(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本願出願人は、先に操作面に入力された操作力の位置を特定するために、操作面の周縁に操作位置に応じた力を伝達する変位伝達面を有した起歪体と、当該変位伝達面の変位を検出する歪検出部とを有する入力装置を出願した。(特願2010−200887参照)。この先の出願に記載の入力装置をステアリングに搭載する場合、操作面の周縁に配置された起歪体が操作面のステアリングのリム部に近接した位置への設置を妨げるおそれがあることが、特許出願人の研究によって明らかとなった。操作面のリム部に近接した位置への設置が妨げられると、運転者がリム部を把持した状態での操作面の操作が困難となる。
【0005】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、ステアリングを運転者が把持した状態で操作情報を入力することができる車両用入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発
明は、ステアリングシャフトに固定され、ステアリングシャフト
を回転中心として回転するコア部と、コア部の
外周側に円弧状に設けられ、利用者によって把持されるリム部とを備える操舵装置に設けられ、車両に搭載された車載機器を操作するための操作情報を入力可能な車両用入力装置において、
コア部に設けられる筐体と、
筐体に設けられ、利用者によって操作される操作面を有する操作体と、
筐体に設けられ
、操作体の周縁に接続するため
に板状の一端に形成される接続部
、筐体に固定するため
に板状の他の一端に形成される固定部、及び接続部と固定部との間に、操作面に対する利用者による押圧により発生する操作力に応じて変位する変位伝達面を形成する伝達面形成部を有する少なくと
も3個以上の起歪体と、
起歪体の変位伝達面上に設けられ、起歪体の変位に伴う変位伝達面の歪を検出する歪検出部と、
歪検出部のそれぞれの歪検出結果に基づいて、操作面において操作力が作用した位置と力をそれぞれ操作位置と操作力として算出するとともに、その算出した操作位置と操作力を操作情報として車載機器に出力する出力手段と、を備え、
操作体
は、少なくとも一部が複数の起歪体の各固定部よりもリム部側に突き出るように配置されて
おり、
リム部に最も近い一対の起歪体のそれぞれの接続部を操作面の重心と結んだ線同士の回転中心側のなす角度は、180度よりも小さく、
他の起歪体は、一対の起歪体間において回転中心側に配置されていることを特徴とする
。
また、請求項5に記載の発明は、ステアリングシャフトに固定され、ステアリングシャフトとともに回転するコア部と、コア部の外周側に設けられ、利用者によって把持されるリム部とを備える操舵装置に設けられ、車両に搭載された車載機器を操作するための操作情報を入力可能な車両用入力装置において、
コア部に設けられる筐体と、
筐体に設けられ、利用者によって操作される操作面を有する操作体と、
筐体に設けられ、操作体の周縁に接続するために板状の一端に形成される接続部、筐体に固定するために板状の他の一端に形成される固定部、及び接続部と固定部との間に、操作面に対する利用者による押圧により発生する操作力に応じて変位する変位伝達面を形成する伝達面形成部を有する少なくとも3個以上の起歪体と、
起歪体の変位伝達面上に設けられ、起歪体の変位に伴う変位伝達面の歪を検出する歪検出部と、
歪検出部のそれぞれの歪検出結果に基づいて、操作面において操作力が作用した位置と力をそれぞれ操作位置と操作力として算出するとともに、その算出した操作位置と操作力を操作情報として車載機器に出力する出力手段と、を備え、
操作体は、少なくとも一部が複数の起歪体の各固定部よりもリム部側に突き出るように配置されており、
操作体は、操作面を有する操作本体部と、操作本体部の周縁部から外周側に突出する複数の操作面接続部とを有し、
操作面接続部の先端部には、少なくとも一つの起歪体の接続部が接続されており、
起歪体のうち、二つの起歪体のそれぞれの接続部同士は一体となっており、
一体となった接続部が操作面接続部の先端部に接続されていることを特徴としている。
また、請求項8に記載の発明は、ステアリングシャフトに固定され、ステアリングシャフトとともに回転するコア部と、コア部の外周側に設けられ、利用者によって把持されるリム部とを備える操舵装置に設けられ、車両に搭載された車載機器を操作するための操作情報を入力可能な車両用入力装置において、
コア部に設けられる筐体と、
筐体に設けられ、利用者によって操作される操作面を有する操作体と、
