(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
屋内への採光部に対して配設されることにより、低高度からの太陽光を当該採光部に入射させる光反射機能と、高高度からの太陽光の当該採光部への直接入射を一部阻止する光遮蔽機能とをあわせ備えた、光入射調整部材からなる太陽光入射構造において、
前記光入射調整部材は、
東側板部およびこれと一体の西側板部を有し、
前記東側板部は、
前記光入射調整部材が前記採光部へ配設されたとき、
当該東側板部および前記西側板部の境界線に対応した南北線上においてその北側部分よりも南側部分の方が前記採光部からみて上方に位置し、かつ、東西線上においてその西側部分よりも東側部分の方が前記採光部からみて上方に位置する形状からなり、
前記西側板部は、
前記光入射調整部材が前記採光部へ配設されたとき、
前記南北線上においてその北側部分よりも南側部分の方が前記採光部からみて上方に位置し、かつ、東西線上においてその東側部分よりも西側部分の方が前記採光部からみて上方に位置する形状からなり、
前記東側板部および前記西側板部は、また、
それぞれ前記採光部へ配設された状態で、前記境界線の北側端部から続く隣接輪郭線の当該北側端部とは反対の他方端部が、当該採光部から北方に離れた箇所に位置する、
形状からなり、
前記光入射調整部材の全体形状が、前記境界線を上面谷部分とする東西方向の板ウイング形状を示し、
前記採光部に配設された前記東側板部および前記西側板部の下面部分が、
少なくとも東西それぞれの低高度から入射する太陽光を下方に反射させて前記光反射機能を実現し、
前記採光部に配設された前記東側板部および前記西側板部の上面部分が、
少なくとも昼間の高高度から入射する太陽光に対しての前記光遮蔽機能を実現する、
ことを特徴とする太陽光入射構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように従来の、朝夕および昼間の屋内採光量のできるだけの平均化を図るようにした太陽光採光装置の場合、昼間などの高高度からの太陽光を一部透過させて採光部に入射するための光入射調整部材を用いている。
【0012】
この光入射調整部材の上面は、光透過損失といった特定の光学的特性を備えたプリズム面となっている。
【0013】
そのため、光入射調整部材は、その上面が光学的に一意の性状で限定されてしまい、製品化に際しての技術的制約が大きいという問題点があった。
【0014】
本件出願人は、朝夕の屋内採光量を増加させ、かつ昼間の屋内採光量を抑えるための太陽光入射構造についての検討,シミュレーションを鋭意おこない、平板形状,曲板形状からなるいわば簡易タイプの本件光入射調整部材の創出にいたったものである。
【0015】
なお本件出願人は、朝夕の屋内採光量を増加させ、かつ昼間の屋内採光量を抑えるための本格的な太陽光入射構造を出願済みである(PCT/JP2011/061940)。本発明は、この出願済みの太陽光入射構造の簡易タイプに相当する。
【0016】
本発明では、下面が光反射面からなる光入射調整部材を板形状として、その上面を光遮蔽性状のものとする、すなわち光透過性でない任意の性状のものを板形状上部の構成要素に使えるようにして、光入射調整部材の製造の簡単化,効率化を図るとともに、当該上面の性状,材料などの設定,選択の自由度を高めることを目的とする。
【0017】
また、板形状の光入射調整部材の上面を非光透過性の多種の素材でいわば積極的にデザイン化して、太陽光入射構造の外観のスマート化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)屋内への採光部(例えば後述の採光部1a)に対して配設されることにより、低高度からの太陽光を当該採光部に入射させる光反射機能と、高高度からの太陽光の当該採光部への直接入射を一部阻止する光遮蔽機能とをあわせ備えた、光入射調整部材(例えば後述の光入射調整部材2,12,22)からなる太陽光入射構造において、
前記光入射調整部材は、
東側板部(例えば後述の東側平板部2a,東側曲板部12a,曲板東側部分22a)およびこれと一体の西側板部(例えば後述の西側平板部2b,西側曲板部12b,曲板西側部分22b)を有し、
前記東側板部は、
