【実施例1】
【0027】
図1は、本発明における交流電源に相当し、外部振動をソースとして発電を行う振動発電装置11と負荷回路15との間に設けられ、振動発電装置11の出力電圧を降圧し、負荷回路15の駆動電圧として蓄電する二次コンデンサ6を有する電圧変換回路1の概略構成を示す。ここでは、振動発電装置11と、その発電電流の整流を行う整流回路12とで電源回路10が形成され、電源回路10の出力は電圧変換回路1側へ入力される。振動発電装置11の一例としてエレクトレット材料を利用した発電装置が挙げられる。振動発電装置は公知の技術であるため、本明細書におけるその詳細な説明は割愛する。また、振動発電装置以外の発電装置も電源回路10内に含めても構わない。なお、本実施例では、発電量が20〜100μW、出力電圧が30〜80Vp−p規模のエレクトレット材料を用いた振動発電装置を採用するが、本発明の適用は当該装置に限られない。
【0028】
さらに、電圧変換回路1と負荷回路15との間には、該電圧変換回路1内の二次コンデンサ6に蓄電されたエネルギーを負荷回路15側に供給するためのスイッチング回路16が設けられている。
【0029】
電圧変換回路1においては、複数の一次コンデンサが直列に接続されることで形成された一次コンデンサ群2に対して、電源回路10の出力端子が接続され、その出力が一次コンデンサ群2に含まれる一次コンデンサ21〜23に入力される。なお、
図1に示す構成では、一次コンデンサ群2には3個の一次コンデンサが含まれているが、これら全ての一次コンデンサが電源回路10から電力供給されるわけではなく、その電力供給時の供給効率を踏まえて利用される一次コンデンサの数(以下、「直列数」ともいう。)が、一次コンデンサ群2内に含まれるスイッチング回路21a、21b、22a、22b、23a、23bによって調整される(当該調整の詳細については後述する)。また、電源回路10に対して電力供給が可能となるように一次コンデンサが直列に接続された状態を、「直列接続状態」とも言う。
【0030】
スイッチング回路21a、22a、23aは、一次コンデンサとともに電源回路10に対して直列に配置され、スイッチング回路21aが一次コンデンサ21に対応し、スイッチング回路22aが一次コンデンサ22に対応し、スイッチング回路23aが一次コンデンサ23に対応する。そこで、スイッチング回路21a、22a、23aを、以降「直列スイッチング回路」ともいう。また、スイッチング回路21b、22b、23bは、それぞれ、一次コンデンサ21とそれに対応するスイッチング回路21aをバイパスするバイパス線のオン・オフを行い、一次コンデンサ22とそれに対応するスイッチング回路22
aをバイパスするバイパス線のオン・オフを行い、一次コンデンサ23とそれに対応するスイッチング回路23aをバイパスするバイパス線のオン・オフを行う。そこで、スイッチング回路21b、22b、23bを、以降「バイパススイッチング回路」ともいう。なお、これらのスイッチング回路を用いた一次コンデンサの直列数の調整は、直列数調整回路7によって実行されるが、その内容については後述する。なお、今、一次コンデンサ21〜23の容量は同じとする。
【0031】
そして、一次コンデンサ群2に含まれる一次コンデンサ21〜23のそれぞれに対して、二次コンデンサ6が並列に接続可能となるように配線され、且つ各一次コンデンサと二次コンデンサ6との配線において、両コンデンサの接続状態、遮断状態を切り換えるスイッチング回路が、各一次コンデンサに対応して設けられている。具体的には、一次コンデンサ21と二次コンデンサ6との間には、スイッチング回路71a、71bが設けられ、一次コンデンサ22と二次コンデンサ6との間には、スイッチング回路72a、72bが設けられ、一次コンデンサ23と二次コンデンサ6との間には、スイッチング回路73a、73bが設けられている。これらのスイッチング回路は、後述するように対応する一次コンデンサの充電電圧等に応じて、それぞれ独立してそのスイッチ動作が制御され、その制御のために対応する一次コンデンサ毎にスイッチング調整回路41〜43が設置されている。
【0032】
また、一次コンデンサ21〜23のそれぞれに対して、その充電電圧を監視するための電圧監視回路31〜33が設置されている。この電圧監視回路31〜33によって検出された各一次コンデンサの充電電圧は切換制御回路5や直列数調整回路7に渡される。切換制御回路5は、渡された各一次コンデンサの充電電圧と、二次コンデンサ6の充電電圧に基づいて、スイッチング調整回路41〜43を介して、スイッチング回路71a〜73bのスイッチング動作の制御を行う。したがって、この切換制御回路5およびスイッチング調整回路41〜43が、本発明に係る接続制御回路に相当する。また、直列数調整回路7は、直列スイッチング回路21a等およびバイパススイッチング回路21b等のスイッチング動作の制御を行い、電源回路10に対する一次コンデンサの直列接続状態を調整する。したがって、この直列数調整回路7および直列スイッチング回路21a等、バイパススイッチング回路21b等が、本発明に係る調整回路に相当する。また、二次コンデンサ6については、図示されていない上限電圧制御回路が併設されている。この上限電圧制御回路は、蓄電されたエネルギーを負荷回路15側に供給するときに、負荷回路15に過度な電圧が印加されないように二次コンデンサ6の上限電圧(たとえば、3〜3.15V)を制限する回路である。したがって、本実施例では、二次コンデンサ6は、概ね上限電圧に蓄電された状態に維持されるべく、電源回路10からの充電が行われる。
