特許第5873942号(P5873942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873942
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】携帯端末装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0481 20130101AFI20160216BHJP
   G06F 3/0488 20130101ALI20160216BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20160216BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   G06F3/0481 170
   G06F3/0488 130
   G06F3/044 Z
   G06F3/041 512
   G06F3/041 580
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-45145(P2015-45145)
(22)【出願日】2015年3月6日
(62)【分割の表示】特願2012-503250(P2012-503250)の分割
【原出願日】2011年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-133140(P2015-133140A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2015年3月6日
(31)【優先権主張番号】特願2010-49420(P2010-49420)
(32)【優先日】2010年3月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314008976
【氏名又は名称】レノボ・イノベーションズ・リミテッド(香港)
(74)【代理人】
【識別番号】100084250
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】高野 智史
【審査官】 山崎 慎一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−217704(JP,A)
【文献】 特開平10−240435(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/069392(WO,A1)
【文献】 特表2009−530726(JP,A)
【文献】 特開2010−39602(JP,A)
【文献】 特開2006−23953(JP,A)
【文献】 特開2008−250948(JP,A)
【文献】 特開2010−33158(JP,A)
【文献】 特開2009−116769(JP,A)
【文献】 特開2006−236143(JP,A)
【文献】 特開2005−352924(JP,A)
【文献】 特開2006−31499(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0309851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/0481
G06F 3/041
G06F 3/044
G06F 3/0488
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の透明電極がマトリクス状に配置される静電容量式のタッチパネルと、前記複数の透明電極は配置位置に基づいて座標を示し、
利用者により選択可能な複数のアイコンを前記タッチパネルに表示する表示制御手段と、
前記複数の透明電極と、対向電極としての前記利用者の指との間に形成される複数の静電容量の容量値を周期的に測定する静電容量測定手段と、
前記複数の透明電極により示される座標と、前記容量値とに基づいて、前記対向電極の位置を示す予測座標を算出する座標決定手段と、
前記容量値のうちの最大の容量値である選択静電容量値に基づいて、前記タッチパネルと前記対向電極との距離を示す予測距離を算出する距離決定手段と、
測定される前記容量値の分布を示す情報を静電容量分布情報として生成する分布情報生成手段と、
前記対向電極が前記利用者の指であるときの前記容量値の分布を示す情報を、前記予測座標および前記予測距離に対応して予め求め、設定静電容量分布情報として格納する記憶手段と
を具備し、
前記表示制御手段は、前記設定静電容量分布情報と前記静電容量分布情報とに基づいて、前記対向電極が前記利用者の指であるか否かを判定し、前記利用者の指でないと判定する場合に前記複数のアイコンを基本サイズで表示し、前記利用者の指であると判定する場合に前記基本サイズより大きい選択サイズで表示する携帯端末装置であって、
