特許第5873894号(P5873894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロレックス・ソシエテ・アノニムの特許一覧

特許5873894LIGA技術における単層又は複数層の金属構造の製造方法及びそれにより得られる構造
<>
  • 特許5873894-LIGA技術における単層又は複数層の金属構造の製造方法及びそれにより得られる構造 図000002
  • 特許5873894-LIGA技術における単層又は複数層の金属構造の製造方法及びそれにより得られる構造 図000003
  • 特許5873894-LIGA技術における単層又は複数層の金属構造の製造方法及びそれにより得られる構造 図000004
  • 特許5873894-LIGA技術における単層又は複数層の金属構造の製造方法及びそれにより得られる構造 図000005
  • 特許5873894-LIGA技術における単層又は複数層の金属構造の製造方法及びそれにより得られる構造 図000006
  • 特許5873894-LIGA技術における単層又は複数層の金属構造の製造方法及びそれにより得られる構造 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873894
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】LIGA技術における単層又は複数層の金属構造の製造方法及びそれにより得られる構造
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/00 20060101AFI20160216BHJP
   G04B 15/14 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C25D1/00 381
   G04B15/14 A
   G04B15/14 Z
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-109958(P2014-109958)
(22)【出願日】2014年5月28日
(62)【分割の表示】特願2007-67204(P2007-67204)の分割
【原出願日】2007年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-159645(P2014-159645A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2014年6月26日
(31)【優先権主張番号】06405114.7
(32)【優先日】2006年3月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソーシー, クレマン
【審査官】 瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−218690(JP,A)
【文献】 特開平05−094937(JP,A)
【文献】 特開平07−246443(JP,A)
【文献】 特開昭54−086426(JP,A)
【文献】 特開2005−290427(JP,A)
【文献】 特開2001−342595(JP,A)
【文献】 特開2006−052448(JP,A)
【文献】 特開2003−165098(JP,A)
【文献】 特開2005−129428(JP,A)
【文献】 特開2002−192326(JP,A)
【文献】 特開2003−056552(JP,A)
【文献】 特開2005−007444(JP,A)
【文献】 特開2005−007445(JP,A)
【文献】 特表2004−530050(JP,A)
【文献】 特開昭57−40669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジスト層が固体金属基板上に塗布され、フォトレジストモールドが照射又は電子ボンバードメントもしくはイオンボンバードメントによって作製され、金属又は合金がこのモールド内に電着され、該金属構造が機械的に加工され、前記金属構造とフォトレジストが固体金属基板から切り離され、前記フォトレジストがこの金属構造から分離される、UV−LIGA技術で、1つの層を有する機械加工された単層金属構造を製造する方法であって、
a)固体金属基板上にフォトレジスト層を塗布するステップと、
b)必要に応じて、溶媒を蒸発させるために前記フォトレジスト層を加熱するステップと、
c)所望のインプレッションに対応するマスクを通して、365nmの波長で測定される100〜2000mJ/cmのUV照射に前記フォトレジスト層を曝すステップと、
d)必要に応じて、光硬化又は光分解を完了するために、ステップc)の後で得られた層をアニールするステップと、
e)未硬化の部分、又は光分解した部分を溶解することにより、現像を行うステップと、
f)フォトレジストモールドの開口部分内に金属又は合金を電着させるステップと、
g)平坦な上側表面を得るために、電気鋳造された金属構造を機械加工によって平坦化するステップと、
h)必要に応じて、電気鋳造された前記金属構造の上側表面上に1つ又は複数の他の機械加工作業を行うステップと、
i)前記金属構造と前記硬化されたフォトレジストを層間剥離によって前記固体金属基板から分離し、硬化した前記フォトレジストを機械加工された単層の前記金属構造から切り離すステップとを含み、
ステップa)からステップe)の後で、固体金属基板から突出する位置決め部材に対して着脱自在に前記金属構造に固定される軸受が配置され、前記金属構造と硬化されたフォトレジストが剥離により固体金属基板から切り離される際に前記軸受が固体金属基板から除去されることで、挿入された前記軸受を含む、単層金属構造を得る方法。
【請求項2】
フォトレジスト層が固体金属基板上に塗布され、フォトレジストモールドが照射又は電子ボンバードメントもしくはイオンボンバードメントによって作製され、金属又は合金がこのモールド内に電着され、該金属構造が機械的に加工され、前記金属構造とフォトレジストが固体金属基板から切り離され、前記フォトレジストがこの金属構造から分離される、UV−LIGA技術で、全体が重ねられた層を有する機械加工された複数層金属構造を製造する方法であって、
a)固体金属基板上にフォトレジスト層を塗布するステップと、
b)必要に応じて、溶媒を蒸発させるために前記フォトレジスト層を加熱するステップと、