【0033】
このように構成される電圧変換回路1では、直列数調整回路7によって電源回路10に対して直列に組み込まれる一次コンデンサに対しては、該電源回路10から電力供給が行われる。たとえば、直列スイッチング回路21a、22a、23aがともにオン状態となると、電源回路10からの供給電力により各一次コンデンサが充電される。また、直列スイッチング回路がオン状態となる代わりに、バイパススイッチング回路がオン状態となると、それに対応する一次コンデンサへの充電が回避されることになる。そして、充電された一次コンデンサの電力が、スイッチング回路71aとの動作を介して順次二次コンデンサ6に対して引き渡されることで、二次コンデンサ6への充電が行われることになる。
【0034】
ここで、振動発電装置11から二次コンデンサ6への充電動作について、
図2に基づいて説明する。当該充電動作は、上記切換制御回路5、直列数調整回路7、電圧監視回路31〜33、スイッチング調整回路41〜43が協働して実行され、これにより電源回路10の出力電圧が、負荷回路15の駆動電圧に相当する二次コンデンサ6の充電電圧まで降圧されることになる。
図2は、電圧監視回路31〜33、スイッチング調整回路41〜4
3、切換制御回路5、直列数調整回路7で発揮される機能をイメージ化して表わした機能ブロック図である。各回路は、
図2に示す機能部以外の機能部を有していてももちろん構わない。
【0035】
電圧監視回路31〜33には、充電電圧監視部101、スイッチング切換要求部102、放電終了通知部103が形成される。充電電圧監視部101は、電圧監視回路31〜33がそれぞれ対応している一次コンデンサ21〜23の充電電圧を常時監視している。この監視により取得された各一次コンデンサの充電電圧値は、適宜のタイミングで切換制御回路5へ渡される。スイッチング切換要求部102は、一次コンデンサに貯められたエネルギーを二次コンデンサ6に移すために、対応するスイッチング回路71a〜73bを切り換えて、当該一次コンデンサと二次コンデンサ6とを接続状態とするために切換制御回路5に対して切換要求を出す。なお、この切換要求を出す条件は、一次コンデンサ21〜23の充電電圧と二次コンデンサ6の充電電圧の相関が満たすべき、電荷の移動効率に関する所定の条件である(その詳細については後述する)。次に、放電終了通知部103は、上記の一次コンデンサから二次コンデンサ6への電力供給により、一次コンデンサの充電電圧が所定の閾値まで低下してきたときに、切換制御回路5に対して放電終了を通知する。
【0036】
次に、切換制御回路5には、切換優先順位決定部201、接続状態確認部202、接続許可部203、遮断指示部204が形成される。切換優先順位決定部201は、スイッチング回路71a〜73bによって二次コンデンサ6に対して複数の一次コンデンサ21〜23が同時に接続されないように、すなわち一次コンデンサ間での短絡が回避されるように、その接続のための優先順位を決定する。なお、切換優先順位決定部201の対象となる一次コンデンサは、上記スイッチング切換要求部102によって切換要求が出された一次コンデンサとされる。接続状態確認部202は、二次コンデンサ6に対して何れかの一次コンデンサが接続状態となっているか否かについて確認を行う。接続許可部203は、接続状態確認部202によって確認された状況に基づいて、二次コンデンサ6に対する一次コンデンサの接続を許可する。遮断指示部204は、上記の放電終了通知部103からの通知に基づいて、対象となる一次コンデンサと二次コンデンサ6との接続状態を解消すべく遮断指示をスイッチング調整回路41〜43に出す。
【0037】
次に、各スイッチング調整回路には、スイッチング実行部301が形成される。スイッチング実行部301は、上記の接続許可部203からの許可信号、又は上記の遮断指示部204からの遮断指示に従って、対応するスイッチング回路71a〜73bのスイッチング動作を制御する。
【0038】
