(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873921
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】調整装置付き焼きばめチャック工具ホルダ
(51)【国際特許分類】
B23B 31/117 20060101AFI20160216BHJP
B23B 31/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
B23B31/117 610F
B23B31/00 C
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-246648(P2014-246648)
(22)【出願日】2014年12月5日
(62)【分割の表示】特願2012-500066(P2012-500066)の分割
【原出願日】2010年3月16日
(65)【公開番号】特開2015-61740(P2015-61740A)
(43)【公開日】2015年4月2日
【審査請求日】2014年12月26日
(31)【優先権主張番号】102009013646.0
(32)【優先日】2009年3月17日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102009023999.5
(32)【優先日】2009年6月5日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102009040173.3
(32)【優先日】2009年9月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506360974
【氏名又は名称】ギューリング コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Guehring KG
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】アイギュン ハッキ
【審査官】
小川 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−177980(JP,A)
【文献】
特開平08−118119(JP,A)
【文献】
特開平08−141878(JP,A)
【文献】
特開2005−131765(JP,A)
【文献】
特開平08−150506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/117
B23B 31/00
B23Q 3/12
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状シャンクツール用の焼きばめチャック工具ホルダ(2)であって、
工具機械に連結するための固定部(6)と、
ツールシャンク(12)を中心に収容に適合した内部溝(10)を備える熱膨張が可能な焼きばめ部(8)と、
前記内部溝(10)に軸方向に沿って移動可能に位置し、前記シャンクツール(4)の軸方向位置を前記焼きばめ部(8)内で調整可能な調整装置(50)と、
を備え、
前記調整装置(50)は、収縮による前記シャンクツール(4)の位置及び/又は配置の変化を補償するか又は少なくとも減少させる、前記シャンクツール(4)に面する側に形成された補償部(54)を備え、
前記補償部は、前記調整装置(50)の円錐部に設けられ且つ前記ツールシャンクの端部の円錐面を支持するO−リングを備えることを特徴とする焼きばめチャック工具ホルダ。
【請求項2】
前記焼きばめチャック工具ホルダ(2)内に、軸方向位置の設定のための調整部(52)を備えることを特徴とする請求項1に記載の焼きばめチャック工具ホルダ。
【請求項3】
前記補償部(54)は、前記焼きばめチャック工具ホルダ(2)、前記調整部(52)、及び前記シャンクツール(4)よりも低い強度及び/又は弾性力を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の焼きばめチャック工具ホルダ。
【請求項4】
前記補償部(54)の軸方向延長長さが、収縮による前記シャンクツール(4)の軸方向への位置変化よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の焼きばめチャック工具ホルダ。
【請求項5】
前記調整部は、調整スクリュ(52)により構成されることを特徴とする請求項4に記載の焼きばめチャック工具ホルダ。
【請求項6】
前記補償部(54)は、前記シャンクツール(4)が前記調整部に間接的に支持され得るように、弾性的に又はプラスチックのように変形可能な分離された要素(54)であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の焼きばめチャック工具ホルダ。
