(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸筒内に、芯の後退を阻止するチャックユニットが配置されたシャープペンシルにおいて、芯の繰り出し過程において、前記チャックユニットのチャック体が拡開した状態で後退し、次いで、前記チャック体が閉鎖して芯を把持した状態で前進するチャックユニット移動手段を設けたシャープペンシル。
前記先部材内部に段部を形成すると共に、その段部を支点として揺動可能な円板状の部材を、前記摺動部材の後方に配置し、前記円板状の部材の揺動により、前記摺動部材が前進もしくは後退するものとした請求項4に記載のシャープペンシル。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による芯繰り出し構造を有するシャープペンシルの基本構造は、以下の通りである。軸筒内には、芯の後退を阻止するチャックユニットが配置されている。さらに、芯の繰り出し過程において、前記チャックユニットのチャック体が拡開した状態で後退し、次いで、前記チャック体が閉鎖して芯を把持した状態で前進する、チャックユニット移動手段を設けている。
作用について説明する。芯を繰り出すために、チャックユニットの後方に配置される芯タンクユニットを押圧して前進せしめる(以下、後端ノックという)と、チャックユニットに内包されるチャック体が拡開して芯を解放すると共に、前記チャックユニットと前記芯タンクユニットとが一体に係止される。次いで、前記芯タンクユニットの押圧を解除すると、芯タンクユニットと前記チャックユニットが一体のまま後退し、その後退過程において係止が外れると共にチャックユニットのチャック体が閉鎖して芯を
挟持し、次いでチャックユニットが前進する。これにより芯の繰り出しを完了する。この構造を採ることで、芯の繰り出し過程で、芯を後退させることがないため、芯が先部材や芯戻り防止部材の内面に何度も擦れることを防止することができ、この結果、芯の表面の削れによる芯の折損や紙面の汚れを防止できる。
【0010】
実施例に基づき本発明のシャープペンシルの芯繰り出し構造を説明する。
図1は、本発明の第1実施例の構成を示す縦断面図であり、
図2は、部分拡大縦断面図である。
外軸筒1の前方には、先部材2が固定されている。その先部材2は内部に芯保持部材3を圧入固定し、先端に芯保護管4を固定している。また、先部材2の内部であって、芯保持部材3の後方には、摺動体5、チャックリング6、チャック7、スプリング押さえ8、チャックスプリング9から構成されるチャックユニットが、前後方向摺動自在に配置されている。そのチャックユニットは、摺動体5の後方に配置された摺動体スプリング10によって、前方に付勢されている。
また、前記摺動体5の後方には、芯タンク11、継ぎ手12、ノック部材13から構成される芯タンクユニットが、外軸筒1の内部で前後方向摺動自在に配置されている。さらに、芯タンク11の外周には、ノックスプリング14が配置されると共に、ノック部材13の外周には抜け止め部材15が配置される。そのノック部材13の後端には消しゴム16が内挿入され、その消しゴム16を覆うように、ノックカバー17がノック部材13の後端に取り外し可能に配置される。また、前記外軸筒1の後方には小径部1aが設けられ、その小径部1aにはクリップ18が円筒状の取り付け部18aが外嵌圧入されることで固定されている。このクリップ18は外軸筒1或いはノック部材13、ノックカバー14、抜け止め部材17と一体に成形することも可能である。以上が本実施例の構成であるが、本実施例においては、摺動体5と継ぎ手12に特徴を有している。
【0011】
さらに各部材について詳述する。前記先部材2は、内部に貫通孔2aと、段部2b、2c、2dが形成され、段部2cの前方に内径部2eが、段部2cと段部2dの間に内径部2fが形成されている。また、先部材2の後方には、螺子2gが形成され、その螺子2gは前記外軸筒1の前方に形成された螺子1gと螺合固定されている。
前記芯保持部材3は軸方向に貫通孔3aを有し、前方は先端が平らな円錐上、後方は円筒状となっており、後端に鍔部3bを有する。前記先部材2の内側段部2bにこの鍔部3bを当接させて位置決めされた状態で、その芯保持部材3は先部材2に圧入固定される。この芯保持部材5に用いられる材質は、弾性を有する樹脂であれば良く、具体的には、ニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。また、先部材2の貫通孔2aに圧入固定される芯保護管4は繰り出された芯の保護と、視認性を向上させる目的で配置されるが、先部材2と一体に形成しても良い。その芯保護管4に用いられる材質は、芯の保護(芯折れ防止機能付加)を目的とするためは金属を用いることが良い。具体的には、鉄およびその合金、銅及びその合金などが挙げられる。
【0012】
前記チャックユニットは、前述したように、摺動体5、チャックリング6、チャック7、スプリング押さえ8、チャックスプリング9から構成される。前記摺動体5は、内径部に段部5aと傾斜突起5bが形成されており、外周上には段部5c、5d、5eが形成されている。また、摺動体5の内径部の段部5aには、チャックリング6の後端が圧入固定される。本実施例では、チャックリング6は後端に鍔を有しているが、摺動体5と着脱不能に固定することができれば、鍔が無い形状、または径が小さくなった形状とすることも可能であり、或いは摺動体5とチャックリング6とを一体に成形することもできる。また、摺動体5の後方部分には、対向する位置にスリットを設け、拡開しやすい構造としても良い。つまり、拡開しやすい構造を採ることにより、後述する後端ノック動作時に摺動体5の傾斜突起5bと継ぎ手12の溝12cとの嵌合によってもたらされる係止力を、調整することも可能となる。
前記チャックリング6に内挿入されるチャック7は、前方が3つに擦り割り加工されておりスリット7aが形成されている。さらに、チャック7の後端に設けられた矢尻状凸部7bにおいて、スプリング押さえ8の内径部8aと圧入固定されている。そのスプリング押さえ8の前端とチャックリング6の後端との間には、チャックスプリング9が張設され、チャック7とスプリング押さえ8を後方に付勢している。そのチャック7は後方に付勢されると共に、先端に形成されたテーパ部7cが前記チャックリング6の前方内径部6aに押し付けられるため、チャック体7の3つ割り部分が閉鎖して、芯19を把持する。なお、本実施例ではチャックの擦り割りを3つ割りにしたが、2つ割りに加工することも可能である。
