特許第5873930号(P5873930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ペトロレオ ブラジレイロ ソシエダ アノニマ − ペトロブラスの特許一覧

特許5873930オレフィンの重合に使用するためのアルミナ担持触媒及びその調製法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873930
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】オレフィンの重合に使用するためのアルミナ担持触媒及びその調製法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20160216BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C08F4/654
   C08F10/00
【請求項の数】38
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-547640(P2014-547640)
(86)(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公表番号】特表2015-500914(P2015-500914A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】BR2011000487
(87)【国際公開番号】WO2013091033
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】591005349
【氏名又は名称】ペトロレオ ブラジレイロ ソシエダ アノニマ − ペトロブラス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボルトリン ラミス、ルシアナ
(72)【発明者】
【氏名】レイス ダ クンハ、フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァ デイアス、ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ダンタス ド ヴァレ バティスタ、ナターリア
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−016805(JP,A)
【文献】 特開昭62−265306(JP,A)
【文献】 米国特許第04855271(US,A)
【文献】 特表2005−531675(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/005359(WO,A1)
【文献】 特開昭57−121003(JP,A)
【文献】 米国特許第04728705(US,A)
【文献】 特開昭58−122904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/60−4/70
C08F 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チーグラー−ナッタ固体担持触媒の調製法であって、
a)マグネシウムにより改質したアルミナ担体を得るステップであって、
i)マグネシウム化合物、アルコール、及び二酸化炭素(CO)を混合することにより、アルコール中でマグネシウム化合物の炭酸化アルコール溶液を調製するステップであって、前記マグネシウム化合物がマグネシウムアルコキシドとハロゲン化マグネシウムの混合物で、前記マグネシウムアルコキシドと前記ハロゲン化マグネシウムとの混合物のモル比が0.1〜82の範囲のMg(OR)/MgXであるステップと
ii)炭酸化アルコール溶液と球状アルミナ担体との混合により懸濁液を得て、この液に加熱を施し、乾燥粉末形態の混合されたアルミナ担体とマグネシウム化合物を得るステップ
を含む、前記マグネシウムにより改質したアルミナ担体を得るステップと、
b)マグネシウムにより改質された混合担体のチタン化ステップであって、
i)ハロゲン化チタンと、マグネシウムにより改質されたアルミナ担体との反応を誘発するステップであって、液相を除去して再度ハロゲン化チタンを添加することで繰り返し行うことができるステップと、
ii)得られた触媒を不活性の炭化水素により洗浄するステップ
を含む、前記マグネシウムにより改質された混合担体のチタン化ステップと
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
マグネシウムアルコキシドの式が、Mg(OR)であり、式中、Rが1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
マグネシウムアルコキシドが、マグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシド、マグネシウムジ−n−プロポキシド、マグネシウムジ−i−プロポキシド、及びマグネシウムジ−n−ブトキシドから選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ハロゲン化マグネシウムの式が、MgXであり、式中、Xがハロゲン原子であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
Xが塩素原子であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
モル比Mg(OR)/MgXが、0.5〜7の間であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
アルコールが、1〜12個の炭素原子を有するアルキル−アルコールであることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
アルキルアルコールが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール及びシクロヘキサノールから選択されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
