【実施例】
【0045】
(実施例1)式(I)の化合物の調製
(A)2−(3’,5’−ジメチルアニリノ)−4−オキソ−4,5−ジヒドロフラン−3−カルボキシレート(化合物1)の合成
乾燥THF(40ml)中においてNaHの懸濁液(60%、8.0g、0.2モル)を調製し、マロン酸ジエチル(32.0g、0.2モル)およびTHF(50ml)を混合したものを当該懸濁液中において滴下して加えて、混合溶液を準備した。その後、当該混合溶液を10から12℃へと冷却した。次いで、THF(100ml)中のClCH
2COCl(11.3g、0.1モル)の溶液を、当該混合溶液に滴下して加えた。その後、混合溶液を、10から12℃の低温度下において1時間保ち、次いで、温水(40から45℃)によって1時間温め、そして10から12℃に冷却した。その後、THF(50ml)中の3,5−ジメチルアニリン(12.1g、0.1モル)の溶液を、上述した混合溶液に滴下して加え、室温下において1時間攪拌し、水浴上において数時間加熱した。得られた反応溶液の反応が完了しているかどうかの確認は、TLCによって調べた。その後、おおよそのTHFを取り除くように反応溶液を減圧濃縮し、残留物を得た。当該残留物は、黄色の粘性物質である。次いで、黄色の粘性物質をフラスコ内に入れて、冷水(600ml)およびn−ヘキサン(300ml)をその中に注いだ。フラスコを激しく振とうさせると、沈殿物が観察された。当該沈殿物を、ブフナー漏斗により濾過および回収し、n−ヘキサン(100ml)および少量のエタノールのそれぞれにより一度洗浄した。その後、得られた残留物を加熱し、125mlのエタノール中において溶解させた。そして、溶解していない不純物を取り除くために、まだ熱いうちに、当該溶液を濾過した。当該濾過では、結晶化が起こるまで、そのまま放置しておいた。その後、結晶を回収し、エタノールによって再結晶化させた。21.74gの結晶ブロックが得られた。生産率は79%であり、結晶の融点は144から147℃の範囲であった。光学スペクトルのデータは次の通りであった。MS(m/z):275(M
+),IR(KBr disc)cm
−1:3251.5(−NH−),1708.6(C
4=O),1662.8(C
3−CO−OEt);UVλ
maxnm(CHCl
3)(logε):283(4.45);
1H−NMR(200MHz,CDCl
3)δ:1.240(3H,t,J=7.0Hz,H−2’’),2.256(6H,s,C
3’−C
H3,C
5’−C
H3),4.202(2H,q,J=7.0Hz,H−1’’),4.67(2H,s,H−5),6.88(1H,s,H−4’),7.05(2H,s,H−2’,H−6’),10.127(1H,s,NH);
13C−NMR(200MHz,DMSO−d
6)δ:14.62(C−2’’),21.04(3’−
CH
3,5’−
CH
3),59.41(C−1’’),75.41(C−5),86.85(C−3),120.58(C−2’,C−6’),127.73(C−4’),135.03(C−1’),135.03(C−3’,C−5’),164.32(C−2),177.25(C−3’’),188.65(C−4)。
【0046】
(B)エチル2−(3’−メトキシアニリノ)−4−オキソ−4,5−ジヒドロフラン−3−カルボキシレート(化合物2)の合成
化合物1の調製手順において、3’,5’−ジメチルアニリンを、3’−メトキシアニリン(10.71g、0.1モル)に置き換えて調製した。21.6gの白色針状結晶が得られた。生産率は78%であり、結晶の融点は140.7℃であった。光学スペクトルのデータは次の通りであった。MS(m/z,%):278(M
++1,9.12),277(M
+,53.04),231(M
+−46,100);IR(KBr disc)cm
−1:3282(−NH−),1703.14(C
4=O),1662.47(C
3−CO−OEt);UVλ
maxnm(MeOH)(logε):283.0(4.218);
1H−NMR(200MHz,CDCl
3)δ:1.32(3H,t,J=6.9Hz,H−2’’),3.75(3H,s,3’−OC
H3),4.30(2H,q,J=6.9Hz,H−1’’),4.61(2H,s,H−5),6.7〜7.25(4H,m,H−2’,H−4’,H−5’,H−6’),10.2(1H,s,−N
H−);
13C−NMR(200MHz,CDCl
3)δ:14.22(C−2’’),55.15(3’−O
CH
3),60.28(C−1’’),75.21(C−5),87.39(C−3),107.15(C−2’),111.08(C−4’),113.24(C−6’),129.96(C−5’),135.62(C−1’),160.05(C−3’),165.26(C−2),177.34(C−3’’),188.12(C−4)。
【0047】
(C)エチル2−(2’−メチル−4’−クロロ−アニリノ)−4−オキソ−4,5−ジヒドロフラン−3−カルボキシレート(化合物3)の合成
化合物1の調製手順において、3’,5’−ジメチルアニリンを、2’−メチル−4’−クロロ−アニリン(10.71g、0.1モル)に置き換えて調製した。18.55gの白色結晶が得られた。結晶の融点は118から119℃の範囲であった。光学スペクトルのデータは次の通りであった。MS(m/z):262(M
