特許第5873916号(P5873916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5873916-取り外し防止装置 図000002
  • 特許5873916-取り外し防止装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5873916
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】取り外し防止装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 41/00 20060101AFI20160216BHJP
   F16B 37/14 20060101ALI20160216BHJP
   F16D 41/06 20060101ALI20160216BHJP
   F16D 41/08 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   F16B41/00 Q
   F16B37/14 C
   F16D41/06 Z
   F16D41/08 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-180952(P2014-180952)
(22)【出願日】2014年9月5日
【審査請求日】2014年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】オリジン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100516
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 惠
(72)【発明者】
【氏名】田原 岳大
(72)【発明者】
【氏名】根岸 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】緑川 泰輔
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−515906(JP,A)
【文献】 米国特許第05927917(US,A)
【文献】 特開2007−032611(JP,A)
【文献】 特開2009−097707(JP,A)
【文献】 特開2011−256929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 41/00
F16B 37/14
F16D 41/06
F16D 41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の方向のみに回転力を伝達するワンウェイクラッチと、
前記ワンウェイクラッチの外輪の貫通孔に軸の係合部が挿入され前記ワンウェイクラッチに係合するとともに前記係合部から突出して前記軸にねじ部を有したねじ本体と、
前記ねじ本体を回転させるためのねじ溝を有し前記ワンウェイクラッチと前記ねじ本体の前記係合部とが係合した部分を覆って前記ワンウェイクラッチに固定されたキャップとを備えたことを特徴とする取り外し防止装置。
【請求項2】
前記ねじ本体の軸の前記ねじ部と前記係合部との間に逃がし溝を設けたことを特徴とする請求項1記載の取り外し防止装置。
【請求項3】
前記ねじ本体の軸の前記ねじ部と前記係合部との間に前記ねじ部のねじ加工の終端部を有し、前記キャップの前記ねじ部側の長さは、前記ねじ部のねじ加工の終端部の長さ分だけ長くしたことを特徴とする請求項1記載の取り外し防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじで固定された部材の取り外しを防止する取り外し防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ねじで固定された部材の取り外しを防止するものとして、パチンコ機やスロットマシン等の遊技機の制御基板の取り外しを防止するものがある。遊技機では、CPUが実行するための各種遊技制御プログラムを格納したROM等の電子部品が搭載された主制御基板や演出用制御基板等の各種の制御基板によって遊技動作を制御するようになっている。
【0003】
この各種の制御基板の基板ケースは、検査を行うことができるようにするために遊技機に対して着脱可能となっている。そのため、基板ケースごと偽造品(不正品)と取り替えられる恐れがある。そこで、制御基板を収容したケースの一部分にICタグと呼ばれるチップ状の電子部品を固着しておき、ICタグが破壊された場合に、その破壊された痕跡を発見することで、不正行為が成されたと判断することができるようにしている(特許文献1参照)。また、制御基板に制御素子の取り外しを防止する取り外し防止部材を設け、制御基板に装着されている制御素子の取り外しを困難なものとし、不正ROMの差し換えを防止するようにしたものがある(特許文献2参照)。
【0004】
また、グレーチング蓋やマンホール蓋等もねじで固定されるが、鋼材価格の高騰を背景にグレーチング蓋やマンホール蓋等は、ねじを取り外して持ち去る盗難事件が急増している。そこで、迅速かつ容易に施工することができ、グレーチング蓋やマンホール蓋等の盗難を防止できるようにした取り外し防止ナットがある(特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−296239号公報
【特許文献2】特開2004−154462号公報
