(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サイドブーム上昇機能による旋回外側のサイドブーム(44)の上昇時間及び前記サイドブーム下降機能による旋回外側のサイドブーム(44)の下降時間を別々に設定可能な設定手段(139,140)を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤散布作業車。
前記開閉スイッチ検出手段(151)により開閉スイッチ(150)の閉操作が検出された場合でも、その後前記開閉スイッチ検出手段(151)により開閉スイッチ(150)の開操作が検出されると前記サイドブーム上昇機能及びサイドブーム下降機能による自動昇降制御を行う開閉スイッチ牽制解除機能を設けたことを特徴とする請求項4記載の薬剤散布作業車。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいてこの発明の実施態様について説明する。
図1に薬剤散布装置を前部に取り付けた薬剤散布作業車の側面図を示し、
図2には
図1の薬剤散布作業車の平面図を示す。なお、本明細書では薬剤散布作業車の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右という。
【0019】
薬剤散布作業車の車体(車体フレーム)1は、前輪12及び後輪13を軸装するアクスルハウジングをローリング自在に支持する。また、ハンドルポスト59により支持されたステアリングハンドル14の回転操作により前輪12を操向すると共にボンネット15下のエンジン(図示せず)によって伝動走行される。この車体1には操縦席17の後部から左右両側にわたって囲うように形成された薬液タンク18を車体1に対し着脱自在に搭載し、この薬液タンク18内の薬液を前側に設けられる散布ブーム19へ圧送する防除ポンプ65が車体1の操縦席17の下方に設けられている。
【0020】
操縦席17の左側下方でフロア54の上方に位置する薬液タンク18の左側部には、オペレータ一人が乗り降りできる程度の凹部Sが設けられ、該凹部Sの底面にタンク側ステップ50が設けられている。タンク側ステップ50の外側下方には、本機側ステップ53が設けられている。この本機側ステップ53は、上面53Aが、フロア54と薬液タンク18の底面とほぼ同一高さとなる位置にある。
【0021】
本機側ステップ53の下方には、フロア54から吊り下げ式に設置された梯子部材55が設けられている。梯子部材55は任意の段数、例えば2段のステップを有している。これらの梯子部材55、本機側ステップ53及びタンク側ステップ50は所定の間隔で配置されている。このような構成により、オペレータは、梯子部材55のステップ、本機側ステップ53及びタンク側ステップ50を順に登ることにより、安全かつ容易に操縦席17に到達して乗車できる。
【0022】
本機のフロア54に薬液タンク18を搭載する自走型薬剤散布作業車において、薬液タンク18は本機ダッシュパネル56付近まで前方に突出している。一方、薬液タンク18は上面視でオペレータの足元まで完全に覆い囲った略コの字状の構造を有している。このような構造により薬液タンク18の高さを増加させずにタンク容量を増大させると共に後進時の見通しを確保できる。また、薬液タンク18を前方に長くすることにより、薬液タンク18内の水量の変位による機体の重心移動を小さく抑え、薬剤散布作業時の機体バランスを安定させ、走行性能を高めることができ、機体が後傾して沈没するという事態を回避できる。
なお、
図2では薬液タンク18の上面が略コの字形状の略直方体形状のものを図示しているが、これに限定されず、タンク側ステップ50を有する形状であれば任意の形状にすることができる。
【0023】
薬液タンク18の先端部形状は、フロア54のフロントに上方へ浮き上がるように湾曲させた傾斜部51と密着するように形成されている。したがって、薬液タンク18を後方から前方へ移動させて傾斜部51で合致させて止めることができる。このような構造により前輪12の横揺れ等によるタイヤと薬液タンク18の干渉を防止でき、薬液タンク18の本機のフロア54上での接地性を高め、タンク18の安定性を高めることができる。
【0024】
前記車体1の前部には、ボンネット15の左右両側部に支持されたリフトリンク3が取り付けられている。リフトリンク3は、アッパリンク24とロワリンク25を平行状に配置して、この前端部間をヒッチブラケット4で連結し、後端部間を直立した支柱23に軸支して平行リンク形態に構成され、この平行リンクが昇降シリンダ27,27により先端部が昇降移動することで散布ブーム19の薬剤散布高さを調節することができる。
【0025】
ヒッチブラケット4の下端部には機体左右方向に伸びる支持枠21を取り付けている。この支持枠21には散布ブーム19の内のセンターブーム43がその前面に取り付けられており、またその左右端部に上方に突出したシリンダ取付支柱26が設けられ、シリンダ取付支柱26の上端には電気的に作動制御される油圧タンク付ソレノイドバルブ28を介して伸縮するローリングシリンダである上下シリンダ29の上端が取り付けられ、その下端にはサイドブーム44が回動自在に取り付けられている。したがって、上下シリンダ29の伸縮によりサイドブーム44が昇降される。なお、サイドブーム44は機体の両サイドに収納されるときはサイドブーム受け40で機体に支持される。
【0026】
前記散布ブーム19は、センターブーム43と、このセンターブーム43の外側に折畳可能に連結されるサイドブーム44とから構成され、各々薬液噴霧用の噴霧ノズル45(45a,45b)が一定間隔で配置されている。
【0027】
サイドブーム44はシリンダ取付支柱26を介してセンターブーム43に取り付けられているが、サイドブーム44はセンターブーム43に設けられた開閉シリンダ30により開閉される。開閉シリンダ30は電気的に作動するギヤードモータ31によって伸縮される。サイドブーム44の開閉角度は開閉シリンダ30の基部に設けたブーム角度右センサ138aとブーム角度左センサ138b(
図4)によって検出される。
また、サイドブーム44は基本ブーム44a(
図8)と伸縮ブーム44bとの組合体からなり、基本ブーム44aの基部側に設けた電動モータ46によって長手方向に伸縮可能である。
【0028】
図3には、
図1の薬剤散布作業車に設ける防除用コントローラパネル120の平面図を示す。
図3(a)には、表示部が小さめのコントローラパネル120を示す。
図3(a)に示すように、ボンネット15の上部に設けたコントローラパネル120には、中央上部のディスプレイ(表示部)122の左側に上位から散布設定123、圧力124、流量125、流量累計126等の表示部が表示されていて、複数の異なる散布条件を表示する構成である。ディスプレイ122の左端部に点灯されるインジケータ(三角マーク)122aによって、このディスプレイ122に表示されるデータ内容が指示される。ディスプレイ122の右側には表示切換用の表示切換ボタン128が設けられている。
【0029】
また、これらの下方には、散布条件に基づいて自動的に薬剤を散布する自動薬剤散布モード(以下、自動散布と省略していう場合がある)を設定するための自動スイッチ129が設けられ、この自動スイッチ129を押して自動の散布制御を行うとき(自動スイッチ129がオンのとき)は、パイロットランプ130が点灯する。自動スイッチ129が入りのときには、後述する車速センサ6の値が所定以上になると防除ポンプ65は自動駆動になる。
