(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874133
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】インダクタンス素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20160218BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20160218BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20160218BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20160218BHJP
H01F 41/10 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F15/10 H
H01F41/04 B
H01F27/28 C
H01F41/10 C
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-46130(P2013-46130)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-175437(P2014-175437A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2014年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】310014322
【氏名又は名称】アルプス・グリーンデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 恭一
(72)【発明者】
【氏名】松井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小島 章伸
(72)【発明者】
【氏名】荒木 慶一
(72)【発明者】
【氏名】松山 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】今井 誠作
【審査官】
五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−309024(JP,A)
【文献】
特開2006−128516(JP,A)
【文献】
特開2009−123927(JP,A)
【文献】
特開2013−125896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 27/28
H01F 27/29
H01F 41/04
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉末とバインダー樹脂を有するコア材料を加圧して成形した圧粉成形体の磁性コアの内部にコイル体を埋め込むインダクタンス素子の製造方法において、
幅方向の寸法が厚さ方向の寸法よりも大きく断面が長方形で長尺状の導電性帯体を使用し、
前記導電性帯体で、厚さ方向を巻き中心線と平行に向けて巻き中心線方向へ重ねられるように巻かれた前記コイル体と、前記コイル体から前記巻き中心線と直交する方向に延び出る一対の端部とを形成し、それぞれの前記端部を厚さ方向に曲げて前記巻き中心線と平行な向きとし、さらにその先部を厚さ方向に曲げて、前記コイル体を形成する導電性帯体と平行に対向する一対の端子部を形成し、
前記コイル体を形成する導電性帯体の厚さ方向と、前記端子部を構成する導電性帯体の厚さ方向を、共に加圧方向に向けて、前記コア材料とそれぞれの前記端子部とを前記巻き中心線と平行な方向へ加圧して前記コア材料で前記磁性コアを形成し、前記端子部の板面が前記磁性コアの表面とほぼ同一面となるように前記コイル体を前記磁性コアに埋め込むことを特徴とするインダクタンス素子の製造方法。
【請求項2】
前記磁性コアを形成した後に、アニール処理を行う請求項2記載のインダクタンス素子の製造方法。
【請求項3】
それぞれの前記端子部を、前記コイル体を形成する前記導電性帯体の板面から離れた位置に形成し、前記端子部の板面を金型の表面に当接させた状態で加圧を行って、前記端子部と前記コイル体を形成する前記導電性帯体の板面との間に前記磁性コアを介在させる請求項1または2記載のインダクタンス素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粉末とバインダー樹脂とが加圧されて成形された圧粉成形体の磁性コアにコイル体が埋め込まれたインダクタンス素