前記光入射調整部材が前記採光部へ配設されたとき、
当該東側板部および前記西側板部の境界線(例えば後述の境界辺2c,境界線12c,22c)に対応した南北線上においてその北側部分よりも南側部分の方が前記採光部からみて上方に位置し、かつ、東西線上においてその西側部分よりも東側部分の方が前記採光部からみて上方に位置する形状からなり、
前記西側板部は、
前記光入射調整部材が前記採光部へ配設されたとき、
前記南北線上においてその北側部分よりも南側部分の方が前記採光部からみて上方に位置し、かつ、東西線上においてその東側部分よりも西側部分の方が前記採光部からみて上方に位置する形状からなり、
前記東側板部および前記西側板部は、また、
それぞれ前記採光部へ配設された状態で、前記境界線の北側端部(例えば後述の北側端部B,F,J)から続く隣接輪郭線(例えば後述の東底辺2e,西底辺2g,東底線12e,22e,西底線12g,22g)の当該北側端部とは反対の他方端部(例えば後述の東側端部C,G,K,西側端部D,H,L)が、当該採光部から北方に離れた箇所に位置する、
形状からなり、
前記光入射調整部材の全体形状が、前記境界線を上面谷部分とする東西方向の板ウイング形状を示し、
前記採光部に配設された前記東側板部および前記西側板部の下面部分が、
少なくとも東西それぞれの低高度から入射する太陽光を下方に反射させて前記光反射機能を実現し、
前記採光部に配設された前記東側板部および前記西側板部の上面部分が、
少なくとも昼間の高高度から入射する太陽光に対しての前記光遮蔽機能を実現する、
構成態様のものを用いる。
(2)上記(1)において、
前記光入射調整部材は、
それぞれが前記東側板部および前記西側板部を備えた、上側光入射調整部材(例えば後述の光入射調整部材2)と下側光入射調整部材(例えば後述の下側光入射調整部材2')とからなり、
前記上側光入射調整部材および前記下側光入射調整部材は、
前記採光部へ配設された状態で、
当該採光部の入射開口水平面(例えば後述の入射開口水平面1b)を含む仮想平面に対する上方からの当該下側光入射調整部材の第1の正射影(例えば
図4(a)の四角形A'−C'−B'−D')が、当該仮想平面に対する上方からの当該上側光入射調整部材の第2の正射影(例えば
図4(a)の四角形A−C−B−D)に包含されて、当該上側光入射調整部材の下面部分で最初に反射した入射光がそのまま当該採光部に進入し、
かつ、当該採光部の一部が当該第1の正射影の外側に位置する形で設定されて、当該下側光入射調整部材の上面部分と当該上側光入射調整部材の下面部分との間で連続反射した入射光が、当該一部から当該採光部に進入する、
形状からなる、
構成態様のものを用いる。
(
3)上記(1),(2)において、
前記東側板部および前記西側板部は、
それぞれ多角形状の平板部である、
構成態様のものを用いる。
【0019】
本発明は、以上の構成の光入射調整部材からなる太陽光入射構造を対象としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明は以上の課題解決手段により、
(11)板形状からなる光入射調整部材の製造の簡単化,効率化を図るとともに、光入射調整部材上面の性状,材料などの設定,選択の自由度を高め、
(12)太陽光入射構造の外観のスマート化を図る、
ことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜
図13を用いて本発明を実施するための形態を説明する。
【0023】
図1〜
図12で用いるアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば採光部1a)は原則として当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば光ダクト1)の一部である、ことを示している。
【0024】
図1〜
図12において、
1は内面で太陽光を反射させながら屋内に取り込むための周知の四角筒状で、少なくとも太陽光入力側が略鉛直方向に延びる光ダクト,
1aは太陽光の入力部分である採光部,
1bは採光部1aの上端に画定される正方形状の入射開口水平面,
sは入射開口水平面1bの一辺の長さ,
をそれぞれ示している。
【0025】