【0030】
また、この状態で、もう一度自動スイッチ129を押すと、パイロットランプ130が消灯して、手動で薬剤を散布する手動薬剤散布モード(以下、手動散布と省略していう場合がある)に切り換わる。手動散布では、防除ポンプ65の入り切りはポンプスイッチ8(
図4)の入り切りにより行う。また、手動散布では、停車中でも散布することができる。更に、散布設定スイッチ131、増減ボタンスイッチ132,133、累計リセットスイッチ134等が配置されている。
【0031】
手動散布では、メモリ102に記憶された散布条件及びそれ以外の散布条件を含めて各種の散布条件の何れを順次手動で表示切換ボタン128、散布設定スイッチ131、増減ボタンスイッチ132,133、累計リセットスイッチ134等により選択、変更して薬剤を散布できる。
【0032】
停車中や旋回中は各ブーム43,44に繋がる噴霧コック69(
図6)の開閉用レバー(図示しないが、各ブーム43,44用にある)を操作することで、任意のブーム43,44の散布を停止させることができる。また、自動散布でも、噴霧コック69の開閉用レバーを操作することで、任意のブーム43,44の散布を停止させることができる。
【0033】
なお、コントローラパネル120は、
図3(b)に示すように、表示部が大きめのものを採用しても良い。
図3(a)は一つずつの表示タイプであるが、
図3(b)はディスプレイ122に一括表示するタイプであり、
図3(a)に示すディスプレイ122とは違って、圃場番号、圃場面積、散布薬剤の種類、設定散布量、散布圧力、累計値が一つの画面に表示されるため、見やすく、分かりやすい。また、散布量スイッチ136を押すと薬剤の散布量を変更でき、圧力スイッチ137を押すと散布圧力を変更できる。コントローラパネル120は
図3(a)でも
図3(b)でもどちらを用いても良い。
【0034】
そして、オペレータによって自動スイッチ129が押されて自動制御が選択されると(自動スイッチ129を入りにする)、後述する車速センサ6等からの信号により散布(防除ポンプ65)の入り切りを行う。
【0035】
また、この薬剤散布作業車は、サイドブーム44,44を自動的に水平(水準器による水平)に動作させるための自動水平制御機能を有する制御装置100を備えている。ここで自動水平制御動作とは、開閉シリンダ30,30によりサイドブーム44,44をセンターブーム43の延長線上の水平方向(機体の進行方向に向かって左右方向)に開き、更に上下シリンダ29,29であるローリングシリンダを最大限伸ばした際に、サイドブーム44,44が水平状態になるように制御することをいう。ブーム昇降用の上下シリンダ29,29にはストロークセンサ(サイドブーム44の上昇と下降を検出するセンサ)9が設けられ(
図4)、ブーム全体は機体側に対して回動可能(左右ローリング)に構成している。すなわち、機体が左右方向に傾斜してもサイドブーム44,44を水平に維持する制御である。
【0036】
リフトリンク3にはサイドブーム44の傾斜を検出するリンク傾斜センサ82(
図4)と、サイドブーム44の傾斜の変化速度を検出するリンク傾斜角速度センサ83が設けられている。なお、リンク傾斜センサ82とリンク傾斜角速度センサ83は一個のセンサで両方の値を検出できるものでも良い。
【0037】
自動水平制御スイッチ(図示せず)を入り状態にすることで、ブーム全体を常時水平になるように制御する。リンク傾斜センサ82とリンク傾斜角速度センサ83が機体の傾斜を検出すると、この信号が制御装置100に送信されて、ブーム全体が水平になるように開閉シリンダ30,30を作動させるためのブーム水平ソレノイド(バルブ)34,34(
図4)を制御する。
【0038】
また、水平制御は、リンク傾斜センサ82のみで可能であるが、リンク傾斜角速度センサ83を用いることで水平制御の精度が向上する。機体がゆっくり傾斜しているのか、又は加速度的に傾斜しているのかを見て、水平制御に反映させることができる。
【0039】
次に上記構成の薬剤散布作業車の制御部について説明する。
図4には、
図1の薬剤散布作業車の制御ブロック図を示す。
この制御ブロック図に示すように、制御装置(CPU)100には薬剤散布作業車の車速を検出する車速センサ(車速検出手段)6、ステアリングハンドル14の回転操作に連動する左右の前輪12,12の操舵角θを検出する操舵角センサ(操舵角検出手段)7、薬剤散布の入り・切り用のポンプスイッチ(ポンプスイッチセンサ)8、ブーム昇降用の上下シリンダ29,29のストロークセンサ9、薬液の散布圧力を検出する圧力センサ11、薬液の流量を制御する流量制御弁73の弁開度センサ16、GPSアンテナ(受信機)81からの信号を受信する入力回路などが接続し、操舵装置(ハンドル14や車輪操舵用の油圧シリンダと該シリンダ作動用のソレノイド等からなる)のソレノイド(本実施例の薬剤散布作業車はFWS、4WS、RWSを装備しており、4輪全て油圧シリンダで動く構成である。)、昇降ソレノイド32(シリンダ29用)、水平ソレノイド34(開閉シリンダ30用)、ブザー36、ディスプレイ122への出力回路等が接続している。操舵角センサ7では旋回方向も検出され、旋回時に左右どちらのサイドブーム44を上昇させるかの判断に使用される。
【0040】
図5には、
図1の薬剤散布作業車の本機コントローラと防除機コントローラの構成図を示す。
図5に示すように、薬剤散布作業車(本機)のコントローラ100と薬液タンク18と薬剤散布用ブーム43,44と薬液ホース61,66などとその流量制御弁73などから構成される防除機B(
図6)のコントローラ101から本実施例のコントローラは構成され、本機のコントローラ100にはGPS受信機81が接続される。該GPS受信機81は複数のGPS衛星からの信号を受信し、本機の現在位置データとして記憶すると共に、時計回路で計測する所定時間毎に現在位置データを更新しながら移動距離を算出し、該時計回路による所定時間おきに速度、すなわち車速を本機コントローラ100にある車速算出手段5により算出する構成としている。また、本機コントローラ100には車軸の回転数から車速を検出する車速センサ6からも入力がある。
【0041】
本実施例の薬剤散布作業車では、該作業車に搭載して車速に連動して薬液を散布する防除機Bにおいて、薬液濃度と車速等により薬剤散布量を決めて防除ポンプ65の薬液吐出量を決める。なお、前記GPS受信機81はGPSからの車両速度情報と位置情報を得ることができる。
【0042】
図6には、
図1の薬剤散布作業車の薬剤散布配管系統の構成図を示す。
また、この薬剤散布作業車は、薬液タンク18からの給水路(ホース)61に給水コック62を設け、該給水コック62より下流の給水路(ホース)61に設けたサクションフィルタ64の出口部に防除ポンプ65を設けている。該防除ポンプ65の出口部には吐水ホース66を接続し、該吐水ホース66の先端は薬液路67を介して噴霧コック69の設置部に接続している。前記吐水ホース66と薬液路67の間に上流側から順に安全弁70とエアチャンバー71と流量制御弁73と流量センサ74が設置されている。