c)所望のインプレッションに対応するマスクを通して、365nmの波長で測定される100〜2000mJ/cmのUV照射に前記フォトレジスト層を曝すステップと、
d)必要に応じて、光硬化又は光分解を完了するために、ステップc)の後で得られた層をアニールするステップと、
e)未硬化の部分、又は光分解した部分を溶解することにより、現像を行うステップと、
f)フォトレジストモールドの開口部分内に金属又は合金を電着させるステップと、
g)平坦な上側表面を得るために、電気鋳造された金属構造を機械加工によって平坦化するステップと、
ステップa)からステップg)の後で、
h)ステップa)、b)、c)、d)、及びe)を繰り返し、硬化したフォトレジスト
で覆われていない電気鋳造された金属の表面を活性化するステップと、
i)ステップf)及びg)を繰り返すステップと、
j)必要に応じて、電気鋳造された前記金属構造の前記上側表面上に1つ又は複数の別の機械加工作業を行うステップと、
k)前記金属構造と前記硬化されたフォトレジストを層間剥離によって前記固体金属基板から分離し、全体が重ねられた層を有する機械加工され電気鋳造された複数層の前記金属構造から前記硬化されたフォトレジストを切り離すステップとを含み、
ステップa)からステップe)の後で、固体金属基板上に着脱自在に固定される物体が配置され、前記金属構造と硬化されたフォトレジストが剥離により固体金属基板から切り離される際に前記物体が固体金属基板から除去されることで、挿入された物体を含む、複数層金属構造を得る方法。
【請求項3】
前記フォトレジスト層がステンレス鋼からなる固体金属基板上に塗布される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板の表面は、層間剥離により金属構造とフォトレジストとを固体金属基板から切り離すよう不動態化されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記基板の表面が、電気鋳造された前記金属構造の仕上面のネガを得るために、マイクロピーニング、もしくはエッチングによって、又はレーザーによって加工される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属基板が、電気鋳造された前記金属構造の隣接面に望まれる研磨の程度まで研磨された上側表面を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのネジ穴を有する金属構造を得るために、少なくとも1つのタップ穴が前記金属基板を通って作製され、ステップa)からステップe)の後で、ネジを前記タップ穴に配置して前記ネジを前記基板の表面を越えて延出させ、前記金属構造が堆積され、このネジが外され、前記金属構造及び硬化した前記フォトレジストが前記金属基板から層間剥離によって分離される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記金属構造及び硬化した前記フォトレジストが分離された後で、分離した前記金属構造に、エッチング、表面処理、及び機械式マーキング又はレーザマーキング作業が行われる、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項9】
時計ムーブメントの部品である、請求項1又は2に記載の方法により得られる機械加工された金属構造。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の方法によって得られる単層金属構造又は複数層金属構造であって、挿入物体を含む、機械加工された単層金属構造、又は全体が重ねられた層を有する機械加工された複数層金属構造。
【請求項11】
請求項7に記載の方法によって得られる単層金属構造又は複数層金属構造であって、ネジ穴を含む、機械加工された単層金属構造、又は全体が重ねられた層を有する機械加工された複数層金属構造。
【請求項12】
請求項2に記載の方法によって得られる複数層金属構造であって、全体が重ねられた層を有する機械加工された複数層金属構造。
【請求項13】
時計ムーブメント用の脱進機構のアンクルを構成する、請求項12に記載の複数層金属構造。
【請求項14】
少なくとも1つの表面要素が、前記金属基板に実施されるエッチングの結果であるレリーフ状である金属構造であって、請求項5に記載の方法によって得られる金属構造。
【請求項15】
前記機械加工された金属構造は時計ムーブメントの部品である、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LIGA技術において単層又は複数層の構造の製造方法、及びこの方法によって得ることができる新規な単層又は複数層の金属構造に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、例えばアンクル又はガンギ車等の時計用高精度金属部品の製造のためのLIGA(Lithographie Galvanik Abformung[Lithography,Electroforming,Molding]、ドイツのカールスルーエ原子力研究センター(Karlsruhe Nuclear Research Center)のエールフェルド(Ehrfeld)によって考案された方法)と呼ばれる技術の使用について記載している。この方法は、X線照射を生成するために高価な機器、即ちシンクロトロンを必要とするという欠点を有する。したがって、時計製造業界においては、この方法を広く使用することができない。
【0003】
非特許文献2は、ポリイミドを主成分とするフォトレジストで作製されたモールドにおける金属電着による金属構造の製造について記載しており、これらの金属構造は、X線の照射の代わりにUV照射を用いること以外はLIGA技術と同様であるUV−LIGAと呼ばれる技術を使用する方法によって製造される。
【0004】
単層金属構造の製造に使用される方法は、
シリコン支持ウエハ上で、電着のための犠牲金属層及びシード層を作製するステップと、
スピンコートによって感光性ポリイミド層を堆積するステップと、
所望のインプレッションに対応するマスクを通してUVを照射するステップと、
ポリイミドモールドを得るために、未照射部分を溶解することによって現像するステップと、
モールドの開口部分内へ、この開口部分の高さまでニッケル又は銅を電着させるステップと、
犠牲層を除去し、電気鋳造によって得られた金属構造を支持ウエハから分離し、ポリイミドモールドを除去するステップとを含む。
【0005】