二酸化炭素(CO)が、溶液1gあたり0.01g〜1.0gのCOの割合で溶液に添加されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
アルミナ担体に対する炭酸化アルコール溶液の割合が、担体1グラムあたり1ml〜12mlの溶液の範囲にあることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項11】
アルミナ担体に対する炭酸化アルコール溶液の割合が、担体1グラムあたり2ml〜8mlの溶液の範囲にあることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項12】
ステップa)のii)における懸濁液の加熱が、40℃〜220℃の間の温度で、20分間〜8時間の期間で行われることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項13】
ステップa)のii)における懸濁液の加熱が、60℃〜150℃の間の温度で行われることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
球状アルミナ担体に、ステップa)が施される前に、任意にアルキルアルミニウム型化合物との反応が施されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項15】
球状アルミナ担体に、ステップa)が施された後に、任意にアルキルアルミニウム型化合物との反応が施されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項16】
アルキルアルミニウム型化合物との反応が、撹拌下及び不活性炭化水素を含有している懸濁液中で行われることを特徴とする、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
不活性炭化水素が、5〜12個の炭素を含有するアルカン若しくはシクロアルカン、又はそれらの混合物であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
不活性炭化水素が、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、及びシクロヘキサンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
アルキルアルミニウム型化合物が、トリアルキルアルミニウム、アルキルアルミニウム、若しくは塩化物型、又はそれらの混合物の化合物であることを特徴とする、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項20】
アルキルアルミニウム型化合物が、トリエチルアルミニウム(TEA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)、塩化ジイソブチルアルミニウム、及び塩化ジメチルアルミニウム(DMAC)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項21】
前記反応に使用する球状アルミナ担体の質量に対する炭化水素の割合が、担体1グラムに対して4ml〜20mlの間であることを特徴とする、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項22】
使用されるアルキルアルミニウムの量が、アルキルアルミニウムと球状アルミナ担体のヒドロキシル含有量とのモル比に等しく、且つ0.1〜5.0とすることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
使用されるアルキルアルミニウムの量が、アルキルアルミニウムと球状アルミナ担体のヒドロキシル含有量とのモル比に等しく、且つ0.2〜2.0とすることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
使用されるアルキルアルミニウムの量が、アルキルアルミニウムとマグネシウムにより改質された球状アルミナ担体中の残留アルコールとのモル比に等しく、且つ0.1〜5.0とすることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
使用されるアルキルアルミニウムの量が、アルキルアルミニウムとマグネシウムにより改質された球状アルミナ担体中の残留アルコールとのモル比に等しく、且つ0.2〜2.0とすることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
アルキルアルミニウム型化合物との反応が、0℃〜60℃の間の温度で実施されることを特徴とする、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項27】
アルキルアルミニウム型化合物との反応が、周囲温度で実施されることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
マグネシウムにより改質されたアルミナ担体、アルキルアルミニウム、及び炭化水素を含む混合物が、撹拌下、5分〜5時間の範囲の期間維持され、その後、担体の分離及び乾燥が行われることを特徴とする、請求項14、又は15に記載の方法。
【請求項29】
マグネシウムにより改質されたアルミナ担体、アルキルアルミニウム、及び炭化水素を含む混合物が、撹拌下、10分〜2時間の範囲の期間維持されることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ハロゲン化チタンが、TiCl、TiBr、及びTiI又はそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項31】
使用されるハロゲン化チタンが、純粋であるか、又は炭化水素に対してチタン化合物の体積割合が5〜90%の炭化水素中に希釈されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項32】