図1〜
図6において、
2は入射開口水平面1bの上側に配設された平板ウイング形状の光入射調整部材,
2aは当該光入射調整部材を構成する三角形状の東側平板部,
2bは当該光入射調整部材を構成する三角形状の西側平板部,
2cは東側平板部2aと西側平板部2bとの共通部分であって略南北に延びる傾斜(水平面に対する傾斜,以下同様)直線状の境界辺(境界線),
2dは東側平板部2aの傾斜直線状の東斜辺(東斜線),
2eは東側平板部2aの水平直線状の東底辺(東底線),
2fは西側平板部2bの傾斜直線状の西斜辺(西斜線),
2gは西側平板部2bの水平直線状の西底辺(西底線),
Aは境界辺2c,東斜辺2dおよび西斜辺2fの共通端点である南側端部,
Bは境界辺2c,東底辺2eおよび西底辺2gの共通端点である北側端部,
Cは北側端部Bより北方かつ東方に位置して東斜辺2dおよび東底辺2eの共通端点である北東側端部,
Dは北側端部Bより北方かつ西方に位置して西斜辺2fおよび西底辺2gの共通端点である北西側端部,
をそれぞれ示している。
【0026】
図4〜
図6において、
2'は光入射調整部材2との相似比が略「2:1」の相似形からなり、採光部1aとの間に当該光入射調整部材と平行状態で配設された平板ウイング形状の下側光入射調整部材,
2a'は東側平板部2aに対応した下東側平板部,
2b'は西側平板部2bに対応した下西側平板部,
2c'は境界辺2cに対応した下境界辺(下境界線),
2d'は東斜辺2dに対応した下東斜辺(下東斜線),
2e'は東底辺2eに対応した下東底辺(下東底線),
2f'は西斜辺2fに対応した下西斜辺(下西斜線),
2g'は西底辺2gに対応した下西底辺(下西底線),
A',B',C'およびD'はそれぞれ、南側端部A,北側端部B,北東側端部Cおよび北西側端部Dに対応した下南側端部,下北側端部,下北東側端部および下北西側端部,
をそれぞれ示している。
【0027】
また、
図1〜
図6において、
θ1は光入射調整部材2,2'の光ダクト1に対する南北方向の取付け角度(入射開口水平面1bに対する境界辺2c,下境界辺2c'の傾斜角度:
図1(b),
図4(b)参照),
θ2は境界辺2c,下境界辺2c'における東側平板部2a,下東側平板部2a'と西側平板部2b,下西側平板部2b'との間の東西方向の傾き状態を示す開き角度(
図2(b),
図5(b)参照),
viewは
図2(b)および
図5(b)の作成に際しての矢視方向(
図1(b),
図4(b)参照),
r1は東側平板部2aまたは西側平板部2bの上面で反射して採光部1には入射しない太陽光の光路(
図1(a),
図4(a)参照),
r2は採光部1に直接入射する太陽光の光路(
図1(a) ,
図4(a)参照),
r3は西側平板部2bの下面で反射して採光部1に入射する、西方向からの太陽光の光路(
図1(b),
図4(b)参照),
r4は下西側平板部2b'の下面で反射して採光部1に入射する、西方向からの太陽光の光路(
図4(b)参照),
r5は西側平板部2bと下西側平板部2b'との間および、東側平板部2aと下東側平板部2a'との間を反射しながら進み、最後に東側平板部2aの下面で反射して採光部1に入射する、南西方向からの太陽光の光路(
図5(b)参照),
をそれぞれ示している。
【0028】
図7〜
図9において、
12は入射開口水平面1bの上側に配設されて、東西の各曲面からなる翼部分の境界線部分が折曲状態で連続する曲板ウイング形状(その1)の光入射調整部材,
12aは当該光入射調整部材の構成要素であって、円筒周面の一部分〔円筒をその中心軸(=後述の矢視方向view)に対する斜面で切断したときに得られる周面部分〕からなる、上に凸の東側曲板部,
12bは当該光入射調整部材の構成要素であって、東側曲板部12aと東西方向に対称形状の円筒周面一部分からなる、上に凸の西側曲板部,
12cは東側曲板部12aと西側曲板部12bとのいわば共通部分であって南北に延びる傾斜直線状の境界線,
12dは東側曲板部12aの傾斜曲線状の東斜線,
12eは東側曲板部12aの水平曲線状の東底線,
12fは西側曲板部12bの傾斜曲線状の西斜線,
12gは西側曲板部12bの水平曲線状の西底線,
Eは境界線12c,東斜線12dおよび西斜線12fの共通端点である南側端部,