前記チャックユニットは、外軸筒1の段部1eと摺動体5の段部5eとの間に張設された摺動体スプリング10によって、前方に付勢され、段部5cが先部材2の段部2dに当接することで位置決めされる。また、摺動体5の前方外周部5eは、先部材2の内径部2fより僅かに細く形成されており、後端ノック動作時に摺動体5が先部材2の内部を前後に摺動する際のガイドとなる。これらの位置決めやガイドとなる部位は、本実施例の部位に限らず、例えば摺動体5の前端で位置決めすることや、チャックリング6の外径を先部材2の内径部2eより僅かに細く形成してガイドすることも可能である。
【0013】
前記チャックユニットを構成するチャックリング6の材質は、チャック7を閉鎖せしめる際に、その前方内周部6aがチャック7自らの弾性復帰力を受けるため、強度および耐久性に優れた金属、例えば、銅やその合金、鉄やその合金、アルミニウムやその合金、亜鉛やその合金などが望ましい。また、チャック7の材質も拡開・閉鎖時に弾性変形を繰り返すため、強度および耐久性に優れた上記のような金属が望ましいが、比較的硬質な合成樹脂、例えば、アクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアセタールなどや、これらの合成樹脂に無機粉体、ガラス繊維、カーボン繊維などを充填したものであっても良い。
【0014】
前記芯タンクユニットは、前述したように、芯タンク11、継ぎ手12、ノック部材13から構成される。前記芯タンク11の前方内径部11aには、継ぎ手12の後方外径部12aが内嵌圧入されている。本実施例ではこの芯タンク11の前方内径部11aと継ぎ手12の後方外径部12aに溝と突起をつけて脱落を防いでいるが、芯タンク11と継ぎ手12が着脱不能に固定されれば、断続的なリブを用いた嵌合や単純な圧入によって固定することも可能であり、或いは芯タンク11と継ぎ手12を一体に成形しても良い。また、継ぎ手12の前方側面部12bには外周上に溝12cが設けられており、後述する後端ノックによる芯繰り出し動作時に、この溝12cが摺動体5の傾斜突起5bと嵌合する。ここで、この溝12cから継ぎ手12の先端までの距離は、前記チャックユニットの摺動体5の傾斜突起5bからスプリング押さえ8の後端までの距離に比べて、僅かに大きく設計されている。
さらに、前記芯タンク11の後端には、ノック部材13の先端部13aが着脱不能に固定されている。そのノック部材13には段部13b、鍔部13c、13dと後端拡径部13eが設けられている。この後端拡径部13eには消しゴム16が取り付けられていると共に、鍔部13dにノックカバー17が着脱可能に取り付けられて、消しゴム16を覆っている。
また、芯タンクユニットは、外軸筒1の段部1dとノック部材13の段部13bの間に張設されたノックスプリング14によって、後方に付勢されている。加えて、外軸筒1の段部1bに圧入固定された抜け止め部材15に、ノック部材13の鍔部13cが当接することで、芯タンクユニットが位置決めされる。なお、前記抜け止め部材15の形状は円筒状に限らず、断面がC型のリングを用いることや複数の部材を用いることも可能であり、或いは、芯タンクユニットを挿入後に外軸筒1の後端をカシメ加工によって内径がノック部材13の鍔部13cよりも細く形成してもよい。つまり、芯タンクユニットが外軸筒1から脱落することを防ぐことができればよい。また、後端ノック動作時には、外軸筒1の段部1cとノック部材13の鍔部13cとが当接することで、後端ノックの押し込み過剰を防止する。
【0015】
ここで、前記各スプリングの付勢力、芯保持部材3の芯保持力、摺動体5の傾斜突起5bと継ぎ手12の溝12cとの嵌合によってもたらされる係止力の、各々の力の序列について詳述する。力の弱い方から順に以下の大小関係が必要となる。
前記芯保持部材3の芯保持力は摺動体スプリング10の付勢力よりも弱く、また、その摺動体スプリング10の付勢力は摺動体5の傾斜突起5bの嵌合によってもたらされる係止力よりも弱い。さらに、その係止力はノックスプリング14の付勢力よりも弱く設定されている。
なお、チャックスプリング9の付勢力は他の弾発部材等と力の大小関係は必要とされないが、芯を繰り出すためにノック部材13を押圧した時に、芯タンク11等を介して人間が指でチャックスプリング9を縮められる程度の付勢力とする必要がある。しかし、筆記の際に芯が没入することがないように、前記チャック体が後方に向けて付勢される力は必要である。
【0016】
次に本発明の第1実施例における、芯タンクを前進せしめて芯を繰り出す動作について説明する。
図3〜
図6は、後端ノック動作の作動図である。
【0017】
芯19を繰り出すために、ノックカバー17を押圧する(以下後端ノック)と、ノックスプリング14の弾発力に抗して芯タンク11が前進する。芯タンク11の前進に伴い、継ぎ手12の前方側面部12bが摺動体5の傾斜突起5bに乗り上がりながら摺動し、やがて継ぎ手12の先端がスプリング押さえ8の後端に当接する(
図3)。この時点では、チャック7はチャックリング6によって閉鎖せしめられており、芯19を把持した状態である。
【0018】
さらに、ノックカバー17への押圧力を増加させると、継ぎ手12によってスプリング押さえ8とチャック7がチャックスプリング9に抗して前進せしめられる(
図4)。このため、チャック7のテーパ部7cがチャックリング6の前方内径部6aから外れ、チャック7は拡開して芯19を解放する。同時に、継ぎ手12の溝12cと摺動体5の傾斜突起5bが嵌合し、前記芯タンクユニットと前記チャックユニットとが一体に係止される。さらにこの時、外軸筒1の段部1bとノック部材13の鍔部13cの前端とが当接するため、使用者はこれ以上過剰にノックカバー17を押し込むことはできない。
【0019】
次いでノックカバー17への押圧力を解除すると、ノックスプリング14の弾発力と摺動体5の傾斜突起5bと継ぎ手12の溝12cとの嵌合によってもたらされる係止力が摺動体スプリング10の弾発力を上まわっているため、芯タンクユニットとチャックユニットは一体のまま、摺動体スプリング10の付勢力に抗しながら後退する。そして、
図5に示すように、摺動体5の外周上の段部5dが外軸筒1の段部1fに当接すると、チャックユニットの後退が阻止される。この間、チャック7は拡開したままであるため、芯19は後退しない。
【0020】
チャックユニットの後退が阻止された後も、ノックスプリング14の弾発力によってさらに芯タンクユニットは後退を続ける。この後退動作の過程で、継ぎ手12の溝12cから摺動体5の傾斜突起5bが外れる。そして、芯タンクユニットはノック部材13の鍔部13bが抜け止め部材15に当接するまで後退し、元の状態に戻る。