使用されるハロゲン化チタンの量が、担体中のマグネシウム1molあたりのチタン割合で1〜50モルであることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項33】
チタン化ステップが、0℃〜150℃の間の温度で、30分間〜6時間の期間で行われることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項34】
チタン化ステップにおける温度が、80℃〜135℃の間であることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
チタン化ステップが、1時間〜3時間の期間にわたり行われることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
チタン化ステップが、内部電子ドナー(DI)の添加を、Mg/DIのモル比4〜20で含むことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項37】
Mg/DIのモル比が、7〜13であることを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
内部電子ドナーが、安息香酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチル、及びアニス酸エチルを含む群から選択される安息香酸型化合物か、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジフェニルを含む群から選択されるフタル酸エステルか、又は2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、及び2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパンを含む群から選択される1,3−ジエーテルである、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンの重合に使用するためのアルミナ担持触媒、より詳細にはマグネシウム化合物の添加により改質された球状アルミナ担体を含むチーグラー−ナッタ型触媒であって、好ましくは、マグネシウムアルコキシドが改質されている担体であり、続いてハロゲン化チタンとの反応によりチタン化が施される触媒に関する。言及される担持触媒の調製法も、本発明の目的である。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム化合物、より詳細にはマグネシウムアルコキシドと遷移金属ハロゲン化物との反応により形成されるポリオレフィンの重合触媒は公知である。
【0003】
文献EP2006/001343は、マグネシウムアルコキシドを遷移金属化合物と反応させて、反応生成物に熱による後処理を施す方法を公知にしている。
【0004】
文献US7008898は、マグネシウムアルコキシドのゼラチン状分散液を遷移金属化合物及び有機金属化合物と反応させて触媒を得る方法を既に開示している。
【0005】
しかし、上記の2つの文献により調製される触媒は、形態的制御を示さず、したがって、こうした触媒は、様々な技術的な重合プラットフォームにおいて適用可能ではない。さらに、こうした触媒システムから生成されるポリマーは、見かけ密度が小さく、こうした粉末を輸送及び保管するには妥協が必要である。
【0006】
球状形態を有するオレフィンの重合触媒も公知である。これらの触媒の多くは、塩化マグネシウムの付加物を使用する方法により得られる。塩化マグネシウムの触媒は、非常に高い重合速度を示し、気相におけるエチレン重合法において、直接その触媒を使用するには必ずしも適しておらず、この場合、次に、多くのプレ重合ステップが必要である。
【0007】
文献EP0553805には、例えば、前駆体として塩化マグネシウムの付加物を使用して制御される球状形態を有する触媒の調製方法が記載されている。しかし、それらの高い重合速度及び高い活性のために、とりわけポリエチレンを生成する方法に関すると、こうした触媒は、プレ重合ステップを受けなければならない。
【0008】
プレ重合ステップとは、エチレンと重合する気相反応器に触媒を供給する場合、触媒の構造を保護するために、重合過程における粒子の気相中への破壊を予防するために、そしてその活性を最小化するために必要な、プロピレンとの初期重合を含む。さらに、プロピレンとのプレ重合ステップを施す触媒が適切なアイソタクチック特性(isotacticity)を示すため、触媒は内部ドナーを必要とする。しかし、特に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造に関すると、触媒がより高価になることの他に、内部ドナーの使用により、エチレンとの重合中、不十分なコモノマーの導入を引き起こす恐れもある。
【0009】
オレフィン重合の触媒調製方法における塩化マグネシウムの使用はまた、腐食性が高いという欠点も有しており、この欠点は、本発明において提案されるマグネシウムアルコキシドの使用により克服するか又は少なくとも最小限にすることができる。
【0010】
球状形態により担持される触媒の中で、非常に多くの特許及び書誌参考文献では、担体としてシリカが使用されている。アルミナは、現在のところ、文献中では、かなり一般的ではない担体である。アルミナ中に存在しているルイス酸性度は、重合中の触媒活性及び活性部位の挙動などの触媒特性に影響を及ぼし、こうして、シリカ担持触媒とは区別される。さらに、シリカは、気相中の重合過程で主に観察される、高い静的特性の1つとして示す。
【0011】
ポリオレフィン重合用アルミナ担持触媒の開発が、いくつかの文献中で記載されている。
【0012】
文献PI9301438−4には、アルファオレフィンの重合のための球状アルミナ担体を、アンモニウムドーソナイトから調製する方法を記載しており、アンモニウムドーソナイトがスプレードライされて球状粒子を形成し、この粒子が焼成及びチタンによる浸漬によって、良好な機械的強度を有する球状触媒をやはり生成する。この文献は、重合方法も記載しており、この重合方法により、球状触媒の存在下で、流れ角が小さく且つ良好な密度を有する担体の球状性を維持するポリエチレン粒子が生成する。
