特許第5874130号(P5874130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5874130人の歩行を検出するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874130
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】人の歩行を検出するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20160218BHJP
   A61B 5/103 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   A61B5/10 310A
   A61B5/10ZDM
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-551487(P2011-551487)
(86)(22)【出願日】2010年2月25日
(65)【公表番号】特表2012-518506(P2012-518506A)
(43)【公表日】2012年8月16日
(86)【国際出願番号】EP2010052368
(87)【国際公開番号】WO2010097422
(87)【国際公開日】20100902
【審査請求日】2013年2月13日
(31)【優先権主張番号】0951212
(32)【優先日】2009年2月26日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511163126
【氏名又は名称】モベア エス.アー
(73)【特許権者】
【識別番号】510163846
【氏名又は名称】コミシリア ア レネルジ アトミック エ オ エナジーズ オルタネティヴズ
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】ボネ、ステファン
【審査官】 門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−026092(JP,A)
【文献】 特開2006−192276(JP,A)
【文献】 特開2007−160076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/11
A61B 5/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2軸もしくは3軸の加速度計(CM)を含むハウジング(BT)を備えた、人の歩行を検出するためのシステムであって、前記ハウジングを、前記人の身体の上部に装着する装着手段を備え、その結果、前記加速度計(CM)の第1の測定軸が、前記身体の前後軸(AP)または垂直軸(VT)を表す測定値を提供するように構成され、前記加速度計(CM)の第2の測定軸が、前記身体の正中側面軸(ML)を表す測定値を提供するように構成され、前記システムがまた、前記加速度計(CM)によって送出された測定値を解析するための解析手段(MA)を備え、前記解析手段(MA)が、
− 前記加速度計(CM)によって送出された測定信号を時間窓にわたって処理するための処理手段(MT)であって、前記信号における優位周波数を探索するための手段(MRFD)を含む処理手段(MT)と、
− 前記第1の測定軸の信号の優位周波数と前記第2の測定軸の信号の優位周波数との間、または前記加速度計(CM)によって送信された測定値ベクトルのユークリッドノルムの優位周波数と前記第2の測定軸の信号の優位周波数との間の比率が1.7〜2.3に等しい場合に、前記人の歩行を検出するための検出手段(MD)と、を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記時間窓がスライディング窓である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記加速度計(CM)が3軸であり、前記加速度計(CM)の前記第1の測定軸が、前記身体の前記前後軸(AP)と一致し、前記加速度計(CM)の前記第2の測定軸が、前記身体の前記正中側面軸(ML)と一致し、前記加速度計(CM)の第3の測定軸が、前記身体の前記垂直軸と一致し、前記検出手段(MD)が、前記第1の測定軸の信号の優位周波数と前記第2の測定軸の信号の優位周波数との間、または前記第3の測定軸の信号の優位周波数と前記第2の測定軸の信号の優位周波数との間、または前記加速度計によって送信された測定値ベクトルのユークリッドノルムの優位周波数と前記第2の測定軸の信号の優位周波数との間で、1.7〜2.3に等しい比率を検出する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
