇行運動で移動される。ステップ280では、マンドレルは、フィラメントを編組して編組ステントを形成するために、引張型キャリアの動きに対してほぼ垂直な方向に関して長手方向に進められる。
【0045】
この実施形態の方法は、引張型編組用キャリアからフィラメントへと一定の張力を付与するステップであって、該一定の張力は約0.25重量ポンド(1.1ニュートン)〜約5重量ポンド(22.2ニュートン)であるステップ、をさらに含むことができる。さらに、固定突出部の数はフィラメントの数の約2分の1であってよいが、任意の適切な数の固定突出部を使用可能である。引張型キャリアの数はフィラメントの数の約2倍であってよいが、任意の適切な数の引張型キャリアを使用可能である。望ましくは、フィラメントの数は約6〜約40またはそれ以上であってよい。固定突出部および引張型キャリアのそのような数は限定されるものではなく、任意の適切な相対数の固定突出部および引張型キャリアを使用可能である。例えば、フィラメント20の数および種類はステント編組中に増減させることが可能であり、例えばステントの異なる区域を、異なる種類の材料または異なる数のフィラメントのうち少なくともいずれか一方を用いて編組することが挙げられる。
【0046】
マンドレルは複数の溝部またはチャネルを備えることが可能であり、さらにフィラメントはステップ270〜280の編組中に溝部の中に配置される。フィラメントは、編組ステップ270〜280の間、溝部の内部に接線方向に配置されうる。望ましくは、ステップ270〜280は、フィラメントが編組されて、マンドレルの一部分であってマンドレルの基端付近の部分に達するまで、継続される。該編組方法は、フィラメントをマンドレルの一部に固定すると同時にフィラメントを約0.25重量ポンド(1.1ニュートン)〜約5重量ポンド(22.2ニュートン)の張力の下に維持するステップをさらに含むことができる。さらに、ステントは熱処理されてもよい。望ましくは、ステントフィラメントの熱処理は、フィラメントがマンドレル上に配置され、同時にフィラメントが張力下にある間に実施されうる。
【0047】
編組用マンドレルの先端の固定突出部は、フック、ピン、タブ、スクリュー、およびこれらの組み合わせから選択可能である。固定突出部はマンドレルから取り外し可能であってもよい。編組用マンドレルの先端は、固定突出部が配置されたカラーをさらに備えていてもよい。
【0048】
さらに、マンドレルは、第1の直径を有する第1の部分および第2の直径を有する第2の部分であって、第1の直径は第2の直径とは異なっている、第1および第2の部分を備えることができる。マンドレルは、異なる直径を有する複数の部分を備えることができる。さらに、マンドレルは、マンドレルの長さに沿って、もしくは実にマンドレルの周長に沿って接続可能な交換可能部分、またはこれらの組み合わせを備えることができる。溝部は第1および第2の部分の全体にわたって配置可能である。さらに、一定の張力が一定力編組用キャリアからフィラメントへと付与されて、交差している編組フィラメントの間の編組角度が第1および第2の部分においてほぼ等しいようになっていてもよい。マンドレルは第1の部分と第2の部分との間に移行部分をさらに備えていてもよい。望ましくは、編組角度は、第1の部分、移行部分および第2の部分においてほぼ等しい。しかしながら、本発明はそのように限定されるものではなく、編組角度は任意の特定仕様の値に制御可能であり、特定仕様の値は例えば、直線的なステント区域および非直線的なステント区域、例えばフレア状の区域、フランジ付きの区域、曲線状の区域などに関する編組角度の制御された変化である。
【0049】
フィラメントは、金属フィラメント、ポリマーのフィラメント、およびこれらの組み合わせから選択可能である。フィラメントは一本鎖フィラメントであってもよいし、多重鎖フィラメントであってもよい。多重鎖フィラメントの鎖は同じでも異なっていてもよく、例えば、限定するものではないが、異なる材料、異なる幾何学的形状、異なる機械的性質、異なる物性、異なる化学的性質などであってよい。望ましくは、フィラメントは金属フィラメントであり、例えばニチノール製フィラメントまたはニチノール含有フィラメントである。
【0050】
