特許第5873904号(P5873904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5873904
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】レストレスレッグス症候群改善用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20160216BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20160216BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20160216BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20160216BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20160216BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   A61K35/747
   A61K35/745
   A61K35/744
   A61K35/74 A
   A61P25/08
   A61P25/14
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-162107(P2014-162107)
(22)【出願日】2014年8月8日
【審査請求日】2014年8月12日
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-11332
(73)【特許権者】
【識別番号】391004126
【氏名又は名称】株式会社キティー
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100107168
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 徹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 樹
(72)【発明者】
【氏名】飛田 啓輔
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−209132(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/114645(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・プランタラム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム又はエンテロコッカス・フェカリスのいずれかの菌体または菌体の培養物を、有効成分として含有することを特徴とするレストレスレッグス症候群の改善用組成物。
【請求項2】
上記ラクトバチルス・クリスパタスが、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)KT-11株(FERM BP-11332)である請求項1のレストレスレッグス症候群の改善用組成物。
【請求項3】
上記菌体の培養物の培養基材が大麦エキスである請求項1または2のレストレスレッグス症候群の改善用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌または乳酸菌を接種して培養した培養物からなるレストレスレッグス症候群を改善するためのきわめて副作用の少ない組成物ならびに、それを含む食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レストレスレッグス症候群(Restless Legs Syndrome)は、ウィリス・エクボム病、下肢静止不能症候群とも呼ばれ、従来はむずむず脚症候群とも呼ばれていた。レストレスレッグス症候群は欧米で10%程度、日本では2%から5%の人が罹患している一般的な疾病である。レストレスレッグス症候群の症状は主に下肢に現れ、むずむずする、虫が這っているような、痒い、痛いなどの感覚を覚える。これらの症状は時に腰背部や腕など全身にも現れる。症状は運動やさすったりすることによって一時的に緩解することがあるが、患者は下肢や身体を動かしたいという耐えがたい衝動にかられる。特に夕方から夜にかけて症状が起こるが、昼間の安静時にも増悪するので、椅子に座っている時やじっとした姿勢をとることができなくなり、患者は日常生活や仕事に支障をきたすこともある。
【0003】
レストレスレッグス症候群の原因は、鉄欠乏や神経伝達物質であるドパミンの中枢での分泌障害が知られている(非特許文献1 J Neurol 2009;256:539-553)。
【0004】
そのため、レストレスレッグス症候群の治療薬物としては、ドパミン作動薬であるドパミンアゴニスト(プラミペキソール塩酸塩・ロピニロール・タリペキソール・カベルゴリン)やレボドパ製剤が有効とされている(特許文献1)。他に、ベンゾジアゼピン系鎮静剤やGABA誘導剤(特許文献2)、オピオイド、鉄材、アデノシンA2A受容体拮抗薬(特許文献3)などの薬物が治療へ用いられている。
【0005】
しかしながら、これらの薬物には吐き気、突発的睡眠、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、便秘、幻覚、妄想、せん妄、激越、錯乱、悪性症候群、間質性肺炎、胸膜炎、胸水、胸膜線維症、肺線維症、心膜炎、心嚢液貯留、心臓弁膜症、横紋筋融解症などの副作用が知られるなど、必ずしも安全であるとはいえない問題がある。
【0006】
このように薬物によってドパミンの中枢神経での遊離を促進することでレストレスレッグス症候群は改善されるが、重大な副作用を生じる可能性がある事を踏まえると、副作用のリスクがなく安全に投与できる組成物が利用可能であることが望ましい。