指が前記タッチパネルに触れていないときに、周期変更処理を行う静電容量測定部を有することを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記静電容量分布情報により示される分布に類似する分布を示す情報が前記設定静電容量分布情報の中に存在するとき、前記対向電極が前記利用者の指であると判定し、前記静電容量分布情報により示される分布に類似する分布を示す情報が前記設定静電容量分布情報の中に存在しないとき、前記対向電極が前記利用者の指でないと判定する
請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、
前記タッチパネルと前記対向電極との距離と、前記選択静電容量値とを対応付けて格納する距離決定テーブルと、
前記タッチパネルと前記対向電極との距離と、前記アイコンの表示サイズとを対応付けて格納するサイズ決定テーブルと
をさらに格納し、
前記距離決定手段は、前記距離決定テーブルを参照して前記選択静電容量値に対応する距離を求めて前記予測距離として決定し、
前記表示制御手段は、前記静電容量分布情報により示される分布に類似する分布を示す情報が前記設定静電容量分布情報の中に存在しないとき、または、前記予測距離が予め設定される第1距離を超えるとき、前記対向電極が前記利用者の指でないと判定し、
前記静電容量分布情報により示される分布に類似する分布を示す情報が前記設定静電容量分布情報の中に存在し、且つ、前記予測距離が前記第1距離以下であるとき、前記対向電極が前記利用者の指であると判定し、前記サイズ決定テーブルを参照して前記予測距離に対応する前記アイコンの表示サイズを前記選択サイズとする
請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項4】
前記サイズ決定テーブルに格納される前記タッチパネルと前記対向電極との距離と、前
記選択静電容量値との対応関係は、所定の第1設定距離をDS1とし、前記予測距離をDxyとし、前記基本サイズをA1とし、前記選択サイズをAxyとし、前記選択サイズのうちの最大のサイズをA2とすると、
Dxy>DS1 である場合、Axy=A1、
0<Dxy≦DS1である場合、Axy=(A1−A2)×Dxy/DS1+A2
により示される
請求項3に記載の携帯端末装置。
【請求項5】
前記距離決定テーブルに格納される前記タッチパネルと前記対向電極との距離と、前記選択静電容量値との対応関係は、前記第1設定距離における第1静電容量値をCs1とし、最大静電容量値をCs2とし、前記選択静電容量値をC(x,y)とし、前記指が前記タッチパネルに触れる直前の距離をDS3、そのときの静電容量値をCs3とすると、
Cs1≦C(x,y)≦Cs3 である場合、DS3≦Dxy≦DS1であり、
Dxy=DS3×C(x,y)/Cs3、
Cs3<C(x,y)<Cs2 である場合、0<Dxy<DS3であり、
Dxy=DS3×(C(x,y)−Cs2)/(Cs3−Cs2)
により示される
請求項4に記載の携帯端末装置。
【請求項6】
前記記憶手段は、前記タッチパネルと前記対向電極との距離と、測定処理を実行する周期とを対応付けて格納する周期決定テーブルを更に記憶し、
前記静電容量測定手段は、前記周期決定テーブルを参照して、前記予測距離に対応する選択周期で前記測定処理を実行する
請求項1から請求項5のいずれかに記載の携帯端末装置。
【請求項7】
前記複数の透明電極は、m行n列に配列され(m、nは2以上の整数)、
前記複数の透明電極の位置を示す座標を(X1,Y1)〜(Xm,Yn)とし、前記複数の透明電極のそれぞれと前記対向電極との間に形成される静電容量の容量値をC(X1,Y1)〜C(Xm,Yn)とし、前記予測座標を(X,Y)とすると、X、Yは、それぞれ、
【数1】
により算出される
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の携帯端末装置。
【請求項8】
前記利用者が操作可能な特定キーを更に具備し、
前記静電容量測定手段は、前記利用者が前記特定キーを操作しているときに前記測定処理を実行する
請求項1から請求項7のいずれかに記載の携帯端末装置。
【請求項9】
位置に基づいて座標を示すように複数の透明電極がマトリクス状に配置されるタッチパネルを具備する携帯端末装置において利用者により選択可能なアイコンを前記タッチパネルに表示するアイコン表示方法であって、
複数の前記アイコンを基本サイズで前記タッチパネルに表示するステップと、
前記複数の透明電極と、対向電極である前記利用者の指との間に形成される複数の静電容量の容量値を周期的に測定するステップと、
前記複数の透明電極により示される座標と、前記容量値とに基づいて、前記対向電極の位置を示す予測座標を算出するステップと、
