(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873903
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】携帯用電源バッグ
(51)【国際特許分類】
H01M 2/10 20060101AFI20160216BHJP
A45F 3/04 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
H01M2/10 U
A45F3/04 300
H01M2/10 E
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-159710(P2014-159710)
(22)【出願日】2014年8月5日
(62)【分割の表示】特願2010-82938(P2010-82938)の分割
【原出願日】2010年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-3045(P2015-3045A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】森 亮太
(72)【発明者】
【氏名】蜂須賀 智弘
【審査官】
米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−212990(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/063143(WO,A1)
【文献】
特開2009−039841(JP,A)
【文献】
実開平03−062783(JP,U)
【文献】
実開平07−003983(JP,U)
【文献】
国際公開第2006/090542(WO,A1)
【文献】
特開2006−122543(JP,A)
【文献】
特開2005−058582(JP,A)
【文献】
実開平03−094127(JP,U)
【文献】
実開昭50−153016(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用電源バッグであって、
左右一対の肩ベルトを備えたバックプレートの前面にクッション部が設けられ、リチウムイオン電池を用いた充電式電動工具用のバッテリーパックと、そのバッテリーパックが着脱可能に電気的接続される装着ユニットとが収容される一方、
前記クッション部が所定の間隔をおいて複数設けられて、
前記肩ベルトは、正面視で上側が左右外側へ膨らみ、下側が左右内側へ膨らむ左右鏡面対称のS字状に形成されると共に、各前記肩ベルトは、上端が前記バックプレートの上辺外寄りにそれぞれ繋がれ、下端が前記上端と同じ側の側辺下側にそれぞれ繋がれることを特徴とする携帯用電源バッグ。
【請求項2】
携帯用電源バッグであって、
左右一対の肩ベルトを備えたバックプレートの前面にクッション部が設けられ、リチウムイオン電池を用いた充電式電動工具用のバッテリーパックと、そのバッテリーパックが着脱可能に電気的接続される装着ユニットとが収容される一方、
前記クッション部が所定の間隔をおいて複数設けられて、
前記バックプレートの前面下部に、前記バックプレートから先端部へ向かってテーパ状に幅が小さくなる左右方向の腰ベルトが設けられることを特徴とする携帯用電源バッグ。
【請求項3】
前記クッション部を上下方向に配列したことを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯用電源バッグ。
【請求項4】
前記クッション部を左右対称に配列したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の携帯用電源バッグ。
【請求項5】
前記バックプレートの前面下部に、左右方向の腰ベルトを、その中央部の少なくとも上下何れか一方の端部のみを前記バックプレートと連結させて設けたことを特徴とする請求項1に記載の携帯用電源バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剪定バサミや生垣バリカン等の充電式電動工具の電源として利用する携帯用電源バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
剪定バサミや生垣バリカン等の充電式電動工具においては、作業者の負担を軽減して操作性を良好とするために、電源となるバッテリーパックを工具本体と別体にして作業者が携帯可能とし、バッテリーパックと電動工具とを中継コードで接続して電源を得る形態が知られている。例えば特許文献1には、複数のニッケル−カドミウム電池を直列接続する組電池を収容したケースの上部に、制御回路を収容した第二ケースを着脱可能に結合すると共に、各ケースの端縁部にベルトの通し穴を形成して、通し穴の選択によって腰での携帯や背中での携帯を可能としたバッテリーパックが開示されている。また、特許文献2にも、内部に複数の蓄電池を備えたケースにショルダーバンドを結合して背中での携帯を可能とした携帯用電源が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−164182号公報
