特許第5873928号(P5873928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873928
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】印刷機
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/40 20060101AFI20160216BHJP
   B41F 15/08 20060101ALI20160216BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B41F15/40 B
   B41F15/08 303E
   H05K3/34 505D
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-532636(P2014-532636)
(86)(22)【出願日】2012年8月29日
(86)【国際出願番号】JP2012071879
(87)【国際公開番号】WO2014033860
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2014年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】早野 仁
(72)【発明者】
【氏名】盛田 三春
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−262750(JP,A)
【文献】 特開平03−256743(JP,A)
【文献】 特表2002−503161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/00−15/46
B65G 47/90
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に基板が配置されたマスクの上面でスキージを有するスキージユニットを一方向に進退させて半田を移動させることにより前記基板に半田を印刷する印刷機であって、
前記スキージユニットにおける前記スキージが設置された位置から進退方向に離間した位置に半田をのせるためのシートが備わった半田のせ降ろし装置が取り付けられており、
前記シートを進退方向の一方に移動させながら進行方向の先端で下方から後方に反転して進行方向の反対側に向かわせることで、半田を前記シート上に載せるようにし、
前記半田のせ降ろし装置に、押圧ローラと、前記押圧ローラの下方に配置された従動ローラと、前記従動ローラの下方に配置された駆動ローラとが備わって、前記シートが前記押圧ローラと前記従動ローラとの間および前記従動ローラと前記駆動ローラとの間を通り、前記半田のせ降ろし装置が進退方向に移動する際に、前記駆動ローラが前記マスクに接触することで、前記駆動ローラが回転することを特徴とする印刷機。
【請求項2】
前記半田のせ降ろし装置の進退方向に直交する前記マスクの上面に沿った方向の幅が、前記スキージの進退方向に直交する前記マスクの上面に沿った方向の幅と同程度に設定されている請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記半田のせ降ろし装置が、上下動装置を介して前記スキージユニットに取り付けられている請求項1または2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記スキージの進退方向の両側にそれぞれ前記半田のせ降ろし装置が設けられている請求項1ないし3のうちのいずれか一つに記載の印刷機。
【請求項5】
前記シートを進退方向の他方に移動させながら進行方向の後端で前記反転と逆方向に反転させることで、前記シートに載せられた半田を前記シートから降ろすようにした請求項1から4のいずれか一つに記載の印刷機。
【請求項6】
前記シートが凹凸のある繊維またはスポンジで構成されている請求項1から5のいずれか一つに記載の印刷機。
【請求項7】
前記半田のせ降ろし装置が、上下動装置を構成する駆動シリンダと連動部材を介して前記スキージユニットに連結され、前記駆動シリンダの下降時に、前記連動部材によって前記押圧ローラが下方に押し下げられる請求項1から6のいずれか一つに記載の印刷機。
【請求項8】
前記半田のせ降ろし装置に、前記駆動ローラに連動して回転する伝動ローラと、前記シートの端部がそれぞれ連結された巻き上げローラと巻き戻しローラとが備わっており、前記巻き上げローラと前記巻き戻しローラとがそれぞれマグネットを介して前記伝動ローラに接している請求項1から7のいずれか一つに記載の印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に半田を印刷する印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品が実装される前の回路基板の表面にクリーム半田を印刷する印刷機が用いられている。この印刷機では、回路基板の上面に印刷用開口を備えたマスクを配置して、マスクの上面にクリーム半田を載せ、このクリーム半田をスキージでマスク上面の一方から他方に移動させることにより、回路基板にクリーム半田を印刷することが行われる。また、印刷工程の中で、回路基板の種類に応じてマスクを交換することがあり、この場合には、マスク上面に残ったクリーム半田をヘラを用いて、新たなマスクの上面に移し変える作業が行われる。しかしながら、これによると、クリーム半田をヘラで何回かに分けて移し変えなければならず、作業が煩雑になるとともに長い時間がかかる。また、移し変える際に、クリーム半田の形状が崩れてしまうため、新たなマスクを用いて印刷を開始する際に、クリーム半田の形状を整える作業が必要になる。
【0003】