前記複数の透明電極により示される座標と、前記複数の静電容量の容量値とに基づいて、前記複数の透明電極と前記対向電極との距離を示す予測距離を算出するステップと、
前記複数の静電容量の容量値の分布を示す静電容量分布情報を生成するステップと、
前記対向電極が前記利用者の指であるときの前記容量値の分布を示す情報を、前記予測座標および前記予測距離に対応して予め求め、設定静電容量分布情報として記憶手段に予め格納するステップと、
前記設定静電容量分布情報と前記静電容量分布情報とに基づいて、前記対向電極が前記利用者の指であるか否かを判定するステップと、
前記判定するステップにおいて、前記利用者の指でないと判定された場合に前記複数のアイコンを基本サイズで表示するステップと、
前記判定するステップにおいて、前記利用者の指であると判定された場合に前記基本サイズより大きい選択サイズで表示するステップと、
指が前記タッチパネルに触れていないときに、周期変更処理を行うステップと、
を具備する
アイコン表示方法。
【請求項10】
請求項9に記載のアイコン表示方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶する記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルを具備する携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型のコンピュータである携帯端末装置が開発されている。この携帯端末装置は、利用者により選択可能な複数のアイコンを表示部に表示する。利用者は、表示部に表示される複数のアイコンの中から所望のアイコンを、操作部を操作して選択する。携帯端末装置は、そのアイコンの内容を表示部に表示する。
【0003】
近年、表示部の代わりに、静電容量式のタッチパネルが搭載された携帯端末装置が開発されている。この携帯端末装置では、利用者は、指でタッチパネルに触れることにより、複数のアイコンの中から所望のアイコンを選択することができる。携帯端末装置の小型化が進んでいるため、携帯端末装置に搭載されるタッチパネルのサイズに制約があるのが現状である。一方、タッチパネルに1度に表示されるアイコンが多ければ多いほど、利用者がアイコンを選択する回数が少なくてすむ。
【0004】
また、携帯端末装置に静電容量式のタッチパネルが搭載される場合、ラインセンサ等の複数の透明電極がタッチパネル上に5[mm]程度のピッチで配置される。この場合、携帯端末装置は、指がタッチパネルに触れたときに複数の透明電極と指との間に形成される静電容量(コンデンサ)の容量値を検知し、指の位置を推定する。そのため、指がタッチパネルに触れた位置の特定が難しく、誤差を生じやすい。よって、マウスやスタイラスペンなどで位置を選択する方式とは異なる。また、接触によってアイコンを選択できるパネル上の範囲は、そのアイコンが表示されている部分やその周囲とすることが大半であり、アイコンの表示が小さい場合には、利用者は正しくアイコンを選択することが困難になる。
【0005】
更に、携帯端末装置に静電容量式のタッチパネルが搭載される場合、スタイラスペンではなく指でタッチパネルを押下することが一般的である。アイコンの表示が小さい場合、利用者がタッチパネルに触れようとすると、肝心のアイコンが他の指で隠れてしまい、所望のアイコンを確認することができないことがある。
【0006】
この問題を回避するために、特開2009−86612号公報には、対象アイコンを拡大表示する技術が記載されている。この技術は、操作指示手段の位置や操作指示手段とタッチパネルとの距離について詳細には記載されていないが、操作指示手段がタッチパネルに近づいてきたときに、操作指示手段とタッチパネルとの間の静電容量値により、タッチパネルに表示される複数のアイコンのうちの対象アイコンを拡大表示するというものである。操作指示手段がタッチパネルに近づいてきたときに、対象アイコンを拡大表示するため、利用者に対して操作性の向上を図ることができ、利用者は容易に取り扱うことができる。しかし、操作指示手段とタッチパネルとの間の静電容量値を検出しているにも関わらず、操作指示手段は、指の他に、タッチペン(スタイラスペン)や指等のものであれば何でもよい。このため、指でもタッチペンでもない物体(例えば、針、シャープペン、ボールペン、…)がタッチパネルに近づいてきた場合でも、その物体とタッチパネルとの間の静電容量値により、タッチパネルに表示される複数のアイコンのうちの対象アイコンを拡大表示してしまう。この場合、対象としないアイコンが拡大表示されてしまうこともあり、利用者に対して操作性が向上しているものとは言えない。
【0007】