【0043】
また安全弁70の圧力設定部の吐水ホース66と薬液タンク18との間に余水ホース75が接続されている。前記安全弁70を開いておくと、吐水ホース66内の余分な薬液を薬液タンク18に還流させることができる。また、余水ホース75の設置部より上流側の吐水ホース66から分岐して薬液タンク18に接続した攪拌ホース79も設けられている。なお、流量制御弁73は
図4の制御ブロック図に示す流量制御モータ10により開度が制御される。
【0044】
薬液タンク18内の薬液は噴霧コック69を経由して前記センターブーム43、サイドブーム44に供給される。各ブーム43,44への薬液の単位面積(例えば10アール)当たりの供給量(A)は流量制御弁73で調整できる。
【0045】
GPS受信機81からの速度データや位置データを本機コントローラ100で受信し、該速度、位置データを演算して車速算出手段5により速度を算出し、得られた値を速度信号に変換した後、防除機コントローラ101にシリアル通信で車速算出手段5による車速(第1車速(VG))として送信する。また、本機には車軸の回転数を車速パルスで計測する車速センサ6が設けられており、該車速センサ6からも車速(第2車速(Vs))を得ることができる。こうしてGPS受信機81から得られる車速算出手段5に基づく第1車速(VG)と本機に設けた車速センサ6から得られる第2車速(Vs)を本機側のコントローラ100で計算し、CAN通信により防除機コントローラ101に速度データを送り、薬剤散布制御に利用する構成(薬剤散布機能)とする。
通常は、車両の発進直後と停止直前は車速センサ6に基づく第2車速(Vs)を車速とし、安定走行時にはGPSによる第1車速(VG)を車速とする場合が多い。
【0046】
ここで本実施例の薬剤散布の基本手順を説明する。
まず、オペレータが10アール当たりの散布量A(リットル/10アール)を決定し、次いで薬剤散布作業を開始すると、GPSに基づく第1車速(VG)と本機に設けた車速センサ6から得られる第2車速(Vs)がそれぞれ車速V(m/s)を検知する。そして制御装置100,101が前記第1車速(VG)と第2車速(Vs)(以下、単に車速(VG)、車速(Vs)という。)の中のどちらかの車速又は両方の車速に基づく10アール当たりの設定薬剤散布量Aに対応した薬液噴霧圧力を計算し、該計算圧力値と実際の吐水ホース66の圧力Pが一致するように流量制御弁73を制御して、ブーム43,44のノズル45a,45bからの薬剤散布量を変化させ、10アール当たりの薬剤散布量Aを設定して作業すれば、車速(VG,Vs)の変動があっても薬液流量が制御され、設定散布量通りに圃場に均一に薬液を散布できる。
【0047】
防除機コントローラ101に車速測定手段がなくても、防除機(薬剤散布装置)Bが連結される本機側の車速測定手段を用いて防除機Bでも車速(Vs)を測定することができるだけでなく、上記
図5に示す構成により、本実施例の防除機Bとは別の粉粒体肥料を散布する可変施肥装置等の薬剤散布装置(図示せず)に設けたコントローラを本機コントローラ100とは別に搭載している場合でも、可変施肥装置等の薬剤散布装置は、そのまま車速を使用することができる。
【0048】
図7には、
図1の薬剤散布作業車の薬剤散布制御のフローチャートを示す。
このとき得られる車速として
図7に示すように前記GPSで得られた車速算出手段5に基づく車速(VG)と本機の車速センサ6から得られる車速(Vs)の平均化を行い、その平均化された車速を防除機Bの車速とすることができる。
【0049】
GPSで得られた車速算出手段5に基づく車速(VG)と本機の車速センサ6から得られる車速(Vs)の平均化を行う理由は、電波の受信が不安定な場合(厚い雨雲、雪雲、地形の影響(谷、山のふもと)など)及びGPSの電波の精度が変更される場合があるため、GPSで得られる車速が不安定となる恐れがある一方で、車輪のスリップ時などを除いて車速センサ6の信頼性が高いので、GPSから得られた車速と車速センサ6で得られた車速(車速パルスを読み込んで車速を計算する)を平均化して求めた車速に基づき、圃場10アール当たりの設定薬剤散布量Aに対応した計算圧力値と実際の吐水ホース66の圧力Pが一致するように流量制御弁73を制御して、ブーム43,44のノズル45a,45bからの薬剤散布量を変化させることで、車速の変動があっても圃場10アール当たりの薬剤散布量Aを安定して散布することが可能となる。
【0050】
また、車速センサ6から得られた車速(Vs)が一定値(例えば0.3〜0.4m/s)以下のときは、GPSから得られた車速(VG)は防除機Bの薬剤散布量の算出用の制御に使用しないようにする。例えば、走行開始時の車速変化が不安定なときは、車速センサ6から得られた車速(Vs)を圃場10アール当たりの設定薬剤散布量Aに対応した薬剤散布圧力値の計算に利用して、GPSによる車速(VG)は利用しないようにすることで薬剤散布量の変動を抑えることができる。
【0051】
これは所定車速以下の低速での走行時には、GPSによる車速(VG)は車速センサ6による車速(Vs)よりも精度が悪くなるために、薬剤散布量が過剰になりすぎたり、逆に足りない状況が発生する。そこでGPSによる車速(VG)を用いないで、車速センサ6による車速(Vs)を用いる。
なお、走行開始後に車速センサ6で得られた車速(Vs)が一定値(例えば(0.3〜0.4m/s)を超えると、GPSによる車速(VG)に基づいて薬剤散布量を決めて散布を実行する。
【0052】
このように、本実施例の薬剤散布作業車は、車速センサ6から得られる車速又はGPS受信機81と車速センサ6から、それぞれ得られる速度情報を車速として設定散布量から設定圧力を計算し、車速と連動させてセンターブーム43とサイドブーム44から圃場に散布する薬液量を流量制御モータ10で駆動する開閉弁73の開度の調整をする構成を備えている。
【0053】
図8には、薬剤散布作業車の作業時の正面図を示し、
図9には、薬剤散布作業車の旋回時の平面図を示す。
薬剤散布作業車は、薬剤の散布作業中にはサイドブーム44を左右に拡げることで、広範囲に薬剤を散布できる。そして、本実施形態の薬剤散布作業車は、旋回開始時に操舵角センサ7により所定角度以上の旋回角度が検出され、すなわち旋回動作に入ったことが検出されると、旋回外側のサイドブーム44を自動的に上下シリンダ29により上昇させるサイドブーム上昇機能を有する制御装置100を備えている。このサイドブーム上昇機能によって、旋回時に旋回外側のサイドブーム44が畦畔に接触することを防止できる。
【0054】
更に、この制御装置100は、旋回終了時には、操舵角センサ7により所定角度以上の旋回角度が検出され、すなわち操舵角センサ7により再び旋回動作に入ったことが検出されると、旋回外側のサイドブーム44を自動的に上下シリンダ29により下降させるサイドブーム下降機能を有する。このサイドブーム下降機能によって、旋回外側のサイドブーム44が作業位置に戻り、速やかに散布作業を再開できる。これらの機能は自動昇降スイッチ141(
図4)をオンにすることで手動散布や自動散布にかかわらず、発揮される。
【0055】