一方、マヨネーズや生クリームのような不定形物やゲル状物を掬い上げて他の場所へ移し変える物品のせ降ろし装置も開発されている(例えば、特開2008−184265号公報を参照)。この物品のせ降ろし装置は、内部にモータが設けられた前後に長い基体と、リング状のベルトと、モータの作動により回転するネジシャフトと備えている。ベルトは、移動板の底面から上面に周回され両端が固定具を介して基体の先端に固定され、ネジシャフトは、モータと移動板とを連結しモータの作動により移動板を前後にスライドさせる。そして、移動板が前方に移動するとベルト前方側が移動板底面側から移動板上面側に繰り出され、移動板が後方に移動するとベルト前方側が移動板上面側から移動板底面側に引き戻される。これによって、所定の物品を掬い上げたり、降ろしたりすることができる。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、前述した物品のせ降ろし装置を、印刷機で用いることは困難である。すなわち、この物品のせ降ろし装置を印刷機で用いると、基体に対して移動板が移動することにより前後方向の長さを長く設定する必要があり、印刷機内のマスク上の端部側でクリーム半田を掬い上げたり、降ろしたりすることは困難になる。また、この物品のせ降ろし装置を印刷機で用いると、印刷機全体の構成が複雑になりコストが増大するという問題も生じる。さらに、ベルトが固定であるため、ベルトの同じ部分にクリーム半田が載せられるようになり、複数回の使用により別のクリーム半田と混ざってしまうこともある。
【0005】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、半田の形状を崩すことなく一括で載せ降ろしすることで、段取りの時間を短縮できる半田のせ降ろし装置を備えた印刷機を提供することである。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係る印刷機の構成上の特徴は、下方に基板が配置されたマスクの上面でスキージを有するスキージユニットを一方向に進退させて半田を移動させることにより前記基板に半田を印刷する印刷機であって、前記スキージユニットにおける前記スキージが設置された位置から進退方向に離間した位置に半田をのせるためのシートが備わった半田のせ降ろし装置が取り付けられており、前記シートを進退方向の一方に移動させながら進行方向の先端で下方から後方に反転して進行方向の反対側に向かわせることで、半田を前記シート上に載せるようにし、前記半田のせ降ろし装置に、押圧ローラと、前記押圧ローラの下方に配置された従動ローラと、前記従動ローラの下方に配置された駆動ローラとが備わって、前記シートが前記押圧ローラと前記従動ローラとの間および前記従動ローラと前記駆動ローラとの間を通り、前記半田のせ降ろし装置が進退方向に移動する際に、前記駆動ローラが前記マスクに接触することで、前記駆動ローラが回転することにある。
【0007】
本発明に係る印刷機によると、半田のせ降ろし装置がスキージとともにスキージユニットに設けられ、かつスキージと進退方向に離間した位置に配置されている。このため、スキージによってマスク上面の一方に寄せられた半田をすべて一度でシートからのせ降ろしすることができる。このように、半田ののせ降ろしを一度でできることで、マスク交換の際の半田の移し変えの時間を短縮できる。また、半田の形状を崩すことなく、のせ降ろしできることで、新たなマスクを用いたときに、半田の形状を整えることが不要になり、これによって半田ローリングの時間の短縮が図れる。なお、本発明で言う一方向は、左右、前後等往復を含めた方向である。
また本発明では、マスク上面の一方に寄せられたすべての半田を効果的に掬い上げてシートの上に載せることができる。この場合、細いローラや丸棒等を用いてシートを反転させることができる。
また、本発明では、押圧ローラ、従動ローラおよび駆動ローラが上方から下方に順に配置され、シートが押圧ローラと従動ローラとの間および従動ローラと駆動ローラとの間を通っている。そして、半田のせ降ろし装置が移動する際に、駆動ローラがマスクに接触するように構成されている。このため、半田のせ降ろし装置が移動する際に、押圧ローラを下方に押圧すると、駆動ローラの回転に連動して従動ローラが回転し、従動ローラの回転に連動して押圧ローラが回転する。そして、従動ローラは駆動ローラと逆方向に回転し、押圧ローラは従動ローラと逆方向に回転する。したがって、各ローラ間を通るシートを効果的に移動させることができる。また、各ローラが上下に配置されるため、半田のせ降ろし装置の進退方向の幅を短くすることができる。これによって、狭い場所での半田のせ降ろし装置の使用が可能になる。
【0008】
本発明に係る印刷機の他の構成上の特徴は、半田のせ降ろし装置の進退方向に直交するマスクの上面に沿った方向の幅が、スキージの進退方向に直交するマスクの上面に沿った方向の幅と同程度に設定されていることにある。本発明によると、半田のせ降ろし装置の大きさを必要最小限にしながらスキージでマスク上面の一方に寄せた半田を一度でのせ降ろしすることができる。
【0009】
本発明に係る印刷機のさらに他の構成上の特徴は、半田のせ降ろし装置が、上下動装置を介してスキージユニットに取り付けられていることにある。本発明によると、スキージで半田を印刷する際に、半田のせ降ろし装置を上方に退避させることができるため、半田のせ降ろし装置がスキージの印刷動作の障害になることを防止できる。
【0010】
本発明に係る印刷機のさらに他の構成上の特徴は、スキージの進退方向の両側にそれぞれ半田のせ降ろし装置が設けられていることにある。本発明によると、マスクの上面におけるスキージの進退方向のどちら側に半田が寄せられた場合においても、半田をのせ降ろしすることができる。
【0012】
本発明に係る印刷機のさらに他の構成上の特徴は、シートを進退方向の他方に移動させながら進行方向の後端で前記反転と逆方向に反転させることで、シートに載せられた半田をシートから降ろすようにしたことにある。本発明によると、シートに載せたすべての半田を効果的にマスクの上に載せることができる。なお、この場合の逆方向とは、前述した進行方向の先端で下方から後方に反転して進行方向の反対側に向かわせるの逆方向であり、進行方向の後端でシートを上方から後方に反転して、シートの下方上方とで向かう方向を変えることである。
【0013】
本発明に係る印刷機のさらに他の構成上の特徴は、シートが凹凸のある繊維またはスポンジで構成されていることにある。本発明によると、シートに半田を付着させることなく、容易に半田をシートに載せたり、シートから降ろしたりすることができる。これは、シートを凹凸のある材料で構成することによって、半田との接触面積が小さくなることにより可能になる。
【0016】
本発明に係る印刷機のさらに他の構成上の特徴は、半田のせ降ろし装置が、上下動装置を構成する駆動シリンダと連動部材を介してスキージユニットに連結され、駆動シリンダの下降時に、連動部材によって押圧ローラが下方に押し下げられることにある。本発明によると、半田ののせ降ろしを行う際に、駆動シリンダを下降させると、自動的に押圧ローラが下方に押し下げられて駆動ローラをマスクに押圧するとともに、シートが各ローラ間に挟まれるようになる。このため、シートの移動を容易にすることができる。