++1,8.81),261(M
+,40.95);IR(KBr disc)cm
−1:3169.35(−NH−),1703.62(C
4=O),1651.96(C
3−CO−OEt);UVλ
maxnm(MeOH)(logε):294.5(4.1717);
1H−NMR(200MHz,DMSO−d
6)δ:1.245(3H,t,J=7Hz,H−2’’),2.29(3H,s,2’−CH
3),4.035(2H,q,J=7Hz,H−1’’),4.62(2H,s,H−2),7.208〜7.447(4H,m,H−3’,H−4’,H−5’,H−6’),10.15(1H,s,−NH−);
13C−NMR(200MHz,DMSO−d
6)δ:14.69(C−2’’),17.65(2’−
CH
3),59.32(C−1’’),75.24(C−5),86.67(C−3),125.46(C−6’),126.77(C−4’),127.27(C−5’),130.68(C−3’),132.68(C−2’),133.92(C−1’),164.28(C−2),177.60(C−3’’),188.81(C−4)。
【0048】
(D)エチル2−(2’−エトキシカルボニルメチルアニリノ)−4−オキソ−4,5−ジヒドロフラン−3−カルボキシレート(化合物4)の合成
【0049】
(a)エチル2−(2’−アミノフェニル)アセテートの調製
2−(2’−ニトロフェニル)酢酸(18.1g、0.1モル)を95%エタノール溶液(200ml)中に溶解し、8℃の低温度下を保ち、混合溶液を調製するように98%HCl(20ml)をゆっくりとその中へ滴下して加えた。当該混合溶液を1時間攪拌し、加熱し、水浴上で4時間還流し、その後室温下において1から2日間攪拌した。得られた反応溶液の反応が完了しているかどうかの確認は、TLCによって調べた。その後、エタノール溶液を取り除くように、反応溶液を減圧濃縮した。残留物にゆっくりと冷水を加え、CHCl
3によって、何回かにわたって抽出した。得られた抽出物を、乾燥MgSO
4を添加することにより乾燥させ、CHCl
3を取り除くために減圧濃縮し、大きい黄色の凝塊を得た。これは、2−(2’−ニトロフェニル)アセテート(16.9g、生産率81%)である。
【0050】
2−(2’−ニトロフェニル)アセテートを、50mlのエタノールおよび触媒としての10%パラジウム/炭素混合物(1.0g)と共に、強化ガラスフラスコ内に注いだ。さらに、当該反応溶液を、水素添加のための水添器内に配置した。得られた反応溶液の反応が完了しているかどうかの確認は、TLCによって調べた。反応完了後、パラジウム/炭素混合物を取り除くために、反応溶液を濾過し、エタノールが取り除かれるように減圧濃縮を行った。そして、黄褐色の粘性の液体である、エチル2−(2’−アミノフェニル)アセテートを得た。
【0051】
(b)エチル2−(2’−エトキシカルボニルメチルアニリノ)−4−オキソ−4,5−ジヒドロフラン−3−カルボキシレートの調製
乾燥THF(40ml)中においてNaHの懸濁液(60%、8.0g、0.2モル)を調製し、マロン酸ジエチル(32.0g、0.2モル)およびTHF(50ml)を混合したものを当該懸濁液中においてゆっくりと加えて、混合溶液を準備した。その後、混合溶液を10から12℃へと冷却し、THF(100ml)中のClCH
2COCl(11.3g、0.1モル)の溶液を、当該混合溶液に滴下して加えた。そして、混合溶液を10から12℃の低温度下において1時間保ち、温水(40から45℃)によって約1時間温め、次いで10から12℃に冷却した。その後、THF(50ml)中における、ステップ(a)において調製されたエチル2−(2’−アミノフェニル)アセテート(0.1モル)の溶液を、前述の反応溶液に滴下して加え、室温下において1時間攪拌し、水浴上において数時間熱した。得られた反応溶液の反応が完了しているかどうかの確認は、TLCによって調べた。その後、おおよそのTHFを取り除くように、反応溶液を減圧濃縮した。減圧濃縮フラスコ内には、冷水(600ml)を注いだ。そして、減圧濃縮フラスコ内における反応溶液を、CHCl
3によって何回かにわたって抽出した。得られた抽出物を、水によって洗浄し、乾燥MgSO
4により乾燥させ、CHCl
3を取り除くために減圧濃縮を行った。濃縮された溶液は、室温下において結晶化していた。そして、エタノールによって当該結晶を回収および再結晶化させ、13.66gの白色針状結晶を得た。生産率は41%であり、結晶の融点は91.2℃であった。光学スペクトルのデータは次の通りであった。MS(m/z,%):332.8(M
+,35.85),333.8(M
++1,7.73);IR(KBr disc)cm
−1:3121.86(−NH−),1737.28(C8’=O),1698.3(C
4=O),1664.19(C
3−CO−OEt);UVλ
maxnm(MeOH)(logε):291.0(3.825);
1H−NMR(200MHz,DMSO−d