高域通過フィルタ(FPH)も含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
通過帯域フィルタ(FPB)も含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記解析手段(MA)が、前記ハウジング(BT)の内部または外部にあり、前記加速度計(CM)が、その測定値を前記解析手段(MA)に送信するための有線または無線送信手段(MTR)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記スライディング時間窓が、5秒間の長さであり、1秒だけオフセットされた2つの連続する窓間の4秒の部分的な重複を伴う、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記加速度計(CM)によって送信された信号用の優位周波数を探索するための前記手段(MRFD)が、スペクトログラムタイプのスペクトル解析によって優位周波数の探索を実行する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
優位周波数を探索するための前記手段(MRFD)が、0.25Hz〜1Hz間の周波数において、前記第2の測定軸に沿った優位周波数νMLの探索を制限する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
優位周波数を探索するための前記手段(MRFD)が、前記第1の測定軸が前記前後軸と一致する場合には、0.2Hzおよび3Hzだけ増加された、前記第2の測定軸に沿った優位周波数νML間の周波数において、前記第1の測定軸に沿った優位周波数の探索を制限する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
優位周波数を探索するための前記手段(MRFD)が、前記第1の測定軸が前記垂直軸と一致する場合には、0.2Hzおよび3Hzだけ増加された、前記第2の測定軸に沿った優位周波数νML間の周波数において、前記第1の測定軸に沿った優位周波数の探索を制限する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
優位周波数を探索するための前記手段(MRFD)が、0.2Hzおよび3Hzだけ増加された、前記第2の測定軸に沿った優位周波数νML間の周波数において、前記加速度によって送信された測定値ベクトルのユークリッドノルム用の優位周波数の探索を制限する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記それぞれの信号の電力がまた閾値より高い場合に、前記検出手段(MD)が、前記第1の測定軸の信号の優位周波数と前記第2の測定軸の信号の優位周波数との間、または前記加速度計(CM)によって送信された測定値ベクトルのユークリッドノルムの優位周波数と前記第2の測定軸の信号の優位周波数との間で、比率を、1.7と2.3との間の範囲で、好ましくは、1.9と2.1との間の範囲で、検出する、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記それぞれの信号の電力がまた閾値より高い場合に、前記検出手段(MD)が、前記第1の測定軸の信号の優位周波数と前記第2の測定軸の信号の優位周波数との間、または前記加速度計(CM)によって送信された測定値ベクトルのユークリッドノルムの優位周波数と前記第2の測定軸の信号の優位周波数との間で、1.7〜2.3に等しい比率を検出するものであり、前記閾値が誤検出または検出漏れに関連したリスクを考慮して決定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
2軸または3軸の加速度計によって得られた移動の測定値に基づいて人の歩行を検出する方法であって、前記加速度計(CM)の第1の測定軸に沿った移動の測定値に基づいて、前記人の身体の前後軸(AP)または垂直軸(VT)を表す測定値を提供するように構成され、前記加速度計(CM)の第2の測定軸に沿った移動の測定値に基づいて、前記身体の正中側面軸(ML)を表す測定値を提供するように構成された方法において、
− 時間窓にわたって、前記加速度計(CM)によって送出された測定信号が処理され、前記処理が、前記信号における優位周波数の探索を含むことと、