Fは境界線12c,東底線12eおよび西底線12gの共通端点である北側端部,
Gは北側端部Fより北方かつ東方に位置して東斜線12dおよび東底線12eの共通端点である北東側端部,
Hは北側端部Fより北方かつ西方に位置して西斜線12fおよび西底線12gの共通端点である北西側端部,
をそれぞれ示している。
【0029】
また、
図7〜
図9において、
θ11は
図1〜
図6のθ1に対応した光入射調整部材12の取付け角度(入射開口水平面1bに対する境界線12cの傾斜角度:
図7(b)参照),
θ12は東側曲板部12aと西側曲板部12bとの間の東西方向の傾き状態に対応した開き角度(
図8(b)参照),
viewは
図8(b)の作成に際しての矢視方向(
図7(b)参照),
r11は東側曲板部12aまたは西側曲板部12bの上面で反射して採光部1には入射しない太陽光の光路(
図7(a)参照),
r12は採光部1に直接入射する太陽光の光路(
図7(a)参照),
r13は西側曲板部12bの下面で反射して採光部1に入射する、西方向からの太陽光の光路(
図7(b)参照),
をそれぞれ示している。
【0030】
ここでθ12は、南側端部E,北側端部Fおよび北東側端部Gの三点で特定される仮想東側三角形と、南側端部E,北側端部Fおよび北西側端部Hの三点で特定される仮想西側三角形と、の間の東西方向の傾き状態を示す開き角度を示している。すなわち、
図2(b)のθ2に相当する角度である。
【0031】
図10〜
図12において、
22は入射開口水平面1bの上側に配設されて、東西の各曲面からなる翼部分の全体が下に凸の折曲なしの状態で連続する曲板ウイング形状(その2)の光入射調整部材,
22aは
図7〜
図9の東側曲板部に対応した部分であって、円筒周面の一部分〔円筒をその中心軸(=後述の矢視方向view)に対する斜面で切断したときに得られる周面部分〕からなる曲板東側部分,
22bは
図7〜
図9の西側曲板部に対応した部分であって、曲板東側部分22aと東西方向に対称形状の円筒周面一部分からなる曲板西側部分,
22cは曲板東側部分22aと曲板西側部分22bとのいわば共通部分であって南北に延びる傾斜直線状の仮想的な境界線,
22dは曲板東側部分22aの傾斜曲線状の東斜線,
22eは曲板東側部分22aの水平曲線状の東底線,
22fは曲板西側部分22bの傾斜曲線状の西斜線,
22gは曲板西側部分22bの水平曲線状の西底線,
Iは境界線22c,東斜線22dおよび西斜線22fの共通端点である南側端部,
Jは境界線22c,東底線22eおよび西底線22gの共通端点である北側端部,
Kは北側端部Jより北方かつ東方に位置して東斜線22dおよび東底線22eの共通端点である北東側端部,
Lは北側端部Jより北方かつ西方に位置して西斜線22fおよび西底線22gの共通端点である北西側端部,
をそれぞれ示している。
【0032】
また、
図10〜
図12において、
θ21は
図1〜
図6のθ1や
図7〜
図9のθ11に対応した、光入射調整部材22の取付け角度(入射開口水平面1bに対する境界線22cの傾斜角度:
図10(b)参照),
θ22は
図7〜
図9のθ12に対応した、曲板東側部分22aと曲板西側部分22bとの間の東西方向の傾き状態を示す開き角度(
図11(b)参照),
viewは
図11(b)の作成に際しての矢視方向(
図10(b)参照),
r21は曲板東側部分22aまたは曲板西側部分22bの上面で反射して採光部1には入射しない太陽光の光路(
図10(a)参照),
r22は採光部1に直接入射する太陽光の光路(
図10(a)参照),
r23は曲板西側部分22bの下面で反射して採光部1に入射する、西方向からの太陽光の光路(
図10(b)参照),
をそれぞれ示している。
【0033】
ここで、東側平板部2a,下東側平板部2a',東側曲板部12a,曲板東側部分22a,西側平板部2b,下西側平板部2b',西側曲板部12bおよび曲板西側部分22bそれぞれの上下各面は光反射面として作用する。
【0034】
東側平板部2a,西側平板部2b,東側曲板部12a,西側曲板部12b,曲板東側部分22aおよび曲板西側部分22bそれぞれの上面は光遮蔽面としても作用する。
【0035】
境界辺2c,下境界辺2cおよび境界線12c,22cは光入射調整部材2,2',12,22それぞれの上面谷部分となっている。