他の技術として、特開2006−236143号公報には、カメラで撮影したメイン表示部(タッチパネル)とその近傍を示す画像により、利用者の指とタッチパネルとの距離を決定し、その距離が所定距離である場合、タッチパネルに表示されるアイコンを拡大表示することが記載されている。しかし、この技術は、カメラを配置するスペースの確保が必要である。
【0008】
また、他の技術として、特開平08−212005号公報、特開平11−065769号公報には、タッチパネルの周囲に、光を発する距離検出機構が配置され、例えば、タッチパネルから遠い位置の光が遮られてから、タッチパネルに近い位置の光が遮られた場合、タッチパネルに表示されるアイコンを拡大表示することが記載されている。しかし、この技術は、タッチパネルの周囲に距離検出機構を設けるため、タッチパネルに奥行きが出てしまう。
【0009】
また、他の技術として、特開2007−004660号公報、特開平05−046308号公報には、指がタッチパネルに触れたときに、指のサイズに応じたサイズでアイコンやキーを拡大表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−86612号公報
【特許文献2】特開2006−236143号公報
【特許文献3】特開平08−212005号公報
【特許文献4】特開平11−065769号公報
【特許文献5】特開2007−004660号公報
【特許文献6】特開平05−046308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、誤動作を防止し、操作性の向上を図ることができる携帯端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の携帯端末装置は、静電容量式のタッチパネルと、表示制御手段と、静電容量測定手段と、座標決定手段と、距離決定手段と、分布情報生成手段と、記憶手段とを具備する。タッチパネルには、座標を表す複数の透明電極が配置されている。表示制御手段は、利用者により選択可能な複数のアイコンをタッチパネルに表示する。静電容量測定手段は、複数の透明電極と利用者の指である対向電極との間にそれぞれ発生する複数の静電容量値を測定する測定処理を周期的に実行する。座標決定手段は、複数の透明電極が表す座標と複数の静電容量値とに基づいて、指の推定位置を示す予測座標を決定する。距離決定手段は、複数の静電容量値のうちの最も高い静電容量値である選択静電容量値に基づいて、タッチパネルと指との距離を表す予測距離を決定する。分布情報生成手段は、複数の静電容量値の分布を表す静電容量分布情報を生成する。記憶手段には、指の位置及びタッチパネルと指との距離毎に設定される複数の静電容量値の分布を表す設定静電容量分布情報が格納されている。表示制御手段は、記憶手段に格納される設定静電容量分布情報の中に、静電容量分布情報に類似する設定静電容量分布情報が存在しない場合、複数のアイコンを基本サイズでタッチパネルに表示する。記憶部に格納される設定静電容量分布情報の中に、静電容量分布情報に類似する設定静電容量分布情報が存在する場合、表示制御部は、タッチパネルに表示される複数のアイコンの中から、予測座標に配置されるアイコンを候補アイコンとして選択し、候補アイコンを、第1サイズよりも大きいサイズである選択サイズでタッチパネルに表示する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の携帯端末装置によれば、利用者の指がタッチパネルに近づいていることを検知したときに、タッチパネルに表示されるアイコンを拡大表示するため、誤動作を防止することができ、利用者に対して操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
上記発明の目的、効果、特徴は、添付される図面と連携して実施の形態の記述から、より明らかになる。
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る携帯端末装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、タッチパネル1の構成の一部を示している。
図3A図3Aは、本発明の実施形態に係る携帯端末装置の動作を説明するための図である。
図3B図3Bは、本発明の実施形態に係る携帯端末装置の動作を説明するための図である。
図4図4は、分布情報生成部25に生成される静電容量分布情報60をグラフで表したものである。
図5図5は、距離決定テーブル31に格納される内容をグラフで表したものである。
図6図6は、サイズ決定テーブル32に格納される内容をグラフで表したものである。
図7図7は、本発明の第1、2実施形態に係る携帯端末装置の動作を示すフローチャートである。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る携帯端末装置の構成を示すブロック図である。