非特許文献2は、この方法を使用して製造される銅又はニッケルの歯車等の単層金属構造を記載している(89〜91ページのA)及びB)と図3図7を参照)。
【0006】
また、非特許文献2は、
シリコン支持ウエハ上で、電着のための犠牲金属層及びシード層を作製するステップと、
スピンコートによって感光性ポリイミド層を堆積するステップと、
所望のインプレッションに対応するマスクを通して紫外線を照射するステップと、
ポリイミドモールドを得るために、未照射部分を溶解することによって現像するステップと、
実質的に平坦な上側表面を得るために、モールドの開口部分内へ、この開口部分の高さまでニッケルを電着させるステップと、
クロム薄層を真空蒸着するステップと、
このクロム薄層上へスピンコートによって感光性ポリイミド層を堆積させ、塩酸溶液を使用してクロム薄層を除去するステップと、
所望のインプレッションに対応する新しいマスクを通してUVを照射し、新しいポリイミドモールドを得るために、未照射部分を溶解することによって現像し、モールドの開口部分内へニッケルを電着させるステップと、
犠牲層を除去し、電気鋳造によって得られた金属構造を支持ウエハから分離し、ポリイミドモールドを除去するステップとを含む、2層金属構造を製造する方法も開示している。
【0007】
非特許文献2は、全体的に直方体(parallelepipedal)の形状の突出部が載っている金属プレートを製造するこの方法の使用について記載しており(92ページのV.及び図9)、第2の層は、面積がより大きい第1の層上に全体が重ねられている。
【0008】
非特許文献2に記述された方法では、製造される構造がシリコン支持ウエハから分離される前に、それらに機械加工作業を行うことができない。これは、支持ウエハが非常に壊れやすいために、機械加工によって発生する機械的な力に耐えられないからである。機械加工作業が必要な場合、この作業には、製造される各金属構造を正確に位置決めし、固定することが必要となる。このことが、製造の実施を複雑で困難なものにしている。
【0009】
特許文献1は、2層ピニオンが搭載された歯車(実施例1)又は3層熱流束マイクロセンサ(実施例3)等の、複数層金属構造を製造する別のUV−LIGA法を開示している。この方法は、非特許文献2に記述された方法に類似しており、やはり上述した欠点を有する。
【0010】
特許文献2には、500μm〜2mmの厚さの銅基板を使用することがすでに提案されているが、これらの厚さは記載の方法には何らの影響も及ぼさないことが明記されている。また、特許文献3には、ステンレス鋼基板を使用する金属の圧縮成形用挿入物体を製造するLIGA法が記載されている。特許文献2及び特許文献3は、基板の平面によって形成される表面以外の、金属構造の少なくとも1つの表面用の整形要素として、この基板を使用することを提案してはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第0851295号
【特許文献2】米国特許第5766441号
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0056074号
【特許文献4】米国特許第4058401号
【特許文献5】米国特許第4882245号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】DGC Mitteilungen(No.104、2005年)
【非特許文献2】A.B.Frazier他著、Journal of Microelectromechanical Systems、2、1993年6月2日号
【非特許文献3】G.A.DiBari、“Electroforming”、Electroplating Engineering Handbook、4th Edition、L.J.Durney編、Van Nostrand Reinhold Company Inc.発行、米国ニューヨーク、1984年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上述した欠点を有することなく、LIGA分野においてこれまで未開拓であった可能性に道を開く金属構造の製造方法を見いだすことである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のために、本発明の主題は、請求項1に記載の製造方法である。
【0015】
本出願人は実際に、犠牲金属層及びシード層によって覆われるシリコン支持ウエハの代わりにバルク金属基板を使用することにより、電気鋳造ステップによって形成される構造を、その構造が基板から分離される前にその位置で機械加工することが可能になることを発見した。これにより、同一の基板上に多数の構造(又は部品)を製造する際には、インプレッションをレジスト層上に形成するために使用されるマスクによってそれらの構造が基板上に非常に正確に配置されている場合には構造が基板から分離される前に、これらの構造をまとめて機械加工することが可能である。したがって、後続の機械加工を行う目的で、基板から分離した後で各構造を配置し固定するというような追加のステップは、もはや必要ではない。この方法は、実現される簡略化とは別に、後になっては同じような程度にはもはや再現することができないものである、基板上に部品を位置決めする際の非常に高度な精度から最も大きな恩恵を受ける。
【0016】
また、複数層金属構造を製造する場合には、バルク金属の支持体を使用することにより、平坦な上側表面又は所望の厚さを得るために、各電着ステップ終了後の機械加工(研削及び研磨)によって平坦化(leveling)することが可能となる。後続の電気めっきがより均一に行われ、この電気めっきにより、凹凸を有する表面上よりも平面上において良好な厚さ調節が可能となるので、このことには、得られる複数層金属構造の品質を改善するという効果がある。
【0017】
したがって、以下の説明を通じて認められるように、本発明による方法では、基板は、この基板の平面によって形成された表面以外の、金属構造の少なくとも1つの表面の形成に関係する媒介物(agent)の役割を果たす。
【0018】
このようなLIGA法における照射は、硬化したゾーンのアレイを作製するための、マスクを通した正規モードでの照射やレーザーモードでの照射による、又はレーザーアブレーションによるX線照射又は紫外線照射であってもよい。
【0019】
このLIGA技術は、UV−LIGA技術、即ちUV照射を使用するLIGA技術であることが好ましい。
【0020】