6)δ:1.176(3H,t,J=7Hz,H−10’),1.23(3H,t,166J=7Hz,H−2’’),3.763(2H,s,H−7’),4.049(2H,q,J=7Hz,H−9’),4.192(2H,q,J=7Hz,H−2’’),4.573(2H,s,H−5),7.321〜7.453(4H,m,H−3’,H−4’,H−5’,H−6’),10.115(1H,s,−NH−);
13C−NMR(200MHz,DMSO−d
6)δ:14.09(C−10’),14.65(C−2’’),37.29(C−7’),56.30(C−1’’),60.96(C−9’),75.17(C−5’),86.93(C−3),126.79(C−6’),127.64(C−4’),128.17(C−2’),130.33(C−3’),131.44(C−5’),134.03(C−1’),164.09(C−2),170.88(C−8’),177.90(C−3’’),188.98(C−4)。
【0052】
(E)他のアニリン誘導体(化合物5から10)の合成
化合物1の調製手順において、3’,5’−ジメチルアニリンを、種々の任意のアニリン置換体(0.1モル)に置き換えて繰り返すと、対応する式(I)の化合物(すなわち、表1において示される化合物5から10)が得られた。
【0053】
【化5】
【0054】
【表1】
【0055】
(実施例2)細胞生存率の実施例(MTTアッセイ)
この実施例では、異なる濃度に調製された化合物1において処置された場合、BHK−21細胞、TE671細胞およびRD細胞の生存率に影響を与えるか否かを、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を使用して調べた。BHK−21細胞、TE671細胞およびRD細胞における化合物1の50%細胞毒性(CC50)濃度も算出した。
【0056】
MTTは可溶性のテトラゾリウム塩であり、生細胞中のミトコンドリアの呼吸鎖に影響を与え得る。コハク酸デヒドロゲナーゼ(SDH)およびシトクロムc(cyt c)の反応下では、MTTの構造におけるテトラゾリウムブロミドは代謝還元をおこし、不溶性の紫色の結晶ホルマザンを形成する。従って、(SDHは死細胞からは消え、死細胞ではMTTを還元させることができないため)生成される結晶の量は、直接的に、生細胞の数に正比例する。さらに、ミトコンドリアは環境に対し最も敏感な細胞小器官であり、MTTアッセイは薬剤処置後における細胞生存を分析するためのマーカーとして利用することができる。
【0057】
BHK−21細胞、TE671細胞およびRD細胞を、それぞれ、ウェル当たり3×10
3の初期細胞密度、ウェル当たり2%のFBSを含む100μlのMEM培地において、96ウェル培養プレートを用いて培養した。培養プレートをインキュベーター(37℃、5%CO
2)に入れ、一晩インキュベートした。その後、細胞がプレートに付着した後に、培地を取り除いた。次いで、培養プレートのそれぞれのウェルの中に、新たな培地と化合物1を加えた。化合物1の最終濃度は、それぞれ、約0、2.5、25、125、250および500μMであった。さらに、培養プレートをインキュベーター(37℃、5%CO
2)に入れ、48時間インキュベートした。インキュベート後、培地を取り除き、培養プレートのそれぞれのウェルの中にMTT試薬1を10μl加えて、暗所において4時間静置した。その後、培地を取り除き、培養プレートのそれぞれのウェルの中にMTT試薬2を100μl加えて、暗所において1時間静置した。ELISAによって、570/630nmの波長における、サンプルの吸光度を測定した。結果を
図1Aから
図1Cに示す。
【0058】
図1Aから
図1Cにおいて示されるように、BHK−21細胞における化合物1の50%細胞毒性濃度は、500μMよりも大きかった。さらに、TE671細胞およびRD細胞における化合物1の50%細胞毒性濃度は、それぞれ、189μMおよび222μMであった。これらの結果は、BHK−21細胞、TE671細胞およびRD細胞における化合物1の細胞毒性が、かなり低いということを示している。化合物1は、細胞生存率に悪影響を与えないと考えられる。
【0059】
(実施例3)日本脳炎ウイルス感染誘発性細胞変性効果および誘発性アポトーシスの阻害
(1)BHK−21細胞およびTE671細胞のJEV T1P1感染
BHK−21細胞および/またはTE671細胞を、ウェル当たり3×10
4の初期細胞密度、ウェル当たり2%のFBSを含む1mlのMEM培地において、別々に、24ウェル培養プレートを用いて培養した。細胞をインキュベーター(37℃、5%CO
2)に入れ一晩インキュベートし、細胞がプレートに付着するのを待って、培地を取り除いた。次いで、培養プレートのそれぞれのウェルの中に、2%のFBSを含む新しいMEM培地を同時に加えた。その後、当該細胞を、JEV T1P1ウイルス株に感染させた。なお、BHK−21細胞を感染させるために使用されたJEV T1P1の量は、感染多重度(M.O.I)=0.1であり、TE671細胞を感染させるために使用されたJEV T1P1の量は、M.O.I=0.05であった。その後、それぞれ異なるウェルの中において、異なる濃度の化合物1(最終濃度は、それぞれ、0、2.5、25および125μMである)を加え、培養プレートをインキュベーター(37℃、5%CO