【0036】
東斜辺2d,東底辺2e,西斜辺2f,西底辺2g,下東斜辺2d',下東底辺2e',下西斜辺2f',下西底辺2g',東斜線12d,22d,東底線12e,22e,西斜線12f,22f,西底線12g,22gはそれぞれ、光入射調整部材2,2',12,22の輪郭線である。
【0037】
また、東底辺2e,西底辺2g,下東底辺2e',下西底辺2g',東底線12e,22eおよび西底線12g,22gは、それぞれ北側端部B,B',F,Jから続く隣接輪郭線である。
【0038】
図示の光入射調整部材2,12,22および下側光入射調整部材2'それぞれ自体の基本的特徴は、
(21)東側構成要素(東側平板部2a,下東側平板部2a',東側曲板部12a,曲板東側部分22a)と西側構成要素(西側平板部2b,下西側平板部2b',西側曲板部12b,曲板西側部分22b)との連続板部分からなり、
(22)東側構成要素としての板部分はそれぞれ、南側端部・下南側端部A,A',E,Iと、北側端部・下北側端部B,B',F,Jと、北東側端部・下北東側端部C,C',G,Kとの三点を有し、
(23)西側構成要素としての板部分はそれぞれ、南側端部・下南側端部A,A',E,Iと、北側端部・下北側端部B,B',F,Jと、北西側端部・下北西側端部D,D',H,Lとの三点を有し、
ことである。
【0039】
また、光ダクト1に取り付けた状態における光入射調整部材2,12,22および下側光入射調整部材2'の基本的特徴は、
(31)それぞれの全体形状が採光部1aを通る南北方向の鉛直面に関して対称であり、
(32)北側端部B,F,J,下北側端部B',北東側端部C,G,K,下北東側端部C',北西側端部D,H,Lおよび下北西側端部D'の各端部は、採光部1aの入射開口水平面1bを含む水平面上に位置し、
(33)南側端部A,E,Iおよび下南側端部A'の各端部は、採光部1aの入射開口水平面1bを含む水平面よりも最も上方に位置し、
(34)上記東側構成要素および上記西側構成要素の板部分(東側平板部2a,下東側平板部2a',東側曲板部12a,曲板東側部分22a,西側平板部2b,下西側平板部2b',西側曲板部12bおよび曲板西側部分22b)の上下の光反射面はそれぞれ、その南北線上における北側部分よりも南側部分の方が採光部1aからみて上方に位置し、すなわち南方向にいわば順次上っていく面からなり、
(35)上記東側構成要素の板部分(東側平板部2a,下東側平板部2a',東側曲板部12a,曲板東側部分22a)の上下の光反射面はそれぞれ、その東西線上における西側部分よりも東側部分の方が採光部1aからみて上方に位置し、すなわち東方向にいわば順次上っていく面からなり、
(36)上記西側構成要素の板部分(西側平板部2b,下西側平板部2b',西側曲板部12b,曲板西側部分22b)の上下の光反射面はそれぞれ、その東西線上における東側部分よりも西側部分の方が採光部1aからみて上方に位置し、すなわち西方向にいわば順次上っていく面からなり、
(37)境界辺・下境界辺2c,2c'および境界線12c,22cの少なくとも一部が採光部1aの真上に配設され(
図1(a),
図4(a),
図7(a),
図10(a)参照)、
(38)入射開口水平面1bの一部分が、光入射調整部材2,2',12,22をそれぞれの真上からみたときの正射影の外側に位置する(
図1(a),
図4(a),
図7(a),
図10(a)参照)、
(39)光入射調整部材2および下側光入射調整部材2'それぞれを真上からみたとき、下側光入射調整部材2'の正射影全体が光入射調整部材2の正射影の中に入り込んでいる(
図4(a)参照)、
ことなどである。
【0040】
上記(38),(39)および段落[0049]などの正射影は、採光部1aの入射開口水平面1bを含む仮想平面に対しての投影形状である。
【0041】
図1〜
図3および
図7〜12の太陽光入射構造の場合、東方や西方の低高度からの入射光は、光路r3,r13,r23で示すように、東側平板部2a,東側曲板部12a,曲板東側部分22a,西側平板部2b,西側曲板部12bおよび曲板西側部分22bそれぞれの下面で反射してから採光部1aへ進入する。
【0042】