手動昇降スイッチ142によりサイドブーム44を昇降させることも可能であるが、手動昇降スイッチ142を操作しなくても、上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御により、薬剤散布作業車の旋回開始時又は旋回終了時に旋回外側のサイドブーム44を自動的に上昇又は下降させることができるため、サイドブーム44の昇降動作を作業者に負担をかけることなく行える。
【0056】
また、薬剤の散布作業中は、手動散布では防除ポンプ65の駆動の入り切りを行うためのポンプスイッチ8がオン(入り)の状態である。また、自動散布では、自動スイッチ129が入りになっていて、車速センサ6等からの信号により防除ポンプ65が駆動されている。したがって、このような防除ポンプ65の駆動時に上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能は発揮される。なお、サイドブーム上昇機能による上昇時とサイドブーム下降機能による下降時には、手動散布ではポンプスイッチ8がオン(防除ポンプ65が駆動状態)であるが、前記コック開閉用レバーにより散布を停止する。また自動散布では、自動スイッチ129がオンであるが、流量制御モータ10により流量制御弁73の開度が制御されるため、薬液は散布されない。防除ポンプ65の駆動は、手動散布ではポンプスイッチ8の入り切りにより判断され、自動散布では自動スイッチ129の入り切りと車速センサ6からの信号により判断される。
【0057】
このような薬剤散布作業車において、サイドブーム44の上昇後の走行中にポンプスイッチ8を切りにした場合でも(例えば、防除ポンプ65周辺の状況確認などで走行停止する場合など)、その後の旋回終了時にはサイドブーム44を自動的に下降させることができるようにすると、サイドブーム44を上昇前の元の位置に戻すことが可能となる。
【0058】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図10に示す。このフローは、手動散布の場合である。
エンジンを始動して薬剤散布作業車の走行を開始すると、制御装置100によって薬液の散布中であるか否かを判断する。手動散布では、ポンプスイッチ8のオン又はオフによって判断される。
【0059】
ポンプスイッチ8がオン(薬液の散布中)の場合は、操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1とする、例えば95度)以上である場合は、旋回方向が左側又は右側の何れかであることを操舵角センサ7によって判定し、旋回外側のサイドブーム44の上昇処理を行い、上昇フラグをセット(オン)する。したがって、旋回外側のサイドブーム44が上昇する。操舵角センサ7による判定は、例えば電圧値が0Vから5Vの間で、直進が2.5Vと判定する。
【0060】
そして、上昇フラグのセット後にポンプスイッチ8のオフ操作が行われた場合は、防除ポンプ65の駆動が停止する。しかし、この場合でも、次に、再び操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1)以上である場合は、再び旋回方向が左側又は右側の何れかであることを判定し、先の旋回開始時と同じ方向である場合は、旋回外側のサイドブーム44の下降処理を行い、上昇フラグをクリア(オフ)する。なお、二度目の旋回方向の判定時に、一度目の旋回方向と違う方向が検出された場合は、下降処理を行わず、フローをリターンする。また、前記旋回開始時の判定角度と旋回終了時の判定角度をまとめて旋回判定角度といい、これらは同じ角度でも良いし、異なる角度でも良い。
【0061】
従来、作業時の旋回中に停止することはなく、停止するときは作業終了か又はトラブル時の回避等であると考えられていたことから、サイドブーム44の自動昇降制御は継続されず、サイドブーム44を下げる必要があれば手動昇降スイッチ142で下げられていた。しかし、本構成により、旋回を終了するとサイドブーム44を上昇前の元の位置に戻すことが可能となり、手動で戻さなくても済むため、作業性が向上する。
【0062】
そして、このように手動散布の場合は、防除ポンプ65の駆動をポンプスイッチ8で入り切りする。自動散布の場合は、自動スイッチ129を入りにする。そして、車速センサ6が所定速度を検出すると防除ポンプ65を駆動し、車速に応じて流量制御弁73で流量を調整しながら薬液を散布する。機体が停止すると、防除ポンプ65の駆動を停止する。なお、車速センサ6のみならず、上述したGPSに基づく第1車速(VG)と本機に設けた車速センサ6から得られる第2車速(Vs)の両方の車速に基づく制御でも良い。
また、自動薬剤散布モードでは、車速に連動して薬液を散布するため、走行散布中に旋回を開始すると自動的に流量制御弁73により散布を停止し(防除ポンプ65は駆動している)、旋回外側のサイドブーム44が上昇する。そして、旋回が終了するとサイドブーム44が下降して、薬液の散布を再開する。
【0063】
そして、上記サイドブーム上昇機能による旋回外側のサイドブーム44が上昇後に薬剤散布作業車が停止すると、防除ポンプ65の駆動が停止するが、このような場合でも、その後の旋回終了時にはサイドブーム44を自動的に下降させることができるようにすると、作業者が機体、圃場の作物、畦との距離などの様子を見ようとして一時的に停止した場合でもサイドブーム44を上昇前の元の位置に戻すことが可能となる。
【0064】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図11に示す。
このフローは、自動散布の場合であるが(自動スイッチ129が入り)、
図10に示すフローと、旋回外側のサイドブーム44の上昇処理を行い、上昇フラグをセット(オン)するまでは同じである。
【0065】
そして、上昇フラグのセット後に車速センサ6からの入力信号を読み込んで、車速を計算する。この車速が一定速度(旋回速度よりも小さくゼロに近い速度)以下である場合(基本的には走行停止)は、防除ポンプ65の駆動が停止する(ポンプ出力オフ)。その後、車速センサ6からの車速が一定速度以上になった場合は自動的に防除ポンプ65が駆動する(ポンプ出力オン)。次に、再び操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1)以上である場合は、再び旋回方向が左側又は右側の何れかであることを判定し、先の旋回開始時と同じ方向である場合は、旋回外側のサイドブーム44の下降処理を行い、上昇フラグをクリア(オフ)する。なお、
図11には図示していないが、
図10と同様に二度目の旋回方向の判定時に、一度目の旋回方向と違う方向が検出された場合は、下降処理を行わず、フローをリターンする。
【0066】
本構成により、薬剤散布作業車の旋回開始後に車両が停止して防除ポンプ65の駆動が停止した場合でも、走行を開始すれば、旋回終了時にはサイドブーム44を自動的に下降させることができる。
【0067】
また、上記サイドブーム上昇機能によるサイドブーム44の上昇速度及びサイドブーム下降機能によるサイドブーム44の下降速度は同じであるため、サイドブーム44の上昇後、元の位置に下降させるためには、サイドブーム44が下降位置(作業時の高さ)から上昇位置まで上昇作動する時間(以後、上昇時間という)とサイドブーム44が上昇位置から下降位置に戻るまでの時間(以後、下降時間という)は同じにする必要がある。
【0068】