【0017】
本発明に係る印刷機のさらに他の構成上の特徴は、半田のせ降ろし装置に、駆動ローラに連動して回転する伝動ローラと、シートの端部がそれぞれ連結された巻き上げローラと巻き戻しローラとが備わっており、巻き上げローラと巻き戻しローラとがそれぞれマグネットを介して伝動ローラに接していることにある。
【0018】
本発明によると、巻き上げローラと伝動ローラおよび巻き戻しローラと伝動ローラをそれぞれベルトを用いることなく連動させることができる。また、巻き上げローラと伝動ローラおよび巻き戻しローラと伝動ローラの取り外しが容易に行えるため、巻き上げローラと巻き戻しローラへのシートの取り付け取り外しおよび各ローラやシートの清掃が容易になる。また、シートは、巻き上げローラと巻き戻しローラとによって繰り出されたり引き戻されたりするため、帯状の長いシートを用いて適宜半田に接触する場所を変更しながら使用することができる。これによって、シートを介して異なる半田が混ざることを防止できる。
【0019】
また、従来の印刷機において手動の半田のせ降ろし装置を用いることもできる。この場合の半田のせ降ろし装置としては、半田を乗せるシートと、手によって回転される押圧ローラと、押圧ローラの回転力を受けて回転し、押圧ローラとでシートを挟みこみシートを進退させる従動ローラと、半田が置かれている面を回転しながら走行し、従動ローラとでシートを挟みこみシートを進退させる駆動ローラとを有するように構成することができる。
【0020】
この半田のせ降ろし装置には、押圧ローラ、従動ローラおよび駆動ローラが備わっており、押圧ローラを手で回転させることにより、従動ローラおよび駆動ローラが順次連動して回転する。そして、シートが押圧ローラと従動ローラとの間および従動ローラと駆動ローラとの間を通っている。このように複数のローラにシートを組み付けた簡単な構成にすることによりシートの進退方向の幅を抑制することができる。また、半田ののせ降ろしを一括してできることで、半田の移し変えの時間を短縮できる。さらに、半田の形状を崩すことなく、のせ降ろしできることで、次の操作の際に、半田の形状を整えることが不要になり、これによって半田ローリングの時間の短縮が図れる。また、ベルトを用いずに各ローラの回転力を伝達するため半田のせ降ろし装置に故障が生じ難くなる。
【0021】
また、半田のせ降ろし装置のシートを凹凸のある繊維またはスポンジで構成することができる。この半田のせ降ろし装置によると、シートに半田を付着させることなく、容易に半田をシートに載せたり、シートから降ろしたりすることができる。これは、シートを凹凸のある材料で構成することによって、半田との接触面積が小さくなることにより可能になる。
【0022】
さらに、半田のせ降ろし装置を、駆動ローラに連動して回転する伝動ローラと、シートの端部がそれぞれ連結された巻き上げローラと巻き戻しローラとが備わり、巻き上げローラと巻き戻しローラとがそれぞれマグネットを介して伝動ローラに接するように構成することができる。
【0023】
この半田のせ降ろし装置によると、巻き上げローラと伝動ローラおよび巻き戻しローラと伝動ローラを、それぞれベルトを用いることなく連動させることができる。また、巻き上げローラと伝動ローラおよび巻き戻しローラと伝動ローラの取り外しが容易に行えるため、巻き上げローラと巻き戻しローラへのシートの取り付け取り外しおよび各ローラやシートの清掃が容易になる。また、シートは、巻き上げローラと巻き戻しローラとによって繰り出されたり引き戻されたりするため、帯状の長いシートを用いて、適宜半田に接触する場所を変更しながら使用することができる。これによって、シートを介して異なる半田が混ざることを防止できる。
【0024】
また、半田のせ降ろし装置を、押圧ローラの下方に従動ローラが配置され、従動ローラの下方に駆動ローラが配置されているように構成することができる。この半田のせ降ろし装置によると、手によって押圧ローラに荷重を加えながら回転させることにより、押圧ローラの回転力が、従動ローラおよび駆動ローラに順次伝達されていく。したがって、シートを、荷重を掛けることによって滑ることを防止した状態で効果的に移動させることができる。また、各ローラが上下に配置されるため、半田のせ降ろし装置の進退方向の幅を短くすることができる。これによって、半田のせ降ろし装置を、狭い場所で使用することが可能になる。
【0025】
さらに、半田のせ降ろし装置を、駆動ローラに連動して回転する伝動ローラと、シートの端部がそれぞれ連結された巻き上げローラと巻き戻しローラとが備わり、駆動ローラの回転力を伝動ローラを介して巻き上げローラに伝えて、使用後のシートを巻き取るように構成することができる。この半田のせ降ろし装置によると、使用後のシートを巻き上げローラで巻き取ることにより、シートの回収が容易になる。
【0026】
また、半田のせ降ろし装置を、駆動ローラに連動して回転する伝動ローラと、シートの端部がそれぞれ連結された巻き上げローラと巻き戻しローラとが備わり、駆動ローラの回転力を伝動ローラを介して巻き戻しローラに伝えて、使用前のシートを送り出すように構成することができる。この半田のせ降ろし装置によると、使用前のシートを巻き戻しローラからスムーズに送り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷機の断面図である。
図2】取付治具を示した側面図である。
図3】半田のせ降ろし装置を示した斜視図である。
図4】半田のせ降ろし装置を示した側面図である。
図5】巻き上げローラと巻き戻しローラとを離間させた状態の半田のせ降ろし装置を示した斜視図である。
図6】半田のせ降ろし装置に取付治具を取り付けた状態を示した側面図である。
図7】半田のせ降ろし装置を取付治具を介して駆動シリンダに連結した状態を示した側面図である。
図8】印刷動作時の印刷機の要部を示した断面図である。
図9】半田のせ降ろし動作時の印刷機の要部を示した断面図である。
図10】半田のせ降ろし装置でクリーム半田を掬い上げる状態を示した説明図である。
図11】半田のせ降ろし装置で掬い上げたクリーム半田を降ろす状態を示した説明図である。
図12】シート上に掬い上げられたクリーム半田を示した説明図である。
図13】2つのスキージを備えた印刷機の断面図である。