− 前記第1の測定軸の信号の優位周波数と前記第2の測定軸の信号の優位周波数との間、または前記加速度計によって送信された測定値ベクトルのユークリッドノルムの優位周波数と前記第2の測定軸の信号の優位周波数との間の比率が、1.7〜2.3に等しい場合に、前記人の歩行が検出されることを、特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の歩行を検出するための、または換言すれば、一連のステップからなる移動モードによる人の移動を検出するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の移動を解析するためのシステムが、特に人の身体活動の解析のために、生物医学分野においてますます普及している。
【0003】
人の歩行活動の検出によって、情報、すなわち、例えば人のエネルギ消費量を推定すること、人が座りがちになっているレベルを評価すること、または外科的介入もしくは薬物療法後の機能的能力の質もしくは損失を推定することを可能にする情報が提供される。
【0004】
“Ambulatory system for human motion analysis using a kinematic sensor: monitoring of daily physical activity in the elderly,” Biomedical Engineering, IEEE Transactions on, vol. 50, no.6, pp.711−723, June 2003, by Najafi, B., Aminian, K., Paraschiv−Ionescu A., Loew, F., Bula C.J., and Robert, P.,なる文献は、2A1G移動センサ(人の胴体に着用され、かつ垂直加速度信号が、0.62〜5.00Hz帯域通過フィルタによってフィルタリングされる2軸加速度計および単軸ジャイロメータ)を開示している。閾値より高いピーク振幅の、少なくとも3つの等間隔の発生が、このフィルタリングされた信号上で求められる。普遍的な閾値をアプリオリに設定することが困難であり、これは、特に、かかるシステムの信頼性の欠如にかかわる。
【0005】
“Reference data for normal subjects obtained with an accelerometric device”, Gait & Posture, October 2002 Vol. 16, Issue 2, Pages 124−134, by Bernard Auvinet, Gilles Berrut, Claude Touzard, Laurent Moutel, Nadine Collet, Denis Chaleil, and Eric Barrey,なる文献は、歩行速度に依存する周波数において電力ピークを生成する、ほぼ周期的活動と考えられる歩行活動の周波数解析を説明している。垂直加速度信号の偶数および奇数高調波の比率を研究することによって、歩行の安定性の研究が可能になる。これには、歩行活動を検出することは含まれないが、しかし人が歩いていることが既に周知である場合に、人の歩行活動を解析することまたは特徴付けることが含まれる。
【0006】
“Classification of waist−acceleration signals in a continuous walking record”, Medical Engineering & Physics 22 (4) (2000), pp. 285−291, by M. Sekine, T. Tamura, T. Togawa and Y. Fukui,なる文献は、人が、水平面を歩いているか、階段を登っているか、または階段を下りているかどうかを、人の歩行を表す信号において区別するために、ウェーブレット変換を用いることを説明している。この文献の内容によっては、歩行活動の検出は可能にならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、人の歩行活動を、その人の歩行信号の記録において検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、2軸または3軸移動センサを含むハウジングを備えた、人の歩行を検出するためのシステムが提案されている。ハウジングは、前記人の身体の上部に装着するのに適しており、その結果、前記センサの第1の測定軸は、前記身体の前後軸または垂直軸を表す測定値を提供するように構成され、前記センサの第2の測定軸は、前記身体の正中側面軸を表す測定値を提供するように構成され、前記システムはまた、前記センサによって送出された測定値を解析するための解析手段を備えている。前記解析手段には、
− 前記センサによって送出された測定信号を時間窓にわたって処理するための処理手段であって、前記信号における優位周波数を探索するための手段を含む処理手段と、