東方や西方の低高度からの入射光は、この下面反射光の外、光路r2,r12,r22で示すように採光部1aへの直進ルートからも光ダクト1に取り込まれる。
【0043】
一方、南方の高高度からの入射光の一部は、光路r1,r11,r21で示すように東側平板部2a,東側曲板部12a,曲板東側部分22a,西側平板部2b,西側曲板部12bおよび曲板西側部分22bそれぞれの上面(光遮蔽面)で反射して、採光部1aへの進入が阻止される。
【0044】
勿論、高高度からの入射光のすべてが採光部1aへの進入を阻止されるのではない。
光路r2で示すように、東側平板部2a,東側曲板部12a,曲板東側部分22a,西側平板部2b,西側曲板部12bおよび曲板西側部分22bそれぞれの上面(光遮蔽面)による遮蔽作用を受けずに、採光部1aへ直進する高高度入射光も存在する。
【0045】
また、冬場の南方からの低高度入射光も、東側平板部2a,東側曲板部12a,曲板東側部分22a,西側平板部2b,西側曲板部12bおよび曲板西側部分22bそれぞれの下面で反射してから採光部1aへ進入しえる。
【0046】
このように低高度からの入射光については、その直進光の他に、光入射調整部材2,12,22の下面での反射光も採光部1aへ積極的に導入し、他方、夏場などの高高度からの入射光の一部については採光部1aへの導入を阻止し、これにより一日の各時間帯の屋内採光量につき、年間を通してのできるだけの平均化を図っている。
【0047】
すなわち
図13で示すように、特に夏場の日中の採光性能を積極的に低下させ、冬場の朝夕の採光性能を少しでも向上させることができる。
【0048】
また、
図4〜
図6の太陽光入射構造における東方や西方の低高度からの入射光の採光部進入光路としては、
(41)東側平板部2a,西側平板部2b,下東側平板部2a'および下西側平板部2b'の各下面で反射する光路r3,r4に加えて、
(42)東側平板部2a,西側平板部2bの下面と下東側平板部2a',下西側平板部2b'の上面との間を反射しながら進んで最後に東側平板部2a,西側平板部2bの下面で反射する光路r5が存在する。
【0049】
この光路r5を確実に確保するため、
図4(a)で示すように、東側平板部2aおよび西側平板部2bの真上からの正射影範囲である四角形(A−C−B−D)と、下東側平板部2a'および下西側平板部2b'の真上からの正射影範囲である四角形(A'−C'−B'−D')と、の間に積極的な大小関係を持たせている。勿論、(A−C−B−D)>(A'−C'−B'−D')である。
【0050】
一辺の長さsが例えば900mmの汎用採光部1a(入射開口水平面1b)に対する光入射調整部材2,12,22それぞれの大きさ,設置角度などの一例としての数値は以下のとおりである。
【0051】
すなわち大きさに関しては、
(
図1〜
図6)
境界辺2cの長さ:1500mm
東斜辺2d,西斜辺2fの長さ:2084mm
東底辺2e,西底辺2gの長さ:1006mm
(
図7〜
図9)
境界線12cの長さ:1350mm
東斜線12d,西斜線12fの実長さ:1984mm
東底線12e,西底線12gの実長さ:1173mm
仮想線分(直線)EG,EHの長さ:1962mm
仮想線分(直線)FG,FHの長さ:1125mm
東側曲板部12a,西側曲板部12bの曲率半径:1129mm(
図8(b)参照)
(
図10〜
図12)
境界線22cの長さ:1509mm
東斜線22d,西斜線22fの実長さ:1981mm
東底線22e,西底線22gの実長さ:1059mm
仮想線分(直線)IK,ILの長さ:1970mm
仮想線分(直線)JK,JLの長さ:1033mm
曲板東側部分22a,曲板東側部分22bの曲率半径:1465mm(
図11(b)参照)
などの数値例をとる。
【0052】
なお、東側曲板部12a,西側曲板部12b,曲板東側部分22aおよび曲板西側部分22bは上述したように円筒周面の一部分からなっている。上記曲率半径はこれら曲板部などの各対応円筒の軸方向と直交する面の半径である。
【0053】
また角度に関しては、
θ1:36.9°
θ2:147°
θ11:60.0°
θ12:127°
θ21:63.4°
θ22:139°
線分BC,BDと入射開口水平面1bの東西方向線との間の角度:26.6°(
図1(a)参照)