筐体に設けられ、操作体の周縁に接続するために板状の一端に形成される接続部、筐体に固定するために板状の他の一端に形成される固定部、及び接続部と固定部との間に、操作面に対する利用者による押圧により発生する操作力に応じて変位する変位伝達面を形成する伝達面形成部を有する少なくとも3個以上の起歪体と、
起歪体の変位伝達面上に設けられ、起歪体の変位に伴う変位伝達面の歪を検出する歪検出部と、
歪検出部のそれぞれの歪検出結果に基づいて、操作面において操作力が作用した位置と力をそれぞれ操作位置と操作力として算出するとともに、その算出した操作位置と操作力を操作情報として車載機器に出力する出力手段と、を備え、
操作体は、少なくとも一部が複数の起歪体の各固定部よりもリム部側に突き出るように配置されており、
伝達面形成部において接続部側の端部には、接続部に向かうに従い接続部側の端部の幅が拡大する基端側テーパ部が形成され、
伝達面形成部において固定部側の端部には、固定部に向かうに従い固定部側の端部の幅が拡大する先端側テーパ部が形成されていることを特徴としている。
また、請求項11に記載の発明はステアリングシャフトに固定され、ステアリングシャフトとともに回転するコア部と、コア部の外周側に設けられ、利用者によって把持されるリム部とを備える操舵装置に設けられ、車両に搭載された車載機器を操作するための操作情報を入力可能な車両用入力装置において、
コア部に設けられる筐体と、
筐体に設けられ、利用者によって操作される操作面を有する操作体と、
筐体に設けられ、操作体の周縁に接続するために板状の一端に形成される接続部、筐体に固定するために板状の他の一端に形成される固定部、及び接続部と固定部との間に、操作面に対する利用者による押圧により発生する操作力に応じて変位する変位伝達面を形成する伝達面形成部を有する少なくとも3個以上の起歪体と、
起歪体の変位伝達面上に設けられ、起歪体の変位に伴う変位伝達面の歪を検出する歪検出部と、
歪検出部のそれぞれの歪検出結果に基づいて、操作面において操作力が作用した位置と力をそれぞれ操作位置と操作力として算出するとともに、その算出した操作位置と操作力を操作情報として車載機器に出力する出力手段と、を備え、
操作体は、少なくとも一部が複数の起歪体の各固定部よりもリム部側に突き出るように配置されており、
筐体は、起歪体において変位伝達面とは反対側の面に対し、所定の隙間を介在させる形で対向する変形規制部を有することを特徴としている。
【0007】
こ
れらの発明によれば、
操作体は、少なくとも一部が複数の起歪体の各固定部よりもリム部側に突き出ている。これによれば、車両用入力装置を、コア部に設ける際、リム部から
の各起歪体の位置を、操作体に比べより遠くに位置させることができる。よって、操作体をリム部に極力近づけて配置させることができる。
【0008】
操作体と各起歪体と位置関係を請求項1のようにして操作体をリム部に極力近づけようとした場合、リム部において操作体に対応する部分が外周側に凸となる円弧状となっていると、起歪体がリム部に干渉しやすくなる。その結果、操作体をよりリム部に近づけて配置させるのが妨げられる可能性がある。
【0009】
そこで、請求項
1の発明では
、リム部に最も近い一対の起歪体のそれぞれの接続部
を操作面の重心と結んだ線同士
の回転中心側のなす角度を180度よりも小さくし、他の起歪体を一対の起歪体間においてステアリングシャフトの回転中心側に配置させるようにした。これによれば、リム部が円弧状であったとしても、起歪体のリム部への干渉の発生を抑制することができる。したがって、操作体を、さらにリム部側に極力近づけて配置させることができる。
【0010】
請求項
2の発明では、操作体の操作面を二次元直交座標系X−Y平面とした場合、歪検出部は、操作面に操作力が作用したときのX軸周りに発生するモーメント及びY軸周りに発生するモーメント、並びに操作面に対して垂直な方向の力に応じた変位伝達面の歪を検出し、
出力手段は、X軸周りに発生するモーメント及びY軸周りに発生するモーメント、並びに操作面に対して垂直な方向の力に応じた歪検出結果に基づいて、操作位置を算出することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、操作体は操作面の周縁に設けられた起歪体を介して筐体に支持されているので、操作面を利用者が押圧操作すると、操作体が傾斜、又は押圧方向に移動して筐体に対する位置が変位する。このように操作面が変位すると、操作面を二次元直交座標系X−Y平面とした場合、X軸周り及びY軸周りのモーメント、並びに操作面に垂直な方向の力に応じて変位伝達面が変位する。このため、歪検出部は、これらモーメント及び垂直な方向の力に応じた歪を検出することとなる。また、この変位(移動又は傾斜の度合い)は、操作面への操作力の作用位置(操作位置)に応じて変化するため、歪検出部の検出結果は、これらモーメント及び垂直な方向の力に応じたものとなる。そして、出力手段では、歪検出部の上記検出結果に基づき操作位置を算出している。以上により、本発明によれば、操作面に対する操作位置を的確に算出することができる。