2)内に入れておいた。
【0060】
(2)細胞変性効果試験
上述の実験(1)において示したように、BHK−21細胞をJEV T1P1ウイルス株に48時間および72時間において感染させ、細胞変性効果を撮影によって観察した。また、TE671細胞をJEV T1P1ウイルス株に36時間および48時間において感染させ、細胞変性効果を撮影によって観察した。結果を
図2Aおよび
図2Bにおいて示す。さらに、両方の細胞のウイルス培養液200μlを、それぞれの時点(すなわち、48時間および72時間)において回収し、それらを、実施例4におけるウイルスプラーク試験に利用するために回収しておいた。
【0061】
図2Aにおいて観察されたBHK−21細胞の撮影図によってわかるように、JEV T1P1に48時間において感染させた場合、BHK−21細胞は、明らかに細胞変性効果を示していた。この細胞変性効果は、化合物1(25μM)によって同時に処置していた場合には、有意に減少していた。さらに、感染時間を72時間まで延長させた場合、BHK−21細胞は著しい細胞変性効果を示していた(または死滅さえもしていた)。一方、この細胞変性効果は、化合物1(125μM)によって同時に処置していた場合には、まだ効果的に阻害されていた。
【0062】
図2Bにおいて観察されたTE671細胞の撮影図によってわかるように、JEV T1P1に36時間において感染させた場合、TE671細胞は、明らかに細胞変性効果を示していた。一方、この細胞変性効果は、化合物1(25μM)によって同時に処置していた場合には阻害されていた。さらに、たとえTE671細胞のJEV T1P1ウイルス株感染時間を48時間に延長した場合でも、細胞を化合物1(25μM)によって処置していた場合には、細胞変性効果を未だ阻害することができていた。
【0063】
(3)アポトーシス試験
BHK−21細胞およびTE671細胞を、JEV T1P1ウイルス株を用いて上述の実験(1)の方法で36時間において感染させた後、PBSで洗浄した。その後、PBSを取り除き、それぞれのウェルの中にトリプシン−EDTA(150μl)を加えた。そして、細胞を37℃のインキュベーターにおいて、3分間インキュベートした。その後、EDTAを中和するために、それぞれのウェルの中に1mlのMEM培地を加えた。当該細胞を15mlチューブの中において回収し、遠心分離(2000rpm、3分間)によって沈殿させた。上清を取り除き、チューブ毎に1mlのPBSを加えて細胞を再懸濁し、その後遠心分離(2000rpm、3分間)によって沈殿させた。そして、上清を取り除き、異なるチューブにおける細胞を、種々のFACSチューブに移し、染色した。非染色グループには、500μlの結合バッファーのみを添加した。アネキシンVのみの染色グループでは、10μlのアネキシンおよび490μlの結合バッファーを添加した。PIのみの染色グループでは、10μlのPIおよび490μlの結合バッファーを添加した。当該細胞を、暗所において5から10分間静置し、フローサイトメトリーにより分析した。結果を、
図3A、
図3B、
図4Aおよび
図4Bにおいて示す。
【0064】
図3Aおよび
図3Bにおいて示すように、59.05%のBHK−21細胞が、JEV T1P1に36時間において感染させた後に、後期アポトーシスに入っている。後期アポトーシスに入るBHK−21細胞の割合は、濃度依存的に化合物1によって減少している。この結果は、化合物1が、BHK−21細胞の日本脳炎ウイルス感染誘発性細胞変性効果を阻害する機能を有することを示している。
【0065】
さらに、
図4Aおよび
図4Bにおいて示すように、20.1%のTE671細胞がJEV T1P1に36時間において感染させた後に、後期アポトーシスに入っており、125μlの化合物1を用いて処置することによって、後期アポトーシスに入るTE671細胞の割合を4.7%にまで減少させていた。この結果は、化合物1が、TE671細胞の日本脳炎ウイルス感染誘発性細胞変性効果を阻害する機能を有することを示している。
【0066】
(実施例4)日本脳炎ウイルス複製の阻害(ウイルスプラーク試験)
BHK−21細胞を、ウェル当たり3×10
5の初期細胞密度、ウェル当たり2%のFBSを含む2mlのMEM培地において、6ウェル培養プレートを用いて培養した。当該細胞を、インキュベーター(37℃、5%CO
2)に入れ一晩インキュベートし、細胞がプレートに付着するのを待って培地を取り除いた。その後、上述した実施例3の実験(2)において回収しておいて10
4倍に希釈した上清(48および72時間)200μlを、それぞれのウェルの中に添加した。細胞を、インキュベーター(37℃、5%CO
2)においてインキュベートし、全ての細胞が上清によって覆われるように、15分毎に培養プレートを穏やかに軽くたたいておいた。1時間のインキュベート後、培地を取り除いた。その後、2%のFBSを含む新しいMEM培地(3ml)をそれぞれのウェルの中に加えて、細胞を3日間インキュベートし、その後培地を取り除いた。次いで、それぞれのウェルの中に、ナフトールブルーブラック染料を加えて、室温下において一晩細胞を染色した。その後、細胞を浄水を用いて洗浄し、ウイルス力価を算出するために、ウイルスプラークをカウントした。結果を