− 第1の測定軸の信号の優位周波数と第2の測定軸の優位周波数との間、または前記センサによって送信された測定値ベクトルのユークリッドノルムの優位周波数と第2の測定軸の信号の優位周波数との間の比率がほぼ2に等しい場合に、人の歩行を検出するための検出手段と、が含まれる。
【0009】
かかるシステムによって、低コストで、システムを着用している人の不快感がほとんどなく、堅固かつ自動的な方法で人の歩行を検出することが可能になる。
【0010】
例えば、時間窓は、スライディング窓である。
【0011】
したがって、システムは、かなりの処理期間にわたってさえ極めて正確である。
【0012】
一実施形態において、前記移動センサは3軸であり、前記センサの第1の測定軸は、前記身体の前後軸と一致し、前記センサの第2の測定軸は、前記身体の正中側面軸と一致し、前記センサの第3の測定軸は、前記身体の垂直軸と一致し、前記検出手段は、第1の測定軸の信号の優位周波数と第2の測定軸の優位周波数との間、または第3の測定軸の信号の優位周波数と第2の測定軸の優位周波数との間、または前記センサによって送信された測定値ベクトルのユークリッドノルムの優位周波数と第2の測定軸の信号の優位周波数との間で、ほぼ2に等しい比率を検出するのに適している。
【0013】
したがって、検出の精度が改善される。
【0014】
一実施形態によれば、システムにはまた、高域通過フィルタが含まれる。
【0015】
したがって、高精度で優位周波数を検出できるように、移動センサによって送信された信号におけるそれぞれの連続成分は除去される。
【0016】
一実施形態において、システムにはまた、例えば0.5〜10Hz間の周波数帯域を備えた通過帯域フィルタが含まれる。
【0017】
したがって、歩行と関係のない信号ノイズまたは周波数の影響は、大幅に制限される。
【0018】
一実施形態によれば、前記解析手段は、前記ハウジングの内部または外部にあり、前記移動センサには、その測定値を前記解析手段に送信するための有線または無線送信手段が含まれる。
【0019】
解析手段は、ハウジングに組み込むか、または遠隔ベースにインストールしてもよく、ハウジングからの出力信号は、解析されてもされなくても、有線または無線で送信することができる。
【0020】
前記移動センサは、2軸もしくは3軸加速度計、2軸もしくは3軸磁力計、または2軸もしくは3軸ジャイロメータであってもよい。
【0021】
本発明は、これらの全てのタイプの移動センサで動作する。
【0022】
例えば、スライディング時間窓は、5秒間続き、1秒だけオフセットされた2つの連続する窓間の4秒の部分的な重複を伴う。
【0023】
これらの値は、人の歩行に特によく適している。
【0024】
一実施形態によれば、移動センサによって送信された信号の優位周波数を探索するための前記手段は、各時間窓においてスペクトル解析によって優位周波数の探索を実行するのに適している。例えば、このスペクトル解析は、スペクトログラムタイプとすることができる。
【0025】
アポダイゼーション窓で畳み込まれた信号のフーリエ変換のモジュラスの2乗を用いるスペクトログラムは、優位周波数、すなわち最大信号電力に対応する周波数を探索する単純で、信頼でき、低コストの方法である。
【0026】
優位周波数を探索するための前記手段は、0.25Hz〜1Hz間の周波数において、第2の軸に沿った優位周波数νMLの探索を制限するのに適し得る。
【0027】
優位周波数を探索するための前記手段は、第1の軸が前後軸と一致する場合には、所定の周波数範囲における周波数において、第1の軸に沿った優位周波数の探索を制限するのに適し得る。この周波数範囲は、0.2Hzおよび3Hzだけ増加された、第2の軸に沿った優位周波数fMLHz([fML+0.2;3])によって制限することができる。
【0028】
好ましくは、この範囲は、0.25Hzおよび2Hzだけ増加された、第2の軸に沿った優位周波数fMLHz([fML+0.25;2])によって制限してもよい。
【0029】
優位周波数を探索するための前記手段は、第1の軸が垂直軸と一致する場合には、所定の周波数範囲に含まれる周波数において、第1の軸に沿った優位周波数の探索を制限するのに適し得る。この周波数範囲は、0.2Hzおよび3Hzだけ増加された、第2の軸に沿った優位周波数fMLHz([fML+0.2;3])によって制限してもよい。
【0030】
優位周波数を探索するための前記手段は、所定の周波数範囲に含まれる周波数において、前記移動センサによって送信された測定値ベクトルのユークリッドノルム用の優位周波数の探索を制限するのに適し得る。この周波数範囲は、0.2Hzおよび3Hzだけ増加された、第2の軸に沿った優位周波数fMLHz([fML+0.2;3])によって制限してもよい。