図9図9は、本発明の第3実施形態に係る携帯端末装置の構成を示すブロック図である。
図10図10は、周期決定テーブル34の内容をグラフで表したものである。
図11図11は、本発明の第3実施形態に係る携帯端末装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る携帯端末装置の構成を示すブロック図である。本発明の第1実施形態に係る携帯端末装置は、携帯型のコンピュータであり、静電容量式のタッチパネル1と、制御部2と、記憶部3と、操作部4を具備している。タッチパネル1は、文字や図形等を表示しながら、画面に触れることによって情報を入力することができる入出力デバイスであり、利用者により選択可能な複数のアイコンを表示する。制御部2は、記憶部3から各種データを取り込み、処理した結果を記憶部3に記憶させる。
【0017】
制御部2としては、CPU(Central Processing Unit)が例示され、記憶部3としては、記録媒体であるメモリが例示される。記憶部3には、コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。制御部2は、記憶部3からコンピュータプログラムを読み込んで実行する。また、制御部2は、利用者により選択可能な複数のアイコンを基本サイズでタッチパネル1に表示する表示制御部21を備える。表示制御部21は、利用者による操作部4の操作に応じて、タッチパネル1に表示される複数のアイコンの中から所望のアイコンの内容をタッチパネル1に表示する。
【0018】
操作部4は、利用者が操作可能であり、必要最小限のキーを含んでいる。必要最小限の
キーとは、例えば、携帯端末装置に電源を投入するための電源キー41である。
【0019】
本発明の第1実施形態に係る携帯端末装置では、利用者は、指でタッチパネル1に触れることにより、複数のアイコンの中から所望のアイコンを選択することができる。これを実現するために、制御部2は、更に、静電容量測定部22、座標決定部23、距離決定部24、分布情報生成部25を備えている。これらの動作については後述する。また、記憶部3は、距離決定テーブル31と、サイズ決定テーブル32とを備えている。これらのテーブルに格納される内容については後述する。
【0020】
図2は、タッチパネル1の構成の一部を示している。タッチパネル1には、m行n列に配列される複数の透明電極10が配置されている(m、nは2以上の整数)。複数の透明電極10は、配置位置によって座標(X1、Y1)〜(Xm、Yn)を表している。
【0021】
後述するが、静電容量測定部22は、複数の透明電極10“(X1、Y1)〜(Xm、Yn)”と対向電極との間に形成される複数の静電容量(コンデンサ)のそれぞれの静電容量値C(X1、Y1)〜C(Xm、Yn)を測定する。指以外の物体(例えば、タッチペン、針、シャープペン、ボールペン、…)も対向電極となり得る。しかし、指と、指以外の物体とでは、誘電率が異なるため、形成される静電容量の静電容量値C(X1、Y1)〜C(Xm、Yn)は、同じ位置(座標)及び同じ距離で比較しても異なる。即ち、複数の静電容量値C(X1、Y1)〜C(Xm、Yn)の分布が異なる。
【0022】
そこで、本発明の第1実施形態に係る携帯端末装置では、指の位置(座標)及びタッチパネル1と指との距離毎に、静電容量値C(X1、Y1)〜C(Xm、Yn)の分布を示す設定静電容量分布情報33が設定され、記憶部3に予め格納される。設定される分布パターンは複数であることが好ましい。これにより、タッチパネル1に近づいている物体が利用者の指であるときだけ、タッチパネル1に表示されるアイコンを拡大表示することができる。この動作について詳細に説明する。
【0023】
図7は、本発明の第1実施形態に係る携帯端末装置の動作を示すフローチャートである。
【0024】
図7に示されるように、携帯端末装置のアイコンを表示する処理は、周期起動される。周期起動の周期Tに合致しないとき(ステップS10−NO)、携帯端末装置は、表示処理(ステップS17)を繰り返し実行する。周期起動の周期Tに合致するとき(ステップS10−YES)、静電容量測定部22が起動され、静電容量値C(X1、Y1)〜C(Xm、Yn)が測定され、分布情報生成部25は、静電容量分布情報60を生成する(ステップS11)。静電容量分布情報60が生成されると、座標決定部23は、静電容量分布情報60に基づいて、指の推定位置を示す予測座標(X、Y)を決定する(ステップS12)。距離決定部24は、静電容量分布情報60に基づいて、タッチパネル1と指との距離を示す予測距離Dxyを決定する(ステップS13)。表示制御部21は、指がタッチパネル1に触れたと判断すると(ステップS14−YES)、アイコンが選択されたものとして選択後の処理を行う。表示制御部21は、指がタッチパネル1に触れていないと判断すると(ステップS14−NO)、通常表示処理又は拡大縮小表示処理を実行する。