【0007】
しかし今までに天然物由来のレストレスレッグス症候群の改善効果を有する成分、食品は報告されていない。さらに乳酸菌の菌体または乳酸菌を接種して培養した培養物を、有効成分として含有することを特徴とするレストレスレッグス症候群の改善用組成物は知られていない。
【0008】
さらに本発明記載のラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)KT-11株 (FERM BP-11332)は、経口的に摂取することで抗アレルギー効果を有することが見出されている(特許文献4)が、レストレスレッグス症候群の改善効果を有することは全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-074013
【特許文献2】特許4216713
【特許文献3】特許4498140
【特許文献4】特許4921499
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Trenkwalder C. ら 「J. Neurol.」 2009年、256巻、p539-553.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
レストレスレッグス症候群の症状を改善する薬物には副作用が知られ、また一部の腎排泄型のレストレスレッグス症候群の改善薬物では腎機能障害の患者の症状を悪化させるなど全ての患者にとって安全であるとは言い難い。
【0012】
本発明は、安全で副作用がない食品でありながらレストレスレッグス改善効果を奏する組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
我々は、上記課題を達成すべく鋭意研究した結果、全く意外な事に乳酸菌または乳酸菌を接種して培養した培養物に、ドパミン分泌促進作用があることを見出し、さらには高いレストレスレッグス症候群改善効果があり、しかも副作用がきわめて少ないことを確認して本発明を完成させるに至った。
【0014】
本発明のレストレスレッグス症候群改善用組成物は、乳酸菌の菌体または乳酸菌を接種して培養してなる天然物を有効成分としている。そのため、従来の薬物のような副作用や腎機能障害のある患者の症状を悪化させることなく、レストレスレッグス症候群の症状を軽減できる。また、この組成物を含有する食品を、摂取することによってもレストレスレッグス症候群の症状を軽減できる。
【0015】
本発明の組成物は、乳酸菌の菌体または培養基材を含んだ培地に乳酸菌を接種して培養させた培養物からなる。なお、培養物とは、生菌、死菌のいずれを用いてもよく、乾燥菌体、湿潤菌体、培養液、菌体懸濁液、菌体破砕物、菌体成分などいずれの状態を用いても良く、菌体を除いた培養物濾過液でもかまわない。また、培養物の形態としては、固形物、粉末状、顆粒状、ペースト状、液状などいずれの形態を用いても良い。
【0016】
乳酸菌の培養は、常法に従って任意の条件で培養することができる。培養方法については特に限定されず、従来公知の方法を適宜選択して使用することができる。たとえば、好気条件下又は嫌気条件下のどちらでも行うことが出来る。培養温度は一般的に30〜37℃が望ましいが、菌が生育する温度であれば他の温度条件でもよい。培養中の培地のpHは5.0〜7.0に維持することが望ましいが、菌が生育するpHであれば他のpH条件でもよい。培養時間は通常12〜36時間が好ましいが、菌が生育することが出来る時間であれば他の培養時間でもかまわない。
【0017】
乳酸菌を培養するための培地には、増殖促進のための、炭素源、その他の栄養素を程よく含有する培地ならばいずれの培地も使用可能である。例えば、MRS培地やGYP培地、BL培地、GAM培地、トマトジュース培地が使用される。また、培地に用いる培養基材には、大麦エキス、大豆エキス、乳が使用される。大麦エキスとして、発酵大麦エキス、大麦酵素加水分解物、麦芽エキス、大麦若葉エキス、大麦焼酎粕などがある。大豆エキスとしては脱脂大豆粉、豆乳、大豆酵素加水分解物などがある。乳としてはスキムミルク粉末、酵素加水分解乳、カゼイン、ホエーなどがある。これら培地基材のうち、大麦エキスが乳酸菌を培養するための培地として、もっとも効果的である。なお本発明では、培地を構成する成分のうち、特に水分を除く主成分を培養基材と定義している。
【0018】
炭素源としては、グルコース、ラクトース、スクロース、フルクトース、デンプン加水分解物、廃糖蜜等が使用できる。他に栄養素として肉エキス、魚肉エキス、酵母エキス、オレイン酸等が用いられる。
【0019】
本発明に使用できる乳酸菌の菌株には、人由来乳酸菌であるラクトバチルス・クリスパタス (Lactobacillus crispatus) KT-11株 (FERM BP-11332) が含まれる。当該菌株は、独立行政法人 産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託している。当該菌株の菌学的 (形態学的、培養学的、生理学的) 性状は、特許文献4(特許4921499)に記載しているように、以下の通りである。
【0020】
〔1〕形態学的性状
MRS寒天培地(日本ベクトン・ディッキンソン)で37℃、72時間培養後の観察では、細胞の大きさが0.5〜1×3〜5μmの桿菌であり、運動をしない。胞子形成は無く、グラム染色は、陽性である。
〔2〕培養学的性状
MRS寒天培地(日本ベクトン・ディッキンソン)で37℃、72時間培養後のコロニーは直径2〜3mm、円形、全縁である。コロニーの色調は黄白色で、半透明である。
〔3〕生理学的性状
ガス産生 陰性
グルコース資化 陽性
カタラーゼ活性 陰性
ゼラチン液化性 陰性
硝酸塩還元性 陰性
インドール産性 陰性
