特許第5874366号(P5874366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5874366ディーゼルエンジンの動力発生方法及び動力発生システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874366
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジンの動力発生方法及び動力発生システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 5/02 20060101AFI20160218BHJP
   F02M 21/06 20060101ALI20160218BHJP
   F02M 26/22 20160101ALI20160218BHJP
   F02B 43/00 20060101ALI20160218BHJP
   F01B 31/04 20060101ALI20160218BHJP
   F01B 29/10 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   F01N5/02 F
   F02M21/06 A
   F02M25/07 580E
   F02B43/00 A
   F01B31/04
   F01B29/10
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-271302(P2011-271302)
(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公開番号】特開2013-122212(P2013-122212A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2014年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 毅
【審査官】 山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−144676(JP,A)
【文献】 特開2011−122542(JP,A)
【文献】 特開2009−275633(JP,A)
【文献】 特開2006−283699(JP,A)
【文献】 特開2012−082798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 5/02
F01B 29/10
F01B 31/04
F02B 43/00
F02M 21/06
F02M 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DMEからなる液化ガスを燃料とするディーゼルエンジンの燃料から動力を発生させる動力発生方法であって、
前記液化ガスを燃料タンクからEGRクーラーに送出し、その送出された液化ガスを前記EGRクーラーで気化させ、気化して生成したガスの圧力の少なくとも一部を動力に変換し、圧力低下後の前記ガスを液化して前記燃料タンクへ戻すことを特徴とするディーゼルエンジンの動力発生方法。
【請求項2】
前記生成したガスの圧力を、回転軸にクランク機構を介して連結するピストンを有するシリンダを備えた動力変換装置を通じて回転動力に変換し、圧力低下後の前記ガスを液化して前記燃料タンクへ戻す請求項1に記載のディーゼルエンジンの動力発生方法。
【請求項3】
DMEからなる液化ガスを燃料とするディーゼルエンジンの燃料から動力を発生させる動力発生システムであって、
前記液化ガスが貯留する燃料タンクから送液管を通じてEGRクーラーへ液化ガスを送出する送出ポンプと、前記EGRクーラーに送気管を通じて接続する動力変換装置と、前記動力変換装置と前記燃料タンクとを接続する接続管に取り付けられた冷却器とを備えることを特徴とするディーゼルエンジンの動力発生システム。
【請求項4】
前記動力変換装置を、それぞれ開閉可能な供給口及び排出口を有するシリンダと、前記シリンダ内を上下に摺動可能であってクランク機構を介して回転軸に連結するピストンとから構成した請求項3に記載のディーゼルエンジンの動力発生システム。
【請求項5】
前記回転軸にフライホイールを取り付けた請求項4に記載のディーゼルエンジンの動力発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの動力発生方法及び動力発生システムに関し、更に詳しくは、エンジン性能を低下させることなく、ディーゼルエンジンにおいて動力を発生することができるディーゼルエンジンの動力発生方法及び動力発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排ガスによる大気汚染の対策として、従来からの燃料である軽油の代わりに、ジメチルエーテル(DME)などの液化ガスを使用することが検討されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