また、直列数調整回路7には、コンデンサ状態監視部401、直列数決定部402、直列状態切換部403が形成される。コンデンサ状態監視部401は、電源回路10に対して直列接続される一次コンデンサの直列数切換に関して、一次コンデンサ21〜23および二次コンデンサ6に係る所定の状態を監視する。例えば、各一次コンデンサと二次コンデンサ6との間で行われる電力の授受状態は、後述するように当該直列数に関与するものであるから、コンデンサ状態監視部401の監視対象となる。直列数決定部402は、コンデンサ状態監視部401による監視結果に基づいて、電源回路10に対して直列接続される一次コンデンサの直列数を決定する。また、直列状態切換部403は、直列数決定部402が決定した直列数に従って、実際に電源回路10に対する一次コンデンサの接続状態を切り換えていく。
【0039】
このように形成された、電圧監視回路31〜33、切換制御回路5、スイッチング調整回路41〜43、直列数調整回路7によって、電圧変換回路1では、大別して、各一次コンデンサから二次コンデンサ6への充電と、電源回路10から各一次コンデンサへの電力
供給が行われる。そこで、先ず、前者の詳細について説明する。
【0040】
<各一次コンデンサから二次コンデンサ6への充電処理>
なお、以下の処理項目(1)〜(5)の順序は限定的なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、処理項目の順序は適宜調整されても構わない。
(1)電源回路10からの出力電流は、電源回路10に対して直列接続状態となっている各一次コンデンサに蓄えられ、各一次コンデンサの充電電圧が上昇する。この一次コンデンサの充電電圧の変動は、対応する電圧監視回路の充電電圧監視部101によって監視される。
【0041】
(2)充電電圧監視部101によって監視されている各一次コンデンサの充電電圧が基準となる所定接続電圧に到達すると、スイッチング切換要求部102が切換要求を切換制御回路5に対して送る。
ここで、所定接続電圧は、各一次コンデンサと二次コンデンサ6が接続されたときに、一次コンデンサから二次コンデンサ6への電荷の移動効率が良好な値となるように決定される。そこで、所定接続電圧の決定について、
図3に基づいて説明する。
図3は、一次コンデンサと二次コンデンサが接続されたときに、一次コンデンサから二次コンデンサへの電荷の移動効率を、各コンデンサの充電電圧ごとに表わしている。なお、この電荷の移動効率は理論的に下記式に従って算出されたものである。
電荷の移動効率=(接続による二次コンデンサのエネルギー増加分)
/(一次コンデンサのエネルギー減少分)
【0042】
図3の上段(a)は、一次コンデンサと二次コンデンサの容量がともに10μFの場合であり、下段(b)は、一次コンデンサの容量が1μF、二次コンデンサの容量が10000000μFの場合である。なお、各コンデンサの充電電圧の初期とは、接続を開始したタイミングでの充電電圧であり、終止とは、接続を終え遮断したタイミングでの充電電圧である。
図3からも明らかなように、一次コンデンサと二次コンデンサの容量にかかわらず、初期において一次コンデンサの充電電圧と二次コンデンサの充電電圧との電圧差が小さくなるほど、電荷の移動効率が上昇する傾向がある。
【0043】
そこで、本実施例では、電荷の移動効率を概ね85%以上に到達させるべく、一次コンデンサと二次コンデンサの電圧差が、初期の一次コンデンサの充電電圧が、初期の二次コンデンサの充電電圧の1.1〜1.2倍程度となる電圧となる電圧差であるとき、一次コンデンサから二次コンデンサへの電荷の移動を行う、すなわち、スイッチング切換要求部102から切換要求を切換制御回路5に対して送ることとする。具体的には上述の通り、二次コンデンサ6には上限電圧制御回路が併設されることで、その充電電圧が概ね3〜3.15Vに維持されていることから、本実施例における所定接続電圧は、3.3V程度とする。
【0044】
(3)切換優先順位決定部201が、各電圧監視回路のスイッチング切換要求部102からの切換要求に従って、二次コンデンサ6に対して接続する一次コンデンサの接続順位を決定する。原則として、切換要求が届いた順に接続順位を付与するが、接続状態が維持される期間において複数の一次コンデンサが同時に接続状態となる可能性がある場合には、一次コンデンサ21、一次コンデンサ22、一次コンデンサ23の順序で優先的に接続順位を付与するものとする。なお、接続順位の付与については、上記以外の態様でも構わないが、重要であるのは、2個以上の一次コンデンサが二次コンデンサ6に対して同時に接続された状態とならないように、接続順位が付与されることである。
【0045】
(4)接続状態確認部202によって二次コンデンサ6に対して何れかの一次コンデンサが接続されているか否かが判定される。そこで、接続されていないと判定されると、最優