仮想線分FG,FHと入射開口水平面1bの東西方向線との間の角度:30.0°(
図7(a)参照)
仮想線分JK,JLと入射開口水平面1bの東西方向線との間の角度:22.5°(
図10(a)参照)
などの数値例をとる。
【0054】
図4〜
図6で用いる光入射調整部材2'の全体形状は、上述したように
図1〜
図3の光入射調整部材2の相似形状からなっている。なお、光入射調整部材2'と光入射調整部材2との相似比は略「1:2」である。
【0055】
図13は、
図1〜
図3の太陽光入射構造を用いた場合における1年間の採光部入射光束(単位:ルーメン,lm)のシミュレーション結果を示している。
【0056】
横軸はシミュレーション対象日時(毎月22日の8時〜16時)を示し、縦軸は採光部1aへの入射光束量を示している。
【0057】
ここで、
・「普通の開口」のグラフは、太陽光入射構造を用いない場合のシミュレーション結果であり、
・「フラット採光」のグラフは、上述した本件出願人提案済みの「PCT/JP2011/061940」の
図1の太陽光入射構造を用いた場合のシミュレーション結果であり、
・「簡易採光」のグラフは、本件出願の平板ウイング形状の光入射調整部材2からなる太陽光入射構造(
図1〜
図3)を用いた場合のシミュレーション結果である。
【0058】
このグラフから明らかなように本件出願にかかる「簡易採光」は、年間の平均入射光束量の点では先に提案の「フラット採光」に比べて低下するものの、1日の同じ時間帯での入射光束量の年間における変動抑止の点では「フラット採光」と大差ない入射光束特性を呈している。
【0059】
なお、「
図4〜
図6」,「
図7〜
図9」,「
図10〜
図12」それぞれのウイング形状の光入射調整部材からなる太陽光入射構造を用いた場合も、
図13の「簡易フラット」と同様の入射光束特性が得られる。
【0060】
光入射調整部材・下側光入射調整部材2,2',12,22の配設に際しては、これらの部材をダクト1に直接取り付けるか、ダクト1に設けた補助部材に取り付ける。このときネジ止め,リベット止め,接着などの各種固定手段を適宜用いる。
【0061】
光入射調整部材・下側光入射調整部材2,2',12,22の光反射面としては、
・アルミ製ミラー
・ステンレス製ミラー
・銀,アルミニウムの真空金属蒸着フィルム処理を施した樹脂製ミラー
・ガラス鏡面
・梨地状反射面
などを用いる。
【0062】
本発明が以上の実施形態に限定されないことは勿論であり例えば、
(51)光入射調整部材2,12,22の上面に装飾をほどこしてデザイン性を高める、
(52)いわば突出状態の上述の各端部(北側端部Jを除く)に丸みをもたせる、
(53)境界辺2c,下境界辺2c',境界線12cおよびそれぞれの近傍部分の全体を東西方向の曲面形状に設定する、
(54)上記(33)〜(39)などの基本的特徴が適宜担保される範囲で、
・北東側端部C,G,Kや北西側端部D,H,Lを南側端部B,F,Jよりも南側(南側端部B,F,Jと同じ東西方向鉛直面を含む)に設定したり、
・光入射調整部材2,12,22それぞれの大きさ,設置角度および、光入射調整部材2と下側光入射調整部材2'との相似比などの値を変えて、
採光部への太陽入射光を調整する、
(55)上記(31)の全体形状を非対称に設定する、
(56)上記(32)の各端部を、採光部1aの入射開口水平面1bを含む水平面よりも下方または上方に設定する、
(57)光入射調整部材2および下側光入射調整部材2'の東側平板部2a,西側平板部2b,下東側平板部2a'および下西側平板部2b'を四角以上の多角形状に設定する、
(58)光入射調整部材2,下側光入射調整部材2'の平面形状を多角形以外の曲線形状に設定する、
(59)光入射調整部材12,22の,東側曲板部12a,曲板東側部分22a,西側曲板部12bおよび曲板西側部分22bの外郭形状を変更する、
(60)
図4〜
図6の太陽光入射構造における光入射調整部材・下側光入射調整部材の上下段数を三段以上に設定する、
(61)光入射調整部材12,22それぞれに対する下側の光入射調整部材を設けて、
図4〜
図6と同様の上下多段からなる太陽光入射構造とする、
(62)上記PCT/JP2011/061940で開示する北側平板や、これに対応した北側曲板を設ける、
ようにしてもよい。