【0031】
これらの値の全ては、歩行活動に特によく適している。
【0032】
一実施形態によれば、前記検出手段は、少なくとも1つの軸において、信号電力がまた、少なくとも1つの周波数において閾値より高い場合に、分散内で、ほぼ2に等しい前記優位周波数の比率を検出するのに適している。
【0033】
換言すれば、かかる比率は、少なくとも1つの軸において、電力が所定の閾値より高い少なくとも1つの周波数を有する窓用にのみ決定または使用され、この閾値は、電力閾値と呼ぶことができる。この電力閾値は、アプリオリに決定されるか、または例えばテスト段階中に実験的に調整される。
【0034】
少なくとも1つの周波数のこの電力条件を少なくとも1つの軸に、しかしまた全ての軸に適用することが可能である。この電力条件が様々な軸に適用される場合には、各電力閾値が他と異なってもよいことを明示すべきである。
【0035】
特定の実施形態によれば、前記決定手段は、少なくとも1つの軸において優位周波数が、閾値電力より高い電力を有する場合には、所与の時間窓に対応して優位周波数の比率を決定するのに適している。
【0036】
この閾値条件を、優位周波数だけに、または同様に他の定義された周波数もしくは周波数帯域に適用することが可能である。
【0037】
この電力閾値基準はまた、測定値ベクトルのユークリッドノルムに適用してもよいことを明示すべきである。次に、各時間窓用に、電力閾値より高い電力を有する周波数(単複)、例えば優位周波数が検証される。
【0038】
この電力閾値は、アプリオリに設定するか、または何も起きない時間帯に、例えば解剖学的較正中に、電力を前もって決定することによって設定してもよい。
【0039】
一実施形態によれば、前記ハウジングは、前記人の胴体または仙骨に装着するのに適している。
【0040】
ハウジングが胴体に装着される場合には、胴体の振動の振幅はより大きく、これは、システムの精度を改善する。
【0041】
例えばベルトによる仙骨への装着は、特に容易で目立たない。
【0042】
本発明の別の態様によれば、2軸または3軸移動センサによって得られた移動の測定値に基づいて人の歩行を検出するための方法であって、前記センサの第1の測定軸に沿った移動の測定値に基づいて、前記人の身体の前後軸または垂直軸を表す測定値を提供するように構成され、前記センサの第2の測定軸に沿った移動の測定値に基づいて、前記身体の正中側面軸を表す測定値を提供するように構成された方法において、
− 時間窓にわたって、前記移動センサによって送出された測定信号が処理され、前記処理が、前記信号における優位周波数の探索を含み、
− 第1の測定軸の信号の優位周波数と第2の測定軸の優位周波数との間、または前記センサによって送信された測定値ベクトルのユークリッドノルムの優位周波数と第2の測定軸の信号の優位周波数との間の比率がほぼ2に等しい場合に、前記人の歩行が検出される方法がまた提案される。
【0043】
例えば、処理は、スライディング時間窓にわたって実行される。
【0044】
本発明は、非限定的な例として説明され、かつ添付の図面によって示された多くの実施形態を研究することによって、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は本発明の一態様によるシステムの一実施形態を概略的に示す。
図2図2は人ならびにその人の前後軸、垂直軸および正中側面軸を概略的に示す。
図3図3は移動センサが2軸加速度計である、図1によるシステムによって得られた測定値の例を示す。
図4図4は解析手段の動作を示す。
図5図5は解析手段の動作を示す。
図6図6a、図6bは本発明の一態様によるシステムの第1の実施形態を示す。
図7図7a、図7b、図7cは本発明の一態様によるシステムの第2の実施形態を示す。
図8図8a、図8bは本発明の一態様によるシステムの第3の実施形態を示す。
図9図9a、図9bは本発明の一態様によるシステムの第4の実施形態を示す。
図10図10a、図10bは本発明の一態様によるシステムの第5の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図の全てにおいて、同じ参照符号を有する要素は、ほぼ同じである。
【0047】
図1に示すように、人の歩行を検出するためのシステムには、2軸または3軸移動センサCMを含むハウジングBTが含まれる。ハウジングBTは、この例では弾性装着ベルトCEFによって、前記人の身体の上部に装着されるのに適しており、その結果、前記移動センサの第1の測定軸は、前記身体の前後軸APまたは垂直軸VTを表す測定値を提供するように構成され、かつ前記移動センサの第2の測定軸は、前記身体の正中側面軸MLを表す測定値を提供するように構成される。変形として、任意の他の装着手段も適切であり得る。