【0013】
文献PI0900952−3には、エーテル又はアルコールにあらかじめ溶解した塩化マグネシウムの量を変えてアルミナと混合することによる、文献PI9301438−4において記載されている担体の改質によって触媒を得る方法を記載しており、こうして、添加されるハロゲン化マグネシウムの量が変わるにつれて、触媒システムの他の成分が一定に保たれる。
【0014】
エチレン重合におけるこの触媒の適用により、気相中とスラリー(mud)中の両方でエチレン重合への適用に適した、0.30g/cm〜0.35g/cmの範囲の高いかさ密度及び粒子サイズを有する球状ポリエチレンが得られる。
【0015】
マグネシウム及びチタンを含有している球状形態を有するシリカ及びアルミナに担持した触媒は公知である。これらの触媒は、塩化マグネシウム及び遷移金属ハロゲン化物(通常、四塩化チタン)により通常調製される。シリカ担体に塩化マグネシウムを付加する一つの方法は、担体を塩化マグネシウム含有溶液により浸漬して、次いで溶媒を蒸発させることによるものである。
【0016】
したがって、以下に詳細に記載される通り、腐食性が低く、失活に対して高い耐性があり、安定性が高く、且つ機械的強度が高いオレフィン重合用触媒、並びに、それらの形態的制御を可能にするこうした単一触媒を調製する方法の必要性が依然として存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の主要な目的は、オレフィン重合用触媒であって、マグネシウム化合物、好ましくはマグネシウムアルコキシドの添加により改質された球状アルミナ担体を含み、続いて、改質担体にハロゲン化チタンとの反応によりチタン化が施されている、触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本触媒は、アルミナと、マグネシウムアルコキシドを含有している炭酸化アルコール溶液とを混合することにより、球状アルミナ担体から調製される。本担体は、次に、ハロゲン化チタンとの反応を含む、チタン化段階を施す。
【0019】
本発明の触媒調製において、内部ドナー(応用として、プロピレンとの重合を行わせる触媒の場合に、特に興味深い)も任意に添加することができる。
【0020】
本担体は、任意に、チタン化処理の前の段階で、アルキルアルミニウム型化合物との反応を施すこともできる。
【0021】
こうした触媒は、重合反応によりポリオレフィンを生成するための、助触媒の存在下での触媒システムにおいて使用され、この触媒は、塩化マグネシウム担持触媒と比較した場合、高い機械的耐久性、優れた触媒活性、並びに高い安定性、又は輸送及び保管に起因する触媒の失活プロセスへの低影響を示す。
【0022】
本発明によって網羅される触媒は、水素及びアルキルアルミニウムに対して優れた応答を示し、この触媒はオレフィン重合法において変化し、こうして、単一触媒から、様々なグレードのポリオレフィンを製造することが可能になり、とりわけ、押出、射出、吹込成形、回転成形、及び紡糸などの幅広い様々な成形処理を行うためのポリマー生成が可能になる。
【0023】
重合法におけるこうした触媒の使用により、優れた乾燥生産能力(dry flow capacity)、及び0.40g/cm超の非常に高いかさ密度を有する、球状形態のポリマーが得られる。
【0024】
言及される担持触媒の調製法も、本発明の目的である。本方法により、触媒が使用されることになる方法による触媒活性を調節することが可能になり、これには、気相中、及び固相中、並びにスラリー中の何れにおいても、重合法、並びにエチレン、プロピレン及びブテンなどの様々なモノマーとの共重合法がある。
【0025】
本発明の触媒の調製法はまた、アルミナとマグネシウム化合物の両方において、多孔性の制御を可能にし、例えば、ポリプロピレン衝撃コポリマーの製造における重合中、多孔性マトリックス中にエチレンを良好に取り込ませることを可能にする。
【0026】
さらに、本発明において記載される方法により、様々な平均粒子サイズ値を有するアルミナの使用が可能になり、異なる平均粒子サイズの触媒を生成することができる。こうした因子は、各重合方法に必要な条件に触媒を調節することが可能になるので、工業的にかなり有用であり、且つ望ましいものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、オレフィンの重合に使用するためのチーグラー−ナッタ型の固体触媒、より詳細には、マグネシウム及びチタンを含有しているアルミナに担持されている触媒に関する。本発明のオレフィン重合用担持触媒は、マグネシウム化合物、より詳細にはマグネシウムアルコキシドの添加により改質された球状アルミナ担体、及びその担体とハロゲン化チタンとの反応の生成物、並びに任意に内部ドナーを含む。
【0028】
ここで言及される担持触媒の調製法も、本発明の目的である。一般的に言えば、本発明の方法は、マグネシウム化合物の炭酸化アルコール溶液、詳細にはマグネシウムアルコキシドを球状アルミナ担体と接触させるステップ、前記アルコールを蒸発させるステップ、次いで、得られた混合担体をチタン化合物、及び任意に内部電子ドナーと反応させるステップからなる。
【0029】
触媒の調製方法は、不活性雰囲気下で行われる。使用される試薬は、モレキュラーシーブ及び不活性ガスによるストリッピングの使用などの公知技法を使用することによりあらかじめ乾燥させており、水分及び酸素を含有していない。適切な不活性ガスの例は、窒素及びアルゴンである。
【0030】
言及した担持触媒の調製法は、
a)マグネシウムにより改質したアルミナ担体を得るステップ、即ち、
i)マグネシウム化合物、アルコール、及び二酸化炭素(CO)を混合することにより、アルコール中でマグネシウム化合物の炭酸化アルコール溶液を調製するステップと、
ii)炭酸化アルコール溶液と球状アルミナ担体との混合により、懸濁液を得て、この液に加熱を施し、乾燥粉末形態の混合されたアルミナ担体とマグネシウム化合物を得るステップ
を含む、マグネシウムにより改質したアルミナ担体を得るステップと、
b)アルミナとマグネシウム化合物の混合担体のチタン化ステップ、即ち、