【0012】
請求項
3の発明では、操作面と全ての変位伝達面とが略同一平面上に位置していることを特徴とする。
【0013】
例えば、脚部等を介して変位伝達面の位置する平面よりも高さ方向にずれた位置に、操作面が配置される場合、操作面に操作力が作用したときに操作面に沿った方向の力(水平方向の力)が作用しても操作面が傾斜してしまうので、歪検出部の検出結果に水平方向の力による歪の影響が含まれてしまう可能性がある。したがって、操作面が変位伝達面の位置する平面よりも高さ方向にずれた位置に配置される場合では、この水平方向の力による影響を排除するために出力手段での演算が複雑となる可能性がある。
【0014】
それに対し、請求項
3の発明によれば、操作面と全ての変位伝達面とが略同一平面上に位置しているので、歪検出部の検出結果に上述したように水平方向の力による歪の影響が含まれるのを抑制することができる。これによれば、出力手段での操作位置の演算を簡略化することができる。また、請求項
3の発明のように操作面と変位伝達面とが略同一平面上に位置すると、起歪体がリム部に干渉しやすくなるおそれがあるが、操作面に対する起歪体の配置は請求項
1に記載の配置となっているので、起歪体のリム部への干渉が発生し難くなる。
【0015】
請求項
4の発明では、伝達面形成部は、操作面に操作力が作用すると、操作力において操作面に対して垂直な方向の力に応じ、前記筐体に固定された前記固定部を基準に曲って変形する曲げ変形を生じさせるような弾性変形が発生する弾性変形体であり、
歪検出部は、各変位伝達面に生じる変位伝達面の面内方向の弾性変形量を検出し、
前記出力手段は、その弾性変形量に基づいて、前記操作面に対して垂直な方向の力を算
出することを特徴とする。
【0016】
弾性変形体は、操作面に操作力が作用すると、操作力において操作面に対して垂直な方向の力に応じて曲げ変形する。弾性変形体の曲げ変形により、変位伝達面には、面内方向に弾性変形が発生する。歪検出部は、変位伝達面に生じる当該伝達面の面内方向の弾性変形量を検出する。以上のことから、歪検出部が検出した弾性変形量は、操作面に対して垂直な方向に応じたものとなる。したがって、出力手段は、弾性変形量に基づいて、操作面に対して垂直な方向の力を算出することができるのである。
【0017】
請求項
5及び6の発明では、操作体は、操作面を有する操作本体部と、操作本体部の周縁部から外周側に突出する複数の操作面接続部とを有し、
操作面接続部の先端部には、少なくとも一つの起歪体の接続部が接続されていることを特徴とする。
【0018】
こ
れらの発明によれば、操作面に操作力が作用すると、その操作力は操作面接続部に集中することとなる。操作面接続部の先端部には起歪体の接続部が接続されているので、操作面接続部に集まった力を確実に起歪体の変位伝達面に伝えることができる。
【0019】
請求項
5及び7の発明では、起歪体のうち、二つの起歪体のそれぞれの接続部同士は一体となっており、一体となった接続部が操作面接続部の先端部に接続されていることを特徴とする。
【0020】
こ
れらの発明によれば、3個以上の起歪体のうち二つの起歪体の接続部同士が一体となり、その一体となった接続部が操作面接続部の先端部に接続されているので、起歪体の接続部の総数が減ることとなる。したがって、操作面接続部の総数を減らすことができる。また、起歪体の接続部の総数が減ることによれば、操作体に起歪体を接続させる際、同一平面上に操作面と変位伝達面とを配置させることが容易となる。
【0021】
請求項8
及び9の発明では、
伝達面形成部において接続部側の端部には、接続部に向かうに従い接続部側の端部の幅が拡大する基端側テーパ部が形成され、伝達面形成部において固定部側の端部には、固定部に向かうに従い固定部側の端部の幅が拡大する先端側テーパ部が形成されることを特徴とする。これらの発明によれば、伝達面形成部において接続部側及び固定部側の端部の剛性が高まり、起歪体の耐力が向上するので、車両用入力装置における操作力の許容量を大きくすることができる。
【0022】
請求項
10の発明では、