【特許文献2】実開平4−101357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のバッテリーパックや携帯用電源は、何れもハードケースで形成されているため、携帯した際の体へのフィット感が不十分で、長時間の使用の際には使用感が悪くなるおそれがある。
ところで、二次電池としては、従来のニッケル−カドミウム電池等に代わり、同じ容量で小型且つ軽量化でき、さらにはメモリー効果が小さく自己放電特性も良好なリチウムイオン電池が普及している。しかし、充電式電動工具においてはリチウムイオン電池を工具本体に直接装着するバッテリーパックとして使用する形態が一般的で、別体の携帯用電源としては用いられていない。従って、充電式電動工具でも小型で軽量のリチウムイオン電池を携帯用電源として利用できれば作業性の向上に繋がる。
【0005】
そこで、本発明は、携帯の際のフィット感が良好となって使用感に優れ、而もリチウムイオン電池を充電式電動工具の携帯用電源として好適に利用できる携帯用電源バッグを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、携帯用電源バッグであって、左右一対の肩ベルトを備えたバックプレートの前面にクッション部
が設けられ、リチウムイオン電池を用いた充電式電動工具用のバッテリーパックと、そのバッテリーパックが着脱可能に電気的接続される装着ユニットと
が収容される一方、クッション部
が所定の間隔をおいて複数
設けられて、肩ベルトは、正面視で上側が左右外側へ膨らみ、下側が左右内側へ膨らむ左右鏡面対称のS字状に形成されると共に、各肩ベルトは、上端がバックプレートの上辺外寄りにそれぞれ繋がれ、下端が当該上端と同じ側の側辺下側にそれぞれ繋がれることを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、
携帯用電源バッグであって、左右一対の肩ベルトを備えたバックプレートの前面にクッション部が設けられ、リチウムイオン電池を用いた充電式電動工具用のバッテリーパックと、そのバッテリーパックが着脱可能に電気的接続される装着ユニットとが収容される一方、クッション部が所定の間隔をおいて複数設けられて、バックプレートの前面下部に、バックプレートから先端部へ向かってテーパ状に幅が小さくなる左右方向の腰ベルトが設けられることを特徴とするものである。
請求項
3に記載の発明は、請求項1
又は2の構成において、クッション部を上下方向に配列したことを特徴とするものである。
請求項
4に記載の発明は、請求項1
乃至3の何れかの構成において、クッション部を左右対称に配列したことを特徴とするものである。
請求項
5に記載の発明は、請求項
1の構成において、バックプレートの前面下部に、左右方向の腰ベルトを、その中央部の少なくとも上下何れか一方の端部のみをバックプレートと連結させて設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1
及び2に記載の発明によれば、バックプレートがあっても携帯の際のフィット感が良好となり、バッテリーパック等の重量による作業者への負荷が軽減されて使用感に優れる。また、リチウムイオン電池を用いた既存のバッテリーパックを充電式電動工具の携帯用電源として好適に利用できる。
さらに、クッション部を所定の間隔をおいて複数設けているので、バックプレートと背中との間での通気性が確保される。
特に、請求項1に記載の発明によれば、上記効果に加えて、肩ベルトを左右鏡面対称のS字状に形成したことで、肩ベルトが作業者の肩にフィットしてずれにくくなる。
請求項
3に記載の発明によれば、請求項1
又は2の効果に加えて、クッション部を上下方向に配列しているので、背中に沿ってクッション部が当接して使用感がより良好となる。
請求項
4に記載の発明によれば、請求項1
乃至3の何れかの効果に加えて、クッション部を左右対称に配列しているので、クッション部が背中の左右にバランス良く当接して携帯した際の安定性が高まる。また、背骨を避けてクッション部が当接する格好となるので、フィット感はより良好となる。
請求項
5に記載の発明によれば、請求項