一方、継ぎ手12による押圧力が除去されるため、チャック7はチャックスプリング9の弾発力によって後退せしめられ、チャックリング6によって閉鎖させられて再び芯19を把持する。さらに、継ぎ手12を介してノックスプリング14から受けていた後方への付勢力が無くなるため、摺動体5は摺動体スプリング10の弾発力によって前進させられ、段部5cが先部材2の段部2dに当接して、元の位置にもどる。つまり、チャック7が芯19を把持した状態で前進するため、その芯19も前進することになり、その結果、芯保護管4の先端から突出している芯19の長さが
図6のLに示した長さだけ伸びる。
本実施例では、筆記芯がチャック7と芯保持部材3の双方に保持されている例を示したが、筆記に残芯を用いている場合でも、芯繰り出し過程において、チャック7が後続芯を把持して後退させずに繰り出し、この後続芯によって残芯を押し出す。このため、残芯と後続芯との間に隙間は生まれず、つまり、残芯が筆記の際に後退して違和感を生じることがなく、また、残芯を無駄なく使うことができる。
さらに、チャック7をチャックリング6から大きく突出させて拡開させる必要がないため、先部材2の内部にチャック7が前進させる空間が不要となり、芯保持部材3の直後にチャック7を配置できるため、残芯自体を短くすることもできる。
なお、この構造では摺動体スプリング10の弾発力を任意に設定することで、筆記時にクッション作用をもたらすこともできる。つまり、筆記時に芯が折れる程過剰な筆記圧がかかった際には、摺動体スプリング10が撓むことで、芯を把持するチャックユニットが後退すると共に、芯が芯保護管4に没入するため、芯の折損を防ぐことができる。
【0021】
図7は本発明の第2の実施例の構成を示す部分拡大縦断面図である。外軸筒20の前方には、先部材21が固定されている。その先部材21は、内部に芯保持部材22を圧入固定し、先端に芯保護管23を固定している。また、先部材21の内部であって、芯保持部材22の後方には、摺動体24、傾斜筒体25、連結部材26、チャック27、ボール28、チャックスプリング29から構成されるチャックユニットが、前後方向摺動自在に配置されている。このチャックユニットは、前記摺動体24の外周に配置された摺動体スプリング30によって、前方に付勢されている。また、前記外軸筒20の内部であって、摺動体24の後方には、実施例1と同様に芯タンク31、継ぎ手32、ノック部材(図示せず)で構成される芯タンクユニットが、前後方向に摺動自在に配置されている。なお、芯タンクユニットの付勢・位置決め、及び後方部分のその他の部品については第1実施例と同様である。以上が本実施例の構成であるが、本実施例では、芯の後退を阻止するチャックユニットが傾斜筒体25とボール28を利用したボールチャック機構である点が、第1実施例と異なっている。
【0022】
さらに各部材について詳述する。前記先部材21は、内部に貫通孔21aと、段部21b、21cが形成され、後方に形成された螺子21dが、前記外軸筒20の前方に形成された螺子20aと螺合固定されている。前記先部材21の段部21bに圧入固定される芯保持部材22は軸方向に貫通孔22aを有していると共に、前方は先端が平らな円錐上、後方は円筒状となっている。なお、この芯保持部材22の形状を、実施例1のように後方に鍔を有する形に成形すると共に、前記先部材21の内部に段部を設けて、その先部材21内に芯保持部材22を位置決めしても良い。
【0023】
前記チャックユニットは、前述したように、摺動体24、傾斜筒体25、連結部材26、チャック27、ボール28、チャックスプリング29から構成される。
前記摺動体24は、外周に小径部24aと鍔部24bが形成されると共に、内部には段部24cと傾斜突起24dが形成される。その傾斜筒体25の内面には、前方に向かって拡径する傾斜面25aが形成されている。この傾斜筒体25は、前記連結部材26の内部に着脱不能に固定され、この連結部材26の後端が、前記摺動体24の小径部24aに外嵌圧入される。また、前記傾斜筒体25の内側には、1対のチャック27が対向して、前後動可能に配置されている。そのチャック27の前方には外周面に半球状の凹部27aが形成され、内面には芯把持部27bが形成されると共に、後部には鍔部27cが形成されている。そして、前記凹部27aと前記傾斜筒体25の傾斜面25aとの間には、球状のボール28が介在している。さらに、前記摺動体24の段部24cとチャック27の鍔部27cとの間には、チャックスプリング29が張設されている。そのチャックスプリング29により、チャック27を後方に付勢することで傾斜筒体25の傾斜面25aに当接したボール28を介して、チャック27を閉じる方向に作用させ、芯34を把持している。すなわち、芯の前進は許容するが、その後退は楔作用によって阻止するボールチャック機構となっている。
【0024】
前記チャックユニットを構成する傾斜筒体25およびチャック27の材質は、傾斜面25aや凹部27aにボール28が接することから、強度および耐久性に優れた金属、例えば、銅やその合金、鉄やその合金、アルミニウムやその合金、亜鉛やその合金などが望ましいが、比較的硬質な合成樹脂、例えば、アクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアセタールなどや、これらの合成樹脂に無機粉体、ガラス繊維、カーボン繊維などを充填したものであっても良い。また、摺動体24と傾斜筒体25とは、連結部材26を介して接続されたが、摺動体24と傾斜筒体25とを直接着脱不能に固定するか、或いは、一体に成形することも可能である。
【0025】
前記チャックユニットは、外軸筒20の段部20bと摺動体24の鍔部24bとの間に配置された摺動体スプリング30によって、前方に付勢され、連結部材26の段部26aが先部材21の段部21cに当接することで位置決めされる。ここで、位置決めのために当接する部分は連結部材26の段部26aに限らず、例えば、連結部材26の先端や摺動体24の鍔部24bと先部材21の段部や後端とが当接して、チャックユニットを位置決めしても良い。
前記芯タンクユニットは前述したように、芯タンク31、継ぎ手32、ノック部材(図示せず)から構成される。前記タンク31の先端には、継ぎ手32の後方外径部32aが内嵌圧入されている。また、その継ぎ手32の外周上には前方から順番に溝32b、32cが設けられている。通常時は、この溝32bに前記摺動体24の傾斜突起24dが係合しており、後端ノックによる芯繰り出し動作時に、溝32cが摺動体24の傾斜突起24dと嵌合する。なお、この継ぎ手32の形状は、第1実施例と同様の形状を取っても良い。継ぎ手32の段部32dには芯ガイドパイプ33が挿入され、芯タンク31に収納されている芯を、チャック27に挿入しやすくする役割を負う。また、芯タンク31の後端にはノック部材が着脱不能に固定されているが、ノック部材を含むその他の部材についての構成と配置は第1実施例と同様であるため、詳細な説明は省略する。また、各スプリング等の力の関係も第1実施例と同様である。