i)ハロゲン化チタンと、アルミナ及びマグネシウム化合物の混合担体との反応を誘発するステップであって、液相を除去して新たにハロゲン化チタンを添加することで繰り返し行うことができるステップと、
ii)得られた触媒を不活性炭化水素により洗浄するステップ
を含む、アルミナとマグネシウム化合物の混合担体のチタン化ステップと
を含む。
【0031】
マグネシウムによって改質されるアルミナ担体の調製(ステップa)は、アルコール中での、マグネシウム化合物の炭酸化アルコール溶液の調製を含んでおり、この溶液とアルミナ担体を混合し、次いで、アルコールを蒸発させて、乾燥粉末が得られる。
【0032】
アルコールに入れられるマグネシウム化合物の炭酸化アルコール溶液の調製は、マグネシウム化合物、アルコール、及び二酸化炭素を混合することからなる。
【0033】
マグネシウム化合物は、マグネシウムアルコキシド、又はマグネシウムアルコキシドとハロゲン化マグネシウムの混合物からなる群から選択される。
【0034】
マグネシウムアルコキシドに関する式は、Mg(OR)であり、式中、Rは、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を含有している、分岐又は非分岐のアルキル基である。こうしたマグネシウムアルコキシドのいくつかの例は、マグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシド、マグネシウムジ−n−プロポキシド、マグネシウムジ−i−プロポキシド、及びマグネシウムジ−n−ブトキシドである。好ましいのは、マグネシウムエチラート、又は単にマグネシウムエトキシドとも呼ばれるマグネシウムジエトキシドである。
【0035】
ハロゲン化マグネシウムの式はMgXであり、式中、Xはハロゲン化物原子である。好ましいのは、塩化マグネシウムである。
【0036】
マグネシウムアルコキシドとハロゲン化マグネシウムとの混合物の場合、Mg(OR)/MgXのモル比の割合が0.1〜82の範囲、好ましくは0.5〜7の間の範囲が使用される。
【0037】
本発明の方法において使用することができるアルコールの中で、1〜12個の炭素原子を有するアルキルアルコールがある。アルコールの例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノールが含まれる。好ましいのは、単純なアルコール、特にエタノールである。
【0038】
二酸化炭素(CO)は、アルコール中のマグネシウム化合物、より詳細にはアルコール中のマグネシウムアルコキシドが可溶化するように、0.01g〜1.0gのCO/gの比で使用される。
【0039】
アルコール、マグネシウム化合物及び二酸化炭素は、溶液調製のため、任意の添加順序で混合することができる。調製の好ましい方法は、マグネシウム化合物をアルコールに加え、次いで二酸化炭素を添加すること含み、この方法は、好ましくは、溶液を均一にするために、撹拌下で行われる。
【0040】
次に、このように調製されたマグネシウム化合物含有炭酸化アルコール溶液は、球状アルミナ担体と混合され、アルミナ及びマグネシウム化合物の炭酸化アルコール溶液を含有している懸濁液となる。
【0041】
使用されるアルミナ担体に対する炭酸化アルコール溶液の割合は、1グラムの担体あたり1ml〜12ml、より好ましくは1グラムの担体あたり2ml〜8mlの範囲にある。
【0042】
触媒の調製において使用されるマグネシウム化合物の量は、得られる触媒のマグネシウム含有量に直接関係し、その触媒活性において、影響を最も及ぼす因子の1つである。
【0043】
アルミナ担体(Al)に対するマグネシウム化合物の割合は、Al/Mgのモル比に基づき、0.3〜80の間、好ましくは0.8〜36の間で変動する。
【0044】
炭酸化アルコール溶液のアルミナ担体との混合は、任意の順序、担体の溶液への添加と溶液の担体への添加の両方で行うことが可能であるが、後者の順序が好ましい調製法である。
【0045】
本発明において使用されるアルミナは、ポリオレフィン重合の触媒を得るための触媒担体として、その使用を可能にする特性を示す。すなわち、使用されるアルミナ担体は、重合中に触媒によって示される性能に直接寄与し、また、本発明により得られる触媒の触媒部位は、マグネシウム化合物によるものだけではなく、アルミナ中に存在している触媒部位にもよるので、これらの触媒の重合によって得られるポリマーの特性に影響も及ぼす。
【0046】
本発明において使用されるアルミナの特性は、その調製及び活性化の方法に由来する。本発明に適したアルミナの調製方法及び活性化方法の例は、本出願人により所有されている、及び参照として本明細書に引用されている特許PI 9301438−4に見いだされる。
【0047】
本発明において使用されるアルミナ担体は、球状形態を示す。本明細書中の球状形態は、最大換算粒径と最小換算粒径との間の比として測定され、この場合、1:5未満、好ましくは1:3未満である。
【0048】
使用されるアルミナ担体は、0.4ml/g〜5.0ml/gの間、好ましくは0.7ml/g〜4.0ml/gの間の細孔体積を示す。
【0049】
使用されるアルミナの表面積は、80m/g〜1600m/gの間、好ましくは130m/g〜500m/gの間である。細孔体積及び表面積は、窒素吸着によるB.E.T.法を使用して測定することができる。
【0050】
担体の平均粒子径は、5μm〜140μmである。触媒を調製するための理想的な平均粒子径は、触媒が使用される重合方法に依存する。したがって、各重合方法は、特定の平均径範囲、したがって触媒担体を必要とする。平均径は、レーザー回折に基づく方法によって測定することができる。
【0051】
本発明において使用されるアルミナ担体は、その表面上に水酸化物基を示す。アルミナ担体中の水酸化物の含有量は、アルミナ活性化ステップにより制御することができ、このステップは、300℃〜850℃の間の範囲の温度でアルミナを焼成することにより通常行われる。焼成温度が高いほど、アルミナ担体のヒドロキシル含有量は低い。ヒドロキシル表面含有量を調節する別の方法は、これらと、例えばアルキルアルミニウム型化合物などのある種の化合物による化学反応によるものである。