図14】手動による半田のせ降ろし装置が用いられる印刷機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る印刷機10を示しており、この印刷機10は、プリント基板Aの表面に、ペースト状のクリーム半田Bを印刷するための装置である。印刷機10は、基台11と、基台11に設けられプリント基板Aを所定の設置位置に設置するための設置装置12と、プリント基板Aの設置位置の上方に取替え可能に設置されたマスク13と、マスク13の上方に設けられ駆動装置の作動によりX軸方向(図1の左右方向)に進退移動するスキージユニット20とを備えている。以下、本実施形態においては、左右、前後、上下の各方向は、図1に基づいて説明する。
【0029】
基台11は、本体11aの左右両側に脚部11bを設けて構成されており、本体11aには前後に貫通する幅広の開口部11cと上下に貫通する開口部とが形成されている。そして、図示は省略しているが、開口部11cの前後には、それぞれ搬入用のコンベアと搬出用のコンベアとが設置されており、設置装置12は、搬入用のコンベアと搬出用のコンベアとの間に設けられている。プリント基板Aは搬入用コンベアで設置装置12に搬送され、印刷処理が施されたのちに、搬出用コンベアで搬出される。設置装置12は、搬入用のコンベアで搬送されてきたプリント基板Aをマスク13の下面に位置決め固定するもので、プリント基板Aを左右、前後、上下および水平面上での回転方向に変位可能に支持する。
【0030】
この設置装置12には、プリント基板Aを支持する支持機構やプリント基板Aを把持するクランプ機構を備えた支持固定部12aと、支持固定部12aを各方向に移動させる移動機構とが備わっている。支持固定部12aの支持機構は、支持ピンを用いてプリント基板Aを下方から支持し、クランプ機構は、一対の把持片でプリント基板Aを左右から挟む。また、移動機構には、ガイドレール12b、ボールねじ12cおよびサーボモータ12d等を備えて支持固定部12aをX軸方向に移動させるX軸駆動部、支持固定部12aをY軸方向(前後方向)に移動させるY軸駆動部、支持固定部12aをZ軸方向(上下方向)に移動させるZ軸駆動部および、支持固定部12aをZ軸周りに回転させるR軸駆動部が備わっている。
【0031】
マスク13は、矩形の枠体の下端開口部に、複数の印刷用開口部を備えたマスクシートを張り付けて構成されている。このマスク13は、基台11の本体11aの上下に貫通する開口部を塞ぐように設置されており、図1に示したように、本体11aの左右方向の中央よりも少し左側の部分から本体11aの右端部近傍にかけて設けられている。また、マスク13としては、印刷用開口部の個数や配置が異なる複数のものが用いられ、印刷されるプリント基板Aに応じて適宜取り替えられる。
【0032】
基台11の上方には、左右に間隔を保って設けられた支持部に掛け渡されてマスク13の上方に位置するリニアガイド14が設けられており、スキージユニット20は、このリニアガイド14に移動可能に取り付けられている。スキージユニット20は、駆動装置(図示せず)の作動により、リニアガイド14に沿って左右方向に往復移動する。このスキージユニット20は、枠状のヘッド支持部21にスキージヘッド22と半田のせ降ろしヘッド25とを組み付けて構成されている。ヘッド支持部21は、上下に間隔を保って配置された板状の上面部21aと下面部21bとを連結片21c等を介して連結して構成されている。
【0033】
スキージヘッド22は、上面部21aと下面部21bとにわたって上下に設けられたボールねじ23aとガイド軸23bとを含む昇降機構23と、昇降機構23の作動により連結部材23cを介して昇降するスキージ保持部24aとを備えており、スキージ保持部24aにスキージ24が取り付けられている。このスキージ24は、マスク13の表面(マスクシート)に沿ってクリーム半田Bを移動させるもので、前後方向の幅がプリント基板Aよりも少し長く設定された細長い部材で構成され、その進行方向の先端部が平面状の板部材で構成されている。
【0034】
このスキージ24の先端の板部材は、硬質のウレタンまたはステンレス鋼で構成されており、マスク13の表面に接触したときに、印刷用開口部以外の部分との間には隙間が生じないように形成されている。また、スキージ24は、支軸を介してスキージ保持部24aに支持されており、支軸の軸周り方向に回転可能になっている。
【0035】
半田のせ降ろしヘッド25は、スキージヘッド22と離間してヘッド支持部21の右端側に設けられており、下面部21bに取り付けられた駆動シリンダ26と、駆動シリンダ26の下部に着脱可能に取り付けられた取付治具27と、取付治具27に着脱可能に取り付けられた半田のせ降ろし装置30とを備えている。駆動シリンダ26は、上下に延びる円筒状のシリンダ本体26aと、シリンダ本体26aの内部を貫通し、シリンダ本体26aに対して上下動する軸部26bとを備えており、シリンダ本体26aが、下面部21bを貫通した状態で下面部21bに固定されている。
【0036】
取付治具27は、本発明に係る連動部材を構成する部材であり、図2に示したように構成されている。取付治具27は、段違い状の円柱部からなる着脱部27aの下部に前後に延びる水平片27bを連結し、水平片27bの前後両端に下方に延びる支持腕部27cをそれぞれ連結して本体部分が構成されている。着脱部27aは、上下方向の長さよりも直径が大きな円板状に形成された上部と、上下方向の長さと直径とが略等しくその直径が上部の直径よりも短い円板状に形成された中央部と、中央部よりも直径が短く、上下方向の長さが中央部と略同じ棒状に形成された下部からなっている。
【0037】
水平片27bは、前後方向の長さがスキージ24よりも少し長くなった細長い板状に形成されている。そして、水平片27bの下面には、細径の一対のローラ28が僅かな間隔を保って平行して取り付けられている。一対のローラ28は、それぞれ水平片27bの長手方向に沿って延びており、軸周り方向に回転自在になっている。また、一対の支持腕部27cは、内面間の間隔がスキージ24の前後の長さよりも僅かに長くなるように間隔を保って配置されている。そして、両支持腕部27cの下端部には、それぞれ中心を通る仮想軸線が同一線上に位置するようにし配置されるベアリングとベアリングを支持腕部27cに固定するボルトからなる支持部材29が着脱可能に取り付けられている。
【0038】