図26は、本発明のステント24を編組する方法の別の実施形態を示している。ステップ300では、いくつかの細長いフィラメントであって、各々のフィラメントが、対向する両端部と、対向する両端部の間の中間部分とを有しているフィラメントが提供される。ステップ310では、いくつかの編組用キャリアが提供される。ステップ320では、対向する基端および先端を有する編組用マンドレルが提供される。編組用マンドレルは、先端にいくつかの周方向に間隔を置いて配置された固定突出部を備え、任意選択で複数の溝部をさらに備えることができる。ステップ330では、フィラメントのうちの1つの中間部分がマンドレルの先端の固定突出部のうちの1つに対して固定可能なように配置される。ステップ340では、その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの一方が編組用キャリアのうちの1つに固定される。ステップ350では、その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの他方が異なる第2の編組用キャリアに固定される。ステップ360では、フィラメントの中間部分全てが異なる1つの固定突出部に対して固定可能なように配置されるまで、かつ、その数のフィラメントのそれぞれの端部が編組用キャリアのうちの異なる1つに固定されるまで、ステップ330〜350が繰り返される。ステップ370では、編組用キャリアは、略円運動かつ蛇行運動で移動される。ステップ380では、マンドレルは、フィラメントを編組して編組ステントを形成するために、編組用キャリアの動きに対してほぼ垂直な方向に編組機に関して長手方向に進められ;かつ任意選択で、一定の張力、例えば約0.25重量ポンド(1.1ニュートン)〜約5重量ポンド(22.2ニュートン)が、フィラメントの編組中に編組用キャリアからフィラメントへと付与される。
【0051】
この実施形態の編組用キャリアは一定力キャリアであってよい。フィラメントの端部は、一定力キャリアへのフィラメントの巻き取りを伴わずに、一定力キャリアに対して固定可能なように配置することができる。別例として、または追加として、編組用キャリアのうち一部または全てがボビンを備えてもよく、フィラメントの一部が該ボビンの周りに巻き取られる。
【0052】
本発明について、編組機の使用を介して説明してきたが、本発明のある種の態様は、ステントを形成するための手編みまたは手織り方法を用いても有用となりうる。そのような場合では、編組用マンドレルはその長手方向の長さに沿って追加のタブ、ピンなどをさらに備え、それら追加のタブ、ピンなどについて編組フィラメントの張力が得られてもよい。
【0053】
本発明のステント24はコーティング中に治療薬を含んでもよい。本発明のステント24のコーティング中の治療薬は、任意の適切な生物学上許容可能な作用物質、例えば非遺伝子治療薬、生体分子、小分子、または細胞などであってよい。
【0054】
典型的な非遺伝子治療薬には、抗血栓剤、例えばヘパリン、ヘパリン誘導体、プロスタグランジン(ミセル状プロスタグランジンE1を含む)、ウロキナーゼ、およびPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン);抗増殖剤、例えばエノキサパリン、アンギオペプチン、シロリムス(ラパマイシン)、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、バイオリムス(biolimus)、平滑筋細胞増殖を阻害することができるモノクローナル抗体、ヒルジン、およびアセチルサリチル酸;抗炎症薬、例えばデキサメタゾン、ロシグリタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、エストラジオール、スルファサラジン、アセチルサリチル酸、ミコフェノール酸、およびメサラミン;抗新生物剤/抗増殖剤/抗有系分裂剤、例えばパクリタキセル、エポチロン、クラドリビン、5‐フルオロウラシル、メトトレキセート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロスポリン、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、トラピジル、ハロフジノン、およびアンギオスタチン;抗がん剤、例えばc‐myc腫瘍遺伝子のアンチセンス阻害剤;抗微生物剤、例えばトリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、ニトロフラントイン、銀イオン、銀化合物、または銀塩;バイオフィルム合成抑制剤、例えば非ステロイド系抗炎症薬およびキレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸、O‐O’ビス(2‐アミノエチル)エチレングリコール‐N,N,N’,N’‐四酢酸およびこれらの混合物;抗生物質、例えばゲンタミシン、リファンピン、ミノサイクリン、およびシプロフロキサシン;キメラ抗体および抗体フラグメントを含む抗体;麻酔薬、例えばリドカイン、ブピバカイン、およびロピバカイン;酸化窒素;酸化窒素(NO)供与体、例えばリンシドミン、モルシドミン、L‐アルギニン、NO‐炭水化物付加物、ポリマーまたはオリゴマーのNO付加物;抗凝血剤、例えばD‐Phe‐Pro‐Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン抗体を含む抗トロンビン化合物、血小板受容体アンタゴニスト、抗血小板レセプター抗体、エノキサパリン、ヒルジン、ワルファリンナトリウム、ジクマロール、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板凝集阻害剤、例えばシロスタゾールおよびダニの抗血小板因子;血管細胞成長促進物質、例えば成長因子、転写活性化因子、および翻訳プロモータ;血管細胞成長抑制剤、例えば成長因子阻害剤、成長因子受容体アンタゴニスト、転写リプレッサー、翻訳リプレッサー、複製阻害剤、遮断抗体、成長因子に対する抗体、成長因子および細胞毒から構成される二機能分子、抗体および細胞毒から構成される二機能分子;コレステロール低下剤;血管拡張剤;内因性の血管作動性機構を妨害する作用因子;熱ショックタンパク質阻害剤、例えばゲルダナマイシン;アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;β‐遮断薬;βARキナーゼ(βARK)阻害剤;ホスホランバン阻害剤;タンパク質結合粒子薬、例えばABRAXANE(商標);ならびに上記のものの任意の組み合わせおよびプロドラッグ、が挙げられる。
【0055】
典型的な生体分子には、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質;オリゴヌクレオチド;核酸、例えば二本鎖または一本鎖DNA(裸のDNAおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸、例えばアンチセンスDNAとアンチセンスRNA、小型干渉RNA(siRNA)、およびリボザイム;遺伝子;炭水化物;成長因子を含む血管新生因子;細胞周期阻害剤;ならびに再狭窄抑制剤、が挙げられる。核酸は、例えばベクター(ウイルスベクターを含む)、プラスミドまたはリポソームのような送達システムに組み込まれてもよい。
【0056】
タンパク質の非限定的な例には、SERCA 2タンパク質、単球走化性タンパク質(「MCP‐1」)および骨形態形成タンパク質(「BMP」)、例えば、BMP‐2、BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5、BMP‐6(VGR‐1)、BMP‐7(OP‐1)、BMP‐8、BMP‐9、BMP‐10、BMP‐11、BMP‐12、BMP‐13、BMP‐14、BMP‐15などが挙げられる。好ましいBMPは、BMP‐2、BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5、BMP‐6、およびBMP‐7のうち任意のものである。これらのBMPは、ホモダイマー、ヘテロダイマー、またはこれらの組み合わせとして、単独または他の分子と共に提供可能である。別例として、または追加として、BMPの上流または下流での作用を引き起こすことができる分子が提供されてもよい。そのような分子には、「ヘッジホッグ」タンパク質のうちのいずれか、またはそれらをコードするDNAが含まれる。遺伝子の非限定的な例には、細胞死に対して防御するサバイバル遺伝子、例えば抗アポトーシス性のBcl‐2ファミリー因子およびAktキナーゼ;serca 2遺伝子;およびこれらの組み合わせが挙げられる。血管新生因子の非限定的な例には、酸性および塩基性の線維芽細胞増殖因子、血管内皮成長因子、上皮成長因子、形質転換増殖因子αおよびβ、血小板由来内皮成長因子、血小板由来増殖因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞増殖因子、およびインスリン様増殖因子が挙げられる。細胞周期阻害剤の非限定的な例はカテプシンD(CD)阻害剤である。再狭窄抑制剤の非限定的な例には、p15、p16、p18、p19、p21、p27、p53、p57、Rb、nFkBおよびE2Fのデコイ、チミジンキナーゼならびにこれらの組み合わせ、ならびに細胞増殖を妨害するのに有用なその他の作用物質が挙げられる。
【0057】
典型的な小分子には、ホルモン、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、および脂質ならびに分子量100kD未満の化合物が挙げられる。
