(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874157
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】跳ね上がり防止機構付きグレーチング
(51)【国際特許分類】
E03F 5/06 20060101AFI20160218BHJP
E03F 5/04 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
E03F5/06 B
E03F5/04 F
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-148634(P2014-148634)
(22)【出願日】2014年7月22日
(65)【公開番号】特開2016-23473(P2016-23473A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2015年7月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】393022470
【氏名又は名称】三重重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(73)【特許権者】
【識別番号】511259522
【氏名又は名称】株式会社 フジロード
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(72)【発明者】
【氏名】川崎 宗幸
(72)【発明者】
【氏名】春田 直也
【審査官】
越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−041214(JP,A)
【文献】
実公平4−39915(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレーチング本体の裏面に、
案内溝を設けた円板状カムと、前記案内溝にガイドされて先端を外方向へ突出自在としたロックピンを有する跳ね上がり防止機構を取り付け、
前記円板状カムを回動してロックピンを突出させ、ロックピンの先端を側溝に形成した孔部に嵌入することによってグレーチング本体の跳ね上がりを防止するようにした跳ね上がり防止機構付きグレーチングであって、
前記案内溝は、中心からの距離が徐々に遠くなるように設計された一条の螺旋状のものであり、一方、ロックピンの後端部には前記案内溝に係合する棒状の案内子が突設されていて、円板状カムの回動に伴い案内子が前記案内溝に案内されてロックピンの先端を外方向へ突出する構造となっており、
また、前記跳ね上がり防止機構のケース下面には、前記孔部に向けて直線状に延びる第2の案内溝が形成されているとともに、この第2の案内溝にロックピンの案内子の先端が係合されており、ロックピンの先端を直線的に外方向へ突出する構造となっていることを特徴とする跳ね上がり防止機構付きグレーチング。
【請求項2】
円板状カムの中心にボルトを立設して、このボルト頭部の回動により円板状カムを回動するようにした請求項1に記載の跳ね上がり防止機構付きグレーチング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路側溝などに敷設されているグレーチングが、車両等によって跳ね上げられてズレたり飛散したりするのを防止することができる跳ね上がり防止機構付きグレーチングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路側溝などにはグレーチングが敷設されているが、このグレーチングは通常は自重により安定設置されることが多い。しかし、設置場所が必ずしも平らな箇所とは限らず、車両がグレーチング上を走行するとそのガタツキによって跳ね上がることがあった。特に、高架道路に敷設されたグレーチングが跳ね上がって飛散すると高架下に落下する場合があり、非常に危険であった。
【0003】
そこで、従前より種々のグレーチングの跳ね上がり防止手段が提案されてきた。例えば、最も一般的なものは、特許文献1に示されるように、グレーチングの周辺部やコーナ部をボルトで排水溝の載置面に固定する方法である。その他、特許文献2に示されるように、前記ボルトに加えて隣接するグレーチング同士を更にロングボルトで固定する方法や、特許文献3に示されるように、圧縮発条を介在させたボルトを用いて弾発力により強固に固定する方法なども提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜特許文献3に示されるものは、いずれもグレーチングの周辺部の複数個所をボルト締めする必要があるので締結作業に長時間かかるという問題点や、屈んで作業することを長時間強いられるため作業員の負担が大きくなるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−70538号公報
【特許文献2】特開2005−171594号公報