図5A、
図5B、
図6Aおよび
図6Bにおいて示す。
【0067】
図5Aおよび
図5Bにおいて示すように、JEV T1P1に感染させたBHK−21細胞を、48時間または72時間において化合物1を用いて処置した後には、BHK−21細胞におけるJEV T1P1の複製は顕著に減少していた。さらに、
図6Aおよび
図6Bにおいて示すように、JEV T1P1に感染させたTE671細胞を、36時間または48時間において化合物1を用いて処置した後にも、TE671細胞におけるJEV T1P1の複製は顕著に減少していた。これらの結果は、化合物1が日本脳炎ウイルス複製を阻害する機能を有しているということを示している。
【0068】
(実施例5)抗ウイルスメカニズム分析
TE671細胞を、ウェル当たり3×10
5の初期細胞密度、ウェル当たり2%のFBSを含む2mlのMEM培地において、6ウェル培養プレートを用いて培養した。当該細胞を、インキュベーター(37℃、5%CO
2)において一晩インキュベートし、細胞がプレートに付着するのを待って培地を取り除いた。その後、2%のFBSを含む新しい1mlのMEM培地を、同時にそれぞれのウェルの中に加えた。当該細胞を、JEV T1P1ウイルス株を用いて感染させ(M.O.I=0.05)、それぞれの異なるウェルの中に、異なる濃度の化合物1を加えた(最終濃度は、それぞれ、0、2.5、25、125および250μMであった)。次いで、細胞をインキュベーター(37℃、5%CO
2)において36時間インキュベートし、上清を取り除き、TE671細胞をPBSを用いて洗浄した。その後、PBSを取り除き、それぞれのウェルの中に150μlのトリプシン−EDTAを加え、37℃のインキュベーターにおいて3分間インキュベートした。そして、EDTAを中和するために、それぞれのウェルの中に1mlのMEM培地を加え、当該細胞を、15mlチューブ内に分けて回収し、遠心分離(2000rpm、3分間)によって沈殿させ、上清を取り除いた。次いで、チューブ毎に1mlのPBSを加えて細胞を再懸濁し、それぞれ1.5mlのマイクロチューブに移し、遠心分離(2000rpm、3分間)によって沈殿させた。その後、上清を取り除き、100μlの放射性免疫沈降バッファー(RIPAバッファー)をそれぞれのウェルの中に添加した。当該細胞を15から30分間4℃において静置して、超音波処理器によって破砕した(レベル3;ON/OFF:2秒/2秒;破砕時間:10秒)。破砕した細胞を遠心分離(2000rpm、3分間)によって沈殿させ、新しいマイクロチューブ内に、上清タンパク質をそれぞれ別々に回収した。次いで、2X SDS−PAGEサンプルローディングバッファー(100μl)を、それぞれのマイクロチューブ内に加えた。そして、当該マイクロチューブを100℃の乾燥浴インキュベーターにおいて5分間熱し、素早く氷上に置き、最後に−20℃において保存しておいた。
【0069】
上記のタンパク質サンプルを、タンパク質電気泳動によって分析した。まず、ガラスプレートおよびゲルアセンブリラックを作製した。所望のゲル濃度に従って調製された分離ゲルをその中へ注ぎ、75%エタノールを使用することにより平坦にプレスした。分離ゲルがポリマー化した後に、エタノールを注ぎ出し、予め調製しておいた4%スタッキングゲルを、その中へと注いだ。その後、サンプルウェルコームを差し込んだ。スタッキングゲルがポリマー化した後、サンプルウェルコームを取り外した。そして、電気泳動装置において、ゲルラックを配置し、1Xランニングバッファーを電気泳動装置内に注いだ。ウェルの中にマーカー(3.5μl)を注入し、他のウェルの中にはそれぞれのタンパク質サンプル10μlを注入し、電気泳動を開始した(電圧:60ボルト(V);時間:30分間)。青色色素が分離ゲルに入り、マーカーが分離するまでは、電圧は120Vとしておいた。電気泳動は、1.5時間続けた。青色色素がゲルの一番下に移動するのを待って、スタッキングゲルを切り出した。次いで、タンパク質転写を行った。
【0070】
予め準備しておいた発泡ゴム、ニトロセルロース膜、3Mろ紙および上記の電気泳動ゲルを、転写バッファー内に浸漬した。その後、1つの発泡ゴム、2つの3Mろ紙、1つのニトロセルロース膜、電気泳動ゲル、2つの3Mろ紙および1つの発泡ゴムを、陽極から陰極へと順に配置した。圧縮することによって、それぞれの層の間における気泡を慎重に取り除いた。電気プレートを密閉し、ウェット転写タンク(Bio−Rad)を入れ、タンパク質の転写を行った(4℃、90V、400mA、90分間)。最終的に、ニトロセルロース膜へタンパク質が転写された後には、ウェスタンブロッティングを行った。当該ニトロセルロース膜を1%のBSAを含むブロックバッファー中に浸漬し、室温下において1から1.5時間振とうした。次いで、一次抗体(抗体の説明書により推奨されている濃度となるように、1%のBSAを含み希釈したもの)を膜上において添加し、反応させるために4℃において一晩振とうした。その後、一次抗体を回収した。当該膜を、シェーカー(振とう器)において3回、それぞれの回において20分間、1X TBSTを用いて洗浄した。そして、二次抗体を膜上において添加し、反応させるために室温下において2時間振とうした。その後、膜をシェーカーにおいて3回、それぞれの回において20分間、1X TBSTを用いて洗浄した。ECLの呈色剤(試薬1:試薬2=1:1)を混合し、膜上において添加した。膜をすぐにカゼイン酸塩に入れて、タンパク質シグナルを暗室においてX線フィルムにより現させた。結果を