典型的な細胞には、幹細胞、始原細胞、血管内皮細胞、成人心筋細胞、および平滑筋細胞が挙げられる。細胞は、ヒト起源のもの(自己由来もしくは同種異型)であってもよいし、動物供給源(異種)由来であってもよいし、または遺伝子操作されたものであってもよい。細胞の非限定的な例には、サイドポピュレーション(SP)細胞、系統陰性(lineage negative)(Lin)細胞、例えばLinCD34、LinCD34、LincKit、間葉系幹細胞、例えば5‐azaを伴った間葉系幹細胞、臍帯血細胞、心臓またはその他の組織由来の幹細胞、全骨髄、骨髄単核細胞、内皮始原細胞、骨格筋筋芽細胞または衛星細胞、筋肉由来細胞、G細胞、内皮細胞、成人心筋細胞、繊維芽細胞、平滑筋細胞、成人心臓線維芽細胞+5‐aza、遺伝子組換え細胞、組織工学移植片、MyoD瘢痕組織由来線維芽細胞、ペースメーカー細胞、胚性幹細胞クローン、胚性幹細胞、胎児または新生児の細胞、免疫学的にマスクされた細胞、および奇形腫由来細胞が挙げられる。
【0058】
治療薬のうちの任意のものが、生物学的に両立しうる程度に組み合わされてもよい。
上記の治療薬のうち任意のものが、ステント24上のポリマーコーティングの中に組み込まれてもよいし、ステント24上のポリマーコーティングの上に適用されてもよい。ポリマーコーティングのポリマーは生物分解性であってもよいし、非生物分解性であってもよい。適切な非生物分解性ポリマーの非限定的な例には、ポリスチレン;ポリスチレン無水マレイン酸;ポリイソブチレンコポリマー、例えばスチレン‐イソブチレン‐スチレンブロックコポリマー(SIBS)およびスチレン‐エチレン/ブチレン‐スチレン(SEBS)ブロックコポリマー;ポリビニルピロリドン、例えば架橋型ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール、EVAのようなビニルモノマーのコポリマー;ポリビニルエーテル;ポリビニル芳香族;ポリエチレンオキシド;ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート;ポリアミド;ポリアクリルアミド、例えばポリ(メチルメタクリラート‐ブチルアセタート‐メチルメタクリラート)ブロックコポリマー;ポリエーテル、例えばポリエーテルスルホン;ポリアルキレン、例えばポリプロピレン、ポリエチレンおよび高分子ポリエチレン;ポリウレタン;ポリカーボネート、シリコーン;シロキサンポリマー;セルロースポリマー、例えば酢酸セルロース;ポリマーディスパージョン、例えばポリウレタンディスパージョン(BAYHYDROL(登録商標));スクワレン乳剤;ならびに前述のうち任意のものの混合物およびコポリマーが挙げられる。
【0059】
適切な生分解性ポリマーの非限定的な例には、ポリカルボン酸、ポリ無水物、例えば無水マレイン酸ポリマー;ポリオルトエステル;ポリアミノ酸;ポリエチレンオキシド;ポリホスファゼン;ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびこれらのコポリマーおよび混合物、例えばポリ(L‐乳酸)(PLLA)、ポリ(D,L‐ラクチド)、ポリ(乳酸‐co‐グリコール酸)、50/50(DL‐ラクチド‐co‐グリコリド);ポリジオキサノン;ポリプロピレンフマラート;ポリデプシペプチド;ポリカプロラクトンおよびそのコポリマーおよび混合物、例えばポリ(D,L‐ラクチド‐co‐カプロラクトン)およびポリカプロラクトン‐co‐ブチルアクリラート;ポリヒドロキシブチラートバレラートおよび混成物;ポリカーボネート、例えばチロシン誘導ポリカーボネートおよびアクリラート、ポリイミノカーボネート、ならびにポリジメチルトリメチルカーボネート;シアノアクリラート;リン酸カルシウム;ポリグリコサミノグリカン;巨大分子、例えば多糖類(ヒアルロン酸;セルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース;ゼラチン;デンプン;デキストラン;これらのアルギン酸塩および誘導体)、タンパク質およびポリペプチド;ならびに前述のうち任意のものの混合物およびコポリマーが挙げられる。生分解性ポリマーはさらに、表面侵食性(surface erodable)のポリマー、例えばポリヒドロキシブチラートとそのコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ無水物(結晶およびアモルファスいずれも)、無水マレイン酸コポリマー、ならびに亜鉛リン酸カルシウム(zinc calcium phosphate)であってもよい。
【0060】