【0048】
例えば、移動センサの第1の測定軸は、身体の前後軸APまたは垂直軸VTと一致してもよく、移動センサの第2の測定軸は、身体の正中側面軸MLと一致してもよい。
【0049】
例えばこの一致は、例えばハウジングBTを装着した人に壁を背にしてできるだけ真っ直ぐに数秒間立つように頼むことによって、解剖学的較正により達成してもよい。システムは、測定値に適用される回転行列を周知の方法で決定し、縮小された測定値を正中側面軸ML、前後軸APまたは垂直軸VTに送出するようにする。移動センサCMにはまた、この例では無線送信によって、この場合にはラップトップコンピュータである外部ステーションSEに測定値を送信するために、送信モジュールMTRが設けられる。
【0050】
変形として、送信は、有線によって行うことができる。移動センサは、例えば、2軸もしくは3軸加速度計、2軸もしくは3軸磁力計、または2軸もしくは3軸ジャイロメータであってもよい。
【0051】
しかしながら、この説明の残りでは非限定的に、移動センサCMは2軸加速度計であり、その第1の測定軸は、人の身体の前後軸APと一致し、第2の測定軸は、人の身体の正中側面軸MLと一致する。
【0052】
変形として、加速度計の第2の測定軸は、人の身体の正中側面軸MLと一致してもよく、第1の測定軸は、人の身体の垂直軸VTと一致してもよい。
【0053】
ラップトップコンピュータSEには、加速度計CMによって送信されたデータを解析するための解析モジュールMAが含まれる。変形として、解析モジュールは、ハウジングBTに組み込んでもよい。
【0054】
解析モジュールは、加速度計CMから受信された信号を、1kHz以下、典型的には10〜200Hz程度のサンプリング周波数でサンプリングするのに適している。
【0055】
解析モジュールMAには、加速度計CMによって送出された測定信号を処理するための処理モジュールMTが含まれる。
【0056】
変形として、3軸加速度計などの3軸移動センサCMの場合には、加速度計の第1の測定軸が、人の身体の前後軸APと一致し、加速度計の第2の測定軸が、人の身体の正中側面軸MLと一致し、かつ加速度計の第3の測定軸が、人の身体の垂直軸VTと一致するように、解剖学的較正を実行することが可能である。この場合に、検出モジュールは、第1の測定軸の信号の優位周波数と第2の測定軸の優位周波数との間、または第3の測定軸の信号の優位周波数と第2の測定軸の優位周波数との間、または前記センサによって送信された測定値ベクトルのユークリッドノルムの優位周波数と第2の測定軸の信号の優位周波数との間で、ほぼ2に等しい比率を検出するのに適している。次に、これによって、検出の精度が改善される。
【0057】
2にほぼ等しい比率は、例えば1.7〜2.3、好ましくは1.9〜2.1の比率を意味する。
【0058】
この比率は、予め決定してもよいが、しかし同様に、特にテスト段階中に実験的に調整してもよい。次に、この比率によって得られた様々な値は、人が歩いている場合に正確に解析され、次にアルゴリズムにおいて用いられる臨界値が決定される。この決定は、誤検出(人が歩いていないのに歩いているという装置信号)または検出漏れ(装置は、人が歩いているのに歩いていないと示す)に関連したリスクを考慮しながら、特に統計的に行ってもよい。
【0059】
処理モジュールMTには、高精度で優位周波数を検出するために、加速度計CMによって送信された信号のそれぞれの連続成分を除去できるようにする高域通過フィルタFPHを含んでもよい。
【0060】
処理モジュールMTにはまた、歩行と関係のない信号ノイズまたは周波数の影響を大幅に制限するために、帯域通過フィルタを含んでもよい。
【0061】
さらに、処理モジュールMTには、移動センサによって送信された信号の優位周波数を、スペクトル解析によって探索するためのモジュールMRFDが含まれる。スペクトル解析は、周波数に応じて信号電力を推定することに存するが、信号における優位周波数を探索するための計算に関して、単純で低コストな周知の方法である。「優位周波数」は、信号の最大電力密度に対応する周波数であると理解される。当然、変形として、優位周波数を探索する任意の他の方法MRFDを想定してもよい。例えば、スペクトル解析は、フーリエ変換を用いて実行してもよいが、しかしまた、例えば、非定常信号によりよく適する技法であるウェーブレット変換など、当業者に周知の任意の他の技法を用いて実行してもよい。
【0062】