図7において示す。
【0071】
図7において示すように、TE671細胞がJEV T1P1に感染した後には、TE671細胞における、JAK−STATシグナル伝達経路関連タンパク質、AkT−mTORシグナル伝達経路関連タンパク質、およびERK−CREBシグナル伝達経路関連タンパク質のリン酸化レベルが、顕著に減少していた。JEV T1P1感染誘発性のシグナル伝達経路リン酸化レベルは、化合物1の同時処置によって、濃度依存的に増加していた。この結果は、化合物1は抗ウイルスメカニズムを活性化する機能を有するということを示している。
【0072】
(実施例6)抗ウイルス遺伝子発現の分析
TE671細胞を、当該実験条件に従って、6ウェル培養プレートにおいて培養した。翌日、TE671細胞をJEV T1P1ウイルス株に感染させ(M.O.I=1)、様々な濃度の化合物1(化合物1の最終濃度は、それぞれ、約0または125μMである)を、同時に異なるウェルの中において添加した。そして、細胞をインキュベーター(37℃、5%CO
2)に入れて8時間インキュベートし、回収した。当該細胞を、PBSを用いて再懸濁し、遠心分離(2000rpm、5分間)によって沈殿させ、RNAを得るために、Pure Link(商標)RNA Mini Kitによって抽出した。ここで、得られたRNAについて、−20℃での保存を所望する場合、RNAを、後記の逆転写PCR(RT−PCR)ステップを利用してcDNAへと逆転写しておかなければならない。逆転写PCR(RT−PCR)ステップ:i)11μlのRNAをマイクロチューブに注入し、55℃のPCR装置内へと配置し、15分間保つ;ii)1μlのdNTPおよびオリゴdTを添加し、65℃において10分間保つ;iii)2μlのDTTおよび4μlの5X ファーストストランド(第1鎖)バッファーを添加し、42℃において1分間保つ;iv)1μlのスーパースクリプトIVトランスクリプターゼ(転写酵素)を添加し、42℃において62分間保つ;v)反応を停止させるために(すなわち、スーパースクリプトIVトランスクリプターゼの活性を失わせるために)、72℃において15分間保っておく。このステップから得たcDNAは、−20℃において保存され得る。
【0073】
抗ウイルス遺伝子の発現をリアルタイムPCRによって分析した。cDNA混合物を、次のような量において8流路のマイクロPCRチューブの中に分注した。SYBRグリーン(12.5μl)、フォワードプライマー(1μl)、リバースプライマー(1μl)、MgCl
2(1μl)、ddH
2O(4.5μl)およびcDNA(5μl)。そして、このcDNA混合物を、RT−PCR装置内に設置した。反応条件は、次の通りに設定した。i)95℃、15分間;ii)95℃において15秒間、および60℃において1分間。この条件下で、40サイクル行った。そして、各サイクルの蛍光量を、ABIプリズム7500ソフトウェアによって決定した。コントロール(control)グループと比較したそれぞれの遺伝子の相対差は、Ctを使用して、ΔCtおよびΔΔCtを計算した(すなわち、ΔCt=Ct.exp−Ct.control、ΔΔCt=ΔCt.exp−ΔCt.mock)。それによって、2
−ΔΔCtを計算することができる。結果を、
図8Aから
図8Eにおいて示す。
【0074】
図8Aから
図8Eにおいて示すように、化合物1の処置によって、JEV T1P1感染TE671細胞における、PKR、OAS、IFN−αおよびインターフェロン受容体の相対遺伝子発現レベルを増加させることができる。この結果は、化合物1がウイルス感染細胞について抗ウイルス遺伝子の発現を促進させる機能を有していることを示している。
【0075】
(実施例7)デングウイルス感染誘発性細胞変性効果の阻害
BHK−21細胞を、ウェル当たり3×10
4の初期細胞密度、ウェル当たり2%のFBSを含む1mlのMEM培地において、24ウェル培養プレートを用いて培養した。当該細胞をインキュベーター(37℃、5%CO
2)において一晩インキュベートし、細胞がプレートに付着するのを待って、培地を取り除いた。その後、培養プレートのそれぞれのウェルの中に、2%のFBSを含む新しい1mlのMEM培地を同時に加えた。そして、当該細胞をDEN2ウイルス株に感染させ(M.O.I=0.1)、異なるウェルの中に、異なる濃度の化合物1(最終濃度は、それぞれ、0、2.5および25μMである)を加えた。その後、BHK−21細胞をインキュベーター(37℃、5%CO
2)において72時間インキュベートし、それらの形態を撮影によって観察した。
【0076】