先の接続順位が付与された一次コンデンサと二次コンデンサ6との接続を許可する指示が、接続許可部203によって、該一次コンデンサに対応するスイッチング回路に対して出される。これにより、スイッチング回路のスイッチング実行部301が両コンデンサを接続し、以て二次コンデンサ6が充電される。一方で、接続していると判定されると、現在二次コンデンサ6に接続されている一次コンデンサに対応する、電圧監視回路の放電終了通知部103から放電終了の通知が届くまで、接続許可部203による接続を許可する指示の発令は待機状態とされる。
【0046】
なお、放電終了通知部103からの放電終了の通知は、一次コンデンサの充電電圧が、二次コンデンサ6の充電電圧に近い値となったときに出される。放電終了通知部103から放電終了の通知が出されると、遮断指示部204が、接続されている一次コンデンサと二次コンデンサ6とを遮断するための遮断指示を、該接続されている一次コンデンサに対応するスイッチング回路に対して出す。これを受けたスイッチング回路のスイッチング実行部301は、一次コンデンサと二次コンデンサの接続を遮断する。この遮断と同時に、上述した次に二次コンデンサ6に接続される一次コンデンサに対応するスイッチング回路による両コンデンサの接続が実行されることになる。
【0047】
ここで、スイッチング回路による接続および遮断時の、一次コンデンサと二次コンデンサとの間における接続に関する状態推移を
図4の上段(a)に示す。本実施例においては、スイッチング実行部301がスイッチング回路を接続状態(オン状態)とするときの接続時定数Δt1は、スイッチング回路を遮断状態(オフ状態)とするときの遮断時定数Δt2と比べて比較的に長く設定されている。たとえば、Δt1は約7msecであり、Δt2は可及的に0msecに近い値である。このように接続時定数を比較的長くすることで電荷の移動が緩やかに行われるため、仮にあるスイッチング回路で遮断処理を行っている最中に別のスイッチング回路で接続処理を行っても、それぞれのスイッチング回路に対応する一次コンデンサ同士が短絡ことを回避することが可能となる。この結果、上記のように、あるスイッチング回路での遮断処理と別のスイッチング回路での接続処理が同時に行われても、一次コンデンサ同士の短絡は実質的に回避できる。
【0048】
一方で、
図4の下段(b)に示すように接続時定数Δt1と遮断時定数Δt2とをともに可及的に0msecに近い値とすると、あるスイッチング回路での遮断処理と別のスイッチング回路での接続処理が同時に行われると、もしくは両処理の間隔が極めて近接して行われると、一次コンデンサ同士で短絡が生じる可能性が高くなる。特に、本発明に係る電圧変換回路1においては、二次コンデンサ6に対して実質的に1個の一次コンデンサのみを接続させることが肝要であることを踏まえると、一次コンデンサ同士の短絡を回避し得る接続時定数Δt1と接続時定数Δt2の設定は重要である。
【0049】
(5)上記(1)〜(4)を適宜繰り返して、二次コンデンサに対して、一次コンデンサ同士が短絡状態とならないように、充電電圧が所定接続電圧に到達した一次コンデンサを順次接続していく。この結果、一次コンデンサと二次コンデンサとの間で電荷の移動効率を85%以上に保った状態で、二次コンデンサの充電が行われることになる。
【0050】
以上を踏まえ、
図5に電圧変換回路1の動作のタイムチャートを示す。なお、該タイムチャートにおいては、説明を簡便にするため一次コンデンサの数を2個としている。図中上二段は、2個の一次コンデンサの充電電圧の推移を示し、次の二段は、各一次コンデンサに対応するスイッチング回路の接続状態の変動を示し、次の二段は、各一次コンデンサから二次コンデンサへの放電電流の推移を示し、最下段は、二次コンデンサの充電電圧の推移を示している。ここで、図中に示す重複タイミングでは、2個の一次コンデンサに対応する電圧監視回路から出される切換要求が同時期に出されている(図中、点線で囲まれている箇所を参照のこと)。そのため、一方(下段側)の一次コンデンサの接続開始タイ
ミングは、切換要求が出された時期から意図的にずらされている。これにより、一次コンデンサ同士の短絡を回避することができる。
【0051】
<電源回路10から一次コンデンサへの電力供給処理>
次に、電源回路10から一次コンデンサへの電力供給について説明する。本発明に係る電圧変換回路1においては、振動発電装置11からの効率的な電力供給を図るために、直列数調整回路7によって、電源回路10に対して直列接続される一次コンデンサの数が調整される。これは、振動発電装置11と一次コンデンサとの間の充電効率は、振動発電装置11の開放端電圧と一次コンデンサの総充電電圧との比率(一次電圧比)に依拠して変動することによるが、更には、電源回路10に対して直列接続し得る一次コンデンサは、二次コンデンサ6との間で行われる上記電力授受を踏まえて決定されるものである。そこで、直列数調整回路7は、一次コンデンサ21〜23および二次コンデンサ6の所定の状態に基づいて、電源回路10に対して直列接続される一次コンデンサの数(直列数)を調整する。