以上のように、傾斜筒体25とボール28を利用したボールチャック機構では、芯を楔効果によって把持するため、チャックスプリング29の付勢力を小さくすることができる。このため、保管時にチャック27から芯に加えられる
挟持力が、第1実施例の構成に比べて小さくなり、芯の損傷防止になる。また、組み立て時において、第1実施例の構成ではチャック7をチャックリング6とチャックスプリング9に挿入した後、チャック7の先端を不動面につき当ててスプリング押さえ8を圧入固定するため、チャック7が曲折する恐れがある。しかし、本実施例の構成では、チャックスプリング29を撓ませてチャック27の先端を傾斜筒体25から突出させて、ボール28を組み付けることができるため、チャック27に負荷を加えずに組み立てることができる。
【0026】
次に本発明の第2実施例における、後端ノック動作について説明する。芯を繰り出すために、ノックカバー(図示せず)を押圧すると、芯タンク31が前進する。この結果、継ぎ手32がチャック27の後端に当接すると共に、チャックスプリング29が抗しきれず、チャック27が前進する。このチャック27が前進することで、チャック27の凹部27aとボール28との間、及びボール28と傾斜筒体25の傾斜面25aとの間に隙間が形成され、ボールチャック機構の楔効果が作用しなくなり、チャック27が拡開する。同時に、継ぎ手の溝32cと摺動体24の傾斜突起24dが嵌合し、前記芯タンクユニットと前記チャックユニットとが一体に係止される。
次いでノックカバーへの押圧力を解除すると、芯タンクユニットとチャックユニットは一体のまま、ノックスプリングの付勢力により後退する。そして、前記摺動体24の後端が外軸筒20の段部20bに当接すると、チャックユニットの後退が阻止される。この間、チャック27は拡開したままであるため、芯34は後退しない。
また、チャックユニットの後退が阻止された後も、ノックスプリングの付勢力によってさらに芯タンクユニットは後退を続けるため、継ぎ手32の溝32cから摺動体24の傾斜突起24dが外れ、芯タンクユニットは元の位置まで戻る。
一方、継ぎ手32による押圧力が解除されるため、チャック27はチャックスプリング29の弾発力によって後退せしめられ、チャックユニット(チャック27)は再び楔作用を発揮し、芯34を把持する。さらに、チャックユニットは摺動体スプリング30の付勢力によって前進させられ、連結部材26の段部26aが先部材21の段部21cに当接して、元の位置に戻る。つまり、チャック27が芯34を把持した状態で前進するため、その芯34も前進することになり、その結果、芯保護管23の先端から突出している芯34の長さが
図7のLに示した長さだけ伸びる。
なお、この第2実施例の構造においても、摺動体スプリング30の弾発力を任意に設定することで、筆記時にクッション作用をもたらすことができる。
【0027】
図8は、本発明の第3の実施例の構成を示す部分拡大縦断面図である。外軸筒35の前方には、先部材36が固定されている。その先部材36の内部には、先端摺動体37が前後動自在に配置されている。その先端摺動体37は内部に芯保持部材38を圧入固定すると共に、先端に芯保護管39を固定している。また、先端摺動体37の後方には、摺動体40、傾斜筒体41、連結部材42、チャック43、ボール44、チャックスプリング45から構成されるボールチャック機構のチャックユニットが、前後方向摺動自在に配置されている。そのチャックユニットの連結部材42の前面と前記先端摺動体37の後端との間には、先端スプリング46が張設されている。この先端スプリング46によって前記先端摺動体37は前方に付勢されると共に、先端摺動体37の段部37aが先部材の段部36aに当接することで、位置決めされる。また、前記チャックユニットは、摺動体スプリング47によって前方に付勢されている。さらに、チャックユニットの後方には、芯タンク48、継ぎ手49、ノック部材(図示せず)から構成される芯タンクユニットが配置される。後端ノックによる芯繰り出し動作時には、この継ぎ手49の溝49aが、摺動体40の内面に設けられた傾斜突起40aと嵌合する。
【0028】
続いて、各スプリングの付勢力、芯保持部材38の芯保持力、摺動体40の傾斜突起40aと継ぎ手49の溝49aとの嵌合によってもたらされる係止力の、各々の力の序列について詳述する。力の弱い方から順に以下の大小関係が必要となる。
前記チャックスプリング45の付勢力は先端スプリング46の付勢力よりも弱く、その先端スプリング46の付勢力は芯保持部材38の芯保持力よりも弱く設定されている。また、その芯保持部材38の芯保持力は摺動体スプリング47の付勢力よりも弱く設定されている。さらに、その摺動体スプリング47の付勢力は摺動体40の傾斜突起40aと継ぎ手49の溝49aとの嵌合によってもたらされる係止力よりも弱く、加えて、その係止力はノックスプリングの付勢力よりも弱く設定されている。
【0029】
前記チャックユニット及び芯タンクユニットなどその他の部品の構成・配置は、第2の実施例と同様であるため、詳細な説明を省略する。本実施例では、先部材36の内部に、芯保持部材38を固定した先端摺動体37が、前後動自在に配置される点が、第1の実施例および第2の実施例と異なる点である。このような構成を採ることで、後端ノックによる芯の繰り出しに加えて、筆記中に自動的に芯を繰り出すことが可能となる。
【0030】
次に本発明の第3の実施例における、芯を繰り出す動作について説明する。まず、後端ノックによる芯繰り出し動作については、第2の実施例と同様であるため、説明を省略する。本実施例の構成を採ることによる、第2の実施例と異なる作用は、筆記中に自動的に芯を繰り出すことであり、以下にその詳細を述べる。
図8は後端ノックによって芯を出して筆記を始めた時点の図であるが、筆記を続けると芯50が摩耗して、芯50の先端が芯保護管39の先端とほぼ同じ位置になる。この状態で筆記を続けようと芯50の先端を紙面に押し付けると、芯保護管39も紙面に押し付けられ、先端摺動体37が芯保持部材38の芯把持力と先端スプリング46の付勢力に抗して、後退する。このため、芯保護管39から突出している芯50の露出量が僅かに長くなり、筆記を継続することができる。さらに、筆記の最中に芯50を紙面から離脱させると、先端スプリング46の付勢力によって、先端摺動体37は前進する。この時、芯保持部材38が芯50を把持しており、ボールチャック機構の楔作用が解除されるため、芯50の前進が許容されることなり、その結果、芯50はチャック43から引き出される。このように、芯50の紙面への押し付けと押し付けの解除が繰り返されることで、筆記に伴って芯50が自動的に繰り出されて筆記を継続することができる。