図9において示すように、72時間においてDEN2を感染させた全てのBHK−21細胞は、細胞変性効果が見られた。しかし、化合物1(25μM)の同時処置によって、細胞変性効果は効果的に阻害されていた。
【0077】
(実施例8)デングウイルス複製の阻害
Huh7細胞を、ウェル当たり3×10
4の初期細胞密度、ウェル当たり2%のFBSを含む1mlのMEM培地において、24ウェル培養プレートを用いて培養した。当該細胞をインキュベーター(37℃、5%CO
2)において一晩インキュベートし、細胞がプレートに付着するのを待って、培地を取り除いた。その後、培養プレートのそれぞれのウェルの中に、2%のFBSを含む新しい1mlのMEM培地を同時に加えた。そして、当該細胞をDEN2ウイルス株に感染させ(M.O.I=0.5)、異なるウェルの中に、異なる濃度の化合物1(最終濃度は、それぞれ、0、10、50、100および150μMである)を加えた。その後、培養プレートをインキュベーター(37℃、5%CO
2)内に入れ、そのまま48時間保った。そして、ウイルス培養液の上清を回収した。
【0078】
上記において得られた上清を、ウイルス培養液におけるDEN2 NS1タンパク質レベルを定量するために、抗原補足酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって分析した。まず、96ウェルマイクロ反応プレートのそれぞれのウェルの中にNS1抗体を添加し、4℃において一晩反応させた(200μl/ウェル)。その後、それぞれのウェルをPBSTを用いて3回洗浄した(200μl/回)。1%のBSAを含むブロッキングバッファー(300μl)をそれぞれのウェルの中に添加し、室温下において1時間反応させ、その後ブロッキングバッファーを取り除いた。順次希釈した組み換えNS1タンパク質(rNS1)、および95℃において3分間変性させた上清200μlを、それぞれのウェルの中へ添加した。反応は、室温下において1時間行い、全ての液体を取り除いた。次いで、ビオチンを結合させた抗NS1ウサギポリクローナル抗体をそれぞれのウェルの中に添加し、室温下において1時間反応させた。その後、それぞれのウェルを、200μlのPBSTを用いて3回洗浄した。次いで、ストレプトアビシン−HRPをそれぞれのウェルの中へ添加し(200μl/ウェル)、室温下において20分間反応させた。その後、それぞれのウェルをPBSTを用いて3回洗浄した(200μl/回)。最後に、TMB(200μl/ウェル)を加え、呈色反応のために室温下において10分間静置し、その後反応を停止させるため、H
2SO
4(2N、100μl/ウェル)を加えた。DEN2複製を評価するために、それぞれの上清中におけるDEN NS1タンパク質量の読取値を、450nmの波長の吸光度を調べることによって測定した。結果を、
図10において示す。
【0079】
図10において示すように、10μlの化合物1で処置することによって、DEN2 NS1タンパク質レベルは減少している。この結果は、化合物1がウイルス感染細胞におけるデングウイルス複製を効果的に減少させることができるということを示している。
【0080】
(実施例9)エンテロウイルス感染誘発性細胞変性効果の阻害
RD細胞を、ウェル当たり3×10
4の初期細胞密度、ウェル当たり2%のFBSを含む1mlのMEM培地において、24ウェル培養プレートを用いて培養した。当該細胞を、インキュベーター(37℃、5%CO
2)において一晩インキュベートした。培地を取り除き、その後、それぞれのウェルの中に、2%のFBSを含む新しい1mlのMEM培地を同時に加えた。RD細胞をEV71ウイルス株に感染させ(M.O.I=0.1)、異なるウェルの中に、異なる濃度の化合物1(最終濃度は、それぞれ、0、2.5、25および125μMである)を加えた。その後、当該RD細胞をインキュベーター(37℃、5%CO
2)内において36時間インキュベートし、それらの形態を撮影によって観察した。
【0081】
図11において示すように、36時間にわたってEV71を感染させた全てのRD細胞において、細胞変性効果が見られた。しかし、化合物1(125μM)の同時処置によって、細胞変性効果は効果的に阻害されていた。
【0082】
(実施例10)エンテロウイルス複製の阻害
RD細胞を、ウェル当たり3×10
4の初期細胞密度、ウェル当たり2%のFBSを含む1mlのMEM培地において、24ウェル培養プレートを用いて培養した。当該細胞を、インキュベーター(37℃、5%CO
2)において一晩インキュベートした。培地を取り除き、その後、それぞれのウェルの中に、2%のFBSを含む新しい1mlのMEM培地を同時に加えた。RD細胞をEV71ウイルス株に感染させ(M.O.I=0.1)、異なるウェルの中に、異なる濃度の化合物1(最終濃度は、0、2.5、25および125μMである)を加えた。その後、当該RD細胞をインキュベーター(37℃、5%CO
2)内において36時間インキュベートし、続くプラーク試験のためにウイルス培養液を回収しておいた。
【0083】
RD細胞を、6ウェル培養プレートを用いて培養し、インキュベーター(37℃、5%CO
2)において一晩インキュベートした。培地を取り除き、その後、上記において回収したものを10