【0052】
ここで、振動発電装置11と、電源回路10に対して直列接続状態となっている一次コンデンサとの間の充電効率Ec1は、以下の式で表わされる。
Ec1=(単位時間に一次コンデンサへ蓄積されたエネルギー量)
/(整合抵抗時の振動発電装置11の供給(発電)電力量)
【0053】
このように定義される充電効率Ec1と一次電圧比との理論的な相関をプロットすると、
図6Aに線L1で示すように、一次電圧比が50%のときに極値をむかえる放物線が描写できる。したがって、電源回路10に対して直列接続状態となっている一次コンデンサの総充電電圧が、振動発電装置11の開放端電圧の半分となるように、一次コンデンサの直列数を決定すればよい。具体的には、一次コンデンサから二次コンデンサ6への充電時における電圧変化が、上記の通り、電荷の移動効率を考慮して小さくなるように設定されることを踏まえて、当該充電時の一次コンデンサの充電電圧を、二次コンデンサから負荷回路16への出力電圧と同じとみなし、以下の式に従って、直列数が決定される。
直列数 = 振動発電装置11の開放端電圧/2/二次コンデンサの出力電圧
・・・(式1)
たとえば、開放端電圧が60Vで、二次コンデンサ6の出力電圧が1.5Vのときは、一次コンデンサの直列数は20となる。なお、本明細書における開放端電圧は、振動発電装置11による起電力と同義である。
【0054】
なお、一次コンデンサの充電電圧は、厳密にはスイッチング回路71a等のスイッチング動作で放電が行われることで変動する。そこで、一つの一次コンデンサ(たとえば、一次コンデンサ21)でのスイッチング動作による一次コンデンサから二次コンデンサ6への充電初期(充電開始タイミング)の充電電圧をV1とし、同充電の終止時期(充電終了タイミング)の充電電圧をV1’としたときの、両電圧の平均値V1ave(=(V1+V1’)/2)を用いて、以下のように直列数を算出してもよい。
直列数 = 振動発電装置11の開放端電圧/2/V1ave
・・・(式1’)
【0055】
一般に、市場で入手できるコンデンサは、その容量は既定値であるため、電源回路10に対して直列接続状態となっている一次コンデンサの総充電電圧が、ちょうど振動発電装置11の開放端電圧の半分(50%)となるように、一次コンデンサの直列数を決定するのは難しい場合がある。そのような場合には、可及的に電源回路10に対して直列接続状態となっている一次コンデンサの総充電電圧が振動発電装置11の開放端電圧の半分に近づくように、そこに含まれる一次コンデンサの数を決定すればよい。
【0056】
また、一次コンデンサ群2に対して負荷抵抗が接続されている場合には、
図6Bにおいて線L2で示すように、又は
図2Cにおいて線L3で示すように、充電効率が極値をむかえるときの一次電圧比が50%より低くなる。
図6Bは、内部抵抗が10MΩ〜20MΩの振動発電装置11を用いた場合の、一次コンデンサに対して10MΩ程度の負荷抵抗が接続された状態の充電効率の推移を表す図であり、
図6Cは、同様の振動発電装置11を用いた場合の、一次コンデンサに対して100MΩ程度の負荷抵抗が接続された状態の充電効率の推移を表す図である。なお、参考までに
図6Bにおける線L4および
図2Cにおける線L5は、負荷抵抗での電力消費効率を表す。このように充電効率の極値が変動する要因としては、一次コンデンサが、自身にエネルギーを蓄えながら接続されている負荷抵抗にエネルギーを供給している点が挙げられる。そして、
図1に示す電圧変換回路1においては、一次コンデンサ群2に含まれる各一次コンデンサに対して電圧監視回路31〜33が接続されており、これらの回路が負荷抵抗に相当する。したがって、電圧変換回路1においては、電圧監視回路31〜33の内部抵抗を踏まえて、一次コンデンサの直列数を決定するようにしてもよい。
【0057】
また、電源回路10から供給される電力については、常時一定しているとは限らない。たとえば、製造上のばらつきによって振動発電装置11の発電能力にばらつきが生じる場合もある。また、振動発電装置11に関する経年的な変化の側面からは、いわゆる寿命による発電能力の経年変化や、振動源の変化(振動源の強さや振動源の振動周波数と振動発電装置11の共振周波数のずれ、振動発電装置11を囲む環境変化による発電能力の変動等)によって、電源回路11から一次コンデンサ群2に対して印加される電圧が変動し得る。このような供給電圧の変化に対しても、効率的な電力供給を行うためには、上記の通り、理論的には振動発電装置11の開放端電圧の半分(50%)となるように、一次コンデンサの直列数を調整するのが好ましい。
【0058】
ここで、
図7〜
図10に基づいて一次コンデンサの直列数の調整について具体的に説明する。なお、
図7〜
図10に示す直列数調整処理は、直列数調整回路7によって適時実行されるものである。