【請求項7】
前記調整装置(50)は、前記シャンクツール(4)に冷却液を供給するための少なくとも1つの冷却液通路(17)を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の焼きばめチャック工具ホルダ。
【請求項8】
前記O−リング(54)は、前記調整装置(50)の前記円錐部に形成された周辺溝に設けられる請求項1〜7の何れか一項に記載の焼きばめチャック工具ホルダ。
【請求項9】
前記O−リング(54)は、前記調整装置(50)の前記円錐部に緩く配置されている請求項1〜8の何れか一項に記載の焼きばめチャック工具ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に関する
シャンクツール(shank tool)を軸方向に支持するための調整装置を持つ焼きばめ(収縮締結)チャック工具ホルダ(shrink-fit chuck tool holder)に関する。
【背景技術】
【0002】
焼きばめチャックは、簡単な工具交換、高トルクの伝達(transmission)、スリムなデザイン、及び固有な高回転精度に特徴付けられる。このようなクランピング(clamping)技術の原理は非常に簡単である。クランピング部はシャンクツールを収容するための孔を有するが、この工具孔の直径は工具のシャンク直径よりも小さい。クランピング部を例えば誘導(induction)のような方法で加熱することによって、クランピング部が膨張し、ツールシャンクが収容孔内に入ることができる。クランピング部を冷却させることによって、クランピング部が収縮し、ツールシャンクと高強度の摩擦力により結合された連結を形成する。焼きばめチャック内でシャンクツールを軸方向に支持するために、長さ調整スクリュが頻繁に用いられるが、これにより焼きばめチャック内でツールの軸方向位置が無段階式(stepless manner)で調整され得る。
DE 10 2006 028 408 A1には、手術中にチャックからの工具の実際の移動を防止するための後退固定手段を持つ焼きばめチャックが開示されている。その後退固定手段と工具の間のクリアランスを最小限にするために、工具は、長さ調整スクリュによる工具の縮小工程の後にプレテンションされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述した加熱及び収縮過程で、クランピング部の大きさは、半径方向にだけでなく、軸方向にも変化する。それにより、膨張した状態で挿入されたシャフトツールは、収縮過程で半径方向の力だけでなく、クランピング部の軸方向の収縮による軸方向の力も受けるようになり、結果として、長さ調整スクリュに対して加圧される。長さ調整スクリュの停止面及び/又は工具のシャンク端部がμレンジの平坦度欠陥を有するか、あるいは調整スクリュ又はチャックのねじ山が回転軸と同一軸に置かれないとき、工具を介して長さ調整スクリュに伝達される、前述した焼きばめチャックの軸方向の力の一部がシャンクの端部で半径方向の力成分に変換されて、回転軸線に対するシャンクツールの軸線の傾斜及び/又は離脱を発生させる。回転の不正確性は工具が長くなるにつれ、更に大きくなる。
【0004】
したがって、本発明の課題は、有用な調整装置、より正確には、工具又はチャックの製造上の欠陥にもかかわらず、高い回転精度を可能にする焼きばめチャック工具ホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題は
、請求項1の特徴により解決さ
れる。
本発明の焼きばめチャック工具ホルダは、工具機械に連結するための固定部と、ツールシャンクを中心に収容に適合した内部溝を備える熱膨張が可能な焼きばめ部と、前記内部溝に軸方向に沿って移動可能に位置し、前記調整装置により前記シャンクツール4の軸方向位置が前記焼きばめ部内で調整可能である調整装置と、を備える。
【0006】
本発明によれば、前記調整装置は、収縮による前記シャンクツールの位置及び/又は配置における変化を補償するか、少なくとも減少させるために前記シャンクツールに面する側に備えられる補償部を備える。それにより、本発明による前記調整装置は、最初に言及した前記シャンクツールの軸方向位置変化と前記調整装置に作用する関連軸方向の力を除去又は補償でき、その力が半径方向の力成分に変換されるのを防止できる特別な部分(special section)を有するように構成される。もし、この半径方向の力成分がなくなるか、最小化すれば、前記焼きばめチャックの回転軸線に対する前記工具軸線の傾斜も同様に発生しない。このような調整装置の補償機能を通じて、焼きばめチャックが固有に有する高い回転精度は更に向上し得るが、これは前記調整装置により小さな平坦度欠陥又は個々の部分の同一軸線に対する離脱が補償され得るためである。