半田のせ降ろし装置30は、図3および図4に示したように、回転支軸31の両端に回転可能に取り付けられたそれぞれ一対の外側支持片32と内側支持片33とに、駆動ローラ34、巻き戻しローラ35、伝動ローラ36、従動ローラ37、巻き上げローラ38および押圧ローラ39を組み付けて構成されている。回転支軸31は、細径の軸部材で構成されており、その一方の端部の外部側と内部側とに一方の外側支持片32と内側支持片33とが順に並んで取り付けられ、他方の端部の外部側と内部側とに他方の外側支持片32と内側支持片33とが順に並んで取り付けられている。
【0039】
一対の外側支持片32は、それぞれ複数の部材からなる同じ板状部材で構成されている。各外側支持片32は、側面を示した図4の状態で、左端から右方向に略真っ直ぐに延びる駆動ローラ支持片32aと、駆動ローラ支持片32aの右端に上下方向に回転可能に連結された緩い円弧状の巻き戻しローラ支持片32bと、巻き戻しローラ支持片32bの右端に上方の左右方向に回転可能に連結された略半円の円弧状の伝動ローラ支持片32cとで構成されている。また、駆動ローラ支持片32aの左端には下方に突出する小さな突部が形成されている。そして、駆動ローラ支持片32aの左端の突部、駆動ローラ支持片32aと巻き戻しローラ支持片32bとの連結部分、巻き戻しローラ支持片32bと伝動ローラ支持片32cとの連結部分および伝動ローラ支持片32cの先端部にそれぞれ貫通孔が形成されている。
【0040】
前述した回転支軸31は、駆動ローラ支持片32aの左端の突部の貫通孔を介して一対の外側支持片32に組み付けられている。駆動ローラ34は、大径の軸部材で構成されており、駆動ローラ支持片32aと巻き戻しローラ支持片32bとの連結部分の貫通孔を介して一対の外側支持片32に回転可能に組み付けられている。また、駆動ローラ34の両端は、それぞれ一対の外側支持片32の外側に突出しており、その突出部分の外周における外側支持片32側部分に高摩擦を有する当接部34aが形成されている。
【0041】
巻き戻しローラ35は、回転支軸31よりも大径で、駆動ローラ34よりも小径の軸部材で構成されており、巻き戻しローラ支持片32bと伝動ローラ支持片32cとの連結部分の貫通孔を介して一対の外側支持片32に回転可能に組み付けられている。この巻き戻しローラ35の両端は、それぞれ一対の外側支持片32の外側に突出しており、その突出部分の外周における外側支持片32側部分に外径が当接部34aよりも小さなマグネットからなる当接部35aが形成されている。
【0042】
伝動ローラ36は、直径が巻き戻しローラ35と略等しい軸部材で構成されており、伝動ローラ支持片32cの先端部の貫通孔を介して一対の外側支持片32に回転可能に組み付けられている。この伝動ローラ36の両端は、それぞれ一対の外側支持片32の外側に突出しており、その突出部分の外周における外側支持片32側部分に当接部36aが形成されている。この当接部36aは、外径が当接部34aと略同じに設定された高摩擦および磁性を有する金属で構成されている。このため、当接部36aは、当接部35aに吸引されて接触し、伝動ローラ36が回転するときに、巻き戻しローラ35は伝動ローラ36に連動して伝動ローラ36と反対方向に回転する。また、当接部36aを当接部34aに接触させて駆動ローラ34を回転させると、伝動ローラ36は駆動ローラ34に連動して駆動ローラ34と反対方向に回転する。
【0043】
このように、一対の外側支持片32、駆動ローラ34、巻き戻しローラ35および伝動ローラ36は、一体に組み付けられており、駆動ローラ34、伝動ローラ36および巻き戻しローラ35を順に接触させた状態で、駆動ローラ34が回転すると、それに連動して伝動ローラ36および巻き戻しローラ35も回転する。なお、巻き戻しローラ35は、当接部35aが、当接部36aに吸着することによって、伝動ローラ36に対する位置が適正な位置になるように保持される。
【0044】
一対の内側支持片33は、それぞれ複数の部材からなる同じ板状部材で構成されており、各内側支持片33は、従動ローラ支持片33aと、巻き上げローラ支持片33bと、押圧ローラ支持片33cとで構成されている。図4に示した状態で、従動ローラ支持片33aは、左側部分が、左端から下縁部が右方向に略真っ直ぐに延び上縁部が右上に延びる略三角形に形成され(図10および図11参照)、その左端に下方に突出する小さな突部が形成されているとともに、右上部に右方向に突出する大きな突部が形成された形状をしている。
【0045】
巻き上げローラ支持片33bは、従動ローラ支持片33aの大きな突部の先端に上下方向に回転可能に連結されており、緩い円弧状に形成されている。また、押圧ローラ支持片33cは、従動ローラ支持片33aの左右方向の中央上部に左右方向に回転可能に連結されており、略L形に形成されている。そして、従動ローラ支持片33aの左端の突部、従動ローラ支持片33aと巻き上げローラ支持片33bとの連結部分、巻き上げローラ支持片33bの先端部および押圧ローラ支持片33cの先端部にそれぞれ貫通孔が形成されている。
【0046】
回転支軸31は、従動ローラ支持片33aの左端の突部の貫通孔にも挿通しており、これによって、回転支軸31は一対の内側支持片33にも組み付けられている。従動ローラ37は、駆動ローラ34よりも少し小径の軸部材で構成されており、従動ローラ支持片33aと巻き上げローラ支持片33bとの連結部分の貫通孔を介して一対の内側支持片33に回転可能に組み付けられている。また、従動ローラ37の両端は、それぞれ一対の内側支持片33の外側に突出しており、その突出部分の先端は細径に形成されている。この従動ローラ37は、駆動ローラ34と接触可能に配置されており、駆動ローラ34に接触させた状態で、駆動ローラ34を回転させると、従動ローラ37は駆動ローラ34に連動して駆動ローラ34と反対方向に回転する。
【0047】
巻き上げローラ38は、巻き戻しローラ35と同じ軸部材で構成されており、巻き上げローラ支持片33bの先端部の貫通孔を介して一対の内側支持片33に回転可能に組み付けられている。この巻き上げローラ38の両端は、それぞれ一対の内側支持片33の外側に突出しており、その突出部分の外周における内側支持片33側部分にマグネットからなる当接部38aが形成されている。また、巻き上げローラ38は、当接部38aが伝動ローラ36の当接部36aに接触可能になるように配置されており、当接部38aを当接部36aに吸着させて伝動ローラ36を回転させると、巻き上げローラ38は伝動ローラ36に連動して伝動ローラ36と反対方向に回転する。