【0052】
こうした触媒を重合方法に使用する場合、アルミナのヒドロキシル含有量、及びそれらのタイプ(ビシナルか否か)は、得られる触媒により示される性能、及び得られるポリマーの特性に寄与する。本発明において使用されるアルミナ担体は、1グラムの固体担体あたり、0.1mmol〜2.5mmolのヒドロキシル基、好ましくは0.2mmol〜2.0mmolの範囲にあるヒドロキシル表面含有量を示す。
【0053】
アルミナ担体と、マグネシウム化合物を含有する炭酸化アルコール溶液とを混合して得られる懸濁液に加熱を施し、マグネシウムにより改質されたアルミナ担体が、乾燥粉末形態で得られる。
【0054】
アルコールアルミナ懸濁液の加熱は、アルコールを蒸発させるために、通常、使用するアルコールの沸点を超える温度で行い、溶液を調製する。その懸濁液は、40℃〜220℃の間、好ましくは60℃〜150℃の間の温度で加熱される。触媒調製のこのステップの理想的な温度範囲は、使用するアルコール及びマグネシウム化合物に依存する。懸濁液は、20分〜8時間の間の期間で蒸発させることができる。アルコールは、撹拌しながら蒸発させることができる。
【0055】
アルコールは、以下に限定されないが、加熱、真空の使用、不活性ガスによるストリッピング、蒸発器の使用、撹拌との蒸発器、及び回転式蒸発器を含む、様々な方法及び装置により蒸発させることができる。言及した方法に続いて、マグネシウム化合物との混合アルミナ担体が、乾燥粉末の形態で得られる。
【0056】
こうしてマグネシウムにより改質されて得られたアルミナ担体は、その組成物中に残留アルコールも含んでいる。通常、得られた改質担体中のマグネシウムに対するアルコールのモル比は、0.3〜6の間の範囲にある。
【0057】
アルミナ担体とマグネシウム化合物との混合物は、任意に、脱アルコール化(残留アルコールの部分的又は完全な除去)することができる。脱アルコール化の方法の1つは、担体とアルキルアルミニウム型化合物との反応によるものである。
【0058】
上記のアルキルアルミニウム型化合物との反応はまた、アルミナの表面ヒドロキシル量を調節するために、アルミナ担体上で行うこともできる。
【0059】
本発明の触媒の調製法では、アルキルアルミニウム型化合物との反応は任意であり、アルミナ担体に対して、マグネシウムにより改質されたアルミナ担体に対して、又はその両方に対してさえも行ってよい。
【0060】
両方の場合において、担体とアルキルアルミニウム型化合物との反応は、好ましくは、撹拌下、反応に必要な期間、不活性炭化水素を含有する懸濁液中で行われる。この反応の実施の好ましい形態は、炭化水素及び担体を含有している懸濁液上にアルキルアルミニウムを添加することが含まれる。
【0061】
担体とアルキルアルミニウム化合物との反応において使用することができる炭化水素の例は、5〜12個の炭素原子を含有しているアルカン及びシクロアルカン、又はそれらの混合物である。これらの炭化水素の例は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びシクロヘキサンである。好ましいのは、ヘキサンである。
【0062】
アルキルアルミニウム化合物のタイプの中では、トリアルキルアルミニウム型及び塩化アルキルアルミニウムの化合物が好ましい。これらの化合物の例は、トリエチルアルミニウム(TEA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)、塩化ジイソブチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム(DMAC)である。これらのアルキルアルミニウムの混合物を使用することも可能である。好ましいのは、トリエチルアルミニウム(TEA)である。
【0063】
反応に使用する担体質量に対する炭化水素の割合は、担体各1グラムに対し、4ml〜20mlの間である。
【0064】
使用されるアルキルアルミニウムの量は、使用される担体のタイプに依存する。アルミナ担体に関すると、使用されるアルキルアルミニウムの量は、アルキルアルミニウムのモル比とヒドロキシル含有量により算出される。混合担体に関すると、使用されるアルキルアルミニウムの量は、アルキルアルミニウムと担体中の残留アルコールの間のモル比によって算出される。これらのモル比の両方が、0.1〜5.0、好ましくは0.2〜2.0の範囲にある。
【0065】
担体とアルキルアルミニウム型化合物との反応は、0℃〜60℃の間の温度で行うことができる。この反応は、好ましくは、周囲温度、すなわち20℃〜25℃の間で行われる。
【0066】
担体混合物、アルキルアルミニウム、及び炭化水素は、5分〜5時間、好ましくは10分〜2時間の範囲の期間、好ましくは撹拌下で維持される。
【0067】
一旦取り決めた時間が経過すると、担体は反応性液体媒体から分離される。担体は、例えば、ろ過、排水、デカンテーション、液体の吸い上げなどのいくつかの方法で分離することができる。好ましい方法は、担体のデカンテーション、次いで、上澄み液を吸い上げることである。反応生成物を除去するために、担体を1回又は複数回、洗浄することが有用である。洗浄には、炭化水素の添加、懸濁液の撹拌、及び液体からの担体の分離が含まれる。
【0068】
こうして得られたアルキル化担体は、乾燥してもよく、又は炭化水素懸濁液中で維持してもよい。
【0069】
担体は、様々な方法、例えば、とりわけ加熱、真空、不活性ガスを使用する流動化により乾燥することができる。
【0070】
チタン化ステップは、ハロゲン化チタンと、マグネシウムにより改質されたアルミナ担体との反応を誘発することからなる。内部ドナーも、この段階で加えることができる。
【0071】
使用することができるハロゲン化チタンの例には、TiCl、TiBr、及びTiI、並びにそれらの混合物が含まれる。TiClの使用が好ましい。純粋なハロゲン化チタン、又は炭化水素により希釈したものを使用することができる。
【0072】