基端側テーパ部において、伝達面形成部の軸線とのなす角度のうち接続部側の角度が、30度以上60度以下であり、先端側テーパ部において、伝達面形成部の軸線とのなす角度のうち固定部側の角度が、30度以上60度以下であることを特徴とする。
【0023】
各テーパ部において、伝達面形成部の軸線とのなす角度が大きいほど、剛性が高まるが、操作力に対する伝達面形成部の変形量が少なくなるので、歪検出部の検出感度が低下するおそれがある。
【0024】
そこで、請求項10の発明では、それぞれのテーパ部において、伝達面形成部の軸線とのなす角度のうち接続部側の角度、及び固定部側の角度を、30度以上60度以下とした。このことによれば、伝達面形成部の両端部の剛性を高めることと、歪検出部の検出感度の低下抑制を両立することができる。
【0025】
請求項11
及び12の発明では、
筐体は、伝達面形成部において変位伝達面とは反対側の面に対し、所定の隙間を介在させる形で対向する(第二の)変形規制部を有することを特徴とする。これらの発明によれば、操作面に過大な操作力が作用したときに、伝達面形成部が損傷するのを抑制することができる。
【0027】
請求項
13及び14の発明では、
筐体は、操作体の操作面の裏面に対し、所定の隙間を介在させる形で対向する(第一の)変形規制部を有することを特徴とする。これらの発明によれば、操作面に過大な操作力が作用したときに、操作体が損傷するのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0030】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による入力装置100について
図1〜
図8を用いて説明する。車両の操舵装置としてのステアリング200は、ステアリングシャフト280に接続される。運転者がステアリング200を回転させることにより車両の車輪が転舵する。ステアリング200は、ステアリングシャフト280に接続され、当該シャフト280とともに回転するコア部220と、コア部220の周縁に設けられ、運転者に把持されるリム部240とを備える。車両に搭載の車載機器(例えば、ナビゲーション装置等)の操作のための操作情報を運転者が入力可能な入力装置100が、コア部220においてリム部240の近接した位置に設けられる。
【0031】
入力装置100は、筐体50、操作体10、起歪体20、検出素子30、信号処理部40等から構成されている。
【0032】
筐体50は、コア部220に固定され、操作体10、起歪体20、検出素子30、アクチュエータ60、及び信号処理部40を支持する。筐体50は、四つの起歪体20のそれぞれの一端を支持する(
図2及び
図3参照)。起歪体20には、操作体10が接続されている。また、
図3に示すように、筐体50が起歪体20を支持した状態では、起歪体20の固定部24を除く部分、及び操作体10と、筐体50の底部52との間には隙間Dが形成される。この隙間Dは、後述する操作体10の操作面14に運転者による操作力が作用した状態であっても、起歪体20及び操作体10が底部52に接触しない程度のものとなっている。また、底部52は、操作体10の操作面14の裏面に対向する部位に、所定の隙間を介して第一の変位規制部としての第一の規制部54を有する。また、底部52は、後述する起歪体20の伝達面形成部26において伝達面26aとは反対側の面に対向する部位に、所定の隙間を介して第二の変位規制部としての第二の規制部56を有する。また、筐体50にはアクチュエータ60が取り付けられており、アクチュエータ60が作動することで筐体50自体が振動する。
【0033】
操作体10は、運転者によって操作される部材であり、運転者の指が触れる部位がコア部220に形成された開口部260から露出する。操作体10は、円盤状の本体部12、及び本体部12の周縁部から外周側に突出する二つの突出部18を有する。本体部12の運転者側の表面には、操作面14が形成される。本体部12及び突出部18は、一体形成されている。突出部18の一方は、
図3に示すように、操作面14の重心16を原点とするX−Y座標系のX軸上に形成され、他方は、Y軸上に形成されている。また、突出部18は、重心16に対してリム部240とは反対側に形成されている。また、重心16と、突出部18それぞれとを結ぶ線同士のなす角度のうち、ステアリングシャフト280の回転中心側の角度が、略90度となっている。
【0034】