【0048】
押圧ローラ39は、直径が従動ローラ37と略等しい軸部材で構成されており、押圧ローラ支持片33cの先端部の貫通孔を介して一対の内側支持片33に回転可能に組み付けられている。この押圧ローラ39の両端は細径に形成され、その細径部が押圧ローラ支持片33cの先端部の貫通孔に摺動可能に係合している。また、押圧ローラ39は、従動ローラ37と接触したときに、従動ローラ37の上方に位置して、押圧ローラ39、従動ローラ37および駆動ローラ34の中心部が直線状に並ぶように配置されている。このため、押圧ローラ39を下方に押圧して、押圧ローラ39を回転させると、従動ローラ37は押圧ローラ39に連動して押圧ローラ39と反対方向に回転し、駆動ローラ34は従動ローラ37に連動して従動ローラ37と反対方向に回転する。
【0049】
このように、一対の内側支持片33、従動ローラ37、巻き上げローラ38および押圧ローラ39は一体に組み付けられており、一体となって、一対の外側支持片32に組み付けられた駆動ローラ34、巻き戻しローラ35および伝動ローラ36に組み付け可能になっている。そして、これらが組み付けられたときにすべてのローラが互いに連動して回転する。その際、巻き戻しローラ35の当接部35aと、巻き上げローラ38の当接部38aとが当接部36aに吸着することによって、伝動ローラ36は駆動ローラ34側に付勢されて当接部36aと当接部34aとが適正な状態で接触するようになる。
【0050】
また、一対の内側支持片33を上方に回転させて一対の外側支持片32から離間させることにより、図5に示したように、従動ローラ37、巻き上げローラ38および押圧ローラ39を、駆動ローラ34、巻き戻しローラ35および伝動ローラ36から離すことができる。さらに、一対の内側支持片33の従動ローラ支持片33aの左右方向の中央の下部と中央部とには、それぞれ支軸31a,31b,31c(図10および図11参照)が掛け渡されている。
【0051】
このうち、支軸31bは、従動ローラ支持片33aと押圧ローラ支持片33cとの連結部に掛け渡されている。すなわち、押圧ローラ支持片33cは、支軸31bによって回転可能に支持されている。また、支軸31cの両側には、それぞれ短い円弧状の支持腕31dが回転可能に設けられており、両支持腕31dの先端部には、荷重負荷用の押さえ棒31eが搖動可能に取り付けられている。そして、駆動ローラ34や従動ローラ37等、支軸31aおよび押さえ棒31eにシートCが掛け渡されている。
【0052】
シートCは、表面が凹凸に形成された不織布からなる帯状の長いもので構成されており、巻き戻しローラ35の周面に巻き付けられている。そして、シートCの先端部を巻き戻しローラ35の上部から繰り出して、駆動ローラ34の上部および支軸31aの下部を通過させたのちに、回転支軸31に巻回して反転させ、押さえ棒31eの下部および従動ローラ37の上部を通過させて巻き上げローラ38に巻き付けている(図10および図11参照)。巻き上げローラ38は下部からシートCを巻き上げたり繰り出したりする。なお、シートCを半田のせ降ろし装置30に取り付ける際には、図5に示したように、巻き戻しローラ35と巻き上げローラ38とを離間させた状態にしておく。これによって、シートCの取り付けが容易になる。
【0053】
このように構成された半田のせ降ろし装置30を印刷機10に組み込む場合には、まず、取付治具27の支持腕部27cの下端部間に駆動ローラ34の両端部を位置させて、駆動ローラ34の端部にそれぞれベアリングを取り付ける。このときベアリングの内輪に駆動ローラ34の端部を挿入する。その状態でベアリングをボルトで支持腕部27cに固定することにより、図6に示したように、ベアリングとボルトからなる支持部材29を介して、半田のせ降ろし装置30に取付治具27が取り付けられる。この場合、一対のローラ28が押圧ローラ39に当接することによって、押圧ローラ39が下方に付勢され、押圧ローラ39が従動ローラ37に圧接するとともに、従動ローラ37が駆動ローラ34に圧接する。
【0054】
そして、図7に示したように、アタッチメント29aを用いて、取付治具27を駆動シリンダ26の軸部26bに連結する。なお、図示は省略するが取付治具27の着脱部27aと軸部26bとの間には所定の操作により互いに連結したりその連結を解除したりする機構が備わっており、アタッチメント29aは、着脱部27aの下部に側方から着脱可能になっている。そして、着脱部27aと軸部26bとを合わせて、アタッチメント29aを着脱部27aに係合させると、着脱部27aと軸部26bは連結し、アタッチメント29aを着脱部27aから外すと、着脱部27aと軸部26bとの連結は解除される。
【0055】
印刷機10を用いて、プリント基板Aの表面にクリーム半田Bを印刷する場合には、まず、搬入用コンベアから搬送されてきたプリント基板Aを設置装置12に設置して、マスク13の下面に位置決めする。そして、図8に示したように、駆動シリンダ26を作動させて半田のせ降ろし装置30を上昇させるとともに、スキージ24を下降させてマスク13の表面に接触させた状態で、マスク13の表面の一方にクリーム半田Bを載せる。そして、スキージユニット20を左右方向に移動させることにより、プリント基板Aの表面にクリーム半田Bを所定の形状で印刷する。この場合、半田のせ降ろし装置30がマスク13の上方に位置しているため、スキージ24による印刷処理の妨げになることはない。
【0056】
そして、印刷が終了したプリント基板Aは、搬出用のコンベアで次の工程に搬送し、搬入用コンベアから搬送されてくる新たなプリント基板Aを、マスク13の下面に位置決めする。同様にして、このプリント基板Aの表面にもクリーム半田Bを印刷し、前述した処理を繰り返し行う。そして、所定の印刷処理が終了し、続いて、印刷パターンの異なるプリント基板Aに印刷を行う場合には、マスク13を新たなプリント基板Aに応じたものに取り替えるとともに、残存しているクリーム半田Bを使用後のマスク13から使用前のマスク13に移し変える処理を行う。
【0057】
この場合、図9に示したように、スキージユニット20を左右方向に移動させて、半田のせ降ろし装置30の左端部がクリーム半田Bの右側近傍に位置するようにしたのちに、半田のせ降ろし装置30を下降させて、その下部をマスク13の表面に接触させる。その状態で、半田のせ降ろし装置30を左側に移動(前進)させる。これによって、図10に示したように、駆動ローラ34がマスク13との摩擦によって、反時計周り方向に回転する。同時に、伝動ローラ36が時計周り方向に回転することにより巻き戻しローラ35が反時計回り方向に回転し、巻き戻しローラ35からシートCが繰り出される。この際、従動ローラ37は時計周り方向に回転して駆動ローラ34とでシートCを左方向に移動させる。