本発明と共に使用されるそのようなコーティングは、当業者に既知の任意の方法によって形成可能である。例えば、初期のポリマー/溶媒混合物が形成され、次いで治療薬が該ポリマー/溶媒混合物に添加されてもよい。あるいは、ポリマー、溶媒、および治療薬が同時に加えられて混合物が形成されてもよい。該ポリマー/溶媒/治療薬混合物は、分散物、懸濁物、または溶液であってよい。治療薬が溶媒不在下でポリマーと混合されてもよい。治療薬は、ポリマー/溶媒混合物またはポリマーに溶解されて該混合物またはポリマーとともに真正溶液とされてもよいし、該混合物またはポリマー中に分散されて微細粒子またはマイクロ粒子とされてもよいし、該混合物またはポリマー中で溶解度プロファイルに基づいて懸濁されてもよいし、界面活性剤のようなミセル形成化合物と組み合わされるか、小さなキャリア粒子上に吸着されて、該混合物またはポリマー中で懸濁物が作出されてもよい。コーティングは多数のポリマーまたは多数の治療薬のうち少なくともいずれかを含んでなることもできる。
【0061】
コーティングは、当分野における任意の既知の方法、例えば浸漬、噴霧、ローラー塗り、はけ塗り、静電めっきまたは静電紡糸、蒸気蒸着、吹き付け塗装、例えば霧状吹き付けコーティング、および超音波ノズルを使用した吹き付けコーティングによって、医療用デバイスに適用することができる、
コーティングは、典型的には厚さ約1〜約50ミクロンである。医療用デバイス上にポリマーコーティングの多重層を適用することも、本発明の範囲内にある。そのような多重層は同じ治療薬を含有しても異なる治療薬を含有してもよいし、かつ/または同じポリマーを含有しても異なるポリマーを含有してもよい。様々な放出動態を作成するためにポリマーまたは治療薬のうち少なくともいずれか一方の種類、厚さ、およびその他の特性を選択する方法は、当業者には良く知られている。
【0062】
ステント24は、挿入時において、および該デバイスが移植されるいかなる地点においても、該医療用デバイスを視認し易くするために、該ステント構造内に放射線不透明化物質を含有することもできる。放射線不透明化物質の非限定的な例は、次炭酸ビスマス、オキシ塩化ビスマス、三酸化ビスマス、硫酸バリウム、タングステン、およびこれらの混合物である。
【0063】
ステント24は、身体の構造物、体腔、または管腔、例えば血管系、胃腸管、腹部、腹膜、気道、食道、気管、結腸、直腸、胆管、尿路、前立腺、脳、脊柱、肺、肝臓、心臓、骨格筋、腎臓、膀胱、小腸、胃、膵臓、卵巣、子宮、軟骨、目、硬骨、関節などにおいて移植されるかまたはその他の方法で使用される。さらに、ステント24は、上述の治療薬のうち任意のものを伴って、または伴わずに、上述のポリマーコーティングのうち任意のものを含有することができる。加えて、一部のみ、例えば限定するものではないがステント端部34,38の間に配置されたステント24の一部、またはちょうどステント端部34,38の部分のうち一方もしくは両方が、上述の治療薬のうち任意のものを伴って、または伴わずに、上述のポリマーコーティングのうち任意のものを含有してもよい。
【0064】
特許請求の範囲に提示された実施形態を含む、本発明の実施形態または態様は、任意の組み合わせ方法および任意の組み合わせで組み合わされ、かつ本発明の範囲内にあることが可能である。非限定的な例として、以下のように、本発明の以下の実施形態または態様が、任意の組み合わせ方法および任意の組み合わせで組み合わされ、かつ本発明の範囲内にあってよい。
【0065】
実施形態1. ステントを編組する方法であって:(a)いくつかの細長いフィラメントであって、それぞれが、対向する両端部と、対向する両端部の間の中間部分とを有するフィラメント、を提供するステップと;(b)いくつかの引張型編組用キャリアを提供するステップと;(c)対向する基端および先端を有する編組用マンドレルであって、該編組用マンドレルの先端に周方向に間隔をおいて配置されたいくつかの固定突出部を含んでなる編組用マンドレル、を提供するステップと;(d)フィラメントのうちの1つの中間部分を、固定突出部のうちの1つに対して固定可能なように配置するステップと;(e)その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの一方を、引張型編組用キャリアのうちの1つに固定するステップと;(f)その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの他方を、異なる第2の引張型編組用キャリアに固定するステップと;(g)フィラメントの中間部分全てが固定突出部のうちの異なる1つに対して固定可能なように配置されるまで、かつ、いくつかのフィラメントのそれぞれの端部が引張型編組用キャリアのうちの異なる1つに固定されるまで、ステップ(d)〜(f)を繰り返すステップと;(h)引張型編組用キャリアをマンドレルの周りで移動させるステップと;(i)フィラメントを編組して編組ステントを形成するために、引張型編組用キャリアの動きに対してほぼ垂直な方向にマンドレルを長手方向に前進させるステップと、を含んでなる方法。