【0007】
本発明の
焼きばめチャック工具ホルダの追加的、かつ、効果的な改善事項は、従属項に記載される。
【0008】
もし、前記補償部が前記焼きばめチャック工具ホルダ、前記調整部、及び前記シャンクツールよりも低い強度及び/又は弾性を有すれば、収縮による位置及び/又は配置の変化が全体的に前記装置の回転精度に影響を及ぼし得るチャック又は工具への応力につながる前に、前記補償部は収縮による位置及び/又は配置の変化を確実に補償できる。
【0009】
また、前記補償部の大きさは、その軸方向延長部分が収縮による前記工具の軸方向の位置変化よりも大きく形成されなければならない。それにより、前記補償部は全体の軸方向の位置変化及び関連する軸方向の力を除去でき、平坦度欠陥を有する部分が互いに接触し、半径方向に沿って外れるのを防止できる。
【0010】
調整スクリュが本発明による調整装置の調整部として用いられ、先行技術によって用いられる長さ調整スクリュは、本発明による調整装置の一部として使用され得、従来の焼きばめチャックシステムは設計変更測定(design modification measure)なしに本発明による調整装置と共に作用できるようになる。
【0011】
焼きばめチャックシステムの部品数をできるだけ少なくするためには、前記調整部と前記補償部を一体に形成することが有利である。前記2つの部分を直接連結する方法としては、前記補償部が前記調整部のコーティング部で形成される場合が挙げられる。前記コーティング部としては、適用例及び前記焼きばめチャック工具と前記調整部用として用いられる材質によって前述した補償機能を行えるあらゆる材質が考慮され得る。アルミニウムと黄銅(brass)が特に適切な材質である。前記補償部として用いられる材質は、ソルダリング(soldering)又はグローイング(gluing)のような他の方法でも前記調整部に選択的に連結され得る。
【0012】
もし、前記補償部が分離された要素で構成されれば、これにより、前記シャンクツールは前記調整部上に間接的に支持され得、ここで用いられる調整スクリュは継続して使用され得、前記調整装置は単に本発明による補償要素で補充され得るという特別な長所を有する。それにより、従来のシステムはいつでも改良され得る。
【0013】
もし、前記分離された要素がプラスチックのように変形可能な材質からなれば、一回又は複数回使用され得るが、前記シャンクツールの全体の軸方向の位置変化はこの要素のプラスチックの変形により除去され得、プラスチックの変形後には有効な軸方向の力がこれ以上、前記調整部に作用しなくなる。弾性要素が用いられるとき、前記調整スクリュに作用する軸方向の力は前記弾性材質の圧縮により継続して存在するが、この要素は複数回再使用され得るため、前記工具は前記補償部と共に交換する必要なく、継続して使用され得る。
【0014】
前記分離された要素の材料としては、前述した材質以外に、広い範囲の物性により本発明による前記調整装置のいかなる適用のためにも好適な機能を提供できるプラスチック及びゴムが考慮され得る。
【0015】
前記調整部の前に位置するバネ要素、特に、カップバネは補償部として使用することができる。
【0016】
収縮による前記工具の位置及び/又は配置の変化は、弾性的に又はプラスチックのように変形される材質によってだけでなく、調整部と補償部との間の相対位置変化によっても発生し得る。もし、前記調整部と前記補償部が互いに支持する接触面が凹凸に形成されれば、2つの部分が相互に対していかなる角度位置にも入って前記工具のシャンク端部の平坦度欠陥又は前記調整装置の同一軸線の誤差を補償できる。
【0017】
前記調整部は、好ましくは、前記シャンクツールに面する側に形成された丸い形状のセグメントを備え、前記セグメントは対応する形状に形成された前記補償部の凹溝に収容される。軸方向の固定のために、半径方向の内側に延びる環状突出部が前記補償部に形成されて前記調整部の環状溝にその周辺部をぐるりと回って結合される。特に、互いに隣接する表面を適切に選択することによって、非常に大きい圧縮荷重の存在下でも、前記調整部の長手方向軸と前記補償部が相互に傾斜することが可能になる。
【0018】