本発明は、UV−LIGA技術で機械加工された単層金属構造を製造する方法に関し、本方法は、
a)バルク金属基板をフォトレジスト層によって被覆するステップと、
b)必要に応じて、溶媒を蒸発させるためにフォトレジスト層を加熱するステップと、
c)所望のインプレッションに対応するマスクを通して、365nmの波長で測定される100〜2000mJ/cm2のUV照射にフォトレジスト層を曝すステップと、
d)必要に応じて、光硬化又は光分解を完了するために、ステップc)の後で得られた層をアニールするステップと、
e)未硬化の部分、又は光分解した部分を溶解することによって現像を行うステップと、
f)フォトレジストモールドの開口部分内に金属又は合金を電着させるステップと、
g)平坦な上側表面を得るために、電気鋳造された金属構造を機械加工によって平坦化するステップと、
h)必要に応じて、電気鋳造された機械構造の上側表面上に1つ又は複数の他の機械加工作業を行うステップと、
i)金属構造及び硬化したフォトレジストを層間剥離によってバルク金属基板から分離し、硬化したフォトレジストを機械加工された単層金属構造から切り離すステップとを含む。
【0021】
このバルク金属基板は、例えば円筒又は直方体のような任意の形状をした、一般に1〜5mmの厚さを有するバルク金属プレートであり、その上側表面の大きさは、一般には1〜5000、特には10〜3000である、任意の一基板上に製造される構造の数に応じて選択される。このプレートは、カソードとして機能することによって電気鋳造の反応を引き起こす(seeding)ことができる金属及び/又は導電性合金から形成される。例えばこのプレートは、銅、黄銅、又はステンレス鋼から構成することができる。好ましくは、このプレートはステンレス鋼から構成される。
【0022】
バルク金属基板は電解液浴と接触させることになるのであるが、このバルク金属基板の上側表面は、例えばマイクロピーニングによって、化学的もしくは機械的エッチングによって、又はレーザーによって研磨又はテクスチャ付けがなされてもよい。金属基板をエッチングする場合には、上記金属基板に行われるエッチングによって生じるレリーフ状の少なくとも1つの表面要素を得ることが可能である。エッチングされた表面形状が常に材料の除去によって形成されるので、これは全く新規なものである。
【0023】
基板のエッチングはマスクを用いて実行され、このマスクは、LIGAによって製造される金属構造の形状を定めるモールドの開口を形成するために使用されるマスクと同じ位置決めシステムを使用して、金属基板上に配置される。2つのマスクが共通の位置決め基準を有するので、金属構造の表面上に形成されるエッチングされた表面形状を、電着によって製造される金属構造の周辺部に対して非常に正確に位置決めすることができる。
【0024】
バルク金属基板は、適切な処理によって、脱脂され且つ電気鋳造の準備が行われる。この基板がステンレス鋼から構成されている場合には、適切な処理は、例えば、アルカリ脱脂ステップと、その後に続く酸性中和ステップから構成され、それにより基板表面を不動態化し、蒸留水を用いて洗浄及び乾燥を行う。
【0025】
フォトレジストは、光開始剤が存在する場合にUV照射の作用で硬化できる樹脂を主成分とするネガ型フォトレジスト、又は、光開始剤が存在する場合にUV照射の作用で分解できる樹脂を主成分とするポジ型フォトレジストのいずれかである。ネガ型フォトレジストは、例えば、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂、又はアクリル樹脂を主成分とする。有利なエポキシ樹脂は、八官能エポキシ樹脂SU−8(Shell Chemical社)である。このエポキシ樹脂は、通常、トリアリールスルホニウム塩(例えば特許文献4及び特許文献5に記載のもの)から選択される光開始剤が存在する場合に使用される。ポジ型フォトレジストは、例えば、DNQ(ジアゾナフトキノン)光開始剤が存在する場合に、ノボラック型フェノールホルムアルデヒド樹脂を主成分とする。
【0026】
フォトレジストは、スピンコーティングによって、又は、例えば浸漬コーティング、ロールコーティング、押し出しコーティング、スプレーコーティング、もしくは(例えばアクリル樹脂を主成分とするドライフィルムの場合には)ラミネーション等の別の技法によって堆積させることができる。好ましいコーティング技法は、スピンコーティングである。
【0027】
ステップc)の照射条件下で所望の効果(光硬化又は光分解)を誘発させるための最大フォトレジスト厚は、UV−LIGAの場合、典型的には1mmである。1回の塗布で被覆することができるフォトレジスト層の厚さは、スピンコーティング技法に応じて、典型的には150μmである。バルク金属基板には、そのフォトレジストの所望の厚さに応じて、1回又は複数回フォトレジストが被覆される。
【0028】
ステップb)で溶媒を除去するために、フォトレジストが加熱される可能性のある条件は、フォトレジストの製造業者からの指示の通りにフォトレジストの性質(nature)及び厚さに応じて選択される。厚さ140μmのSU−8エポキシ樹脂を主成分とするフォトレジストの場合、ステップb)は、例えば、5〜10分間65℃で加熱し、次いで30〜60分間95℃で加熱するというものである。ドライアクリルフィルムを主成分とするフォトレジストの場合には、溶媒を蒸発させるこの加熱ステップは不要である。
【0029】
フォトレジストを数回塗布する必要がある場合、及び溶媒を蒸発させるためにフォトレジストを加熱する必要がある場合には、ステップa)に続いて、一回目のフォトレジストの塗布の後にステップb)が実行され、ステップa)及びb)は必要な回数繰り返される。
【0030】
ステップc)は、所望のインプレッションに対応するマスクを通して、365nmの波長で測定される100〜2000mJ/cmのUV照射にフォトレジスト層を曝すというものである。この照射は、樹脂の光硬化(ネガ型フォトレジスト)又は樹脂の光分解(ポジ型フォトレジスト)を誘発する。
【0031】
ステップd)は、必要に応じて、ステップc)の光硬化又は光分解を完了するために、ステップc)の後で得られる層をアニールするというものである。
【0032】