しかし、サイドブーム44の昇降機構やサイドブーム44の昇降に用いられる上下シリンダ29などのアクチュエータの能力等にばらつきがある場合は、サイドブーム44の作業位置から上昇位置までの上昇高さと当該上昇位置から下降位置までの下降高さ(これら上昇高さと下降高さをまとめて昇降量という)が合わないことも想定される。
したがって、このような場合でも対処できるように、作業者が、この上昇時間と下降時間を別々に設定可能とすれば良い。
【0069】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図12に示す。
制御装置100によって、右側のサイドブーム44の上昇時間設定スイッチ139Rと右側のサイドブーム44の下降時間設定スイッチ140Rによるそれぞれの設定時間(各設定時間はメモリ102に記憶されている)を読み込み、右側のサイドブーム44の上昇時間と下降時間をセットする。
【0070】
なお、右側のサイドブーム44の上昇時間設定スイッチ139Rによる設定時間を読み込み、右側のサイドブーム44の上昇時間をセットした後、右側のサイドブーム44の下降時間設定スイッチ140Rによる設定時間を読み込み、右側のサイドブーム44の下降時間をセットしても良い。
【0071】
次に、左側のサイドブーム44の上昇時間設定スイッチ139Lと左側のサイドブーム44の下降時間設定スイッチ140Lによるそれぞれの設定時間を読み込み、左側のサイドブーム44の上昇時間と下降時間をセットする。この場合も、左側のサイドブーム44の上昇時間設定スイッチ139Lによる設定時間を読み込み、左側のサイドブーム44の上昇時間をセットした後、左側のサイドブーム44の下降時間設定スイッチ140Lによる設定時間を読み込み、左側のサイドブーム44の下降時間をセットしても良い。
【0072】
また、左右のサイドブーム44の上昇時間設定スイッチ139R,139Lと下降時間設定スイッチ140R,140Lの読み込みの順番は、左側のサイドブーム44のスイッチを先にしても良いし、上昇時間や下降時間のセットは下降時間のセットが先でもかまわない。そして、上昇時間設定スイッチ139R(139L)と下降時間設定スイッチ140R(140L)は一つのスイッチでも良い。
図4には、見やすいように、上昇時間設定スイッチ139と下降時間設定スイッチ140を一つずつ示している。
【0073】
更に、上昇時間と下降時間を個別に数値で設定しても良いし、下降時間が上昇時間のK倍(Kは1より小さい場合もあり、上昇時間よりも増える場合と減る場合がある)になるように制御装置100に算出機能を設けても良い。
【0074】
本構成により、サイドブーム44の昇降機構やサイドブーム44の昇降に用いられるアクチュエータの能力等にばらつきがある場合でも、上昇時間と下降時間を別々に設定できることから、作業者がサイドブーム44の上昇時間と下降時間とを異なる時間に変更してサイドブーム44の昇降量を合わせることが可能となる。
【0075】
一方、サイドブーム44の開閉シリンダ30を作動させるための開閉スイッチ150(
図4)を操縦席17の近傍に設け、作業者が開閉スイッチ150により一定時間サイドブーム44の閉操作を行った場合は、上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御を行わない構成(開閉スイッチ牽制機能)としても良い。開閉スイッチ150を操作中はサイドブーム44が動き、開閉スイッチ150から手を離すとサイドブーム44が停止する。
【0076】
サイドブーム44の閉操作をするということは、圃場間の移動時など、散布作業を行わない場合であるため、自動昇降制御は不要である。
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図13に示す。
エンジンを始動して薬剤散布作業車の走行を開始すると、制御装置100によって開閉スイッチ150の閉操作の有無を開閉スイッチセンサ151などの開閉スイッチ検出手段によって判断する。開閉スイッチセンサ151は、開閉スイッチ150の操作状態(開又は閉)を検出するセンサである。
【0077】
開閉スイッチセンサ151によって閉操作が検出された場合は、閉操作フラグをセット(オン)する。また、手動散布時又は自動散布時で防除ポンプ65が駆動している場合は、操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1)以上である場合は、旋回方向が左側又は右側の何れかであることを操舵角センサ7によって判定し、サイドブーム44の上昇準備に入るが、更にここで閉操作フラグのセットの有無を判定する。なお、先の閉操作により閉操作フラグがセットされているが、ここでの閉操作フラグのセットの有無は再確認のために行う。状況により戻す場合もあるからである。閉操作フラグのセット時には、フローをリターンし、すなわち上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御を行わない。
【0078】
一方、閉操作フラグがセットされていない場合は、上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御を行う。すなわち、旋回外側のサイドブーム44の上昇処理を行い、上昇フラグをセット(オン)する。したがって、旋回外側のサイドブーム44が上昇する。
【0079】
そして、上昇フラグのセット後に、再び操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1)以上である場合は、再び旋回方向が左側又は右側の何れかであることを判定し、先の旋回開始時と同じ方向である場合は、旋回外側のサイドブーム44の下降処理を行い、上昇フラグをクリア(オフ)する。
【0080】
なお、上昇フラグのセット後に防除ポンプ65の駆動が停止した場合でも、
図10に示すように、再び操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1)以上である場合は、再び旋回方向が左側又は右側の何れかであることを判定し、先の旋回開始時と同じ方向である場合は、旋回外側のサイドブーム44の下降処理を行い、上昇フラグをクリア(オフ)する。
【0081】
本構成により、一定時間閉操作があるということは、サイドブーム44を収納状態にして作業をしないことになるので、サイドブーム44を収納しての圃場間の移動時など、散布作業を行わない場合は、自動昇降制御が行われない。したがって、作業者が意図しないときにサイドブーム44が昇降することを防ぐことができ、安全性が向上する。このため作業者は走行操作に集中でき、作業効率が向上する。
【0082】
また、サイドブーム44の閉操作後に、作業者が開閉スイッチ150により一定時間サイドブーム44の開操作を行った場合は、先の閉操作フラグのセットを解除(クリア)して、上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御を再開する構成(開閉スイッチ牽制解除機能)としても良い。
【0083】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図14に示す。