長所として、前記調整装置は前記シャンクツールに冷却液が供給され得るように少なくとも1つの冷却液通路を備える。それにより、本発明による調整装置は、省かれなければならない前記シャンクツールの冷却液の供給なしに、前述したような補償機能を作り出す。冷却液の供給形態によって、前記補償部は、前記シャンクツールに面する側に平面のシャンク端部(従来の冷却)のための平面停止部、又は円錐状シャンクの端部(minimum quantity lubrication(MQL)冷却)のための円錐状停止部を備えることができる。従って、本発明による前記調整装置は、冷却液の供給形態によって独立して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】先行技術による長さ調整スクリュを備える焼きばめチャックの断面図であって、その内部に結合されるシャンクツールを共に示す図である。
【
図2】
図1のII-II部分に対する詳細図である。
【
図3A】長さ調整スクリュをシャンクの端部と共に示すものであって、
図3Bとでそれぞれ収縮過程の前後の状態を示す図である。
【
図3B】長さ調整スクリュをシャンクの端部と共に示すものであって、
図3Aとでそれぞれ収縮過程の前後の状態を示す図である。
【
図4A】本発明の第1の実施形態による調整装置とシャンクの端部を示すものであって、
図4Bとでそれぞれ収縮過程の前後の状態を示す図である。
【
図4B】本発明の第1の実施形態による調整装置とシャンクの端部を示すものであって、
図4Aとでそれぞれ収縮過程の前後の状態を示す図である。
【
図5A】本発明の第2の実施形態による調整装置とシャンクの端部を示すものであって、
図5Bとでそれぞれ収縮過程の前後の状態を示す図である。
【
図5B】本発明の第2の実施形態による調整装置とシャンクの端部を示すものであって、
図5Aとでそれぞれ収縮過程の前後の状態を示す図である。
【
図6A】本発明の第3の実施形態による調整装置とシャンクの端部を示すものであって、
図6Bとでそれぞれ収縮過程の前後の状態を示す図である。
【
図6B】本発明の第3の実施形態による調整装置とシャンクの端部を示すものであって、
図6Aとでそれぞれ収縮過程の前後の状態を示す図である。
【
図7】円錐状停止部を有するMLQ供給(feeding)用に適合した長さ調整スクリュを備える焼きばめチャックの断面図であって、円錐状シャンクの端部を有するシャンクツールを共に示す図である。
【
図8】第1の実施形態による調整装置の変形した例を示す図である。
【
図9A】本発明の第4の実施形態による調整装置とシャンクの端部を示すものであって、
図9Bとでそれぞれ収縮過程の前後の状態を示す図である。
【
図9B】本発明の第4の実施形態による調整装置とシャンクの端部を示すものであって、
図9Aとでそれぞれ収縮過程の前後の状態を示す図である。
【
図10A】本発明の第4の実施形態による調整装置とシャンクの端部を示すものであって、
図10Bとでそれぞれ収縮過程の前と最小限の軸方向の力成分が継続して残っている収縮後の状態を示す図である。
【
図10B】本発明の第4の実施形態による調整装置とシャンクの端部を示すものであって、
図10Aとでそれぞれ収縮過程の前と最小限の軸方向の力成分が継続して残っている収縮後の状態を示す図である。
【
図11】第4の実施形態による調整装置の変形した例を示す図である。
【
図12A】本発明の第5の実施形態による調整装置とシャンクの端部を示すものであって、
図12Bとでそれぞれ収縮過程の前後の状態を示す図である。
【
図12B】本発明の第5の実施形態による調整装置とシャンクの端部を示すものであって、
図12Aとでそれぞれ収縮過程の前後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には焼きばめチャック(shrink-fit chuck)2の断面とこれに結合される工具(tool)4が示されている。焼きばめチャックは、工具4の円筒状シャンク部(cylindrical shank section)12を収容するための孔(hole)10を備える熱膨張が可能なクランピング部(clamping section)8だけでなく、工具機械(tool machine)(図示せず)に固定するための固定部(fastening section)6を備える。また、工具4用停止部(stop)として機能する長さ調整スクリュ14が焼きばめチャック2の内部に軸方向に沿って移動可能に位置する。
【0022】
図2は、
図1に示すII-II部分を詳細に示すものであって、クランピング部8の2つの状態を示す。実線は冷却状態でのクランピング部8の大きさを示し、波線(dashed
line)は熱により膨張した状態の大きさを示す。熱膨張は、例えば先行技術を通じて知られた誘導(induction)収縮装置により発生し得る。孔10は、冷たい状態でD1の直径を有し、熱膨張した状態でD2の直径を有する。工具4のシャンク12はD1よりは大きく、D2よりは小さなD3の直径を有するようになって、シャンク12はクランピング部8が膨張した状態で孔10内に入り得、クランピング部8が冷却された後はクランピング部8がD1の特定の直径を有する本来の形態に戻ろうとするため、非正(non-positive)且つ摩擦ロック式で、クランピング部8により半径方向周囲に固定される。