ステップe)は、フォトレジストの製造業者からの指示の通りに、フォトレジストの種類に応じて選択される適切な水溶液又は溶媒を使用して、未照射部分(ネガ型フォトレジスト)又は照射された部分(ポジ型フォトレジスト)を溶解することにより、構造を現像するというものである。適切な水溶液の例は、弱アルカリ性溶液、例えば炭酸ナトリウム溶液であり、適切な溶媒の例は、GBL(γ−ブチロラクトン)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート)及びイソプロパノールである。現像溶媒又は溶液としては、エポキシ樹脂にはPGMEAを、アクリル樹脂には1%の炭酸ナトリウム溶液又はイソプロパノールを使用することが有利である。
【0033】
ステップf)は、カソードとしてバルク金属基板を使用して、フォトレジストモールドの高さ以下の定められた高さまで、フォトレジストモールドの開口部分内に金属又は合金を電着させるというものである。
【0034】
ステップg)は、平坦な上側表面を有するように、機械加工によって平坦化するというものである。これは、バルク金属基板の存在によって可能になる。また、この作業により、電着金属構造の2つの表面間が確実に完全な平行となるようにすることが可能となる。
【0035】
電気鋳造用の金属としては、ニッケル、銅、金、又は銀がよく用いられ、合金としては、金−銅合金、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−鉄合金、又はニッケル−マンガン合金がよく用いられる。電気鋳造条件、特に浴の組成、システムの幾何学的配置、電圧及び電流密度は、電気鋳造技術分野で周知の技法(例えば、非特許文献3を参照)に従って、電着される各金属又は合金に対して選択される。
【0036】
機械加工による平坦化作業は、通常、研削及び研磨によって実行され、それにより、表面凹凸が約1μm以下の平坦な上側表面が作られる。
【0037】
ステップh)は、所望の構造を得るために、必要に応じて、電気鋳造された機械構造の上側表面上へ、例えば面取り、エッチング、又は装飾加工等の他の機械加工作業を行うというものである。
【0038】
ステップi)は、層間剥離によってバルク金属基板から機械加工された金属構造を分離し、さらに機械加工された金属構造からフォトレジストを切り離すというものである。フォトレジストを切り離す前に、適切な場合には、エッチング、表面処理、及び機械式マーキング作業又はレーザマーキング作業を分離した金属構造に行ってもよい。
【0039】
バルク金属基板の上側面から層間剥離によって分離される金属構造の下側面は、この上側面の表面仕上げを複写する。そのため、下側面は、テクスチャ付けされる(金属基板の上側面が、例えばエッチング又はマイクロピーニングによってテクスチャ付けされている場合)か、又は、所望の研磨の程度まで磨かれた、研磨された外観を有する(金属基板の上側面が所望の研磨の程度まで磨かれた場合)。後者の場合には、構造の下側面の表面の研磨された外観は、適切な場合には上側面の表面を研磨することによって得られる研磨された外観と、肉眼では区別することができない。しかしながら、50倍の倍率で、適切な照明及び特定の向きの光学顕微鏡によって、又は走査型電子顕微鏡によって、又は局所表面分析システム(topographic surface analysis system)を使用して検査すると、これら2つの表面間の識別を行うことができる。
【0040】
機械加工された機械構造からの硬化したフォトレジストの分離又は剥離は、通常、化学エッチングによって、又はプラズマ処理によって行われる。このようにして、機械加工された金属構造は解放される。
【0041】
本発明による、バルク金属基板上に単層金属構造を製造する方法は、シリコン支持ウエハ上にこのような構造を製造する知られている方法に勝る多くの利点を有する。
【0042】
まず、本方法は、電気鋳造の後で得られる構造の上側表面上で、基板の分離及び硬化されたフォトレジストモールドの切り離しの前に、基板の表面に平行な平坦な表面を得るために、任意の機械加工作業、特に研削及び任意選択の研磨による表面の平坦化を行うことを可能にし、さらに、例えば面取り、エッチング、又は装飾加工等の1つ又は複数の他の機械加工作業も可能にする。これにより、同一の基板上に多数の構造(又は部品)を製造する際には、上記基板上に配置され固定されるこれらの構造をまとめて機械加工することが可能であり、したがってこの機械加工の場合、UV−LIGA技術の実行中に行われる硬化した極めて正確なフォトレジストモールドにおける位置決め及び固定から恩恵を受ける。基板から分離した後では、各金属構造を位置決めし固定する際にこのような精度を得ることは、不可能ではないにしても非常に難しい。
【0043】
本発明の方法は、極めて正確に位置決めして挿入された物体を含む単層金属構造を製造するために使用することができる。
【0044】
これは、ステップa)〜ステップe)を実行した後で、バルク金属基板の上部に取り外し可能な固定された物体を配置すること、及び、バルク金属基板から電気鋳造された金属構造を層間剥離によって分離するときに、この物体をバルク金属基板から解放することが可能であるからである。例えば、この物体は、時計の歯車列の軸受ルビー等の宝石であってもよい。バルク金属基板を使用するという事実により、軸受を案内するために開口部の直径に調整され、基板表面から突出しながら基板内に固定されるペグによって、この軸受を非常に正確に配置することが可能になり、その結果、軸受を案内するための開口部内で基板の表面から少しの距離のところに軸受が係合できるようになる。ステップf)中、軸受を取り囲む電気鋳造された金属又は合金内にこの軸受を保持することができる。したがって、ステップi)中に電気鋳造された構造をバルク金属基板から解放すると、挿入された物体(即ち挿入物)を含む電気鋳造された構造が得られる。
【0045】
物体の正確な位置決め及び取り外し可能な取り付けは、犠牲金属層及びシード層によって覆われたシリコン支持ウエハの上では不可能である。UV−LIGAによって単層金属構造を製造する知られている方法は、そのようなウエハを使用しており、したがって、電気鋳造された金属構造に物体を挿入することができない。
【0046】
したがって、本発明は、挿入された物体を含む機械加工された新規な単層金属構造にも関し、この構造は、上で定めた方法によって得ることができる。
【0047】
本発明の方法は、正確に配置されたネジ穴を含む単層金属構造の製造も可能にする。
【0048】