1の効果に加えて、腰ベルトの部分でもバックプレートとの間で通気性が得られると共に、フィット感の向上も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】携帯用電源バッグを携帯した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1、2に、携帯用電源バッグ(以下単に「電源バッグ」という。)の一例を示す。この電源バッグ1は、キャンバス生地やナイロン生地等を用いた布製である。まず電源バッグ1は、縦長の矩形状を呈し、内部に芯材となる略同形状の硬質プレートを有するバックプレート2を備え、そのバックプレート2の背面下部に、左右面及び上面に亘って設けられたファスナ4によって後面が開閉可能なバッグ部3が設けられている。また、バックプレート2の上端から左右の側縁下側に掛けて、前面側へ突出する左右一対の肩ベルト5,5が架設されている。この肩ベルト5,5は、正面視で上側が左右外側へ膨らみ、下側が左右内側へ膨らむ左右鏡面対称のS字状に形成されている。
【0010】
6は、バックプレート2の前面下部へ直交状に連結された腰ベルトで、この腰ベルト6は、中央部における幅方向の上下端(
図1のP1,P2位置)のみが、左右方向の所定長さの縫製によってバックプレート2と固定されている。腰ベルト6は、通気性のよいメッシュ構造で、その両端には、雄部材7と雌部材8とによって互いに結合可能なバックルが設けられている。
また、バックプレート2の前面で腰ベルト6の上方には、正面視が長円状となる4つのクッション部9,9・・が、左右及び上下に所定の間隔をおいて左右対称に配置されている。このクッション部9は、内部にウレタン等の弾性材が充填されて前後方向に弾性を備えている。
【0011】
一方、バック部3内には、バッテリーパック10が収容されている。このバッテリーパック10は、インパクトドライバやハンマードリル等の充電式電動工具のハウジングに直接装着して使用される市販品で、
図3に示すように、複数のリチウムイオン電池を収容した四角箱状のパック本体11の上面に、充電式電動工具への装着部12が形成されている。この装着部12は、長手方向の側辺に沿って形成した一対のレール13,13の間に、図示しない正負の端子を備えたもので、充電式電動工具のハウジングに設けられた一対のガイドレール間にレール13,13を嵌合させてスライドさせることで、ハウジングへの装着と同時に正負の端子がガイドレール間に設けた正負の端子板と電気的接続する構造となっている。
【0012】
よって、バッグ部3内にも、充電式電動工具のハウジングと同じ形態でガイドレール及び端子板を備えた装着ユニット14が設けられて、バッテリーパック10がスライド装着されている。
15は、装着ユニット14の端子板と図示しないリード線によって電気的接続されるコントローラで、側面にバッテリーパック10からの電源を出力可能な出力端子16を備えると共に、図示しないスイッチが設けられて、スイッチの操作により、装着ユニット14を介して接続されたバッテリーパック10から出力端子16への電源供給を任意にON/OFF可能としている。
【0013】
また、バッグ部3内でバッテリーパック10の上側には、ファスナによって開閉可能なポケット17が設けられて、ここに予備のバッテリーパック10が収容されている。
このように、バッグ部3内にはバッテリーパック10等の電気関係の構成部が収容されることで、バッグ部3のファスナ4には、止水加工が施された防水ファスナが採用されている。
【0014】
以上の如く構成された電源バック1は、肩ベルト5,5を左右の肩にそれぞれ掛けて背負うと共に、腰ベルト6を腰に回してバックルで固定すれば、
図4に示すように作業者が背負うことができる。よって、出力端子16に中継コード18を介して充電式電動工具(ここでは剪定バサミ19を例示している。)を接続してコントローラ15のスイッチをONすれば、バッテリーパック10から電源を得て剪定バサミ19による作業を行うことができる。なお、肩ベルト5,5の前面には、中継コード18の通し部20がそれぞれ設けられており、ここに中継コード18を通すことで、中継コード18を下方へ垂れさせずに保持することができ、中継コード18が作業の邪魔にならないようになっている。
【0015】
また、
図5に示すように、携帯時はクッション部9が作業者の背中に当接して弾性変形するので、バックプレート2が作業者の体にフィットしてずれ等が抑制されると共に、重量による負荷も緩和される。
さらに、クッション部9,9の間に形成された上下及び左右方向の隙間と、クッション部9の当接によってバックプレート2と背中との間に生じる隙間とにより、接触面積が小さくなって通気性が保たれるので、背中に熱がこもらずに蒸れも抑えられる。
そして、腰ベルト6を装着した状態では、
図5に示すように、上下端のみが固定される腰ベルト6は作業者の腰に沿って湾曲するため、平面形状を維持するバックプレート2との間に隙間Sを生じさせる。よって、腰ベルト6の部分でもバックプレート2との間で通気性が得られる。特に、この態様によって腰ベルト6がバックプレート2の平面形状に束縛されず、作業者の体型に合わせて変形しやすくなるため、フィット感の向上にも繋がる。