まず、表示制御部21は、アイコンサイズの変更の要否を判定し、サイズ変更が必要ないと判断すると(ステップS15−NO)、サイズ変更せずに表示処理を行う(ステップS17)。サイズ変更が必要と判断すると(ステップS15−YES)、表示制御部21は、変更するアイコンサイズを選択し(ステップS16)、表示処理を行う(ステップS17)。
【0025】
利用者の動作順にしたがって具体的に説明すると、まず、図3Aに示されるように、表示制御部21は、利用者により選択可能な複数のアイコン50を基本サイズでタッチパネル1に表示する(ステップS10−NO、ステップS17)。
【0026】
静電容量測定部22は、測定処理を周期的に実行する。したがって、その周期Tになると(ステップS10−YES)、静電容量測定部22は、測定処理、すなわち、複数の透明電極10“(X1、Y1)〜(Xm、Yn)”と利用者の指である対向電極との間に形成される静電容量の静電容量値C(X1、Y1)〜C(Xm、Yn)を測定する(ステップS11)。
【0027】
測定が終わると、分布情報生成部25は、図4に示されるように、測定された静電容量値C(X1、Y1)〜C(Xm、Yn)の分布を示す静電容量分布情報60を生成する。分布情報生成部25は、この静電容量分布情報60を一時的に(例えば1周期だけ)記憶部3に格納する。
【0028】
次に、座標決定部23は、複数の透明電極10が表す座標(X1、Y1)〜(Xm、Yn)と静電容量値C(X1、Y1)〜C(Xm、Yn)とに基づいて、指の推定位置を示す予測座標(X、Y)を決定する(ステップS12)。
【0029】
ここで、予測座標(X、Y)の算出方法について説明する。
複数の透明電極10が表す座標(X1、Y1)〜(Xm、Yn)における静電容量値は、それぞれC(X1、Y1)〜C(Xm、Yn)をC(X1、Y1)〜C(Xm、Yn)であるから、予測座標(X、Y)のX、Yは、それぞれ下記式(1)、式(2)により算出される。
【0030】
【数1】
【0031】
距離決定部24は、静電容量値C(X1、Y1)〜C(Xm、Yn)のうちの最も高い静電容量値である選択静電容量値C(X、Y)に基づいて、タッチパネル1と指との距離を表す予測距離Dxyを決定する(ステップS13)。
【0032】
ここで、予測距離Dxyの算出方法について説明する。
図5は、距離決定テーブル31に格納される内容をグラフで表したものである。距離決定テーブル31には、0[F]から最大設定静電容量値までの範囲の静電容量値と、0[mm]よりも長い最大設定距離から0[mm]までの範囲の距離とが対応付けられて格納されている。
【0033】
距離決定テーブル31が表す距離のうちの、0[mm]よりも長く、且つ、最大設定距離よりも短い距離を第1設定距離DS1とし、最短距離である0[mm]を第2設定距離DS2として定義する。また、距離決定テーブル31が表す静電容量値のうちの、第1設定距離DS1に対応する静電容量値を第1静電容量値Cs1として定義し、最大設定静電容量値を第2静電容量値Cs2として定義すると、選択静電容量値C(X、Y)は、Cs1≦C(XY)≦Cs2となる。また、指がタッチパネル1に触れる直前の距離をDS3として定義し、その静電容量値をCs3として定義する。
【0034】
基本的に、指がタッチパネル1に近づくと、静電容量値は増していく。即ち、DS3≦Dxy≦DS1である場合、Cs1≦C(XY)≦Cs3となる。この場合、予測距離
Dxyは、
Dxy=DS3×(C(XY)/Cs3)
により算出される。なお、上記の式は線形式であるが、非線形式でもよい。
【0035】
また、指がタッチパネル1に接触したときに、指とタッチパネル1間の空気層がなくなり、指とタッチパネル1間の誘電率が増すため、静電容量値は極端に大きくなる。即ち、DS2=0<Dxy<DS3である場合、Cs3<C(X、Y)<Cs2となる。この場合、予測距離Dxyは、
Dxy=DS3×(C(XY)−Cs2)/(Cs3−Cs2)
により算出される。なお、上記の式は線形式であるが、非線形式でもよい。
【0036】
このように、ステップS13において、距離決定部24は、距離決定テーブル31が表す距離から、選択静電容量値C(X、Y)に対応する距離を予測距離Dxyとして決定する。
【0037】
次に、表示制御部21は、指がタッチパネル1に触れていないときに(ステップS14−NO)、通常表示処理又は拡大縮小表示処理を実行する。
【0038】