これは、ステップa)〜ステップe)を実行した後で、バルク金属基板5のタップ穴にネジ30を、基板の上側表面を越えてこのネジ30を突出させることによって配置し(図5A図5B参照)、金属基板が層間剥離により分離される前にバルク金属基板からこのネジを外すことが可能であるからである。このネジは、電気鋳造された金属に接着しない不活性材料、例えばテフロン(登録商標)(PTFE)から構成される。ネジ穴を配置することが望まれる位置の下において、ネジ穴がバルク金属基板5を垂直に通るようにバルク金属基板5にタッピングされ、ネジ30が下から上記穴に導入され(図5A図5B参照)、上記ネジの一部が基板より上に突出する。ステップf)中、金属又は合金が、バルク金属基板から突出するネジの一部分を取り囲む。ステップi)の前に、このネジはバルク金属基板から外される。このネジの長さに応じて、盲穴のタッピング(図5A)又は貫通穴のタッピング(図5B)のいずれを行うことも可能である。
【0049】
シリコン支持ウエハは非常にもろく、割れてしまうため、シリコン支持ウエハ内にタッピングすることは不可能である。UV−LIGAによって単層金属構造を製造する周知の方法は、このようなウエハを使用する。したがって、それらの方法は、ネジ穴が作られる構造を製造しない。
【0050】
したがって、本発明は、上で定めた方法で得ることができるネジ穴を含む、機械加工された新規な単層金属構造にも関する。
【0051】
また、本発明は、全体が重ねられた層を有する機械加工された複数層金属構造をUV−LIGA技術で製造する方法にも関し、本方法は、
a)バルク金属基板をフォトレジスト層によって被覆するステップと、
b)必要に応じて、溶媒を蒸発させるためにフォトレジスト層を加熱するステップと、
c)所望のインプレッションに対応するマスクを通して、365nmの波長で測定される100〜2000mJ/cm2のUV照射にフォトレジスト層を曝すステップと、
d)必要に応じて、光硬化又は光分解を完了するために、ステップc)の後で得られた層をアニールするステップと、
e)未硬化の部分、又は光分解した部分を溶解することによって現像を行うステップと、
f)フォトレジストモールドの開口部分内に金属又は合金を電着させるステップと、
g)平坦な上側表面を得るために、機械加工によって平坦化を行うステップと、
h)ステップa)、b)、c)、d)、及びe)を繰り返し、硬化したフォトレジス
トで覆われていない電気鋳造された金属の表面を電気化学的処理によって活性化するステップと、
i)ステップf)及びg)を繰り返すステップと、
j)必要に応じて、ステップh)及びi)を繰り返すステップと、
k)必要に応じて、電気鋳造された機械構造の上側表面上に1つ又は複数の他の機械加工作業を行うステップと、
l)金属構造及び硬化したフォトレジストを層間剥離によってバルク金属基板から分離し、重ねられた層を有する機械加工された複数層金属構造から硬化したフォトレジストを切り離すステップとを含む。
【0052】
「全体が重ねられた層を有する複数層」という表現は、2つの隣接層の場合、上層の輪
郭が完全に下層の輪郭の立面の範囲内に入っていることを意味する。
【0053】
ステップa)、b)、c)、d)、e)、f)、及びg)は、UV−LIGAによって単層金属構造を製造するための前述の方法のステップと同様である。
【0054】
ステップh)は、ステップa)、b)、c)、d)、及びe)を繰り返し、電気化学的処理により、硬化したフォトレジストで覆われていない電気鋳造された金属の表面を活性化させるというものである。
【0055】
ステップa)では、基板としてステップg)の後で得られる平坦な上側表面を使用し、ステップc)では、電気鋳造する新しい金属層用の所望のインプレッションに対応する新規なマスクを使用して、ステップa)、b)、c)、d)、及びe)を繰り返す。
【0056】
ステップe)を繰り返した後で、硬化したフォトレジストで覆われていない電気鋳造された金属の表面は、例えば、逆電流を印加し、電気鋳造された金属をアノードとして機能させ、表面処理技術で周知の技法を使用して活性化される。
【0057】
ステップi)は、ステップf)及びg)を繰り返すというものである。ステップe)を繰り返した後で得られる硬化した新しいフォトレジストモールドの開口部分内に金属又は合金を電着させ、(通常、表面凹凸が約1μm以下の)平坦な上側表面を得るために、通常は研削及び研磨により、機械加工による平坦化作業が実行される。ステップi)中に電着させる金属又は合金は、ステップf)中に電着させる金属又は合金と同一でも、異なっていてもよい。通常、この金属又は合金は、同じ金属又は合金である。
【0058】
ステップj)は、必要に応じて、所望の複数層金属構造を得るためにステップh)及びi)を繰り返すというものである。この繰り返しは、2層金属構造を製造する場合には不要である。
【0059】
ステップk)は、必要に応じて、所望の構造を得るために、例えば面取り、エッチング、又は装飾加工等の他の機械加工作業を電気鋳造された機械構造の上側表面上に行うというものである。
【0060】
ステップl)は、層間剥離によってバルク金属基板から機械加工された金属構造を分離し、機械加工された機械構造からフォトレジストを切り離すというものである。
【0061】
バルク金属基板の上側面から分離される金属構造の下側面は、上記上側面の表面仕上げを複写する。そのため、下側面は、テクスチャ付けされる(金属基板の上側面が、例えばエッチング又はマイクロピーニングによってテクスチャ付けされている場合)か、又は研磨された外観を有する(金属基板の上側面に研磨作業が施された場合)。
【0062】
後者の場合、構造の下側面の表面の研磨された外観は、適切な場合には上側面の表面を研磨することによって得られる研磨された外観と、肉眼での検査によっては区別することができない。しかしながら、50倍の倍率で、適切な照明及び特定の向きの光学顕微鏡によって、又は走査型電子顕微鏡によって、又は局所表面分析システムを使用すると、これら2つの表面は識別可能である。
【0063】
機械加工された機械構造からの硬化したフォトレジストの分離又は剥離は、通常、化学エッチング、又はプラズマ処理によって行われる。このようにして、機械加工された金属構造は解放される。
【0064】
本発明による、バルク金属基板上に全体が重ねられた層を有する複数層金属構造を製造する方法は、シリコン支持ウエハ上にこのような構造を製造する知られている方法に勝る多くの利点を有する。
【0065】