<直列数調整処理1>
まず、
図7に記載の第一の直列数調整処理について説明する。当該処理は、一次コンデンサから二次コンデンサ6への充電状態に基づいてものである。当該直列数決定処理では、先ず、S101でコンデンサ状態監視部401によって二次コンデンサ6が充電中か否か、すなわち一次コンデンサ21〜23のうちいずれかのコンデンサが、対応するスイッチング回路を介して二次コンデンサ6と接続された状態にあるか否かが判定される。S101で肯定判定されると本制御を終了し、否定判定されるとS102へ進む。次にS102では、直列数決定部402が、S101で否定判定されたことを踏まえて二次コンデンサ6が非充電の状態において、上記式1もしくは式1’に従って一次コンデンサの直列数を決定する。S102の処理が終了すると、S103へ進む。
【0059】
S103では、S102で決定された直列数を、二次コンデンサ6が非充電の状態において実現するために、電源回路10に対して直列状態を為す一次コンデンサを決定し、当該直列状態形成のために直列スイッチング回路21a〜23aおよびバイパススイッチング回路21b〜23bのオン・オフ状態を調整する。たとえば、S102で決定された直列数が「2」である場合には、二次コンデンサ6が非充電の状態において電源回路10に対して直列接続される一次コンデンサを21、22とし、接続されない一次コンデンサを23とする。したがって、この場合には、一次コンデンサ21もしくは一次コンデンサ22の一方が満充電状態となって二次コンデンサ6に充電を行っている際には、電源回路10に接続されている一次コンデンサは、二次コンデンサ6への充電を行っていない1つの一次コンデンサのみとなる。なお、上記S103の処理は、直列状態切換部403によるものである。
【0060】
以上をまとめると、
図7に示す直列数調整処理に従えば、電源回路10から一次コンデンサへの電力供給は、一次コンデンサから二次コンデンサへの電力供給が行われていない期間、すなわちスイッチング回路71a等がいずれもオフ状態にある期間において、効率的に行い得る状態が形成される。したがって、
図7に示す直列数調整処理によれば、電圧変換回路1において、二次コンデンサ6へ充電していない期間が、充電している期間よりも比較的長い場合に、有用な一次コンデンサの直列数調整が行われることになる。
【0061】
<直列数調整処理2>
次に、
図8に記載の第二の直列数調整処理について説明する。当該処理も、第一の直列数調整処理と同じように、一次コンデンサから二次コンデンサ6への充電状態に基づいてものである。当該直列数決定処理では、先ず、S101と同じように、S201でコンデンサ状態監視部401によって二次コンデンサ6が充電中か否かが判定される。S201で肯定判定されるとS202へ進み、否定判定されると本制御を終了する。次にS202では、直列数決定部402が、S201で肯定判定されたことを踏まえて二次コンデンサ6が充電されている状態において、上記式1もしくは式1’に従って一次コンデンサの直列数を決定する。S202の処理が終了すると、S203へ進む。
【0062】
S203では、S202で決定された直列数を、二次コンデンサ6が充電されている状態において実現するために、電源回路10に対して直列状態を為す一次コンデンサを決定し、当該直列状態形成のために直列スイッチング回路21a〜23aおよびバイパススイッチング回路21b〜23bのオン・オフ状態を調整する。たとえば、S102で決定された直列数が「2」である場合には、二次コンデンサ6が非充電の状態において電源回路10に対して直列接続される一次コンデンサの数は「3」となる。したがって、当該非充電の状態では、一次コンデンサ21〜23が接続状態とされる。そして、一次コンデンサ21〜23の何れかが二次コンデンサ6に対して充電を行っているときには、残りの2つの一次コンデンサが電源回路10から電力供給を受け、その際の供給効率の最善化が図られることになる。なお、上記S203の処理は、直列状態切換部403によるものである。
【0063】
以上をまとめると、
図8に示す直列数調整処理に従えば、電源回路10から一次コンデンサへの電力供給は、一次コンデンサから二次コンデンサへの電力供給が行われている期間、すなわち何れかのスイッチング回路71a等の対がオン状態にある期間において、効率的に行い得る状態が形成され、当該電力供給が行われていない期間においては、電源回路10からの電力供給の効率はやや低下することになる。したがって、
図8に示す直列数調整処理によれば、電圧変換回路1において、二次コンデンサ6へ充電している期間が、充電していない期間よりも比較的長い場合に、有用な一次コンデンサの直列数調整が行われることになる。
【0064】
<直列数調整処理3>
次に、