【0066】
実施形態2. ステップ(h)は、引張型編組用キャリアを、略円運動かつ蛇行運動でマンドレルの周面の周りを移動させることを含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態3. 引張型編組用キャリアはそれぞれ伸縮自在のキャリアフィラメントを含んでなることと、さらに、ステップ(e)は、1つのフィラメントの対向する両端部のうちの一方を引張型編組用キャリアのうちの1つの伸縮自在のキャリアフィラメントに固定することを含み、かつ、ステップ(f)は、1つのフィラメントの対向する両端部のうちの他方を第2の引張型編組用キャリアの伸縮自在のキャリアフィラメントに対して固定することを含むこととを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0067】
実施形態4. 引張型編組用キャリアはそれぞれホイールを含んでなることと、引張型編組用キャリアの伸縮自在のキャリアフィラメントはホイールの周りに巻きつけられることとを特徴とする、実施形態2に記載の方法。
【0068】
実施形態5. 引張型編組用キャリアからフィラメントへと一定の張力を付与するステップであって、該一定の張力は約0.25重量ポンド(1.1ニュートン)〜約5重量ポンド(22.2ニュートン)であるステップをさらに含んでなる、実施形態1に記載の方法。
【0069】
実施形態6. 固定突出部の数はフィラメントの数の約2分の1である、実施形態1に記載の方法。
実施形態7. 引張型編組用キャリアの数はフィラメントの数の約2倍である、実施形態1に記載の方法。
【0070】
実施形態8. フィラメントの数は約6本またはそれ以上である、実施形態1に記載の方法。
実施形態9. マンドレルは複数の溝部を含んでなることと、さらにフィラメントはステップ(h)〜(i)の編組中に溝部の中に配置されることとを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0071】
実施形態10. フィラメントは編組ステップ(h)〜(i)の際にマンドレルの溝部の内部に接線方向に配置される、実施形態9に記載の方法。
実施形態11. 編組用マンドレルの先端の固定突出部は、フック、ピン、タブ、スクリュー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
【0072】
実施形態12. 編組用マンドレルの先端の固定突出部はマンドレルから取り外し可能である、実施形態1に記載の方法。
実施形態13. 編組用マンドレルの先端は、固定突出部が配置されたカラーをさらに含んでなることと、さらに、固定突出部は、フック、ピン、タブ、スクリュー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることとを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0073】
実施形態14. ステップ(h)〜(i)は、フィラメントが編組されて、マンドレルの一部分であってマンドレルの基端付近の部分に達するまで、継続されることを特徴とし、かつ、フィラメントをマンドレルの該部分に対して固定すると同時にフィラメントを約0.25重量ポンド(1.1ニュートン)〜約5重量ポンド(22.2ニュートン)の張力の下に維持するステップをさらに含んでなる、実施形態9に記載の方法。
【0074】
実施形態15. フィラメントがマンドレルに配置されている間にフィラメントを熱処理するステップをさらに含んでなる、実施形態14に記載の方法。
実施形態16. マンドレルは、第1の直径を有する第1の部分および第2の直径を有する第2の部分を含んでなることと、第1の直径は第2の直径とは異なることと、前記第1および第2の部分全体に溝部が配置されることとを特徴とし、さらに、一定力編組用キャリアからフィラメントへと張力を付与して、交差している編組フィラメントの間の編組角度が第1および第2の部分においてほぼ等しくなるようにするステップを含んでなる、実施形態9に記載の方法。
【0075】
実施形態17. マンドレルは第1の部分および第2の部分の間に移行部分をさらに含んでなることと、さらに、編組角度は第1の部分、移行部分および第2の部分においてほぼ等しいこととを特徴とする、実施形態16に記載の方法。