子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1ないし3に記載されたインダクタンス素子は、圧粉成形体の磁性コアにコイル体が埋め込まれている。圧粉成形体の磁性コアは、磁性粉末とバインダー樹脂とから成るコア材料が金型内に供給され、加熱され加圧されてコア形状に成形されるものであり、磁性粉末の密度を高くでき、高いインダクタンスを得ることが可能である。
【0003】
特許文献1に記載されたインダクタは、平角銅線が、厚さ方向を巻き中心線に向けた状態で、巻き中心線に沿って重ねられるように巻かれたコイルが使用されている。コイルが圧粉成形体の内部に埋め込まれて磁性コアが成形されるが、平角銅線の両端部は磁性コアから外部に突出している。磁性コアが成形された後に、平角銅線の両端部が磁性コアの裏面に向けて折り曲げられて、端子部が形成される。
【0004】
特許文献1に記載されたインダクタは、磁性コアから突出した平角銅線の端部を折り曲げて端子部を形成するため、磁性コアの裏面と端子部との間に隙間が発生しやすく、インダクタの薄型化と小型化に適したものではない。また、磁性コアから突出した平角銅線の端部を折り曲げるときに、この端部の基部から磁性コアに大きな応力が作用し、平角銅線が突出している部分で磁性コアが損傷しやすく、または内部に亀裂が生じやすくなる。
【0005】
特許文献2に記載された圧粉成形体の製造方法は、銅線によりコイルが巻かれるとともに、銅線の端部が折り曲げられて一対の端子部が形成される。コイルならびに一対の端子部がプレス機に設置されるとともに、磁性粉末とバインダー樹脂とから成るコア材料が供給され、コイルならびに端子と共にコア材料が圧縮され且つ加圧されて圧粉成形体の磁性コアが成形される。成形後のインダクタンス素子は、コイルと端子部が共に磁性コアの内部に埋め込まれたものとなり、端子部の表面のみが磁性コアの裏面に露出する。
【0006】
この製造方法で成形されたインダクタンス素子は、コイルと端子部がコア材料と共に加圧されて磁性コアが形成されるため、小型化と薄型化が可能であり、また、磁性コアの成形後に端子部を折り曲げる必要がないため、折り曲げ作業により磁性コアに損傷や亀裂を与えることがない。
【0007】
しかし、特許文献2に記載されたコイルを形成している銅線は、断面が正方形であるため、銅線を折り曲げた一対の端子部は、コイルの巻き中心線に沿う方向での断面二次モーメント(I)が大きくなり、コイルの巻き中心線に沿う向きでの曲げ剛性(EI:Eは縦弾性係数)が非常に大きくなる。そのため、コイルと端子部がコア材料とともに巻き中心線に沿う方向へ加圧されて磁性コアが成形された後に、端子部が前記巻き中心線方向へ戻ろうとするスプリングバック力が大きく作用する。そのため、成型後の磁性コアの内部に、スプリングバック力による大きな応力が作用し、磁性コアの内部に亀裂が発生しやすくなる。
【0008】
次に、特許文献3に記載されたインダクタの製造方法は、鉄系金属磁性粉末とエポキシ樹脂を混合して得た封止材を予備成形した2個の予備成形体が使用される。空心コイルと空心コイルから延び出ている両端部が2個の予備成形体の間に収納され、予備成形体が加熱され圧縮成形されて、磁性コアが成形される。
【0009】
特許文献3に記載された製造方法は、断面が長方形状の導電性帯体が、その帯体の幅方向がコイルの巻き中心線と平行に向けられた状態で円筒状に巻かれてコイル体が形成されている。そして、磁性コアを成形するときに、コイルを形成している導電性帯体に対して加圧力が幅方向に作用する。そのため、導電性帯体が幅方向へ座屈変形しやすくなり、その変形力で磁性コアに亀裂などが発生しやすい。さらに、変形した導電性帯体の面間に隙間が形成されやすく、この隙間内に磁性粉が入り込んで、コイルの絶縁性が劣化する問題も発生しやすい。
【0010】
絶縁性の劣化などの課題は磁性コアが小型化されて圧粉成形体の体積が小さくなると、特に顕著になる。したがって、特許文献3に記載された製造方法は、小型の磁性コアに適したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−13066号公報
【特許文献2】特開2005−294461号公報
【特許文献3】特開2012−160507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、コイル体から延びる端子部のスプリングバック力を弱くして、圧粉成形体である磁性コアの内部に亀裂が生じにくくし、さらに小型化と薄型化が可能なインダクタンス素