起歪体20は、筐体50に設けられ、操作面14に対する運転者による押圧により発生する操作力に基づいて、弾性変形する部材である。入力装置100は、四つの起歪体20を有する。各起歪体20は、板状に形成されており、接続部22、固定部24、及び伝達面形成部26を有する。なお、伝達面形成部26は、操作面14に操作力が作用すると、操作力において操作面14に対して垂直な方向の力に応じて曲げ変形を生じさせるような弾性変形が発生する弾性変形体である。接続部22は、起歪体20の一端に設けられ突出部18の先端部に接続される。固定部24は、起歪体20の他の一端に設けられ筐体50に固定される。伝達面形成部26は、接続部22と固定部24との間に設けられ表面に伝達面26aを形成する。伝達面26aは、操作面14に対する運転者による押圧により発生する操作力に応じて変位する面である。固定部24が筐体50に固定された状態で操作面14に操作力が作用すると、操作体10は操作力の作用する位置に応じて、押圧方向に移動、又は筐体50に対して傾斜し、変位する。この操作体10の変位が突出部18を介して接続部22に伝達される。これにより、伝達面形成部26は、固定部24を固定端とし、曲って変形するように曲げ変形し、伝達面26aを変位させる。このため、伝達面26aには、面内方向に弾性変形することとなる。
【0035】
本実施形態では、
図2に示すように、二つの起歪体20が一方の突出部18の先端部に接続され、残りの二つの起歪体20が他方の突出部18の先端部に接続されている。二つの起歪体20は、各起歪体20の接続部22から伝達面形成部26を介して固定部24に向かって延びる軸線が一つの線上に配置されるように各起歪体20の接続部22同士が付き合わされた状態で、突出部18に接続される。各起歪体20の軸線は、突出部18の突出方向に対して交差している。なお、各起歪体20の軸線は、突出方向に対して直交するのが好ましい。
【0036】
図3に示すように、操作面14と、全ての伝達面26aとが略同一平面上に位置している。また、突出部18に各起歪体20が接続されることにより、各起歪体20は、平面視において、リム部240に近い一対の起歪体20におけるリム部240側の端部同士を結んだ線(
図2に示す破線)よりも、操作体10におけるリム部240側の端部がリム部240側に突き出るように配置される(
図2参照)。
【0037】
さらに、本実施形態では、操作面14の重心16と、リム部240に近い一対の起歪体20のそれぞれの接続部22とを結んだ線(
図2に示す一点鎖線)同士のステアリングシャフト280における回転中心側のなす角度θ0が180度よりも小さくなっている。なお、本実施形態においてリム部240に近い一対の起歪体20は、
図2に示す右上の起歪体20と左下の起歪体20となっている。さらに、本実施形態では、一対の起歪体20間においてステアリングシャフト280の回転中心側に他の二つの起歪体20が配置される。なお、本実施形態では、
図2に示す一点鎖線によって形成されるなす角度が約90度となっている。
【0038】
例えば、
図4に示すように、操作面14の重心16からX軸方向にx1、Y軸方向にy1の位置に、操作面14に対して垂直な方向(Z方向)の力F
zが作用したとする。操作面14への力F
zの作用により、X軸上に形成された突出部18には、X軸上の突出部18をX軸方向からみて時計回りのモーメントm
z1が発生するとともに、操作体10の裏面に向かう操作面14に対して垂直な方向の力f
z1が発生する。また、Y軸上に形成された突出部18には、Y軸上の突出部18をY軸方向からみて時計回りのモーメントm
z2が発生するとともに、操作体10の裏面に向かう操作面14に対して垂直な方向の力f
z2が発生する。これらモーメント、及び操作面14に対して垂直な方向の力は、接続部22を介して伝達面26aに伝達し、伝達面26aが伝達面26aの面内方向に変位する。伝達面26aが面内方向に変位することにより、伝達面26aには引張り応力、又は圧縮応力が発生する。
【0039】
各検出素子30は、伝達面26a上に設けられ、伝達面26aの面内方向に発生する引張り応力、及び圧縮応力に基づいた歪を弾性変形量として検出し、その弾性変形量に応じた後述のブリッジ電圧Voutを信号処理部40に出力する。各検出素子30は、四つのエレメント30a〜30dを有しており、固定部24側にエレメント30a、30bが並び、接続部22側にエレメント30c、30dが並ぶようにかつ、伝達面26aに発生する引張り及び圧縮応力が発生する位置に配置される(
図5参照)。なお、
図5及び
図6に示す起歪体20及び検出素子30は、
図2において右上のものを示している。
【0040】
各エレメント30a〜30dの抵抗値は、
図6に示すように、力f