【特許文献3】特開2005−48588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決して、簡単な操作により短時間でグレーチングの固定を行うことができ、かつ跳ね上がりの防止を図ることができ、また屈んで固定作業をする必要がなく作業員の負担も少なくすることができる跳ね上がり防止機構付きグレーチングを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の跳ね上がり防止機構付きグレーチングは、グレーチング本体の裏面に、
案内溝を設けた円板状カムと、前記案内溝にガイドされて先端を外方向へ突出自在としたロックピンを有する跳ね上がり防止機構を取り付け、
前記円板状カムを回動してロックピンを突出させ、ロックピンの先端を側溝に形成した孔部に嵌入することによってグレーチング本体の跳ね上がりを防止するようにした
跳ね上がり防止機構付きグレーチングであって、
前記案内溝は、中心からの距離が徐々に遠くなるように設計された一条の螺旋状のものであり、一方、ロックピンの後端部には前記案内溝に係合する棒状の案内子が突設されていて、円板状カムの回動に伴い案内子が前記案内溝に案内されてロックピンの先端を外方向へ突出する構造となっており、
また、前記跳ね上がり防止機構のケース下面には、前記孔部に向けて直線状に延びる第2の案内溝が形成されているとともに、この第2の案内溝にロックピンの案内子の先端が係合されており、ロックピンの先端を直線的に外方向へ突出する構造となっていることを特徴とするものである。
【0008】
【0009】
【0010】
また、円板状カムの中心にボルトを立設して、このボルト頭部の回動により円板状カムを回動するようにしたものが好ましく、これを
請求項2に係る発明とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、グレーチング本体の裏面に、円弧状あるいは螺旋状の案内溝を設けた円板状カムと、前記案内溝にガイドされて先端を外方向へ突出自在としたロックピンを有する跳ね上がり防止機構を取り付け、前記円板状カムを回動してロックピンを突出させ、ロックピンの先端を側溝に形成した孔部に嵌入することによってグレーチング本体の跳ね上がりを防止するようにしたので、円板状カムを回動するという簡単な作業によりロックピンを突出させてロック状態を確保することができ、またこの結果、グレーチングの跳ね上がりを防止することが可能となる。
【0012】
また、
前記案内溝は、中心からの距離が徐々に遠くなるように設計された
一条の螺旋状のものであり、一方、ロックピンの後端部には前記案内溝に係合する案内子が突設されていて、円板状カムの回動に伴い案内子が前記案内溝に案内されてロックピンの先端を外方向へ突出する構造となっているので、円板状カムを回動によりロックピンの先端を確実に突出させて、ロック状態を保持することができる。
【0013】
また、前記跳ね上がり防止機構のケース下面には、
前記孔部に向けて直線状に延びる第2の案内溝が形成されているとともに、この第2の案内溝にロックピンの案内子の先端が係合されており、ロックピンの先端を直線的に外方向へ突出する構造となっているので、ロックピンの案内子は二つの案内溝に案内されてロックピンの先端を直線的、かつスムーズに外方向へ突出することができる。
【0014】
また、
請求項2に係る発明では、円板状カムの中心にボルトを立設して、このボルト頭部の回動により円板状カムを回動するようにしたので、円板状カムの回動を簡単かつ確実に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、本発明の
参考形態の一例を示す平面図で、右半分はバーを省略した状態となっている。
図2は、
図1の右側面図である。
図において、1は金属製のグレーチング本体である。このグレーチング本体1は、前後方向に一定ピッチで配したメインバー1aと、このメインバー1a群の上端に一定ピッチで格子状に配したクロスバー1bとからなる公知のものである。20は道路の側溝を示し、この側溝20上にグレーチング本体1が敷設されている。
【0017】
グレーチング本体1の裏面には、跳ね上がり防止機構2が取り付けられている。
この跳ね上がり防止機構2は、
円弧状の案内溝3を設けた円板状カム4と、前記案内溝3にガイドされて先端を外方向へ突出自在としたロックピン5とを有している。
図1に示すものでは、2個の円弧状の案内溝3と、2個のロックピン5を有したものとなっている。
そして、前記円板状カム4を回動してロックピン5を突出させ、ロックピン5の先端を側溝20に形成した孔部21に嵌入することによってグレーチング本体1を固定し、車両がグレーチング上を走行した場合等にもガタツキの発生を防ぎ、また跳ね上がるのを確実に防止するように構成されている。
【0018】
更に詳しく説明すると、前記案内溝3は、中心からの距離が徐々に遠くなるように設計された
円弧状のものであり、一方、ロックピン5の後端部には前記案内溝3に係合する案内子5aが突設されており、円板状カム4の回動に伴い案内子5aが前記案内溝3に案内される構造となっている。そして、前記案内溝3が中心からの距離が徐々に遠くなるように設計されているため、円板状カム4の回動に伴い、ロックピン5の先端が外方向へ突出する構造となっている。
なお、前記