4倍に希釈したウイルス培養液200μlを、それぞれのウェルの中に添加した。そして、細胞を1時間において感染させた。それぞれのウェルの中に、3%のアガロースの被覆溶液3mlを加え、細胞をインキュベーター(37℃、5%CO
2)において3日間インキュベートし、その後被覆溶液を取り除いた。それぞれのウェルの中にメチルブルーを加え、プレートを室温下において一晩置き、その後、浄水を用いて洗浄し乾燥させた。ウイルス力価および阻害率を算出するために、プラークの数をカウントした。結果を、
図12Aおよび
図12Bにおいて示す。
【0084】
図12Aおよび
図12Bにおいて示すように、2.5、25および125μMの化合物1において処置したRD細胞におけるEV71複製の阻害率は、それぞれ、4.6%、23%および24.6%であった。この結果は、化合物1が宿主細胞におけるエンテロウイルスの複製を大いに減少させることができるということを示している。
【0085】
(実施例11)インターフェロンの同時使用による、エンテロウイルス感染誘発性細胞変性効果の阻害
RD細胞を、ウェル当たり3×10
4の初期細胞密度、ウェル当たり2%のFBSを含む1mlのMEM培地において、24ウェル培養プレートを用いて培養した。当該細胞を、インキュベーター(37℃、5%CO
2)において一晩インキュベートした。その後、細胞がプレートに付着するのを待って、培地を取り除いた。それぞれのウェルの中に、2%のFBSを含む新しい1mlのMEM培地を同時に加えた。RD細胞をEV71ウイルス株に感染させ(M.O.I=0.1)、異なるウェルの中に、異なる濃度の化合物1(最終濃度は、0、2.5、25および125μMである)、および/または、IFN−β(最終濃度は、0および100ユニット/mlである)を、別々に加えた。当該RD細胞をインキュベーター(37℃、5%CO
2)内において36時間インキュベートし、その後、それらの形態を撮影によって観察した。結果を、
図13および表2において示す。さらに、それぞれのウェルから200μlのウイルス培養液を回収し、実施例12のウイルスプラーク試験を行うために、−80℃において保存しておいた。
【0086】
図13および表2において示すように、36時間においてEV71を感染させた全てのRD細胞は、細胞変性効果が見られ、細胞生存率はわずか5.01%となる。しかし、化合物1および100ユニット/mlのIFN−βの組み合わせの処置によって、細胞変性効果は効果的に阻害され得る。さらに、細胞生存率は、化合物1の量の増加に伴って増加していた。例えば、細胞を125μMの化合物1において処置した場合、83.3%の細胞生存率を提供することができる。この結果は、化合物1およびインターフェロンの組み合わせが、エンテロウイルス感染誘発性細胞変性効果の阻害において、相乗効果を生じ得るということを示している。
【0087】
【表2】
【0088】
(実施例12)インターフェロンを同時に使用することによる、エンテロウイルス複製の阻害
RD細胞を、ウェル当たり3×10
4の初期細胞密度、ウェル当たり2%のFBSを含む1mlのMEM培地において、24ウェル培養プレートを用いて培養した。当該細胞を、インキュベーター(37℃、5%CO
2)において一晩インキュベートした。培地を取り除き、その後、上記において回収したものを10
4倍に希釈したウイルス培養液200μlを、それぞれのウェルの中に添加した。そして、細胞を1時間において感染させた。それぞれのウェルの中に、3%のアガロースの被覆溶液3mlを加え、細胞をインキュベーター(37℃、5%CO
2)において3日間インキュベートし、その後被覆溶液を取り除いた。それぞれのウェルの中にメチルブルーを加え、プレートを室温下において一晩置き、その後、浄水を用いて洗浄し、乾燥させた。ウイルス力価および阻害率を算出するために、プラークの数をカウントした。結果を、
図14において示す。
【0089】
図14において示すように、化合物1(125μM)およびIFN−β(100ユニット/ml)の組み合わせにより引き起こされた、RD細胞におけるEV71複製の阻害率は、78%であった(すなわち、100%×(10
9.1−10
8.45)/10
9.1=78%)。この結果は、化合物1とインターフェロンとの組み合わせは、宿主細胞におけるエンテロウイルスの複製の減少において、相乗効果を生じ得るということを示している。
【0090】
上述の実施例は、本発明の原理および有効性を説明するために使用されるものにすぎず、本発明を限定するようには使用されない。本技術分野における当業者であれば、記載されている本発明の開示および示唆に基づいて、技術的原理およびその精神から逸脱することなく、種々の変形および代替を用いて実施し得るだろう。そのため、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲において規定されているものである。
【0091】
(関連する出願)
本出願は、台湾特許出願103100064(出願日2014年1月2日)に基づく優先権を主張しており、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。