本方法は、最後の電気鋳造ステップの後で得られる金属構造の上側表面上に、基板からの分離の前に、任意の機械加工作業、特に面取り、エッチング、又は装飾加工作業を行うことを可能にする。これにより、任意の一基板上に多数の構造(又は部品)を製造する際には、この基板上に配置され固定されるこれらの構造をまとめて機械加工することが可能であり、この機械加工の場合、UV−LIGA技術の実施中に行われる極めて正確な硬化したフォトレジストモールドにおける位置決め及び固定から恩恵を受ける。各金属構造を基板から分離した後では、この金属構造を位置決めし固定する際にこのような精度を得ることが非常に難しい。
【0066】
本発明の方法は、平坦な上側表面を得るために各電着ステップ終了後の機械加工(研削及び研磨)による平坦化ステップを含む。これには、後続の電気めっきがより均一に行われ、この電気めっきにより、凹凸を有する表面上よりも研磨された表面上において良好な厚さ調節が可能となるので、得られた複数層金属構造の品質及びその厚さの均一性、特に特定の機械的特性及び/又は外観を改善する効果がある。
【0067】
新規であって、有利な特性を有する全体が重ねられた層を有する機械加工された複数層金属構造は、このようにして得られる。
【0068】
したがって、本発明は、上で定めた方法によって得ることができる全体が重ねられた層を有する機械加工された複数層金属構造にも関する。
【0069】
また、本発明の方法は、バルク金属基板を使用することにより、電気鋳造された第1の層内に挿入物体又はネジ穴を含む、全体が重ねられた層を有する新規な複数層金属構造を、前述の単層金属構造の場合と同様のやり方で本方法を実施することによって得ることを可能にする。挿入物体又はネジ穴を含むこのような多重層構造は、シリコン支持ウエハを使用するUV−LIGAにより複数層金属構造を製造する知られている方法によっては得ることができない。
【0070】
したがって、本発明は、上で定めた方法によって得ることができる挿入物体又はネジ穴を第1の層に有する機械加工された複数層金属構造にも関する。
【0071】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の方法を実施するいくつかの方法を概略的に例として示す添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことで明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】単層構造を有するリターンスプリングの斜視図である。
図2図2A〜Fは、図1のスプリングの製造におけるさまざまなステップを示す、図1の線ABにおける断面図である。
図3図3Aは時計ムーブメントの脱進機構用のアンクルの下からの斜視図であり、図3Bは時計ムーブメントの脱進機構用のアンクルの図3Aの線ABにおける断面図である。
図4図4A〜Hは図3A及び図3Bのアンクルの製造におけるさまざまなステップを概略的に示す断面図である。
図5図5A、Bは電気鋳造された構造内にタッピングを形成するためにバルク金属基板5のタップ穴内にネジ30を含むアセンブリの部分断面図である。
図6】どのようにして電気鋳造された金属層に軸受を挿入することができるかを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下の実施例は、図1図4Hを参照して、本発明の方法を使用するリターンスプリングの製造を記載している。
【実施例1】
【0074】
リターンスプリングの製造
図1は、円筒形穴3及び面取り部分4を有するリターンスプリング1を示している。
【0075】
図2Aは、段落0020の方法のステップb)の後で得られる構造を示しており、この構造は、基板5を覆うフォトレジスト層6を含む。この構造は、以下の手順(protocol)を使用して得られたものである。
【0076】
厚さ1mm、直径150mmのステンレス鋼板から形成された基板5の表面を、アルカリ性溶液で脱脂し、酸性溶液で中和して不動態化し、次いで蒸留水で洗浄し、乾燥させることによって、基板5の脱脂と電気鋳造の準備とを行った。次に、厚さ100μmの八官能エポキシ樹脂SU−8−2035(Shell Chemical社)を主成分とするネガ型の第1のフォトレジスト層をスピンコーティングによって基板5の上に堆積させ、続いて溶媒を蒸発させるために、65℃で5分間、次いで95℃で20分間加熱した。次に、厚さ100μmの同じフォトレジストの第2の層をスピンコーティングによって第1のフォトレジスト層上に堆積させ、続いて溶媒を蒸発させるために、65℃で5分間、次いで95℃で45分間加熱した。
【0077】
図2Bは、本方法のステップc)に対応しており、所望のインプレッションに対応するマスクを通して、フォトレジストに対して波長365nmを中心とした約500mJ/cm2のUV照射が行われる。この図は、UV透過性支持体7及びクロム堆積物によって形成された不透明ゾーン7aを含むマスクを示している。同様のマスク形成支持体は、単一バッチで製造可能な数の構造に対応する多数のゾーンを有することができ、全てのゾーンは、マイクロエレクトロニクス産業において周知の技法であるフォトリソグラフィによって、非常に高い解像度の輪郭で得られる。
【0078】
このUV照射Rは、照射ゾーン6b内の樹脂の光硬化を誘発し、照射されなかったゾーン6aは硬化しないままとなる。
【0079】
図2Cは、本方法のステップe)の後で得られる構造を示している。硬化を完了するために、ステップc)の後で得られた層を65℃で1分間、続いて95℃で15分間アニールし、次いで照射されていないフォトレジストを、3つの連続する(次第に純度が高まる)PGMEA浴に15分間通過させることによって溶解させ、イソプロピルアルコール浴で洗浄し、乾燥させた。図2Cは、基板5上に硬化したフォトレジストモールド6bが重ねられているのを示している。
【0080】
図2Dは、本方法のステップf)の後で得られた構造、即ち、ニッケル電着し、次いで平坦な上側表面を得るために研削及び研磨によって平坦化を行った後の構造を示している。この図は、基板5を覆う硬化した樹脂モールド6b及び電気鋳造された層9を示している。
【0081】
図2Eは、本方法のステップh)中、面取り作業時に得られる構造を示している。この図は、基板5、金属構造9、硬化した樹脂モールド6b、面取りされた穴3a、及び面取りに使用されるミリングカッター8を示している。
【0082】
図2Fは、図1の断面図に対応しており、段落0020のステップi)の後で得られる、N−メチルピロリドンを用いて層間剥離によって金属基板から分離され、硬化したフォトレジストを剥離した後のスプリングを示している。
【実施例2】
【0083】
時計ムーブメント用の脱進機構のアンクルの製造