円弧形状については、ロックピン5の突出量に応じて任意に設計することができる。また、このようなカム構造自体は、例えば4本の棒を四方に運動させる場合、四つ棒カム板と称されている公知の構造である。
【0019】
また前記跳ね上がり防止機構2は、
図2に示されるように、ケース上面6a及びケース下面6bで覆われている。更に、前記ケース下面6bには、直線状に延びる第2の案内溝7が形成されているとともに、この第2の案内溝7にロックピン5の案内子5aの先端が係合されており、ロックピン5の先端を直線的に外方向へ突出する構造となっている。
このように、案内子5aが円板状カム4の案内溝3とケース下面6bの第2の案内溝7の両方に係合されることにより、ロックピン5が二つの案内溝に案内されてその先端を直線的、かつスムーズに外方向へ突出できるように構成されている。
【0020】
前記円板状カム4の中心にはボルト8が立設されており、例えば6角形状等に形成されたボルト頭部を工具で回動することにより、前記円板状カム4を回動してロックピン5を外方向へ突出する構造となっている。従って、従来のように複数個所をボルト締めする必要がなく短時間で作業を終えることができ、また、屈んで作業する必要もないので作業員の負担も小さくすることができる。
【0021】
なお、前記ロックピン5は、直径線上に配置した左右1対のロックピン5、5を1組として、1組または2組以上均等に配置してあり、これによりロック状態を強固なものとしてグレーチングの跳ね上がりを確実に防止している。
また、前記ロックピン5は、グレーチング本体1の裏面に設けられた保持部材9、9に支持されており、ロックピン5を側溝20の孔部21内へ確実に嵌入できるように構成されている。
【0022】
更に、
図8に示されるように、前記円板状カム4の下面には係止用突起10が設けられており、ケース下面6bの上面に設けられた係止用凹部(図示せず)と係止可能することで、円板状カム4の回動開始時及び回動終了時の位置において節度感よく停止できる構造となっている。
また、前記ボルト8の両端部はケース上面6a及びケース下面6bに枢着されており、前記円板状カム4の回動が正確かつスムーズに行えるように構成されている。
【0023】
図3は、その他の
参考形態を示す平面図、
図4はその底面図である。
図3に示すものでは、円板状カム4に中心からの距離が徐々に遠くなるように設計された円弧状の案内溝3が4個設けられている。また、これに対応してロックピン5も4個取り付けられており、円板状カム4を回動すると4個のロックピン5が同時に外方向へ突出して、それぞれが側溝20の孔部21内へ嵌入する構造となっている。
【0024】
図5は、
図3のロックピンの突出工程を示す説明図である。
左側の図は、ロックをかける前の段階で、ロックピン5が外方向へ全く突出していない状態を示す。この時、ロックピン5の案内子5aは案内溝3の中心からの距離が最も近い位置で係合している。
中央の図は、円板状カム4を時計方向に途中まで回動させた段階で、ロックピン5が外方向へ半分ほど突出した状態を示す。この時、ロックピン5の案内子5aは案内溝3のほぼ中央位置で係合しており、また、第2の案内溝7に案内されてロックピン5を直線的に放射方向へ移動している。
左側の図は、ロック終了後の段階で、ロックピン5が外方向へ完全に突出した状態を示す。この時、ロックピン5の案内子5aは案内溝3の中心からの距離が最も遠い位置で係合している。このように、ロックピン5の先端は移動量(d)だけ自在に出没可能な構造となっているので、側溝20の孔部21の深さとして移動量(d)分を確保しておけば、ロックピン5の先端が孔部21内へ嵌入されて確実にロックできることとなる。
【0025】
前記案内溝3の形状としては、螺旋状のもが好ましい。
図6は、1本の螺旋状の案内溝3を設けて、この案内溝3に2本のロックピン5を出没自在となるように係合させたものである。また、
図7は、1本の螺旋状の案内溝3を設けて、この案内溝3に4本のロックピン5を出没自在となるように係合させたものである。いずれにおいても、円板状カム4の回動により、ロックピン5の先端を所定量の長さで同時に外方向へ突出させることが可能である。
【0026】
以上の説明からも明らかなように、本発明はグレーチング本体の裏面に、
螺旋状の案内溝を設けた円板状カムと、前記案内溝にガイドされて先端を外方向へ突出自在としたロックピンを有する跳ね上がり防止機構を取り付け、前記円板状カムを回動してロックピンを突出させ、ロックピンの先端を側溝に形成した孔部に嵌入することによってグレーチング本体の跳ね上がりを防止するようにしたので、円板状カムを回動するという簡単な作業によりロックピンを突出させてロック状態を確保することができ、またこの結果、グレーチングの跳ね上がりを防止することができることとなる。また、従来のようなボルト締め作業と異なり、屈んで固定作業をする必要がないため作業員の負担も少なくできるという利点もある。
【符号の説明】
【0027】
1 グレーチング本体
1a メインバー
1b クロスバー
2 跳ね上がり防止機構
3 案内溝
4 円板状カム
5 ロックピン
5a 案内子
6a ケース上面
6b ケース下面
7 第2の案内溝
8 ボルト
9 保持部材
10 係止用突起
20 側溝
21 孔部