解析モジュールMAにはまた、第1の測定軸の信号の優位周波数と第2の測定軸の優位周波数との間、または前記センサによって送信された測定値ベクトルのユークリッドノルムの優位周波数と第2の測定軸の信号の優位周波数との間の比率がほぼ2に等しい場合に、人の歩行を検出するための検出モジュールMDが含まれる。
【0063】
本発明は、移動センサCMの物理的較正を必要とせずに動作する。または換言すれば、本発明によるシステムは、数値単位もしくは電圧で表現された生データに基づいて動作し、移動センサCMの利得およびシフトの知識は、不可欠ではない。電圧を物理的単位(例えば、加速度計用のm/s)に変換しないように決定された場合には、運動学的データに基づいてではなく、休息状態における人の測定値に基づいて最小電力閾値の概念を決定してもよい。
【0064】
図2は、人、およびその人の3つの解剖学的軸、すなわち三面体(ML、VT、AP)が直三面体であるように向けられた正中側面軸ML、前後軸APおよび垂直軸VTを概略的に示す。身体の正中側面軸MLは、身体の左部分から身体の右部分に向けられ、前後軸APは、身体の背面部から身体の前方部に向けられ、垂直軸は、身体の上部から身体の下部に向けられている。
【0065】
最適には、ハウジングは、胴体または仙骨上に配置してもよい。
【0066】
帯域通過フィルタFPBは、例えば、歩行に特によく適した、0.5〜10Hz間の周波数帯においてフィルタリングする4次バターワースフィルタであってもよい。
【0067】
信号は、解析のために時間窓に分割されるが、時間窓は、例えば、5秒の窓、すなわち1秒だけオフセットされた2つの連続する窓間の4秒の部分的な重複を伴う5秒の窓にされたスライディング時間窓であるのが好ましい。次に、各時間窓用に、信号の優位周波数が求められる。
【0068】
スペクトログラムタイプのスペクトル解析によって優位周波数を探索するためのモジュールMRFDは、0.25Hz〜1Hz間の周波数において第1の軸に沿った優位周波数fMLの探索を制限するように構成してもよい。
【0069】
スペクトル解析によって優位周波数を探索するためのモジュールMRFDはまた、第1の軸が前後軸APと一致する場合には、0.2Hzおよび3Hzだけ増加された、第2の軸に沿った優位周波数fMLHz間の周波数において、または0.25Hzおよび2Hzだけ増加された、第2の軸に沿った優位周波数fMLHz([fML+0.25;2])間の周波数において、第1の軸に沿った優位周波数の探索を制限するように構成してもよい。
【0070】
スペクトル解析によって優位周波数を探索するためのモジュールMRFDはまた、第1の軸が垂直軸VTと一致する場合には、0.2Hzおよび3Hzだけ増加された、第2の軸に沿った優位周波数fMLHz間の周波数において、第1の軸に沿った優位周波数の探索を制限するように構成してもよい。
【0071】
スペクトル解析によって優位周波数を探索するためのモジュールMRFDはまた、0.2Hzおよび3Hzだけ増加された、第2の軸に沿った優位周波数fMLHz間の周波数において、前記移動センサCMによって送信された測定値ベクトルのユークリッドノルム用の優位周波数の探索を制限するように構成してもよい。
【0072】
優位周波数の探索のこれらの全ての制限は、歩行に特に適しており、用いられる計算時間およびメモリ容量を制限することを可能にする。
【0073】
さらに、優位周波数の探索が制限されるかかる周波数範囲の選択が、特に誤検出または検出漏れのリスクを低減することによって、信頼性および安定性さえ向上させ得るということをテストが示した。
【0074】
図3は、2軸加速度計CMを備えた、本発明の一態様によるハウジングBTによって送信された信号SMLおよびSAPの例を示すが、時間に応じて、2軸加速度計CMの第1の測定軸は、前後軸APと一致し、その第2の測定軸は、正中側面軸MLと一致する。ハウジングBTは、例えば、活動が監視されている人の仙骨に配置される。
【0075】
図4は、図3のデータの場合に関して、信号SMLおよびSAPに対応する、時間に応じた優位周波数fMLおよびfAPを表すが、優位周波数fMLおよびfAPは、スライディング窓によって、優位周波数を探索するためにモジュールMRFDにより計算される。
【0076】
図5は、図3および4の場合に関して、優位周波数fMLおよびfAPの比率に基づいた、歩行検出モジュールMDによる計算を表す。次に、システムは、最初の瞬間0秒に対応する瞬間と、最初の瞬間後の182秒に対応する瞬間との間の歩行活動、および最初の瞬間後の221秒に対応する瞬間後に再開する歩行活動を検出する。
【0077】
以下の例示的な実施形態において、ユーザは、本発明の一態様による歩行検出システムを着用し、このシステムを身に付けて、様々なテスト中に静止または移動の様々な姿勢を取る。
【0078】
