(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874189
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】補聴器
(51)【国際特許分類】
H04R 25/00 20060101AFI20160218BHJP
H04R 25/02 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
H04R25/00 D
H04R25/00 A
H04R25/02 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-81461(P2011-81461)
(22)【出願日】2011年4月1日
(65)【公開番号】特開2012-217062(P2012-217062A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2014年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104732
【弁理士】
【氏名又は名称】徳田 佳昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】梅田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】台越 康洋
(72)【発明者】
【氏名】株本 隆成
(72)【発明者】
【氏名】谷 和人
【審査官】
松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−278263(JP,A)
【文献】
特開昭62−013199(JP,A)
【文献】
特開2010−268038(JP,A)
【文献】
特開2002−369295(JP,A)
【文献】
米国特許第06160895(US,A)
【文献】
特開2001−320791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 25/00
H04R 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補聴器本体と、
前記補聴器本体に設けられると共に外耳道に装着されるレシーバーと、前記補聴器本体に弾性延長部を介して装着されたマイクロフォンとを備え、
前記マイクロフォンは、前記レシーバーを外耳道に装着した際に、耳介の外耳道上方の前面側に前記マイクロフォン音孔が対向配置される形状を有し、
さらに、外耳道方向において、前記弾性延長部の径の前記レシーバー側は、前記マイクロフォンの径の前記レシーバー側よりも前記レシーバーから離れて構成された補聴器。
【請求項2】
前記弾性延長部は、ゴム材料または軟質樹脂材料により形成した請求項1に記載の補聴器。
【請求項3】
前記弾性延長部の径は、前記マイクロフォンの径よりも小さくした請求項1または2に記載の補聴器。
【請求項4】
前記補聴器本体には、前記弾性延長部とは反対方向に接続ケーブルを配置した請求項1から3のいずれか一つに記載の補聴器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難聴者が使用する補聴器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種補聴器の構成は、以下のような構成となっていた。
【0003】
すなわち、補聴器本体と、この補聴器本体に設けられると共に外耳道に装着されるレシーバーと、前記補聴器本体に装着されたマイクロフォンとを備えた構成となっていた。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−369295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例における補聴器は、マイクロフォンで集音した音を補聴器本体内の補聴処理部で補聴処理し、レシーバーから外耳道内に音を放出することで、例えば難聴者が会話を聞きやすくするようにしている。
【0006】
しかしながら、前記従来の補聴器では、未だ十分な原因究明はできていないが、会話中の子音が聞き取りにくいことに起因し、その結果として会話の明瞭度が低くなるという課題があった。
【0007】
本発明は、このような会話の明瞭度が低くなる理由が、上述したように会話中の子音が聞き取りにくいことが影響していることに着目し、この子音を聞き取りやすくすることで会話の明瞭度を向上することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そしてこの目的を達成するために本発明は、補聴器本体と、この補聴器本体に設けられると共に外耳道に装着されるレシーバーと、前記補聴器本体に弾性延長部を介して装着されたマイクロフォンとを備え、前記マイクロフォンは、前記レシーバーを外耳道に装着した際に、耳介の外耳道上方の前面側に対向配置される形状とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明は、補聴器本体と、この補聴器本体に設けられると共に外耳道に装着されるレシーバーと、前記補聴器本体に弾性延長部を介して装着されたマイクロフォンとを備え、前記マイクロフォンは、前記レシーバーを外耳道に装着した際に、耳介の外耳道上方の前面側に対向配置される形状としたものであるので、会話の明瞭度を向上させることが出来る。すなわち、本発明においては、前記補聴器本体に設けられた前記レシーバーを外耳道に装着した際に、前記補聴器本体に弾性延長部を介して装着されたマイクロフォンが耳介の外耳道上方の前面側にマイクロフォン音孔が対向するように配置されたものであり、その理由は未だ明確になっていない部分もあるが、耳介の外耳道上方の前面側に広がる空間が前記会話における子音の特徴量となる周波数帯域の音圧を増幅する形状を形成しているためか、子音が極めて聞き取りやすくなり、この結果として、会話の明瞭度が向上することとなった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る補聴器の装着状態を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の一実施形態を図面とともに詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る補聴器の装着状態を示す正面図であって、左右の耳に補聴器1、2が装着され、これらの補聴器1、2と補助具3は接続ケーブル4、5によって接続されている。