一方、同じくディーゼルエンジンの排ガスによる大気汚染の対策としては、排ガスの一部を吸気に還流させることで、燃焼温度を低く抑えて窒素酸化物(NOx)の生成を抑制する排ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)が広く実用化されている。このEGRでは、吸気中における空気量の減少を防ぐために、排気管から吸気管へ接続するEGR通路の途中に水冷式のEGRクーラーを設置して、還流する排ガスを冷却して体積を減少させるようになっている。つまり結果的には、EGRでは排ガスの熱エネルギーの一部が無駄に廃棄されていることになる。
【0004】
ところで、一般に自動車では、エアコンのコンプレッサなどの種々の装置を動かすために、エンジンにより駆動されるクランク軸から動力を得ている。しかし、そのようにエンジンのクランク軸から動力を取り出すと、クランク軸に加わる負荷がエンジンのフリクションとなって、燃費などのエンジン性能を低下させてしまうという問題がある。このことは、DMEを燃料とする自動車(通称、DME自動車)においても同様である。
【0005】
そこで発明者は、EGRにおいて無駄に廃棄されている熱エネルギーに着目し、その熱エネルギーを利用して種々の装置を動かすようにすることで、上述したエンジン性能の低下という問題を解決することができる本発明を完成するに至ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−239651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、液化ガスを燃料とするディーゼルエンジンから、エンジン性能を低下させることなく動力を発生させることができるディーゼルエンジンの動力発生方法及び動力発生システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明のディーゼルエンジンの動力発生方法は、DMEからなる液化ガスを燃料とするディーゼルエンジンの燃料から動力を発生させる動力発生方法であって、前記液化ガスを燃料タンクからEGRクーラーに送出し、その送出された液化ガスを前記EGRクーラーで気化させ、気化して生成したガスの圧力の少なくとも一部を動力に変換し、圧力低下後の前記ガスを液化して前記燃料タンクへ戻すことを特徴とするものである。
【0009】
上記のディーゼルエンジンの動力発生方法においては、生成したガスの圧力を、回転軸にクランク機構を介して連結するピストンを有するシリンダを備えた動力変換装置を通じて回転動力に変換し、圧力低下後のガスを液化して燃料タンクへ戻すようにする。そのようにすることで、排ガスの熱エネルギーを容易に回転動力に変換することができる。
【0010】
また、上記の目的を達成する本発明のディーゼルエンジンの動力発生システムは、DMEからなる液化ガスを燃料とするディーゼルエンジンの燃料から動力を発生させる動力発生システムであって、前記液化ガスが貯留する燃料タンクから送液管を通じてEGRクーラーへ液化ガスを送出する送出ポンプと、前記EGRクーラーに送気管を通じて接続する動力変換装置と、前記動力変換装置と前記燃料タンクとを接続する接続管に取り付けられた冷却器とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
上記のディーゼルエンジンの動力発生システムにおいては、動力変換装置を、それぞれ開閉可能な供給口及び排出口を有するシリンダと、そのシリンダ内を上下に摺動可能であってクランク機構を介して回転軸に連結するピストンとから構成する。そのようにすることで、簡易かつ安価な機構で排ガスの熱エネルギーを回転動力に変換することができる。また、その回転軸にフライホイールを取り付けることで、フライホイールの慣性で回転軸を連続的かつ安定的に回転させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のディーゼルエンジンの動力発生方法によれば、ディーゼルエンジンのクランク軸から動力を取り出さずに、排ガスの熱エネルギーを利用して、燃料である液化ガスから動力を発生するようにしたので、エンジンのフリクションが低減するため、エンジン性能を低下させることなく動力を発生させることができる。
【0013】
また、本発明のディーゼルエンジンの動力発生システムによれば、従来の排ガス浄化装置を利用して、燃料である液化ガスから動力を発生するようにしたので、エンジン性能を低下させることなく、かつ低コストで動力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態からなるディーゼルエンジンの動力発生システムの構成図である。
図2】DMEの蒸気圧曲線である。
図3】動力変換装置の構成図である。
図4】動力変換装置の動作を説明する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態からなるディーゼルエンジンの動力発生システムを示す。
【0017】
ディーゼルエンジン1の燃料タンク2内に貯留するDMEからなる液化ガス3は、燃料配管4を通じて送られた高圧ポンプ5によりコモンレール6内で蓄圧され、噴射ノズル7を通じて複数の気筒8内に噴射される。そして、吸気管9から吸気マニホールド10を経て気筒8内に吸気され圧縮された空気で燃焼・膨張し、エンジンピストン11を往復動させてクランク軸を回転駆動する。気筒8から排気された燃焼ガスは、排気マニホールド12を経て排気管13へ送られるが、その一部は吸気管9へ接続するEGR通路14にEGRガスとなって分流する。EGR通路14には、EGRガスを冷却するEGRクーラー15と、EGRガスの流量を調整するEGR弁16とが順に配設されている。