子の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、磁性粉末とバインダー樹脂を有するコア材料を加圧して成形した圧粉成形体の磁性コアの内部にコイル体を埋め込むインダクタンス素子の製造方法において、
幅方向の寸法が厚さ方向の寸法よりも大きく断面が長方形で長尺状の導電性帯体を使用し、
前記導電性帯体で、厚さ方向を巻き中心線と平行に向けて巻き中心線方向へ重ねられるように巻かれた前記コイル体と、前記コイル体から前記巻き中心線と直交する方向に延び出る一対の端部とを形成し、それぞれの前記端部を厚さ方向に曲げて前記巻き中心線と平行な向きとし、さらにその先部を厚さ方向に曲げて、前記コイル体を形成する導電性帯体と平行に対向する一対の端子部を形成し、
前記コイル体を形成する導電性帯体の厚さ方向と、前記端子部を構成する導電性帯体の厚さ方向を、共に加圧方向に向けて、前記コア材料とそれぞれの前記端子部とを前記巻き中心線と平行な方向へ加圧して前記コア材料で前記磁性コアを形成し、前記端子部の板面が前記磁性コアの表面とほぼ同一面となるように前記コイル体を前記磁性コアに埋め込むことを特徴とするものである。
【0017】
本発明のインダクタンス素子の製造方法では、前記磁性コアを形成した後に、アニール処理を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のインダクタンス素
子の製造方法は、金属製帯体で形成された端子部の厚さ方
向が、圧粉成形体を加圧する際の加圧方向に向けられている。端子部は加圧方向に向けて剛性が低くなるため、磁性コアが成形された後の端子部のスプリングバック力が弱くなり、端子部に隣接する部分で磁性コアに亀裂が発生しにくくなる。
【0020】
また、コイル体も、金属製帯状体の厚み方向が加圧方向と平行に向けられているため、磁性コアを圧縮成形した後のコイル体を構成する金属製帯体のスプリングバック力が弱くなり、コイル体を構成する金属製帯体の間の接着が剥がれようとする力も発生しにくい。そのため、アニール処理により、金属製帯体の間の接着力が低下しても金属製帯体の面間に隙間が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態のインダクタンス素子に使用されるコイル体が巻き成形された直後の状態を示す斜視図、
【
図2】コイル体に端子部が曲げ成形された状態を示す斜視図、
【
図5】インダクタンス素子の断面図であり、
図2のV−V線の断面図、
【
図6】コイル体の断面図であり、
図2のVI−VI線の断面図、
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態のインダクタンス素子1は、圧粉成形体である磁性コア20にコイル体10が埋め込まれている。
【0023】
図1と
図2に示すように、コイル体10は、金属製帯体11を巻いて形成されている。
図1と
図6に示すように、金属製帯体11は、対向する板面11a,11aと、対向する側端面11b,11bとを有し、断面が長方形の帯状体である。金属製帯体11は、板面11a,11aによって幅方向の寸法Aが決められ、側端面11b,11bによって厚さ方向の寸法Bが決められている。
【0024】
幅方向の寸法Aは厚さ方向の寸法Bよりも十分に大きく、寸法Aは寸法Bの2倍以上であり、好ましくは4倍以上、さらに好ましくは6倍以上である。
【0025】
金属製帯体11は銅で形成されており、
図6に示すように、金属製帯体11の表面に被覆層12が形成されている。被覆層12は絶縁樹脂層の表面にナイロンなどの融着層が重ねられた2層構造である。
【0026】
図1ないし
図3にコイル体10の巻き中心線Oが示されている。コイル体10は、金属製帯体11の板面11aが巻き中心線Oとほぼ垂直となり、厚さ方向を決めている側端面11bが巻き中心線Oと平行となる向きで、板面11aどうしが巻き中心線Oに沿って重なるように巻かれている。
図1と
図2および
図4に示すように、コイル体10は、金属製帯体11が楕円形となるように巻かれている。
【0027】
図6に示すように、金属製帯体11を巻いて形成されたコイル体10は、加熱されるとともに巻き中心線Oと平行な向きの加圧力F1によって加圧される。この加熱加圧処理により、被覆層12の表面の融着層が溶融し、金属製帯体11の板面11aどうしが離れないように接着される。
【0028】
図1に示すように、コイル体10が楕円状に巻かれた状態で、コイル体10から金属製帯体11の第1の端部13と第2の端部16とが突出している。ここで、端部13,16とは、金属製帯体11のうちのコイル体10として巻かれていない両端部分を意味している。