硫化水素産性 陰性
酸素に対する態度 通性嫌気性
至適生育温度 37〜40℃
至適生育pH pH5.5〜5.8
【0021】
本発明は、図1から分かるように乳酸菌が上記のラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)KT-11株(FERM BP-11332)であると、ドパミン生産量が他の乳酸菌に比べより多く増加し、諸機能がより効果的に発現される。
【0022】
また、乳酸菌は必要に応じて、上記寄託菌株の他にラクトバチルス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、リューコノストック(Leuconostoc)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)などに属する乳酸菌であれば特に限定されずに使用できる。
【0023】
例えば、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium) 、ペディオコッカス・ペントサス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、リューコノストック・メゼンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)などの中から選ばれる1又は2以上の乳酸菌を用いてもよい。
【0024】
また、本発明のレストレスレッグス症候群改善用組成物は、食品に配合できる。本発明において、食品には、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、または特定保健用食品などを含む意味で用いることができる。さらに、本発明の食品を人以外の哺乳動物を対象として使用される場合には、ペットフード、ペット向けサプリメント、飼料などを含む意味で用いることができる。
【0025】
食品の具体例としては、ジュース・清涼飲料水・茶飲料・ドリンク剤・ゼリー状飲料・機能性飲料等の各種飲料、ビール等のアルコール飲料、米飯類・麺類・パン類およびパスタ類等の炭水化物含有食品、カマボコ・チクワ等の水産練り製品、ハム・ソーセージ等の畜産加工品、カレー・あんかけ・中華スープ等のレトルト製品、スープ類、牛乳・乳飲料・アイスクリーム・チーズ・ヨーグルト等の乳製品、みそ・ヨーグルト・乳酸菌・発酵飲料・漬け物等の発酵物、豆製品・ビスケット・クッキーなどの洋菓子類・饅頭や羊羹等の和菓子類・キャンディー類・ガム類・グミ・ゼリー・プリンなどの冷菓や氷菓などの各種菓子類、インスタントスープ・インスタントみそ汁等のインスタント食品、電子レンジ対応食品、マヨネーズ・ドレッシング・味付け調味液等の調味料、ドッグフード、キャットフード等のペットフードが挙げられる。さらには、粉末、穎粒、錠剤、カプセル剤、液状、ペースト状またはゼリー状に調製された健康飲食品も挙げられる。
【0026】
本発明のレストレスレッグス症候群改善用組成物は、生理学的に許容され得る担体、賦形剤、結合剤、希釈剤などと混合することにより製剤化して使用することができる。レストレスレッグス症候群改善用組成物は経口的あるいは非経口的に投与することができるが、経口的に投与することが好ましい。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。非経口剤としては、外用剤(例えば、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤)、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤)が挙げられる。
【0027】
本発明のレストレスレッグス症候群改善用組成物の1日当たりの摂取量は、年齢、症状、体重、用途等によって異なるため、一概に決めることはできないが、一応の目安として0.1〜1000 mg/kg体重を摂取することが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば乳酸菌の菌体、好ましくは大麦エキスに乳酸菌を接種して培養した培養組成物を食品として摂取することで、きわめて副作用の少ないレストレスレッグス症候群改善用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】乳酸菌体または乳酸菌培養物を添加して培養したPC12細胞の培養上清中のドパミン生産量を示した図。
図2】本発明の組成物摂取によるレストレスレッグス症候群の症状の改善を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に用いられるレストレスレッグス症候群改善用の組成物を得る方法及びその効果の一例を書き記すが、これに特に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
〔実施例1〕乳酸菌の菌体もしくは乳酸菌培養物の作製
本発明で用いられる培地は特に限定されるものではなく、例えば培養基材にはMRS培地(日本ベクトン・ディッキンソン)、大麦エキス(三和酒類)、脱脂大豆粉(日本ベクトン・ディッキンソン)、スキムミルク(和光純薬)などを用いる事が出来る。培地の組成を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
乳酸菌は、動物性乳酸菌であるラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、植物性乳酸菌であるラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ビフィズス菌であるビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、乳酸球菌であるエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)を用いた。乳酸菌を表1に示す培地にそれぞれ接種し、37℃、24時間培養した。