【特許文献3】特開2012−246985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2の遊技機においては、ICタグや制御素子の取り外し防止部材を別途用意して制御基板の取り外しを防止しなければならないのでコストが高くなる。また、特許文献3の取り外し防止ナットは、ナット本体の一つ以上の角部に当該角部よりも外側へ突出された取り外し防止突起を形成し、レンチやスパナ等の汎用工具を使用するのに充分なスペースを確保できない凹陥状スペース内に取り外し防止ナットを位置させるようにし、レンチやスパナ等の汎用工具でナットを取り外しできないようにしているが、取り外し防止ナットを収納する凹陥状スペースが必要となる。
【0007】
本発明の目的は、ねじで締め付けられて固定された部材を容易に取り外しできない取り外し防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係る取り外し防止装置は、一方の方向のみに回転力を伝達するワンウェイクラッチと、前記ワンウェイクラッチの外輪の貫通孔に軸の係合部が挿入され前記ワンウェイクラッチに係合するとともに前記係合部から突出して前記軸にねじ部を有したねじ本体と、前記ねじ本体を回転させるためのねじ溝を有し前記ワンウェイクラッチと前記ねじ本体の前記係合部とが係合した部分を覆って前記ワンウェイクラッチに固定されたキャップとを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明に係る取り外し防止装置は、請求項1の発明において、前記ねじ本体の軸の前記ねじ部と前記係合部との間に逃がし溝を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明に係る取り外し防止装置は、請求項1の発明において、前記ねじ本体の軸の前記ねじ部と前記係合部との間に前記ねじ部のねじ加工の終端部を有し、前記キャップの前記ねじ部側の長さは、前記ねじ部のねじ加工の終端部の長さ分だけ長くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、ねじ本体の軸の係合部をワンウェイクラッチの外輪の貫通孔に挿入しワンウェイクラッチに係合させるので、キャップのねじ溝をワンウェイクラッチの回転力を阻止する方向に回転させることにより、ねじ本体は締まり止めされる。一方、逆方向にキャップのねじ溝を回転させることにより、ねじ本体は空回りしねじ本体を取り外すことができない。従って、キャップのねじ溝を回転させるだけではねじで締め付けられて固定された部材を取り外すことができない。
【0012】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、ねじ本体の軸のねじ部と係合部との間に逃がし溝を設けているので、ねじ部のねじ加工は逃がし溝まで容易に行え、また、ねじ本体はキャップの位置まで締まり止めされる。
【0013】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、ねじ本体の軸のねじ部と係合部との間に逃がし溝を設けずにねじ加工するので、ねじ部と係合部との間にねじ加工の終端部が形成されるが、前記キャップの前記ねじ部側の長さは、前記ねじ部のねじ加工の終端部の長さ分だけ長くするので、ねじ本体は、ねじ加工の終端部に邪魔されることなく締まり止めできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る取り外し防止装置の一例の断面図。
図2】本発明の実施形態に係る取り外し防止装置のキャップとワンウェイクラッチとの固定機構の説明図。
図3】本発明の実施形態に係る取り外し防止装置の他の一例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る取り外し防止装置の一例の断面図であり、図1(a)は全体構成図、図1(b)はワンワンウェイクラッチの断面図、図1(c)はねじ本体の断面図、図1(d)はキャップの断面図である。
【0016】
図1(a)に示すように、本発明の実施形態に係る取り外し防止装置は、ワンウェイクラッチ11と、ねじ本体12と、キャップ13とから構成される。
【0017】
ワンウェイクラッチ11は一方の方向のみに回転力を伝達するクラッチであり、図1(b)に示すように、円筒状に形成された外輪14はねじ本体12が挿入される貫通孔15を有し、外輪14の内径面には円周方向に複数個の楔形状空間16が形成され、楔形状空間16に転動体17が収納され、また、外輪14の一方端部において転動体17を押圧する板バネ機構部18が設けられている。楔形状空間16は広幅部と狭小部とを有する。
【0018】
貫通孔15にねじ本体12が挿入されと、後述のねじ本体12の係合部24が貫通孔15を貫通し、ねじ本体12の係合部24の外面と転動体17の外面とが接触し、ねじ本体12が一方の方向に回転すると、転動体17が板バネ機構部18に押されて楔形状空間16の広幅部から狭小部に向けて移動し、転動体17は楔形状空間16でねじ本体12の係合部24及び外輪14と噛み合い状態に至り、ねじ本体12の回転力は外輪14に伝達される。一方、ねじ本体12が逆方向に回転したときは、転動体17が板バネ機構部18を押圧して楔形状空間16の広幅部へ移動する。これにより、転動体17の噛み合い状態が解除されてねじ本体12の回転は空転となり、外輪14に回転力を伝達しない状態となる。このように、ワンウェイクラッチ11は、ねじ本体12の一方の方向のみの回転力を外輪14に伝達するクラッチであり、回転トルクの伝達のオンオフを行うことができる。