zが起歪体20に作用して各エレメント30a〜30dの搭載位置に発生する応力、即ち弾性変形量に応じて抵抗値が変化する。例えば、引張り応力が発生し、伝達面26aが伸び方向に弾性変形するエレメント30a、30bの抵抗値は減少し、圧縮応力が発生し、伝達面26aが縮み方向に弾性変形するエレメント30c、30dの抵抗値は増加する(
図6、
図8参照)。エレメント30a〜30dの等価回路は、ブリッジ回路として表され、各エレメント30a〜30dの抵抗値の変化に応じて、ブリッジ電圧Voutが変化する(
図7参照)。以上により、各起歪体20に設けられた検出素子30毎のブリッジ電圧Voutに基づいて、モーメントm
z1、m
z2、力f
z1、及び力f
z2を算出することができる。
【0041】
なお、操作面14に沿った方向(水平方向)に力が作用する場合、エレメント30a〜30dの搭載位置での応力は、全て引張り応力か圧縮応力となるので、ブリッジ電圧Voutに変化はない。したがって、この検出素子30は、この水平方向の力に対しては感度を持たない。
【0042】
アクチュエータ60は、運転者が入力装置100を操作するときに、筐体50を振動させ、その振動を運転者の指に伝える。例えば、運転者が操作面14を押圧操作したときに、メカニカルスイッチを押したような感覚を運転者に与えるために、アクチュエータ60は筐体50を振動させる。これにより、入力装置100の操作性が向上する。また、車両側から何らかの警告を運転者に伝える際にもアクチュエータ60が筐体50を振動させるようにしても良い。
【0043】
信号処理部40は、例えば周知のCPU、ROM、RAM、及びA/D変換回路等の信号処理回路等を含むコンピュータハードウエアとして構成されている。そして、CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することで、入力装置100としての機能を実現する。例えば、検出素子30からの信号(ブリッジ電圧Vout)から、モーメントm
z1、m
z2、力f
z1、及び力f
z2を算出するとともに、操作面14への操作力と操作位置とを算出する。そして、算出した操作力及び操作位置を操作情報として、車載機器に出力する。
【0044】
続いて、入力装置100による操作位置の算出原理を、
図4に示す位置に操作力が作用する場合で説明する。操作面14に作用する垂直な力F
zは下記の数式1に示すように力f
z1、及び力f
z2の合力である。また、操作力が作用したときの操作体10におけるY軸周りのモーメントの釣り合いの式(数式2)、X軸周りのモーメントの釣り合いの式(数式3)が一般的に知られている。なお、数式2及び数式3において、値wは、重心からそれぞれの突出部18の先端までの距離の合計となっている。これら数式1〜数式3を用いて、x1及びy1についてまとめると、数式4及び数式5を求めることができる。これらの数式4及び数式5に、信号処理部40によって算出されたモーメントm
z1、m
z2、力f
z1、及び力f
z2を代入することにより、x1及びy1、即ち、操作力が作用する操作位置を求めることができる。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【0045】
以上のように構成された入力装置100によれば、平面視において、操作体10におけるリム部240側の端部は、リム部240に最も近い一対の起歪体20におけるリム部240側の端部同士を結んだ線(
図2の破線参照)よりも、リム部240側に突き出ている。これによれば、入力装置100をコア部220に設ける際、リム部240からの各起歪体20の位置を、操作体10に比べより遠くに位置させることができる。よって、操作体10をリム部240に極力近づけて配置させることができる。このことによれば、運転者がリム部240を把持した状態で、親指等の指を操作面14に触れさせることができる。
【0046】
操作体10のリム部240側の端部を、単に
図2に示す破線よりもリム部240側に突き出るように操作体10と各起歪体20との位置関係を規定しても、本実施形態のようにリム部240において操作体10に対応する部分が外周側に凸となる円弧状となっていると、起歪体20がリム部240に干渉しやすくなる。その結果、操作体10をよりリム部240に近づけて配置させるのが妨げられる可能性がある。
【0047】