なお、第3の実施例の構成においても、摺動体スプリング47の弾発力を任意に設定することで、筆記時にクッション作用をもたらすことができる。
【0031】
図9は本発明の第4の実施例の構成を示す縦断面図であり、
図10は部分拡大縦断面図である。外軸筒51の前方には、先部材52が固定されている。その先部材52の内部には、先端摺動体53が前後動自在に配置されている。この先端摺動体53は、内部に芯保持部材54を圧入固定していると共に、先端に芯保護管55を固定している。この先端摺動体53は、先端スプリング56によって後方に付勢される。また、先部材52の内部であって、先端摺動体53の後方には、傾斜板57が配置され、さらにその後方には位置決めリング58が圧入固定される。その位置決めリング58の後方には、摺動体59、傾斜筒体60、連結部材61、チャック62、ボール63、チャックスプリング64から構成されるボールチャック機構のチャックユニットが、前後方向摺動自在に配置されると共に、摺動体スプリング65によって前方に付勢されている。
前記外軸筒51の内部であって、チャックユニットの後方には、芯タンク66、継ぎ手67、ノック部材68から構成される芯タンクユニットが前後方向に摺動自在に配置される。前記継ぎ手67の先端には、芯ガイドパイプ69が挿入されている。さらに、前記芯タンク66の鍔部66aの前方の外周には、ノックスプリング70が配置されると共に、その鍔部66aの後方の外周に抜け止め部材71が配置される。前記ノック部材68の後端には消しゴム72が内挿入されると共に、その消しゴム72を覆うように、ノックカバー73がノック部材68の後端に取り外し可能に配置される。
また、前記外軸筒51の後方には小径部51aが設けられ、その小径部51aにはクリップ74の円筒状の取り付け部74aが外嵌圧入され、これによってクリップ74が外軸筒51に固定されている。このクリップ74は外軸筒51或いはノック部材68、抜け止め部材71、ノックカバー73と一体に成形することも可能である。以上が本実施例の構成であるが、本実施例においては、先部材52の内部に、傾斜板57を配置している点が、第1から第3の実施例と異なっている。
【0032】
さらに各部材について詳述する。前記先部材52は、内部に貫通孔52aと、段部52b、52c、傾斜孔52d、支点52e、断続リブ52fが形成されている。また、先部材52の後方には、螺子52gが形成され、螺子52gは前記外軸筒51の前方に形成された螺子51bと、螺合固定されている。
前記先部材52の内部には、先端摺動体53を前後動自在に配置している。その先端摺動体53は、内部に貫通孔53aと段部53bを形成すると共に、外部に段部53cと後方外径部53dを形成している。この先端摺動体53の段部53bに圧入固定される芯保持部材54は軸方向に貫通孔54aを有していると共に、前方は先端が平らな円錐上、後方は円筒状となっている。さらに、先端摺動体53の貫通孔53aには、芯保護管55が圧入固定される。この芯保護管55は、繰り出された芯の保護と、視認性を向上させる目的で配置されるが、これは前記先端摺動体53と一体に成形されても良い。また、この芯保護管55は前記先部材52の貫通孔55aより僅かに細く成形されており、前記摺動体53が先部材52の内部を前後に摺動する際のガイドとなる。加えて、先部材52の内部には断続リブ52fが設けられ、この断続リブ52fの内径を前記先端摺動体53の後方外径部53dよりも僅かに大きくすることによっても、先端摺動体53が先部材52の内部を前後に摺動する際のガイド作用を発生させている。なお、この断続リブ52fは、全周リブであっても構わない。また、先端摺動体53は、段部53cと前記先部材52の段部52bとの間に張設される先端スプリング56によって、後方に付勢される。
さらに、前記先部材52の内部であって、先端摺動体53の後方には、傾斜板57が配置される。この傾斜板57の外径は先部材52の傾斜孔52dよりも小さく成形されると共に、外周部分57aは滑らかな円弧状に成形されている。そして、その傾斜板57は先部材52の支点52eを支点として揺動自在となる。また、先部材52の段部52cには、位置決めリング58が着脱不能に圧入固定される。
【0033】
前記チャックユニットは、前述したように、摺動体59、傾斜筒体60、連結部材61、チャック62、ボール63、チャックスプリング64から構成される。前記摺動体59は、外周に小径部59aと鍔部59bを有すると共に、内部に段部59cと傾斜突起59dを有している。前記傾斜筒体60の内面には、前方に向かって拡径する傾斜面60aが形成されている。この傾斜筒体60は、前記連結部材61の内部に着脱不能に固定され、その連結部材61の後端が、前記摺動体59の小径部59aに外嵌圧入される。また、前記傾斜筒体60の内側には、1対のチャック62が対向して、前後動可能に配置されている。そのチャック62の前方には外周面に半球状の凹部62aが、内面には芯把持部62bが形成されており、後部には鍔部62cが形成されている。そして、この凹部62aと前記傾斜筒体60の傾斜面60aとの間には球状のボール63が介在している。さらに、前記摺動体59の段部59cとチャック62の鍔部62cとの間には、チャックスプリング64が張設されている。そのチャックスプリング64により、チャック62を後方に付勢することで、傾斜筒体62の傾斜面62aに当接したボール63を介して、チャック62を閉じる方向に作用させ、芯75を把持している。すなわち、芯の前進は許容するが、その後退は楔作用によって阻止するボールチャック機構となっている。
前記チャックユニットは、外軸筒51の段部51cと摺動体59の鍔部59bとの間に配置された摺動体スプリング65によって、前方に付勢される。そして、このチャックユニットは、前記連結部材61の段部61aが前記位置決めリング58に当接することで、位置決めされる。ここで、連結部材61の先端には突出部61bが成形されており、この突出部61bが位置決めリング58の貫通孔58aから突出した状態となる。さらに、この連結部材61の突出部61bは、前記傾斜板57に当接している。このため、傾斜板57は、前記先部材52の支点52eを支点として、前記先端摺動体53の後端を介して前記先端スプリング56から後方への付勢力を受けると共に、連結部材61の突出部61bを介して摺動体スプリング65から前方への付勢力を受けて、中心軸に対して傾斜した姿勢を維持している。
【0034】