【0076】
実施形態18. フィラメントは、金属フィラメント、ポリマーのフィラメント、およびこれらの組み合わせの群から選択される、実施形態1に記載の方法。
実施形態19. フィラメントはニチノールを含んでなる金属フィラメントである、実施形態1に記載の方法。
【0077】
実施形態20. ステントを編組する方法であって、(a)いくつかの細長いフィラメントであって、それぞれが、対向する両端部と、対向する両端部の間の中間部分とを有するフィラメント、を提供するステップと;(b)いくつかの編組用キャリアを提供するステップと;(c)対向する基端および先端を有する編組用マンドレルであって、先端に周方向に間隔をおいて配置されたいくつかの固定突出部を含んでなり、さらに複数の溝部を含んでなる編組用マンドレル、を提供するステップと;(d)フィラメントのうちの1つの中間部分を、マンドレルの先端の固定突出部のうちの1つに対して固定可能なように配置するステップと;(e)その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの一方を、編組用キャリアのうちの1つに対して固定するステップと;(f)その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの他方を、異なる第2の編組用キャリアに対して固定するステップと;(g)フィラメントの中間部分全てが固定突出部のうちの異なる1つに対して固定可能なように配置されるまで、かつ、いくつかのフィラメントの端部それぞれが編組用キャリアのうちの異なる1つに固定されるまで、ステップ(d)〜(f)を繰り返すステップと;(h)編組用キャリアをマンドレルの周りで移動させるステップと;(i)フィラメントを編組して編組ステントを形成するために、編組用キャリアの動きに対してほぼ垂直な方向に関してマンドレルを長手方向に前進させるステップと;(j)編組ステップ(h)〜(i)の際に編組用キャリアからフィラメントへ一定の張力を付与するステップと、を含んでなる方法。
【0078】
実施形態21. ステップ(h)は、編組用キャリアを、略円運動かつ蛇行運動でマンドレルの周面の周りを移動させることを含む、実施形態20に記載の方法。
実施形態22. 編組用キャリアは一定力キャリアであることと、さらに、フィラメントの端部は、一定力キャリアへのフィラメントの巻き取りを伴わずに、一定力キャリアに対して固定可能なように配置可能であることとを特徴とする、実施形態20に記載の方法。
【0079】
実施形態23. 編組用キャリアはボビンを含んでなることと、フィラメントの一部はボビンの周りに巻き取られることとを特徴とする、実施形態20に記載の方法。
実施形態24. 一定の張力は約0.25重量ポンド(1.1ニュートン)〜約5重量ポンド(22.2ニュートン)である、実施形態20に記載の方法。
【0080】
実施形態25. ステントを編組する方法であって、(a)いくつかの細長いフィラメントであって、それぞれが、対向する両端部と、対向する両端部の間の中間部分とを有するフィラメント、を提供するステップと;(b)いくつかの引張型編組用キャリアを提供するステップと;(c)対向する基端および先端を有する編組用マンドレルであって、先端に周方向に間隔をおいて配置されたいくつかの固定突出部を含んでなり、さらに複数の溝部を含んでなる編組用マンドレル、を提供するステップと;(d)フィラメントのうちの1つの中間部分を、編組用マンドレルの先端の固定突出部のうちの1つに対して固定可能なように配置するステップと;(e)その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの一方を、引張型編組用キャリアのうちの1つに対して固定するステップであって、該フィラメントはその1つの引張型編組用キャリアに巻き取られない、ステップと;(f)その1つのフィラメントの対向する両端部のうちの他方を、異なる第2の引張型キャリアに対して固定するステップであって、該フィラメントはその第2の引張型キャリアに巻き取られない、ステップと;(g)フィラメントの中間部分全てが固定突出部のうちの異なる1つに対して固定可能なように配置されるまで、かつ、いくつかのフィラメントの端部それぞれが引張型キャリアのうちの異なる1つに対して固定されるまで、ステップ(d)〜(f)を繰り返すステップと;(h)引張型キャリアをマンドレルの周りで移動させるステップと;(i)フィラメントを編組して編組ステントを形成するために、フィラメントを溝部の中に接線方向に配置することによりフィラメントを編組するように、引張型キャリアの動きに対してほぼ垂直な方向に関してマンドレルを長手方向に前進させるステップと、を含んでなる方法。