【0016】
一方、ここでは腰ベルト6に剪定バサミ19を収納するホルスタ21が吊り下げられている。このホルスタ21は、剪定バサミ19を刃先を下にして差し込み収納可能な袋状で、上端の開口側に設けた吊り下げバンド22に腰ベルト6を通すことで吊り下げ支持可能となっている。
また、このホルスタ21は、開口が真上を向く鉛直姿勢ではなく、吊り下げバンド22に対して開口が斜め後方を向く傾斜姿勢(好ましくは鉛直方向に対して20度〜30度の傾斜)で固定されている。これにより、剪定バサミ19のような全体がストレート形状の充電式電動工具の抜き差しがしやすくなり、作業を中断する際の一時置き場所として好適に利用できる。
【0017】
このように、上記形態の電源バッグ1によれば、左右一対の肩ベルト5,5を備えて内部に硬質プレートを有するバックプレート2の背面に、開閉可能なバッグ部3を設ける一方、バックプレート2の前面にクッション部9を設け、バッグ部3に、リチウムイオン電池を用いたバッテリーパック10と、そのバッテリーパック10が着脱可能に電気的接続される装着ユニット14と、その装着ユニット14と電気的接続され、バッテリーパック10からの電源の出力端子16及び出力端子16からの電源供給をON/OFF可能なスイッチを備えたコントローラ15とを収容したことで、バックプレート2があっても携帯の際のフィット感が良好となり、バッテリーパック10等の重量による作業者への負荷が軽減されて使用感に優れる。また、リチウムイオン電池を用いた既存のバッテリーパック10を剪定バサミ19のような充電式電動工具の携帯用電源として好適に利用できる。
【0018】
特にここでは、クッション部9を、所定の間隔をおいて複数設けているので、バックプレート2と背中との間での通気性が確保される。
また、クッション部9を上下方向に配列しているので、背中に沿ってクッション部9が当接して使用感がより良好となる。
さらに、クッション部9を左右対称に配列したことで、クッション部9が左右にバランス良く当接して携帯した際の安定性が高まる。また、背骨を避けてクッション部9が当接する格好となるので、フィット感はより良好となる。
【0019】
一方、バックプレート2の前面下部に、左右方向の腰ベルト6を、その中央部の上下の端部のみをバックプレート2と連結させて設けているので、腰ベルト6の部分でもバックプレート2との間で通気性が得られると共に、フィット感の向上も期待できる。
また、肩ベルト5,5を、正面視で上側が左右外側へ膨らみ、下側が左右内側へ膨らむ左右鏡面対称のS字状に形成したことで、肩ベルト5が作業者の肩にフィットしてずれにくくなる。
【0020】
なお、クッション部の数や配置は上記形態に限らず、数や列を上下左右で増やしたりして差し支えない。また、クッション部を全て同じ向きや形状とする必要はなく、例えば下側のクッション部を横向きとしたり、下方へ行くほど小さくしたりする変更も考えられる。
さらに、バッグ部の形態も、ファスナの配置の変更が可能であるのは勿論、ファスナに代えてボタンや紐等で開閉可能な蓋体を設けたりしてもよい。勿論バッグ部内でのバッテリーパック等の配置も適宜変更可能で、コントローラに装着ユニットを一体化したり、ポケットを省略したりすることも可能である。加えて、バッグ部内にバッテリーパックやコントローラの収容部ごとに仕切を設けたりしても差し支えない。さらにはコントローラをバッグ部に収容せず、バッグ部の外で腰ベルト等を利用して体の側方で別に携帯させたりすることも可能である。
【0021】
そして、肩ベルトや腰ベルトの形態も適宜変更できる。特に腰ベルトは、上記形態では中央部の上下端部をバックプレートと連結させているが、上下何れか一方の端部のみをバックプレートと連結させるようにしても、同様に良好な通気性とフィット感とが得られる。
また、ホルスタは作業者の左右何れに吊り下げ支持させてもよいし、左右両方に吊り下げ支持させてもよい。勿論省略することは可能である。
その他、充電式電動工具としては剪定バサミに限らず、生垣バリカンや草刈り機等の園芸用の工具の他、インパクトドライバやハンマードリル等の他の種類の工具であっても本発明の電源バッグは使用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1・・携帯用電源バッグ、2・・バックプレート、3・・バッグ部、4・・ファスナ、5・・肩ベルト、6・・腰ベルト、9・・クッション部、10・・バッテリーパック、12・・装着部、14・・装着ユニット、15・・コントローラ、16・・出力端子、17・・ポケット、18・・中継コード、19・・剪定バサミ、21・・ホルスタ。