【0058】
また、押圧ローラ39は反時計周り方向に回転して、従動ローラ37との間でシートCを右方向に移動させ、巻き上げローラ38が伝動ローラ36に連動して反時計周り方向に回転することにより、シートCは巻き上げローラ38に巻き上げられる。これによって、シートCは下方で右から左に進み、回転支軸31で反転して、上方で左から右に進むようになる。このため、クリーム半田Bは、回転支軸31の部分でシートCに掬い上げられてシートCの上部に載る。この場合、シートCは、回転支軸31と従動ローラ37との間で押さえ棒31eによって下方に押し下げられるため傾斜角度が小さくなりクリーム半田Bを容易に掬い上げることができる。その状態で、スキージ24および半田のせ降ろし装置30を上昇させて、マスク13を取り替える。
【0059】
そして、半田のせ降ろし装置30を下降させて、その下部を取り替えたマスク13の表面に接触させる。その状態で、スキージユニット20を右側に移動(後退)させる。これによって、図11に示したように、駆動ローラ34がマスク13との摩擦によって、時計周り方向に回転する。同時に、伝動ローラ36、巻き戻しローラ35、従動ローラ37、押圧ローラ39および巻き上げローラ38は、前述した半田のせ降ろし装置30が左側に移動するときと反対の方向に回転して、シートCは上方で右から左に進み、回転支軸31で反転して、下方で左から右に進むようになる。このため、クリーム半田Bは、回転支軸31の部分でシートCから降ろされてマスク13の上面に移される。
【0060】
この場合、図12に示したように、シートCの表面には凹凸が形成されて、クリーム半田Bとの接触面積が小さくなることから、クリーム半田Bが降ろされたのちのシートCの表面にはクリーム半田Bは殆ど付着しない。その状態で、半田のせ降ろし装置30を上昇させて、再度、プリント基板Aの表面へのクリーム半田Bの印刷が行われる。なお、半田のせ降ろし装置30のシートCは、同じ部分を複数回使用することができるが、汚れ等が生じた場合には、巻き戻しローラ35や巻き上げローラ38等を回転させて、異なる部分を使用する。また、シートCを取り替える際には、図5に示したように、巻き戻しローラ35と巻き上げローラ38とを離間させた状態にする。これによって、シートCの取り替え作業が容易になる。
【0061】
このように、本実施形態に係る印刷機10では、半田のせ降ろし装置30がスキージ24と離間した状態で、スキージ24とともにスキージユニット20に設けられ、かつ半田のせ降ろし装置30とスキージ24との幅が略同じになっている。このため、スキージ24によってマスク13の表面の一方に寄せられたクリーム半田Bをすべて一度でのせ降ろしすることができる。このように、クリーム半田Bののせ降ろしを一度でできることで、マスク13を交換する際のクリーム半田Bの移し変えの時間を短縮できる。また、クリーム半田Bの形状を崩すことなく、のせ降ろしできることで、新たなマスク13を用いたときに、クリーム半田Bの形状を整えることが不要になり、これによって次の印刷工程でのローリングの時間の短縮が図れる。
【0062】
また、半田のせ降ろし装置30が昇降可能になっているため、スキージ24でクリーム半田Bを印刷する際に、半田のせ降ろし装置30を上方に退避させることができる。このため、半田のせ降ろし装置30がスキージ24の印刷動作の障害になることはない。さらに、クリーム半田Bを掬い上げるシートCとして、凹凸のある不織布を用いているため、シートCにクリーム半田Bを付着させることなく、容易にクリーム半田BをシートCに載せたり、シートCから降ろしたりすることができる。
【0063】
本実施形態に係る半田のせ降ろし装置30では、押圧ローラ39、従動ローラ37および駆動ローラ34を上下に配置したため、半田のせ降ろし装置30の進退方向の幅を短くすることができる。また、回転支軸31と従動ローラ37との間に押さえ棒31eを設けることによってシートCにおける上方に位置する部分を下方に押し下げるととともに、回転支軸31と駆動ローラ34との間に支軸31aを設けることによってシートCにおける下方に位置する部分を下方に押し下げている。これによって、シートCの傾斜角度を小さくしクリーム半田Bを容易に掬い上げることができるとともに、シートCにおける上方に位置する部分と下方に位置する部分とが接触することを防止できる。
【0064】
さらに、本実施形態では、半田のせ降ろし装置30の巻き戻しローラ35と巻き上げローラ38とがそれぞれマグネットで構成された当接部35aと当接部38aとを介して伝動ローラ36の当接部36aに接している。そして、当接部35aと当接部38aとがそれぞれ当接部36aに吸着することによって、伝動ローラ36が駆動ローラ34側に付勢されている。このため、巻き戻しローラ35と伝動ローラ36および巻き上げローラ38と伝動ローラ36等の各ローラ間をそれぞれベルトを用いることなく連動させることができる。これによって、半田のせ降ろし装置30に故障が生じ難くなるという効果も生じる。
【0065】
また、各ローラ間を容易に接離できるため、シートCの取り付け取り外しや各ローラやシートCの清掃が容易になる。さらに、本実施形態では、帯状の長いシートCを用いているため、クリーム半田Bに接触する部分を変更しながら使用することができる。これによって、シートCを介して異なるクリーム半田Bが混ざることを防止できる。また、本実施形態では、駆動ローラ34の回転力を伝動ローラ36を介して、巻き戻しローラ35および巻き上げローラ38に伝えて、使用前のシートCを巻き戻しローラ35から送り出すとともに、使用後のシートCを巻き上げローラ38で巻き取るようにしている。このため、使用前のシートCの送り出し、および、使用後のシートCの回収がスムーズ、かつ容易になる。
【0066】
図13は、本発明の他の実施形態に係る印刷機40を示している。この印刷機40では、スキージユニット40aが、上面部41aと下面部41bと連結片41cとからなるヘッド支持部41に、スキージヘッド46と半田のせ降ろしヘッド(図示せず)とを組み付けて構成されている。スキージヘッド46は、昇降シリンダ42と昇降シリンダ42の作動によって昇降するスキージ43、および、昇降シリンダ44と昇降シリンダ44の作動によって昇降するスキージ45とを備えている。スキージ43とスキージ45とは左右の向きを逆にして設置されている。このためスキージ43とスキージ45は、支軸を中心に回転可能にしてもよいが回転することなく固定された状態にしてもよい。