希釈形態におけるチタン化反応に適した炭化水素の例は、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、及びイソパラフィンである。広い範囲で希釈することができ、その炭化水素に対するチタン化合物の体積割合は、5%〜90%の間の範囲である。チタン化反応に望ましい温度において、炭化水素混合物及びチタン化合物を液状形態に維持するため、チタン化処理も加圧下で行うこともできる。使用されるハロゲン化チタンの量は、担体中のマグネシウムのmolあたり1〜50モルのチタンである。
【0073】
チタン化反応は、0℃〜150℃の間、好ましくは80℃〜135℃の間の温度で、30分間〜6時間、好ましくは1〜3時間、実行される。
【0074】
内部電子ドナーを、任意にこの段階で加えることができる。一般的に言えば、電子ドナー化合物は、プロピレン重合用触媒を調製するために使用される。内部ドナーは、様々な化学的分類をすることができ、以下に限定されないが、安息香酸エステル、フタル酸エステル、及び1,3−ジエーテルを含む。安息香酸エステルの一部の例には、安息香酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチル、及びアニス酸エチルが含まれる。フタル酸エステルの一部の例は、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジフェニル、及びフタル酸ジオクチルである。1,3−ジエーテルの一部の例は、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン,及び2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパンである。
【0075】
内部ドナーの添加は、チタン化合物の追加前、後、又は同時に行うことができる。担体と内部ドナーとの反応は、通常、同じ反応媒体中、チタン化反応と同時に行われる。添加される内部ドナー[internal donor](DI)の量は、Mg/DIのモル比の関数として算出され、4〜20、好ましくは7〜13で変動する。
【0076】
チタン化反応後、触媒は不活性炭化水素により洗浄されて、不活性なチタン化合物、塩化物、及び他の不純物が除去される。これは、通常、60℃〜140℃の間の様々な温度における加温洗浄である。触媒洗浄のために使用することができる不活性炭化水素の例には、以下に限定されないが、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン及びイソパラフィンが含まれる。
【0077】
こうして得られた触媒は、オレフィン重合方法においてその後使用するために、不活性雰囲気下、炭化水素又は乾燥懸液中で維持し、且つ保管することができる。
【0078】
担体は、様々な方法、例えば、とりわけ加熱、真空、又は不活性ガスを使用する流動化により乾燥することができる。
【0079】
本発明のオレフィン重合用担持触媒は、以下の規格を有する;
−マグネシウムの百分率は、その調製の間に添加されるマグネシウム化合物の量の関数である。触媒中のマグネシウムの質量基準の百分率は、0.3%〜15.0%の間、好ましくは0.6%〜10.0%の間で変動する。
−チタンの質量基準の百分率は、0.4%〜6.0%の間、好ましくは0.8%〜3.8%の間で変動する。
−アルミニウムの質量基準の百分率は、9.0%〜48.0%の間、好ましくは15.0%〜44.0%の間で変動する。
【0080】
触媒のサイズ及び形態は、使用する担体に直接依存し、またその平均径に関するものとそのサイズ分布に関するものとの両方において、使用する担体の特性に関して、通常、顕著に変動しない。
【0081】
したがって、本発明の触媒は、担体として球状形態を示し、この球状形態は、最大換算粒径と最小換算粒径との間の比により測定され、この場合、1:5未満、好ましくは1:3未満である。
【0082】
本触媒の平均粒子径は、5μm〜140μmの間である。
【0083】
ポリオレフィンの重合用触媒の使用に関すると、触媒懸濁液を形成するため、触媒は、助触媒、通常、アルキルアルミニウム型化合物と混合される。プロピレンによる重合の場合、外部電子ドナー化合物が、通常使用される。次に、触媒懸濁液は、オレフィン重合又は共重合方法において使用される。こうした方法は、懸濁液中、固相中、又は気相中であり得る。こうして、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及びポリプロピレン(PP)などのポリマーが得られる。
【実施例】
【0084】
以下の実施例は、本発明を例示するが、限定していると見なしてはならない。
【0085】
これらの実施例において、チタン、マグネシウム及びアルミニウムの濃度は、触媒の酸分解後に得られた溶液の原子吸光分光分析によって測定した。
【0086】
ポリマーのかさ密度は、ASTM D1895標準に示されている手順によって測定した。
【0087】
ポリマーのMFI(メルトフローインデックス)は、標準ASTM D1238に示されている手順によって測定した。
(例1)
【0088】
この実施例において、得られた触媒は、1.4%のチタン含有量、2.2%のマグネシウム含有量、及び37.0%のアルミニウム含有量を示し、以下の説明に従って合成した。
【0089】
1.1.アルミニウム担体及びマグネシウム化合物の取得
Mg(OEt)4.3gを、あらかじめモレキュラーシーブで処理したエタノール160mlに添加し、次いで、固体二酸化炭素69グラムを添加することにより溶液を調製した。
【0090】
特許PI9301438−4に提示されている実施例に従って調製した球状アルミナ担体30gに、こうして調製した溶液を添加した。この場合に使用したAl/Mgモル比は7:8であった。
【0091】
アルゴン下、この懸濁液を90℃の温度及び60rpmの回転式蒸発器に流して移し、これらの条件下で2時間維持し、アルミナ担体及びマグネシウム化合物が、乾燥粉末の形態で得られた。
【0092】
1.2.アルミナ担体及びマグネシウム化合物と、アルキルアルミニウム型化合物との反応
項目1.1によって得られた粉末を、機械的撹拌を備えたシステムに移し、ここにヘキサン200ml、及び15%トリ−エチルアルミニウムのヘプタン溶液19mlを撹拌しながら加えた。撹拌下、60分後、デカンテーションし、デカンテーション後、上澄み液を吸い上げることにより除去した。次に、n−ヘキサン150mlで5回洗浄した。一旦、洗浄が完了して、アルキルアルミニウムにより処理した担体は、アルゴンによる流動化によって乾燥した。