【0023】
熱膨張により長さ調整スクリュ14の停止面(stop face)に対してクランピング部8の軸方向延長部分も変化することが
図2から分かる。それにより、長さ調整スクリュ14から孔10の端部までの距離はL1で、加熱された状態でL2となる。収縮過程中、クランピング部8のL2の長さからL1の長さまでの軸方向の収縮により、軸方向の力が孔10の内壁と工具4のシャンク12の表面間の摩擦結合を通じて調整スクリュ14に加えられ、この軸方向の力は、軸方向に調整し且つ固定する調整スクリュ14により耐えられる。
【0024】
図3Aに示すように、もし長さ調整スクリュ14の停止面16が回転軸線Aに直角でないように置かれるようになれば(原因が
図3Aに示すように、製造上、発生した停止面16の平坦度欠陥にあろうが、長さ調整スクリュ14のねじ山が焼きばめチャック2と同一軸に置かれないことにあろうが)、αの角度でずれる停止面16は軸方向の力Faの一部を半径方向成分Frに変換させ、冷却過程が完全に完了していない状態であるので、シャンクの端部12を半径方向に偏向させるようになる。焼きばめチャックが更に冷却されたとき、軸方向の力Faが冷却過程が進むにつれて継続して増加し、工具4が
図3Bに示す位置で打ち込まれ、工具の長手方向軸線Bはこれ以上、回転軸線に対して整列され得なくなる。それにより、長手方向軸線Bはβの角度で回転軸線Aからずれるようになり、これは工具4の長さによる回転精度に重要な影響を及ぼし得る。
【0025】
図4A及び
図4Bは、それぞれ収縮前と後での第1の実施形態による進歩した調整装置を示す図である。調整装置20は、工具4のシャンク12に面する側に形成されたコーティング部24を有する長さ調整スクリュ22の形態で調整部を備える。コーティング部24の材質は、長さ調整スクリュ22、シャンク12、及び孔10の内壁よりも柔らかいもので選択され、収縮関連軸方向の変位時にコーティング部24が工具4のこの軸方向の変位を吸収するようになるので、工具4のシャンク端部12は半径方向にずれなくなる。シャンクの端部12が半径方向からはずれないので、工具軸線Bと回転軸線Aが同一軸線上に置かれ、高い回転精度が保持される(
図4B参照)。
【0026】
図5A及び
図5Bは、第2の実施形態による進歩した調整装置を示すものであって、補償部(compensating section)が分離された要素からなる。
図5Aには長さ調整スクリュ32を備える調整装置30が示されており、長さ調整装置32の上にはカップバネのようなバネ要素34が位置する。シャンクの端部12がクランピング部8の冷却及び収縮時に長さ調整スクリュ32の軸方向に押されるとき、バネ要素34は圧縮されてシャンクの端部12は半径方向にずれなくなる。それにより、工具長手方向軸線Bと焼きばめチャック2の回転軸線Aは、
図5Bに示すように、互いに同一軸線上に残されている。
図5に示すカップバネの代わりに、ゴム又は弾性プラスチック材質のディスクがバネ要素として使用され得る。これとは異なり、プラスチックのように変形されて工具4の軸方向変位を吸収できる材質が選択され得る。
【0027】
図6A及び
図6Bには、本発明の第3の実施形態による調整装置が示されている。調整装置40は長さ調整スクリュ42を備えるが、長さ調整スクリュ42はシャンク12と長さ調整スクリュ42との間のいかなる角度ズレも補償され得るように補償本体(body)44と相互作用する。補償本体44に面する側で長さ調整スクリュ42は凹面46を備え、凹面46内に対応する補償本体44の凸形状の表面48が収容され、これらの2つは相互に対してスライドする。それにより、補償本体44は、傾斜又は相対的な位置変化を通じて長さ調整スクリュ42に対して最も大きく変化した角度で位置し得るため、回転軸線Aに直角で配置され得る。もちろん、長さ調整スクリュ42が凸表面を備え、補償本体44が凹表面を備えるようにし、前記のように相互作用するようにすることも可能である。それにより、本発明の第3の実施形態による装置は、
図6Bに示すように、収縮による工具の位置と配置における変化を補償できる。
【0028】
図4〜
図6には従来の冷却液の供給と共に用いられる平面形シャンクの端部に対する本発明による調整装置が示されている。しかし、本発明による調整装置は、
図7に示すように、その内部に結合される工具4が最小量潤滑(MQL:Minimum Quantity Lubrication)の冷却と共に用いられる円錐状シャンクの端部を備えるクランピングチャック装置でも使用され得る。本発明による調整装置の場合、ツールシャンクの端部との境界面を形成する補償部はMQL冷却液の供給のために特定の円錐状を有し、ツールシャンクの円錐状端部と半径方向外側のシーリング面(sealing face)を形成する。