この例において、測定値は、200Hzのサンプリングレートで得られる。これらのデータは、2つの連続する窓間の90%の重複で10秒続くスライディング窓に対してグループ化される。帯域通過フィルタリング[0.1Hz;10Hz]が、4次IIRバターワースフィルタによって、これらの測定値に適用される。各窓のスペクトル解析が、アポダイゼーション窓を乗じた測定信号の積のフーリエ変換モジュラスの2乗を計算することによって実行され、スペクトログラムに到達できるようにする。第2の軸上の優位周波数fMLは、各窓に関して決定される。
【0079】
これらの例において、各測定軸に対して、優位周波数は、周波数値のそれぞれの好ましい範囲、すなわち0.25Hz〜1Hz間のfMLおよびfML+0.25および2Hz間のfAPにおいて決定される。
【0080】
図6aおよび6bは、第1の例を示す。図6aは、ベルトに着用された、本発明の一態様によるシステムを用いた記録を示す。検出は、正中側面軸MLに沿った測定信号の電力に関係なく作動される。図6aは、窓インデックスに応じて優位周波数fMLおよびfAPを表す。これらは、それぞれ正中側面軸MLおよび前後軸APに沿って、各時間窓用に決定された優位周波数である。
【0081】
図6bは、優位周波数fAPおよびfML間における各時間窓用の比率を表す。この例において、人は、時間窓160および210間にのみ歩いている。
【0082】
これらの時間窓に対応する比率は、値2の近くに位置している。したがって、このテストによって、ほぼ2に等しい、この例では例えば1.9の閾値を決定することが可能になり、これより上で人は歩いていると見なされる。この閾値は、この種のテストに従って手動で決定するか、または誤検出および検出漏れのリスクを推定できるようにする周知の統計的解析技法によって決定してもよい。
【0083】
ここで、閾値が、ほぼ2に等しい、すなわち2に近いがしかし厳密には2に等しくなく、実験的テスト中に調整を行い得ることが示される。この調整は、例えば、fAPおよびfML間の比率の統計的分布を決定すること、およびこの分布のあるパラメータ、例えば、分布が正規であると仮定される場合における平均および標準偏差を推定することによって、手動または自動で行ってもよい。
【0084】
図7a、7bおよび7cは、歩行検出システムがベルト上で携行される第2の例を示す。測定信号の電力閾値が、例えば、正中側面軸MLに沿って測定された信号に課される。ここで、電力閾値、すなわち、それより下では比率fAP/fMLの検出が求められない電力閾値は、0.01g(g=9.81m.s−2)に設定される。この電力は、窓インデックスに応じて、電力の図7aに表されている。電力単位は、この例では、重力定数の2乗である。したがって、この曲線は、それぞれの時間窓に対して、正中側面軸MLに沿って決定された優位周波数の電力を表す。
【0085】
図7bは、正中側面軸MLに沿って測定された信号(その電力は、言及した閾値より高い)を有する時間窓用だけに、前後軸APに沿った優位周波数fAPのみを含む。この例において、ユーザは、時間窓155および210間、ならびに時間窓102および107間に歩いている。
【0086】
図7cにおいて、ユーザの歩行に対応する各個別窓用に、ほぼ2に等しい、すなわち1.8〜2.2間の比率が得られる。この例において、閾値は、1.8または1.9に設定することができる。電力基準は、正中側面軸MLに沿って測定された信号、もしくは前後軸APに沿って測定された信号のいずれか、またはこれらの両方の信号に適用され、閾値は、異なっていてもよい。
【0087】
図8aおよび8bは、第3の例を示すが、この第3の例に関して、図8bは、前記センサCMによって送信された測定値ベクトルのユークリッドノルムの優位周波数と、第2の測定軸の信号の優位周波数fMLとの比率を表す。
【0088】
システムがベルトおよび胴体にそれぞれ装着された2つの他の例示的な実施形態を、図9a、9bおよび10a、10bにそれぞれ示す。
【0089】
これらの例は、ユーザが、時間窓150および200間に歩いていることを示す。システムが身体の上部に配置されている場合はいつでも、システムが非常に信頼できることが、これらの2つの例において特にはっきりと示されている。
【0090】
本発明によって、人の歩行活動を低コストで非常に正確に検出することが可能になる。
【0091】
本発明は、特に歩行段階の検出を説明したが、本発明は、走行段階に適用することができ、そのときには優位周波数を探索するための周波数範囲は調整される。
【0092】
さらに、本発明は、移動センサを物理的に較正することが義務的でなくても動作する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10