【0093】
1.3.担体のチタン化
不活性雰囲気下、500rpmで撹拌した反応器中、TiCl50mlに、ステップ1.2に従って得られた担体5gを0℃で加えた。温度を100℃に上げて、撹拌下、1時間反応させた。液体を廃棄し、別のTiCl50mlを100℃の温度で加えた。反応器の温度を120℃に上げて、撹拌下、1時間超で放置した。液体を廃棄し、ヘキサンにより69℃で5回の洗浄を行った。その後、60℃でアルゴンによりストリッピングすることにより乾燥し、易流動性であると認められる乾燥触媒が得られた。
【0094】
1.4.エチレンによる重合
重合は、温度制御、及び圧力モニタリング用の圧力ゲージを装備した3.6Lの総容量の鋼製反応器中で行った。モレキュラーシーブ中であらかじめ処理して、溶存酸素を除去するためにアルゴンによりストリッピングを施したヘキサン2リットルを反応器に加えた。
【0095】
15%トリエチルアルミニウムのヘプタン溶液3ml、及び項目1.3に従って得られた触媒64mgを含有する懸濁液を反応器に移注した。1.1kgf/cm(107.9kPa)の分圧の水素、及び10.0kgf/cm(980.7kPa)の分圧で反応中に供給されるエチレンを反応器に加えた。重合は85℃で2時間行った。こうして得られたポリエチレンは、かさ密度が0.45g/cm、及びMFIが1.66g/10分(190℃/21.6kg)を示した。反応について算出した触媒活性は、触媒1gあたり5.1kgのPE[ポリプロピレン]であった。
【0096】
1.5.エチレンと1−ブテンによる重合
項目1.3に従って得られた触媒を、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を得るため、コモノマーとして1−ブテンを用いて重合した。反応器に触媒懸濁液を加えた後、1−ブテン51gを加えたことを除いて、項目1.4に記載されている通り重合を行った。使用した水素分圧は、0.8kgf/cm(78.5kPa)であり、加えた触媒量は70mgであった。他の条件は、一定に保った。
【0097】
得られたポリマーは、かさ密度が0.46g/cm、真密度が0.914g/cm(ASTM D792)、MFIが3.45g/10分(190℃/21.6kg)を示し、この反応について算出した触媒活性は、触媒1gあたり7.5kgのLLDPEであった。
(例2)
【0098】
この実施例において、得られた触媒は、1.9%のチタン含有量、6.8%のマグネシウム含有量、及び25.3%のアルミニウム含有量を示し、以下の説明に従って合成した。
【0099】
2.1.アルミナ担体及びマグネシウム化合物の取得
このステップの調製は、例1.1に類似した。使用したMg(OEt)の量は16.4gであり、エタノール200ml及び球状アルミナ担体25g(Al/Mgのモル比=1.7)であった。他の条件は、一定に保った。
【0100】
2.2.アルミナ担体及びマグネシウム化合物と、アルキルアルミニウム型化合物との反応
このステップにおける調製は、例1.2に類似した。この場合、15%トリエチルアルミニウムのヘプタン溶液21mlを使用した。他の条件は一定に保った。
【0101】
2.3.担体のチタン化
不活性雰囲気下、500rpmで撹拌した反応器中、TiCl50mlに、ステップ2.2に従って得られた担体7.2gを0℃で加えた。温度を30℃に上げて、10体積%のフタル酸ジイソブチル(内部ドナー)のヘキサン溶液5.9mlを加えた。次に、温度を100℃に上げて、撹拌下、1時間反応させた。液体を廃棄し、別のTiCl50mlを100℃の温度で加えた。反応器の温度を120℃に上げて、撹拌下、1時間超で放置した。液体を廃棄し、ヘキサンにより69℃で5回の洗浄を行った。その後、90℃でアルゴンによる流動化下で乾燥を行い、乾燥触媒が得られた。
【0102】
2.4.エチレンによる重合
重合は、温度制御、及び圧力モニタリング用の圧力ゲージを装備した3.6Lの総容量の鋼製反応器中で行った。モレキュラーシーブ中であらかじめ処理して、アルゴン通気したヘキサン2リットルを反応器に加えた。
【0103】
15%トリエチルアルミニウムのヘプタン溶液、10体積%シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(外部ドナー)のヘキサン溶液0.9ml、及び項目2.3で得られた触媒98mgを含有している懸濁液を、反応器に移注した。1.0kgf/cm(98.1kPa)の分圧の水素、及び8.0kgf/cm(784.5kPa)の分圧で反応中に供給されるプロペンを反応器に加えた。重合は70℃で2時間行った。こうして得られたポリプロピレンは、かさ密度が0.48g/cm、及びMFIが87.1g/10分(230℃/2.16kg)を示した。反応について算出した触媒活性は、触媒1gあたり2.9kgのPPであった。
(例3)
【0104】
この実施例において、得られた触媒は、1.0%のチタン含有量、2.4%のマグネシウム含有量、及び36.6%のアルミニウム含有量を示し、以下の説明に従って合成した。
【0105】
3.1.アルミニウム担体及びマグネシウム化合物の取得
このステップにおける調製は、例1.1に類似した。Mg(OEt)2.1g、MgCl1.6g、エタノール200ml、アルミナ球状担体30g(Al/Mgのモル比=8.3、及びMg(OR)/MgXの比=1:1)、及びCO固体60gを使用した。他の条件は、一定に保った。
【0106】
3.2 担体のチタン化
項目3.1に従って得られた担体は、アルキルアルミニウム型化合物との反応を行うことなく、チタン化処理を直接、施した。この担体のチタン化は、例1.3に類似して行った。
【0107】
3.3.エチレンによる重合
項目1.4に記載した通り、重合を行った。使用した水素分圧は、1.1kgf/cm(107.9kPa)であり、加えた触媒量は74mgであった。他の条件は、一定に保った。得られたポリマーは、かさ密度が0.43g/cmを示し、反応について算出した触媒活性は、触媒1gあたり3.5kgのPEであった。