【0029】
これに対応して第1の実施形態を修正変形した調整装置が
図8に例として示されている。
【0030】
図9A及び
図9Bは、本発明の第4の実施形態による調整装置を示すものであって、補償部は、長さ調整スクリュ52内に備えられている突出したO-リング54で構成され、前記O-リングは、長さ調整スクリュ52の端面に設けられている対応する溝に収容される。クランピング部8の冷却及び収縮時に、シャンクの端部12が長さ調整スクリュ52の長手軸線方向に押されるとき、O-リングは圧縮され、それによりシャンクの端部12は半径方向にずれなくなる。工具長手方向軸線Bと焼きばめチャック2の回転軸線Aは、それにより
図9Bに示すように、互いに同一軸線上に残されている。
【0031】
もし、O-リングがクランピング部8の収縮関連軸方向の全体移動を補償できなければ、シャンクの端部12はO-リングを加圧して長さ調整スクリュ52の端面に到達し、
図10BにFrの力成分を示す小さな矢印で表されたように、最小限で半径方向に沿って外れる。しかし、本発明による補償部(
図10A)を備えていない調整スクリュに比べて、半径方向の力成分は顕著に減少し、シャンク工具4の回転精度に大きく影響を及ぼさない範囲内で保持され得る。
【0032】
図10Bに対する事項は当然、他の実施形態にも適用され得る。
【0033】
図11は、
図8と同様に、円錐状ツールシャンクの端部に特に適合した本発明による調整装置を示す。長さ補償用として用いられるO-リング54が長さ調整スクリュ52の円錐部分に位置し、ツールシャンクの円錐面が支持される。O-リング54は、長さ調整スクリュ52の円錐部内にこの目的のために備えられる周辺溝に安着する。しかし、シャンクツールが進入する前にO-リング54を円錐部内に緩く挿入することも考慮できる。また、
図8、
図9及び
図10に対する事項も適用される。
【0034】
図12A及び
図12Bは、本発明の第6の実施形態による調整装置を示すものであって、作用原理の側面において
図6A及び
図6Bに示す第3の実施形態と非常に類似する。調整装置60も長さ調整スクリュ62を備え、長さ調整スクリュ62はシャンク12と長さ調整スクリュ62との間のいかなる角度ズレも補償され得るように補償本体64と相互作用する。長さ調整スクリュ62は、補償本体64に面する側に形成された丸い形状のセグメント66とその周辺にぐるりと回って延びる周辺溝67を備える。補償本体64は長さ調整スクリュ62に面する側に対応する形状の凹溝68を備え、丸い形状のセグメント66が凹溝68内に収容され、凹溝68の表面上に近接して置かれる。また、補償本体64は周辺に半径方向内側に延びる突出部69を備え、突出部69は、長さ調整スクリュ62と補償本体64の組立てと解体が可能に、予め設定された量だけ長さ調整スクリュ62の溝67内に結合される。それにより、補償本体64は丸い形状のセグメント66に対していかなる方向にも回転でき、突出部69と溝68の相互作用により軸方向に固定される。補償本体64と長さ調整スクリュ62は、工具4の冷却液の供給のための通路を備えることが好ましい。
【0035】
相互にスライドする丸い形状のセグメント66と凹溝68の表面は、例えば、優れた滑り性質を有する適切な材質及び/又はコーティング部を選択することで構成され、収縮過程中、補償本体64が長さ調整スクリュ62の丸い形状のセグメント66に対して軸方向に圧縮される際にも、補償本体64が長さ調整スクリュ62に対して継続して回転できるようにする。
【0036】
従って、本発明の第6の実施形態による装置は、更に
図12Bに示すように、収縮による工具の位置と配置(orientation)における変化を補償できる。
【0037】
本発明の前記全ての実施形態は、長さ調整スクリュでない場合にも機能するが、コーティング部、バネ要素、又は補償本体による適切な補償がなければ、平坦度欠陥又は軸方向の誤差を有するシャンクの端部は、
図3Bに示すような焼きばめチャックでのツールの傾斜(tilting)につながり得る。
【0038】
また、
図2に示され、調整装置(対応する補償部を含む)を通過する冷却通路17は、
図3〜
図6及び
図9において図面の明確性のために省略されている。
また、本発明は、以下の態様の一様式により実施することができる。
(態様1)
焼きばめチャック工具ホルダ(2)内でシャンクツール(4)を軸方向に支持するための調整装置(20;30;40;50;60)であって、
収縮による前記シャンクツール(4)の位置及び/又は配置の変化を補償するか又は少なくとも減少させる、前記シャンクツール(4)に面する側に形成された補償部(24;34;44;54;64)を備えることを特徴とする調整装置(20;30;40;50;60)。