そこで、本実施形態では、操作面14の重心16と、リム部240に最も近い起歪体20のそれぞれの接続部22とを結んだ線同士のステアリングシャフト280における回転中心側のなす角度を180度よりも小さくし、さらに他の起歪体20を一対の起歪体20間においてステアリングシャフト280の回転中心側に配置させるようにした。これによれば、操作体10の形状を同じとした場合、起歪体20を操作面14に対して対向配置させたものよりも、操作面14のリム部240側の端部の突き出し量をより多くすることができ、起歪体20のリム部240への干渉の発生を抑制することができる。したがって、リム部240が円環状又は円弧状となっている場合であっても、操作体10を、さらにリム部240側に極力近づけて配置させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、操作体10の操作面14の周縁に設けられた起歪体20を介して筐体50に支持されているので、操作面14を運転者が押圧操作すると、操作体10が傾斜、又は押圧方向に移動して筐体50に対する位置が変位する。本実施形態のように操作面14を二次元座標系X−Y平面とした場合、操作面14において、X軸周り及びY軸周りのモーメント、並びに垂直方向の力に応じて伝達面26aが変位する。このため、検出素子30は、これらモーメント及び垂直な方向の力に応じた歪を検出することとなる。また、この伝達面26aの変位は、操作面14への操作位置に応じて変化するため、検出素子30の検出結果は、これらモーメント及び垂直な方向の力に応じたものとなる。そして、信号処理部40では、上記検出結果に基づき操作位置を算出している。以上により、本実施形態によれば、操作面14に対する操作位置を的確に算出することができる。
【0049】
例えば、脚部等を介して伝達面26aの位置する平面よりも高さ方向にずれた位置に、操作面14が配置される場合、操作面14に操作力が作用したときに操作面14に沿った方向の力(水平方向の力)が作用しても操作面14が傾斜してしまうので、検出素子30の検出結果に水平方向の力による歪の影響が含まれてしまう可能性がある。この水平方向の力は、操作位置とは関係の無いものであり、操作位置の算出を行うにあたって不要である。したがって、操作面14が伝達面26aの位置する平面よりも高さ方向にずれた位置に配置される場合では、この水平方向の力による影響を排除するために出力手段での演算が複雑となる可能性がある。
【0050】
本実施形態によれば、操作面14と全ての伝達面26aとが略同一平面上に位置しているので、検出素子30の検出結果に上述したように水平方向の力による歪の影響が含まれるのを抑制することができる。これによれば、信号処理部40での操作位置の演算を簡略化することができる。
【0051】
また、このように操作面14と伝達面26aとの位置関係を規定すると、起歪体20がリム部240に干渉しやすくなるおそれがあるが、操作面14に対する起歪体20の配置は
図2に示すように操作体10のリム部240側よりも内側に配置となっているので、起歪体20のリム部240への干渉が発生し難くなる。
【0052】
本実施形態では、操作面に操作力が作用すると、操作力において操作面に対して垂直な方向の力に応じて曲げ変形する弾性変形体が伝達面形成部26となっている。これによれば、弾性変形体(伝達面形成部26)の曲げ変形により、伝達面26aには、面内方向に弾性変形が発生する。本実施形態では、伝達面形成部26の伝達面26a上に設置される検出素子30が、面内方向に発生する弾性変形量を検出している。以上のことから、検出素子30が検出した弾性変形量は、操作面14に対して垂直な方向に応じたものとなる。したがって、信号処理部40は、この弾性変形量に基づいて、操作面14に対して垂直な方向の力を算出することができるのである。
【0053】
本実施形態では、突出部18の先端部に二つの起歪体20の接続部22を接続するようにしている。操作面14に操作力が作用すると、その操作力は突出部18に集中することとなる。したがって、突出部18の先端部に起歪体20が接続されているので、突出部18に集まった力を確実に起歪体20の伝達面26aに伝えることができる。
【0054】
また、本実施形態では、二つの起歪体20の接続部22同士は、一体となっており、その一体となった接続部22が突出部18の先端部に接続されている。このことによれば、接続部22の総数が減るので、操作体10に形成する突出部18の数を減らすことができる。また、起歪体20の接続部22の総数が減ることによれば、操作体10に起歪体20を接続させる際、同一平面上に操作面14と伝達面26aとを配置させることが容易となる。
【0055】
本実施形態において筐体50の底部52に設けられた第一の規制部54によれば、操作面14に通常の操作力よりも大きい過大の操作力が作用したときに、操作体10が損傷するのを抑制することができる。また、筐体50の底部52に設けられた第二の規制部56によれば、操作面14に通常の操作力よりも大きい過大の操作力が作用したときに、伝達面形成部26が損傷するのを抑制することができる。