芯タンクユニットは前述したように、芯タンク66、継ぎ手67、ノック部材68から構成される。前記芯タンク66の先端には、継ぎ手67の後方外径部67aが内嵌圧入されている。また、継ぎ手67の外周上には、前方から順番に溝67b、67cが設けられている。通常時は、この溝67bに前記摺動体59の傾斜突起59dが係合しており、後端ノックによる芯繰り出し動作時に、溝67cが摺動体59の傾斜突起59dと嵌合する。なお、この継ぎ手67の形状は、第1の実施例と同様の継ぎ手の形状を取っても良い。また、継ぎ手67の段部67dには芯ガイドパイプ69が挿入され、芯タンク66に収納されている芯をチャック62に挿入しやすくする役割を負う。
さらに、芯タンク66の後端には、ノック部材68の先端部68aが着脱不能に固定されている。このノック部材68の後方に形成された拡径部68bには、内側に消しゴム72が取り付けられると共に、外側にノックカバー73が着脱可能に取り付けられている。
また、芯タンクユニットは、前記外軸筒51の段部51dと芯タンク66の鍔部66aの間に張設されたノックスプリング70によって、後方に付勢されている。加えて、芯タンクユニットは、芯タンク66の鍔部66aが、前記外軸筒51の後方拡径部51fに圧入固定された抜け止め部材71に当接することで、位置決めされる。なお、前記抜け止め部材71の形状は円筒状に限らず、断面がC型のリングを用いることや複数の部材を用いることも可能であり、或いは、芯タンクユニットを挿入後に外軸筒51の後端をカシメ加工によって内径が芯タンク66の鍔部66aよりも細く形成してもよい。つまり、芯タンクユニットが外軸筒51から脱落することを防ぐことができればよい。また、後端ノック動作時には、外軸筒51の段部51eと芯タンク66の鍔部66aが当接することで、後端ノックの押し込み過剰を防止する。
【0035】
ここで、前記各スプリングの付勢力、芯保持部材54の芯保持力、摺動体59の傾斜突起59dと継ぎ手67の溝67cとの嵌合によってもたらされる係止力、ボールチャック機構の芯把持力の、各々の力の序列について詳述する。力の弱い方から順に以下の大小関係が必要となる。
前記チャックスプリング64の付勢力は芯保持部材54の芯保持力よりも弱く、その芯保持力は先端スプリング56の付勢力よりも弱く設定されている。また、その先端スプリング56の付勢力は摺動体スプリング65の付勢力よりも弱く設定されている。さらに、その摺動体スプリング56の付勢力は摺動体59の傾斜突起59dと継ぎ手67の溝67cとの嵌合によってもたらされる係止力よりも弱く設定されており、加えて、その係止力はノックスプリング70の付勢力よりも弱く設定されている。さらに、摺動体スプリング56の付勢力は、芯後退時のボールチャック機構の芯後退時把持力に対しても、弱く設定されている。
なお、本実施例の構成では、傾斜板57が先部材52の支点52eを支点として、先端摺動体53と連結部材61の突出部61bから押圧力を受けて、テコの作用を呈する。このため、傾斜板57と支点(
図10中のA(支点52e)及び連結部材61、摺動体53との接触点(
図10中のB、C)との距離の比が、スプリングの力関係の設定に影響する。具体的には、距離ABに対する距離ACの比を先端スプリング56の付勢力に乗じた値が、摺動体スプリング65の付勢力よりも弱く設定されている。
【0036】
次に、本発明の第4実施例における、後端ノックによって芯タンクを前進せしめて芯を繰り出す動作について説明する。
図11〜
図14は、後端ノック動作の作動図である。
【0037】
芯75を繰り出すために、ノックカバー73を押圧する(後端ノック)と、ノックスプリング70の弾発力に抗して芯タンク66が前進する。その芯タンク66の前進に伴い、継ぎ手67の溝67bから摺動体59の傾斜突起59dから外れ、やがて継ぎ手67の先端がチャック62の後端に当接する(
図11)。この時点では、チャック62は傾斜筒体60の傾斜面60aとボール63の楔作用により閉鎖せしめられており、芯75を把持した状態である。
【0038】
さらに、ノックカバー73への押圧力を増加させると、継ぎ手67によって、チャック62が、チャックスプリング64の付勢力に抗して前進せしめられる(
図12)。
このチャック62が前進することで、チャック62の凹部62aとボール63との間、及びボール63と傾斜筒体60の傾斜面60aとの間に隙間が形成され、前記ボールチャック機構の楔効果が解除され、チャック62が拡開する。つまり、この時点でチャック62は、芯75を解放する。同時に、前記継ぎ手67の溝67cと摺動体59の傾斜突起59dが嵌合し、前記芯タンクユニットと前記チャックユニットとが一体に係止される。さらにこの時、外軸筒51の段部51eと芯タンク66の鍔部66aとが当接するため、使用者はこれ以上過剰にノックカバー73を押し込むことはできなくなる。
【0039】
次いでノックカバー73への押圧力を解除すると、芯タンクユニットとチャックユニットは一体のまま、ノックスプリング70の付勢力によって、後退せしめられる。そして、摺動体59の後端が外軸筒51の段部51dに当接すると、チャックユニットの後退が阻止される(
図13)。この時、チャック62は拡開したままであるため、このチャックユニットの後退動作では、芯75は後退しない。
一方で、チャックユニットが後退するにつれて、前記接続部材61の突出部61bの先端が、位置決めリング58の前端よりも後方に位置するまで後退する。この接続部材61の突出部61bが前記傾斜板57から離れるため、傾斜板57に加わる前方への付勢力が解除される。そして、その傾斜板57は前記先端摺動体53と共に、先端スプリング56の付勢力によって、後退せしめられる。その結果、傾斜板57は後端部分の全体が位置決めリング58に当接する。つまり、傾斜板57は先部材52の支点52eを支点として揺動し、先部材52の内部で直立する。この時、同時に先端摺動体53も後退するが、その先端摺動体53の内部に圧入固定された前記芯保持部材54が、芯75を把持して後退せしめる。
これら、チャックユニットと先端摺動体53の動作で、芯75は先端摺動体53の後退距離(L1)と同量分、後退することになる。
【0040】
前記チャックユニットの後退が阻止された後も、ノックスプリング70の付勢力によって、さらに芯タンクユニットは後退を続ける。この後退動作の過程で、継ぎ手67の溝67cから摺動体59の傾斜突起59dが外れる。そして、芯タンクユニットは、芯タンク66の鍔部66aが抜け止め部材71に当接するまで後退し、元の状態に戻る。
一方、継ぎ手67による押圧力が除去されるため、チャック62はチャックスプリング64の弾発力によって後退せしめられ、チャックユニットは再び楔作用を発揮し、芯75を把持する。さらに、その継ぎ手67を介してノックスプリング70から受けていた後方への付勢力が無くなるため、チャックユニットは摺動体スプリング65の弾発力によって前進させられると共に、前記連結部材61の段部61aが位置決めリング58に当接して、元の位置に戻る。つまり、チャック62が芯75を把持した状態で前進するため、その結果、芯75もL2に示した長さだけ前進する(