図9に記載の第三の直列数調整処理について説明する。なお、当該処理においては、一次コンデンサの直列数は、予め所定数に決定されていることを前提とする。まず、S301では、コンデンサ状態監視部401によって、二次コンデンサ6への充電を行っている一次コンデンサが、切り替わったか否かが判定される。すなわち、切換制御回路5による一次コンデンサと二次コンデンサ6との接続状態に変化があったか否かが判定される。S301で肯定判定されるとS302へ進み、否定判定されると本処理を終了する。S302では、直列状態切換部403によって、予め決定されている直列数が維持されるように、電源回路10に対する一次コンデンサの直列状態が適宜切り換えられる。このように本処理は、二次コンデンサ6の充電状態に着目し、その充電状態が切り替わったことをもって、一次コンデンサ6の直列接続状態が調整される。
【0065】
例えば、上記式1に従い一次コンデンサの直列数が「2」と決定されている場合、一次コンデンサ21、22が直列状態となるように直列スイッチング回路21a〜23aおよびバイパススイッチング回路21b〜23bのオン・オフ状態が調整される。ここで、一方の一次コンデンサ21から二次コンデンサ6への充電が行われると、一次コンデンサ21が電源回路10から切り離された状態となるため、直列数の数が当初設定した値より少なくなってしまい、電源回路10からの効率的な電力供給が行えなくなる。そこで、二次コンデンサ6への充電のために一次コンデンサ21が切り離された状態となると、それまで電源回路10に直列接続されていなかった一次コンデンサ23を直列接続すべく、直列スイッチング回路23aがオン状態とされ、バイパススイッチング回路23bがオフ状態とされる。このように、本処理に従えば、二次コンデンサ6への充電状態にかかわらず、一次コンデンサの直列数を所定数に維持することができ、以て効率的な電力供給が図られる。
【0066】
なお、一次コンデンサの直列数については、適切なタイミングにおいて改めて算出し直してもよい。特に、電源回路10からの供給電力の変動が見込まれるタイミングで直列数の算出が行われることで、電源回路10の特性に応じた、より効率的な一次コンデンサへの電力供給が可能となる。なお、上記S402、S403の処理は、直列状態切換部403によるものである。
【0067】
<直列数調整処理4>
次に、
図10に記載の第四の直列数調整処理について説明する。なお、当該処理においては、一次コンデンサの直列数は、予め所定数に決定されていることを前提とする。先ず、S401では、予め決定された所定数に対応する所定の一次コンデンサが、電源回路10に対して直列接続状態にあるか否かが判定される。S401で肯定判定されると、一次コンデンサに対して電源回路10から効率的な電力供給が行われていることを意味し、以て本制御を終了する。一方で、S401で否定判定されると、所定の一次コンデンサの少なくとも1つが、二次コンデンサへの充電を行っているか、もしくは満充電状態に至り二次コンデンサへの充電を待機している状態(以降、「待機状態」ともいう)にあることを意味する。したがって、その場合には、一次コンデンサに対して電源回路10から効率的な電力供給が行われていないことになるため、S402の処理が行われる。
【0068】
S402では、電源回路10に対して直列接続状態となるように組み込まれる予備的な一次コンデンサを決定し、S403では、当該予備的な一次コンデンサを組み込むべく、当該一次コンデンサに対応する直列スイッチング回路とバイパススイッチング回路のオン・オフ状態が制御される。このように本処理は、一次コンデンサの電源回路10に対する直列接続状態に着目し、その直列接続状態が切り替わったことをもって、予備的な一次コンデンサが電源回路10に対して組み込まれることになる。この予備的な一次コンデンサは、所定の一次コンデンサが電源回路10から切り離された際に、電源回路10から随時供給されてくる電力を無駄なく回収することを目的として電圧変換回路1の一次コンデンサ群2の中に余分に組み込まれている一次コンデンサである。また、予備的な一次コンデンサの別法として、所定の一次コンデンサが直列接続状態になっていないと判断された時点において、電源に対して直列接続状態を形成することで電力供給を受けられる一次コンデンサが存在しているのであれば、当該一次コンデンサが恒常的な予備の一次コンデンサでなくても、本実施例における予備的な一次コンデンサとして使用しても構わない。
【0069】
<直列数調整処理5>
次に、第五の直列数調整処理について
図11および
図12に基づいて説明する。
図11は、電圧変換回路1の別の実施例を示す図であり、
図1に示す電圧変換回路1と同じ構成要素については、同一の参照番号を付してその詳細な説明は割愛する。ここで、
図11に
示す電圧変換回路1の構成要素のうち、