記憶部3に格納される設定静電容量分布情報33の中に、静電容量分布情報60に類似する分布を示す設定静電容量分布情報33が存在しない場合(ステップS15−NO)、又は、予測距離Dxyが第1設定距離DS1より長い場合、表示制御部21は、通常表示処理を実行する。通常表示処理において、表示制御部21は、複数のアイコン50を基本サイズでタッチパネル1に表示する(ステップS16、S17)。即ち、複数のアイコン50を基本サイズでタッチパネル1に表示したままである。
【0039】
記憶部3に格納される設定静電容量分布情報33の中に、静電容量分布情報60に類似する分布を示す設定静電容量分布情報33が存在し(ステップS15−YES)、且つ、予測距離Dxyが第1設定距離DS1以下である場合、表示制御部21は、拡大縮小表示処理を実行する。拡大縮小表示処理において、表示制御部21は、タッチパネル1に表示される複数のアイコン50の中から、予測座標(X、Y)付近に表示されるアイコン50を対象アイコン51として選択し、対象アイコン51を選択サイズAxyでタッチパネル
1に表示する(ステップS16、S17)。選択サイズAxyは、予測距離Dxyに反比例するサイズである。図3Bに示されるように、この場合の選択サイズAxyは、基本サイズ以上である。
【0040】
ここで、選択サイズAxyの決定方法について説明する。
図6は、サイズ決定テーブル32に格納される内容をグラフで表したものである。サイズ決定テーブル32には、基本サイズである第1サイズA1から、第1サイズA1よりも大きい第2サイズA2までの範囲のサイズと、第1設定距離DS1から第2設定距離DS2(=0[mm])までの範囲の距離とが対応付けられて格納されている。これをグラフで表したものが図6である。
【0041】
指とタッチパネル1との距離が第1設定距離DS1よりも長い場合は、アイコンの大きさは基準のサイズである第1サイズA1を適用し、拡大する必要はない。即ち、Dxy>DS1である場合、選択サイズAxyは、Axy=A1により表される。
【0042】
指とタッチパネル1との距離が第1設定距離DS1以下である場合、即ち、DS2=0<Dxy≦DS1である場合、選択サイズAxyは、
Axy=(A1−A2)×(Dxy/DS1)+A2により表される。なお、上記の式は線形式であるが、非線形式でもよい。
【0043】
このように、通常表示処理において、表示制御部21は、サイズ決定テーブル32を参照して、第1サイズA1を選択サイズAxyとして選択し(ステップS16)、複数のアイコン50を第1サイズA1でタッチパネル1に表示する(ステップS17)。
【0044】
また、拡大縮小表示処理において、表示制御部21は、タッチパネル1に表示される複数のアイコン50の中から、予測座標(X、Y)付近に表示されるアイコン50を対象アイコン51として選択する。表示制御部21は、サイズ決定テーブル32を参照して、予測距離Dxyに対応するサイズを選択サイズAxyとして選択し(ステップS16)、対象アイコン51を選択サイズAxyでタッチパネル1に表示する(ステップS17)。
【0045】
一方、指がタッチパネル1に触れて、対象アイコン51が選択された場合、表示制御部21は、通常表示処理、拡大縮小表示処理を実行せずに、対象アイコン51の内容をタッチパネル1に表示する(ステップS14−YES)。
【0046】
このように、本発明の第1実施形態に係る携帯端末装置では、利用者の指がタッチパネル1に近づいてきたときに、指とタッチパネル1との間の静電容量値により、指の推定位置を示す予測座標(X、Y)と、指とタッチパネル1との距離である予測距離Dxyとが決定され、その静電容量値の分布を示す静電容量分布情報60が生成される。静電容量分布情報60の分布状態が設定静電容量分布情報33に示される分布状態のいずれかに類似している場合、タッチパネル1に表示される複数のアイコン50のうちの予測座標(X、Y)付近に表示される対象アイコン51が、基本サイズ(第1サイズA1)よりも大きく、且つ、予測距離Dxyに反比例するサイズでタッチパネル1に表示される。即ち、指とタッチパネル1との距離が第1設定距離DS1よりも長い場合、対象アイコン51は基準サイズで表示され、指とタッチパネル1との距離が第1設定距離DS1以下である場合、基本サイズよりも大きいサイズで表示される。
【0047】
したがって、本発明の第1実施形態に係る携帯端末装置によれば、利用者の指がタッチパネル1に近づいていることが検知されると、アイコンはタッチパネル1に拡大表示される。このため、誤動作を防止することができ、利用者に対して操作性の向上を図ることができる。
【0048】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態に係る携帯端末装置の構成を示すブロック図である。第2実施形態では、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0049】