【0013】
本実施形態における補聴器1,2は、
図2に示すようにレシーバー1a、2aと、マイクロフォン1b、2bを有するものであるが、これらのレシーバー1a、2aと、マイクロフォン1b、2bにインターフェース6を介して接続された補聴処理部7および各部に電源を供給する電池8は、補助具3内に収納されている。なお、前記補聴処理部7および電池8を補聴器1,2にそれぞれ設ける構成としてもよい。
【0014】
前記補聴器1,2は、左右用にそれぞれ設けられるものであるが、基本的な構成は同じものとなっているので、以降補聴器2について
図3から
図10を用いて説明する。
【0015】
補聴器2は、
図3から
図5に示すように補聴器本体9と、この補聴器本体9の軸方向に延長形成されると共に、
図6、
図7に示すごとく外耳道10に挿入装着されるレシーバー2aと、前記補聴器本体9の外周上方に弾性延長部11を介して装着されたマイクロフォン2bとを備えている。
【0016】
前記マイクロフォン2bは、前記レシーバー2aを
図6、
図7に示すように外耳道10に挿入装着した際に、耳介12の外耳道10上方の前面側に前記マイクロフォン2bの音孔が対向するように配置される形状とした。
【0017】
つまり、この状態においてマイクロフォン2bの音孔は、耳介12の外耳道10上方の前面側に対向し、この耳介12の外耳道10上方の前面側の空間から集音をする構成となっている。
【0018】
なお、前記弾性延長部11は、ゴム材料または軟質樹脂材料により形成されている。このため、この弾性延長部11やマイクロフォン2bに指があたった状態では、容易に変形し、損傷することは無い。また、このように弾性延長部11をゴム材料または軟質樹脂材料により形成することで、レシーバー2aからの振動が補聴器本体9に伝播したとしても、この補聴器本体9からマイクロフォン2bに伝播することは少なく、その結果としてハウリングを防止することが出来る。
【0019】
また、このような弾性延長部11などの損傷防止や、ハウリング防止の効果を高めるために、前記弾性延長部11の径は、マイクロフォン2bの径よりも小さくしている。
【0020】
さらに、前記補聴器本体9には、
図6からも理解されるように前記弾性延長部11とは略反対方向に接続ケーブル5を配置しており、この接続ケーブル5は、耳珠13と対耳珠14の間から下方に
図1のごとく延長される。そして、この状態において、前記マイクロフォン2bの音孔は、耳介12の外耳道10上方の前面側に対向するよう配置され、この耳介12の外耳道10上方の前面側の空間から集音をする構成となっている。
【0021】
図8は、本実施形態の効果を示す図である。この
図8は右耳における補聴器2の特性を示すものである。この
図8において0度とは、前方に音源が存在するときの特性を示し、45度とは右斜め45度の方向に音源が存在するときの特性を示し、90度とは、右方向90度の方向に音源が存在するときの特性を示し、135度とは、右方向135度の方向に音源が存在するときの特性を示し、180度とは、右方向180度(真後ろ)の方向に音源が存在するときの特性を示している。
【0022】
また、A線は3kHzに対する特性を示し、B線は4kHzに対する特性を示している。つまり、会話における子音は3から4kHzに存在することが多いので、これらの周波数に対する特性を測定することで会話の明瞭性を確認することが出来る。
【0023】
比較のために用いた
図9は、
図6、
図7のように外耳道10にレシーバー2aを挿入装着した状態で、マイクロフォン2bが耳介12の前方(顔の前の方)に向けられた状態を示している。また、
図10は、
図6、
図7のように外耳道10にレシーバー2aを挿入装着した状態で、マイクロフォン2bが耳介12の側方(顔の横方向)に向けられた状態を示している。
【0024】
これらの、
図8から
図10の比較から、明らかなように、本実施形態における補聴器2は特に、B線で示す4kHzの集音特性が
図9、
図10に示すものと比較して極めて高いレベルを示している。
【0025】
つまり、本実施形態における補聴器1,2は、
図9、
図10に示す比較例(従来例)に比べて会話における子音の集音特性が極めて高くなり、その結果として、会話の明瞭度が向上するものとなる。
【0026】
その理由は未だ明確になっていない部分もあるが、耳介12の外耳道10上方の前面側に広がる空間が前記会話における子音に対する周波数特性を形成しているためか、子音が極めて聞き取りやすくなり、実際に難聴者が補聴器1、2を装着した結果としても会話の明瞭度が向上したことが評価された。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、本発明においては、前記補聴器本体に設けられた前記レシーバーを外耳道に装着した際に、前記補聴器本体に弾性延長部を介して装着されたマイクロフォンが耳介の外耳道上方の前面側にマイクロフォン音孔が対向するように配置されたものであり、その理由は未だ明確になっていない部分もあるが、耳介の外耳道上方の前面側に広がる空間が前記会話における子音に対する周波数特性を形成しているためか、子音が極めて聞き取りやすくなり、この結果として、会話の明瞭度が向上することとなった。従って、補聴器としての活用が期待されるものとなる。
【符号の説明】
【0028】
1、2補聴器
1a、2a レシーバー
1b、2b マイクロフォン
3 補助具
4、5 接続ケーブル
6 インターフェース
7 補聴処理部
8 電池
9 補聴器本体
10 外耳道
11 弾性延長部
12 耳介
13 耳珠
14 対耳珠