図1に示す電圧変換回路1の構成要素と相違するのは、一次コンデンサのそれぞれについて、対応する直列スイッチング回路が一次コンデンサの端子間電圧の上限値(以下、単に「上限電圧」ともいう)を制限する機能に代えて、ツェナーダイオードによる一次コンデンサの上限電圧の調整機能が組み込まれている点である。具体的には、第一コンデンサ21については、ツェナーダイオード21cが第一コンデンサ21と並列に設けられ、第一コンデンサ22については、ツェナーダイオード22cが第一コンデンサ22と並列に設けられ、第一コンデンサ23については、ツェナーダイオード23cが第一コンデンサ23と並列に設けられている。このように、ツェナーダイオード21c〜23cが設けられることで、対応する第一コンデンサ21〜23のそれぞれの上限電圧がツェナーダイオードに応じた値に制限されることになる。すなわち、ツェナーダイオード21c〜23cは、各一次コンデンサに供給する電力を、各ツェナーダイオードとともに設けられている図示しない抵抗部で消費することで、一次コンデンサの上限電圧を調整するものである。
【0070】
このようにツェナーダイオードを利用することで、電圧変換回路1において、上述した直列スイッチング回路21a等に関する制御を省くことができ、以て直列数調整回路7による制御内容も簡素化することが可能となる。しかし、ツェナーダイオードでは、いわば供給電力を消費することで一次コンデンサの端子間電圧を維持することから、可能な限り、満充電状態に至った一次コンデンサに対して電源回路10から電力供給が行われない方が好ましい。そこで、第一コンデンサが満充電状態に至った場合には、対応するバイパススイッチング回路をオン状態にすることで、供給電力がツェナーダイオードに流れ込むのを回避するのが好ましい。しかし、このようにバイパススイッチング回路をオン状態とすると、電源回路10に対して直列状態となる一次コンデンサの数が減少することになるため、電源電圧10と一次コンデンサとの間の電力供給が効率的に行い得る状態からずれてしまう可能性がある。
【0071】
以上を踏まえ、
図12に示す直列数調整処理が直列数調整回路7によって実行される。なお、当該処理においても、第四の直列数調整処理と同じように、一次コンデンサの直列数は、予め所定数に決定されていることを前提とする。先ず、S501では、予め決定された所定数に対応する所定の一次コンデンサにおいて、満充電状態に至り二次コンデンサ6に対して充電できるように待機状態にあるものが存在しているか否かが判定される。S501で肯定判定されると、ツェナーダイオードでの電力消費を回避するために電力供給のバイパスが行われ、その結果、効率的な電力供給が行われていない状態にあることを意味する。したがって、その場合は、S502へ進む。一方で、S501で否定判定されると、電力供給のバイパスは行われていないことから本制御を終了する。
【0072】
S502では、電源回路10に対して直列接続状態となるように組み込まれる予備的な一次コンデンサを決定し、S503では、当該予備的な一次コンデンサを組み込むべく、当該一次コンデンサに対応するバイパススイッチング回路のオン・オフ状態が制御される。このように本処理は、ツェナーダイオードを利用して一次コンデンサの端子間電圧を制限している場合にも、電源回路10から一次コンデンサへの効率的な電力供給を実現することが可能となる。なお、本処理に係る予備的な一次コンデンサについては、第四の直列数調整処理に係る予備的な一次コンデンサと同義である。なお、上記S502、S503の処理は、直列状態切換部403によるものである。
【0073】
このように第一の直列数調整処理から第五の直列数調整処理が行われる電圧変換回路1では、振動発電装置11を含む電源回路10から一次コンデンサ群2への充電効率も良好に維持されることから、電圧変換回路1全体として、振動発電装置11から二次コンデンサへの電圧降下及び充電の効率は極めて良好なものとなる。また、一次コンデンサから二次コンデンサ6への充電については、各一次コンデンサの充電電圧を監視した上で二次コ
ンデンサ6への電荷移動が行われることから、一次コンデンサの容量に多少のばらつきが存在しても、適切な二次コンデンサの充電が実現される。
【0074】
<変形例>
上記の実施例においては、二次コンデンサ6は1個のコンデンサにより構成されたが、これを複数のコンデンサで構成しても構わない。また、コンデンサ同士の接続形態は直列、並列の何れでもよく、また直列、並列の組合せでもよい。この場合、一次コンデンサの充電電圧と二次コンデンサ6の充電電圧との間の上述の相関については、複数のコンデンサにより構成される二次コンデンサ全体と、一次コンデンサとの間で成立すれば、一次コンデンサから二次コンデンサ全体への効率的な電荷移動が可能である。また、負荷回路15と、二次コンデンサを構成する複数のコンデンサとの接続態様を適宜調整することで、電圧変換回路1が、負荷回路15に対する複数の出力電圧を有することになる。