図3A及び図3Bは、円筒形穴3、フォーク2a、及び凹部2bを含むアンクルを示している。
【0084】
図4Aは、本方法のステップb)の後で得られる構造を示しており、この構造は、基板5を覆うフォトレジスト層6を含む。この構造は、以下の手順を使用して得られたものである。
【0085】
厚さ1mm、直径150mmのステンレス鋼板から形成された基板5の表面を、アルカリ性溶液で脱脂し、酸性溶液で中和して不動態化し、次いで蒸留水で洗浄し、乾燥させることによって、基板5の脱脂と電気鋳造の準備とを行った。次に、厚さ70μmの8官能エポキシ樹脂SU−8−2035(Shell Chemical社)を主成分とするネガ型の第1のフォトレジスト層をスピンコーティングによって基板5の上に堆積させ、続いて溶媒を蒸発させるために、65℃で3分間、次いで95℃で9分間加熱した。次に、厚さ70μmの同じフォトレジストの第2の層をスピンコーティングによって第1のフォトレジスト層上に堆積させ、続いて溶媒を蒸発させるために、65℃で5分間、次いで95℃で35分間加熱した。
【0086】
図4Bは、本方法のステップc)に対応しており、所望のインプレッションに対応するマスクを通して、フォトレジストに波長365nmを中心とした約450mJ/cmのUV照射が行われる。この図は、UV透過性支持体7及びクロム堆積物によって形成された不透明ゾーン7aを含むマスクを示している。このUV照射Rは、照射されたゾーン6b内の樹脂を光硬化させ、照射されないゾーン6aは硬化しないままとなる。
【0087】
図4Cは、本方法のステップe)の後で得られる構造を示している。硬化を完成するために、ステップc)の後で得られた層を65℃で1分間、続いて95℃で15分間アニールし、次いで照射されていないフォトレジストを、3つの連続する(次第に純度が高まる)PGMEA浴に15分間通過させることで溶解させ、イソプロピルアルコール浴で洗浄し、乾燥させた。この図は、基板5上の硬化したフォトレジストモールド6bを示している。
【0088】
図4Dは、硬化したフォトレジストモールドの開口部分内にニッケルを電気めっきし、平坦な上側表面を得るために研削及び研磨することによって平坦化する、本方法のステップf)及びg)を実行し、エポキシ樹脂SU−8−2035を主成分とする同じフォトレジストの2つの連続した50μmの層でステップa)及びb)を繰り返し、第1の層の場合には、65℃で3分間、次いで95℃で6分間加熱し、第2の層の場合には、65℃で5分間、次いで95℃で20分間加熱することによって得られた構造を示している。図4Dは、基板5の上部の硬化したフォトレジスト6b及び電気鋳造された層10を第2のフォトレジスト層11が覆っているのを示している。
【0089】
図4Eは、(ステップh)中の)本方法のステップc)の繰り返しに対応しており、所望のインプレッションに対応する新しいマスクを通して、フォトレジストに波長365nmを中心とした約400mJ/cmのUV照射が行われる。この図は、第2のUV透過性支持体12及びクロム堆積物によって形成された不透明ゾーン12aを含むマスクを示している。このUV照射Rは、照射されたゾーン11b内の樹脂を光硬化させ、照射されないゾーン11aは硬化しないままとなる。
【0090】
図4Fは、(ステップh中に)本方法のステップe)を繰り返した後で得られる構造を示している。硬化を完成するために、ステップc)を繰り返した後で得られた層を65℃で1分間、続いて95℃で15分間アニールし、次いで照射されていないフォトレジストを、3つの連続する(次第に純度が高まる)PGMEA浴に15分間通過させることによって溶解させ、イソプロピルアルコール浴で洗浄し、乾燥させた。この図は、基板5の上部の第1の硬化したフォトレジストモールド6b及び電気鋳造された金属層10の上部に、第2の硬化したフォトレジストモールド11bがあるのを示している。
【0091】
図4Gは、(ステップi中に)本方法のステップf)及びg)を繰り返した後で得られる構造を示している。第2の電気めっきステップは、意図する厚さよりもわずかに多くの量(10〜30μm)の同じ金属、即ち、ニッケルを用いて実行し、その後、平坦な上側表面を得るために研削及び研磨による平坦化を行った。この図は、基板5の上部の第1の硬化したモールド6b及び第1の電気鋳造された金属層10の上部に、第2の硬化した樹脂モールド11b及び第2の電気鋳造された層13があるのを示している。
【0092】
図4Hは、図3Bの断面図に対応しており、本方法のステップl)の後で得られる、金属基板が層間剥離によって分離され、硬化したフォトレジストがプラズマ処理によって取り除かれた後のアンクルを示している。
【0093】
図6は、金属基板21上に電気鋳造によって堆積された金属層22内に保持されることが意図された時計ムーブメントの軸受宝石から構成される挿入物24の取り外し可能な位置決めを示している。この目的のために、宝石軸受24の穴の直径に調整した位置決めペグ23aで終端する位置決め部材23は、基板21の位置決め穴に圧入され、基板21の表面を越えてペグ23aを突出させる。したがって、ペグ23a上に正確かつ着脱自在に宝石を配置することができる。宝石24の横方向の表面は溝24aを有し、それにより、電気鋳造によって堆積した金属で、電気鋳造された金属層22内に軸受を固定するための環状リブ22aを形成することが可能になる。このようにして特に高い精度が得られるが、これは、宝石24が、その周辺部によってではなく、その穴によって中央に配置されるからである。さらに、基板21が再利用できるので、基板21を極めて精密な許容差で製造することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 リターンスプリング
2a フォーク
2b 凹部
3 円筒形穴
3a 面取りされた穴
4 面取り部分
5 基板
6 フォトレジスト層
6a 照射されないゾーン
6b 照射されるゾーン、フォトレジストモールド、硬化した樹脂モールド
7 UV透過性支持体
7a 不透明ゾーン
8 ミリングカッター
9 金属構造、電気鋳造された層
10 金属層、電気鋳造された層
11 フォトレジスト層
11a 照射されないゾーン
11b 照射されるゾーン、第2の硬化したフォトレジストモールド
12 UV透過性支持体
12a 不透明ゾーン
13 第2の電気鋳造された層
21 金属基板
22 金属層
22a 環状リブ
23 位置決め部材
23a 位置決めペグ
24 挿入物、宝石軸受、宝石
24a 溝
30 ネジ
R UV照射
図1
図2
図3
図4
図5
図6