開閉スイッチセンサ151によって開操作が検出された場合は、閉操作フラグをクリア(オフ)する。また、手動散布時又は自動散布時で防除ポンプ65が駆動している場合は、操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1)以上である場合は、旋回方向が左側又は右側の何れかであることを操舵角センサ7によって判定し、サイドブーム44の上昇準備に入るが、更にここで閉操作フラグのセットの有無を判定する。なお、先の開操作により閉操作フラグがクリアされているがここでの閉操作フラグのセットの有無は再確認のために行う。状況により閉じる場合もあるからである。閉操作フラグのセット時には、フローをリターンし、すなわち上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御を行わない。
【0084】
一方、閉操作フラグがセットされていない場合は、上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御を行う。閉操作フラグのセットの有無の判定以降は、
図13に示す場合と同様である。
【0085】
本構成により、圃場間の移動時など、散布作業を行わない場合は、自動昇降制御が行われないが、サイドブーム44の開操作を行うと、自動昇降制御が行われるようになるため、サイドブーム44が開いた後はスムーズに薬液の散布作業を再開できる。したがって、作業者は手動で昇降操作を行う必要がなく走行操作に集中でき、作業効率も向上する。
【0086】
一方、サイドブーム44の伸縮用の電動モータ46を作動させるための伸縮スイッチ152(
図4)を操縦席17の近傍に設け、作業者が伸縮スイッチ152により一定時間サイドブーム44の短縮操作を行った場合は、上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御を行わない構成としても良い。伸縮スイッチ152を操作中はサイドブーム44が動き、伸縮スイッチ152から手を離すとサイドブーム44が停止する。サイドブーム44の短縮操作をするということは、圃場間の移動時など、散布作業を行わない場合であるため、自動昇降制御は不要である。
【0087】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図15に示す。
エンジンを始動して薬剤散布作業車の走行を開始すると、制御装置100によって伸縮スイッチ152の短縮操作の有無を伸縮スイッチセンサ153などの伸縮スイッチ検出手段によって判断する。
【0088】
伸縮スイッチセンサ153によって短縮操作が検出された場合は、短縮操作フラグをセット(オン)する。また、手動散布時又は自動散布時で防除ポンプ65が駆動している場合は、操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1)以上である場合は、旋回方向が左側又は右側の何れかであることを操舵角センサ7によって判定し、サイドブーム44の上昇準備に入るが、更にここで短縮操作フラグのセットの有無を判定する。なお、先の短縮操作により短縮操作フラグがセットされているが、ここでの短縮操作フラグのセットの有無は再確認のために行う。状況により動かしている場合もあるからである。短縮操作フラグのセット時には、フローをリターンし、すなわち上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御を行わない。
【0089】
一方、短縮操作フラグがセットされていない場合は上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御を行う。すなわち、旋回外側のサイドブーム44の上昇処理を行い、上昇フラグをセット(オン)する。したがって、旋回外側のサイドブーム44が上昇する。
【0090】
そして、上昇フラグのセット後に、再び操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1)以上である場合は、再び旋回方向が左側又は右側の何れかであることを判定し、先の旋回開始時と同じ方向である場合は、旋回外側のサイドブーム44の下降処理を行い、上昇フラグをクリア(オフ)する。
【0091】
なお、上昇フラグのセット後に防除ポンプ65の駆動が停止した場合でも、
図10に示すように、再び操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1)以上である場合は、再び旋回方向が左側又は右側の何れかであることを判定し、先の旋回開始時と同じ方向である場合は、旋回外側のサイドブーム44の下降処理を行い、上昇フラグをクリア(オフ)する。
【0092】
本構成により、一定時間短縮操作があるということは、サイドブーム44を収納状態にして作業をしないことになるので、サイドブーム44を収納しての圃場間の移動時など、散布作業を行わない場合は、自動昇降制御が行われないことで、作業者が意図しないときにサイドブーム44が昇降することを防ぐことができ、安全性が向上する。このため作業者は走行操作に集中でき、作業効率が向上する。
【0093】
また、サイドブーム44の短縮操作後に、作業者が伸縮スイッチ152により一定時間サイドブーム44の伸張操作を行った場合は、先の短縮操作フラグのセットを解除(クリア)して、上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御を再開する構成としても良い。
【0094】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図16に示す。
伸縮スイッチセンサ153によって伸張操作が検出された場合は、短縮操作フラグをクリア(オフ)する。また、手動散布時又は自動散布時で防除ポンプ65が駆動している場合は、操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1)以上である場合は、旋回方向が左側又は右側の何れかであることを操舵角センサ7によって判定し、サイドブーム44の上昇準備に入るが、更にここで短縮操作フラグのセットの有無を判定する。なお、先の伸張操作により短縮操作フラグがクリアされているが、ここでの短縮操作フラグのセットの有無は再確認のために行う。短縮操作フラグのセット時には、フローをリターンし、すなわち上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御を行わない。
【0095】
一方、短縮操作フラグがセットされていない場合は、上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御を行う。短縮操作フラグのセットの有無の判定以降は、
図15に示す場合と同様である。
【0096】
本構成により、圃場間の移動時など、散布作業を行わない場合は、自動昇降制御が行われないが、サイドブーム44の伸張操作を行うと、自動昇降制御が行われるようになるため、サイドブーム44が伸張後はスムーズに薬液の散布作業を再開できる。したがって、作業者は手動で昇降操作を行う必要がなく走行操作に集中でき、作業効率も向上する。
【0097】