【0034】
乳酸菌の菌体の調製は、培養後に遠心分離(2,000 rpm、10分間)で菌体を回収し、精製水で3回遠心洗浄して培地成分を完全に除去した。洗浄した乳酸菌の菌体は熱処理(110℃、15分間)し、凍結乾燥処理後、さらに滅菌0.15 M塩化ナトリウム-0.01 Mリン酸緩衝液 (PBS、pH 7.2) に懸濁して乳酸菌の菌体とした。
【0035】
乳酸菌培養物の調製は、培養後に熱処理(110℃、15分間)し、凍結乾燥処理後、さらに滅菌0.15 M塩化ナトリウム-0.01 Mリン酸緩衝液 (PBS、pH 7.2) に懸濁して乳酸菌培養物とした。
【0036】
〔実施例2〕乳酸菌によるドパミン生産の誘導試験
[褐色細胞の培養]
マウス褐色細胞であるPC12細胞(ラット副腎髄質由来褐色細胞腫:理研セルバンク)は、1%FBS、1%HS、100U/mLペニシリンGナトリウムおよび100μg/mLストレプトマイシン硫酸塩を含むDMEM培地(ナカライ社製)に懸濁後、滅菌プラスチックシャーレ内で37℃、5%CO存在下でコンフルの状態まで培養したものを用いた。1×10個/mLに調製したPC12細胞懸濁液1mLを分注した48穴平底マイクロプレートに、最終濃度が0または1000μg/mLとなるようにPBSに懸濁した乳酸菌の菌体または乳酸菌培養物を、それぞれ100μLずつ各穴に添加し、37℃、5%CO存在下で24時間培養した。陽性コントロールにはデキサメタゾンを用いた。培養後、4℃、2000rpmで15分間遠心分離を行い、培養上清液を回収した。
【0037】
[ドパミンの生産量]
ドパミン生産量は酵素免疫測定法(ELISA)キット(LDN社製、高感度ドパミンBA E-5300)に従って測定した。PC12細胞培養上清中のドパミン生産量は、Bio−Radモデル550マイクロプレートリーダーを用いて、450nmにおける吸光度を測定した。なお、ドパミン生産量は既知濃度のドパミンから得たスタンダード曲線より算出した。統計的有意差は、試料無添加の時のドパミン生産量を基準としてスチューデントのT検定より判定した。
【0038】
図1は、乳酸菌体または乳酸菌培養物を添加して培養したPC12細胞の培養上清中のドパミン生産量を示したものである。ドパミン生産量は、全ての乳酸菌体または乳酸菌培養物を添加した場合では、無添加の場合と比べて有意に増加し、乳酸菌体よりも培養物でよりドパミン生産量が増加した。特に、大麦エキスを培養基材(表1の培地B)とした乳酸菌培養物でドパミン生産が顕著に増加することが示された。
【0039】
〔実施例3〕乳酸菌培養のヒト摂取試験
乳酸菌培養物によるレストレスレッグス症候群の改善効果を確認するため、乳酸菌培養物の製剤を作製し、レストレスレッグス症候群に罹患する患者への投与を行った。
【0040】
[乳酸菌培養物粉末の作成]
ラクトバチルス・クリスパタス (Lactobacillus crispatus) KT-11株 (FERM BP-11332)を、表1で示した培地で37℃、24時間培養した。培養後、110℃10分で加熱殺菌後、炭酸カルシウムにてpHを5.8となるよう中和後、デキストリンと混ぜ合わせた後、凍結乾燥して大麦エキス乳酸菌培養物粉末を作製した。
【0041】
[製剤の製造方法]
乳酸菌培養物粉末と、結晶セルロース、還元麦芽糖水飴、ショ糖脂肪酸エステルとともに混合し、単発式打錠機にて打錠することにより、直径9mm、重量350mgの錠剤を製造した。得られた錠剤にシェラック溶液を噴霧後、乾燥させ、シェラックで被覆された乳酸菌培養物を含有する錠剤を製造した。この組成を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
[レストレスレッグス症候群患者の症状改善の評価]
試験には、レストレスレッグス症候群を患う20歳以上59歳以下の日本人女性ボランティア10名を選抜した。表2に示した大麦エキス乳酸菌培養物を含有する錠剤を1日6錠ずつ1ヶ月間毎日摂取させた。レストレスレッグス症候群の症状は、脚の不快な感覚、日常生活への影響、動き回りたい欲求、全般の症状のひどさについて、視覚的評価スケール(VAS)を用いて症状を評価した。
【0044】
なお、VASとは「0」を「痛みはない」状態、「10」を「これ以上の痛みはないくらい痛い」状態として、現在の痛みが0〜10cmの直線上のどの位置にあるかを示す方法である。その結果を図2に示す。
【0045】
図2の結果から、摂取前と比較して摂取後では、脚の不快な感覚、日常生活への影響、動き回りたい欲求、全般の症状のひどさの項目において、統計的有意に改善効果が認められた。
【0046】
また、レストレスレッグス症候群の治療薬物で認められる吐気などの副作用は全く認められず、安全性も確認された。
【要約】
【課題】レストレスレッグス症候群の症状を改善する薬物には副作用が知られ、また一部の腎排泄型のレストレスレッグス症候群の改善薬物では腎機能障害の患者の症状を悪化させるなど全ての患者にとって安全であるとは言い難い。本発明は、安全で副作用がない食品でありながらレストレスレッグス改善効果を奏する組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】乳酸菌または乳酸菌を接種して培養した培養物に、ドパミン分泌促進作用があることを見出し、さらには高いレストレスレッグス症候群改善効果があり、しかも副作用がきわめて少ないことを確認して本発明を完成させるに至った。本発明は、特に乳酸菌がラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacilluscrispatus)KT-11株(FERM BP-11332)であると、諸機能がより効果的に発現される。
【選択図】なし
図1
図2