【0081】
実施形態26. ステップ(h)は、編組用キャリアを、略円運動かつ蛇行運動でマンドレルの周面の周りを移動させることを含む、実施形態25に記載の方法。
実施形態27. 約0.25重量ポンド(1.1ニュートン)〜約5重量ポンド(22.2ニュートン)の一定の張力を付与するステップをさらに含んでなる、実施形態25に記載の方法。
【0082】
実施形態28. 編組ステントであって:管状壁構造物を形成するように相互に編組された複数の細長いフィラメントを含んでなり、該フィラメントは、フィラメントが交差している位置に形成された編組角度で相互に編組され;該管状壁構造物は、第1の直径を有する第1の部分、第1の直径とは異なる第2の直径を有する第2の部分、および第1の部分と第2の部分との間に配置された移行部分を含んでなり;第1の部分における編組角度はほぼ等しいことと、第2の部分における編組角度はほぼ等しいことと、移行部分における編組角度はほぼ等しいこととを特徴とする、ステント。
【0083】
実施形態29. 第1の部分における編組角度、第2の部分における編組角度、および移行部分における編組角度はほぼ等しいことを特徴とする、実施形態28に記載の編組ステント。
【0084】
実施形態30. 第1の部分、第2の部分、および移行部分における編組角度は全て互いに5度以内にある、実施形態29に記載の編組ステント。
実施形態31. 第1の部分、第2の部分、および移行部分における編組角度は全て互いに1度以内にある、実施形態29に記載の編組ステント。
【0085】
実施形態32. 編組角度は、長手方向に伸びて相互に編組されたフィラメントの間の鈍角である、実施形態29に記載の編組ステント。
実施形態33. 第1の部分、第2の部分、または移行部分における編組角度のうち少なくとも1つは、他の部分の編組角度とは異なっている、実施形態28に記載の編組ステント。
【0086】
実施形態34. フィラメントは、金属フィラメント、ポリマーのフィラメントおよびこれらの組み合わせから成る群から選択される、実施形態28に記載の編組ステント。
実施形態35. フィラメントはニチノールを含んでなる金属フィラメントである、実施形態28に記載の編組ステント。
【0087】
実施形態36. 管状ステントを編組するための編組用マンドレルであって:対向する基端および先端を有する長尺状管状部材と;該先端に間隔を置いた位置に周方向に配置された、編組機からのフィラメントを係合するための固定突出部と;該部材の長手方向の長さに沿って角度をなして配置された複数の溝部と、を含んでなるマンドレル。
【0088】
実施形態37. 角度をなして配置された溝部は、部材の長手方向軸から約5°〜約85°の角度で伸びる、実施形態36に記載の編組用マンドレル。
実施形態38. 間隔を置いて配置された複数の突出部をさらに含んでなり、該突出部の間の間隔が、長尺状部材に角度をなして配置された複数の溝部を画成する、実施形態36に記載の編組用マンドレル。
【0089】
実施形態39. 固定突出部は、フック、ピン、タブ、スクリュー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態36に記載の編組用マンドレル。
実施形態40. 管状部材の先端に配置されたカラーをさらに含んでなり、固定突出部はカラーの上に配置される、実施形態36に記載の編組用マンドレル。
【0090】
実施形態41. 管状部材は金属部材である、実施形態36に記載の編組用マンドレル。
実施形態42. 管状部材はほぼ一定の直径を有する、実施形態36に記載の編組用マンドレル。
【0091】
実施形態43. 管状部材は異なる直径を有する、実施形態36に記載の編組用マンドレル。
実施形態44. ステップ(e)は、その1つのフィラメントがその1つの引張型編組用キャリアに巻き取られることなく実施され、かつ、ステップ(f)は、その1つのフィラメントが第2の引張型編組用キャリアへ巻き取られることなく実施される、実施形態1に記載の方法。
【0092】
本発明の様々な実施形態が本明細書中に具体的に例証かつ/または説明されているが、当然ながら、本発明の改変形態および変更形態は、本発明の思想および意図される範囲から逸脱することなく当業者によって達成可能である。さらに、特許請求の範囲または明細書に記載されているような本発明の実施形態または態様のいずれも、限定を伴うことなく互いに使用可能である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26