【0029】
図2に示すように、第1の端部13は、第1の折れ線14aによって谷折り方向へほぼ直角に曲げられ、第2の折れ線14bによって山折り方向へほぼ直角に曲げられ、第3の折れ線14cと第4の折れ線14dのそれぞれにおいて谷折り方向へほぼ直角に折り曲げられる。第2の端部16は、第1の折れ線17aにおいて山折れ方向へほぼ直角に折り曲げられ、第2の折れ線17bと第3の折れ線17cおよび第4の折れ線17dにおいて、谷折り方向へほぼ直角に折り曲げられている。
【0030】
第1の端部13は、第4の折れ線14dよりも先の部分が第1の端子部15であり、第2の端部16は、第4の折れ線17dよりも先の部分が第2の端子部18である。
【0031】
図2と
図5に示すように、第1の端子部15は、コイル体10として巻かれている金属製帯体11の板面11aからやや離れた位置にあり、第1の端子部15を形成している金属製帯体11の板面11aと、コイル体10を構成している金属製帯体11の板面11aとがほぼ平行に対向している。
【0032】
図2に示すよう、第2の端子部18も、コイル体10として巻かれている金属製帯体11の板面11aからやや離れた位置にあり、第2の端子部18を形成している金属製帯体11の板面11aと、コイル体10を構成している金属製帯体11の板面11aとがほぼ平行に対向している。
【0033】
そして、第1の端子部15の
図2において上に向けられている板面11aと、第2の端子部18の
図2において上に向けられている板面11aが、ほぼ同一面に位置し、その面は、巻き中心線Oと垂直な面である。
【0034】
図3に、磁性コア20を圧粉成形体として成形する工程が示されている。
図3に示すプレス機30は、金型本体31の内部に下型32が設けられ、その上方にキャビティ34が形成されている。
図2に示すコイル体10がキャビティ34の内部に挿入され、第1の端子部15の表面の板面11aと第2の端子部18の表面の板面11aが、下型32の上面に当接するように位置決めされる。
【0035】
その後、磁性粉末とバインダー樹脂とから成るコア材料が、キャビティ34の内部に供給される。磁性粉末は磁性合金粉末であり、例えば、Feを主体とし、Ni、Sn、Cr、P、C、B、Siなどの各種金属が含まれたFe基非結晶金属ガラス合金の粉末であり、水アトマイズ法により粉末化されたものである。バインダー樹脂は、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂などである。
【0036】
前記コア材料は、前記磁性粉末が前記バインダー樹脂でコーティングされた混合粉末である。あるいは、磁性粉末と粉末状のバインダー樹脂とが単に混合されたものであってもよい。
【0037】
コア材料がキャビティ34内に充填されると、キャビティ34の上方から上型33が挿入され、下型32と上型33とでコア材料が加圧力F2で加圧されて、圧粉成形体である磁性コア20が形成される。この圧粉成形では、バインダー樹脂が磁性粉末どうしを結合するための結合剤として機能する。このとき、キャビティ34を、必要に応じて後述するアニール処理時の温度と同じ程度の温度で加熱してもよい。
【0038】
図2ないし
図4に示すように、圧粉成形体である磁性コア20は、上面21と下面22を有しさらに4つの側面を有する立方体形状である。
図2と
図4に示すように、コイル体10から延びる金属製帯体11の端部13,16で形成された第1の端子部15と第2の端子部18は、その表面の板面11aが、磁性コア20の下面22に露出し、それぞれの端子部15,18の板面11aが磁性コア20の下面22とほぼ同一面となる。
【0039】
また、
図2に示すように、金属製帯体11の第1の端部13の折れ線14cと折れ線14dとの間の部分の板面11aが、磁性コア20の1つの側面23に現れる。また、第2の端部16の折れ線17cと折れ線17dとの間の部分の板面11aも、磁性コア20の側面23に現れる。それぞれの板面11aと側面23とがほぼ同一面である。
【0040】
図3に示すように、キャビティ34内では、下型32と上型33との間で、磁性粉末とバインダー樹脂とから成るコア材料が加圧力F2で加圧されると同時に、コイル体10ならびに第1の端子部15と第2の端子部18も加圧力F2を受けて加圧される。
【0041】
第1の端子部15と第2の端子部18を構成している金属製帯体11は、板面11aが巻き中心線Oと垂直な面となり、第1の端子部15と第2の端子部18を構成している金属製帯体11の厚さ方向が、加圧力F2が作用する方向に向けられている。