【0067】
また、図示は省略しているが、スキージユニット40aにおけるスキージヘッド46の左右両側には、前述した半田のせ降ろし装置30がそれぞれ左右の向きを逆にして設置される。すなわち、一対の半田のせ降ろし装置30は、回転支軸31が対向するように配置される。この印刷機40のそれ以外の部分の構成は、前述した印刷機10と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
【0068】
印刷機40を用いて、スキージユニット40aを右から左に移動させてプリント基板Aの表面にクリーム半田Bを印刷する場合には、図13に示した状態から、スキージ43を上昇させ、スキージ45を下降させた状態にする。そして、スキージユニット40aを右から左に移動させることによりプリント基板Aの表面にクリーム半田Bを印刷する。また、スキージユニット40aを左から右に移動させてプリント基板Aの表面にクリーム半田Bを印刷する場合には、スキージ45を上昇させ、スキージ43を下降させた状態でスキージユニット40aを左から右に移動させて図13の状態にする。このように、本実施形態に係る印刷機40によれば、スキージユニット40aを左右のどちらに移動させてもプリント基板Aの表面にクリーム半田Bを印刷することができる。
【0069】
そして、マスク13の交換のために、クリーム半田Bの移し替えを行う場合には、クリーム半田Bが、マスク13の表面における右側部分に位置していれば、スキージヘッド46の右側に設置された半田のせ降ろし装置30を用いてクリーム半田Bの移し替えを行う。また、クリーム半田Bが、マスク13の表面における左側部分に位置していれば、スキージヘッド46の左側に設置された半田のせ降ろし装置30を用いてクリーム半田Bの移し替えを行う。この場合の半田のせ降ろし装置30による処理は、前述した実施形態と同じである。本実施形態によると、マスク13の表面における左右方向のどちら側にクリーム半田Bが寄せられていても、クリーム半田Bをのせ降ろしすることができる。この印刷機40のそれ以外の作用効果については、前述した印刷機10と同様である。
【0070】
また、他の実施形態として、半田のせ降ろし装置30を作業者が手動で操作することもできる。この場合、印刷機としては、例えば、図14に示した半田のせ降ろし装置30が備わっていない印刷機10aを用いる。この印刷機10aでは、スキージユニット20aに半田のせ降ろしヘッドは組み付けられてなく、スキージヘッド22だけが組み付けられている。このため、上面部51aと下面部51bとを連結片51cとで構成されるヘッド支持部51は前述したヘッド支持部21よりも左右方向の長さが短くなっている。この印刷機10aのそれ以外の部分の構成については、前述した印刷機10と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
【0071】
本実施形態においては、マスク13の交換の際に、クリーム半田Bの移し替えを行う場合、作業者が、半田のせ降ろし装置30を手で持って操作する。この場合、半田のせ降ろし装置30は、図3に示したように半田のせ降ろし装置30だけの状態で使用してもよいし、図6に示したように、取付治具27を取り付けた状態で使用してもよい。半田のせ降ろし装置30だけを用いる場合には、マスク13の上面に半田のせ降ろし装置30を載せて、押圧ローラ39を下方に押しながら回転させるとともに、半田のせ降ろし装置30を進行方向に押して移動させる。
【0072】
シートCにクリーム半田Bを載せる場合には、押圧ローラ39の上部を進行方向に押すようにして押圧ローラ39を回転させながら半田のせ降ろし装置30を前進させる。また、シートCからクリーム半田Bを降ろす場合には、押圧ローラ39の上部を後方に押すようにして押圧ローラ39を回転させながら半田のせ降ろし装置30を後退させる。また、取付治具27を取り付けた半田のせ降ろし装置30を用いる場合には、取付治具27によって、押圧ローラ39は下方に付勢されて、従動ローラ37および駆動ローラ34が押圧ローラ39と連動する状態になっているため、手で押さえる必要はない。したがって、着脱部27aや水平片27bを手で持って操作することにより、半田のせ降ろし装置30を前進させたり後退させたりすることでクリーム半田Bの移し替えができる。
【0073】
本実施形態によると、印刷機10aに、半田のせ降ろし装置30を取り付けるための機構を設ける必要が無くなるため、半田のせ降ろし装置30が備わっていない従来の印刷機をそのまま使用することができる。また、作業者の操作により処理が行われるため、確認しながら操作を進めることができ、クリーム半田Bの移し替えにミスが無くなる。本実施形態のそれ以外の作用効果については、前述した印刷機10と同様である。
【0074】
また、本発明に係る印刷機および半田のせ降ろし装置は、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更して実施することができる。例えば、図13に示した印刷機40において、半田のせ降ろし装置30を設けることなく、手動による半田のせ降ろし装置30を用いるようにすることができる。これによると、半田のせ降ろし装置30が1つで済む。また、図1に示した印刷機10において、スキージユニット20におけるスキージヘッド22の左側にもう1つ半田のせ降ろし装置30を加えてもよい。これによると、マスク13の表面における左右方向のどちら側にクリーム半田Bが寄せられていても、クリーム半田Bをのせ降ろしすることができる。
【0075】
さらに、半田のせ降ろし装置30に備わっている回転支軸31の外周面に円筒状の細径ローラを取り付けてもよい。これによると、シートCの反転がスムーズになる。また、前述した各実施形態では、シートCを不織布で構成しているが、このシートCは、織布で構成してもよいし、スポンジからなるシートで構成してもよい。また、他の繊維を用いてもよい。さらに、印刷機および半田のせ降ろし装置のそれ以外の部分の構成についても、本発明の技術的範囲内で適宜変更することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14