(態様2)
前記焼きばめチャック工具ホルダ(2)内に、好ましくは段のない、軸方向位置の設定のための調整部(22;32;42;52;62)を備えることを特徴とする態様1に記載の調整装置(20;30;40;50;60)。
(態様3)
前記補償部(24;34;44;54;64)は、前記焼きばめチャック工具ホルダ(2)、前記調整部(22;32;42;52;62)、及び前記シャンクツール(4)よりも低い強度及び/又は弾性力を有することを特徴とする態様1又は2に記載の調整装置(20;30;40;50;60)。
(態様4)
前記補償部(24;34;44;54;64)の軸方向延長長さが、収縮による前記ツール(4)の軸方向への位置変化よりも大きいことを特徴とする態様1〜3のいずれか一項に記載の調整装置(20;30;40;50;60)。
(態様5)
前記調整部は、調整スクリュ(22;32;42;52;62)により構成されることを特徴とする態様4に記載の調整装置(20;30;40;50;60)。
(態様6)
前記調整部(22)と前記補償部(24)は、一体に構成されていることを特徴とする態様4又は5に記載の調整装置(20)。
(態様7)
前記補償部は、前記調整部(22)のコーティング部(24)であることを特徴とする態様6に記載の調整装置(20)。
(態様8)
前記コーティング部(24)は、アルミニウム又は黄銅を含むことを特徴とする態様7に記載の調整装置(20)。
(態様9)
前記補償部は、前記シャンクツール(4)が前記調整部に間接的に支持され得るように、弾性的に又はプラスチックのように変形可能な分離された要素(34)であることを特徴とする態様4に記載の調整装置(30)。
(態様10)
前記分離された要素は、硬質ゴム又はプラスチック材質のディスクであることを特徴とする態様9に記載の調整装置(30)。
(態様11)
前記補償部は、前記調整部(22;32;42;52)の前に位置するバネ要素、好ましくは、カップバネ(34)であることを特徴とする態様9に記載の調整装置(30)。
(態様12)
前記調整部(42;62)と前記補償部(44;64)は相互接触する面(46、48;66、68)を備え、そのうちの1つは窪むように形成され、もう1つは凸に形成されて、前記調整部(42;62)の長手方向軸と前記補償部(44;64)は相互に対して傾斜し得るようにしたことを特徴とする態様4に記載の調整装置(40;60)。
(態様13)
前記補償部は、前記調整スクリュの端面に備えられて前記端面を超えて突出するO-リングにより構成され、前記シャンクツール(4)が前記調整スクリュに間接的に支持され得ることを特徴とする態様4に記載の調整装置(50)。
(態様14)
前記シャンクツール(4)に冷却液を供給するための少なくとも1つの冷却液通路(17)を備えることを特徴とする態様1〜13のいずれか一項に記載の調整装置(20;30;40;50;60)。
(態様15)
前記補償部(24;34;44;54;64)は、前記シャンクツール(4)に面する側に平坦なシャンクの端部のための平らな停止部16を備えることを特徴とする態様1〜14のいずれか一項に記載の調整装置(20;30;40;50;60)。
(態様16)
前記補償部(24;34;44;54;64)は、前記シャンクツール(4)に面する側に円錐状シャフトの端部のための円錐状停止部を備えることを特徴とする態様1〜14のいずれか一項に記載の調整装置(20;30;40;50;60)。
(態様17)
前記調整部(62)は、前記シャンクツール(4)に面する側に、丸い形状のセグメント(66)とその周囲を回って延びる環状の溝(67)を備え、
前記補償部(64)は、前記調整部(62)に面する側に凹溝(68)と半径方向内側に延びる環状突出部(69)を備え、
前記丸い形状のセグメント(66)は、前記凹溝(68)に収容され、その表面に隣接して置かれ、
前記突出部(69)は、前記環状溝(67)に結合され、前記調整部(62)の前記長手方向軸と前記補償部(64)が相互に傾斜することが可能であることを特徴とする態様12に記載の調整装置(60)。
(態様18)
工具機械に連結するための固定部(6)と、熱膨張が可能な焼きばめ部(8)を備えるシャンクツール(4)、特に円筒状シャンクツール用焼きばめチャック工具ホルダ(2)において、
前記焼きばめ部は、ツールシャンク(12)を中心に収容に適合した内部溝(10)と、請求項1〜請求項17による調整装置(20;30;40;50;60)を備え、
前記調整装置は、前記内部溝(10)に軸方向に沿って移動可能に位置し、
前記調整装置により前記シャンクツール4の軸方向位置が前記焼きばめ部8内で調整され得ることを特徴とする焼きばめチャック工具ホルダ(2)。