【0019】
ねじ本体12は、図1(c)に示すように、軸19と頭20とから構成され、軸19のねじ先21から首22までの間には、ねじ部23と係合部24とが設けられている。ねじ部23は係合部24から突出して設けられ、ねじ部23と係合部24との間には逃がし溝25が設けられている。そして、ねじ部23にはねじ山が形成され、逃がし溝25は、ねじ部23のねじ加工の際に、ねじ部23の全域にねじ山が切れるように、ねじ加工治具が係合部24側に移動できる距離を確保するためのものである。係合部24はワンウェイクラッチ11の外輪14の貫通孔15に挿入されて外輪14と係合する。
【0020】
キャップ13は、図1(d)に示すように、ねじ本体12を回転させるためのねじ溝26を有し、ワンウェイクラッチ11とねじ本体12の係合部24とが係合した部分(圧入部分)を覆ってワンウェイクラッチ11に固定される。キャップ13のワンウェイクラッチ11への固定は、ワンウェイクラッチ11の外輪14の外周面に設けた嵌合溝とキャップ13の内周面に設けた嵌合凸部との嵌合により固定される。図2はキャップ13とワンウェイクラッチ11との固定機構の説明図であり、図2(a)は図1(b)の左側面から見た平面図、図2(b)は図1(d)のX−X線の断面平面図である。図2(a)に示すように、ワンウェイクラッチ11の外輪14の外周面に複数個の嵌合溝27が設けられ、図2(b)に示すように、キャップ13の内周面には複数個の嵌合溝27に嵌合する嵌合凸部28が設けられている。そして、キャップ13は、これらの嵌合溝27と嵌合凸部28との嵌合によりワンウェイクラッチ11に固定される。以上の説明では、
ワンウェイクラッチ11の外輪14の外周面に嵌合溝27を設け、キャップ13の内周面に嵌合凸部28を設けたが、逆に、ワンウェイクラッチ11の外輪14の外周面に嵌合凸部28を設け、キャップ13の内周面に嵌合溝27を設けるようにしてもよい。
【0021】
また、キャップ13のワンウェイクラッチ11への固定として、嵌合溝27と嵌合凸部28との固定に加え、熱かしめを行うようにしてもよい。例えば、キャップ13を樹脂で、圧入部分より小さめの開口部を有するように形成し、キャップ13の開口部に圧入部分を挿入し熱を加え、キャップ13と圧入部分とを固着する。
【0022】
これにより、キャップ13とワンウェイクラッチ11は固定されるので、キャップ13のねじ溝26をワンウェイクラッチ11の回転力を阻止する方向に回転させることにより、ねじ本体12のねじ部23は締まり止めされる。一方、逆方向にキャップ13のねじ溝26を回転させることにより、ねじ本体12は空回りしねじ本体12を取り外すことができない。
【0023】
図3は、本発明の実施形態に係る取り外し防止装置の他の一例の断面図である。この他の一例は、図1に示した一例に対し、逃がし溝25を設けることなくねじ加工し、ねじ加工により、ねじ部23と係合部24との間に形成されたねじ加工の終端部29をそのまま残し、キャップ13のねじ部23側の長さは、ねじ部23のねじ加工の終端部29の長さ分だけ長くしたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0024】
逃がし溝がない場合には、ねじ部23のねじ加工により、ねじ部23と係合部24との間にねじ加工の終端部29が形成される。これは、ねじ部23のねじ加工の際に、ねじ部23の全域にねじ山が切れるように、ねじ加工治具が係合部24側に移動できる距離を確保できないためである。この他の一例では、図2に示すように、ねじ加工の終端部29はそのまま残し、キャップ13のねじ部23側の長さは、ねじ部23のねじ加工の終端部29の長さ分Δdだけ長くする。これにより、ねじ本体12のねじ部23は、ねじ加工の終端部29に邪魔されることなく締まり止めできる。
【0025】
以上のように、本発明の実施形態によれば、ねじ本体12の軸の同軸上にワンワンウェイクラッチ11を配置するので、ねじ本体12の締め付けの際は、ワンウェイクラッチ11のロック機能によりねじ部23が回転し、ねじ本体12の締め付けが可能となる。一方、ねじ本体12の締め付け後の取り外しは、ワンウェイクラッチ11の空転機能により、ねじ部23に回転が伝わらず、ゆるめることができない。従って、ねじ本体12で締め付けられて固定された部材を取り外すことができない。
【0026】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
11…ワンウェイクラッチ、12…ねじ本体、13…キャップ、14…外輪、15…貫通孔、16…楔形状空間、17…転動体、18…板バネ機構部、19…軸、20…頭、21…ねじ先、22…首、23…ねじ部、24…係合部、25…逃がし溝、26…ねじ溝、27…嵌合溝、28…嵌合凸部、29…ねじ加工の終端部
【要約】
【課題】ねじで締め付けられて固定された部材を容易に取り外しできない取り外し防止装置を提供することである。
【解決手段】一方の方向のみに回転力を伝達するワンウェイクラッチ11の外輪14の貫通孔15に、ねじ本体12の軸19の係合部24が挿入され、ねじ本体12は、ワンウェイクラッチ11に係合するとともに、係合部24から突出して軸19にねじ部23を有し、キャップ13は、ねじ本体12を回転させるためのねじ溝26を有し、ワンウェイクラッチ11とねじ本体12の係合部24とが係合した部分を覆ってワンウェイクラッチ11に固定される。
【選択図】 図1
図1
図2
図3