図14)。
さらに、前記チャックユニットが前進すると、前記連結部材61の突出部61bが、再び位置決めリング58の貫通孔58aから突出した状態となる。そして、この連結部材61の突出部61bを介して、摺動体スプリング65の前方へ向かう付勢力が傾斜板57に再び与えられる。さらに、その傾斜板57は、先部材52の支点52eを支点として揺動して元の姿勢に戻ると共に、前記先端摺動体53を押圧して前進せしめる。この時、先端摺動体53に圧入固定された芯保持部材54は、芯75を把持している。つまり、先端摺動体53の前進と同じ距離(L1)だけ、芯75も前進する。ここで、前記連結部材61の突出部61bが、前記位置決めリング58の貫通孔58aから突出し始めてから、連結部材61の段部61aが位置決めリング58に当接するまでの区間(L3)は、チャックユニットと先端摺動体53が同時に前進している。つまり、この区間L3の分だけは、芯75は前進しているものの、相対的に前進しているため、実質的な繰り出しが行われない状態になっている。
即ち、本実施例における後端ノック動作では、まず芯がL1だけ後退した後、(L3+L1−L2)だけ前進する。つまり、後端ノックにより、前記芯保護管55の先端から突出する芯の長さは、(L2―L3)となる。
【0041】
続いて、本実施例における、紙面に芯を押しつけて芯を繰り出す動作(以下、先端ノック)について説明する。
図15、
図16は、先端ノック動作の作動図である。
【0042】
芯を繰り出すために、芯保護管55の先端から突出している芯75の先端を紙面76に強く押し付ける。この押圧力は芯75からチャック62に伝わり、そのチャック62は後退しようとする。しかし、チャック62の前方外周面の半円状の凹部62aに介在しているボール63が当接する傾斜筒体60の傾斜面60aの楔作用により、チャック62は強固に閉じ、芯75を後退できないように強固に把持する。つまり、芯75の後退は楔作用によって阻止される。
さらに使用者が紙面76に付加する押圧力を増加し、その押圧力が前記チャックユニットを前方に付勢する摺動体スプリング65の付勢力を超えると、チャックユニットが後退する。このチャックユニットの後退により、チャック62で把持している芯75も後退する。
また、このチャックユニットの後退に伴い、前記連結部材61が後退して、突出部61bの先端が位置決めリング58と面一になると、前記傾斜板57へ加わっていた前方へ向かう付勢力が解除される(
図15)。このため、その傾斜板57は前記先端摺動体53と共に、先端スプリング56の付勢力によって、後退せしめられると共に、その傾斜板57は後端部分の全体が位置決めリング58に当接する状態になる。つまり、傾斜板57は先部材52の支点52eを支点として揺動し、先部材52内部で直立する。
この時、その傾斜板57のテコの作用により、前記先端摺動体53にはチャックユニットの後退量(L4)よりも、大きく後退する(L5)。ここで、前記チャック62が芯75の後退を阻止しているため、摺動体53のみが後退することになるが、この時、摺動体53の内部に固定されている前記芯保持部材54は芯75の表面を滑るように摺動している。つまり、この時点で、芯の後退量(L4)に比べて、摺動体53の後退量(L5)が大きいため、その差分(L4−L5)芯が繰り出される。
【0043】
次に芯75を紙面76へ押し付ける動作を終了し、押圧力を解除すると、摺動体スプリング65の付勢力によって、チャックユニットが前進する。そのチャックユニットが前進すると、前記連結部材61の突出部61bが、再び位置決めリング58の貫通孔58aから突出した状態となる。そして、この連結部材61の突出部61bを介して、摺動体スプリング65の前方へ向かう付勢力が前記傾斜板57に再び与えられる。さらに、その傾斜板57は、先部材52の支点52eを支点として揺動して元の姿勢に戻ると共に、前記先端摺動体53を押圧して前進せしめる。この時、先端摺動体53に圧入固定された芯保持部材54は、芯75を把持しており、さらにボールチャック機構は芯75の前進を許容するため、芯75はチャック62から引き抜かれる。つまり、前述したように、前記芯保護管55から突出している芯の長さが(L4−L5)だけ繰り出された状態のまま、前記先端摺動体53が元の位置まで前進し、先端ノックによる芯の繰り出しが完了する。
なお、
図15に示した状態から、さらに紙面76に付加する押圧力を増加した場合、摺動体59の後端が外軸筒51の段部51dに当接することで、チャックユニットの後退が制限され、過剰な押し込みが防止される。また、この場合、芯75が芯保持部材54を滑りながら、芯75を把持したチャックユニットが後退する。そして、押圧力を解除すると、そのチャックユニットは芯75を把持した状態で、摺動体スプリング65の付勢力によって、前進せしめられ、
図15の状態に戻る。
また、本実施例では、筆記中に芯75を繰り出すために、芯75の先端を紙面76に強く押し付ける動作を採っているが、摺動体スプリング65の付勢力を適切に調節することにより、筆記中の自然な動作により芯を自動的に繰り出すことも可能になる。具体的に述べると、摺動体スプリング65の付勢力を、筆記圧(すなわち、筆記する際に芯が紙面に触れる時の圧力)よりも弱く設定することで、筆記中に先端ノックの押し込み動作が起こり、次の線の筆記に移るために芯を紙面から離した時に芯が繰り出されるようにすればよい。
【0044】
図17は本発明の第5の実施例の構成を示す縦断面図であり、
図18は本実施例の特徴点であるロック部材とノック部材の斜視図である。
外軸筒77の前方には、先部材78が固定されている。その先部材78は内部に芯保持部材79を圧入固定し、先端に芯保護管80を固定している。また、先部材78の内部であって、芯保持部材79の後方には、摺動体81、チャックリング82、チャック83、スプリング押さえ84、チャックスプリング85から構成されるチャックユニットが、前後方向摺動自在に配置されている。そのチャックユニットは、摺動体81の後方に配置された摺動体スプリング86によって、前方に付勢されている。また、前記摺動体81の後方には、芯タンク87、継ぎ手88、ロック部材89から構成される芯タンクユニットが、外軸筒77の内部で前後方向摺動自在に配置されている。さらに、前記芯タンク87の外周には、ノックスプリング90が配置されると共に、ロック部材89の後方には、ノック部材91が配置される。そのノック部材91の鍔部91aの後方の外周には、抜け止め部材92が配置される。さらに、ノック部材91の後端には消しゴム93が内挿入され、その消しゴム93を覆うように、ノックカバー94がノック部材91の後端に取り外し可能に配置される。また、前記外軸筒77の後方には、クリップ95が固定されている。以上が本実施例の構成であるが、本実施例では、芯タンク87の後方にロック部材89が取り付けられ、その後方にノック部材91が配置される点が、前記第1から第4の実施例と異なっている。この構造を採ることで、ノック部材91を回転させることで、不使用時に誤動作によって芯が繰り出されることを防ぐ、いわゆるロック機能を付加することができる。