また、サイドブーム44に送液される薬液の流量は、流量センサ74によって検出される。そして、自動散布時に、流量センサ74によって検出される流量がほぼゼロになってから一定時間内に、操舵角が所定角度以上となる旋回開始動作が行われた場合は、上記サイドブーム上昇機能によってサイドブーム44が上昇するが、流量センサ74によって検出される流量がほぼゼロになってから一定時間内に旋回しない場合は、サイドブーム44が上昇しない構成としても良い。
【0098】
作業走行中であれば、流量がゼロになってから必ず一定時間内に旋回する。しかし、流量がゼロになってから一定時間内に旋回しないときは、作業をやめた走行(圃場内移動、圃場間移動等)である。これにより、作業以外での走行における不用意なサイドブーム44の上昇を防止できるようになる。
【0099】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図17に示す。
エンジンを始動して薬剤散布作業車の走行を開始すると、制御装置100によって薬液の散布中であるか否かを判断する。
【0100】
自動散布時に防除ポンプ65が駆動している場合(薬液の散布中)は、流量センサ74によって薬液の流量を検出し、流量がほぼゼロの場合はその時間を計測する。一定時間以内に操舵角θが所定角度(θ1)以上となる旋回開始動作が行われない場合は、フローをリターンし、すなわち上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御を行わない。
【0101】
一方、一定時間以内に上記旋回開始動作が行われた場合は、旋回方向が左側又は右側の何れかであることを操舵角センサ7によって判定し、旋回外側のサイドブーム44の上昇処理を行い、上昇フラグをセット(オン)する。したがって、旋回外側のサイドブーム44が上昇する。
【0102】
従来の薬剤散布作業車では、自動薬剤散布モードで防除ポンプ65が駆動していると、薬液の流量がゼロであっても自動昇降制御が行われてしまうが、本構成により、圃場間の移動時など、散布作業を行わない場合は、自動昇降制御が行われない。したがって、作業者が意図しないときにサイドブーム44が昇降することを防ぐことができ、安全性が向上すると共に、作業者は走行操作に集中できるため、作業効率が向上する。
【0103】
一方、旋回開始後の上昇フラグがセットされている場合は、流量センサ74によって検出される流量がほぼゼロになっても、サイドブーム44が上昇し続けているときはサイドブーム下降機能によってサイドブーム44が下降する構成としても良い。
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図18に示す。
エンジンを始動して薬剤散布作業車の走行を開始すると、制御装置100によって薬液の散布中であるか否かを判断する。
【0104】
自動散布時に防除ポンプ65が駆動している場合(薬液の散布中)は、操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1)以上である場合は、旋回方向が左側又は右側の何れかであることを操舵角センサ7によって判定し、旋回外側のサイドブーム44の上昇処理を行い、上昇フラグをセット(オン)する。したがって、旋回外側のサイドブーム44が上昇する。
【0105】
次に、流量センサ74によって薬液の流量を検出し、流量がほぼゼロの場合はその時間を計測する。流量がほぼゼロになってから一定時間経過しても、上昇フラグがセットされている場合(サイドブーム44が上昇し続けているとき)には再び操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1)以上である場合は、再び旋回方向が左側又は右側の何れかであることを判定し、先の旋回開始時と同じ方向である場合は、旋回外側のサイドブーム44の下降処理を行い、上昇フラグをクリア(オフ)する。すなわち、旋回終了と判断してサイドブーム44を自動下降する。
また、流量がゼロでない場合も、同様の処理が行われる。
【0106】
一方、流量がほぼゼロになってから一定時間経過して、且つ上昇フラグがセットされていない場合は、フローをリターンし、すなわちサイドブーム下降機能による下降制御は行われない。
【0107】
本構成により、薬剤散布作業車の旋回開始後に流量センサ74によって検出される流量がほぼゼロになっても、旋回終了時にはサイドブーム下降機能によってサイドブーム44が下降するため、上昇前の元の位置に戻すことができる。
【0108】
また、流量センサ74によって検出される流量がほぼゼロなってから一定時間内に旋回しないときは、サイドブーム上昇機能による上昇を行わないが、流量センサ74によって検出される流量が増えた場合はサイドブーム上昇機能による上昇とサイドブーム下降機能による下降を行う構成としても良い。
【0109】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図19に示す。
エンジンを始動して薬剤散布作業車の走行を開始すると、制御装置100によって薬液の散布中であるか否かを判断する。
【0110】
自動散布時に防除ポンプ65が駆動している場合(薬液の散布中)は、流量センサ74によって薬液の流量を検出し、流量がほぼゼロの場合はその時間を計測する。流量がほぼゼロになってから操舵角が所定角度以上となる旋回開始動作が行われない場合は、旋回外側のサイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御を中断して、再び流量センサ74によって薬液の流量を検出し、このときも流量がほぼゼロの場合はフローをリターンする。
【0111】
一方、最初の流量センサ74による流量の検出時で流量がゼロでない場合は自動昇降制御を行い、また、再度の流量センサ74による流量の検出時に流量が増えた場合(流量を感知した場合)は、自動昇降制御を再開する。
【0112】
本構成により、流量センサ74によって検出される流量がゼロから増えた場合は、サイドブーム44の自動昇降制御が行われることで、自動的に自動昇降制御を再開できるため、速やかに散布作業を再開でき、作業効率も向上する。
【0113】
また、本実施形態の薬剤散布作業車は、旋回開始時に操舵角センサ7により所定角度以上の旋回角度が検出され、すなわち旋回動作に入ったことが検出されると、旋回外側のサイドブーム44を自動的に上下シリンダ29により上昇させるサイドブーム上昇機能を有する制御装置100を備えているが、この所定角度以上の旋回角度が一定時間継続した場合にサイドブーム上昇機能を有効としても良い。
【0114】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図20に示す。
エンジンを始動して薬剤散布作業車の走行を開始すると、制御装置100によって薬液の散布中であるか否かを判断する。
【0115】
自動散布時に防除ポンプ65が駆動している場合(薬液の散布中)は、操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1)以上である場合は、その状態が継続する時間を計測する。そして、θ1以上の操舵角が一定時間継続した場合は、旋回方向が左側又は右側の何れかであることを操舵角センサ7によって判定し、旋回開始の判定がされ、旋回外側のサイドブーム44の上昇処理を行い、上昇フラグをセット(オン)する。したがって、旋回外側のサイドブーム44が上昇する。