図8に示されるように、第2実施形態に係る携帯端末装置の操作部4は、必要最小限のキーとして電源キー41と、特定キー42とを含む。第2の実施形態では特定キー42が追加されている。携帯端末装置の処理は、第1の実施の形態とほぼ同じであるが、ステップS11において、静電容量測定部22は、利用者が特定キー42を操作しているときに測定処理を実行することが異なる。
【0050】
即ち、利用者が特定キー42を操作したときだけ、静電容量測定部22が測定処理を実行する。その結果、利用者が特定キー42を操作したときだけアイコンが拡大表示されるため、誤動作を防止することができる。また、利用者は意図するタイミングでのみ、特定キー42を操作するため、本発明の第2実施形態に係る携帯端末装置は、第1実施形態に係る携帯端末装置に比べて低消費電力化を図ることができる。
【0051】
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態に係る携帯端末装置の構成を示すブロック図である。第3実施形態では、第1、2実施形態と重複する説明を省略する。
【0052】
第3実施形態に係る携帯端末装置の記憶部3は、更に、周期決定テーブル34を備えている。周期決定テーブル34は、静電容量値を測定する周期を決定するときに使用される。
【0053】
図10は、周期決定テーブル34に格納される内容をグラフで表したものである。周期決定テーブル34には、第1設定距離DS1から第2設定距離DS2までの範囲の距離と、基本周期である第1周期T1から、第1周期T1よりも短い第2周期T2までの範囲の周期とが対応付けられて格納されている。
【0054】
図11は、本発明の第3実施形態に係る携帯端末装置の動作を示すフローチャートである。第1の実施の形態に比べて、周期変更するステップS21が追加されている。
【0055】
したがって、静電容量測定部22は、指がタッチパネル1に触れていないときに(ステップS14−NO)、周期変更処理を行う。予測距離Dxyが第1設定距離DS1より長い場合、静電容量測定部22は、周期決定テーブル34を参照して、予測距離Dxyに対応する周期Tとして第1周期T1を選択する(ステップS21)。その後、第1、2実施形態と同様に、通常表示処理又は拡大縮小表示処理(ステップS15、S16、S17)が実行される。この場合、静電容量測定部22は、第1周期T1を経過すると測定処理を実行する(ステップS10−YES)。
【0056】
予測距離Dxyが第1設定距離DS1以下である場合、静電容量測定部22は、周期決定テーブル34を参照して、予測距離Dxyに対応する周期Tとして、第1周期T1と第2周期T2との間の選択周期を選択する(ステップS21)。その後、第1、2実施形態と同様に、通常表示処理又は拡大縮小表示処理(ステップS15、S16、S17)が実行される。この場合、静電容量測定部22は、選択周期を経過すると測定処理を実行する(ステップS10−YES)。
【0057】
このように、本発明の第3実施形態に係る携帯端末装置によれば、指とタッチパネル1との距離が第1設定距離DS1よりも長い場合、静電容量測定部22は基準周期で測定処理を実行する。指とタッチパネル1との距離が第1設定距離DS1以下である場合、静電容量測定部22は選択周期で測定処理を実行する。このため、更に操作性が向上する。
【0058】
本発明の携帯端末装置では、利用者の指がタッチパネルに近づくと、指とタッチパネルとの間の静電容量値により、指の推定位置を示す予測座標と、指とタッチパネルとの距離を示す予測距離とが算出されると共に、その静電容量値の分布を示す静電容量分布情報が生成される。静電容量分布情報により示される分布状態が設定静電容量分布情報により示される分布状態に類似している場合、タッチパネルに表示される複数のアイコンのうちの予測座標付近に表示される対象アイコンが、基本サイズよりも大きく、且つ、予測距離に反比例するサイズでタッチパネルに表示される。このように、本発明の携帯端末装置によれば、利用者の指がタッチパネルに近づくことを検知すると、タッチパネルに表示されるアイコンが拡大表示される。このため、誤動作を防止することができ、利用者に対して操作性の向上を図ることができる。
【0059】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、上記実施の形態は、矛盾のない限り組み合わせて実施可能である。また、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 タッチパネル
2 制御部
3 記憶部
4 操作部
21 表示制御部
22 静電容量測定部
23 座標決定部
24 距離決定部
25 分布情報生成部
31 距離決定テーブル
32 サイズ決定テーブル
33 設定静電容量分布情報
41 電源キー
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11