【0018】
本発明のディーゼルエンジンの動力発生システムは、燃料タンク2から送液管17を通じてEGRクーラー15へ液化ガス3を送出する送出ポンプ18と、EGRクーラー15から延びる送気管19に接続する動力変換装置20と、その動力変換装置20と燃料タンク2とを接続する接続管21に取り付けられた冷却器22とを備えるものである。
【0019】
送液管17と送気管19とは、EGRクーラー15の冷却水流路の入口及び出口にそれぞれ接続し、従来の冷却水の代わりに液化ガス3がEGRクーラー15内を流れるようになっている。動力変換装置20は、気体の圧力を動力に変換する機能を有している。また、冷却器22としては、表面に多数のフィンが形成された高伝熱性の容器などが例示される。なお、図1では、送出ポンプ18を燃料タンク2内に設置しているが、送液管17の途中に設けるようにしてもよい。
【0020】
このようなディーゼルエンジンの動力発生システムを用いた動力発生方法を以下に説明する。
【0021】
燃料タンク2内に貯留する液化ガス3の一部は、送出ポンプ18によりEGRクーラー15へ送出される。そして、EGRクーラー15において排ガスの排気熱により気化蒸発してガス化するとともに、その際の蒸発潜熱により排ガスを冷却する。ディーゼルエンジン1の排ガスの温度は、通常は350K程度であるため、例えば液化ガス3にDMEを用いた場合には、図2に示すように、約2MPaの圧力を有するガスに気化する。
【0022】
生成したガスは、気化時の圧力により送気管19を通じて動力変換装置20へ流れ、その圧力の少なくとも一部が動力に変換される。発生した動力は、エアコンのコンプレッサなどの種々の装置(図示せず)を動かすのに用いることが可能である。圧力が低下したガスは、接続管21に取り付けられた冷却器22において冷却されて液化し、再び液化ガス3となって燃料タンク2に戻る。
【0023】
このように、ディーゼルエンジン1の排ガス浄化装置であるEGRクーラー15を用い、排ガスの熱エネルギーを利用して、燃料である液化ガス3から動力を発生させるようにしたので、ディーゼルエンジン1のクランク軸から動力を取り出す必要がなくなってエンジンのフリクションが低減するため、エンジン性能を低下させることなく動力を発生させることができるのである。
【0024】
動力変換装置20は、図3に示すように、送気管19にバルブ23を介して接続する供給口24と、接続管21にバルブ25を介して接続する排出口26を有するシリンダ27と、そのシリンダ27内を上下に摺動可能であってクランク機構28を介して回転軸29に連結するピストン30とから構成することが望ましい。クランク機構28は、回転軸29の外周に固定された環状板31と、その環状板31及びピストン30のそれぞれに回動自在に連結する連接棒32とから構成される。
【0025】
この動力変換装置20の動作を、図4に基づいて以下に説明する。なお、図4においては、バルブ23、25の開放及び閉止状態を、それぞれ白抜き及び黒塗りすることで示している。
【0026】
まず、ピストン30が上死点にあるときに、供給口24側のバルブ23を開放すると、送気管19からガスがシリンダ27内に導かれる(図4(a))。そして、導入されたガスの圧力によりピストン30が押し下げられる(図4(b))。次に、ピストン30が下死点になったときに供給口24側のバルブ23を閉止し、かつ排出口26側のバルブ25を開放する(図4(c))。そして、ピストン30が下死点を通過して上昇すると、ガスが排出口26からバルブ25を通じて接続管21へ排出される(図4(d))。このような一連の行程を繰り返すことでピストン30が往復動してクランク機構28を通じて回転軸29を回転させるので、ガスの圧力を回転動力に変換する。この変換された回転動力により、種々の装置を動かすことができる。
【0027】
上述したバルブ23、25の開閉制御は、ディーゼルエンジン1の運転条件の変化に対応できるように、ECUを利用したデジタル制御により行うことが好ましい。またバルブ23、25の駆動方式としては、電磁弁や、クラッチを用いてクランク軸と着脱可能にしたカム駆動方式などが例示される。
【0028】
このように動力変換装置20を構成することで、液化ガス3が気化したガスの圧力を簡易かつ安価な機構で容易に回転動力へ変換することができる。また、回転軸29にフライホイールを取り付けることで、フライホイールの慣性により回転軸29を連続的かつ安定的に回転させることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 ディーゼルエンジン
2 燃料タンク
3 液化ガス
4 燃料配管
5 高圧ポンプ
6 コモンレール
7 噴射ノズル
8 気筒
9 吸気管
10 吸気マニホールド
11 エンジンピストン
12 排気マニホールド
13 排気管
14 EGR通路
15 EGRクーラー
16 EGR弁
17 送液管
18 送出ポンプ
19 送気管
20 動力変換装置
21 接続管
22 冷却器
23、25 バルブ
24 供給口
26 排出口
27 シリンダ
28 クランク機構
29 回転軸
30 ピストン
31 環状板
32 連接棒
図1
図2
図3
図4