【0116】
一方、操舵角センサ7による操舵角が所定角度以上であっても、一定時間以内にθ1未満となった場合は、旋回開始の判定はされず、すなわち旋回外側のサイドブーム44の上昇処理は行われず、再び操舵角センサ7によって操舵角θを検出する。
一旦操舵角が所定角度以上となっても、すぐに所定角度未満に戻る場合は、薬剤散布作業車が直進走行している場合が考えられる。
【0117】
したがって、本構成により、薬剤散布作業車が旋回時であるか又は直進走行時であるかの判断が確実に行え、直進走行時であるのにサイドブーム44が上昇するといった誤作動を防止することができる。前記操舵角センサ7のかわりにステアリングハンドル14の回転軸の基部に設けたハンドル角度センサ(図示せず)の検出値を用いても良い。
【0118】
また、旋回終了時にも同様に、所定角度以上の旋回角度が一定時間継続した場合にサイドブーム下降機能を有効としても良い。
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図21に示す。
このフローは、
図20に示すフローと、旋回外側のサイドブーム44の上昇処理を行い、上昇フラグをセット(オン)するまでは同じである。
【0119】
そして、再び操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1)以上であり、且つθ1以上の操舵角が一定時間継続した場合は、再び旋回方向が左側又は右側の何れかであることを判定し、先の旋回開始時と同じ方向である場合は、旋回外側のサイドブーム44の下降処理を行い、上昇フラグをクリア(オフ)する。
【0120】
一旦操舵角が所定角度以上となっても、すぐに所定角度未満に戻る場合は、薬剤散布作業車が直進走行している場合が考えられる。したがって、本構成により、薬剤散布作業車が旋回時であるか又は直進走行時であるかの判断が確実に行え、直進走行時であるのにサイドブーム44が上昇したり下降したりしてしまうといった誤作動を防止することができる。
【0121】
また、旋回時の旋回判定角度(θ1)を変更できれば、より圃場等の条件に適した昇降制御が可能となる。
【0122】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図22に示す。
このフローは、
図21に示すフローと、操舵角センサ7によって操舵角θを検出する前に設定された旋回判定角度を読み込み、旋回判定角度θ1をセットする点で異なるが、それ以外は同じである。なお、フロー右側の「θ1以上?」と「旋回方向判定」との間に「一定時間経過?」の条件が入っても良い。
【0123】
圃場状態によって、薬剤散布作業車の走行中にステアリングハンドル14の操作が必要な場合は、旋回判定角度を小さくしすぎると走行中にサイドブーム44が自動的に昇降してしまう。一方、旋回判定角度を大きくしすぎると旋回時のサイドブーム44の自動昇降が遅れてしまう。例えば、凹凸が激しい圃場、石が多い圃場、軟弱な圃場など、ハンドル操作が頻繁に必要な圃場の場合である。
【0124】
しかし、本構成により、旋回時の旋回判定角度(θ1)を変更可能とすることで、より圃場等の条件に応じた適切な旋回判定角度を設定できる。なお、前述のように旋回開始時と旋回終了時の旋回判定角度を同じ角度としても良いし、異なる角度としても良い。
また、薬剤散布作業車の後進時には、上記サイドブーム上昇機能とサイドブーム下降機能による自動昇降制御を行わない構成としても良い。
【0125】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図23に示す。
エンジンを始動して薬剤散布作業車の走行を開始すると、制御装置100によって薬液の散布中であるか否かを判断する。
【0126】
自動散布時に防除ポンプ65が駆動している場合(薬液の散布中)は、バックスイッチ(図示しない前後進レバーの後進側を検出するセンサ)160(
図4)のオン、オフを読み込み、バックスイッチ160がオンの場合はフローをリターンして自動昇降制御を行わない。
【0127】
一方、バックスイッチ160がオフである場合は、操舵角センサ7によって操舵角θが設定された旋回判定角度以上であるか否かを判定し、この角度が旋回判定角度(θ1)以上である場合は、旋回方向が左側又は右側の何れかであることを操舵角センサ7によって判定し、旋回外側のサイドブーム44の上昇処理を行い、上昇フラグをセット(オン)する。したがって、旋回外側のサイドブーム44が上昇する。次に、再び操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が旋回判定角度(θ1)以上である場合は、再び旋回方向が左側又は右側の何れかであることを判定し、先の旋回開始時と同じ方向である場合は、旋回外側のサイドブーム44の下降処理を行い、上昇フラグをクリア(オフ)する。
【0128】
また、このフローでは記載していないが、
図21や
図22に示すように、旋回判定角度(θ1)以上であることが一定時間継続した場合に旋回外側のサイドブーム44の昇降制御を行う構成でも良い。
本構成により、薬液の散布作業中に後進動作を行った場合でも、サイドブーム44が昇降してしまうといった誤動作を防止できる。
【0129】
また、旋回時のサイドブーム44の自動昇降制御は薬剤散布作業車の後進時には行われないが、サイドブーム44が上昇している場合に後進になっても自動昇降制御を継続する構成とすれば良い。
【0130】
旋回作業走行時は、通常、薬剤散布作業車は前進しているが、運転操作の関係で、途中で後進操作が入ることがある。例えば、ステアリングハンドル14の切り返しなどがある。このような場合は、サイドブーム44の自動昇降制御を継続することで、旋回が終了すると自動的にサイドブーム44が下降するため、操作性が悪くなることを防止できる。
【0131】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図24に示す。
このフローは、
図23に示すフローと、旋回外側のサイドブーム44の上昇処理を行い、上昇フラグをセット(オン)するまでは同じである。
【0132】
上昇フラグをセット後に、再びバックスイッチ160のオン、オフを読み込み、バックスイッチ160がオンの場合(後進時)は上昇フラグのセットの有無を判定する。上昇フラグのセット時(サイドブーム44が上昇している場合)には、再び操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が旋回判定角度(θ1)以上である場合は、再び旋回方向が左側又は右側の何れかであることを判定し、先の旋回開始時と同じ方向である場合は、旋回外側のサイドブーム44の下降処理を行い、上昇フラグをクリア(オフ)する。
【0133】
一方、上昇フラグがセットされていない場合は、フローをリターンしてサイドブーム44の下降処理は行わない。
本構成により、旋回外側のサイドブーム44が上昇している場合にステアリングハンドル14によって切り返して後進動作を行った場合でも、旋回終了時に自動的にサイドブーム44を下降させることができる。したがって、薬剤散布作業車の真の旋回時には確実にサイドブーム44を昇降でき、サイドブーム44の昇降動作を作業者に負担をかけることなく行える。