図6に示すように、金属製帯体11は、幅方向の寸法Aに比べて厚さ方向の寸法Bが十分に小さくなっている。よって、金属製帯体11の断面では、加圧力F2が作用する方向での断面二次モーメント(I)が極小となり、第1の端子部15と第2の端子部18は、加圧力F2が作用する方向での曲げ剛性(EI)が極小となる。
【0042】
そのため、
図3に示すキャビティ34の内部で圧粉成形体の成形が完了し、下型32と上型33との加圧力F2が解除された後に、第1の端子部15と第2の端子部18がコア体10から離れようとする向きのスプリングバック力がきわめて弱くなる。第1の端子部15と第2の端子部18のスプリングバック力が磁性コア20の内部に与える応力が最小になるため、端子部15,18と対面している部分で磁性コア20に内部亀裂が発生する可能性が低くなる。
【0043】
図4に示すように、第1の端子部15と第2の端子部18は、コイル体10を形成している金属製帯体11の板面11aに一部が対面する対面領域Dを有している。
図5に示すように、対面領域Dでは、端子部15,18とコイル体10との隙間δが狭くなり、加圧成形後に端子部15,18がコイル体10から離れようとするスプリングバック力により、隙間δの狭い領域に位置している磁性コア20に内部応力が発生しやすくなっている。しかし、端子部15,18は厚さ方向が巻き中心線Oと平行に向けられてスプリングバック方向の曲げ剛性(EI)が低くなっているので、隙間δの部分で磁性コア20に大きな亀裂などが生じにくくなる。
【0044】
さらに、
図4に示すように、端子部15,18とコイル体10との対面領域Dの面積が、それぞれの端子部15,18の面積の50%以下となっていると、隙間δの狭い領域が可能な限り狭くなり、この領域において磁性コア20の部分に亀裂などがさらに生じにくくなる。
【0045】
磁性コア20が圧粉成形された後に、アニール処理に移行する。このアニール処理は、350℃〜450℃程度の温度に加熱して行われるものであり、磁性コア20の内部歪みを緩和し、磁歪を低減するための
工程である。
図6に示すように、コイル体10を形成している金属製帯体11は、コイル体10を成形するときに加圧力F1を与えて上下に圧縮させた状態で、絶縁層12の表面のナイロンなどの融着層で接着されている。そのため、アニール処理で、前記融着層が加熱されると接着力が低下し、コイル体10を形成している金属製帯体11の板面11aどうしを巻き中心線O方向へ引きはがそうとするスプリングバック力が作用する。
【0046】
しかし、コイル体10を構成する金属製帯体11は、スプリングバック方向である巻き中心線Oと平行な方向に断面の厚さ寸法Bが向けられているため、スプリングバック方向の断面二次モーメント(I)が極小となり、スプリングバック方向の剛性(EI)が極小となる。そのため、スプリングバック力により、コイル体10を構成する金属製帯体11どうしが剥がれるのを抑制しやすくなる。よって、コイル体10を構成する金属製帯体11の板面11aの間に磁性粉末が入り込むのを抑制でき、金属製帯体11どうしの絶縁を保つことが可能になる。
【0047】
コイル体10ならびに端子部15,18は、断面が長方形の金属製帯体11で形成されているため、幅寸法Aを大きくすることで、断面積を十分に大きく確保することが可能である。そのため、コイル体10の抵抗値を小さくでき、コイル体10に必要とされる電流量を十分に与えることが可能である。しかも、金属製帯体11は、長方形の断面の厚さ寸法Bの方向が、スプリングバック力が作用する加圧方向ならびに巻き中心線Oと平行な方向に向けられているため、端子部15,18のスプリングバック力による磁性コア20の損傷や、コイル体10を構成している金属製帯体11のスプリングバック力による層間の剥がれを抑制しやすくなっている。
【0048】
図5に示すように、アニール処理の後に、磁性コア20の外面の全域に保護樹脂層41がコーティングされる。第1の端子部15と第2の端子部18が存在している部分で、前記保護樹脂層41と、さらに、第1の端子部15および第2の端子部18の表面に形成されている被覆層12が除去されて露出部41aが形成される。そして、保護樹脂層41の表面に金などによる低抵抗金属層がめっき処理により形成され、端子導通部42が形成される。端子導通部42は一対形成され、第1の端子部15と第2の端子部18に個別に導通したものとなる。
【符号の説明】
【0049】
1 インダクタンス素子
10 コイル体
11 金属製帯体
11a 板面
11b 側端面
13 第1の端部
15 第1の端子部
16 第2の端部
18 第2の端子部
20 磁性コア
30 プレス機
32 下型
33 上型
34 キャビティ
D 対面領域
F1,F2 加圧力
O 巻き中心線