さらに、各部材について説明する。ここで、本実施例の構成は後方部分の構成に特徴を有しており、先部材78の部分及びチャックユニットの構成は第1実施例と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0045】
前記芯タンクユニットは、前述したように、芯タンク87、継ぎ手88、ロック部材89から構成される。前記芯タンク87の前方内径部87aには、継ぎ手88の後方外径部88aが内嵌圧入されている。この継ぎ手88の前方側面部88bは外周上に溝88cが設けられており、第1実施例と同様に、後端ノックによる芯繰り出し動作時に、この溝88cが摺動体81の傾斜突起81aと嵌合する。
さらに、前記芯タンク87の後方には、ロック部材89の先端部89aが着脱不能に固定されている。そのロック部材89の外周には、段部89bと、長手方向のリブ89cが形成されると共に、後部に傾斜面89dと、その傾斜面89dの頂部に凹部89eが形成される。このロック部材89のリブ89cが、前記外軸筒77の内面に設けられた長手方向(軸線方向)の溝(図示せず)に係合しているため、前記芯タンクユニットは外軸筒77内部で前後動は許容されるが、回転方向の動きは制限される。さらに、ロック部材89の後方には、ノック部材91が、外軸筒77の内部で前後動自在、かつ、中心軸に対して回転が自在に配置されている。このノック部材91は外周に鍔部91a、91bが形成されると共に、前方には傾斜面91cと、その傾斜面91cの頂部に突起91dが形成されている。また、ノック部材91の後端には消しゴム93が取り付けられていると共に、鍔部91bにノックカバー94が着脱可能に取り付けられている。
前記芯タンクユニットは、外軸筒77の段部77aとロック部材89の段部89bとの間に張設されたノックスプリング90によって、後方に付勢されている。さらに、ロック部材89の傾斜面89dと前記ノック部材91の傾斜面91cとが対向して当接しているため、ノック部材91も後方に付勢される。そして、このノック部材91の鍔部91aが、前記外軸筒77の段部77bに固定された抜け止め部材92に当接することで、芯タンクユニットとノック部材91が位置決めされ、外軸筒77からの脱落が防止される。なお、前記抜け止め部材92の形状は円筒状に限らず、断面がC型のリングを用いることや複数の部材を用いることも可能であり、或いは、芯タンクユニットを挿入後に外軸筒92の後端をカシメ加工によって内径がノック部材91の鍔部91aよりも細く形成してもよい。つまり、芯タンクユニットとノック部材91が、外軸筒77から脱落することを防ぐことができればよい。
【0046】
次に、本発明の第5実施例における動作について説明する。まず、後端ノックによる芯繰り出し動作については、第1の実施例と同様であるため、説明を省略する。本実施例の構成を採ることによる、第1の実施例と異なる作用は、不使用時に誤動作によって芯が繰り出されることを防止する機構(ロック機構)であり、以下にその詳細を述べる。
【0047】
図19は、ロック機構の作動図である。筆記を終了し、ロック機構を動作させるために、ノック部材91を回転させると傾斜面91cの向きが変わる。しかし、ロック部材89はリブ89cによって回転が制限されているため、ロック部材89の傾斜面89dは、前記ノック部材91の傾斜面91cに連れ回されない。このため、ロック部材89は前記ノック部材91の傾斜面91cの先端に押圧されると共に、ノックスプリング90が抗しきれず、ロック部材89が前進する。このロック部材89の前進に伴い、芯タンクユニットの前記継ぎ手88が
前進し、やがて、その継ぎ手88の先端が前記スプリング押さえ84に当接する。さらに前記ノック部材91を回転させると、継ぎ手88はさらに前進すると共に、スプリング押さえ84を前方に押圧し、スプリング押さえ84とチャック83が、チャックスプリング83に抗して前進せしめられる(
図19)。このため、チャック83のテーパ部83aがチャックリング82から外れると共に、チャック83は拡開して芯96を解放する。同時に、ロック部材89の凹部89eにノック部材91の突起91dが嵌合して、ロック部材89とノック部材91が係止される。つまり、チャック83が拡開した状態を維持することが可能となり、この結果、芯96の先端を押すことで芯96を収納できることに加え、それ以降、誤動作による芯の繰り出しを防止できる。ちなみに、この時のノック部材91の外軸筒77に対する回転角度は、180度になっている。なお、本実施例ではロック状態において、ノック部材91の回転を制限するために、ノック部材91の突起91dと前記ロック部材89の凹部89eの嵌合による係止効果を利用したが、ノック部材91の回転を制限できれば、異なる構造の係止手段を用いても構わない。例えば、ノック部材91の側面に突起を設ける一方、その突起を外軸筒77の内面形成した凹部に嵌合させることも可能である。さらに言うと、ロック機構が動作するためには、前記継ぎ手88の先端が、前記スプリング押さえ84とチャック83を押圧して前進せしめられるまで、芯タンクユニットが前進した状態を維持する構成を採ればよい。したがって、例えば、クリップ95を芯タンクユニットと連動すると共に、前進した位置で係止されるように構成することも可能である。或いは、クリップ95に外軸筒77を支点として、芯タンクユニットが作用点となるような構成を採り、クリップを持ちあげることで芯タンクユニットを前進させる手段を採ることもできる。
【0048】
このロック機構の動作においては、チャック83が拡開すると共に、前記継ぎ手88の溝88aと前記摺動体81の傾斜突起81aとが嵌合し、前記芯タンクユニットと前記チャックユニットとが一体に係止されている。
ここで、ロック状態を解除するために、ノック部材91を回転させて元の位置に戻すと、前記芯タンクユニットと前記チャックユニットは一体のまま、ノックスプリング90の付勢力によって後退する。以降、第1実施例で詳細を述べた後端ノック動作と同様の動きを採り、芯が繰り出される。つまり、ロック状態を解除することで、自動的に芯が繰り出すことができるのである。
【0049】
本実施例では、第1の実施例で詳述した構成に対してロック機構の構成を付加したが、第2から第4の実施例に示した構成においても、同様のロック機構を付加することが可能である。