【0056】
(第2実施形態)
第2実施形態は、各起歪体20の伝達面形成部26の形状が第1実施形態のものと異なる。
図9に示すように、第2実施形態において伝達面形成部26には、基端側テーパ部26bと先端側テーパ部26cとが形成される。基端側テーパ部26bは、伝達面形成部26の接続部22側に形成され、接続部22に向かうに従い幅が拡大するように形成されている。先端側テーパ部26cは、固定部24に向かうに従い幅が拡大するように形成されている。これによれば、伝達面形成部26において接続部22側及び固定部24側の端部の剛性が高まり、起歪体20の耐力が向上するので、入力装置100における操作力の許容量を大きくすることができる。
【0057】
また、本実施形態では、基端側テーパ部26bは、伝達面形成部26の軸線Lとのなす角度のうち、接続部22側の角度を30度以上60度以下としている。また、先端側テーパ部26cは、伝達面形成部26の軸線Lとのなす角度のうち、固定部24側の角度を30度以上60度以下としている。これによれば、伝達面形成部26の両端部の剛性を高めることができるとともに、伝達面形成部26の操作力に対する変形を適度に発生させることができる。したがって、伝達面形成部26の剛性を高めるとともに、操作力に対する検出感度の低下を抑制することができる。
【0058】
(第3実施形態)
第3実施形態は、起歪体20の配置が第1実施形態のものと異なる。第3実施形態では、
図10に示すように、三つの突出部18が本体部12より突出している。そして、それぞれの突出部18に対して一つずつ起歪体20が接続されている。この場合であっても、リム部240に近い一対の起歪体20のリム部240側の端部を結んだ線(
図10の破線参照)よりも、操作体10におけるリム部240側の端部が突き出ている。
【0059】
さらに、本実施形態では、操作面14の重心16と、リム部240に近い一対の起歪体20のそれぞれの接続部22とを結んだ線(
図10に示す一点鎖線)同士のステアリングシャフト280における回転中心側のなす角度θ3が180度よりも小さくなっている。さらに、残りの起歪体20は、一対の起歪体20間においてステアリングシャフト280の回転中心側に配置されている。
【0060】
以上のように、三つの起歪体20を配置させても、第1実施形態と同じ様な作用効果を奏する。また、起歪体20の伝達面形成部26の構造を第2実施形態のようにしても良い。本実施形態では、起歪体20は三つであるが、操作位置の検出は三つの起歪体20さえあれば、操作面14に作用する垂直方向の力、X軸周り及びY軸周りのモーメントを算出することができるので、操作力の操作位置を的確に算出することができる。
【0061】
(第4実施形態)
第4実施形態では、
図11に示すように、操作体10の背後に液晶パネル等の表示器70が設置されている。表示器70と操作体10との間にはシール部材72が設けられ、操作体10は光透過物によって形成されている。表示器70は、車載機器に応じた操作ボタン画像が表示されるようになっている。運転者は表示されたボタン画像を見ながら入力装置100を操作することができる。これにより、運転者は直感的に入力装置100を操作することができるので、操作性が向上する。このような実施形態であっても、起歪体の配置を第1、第3実施形態のように配置させることにより、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態の構造を起歪体に採用することにより、第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0062】
(第5実施形態)
第5実施形態は、操作面14の形状が第1実施形態のものと異なる。第5実施形態では、
図12及び
図13に示すように、操作面14に溝部14aが形成されている。このように、溝部14aが操作面14に形成されることによれば、操作面14において指が触れたおおよその位置を目視すること無く運転者は把握することができる。このような実施形態であっても、起歪体の配置を第1、第3実施形態のように配置させることにより、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態の構造を起歪体に採用することにより、第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0063】
(第6実施形態)
第6実施形態は、操作面14bの形状が第1実施形態のものと異なる。第6実施形態では、
図14及び
図15に示すように、操作面14bの表面を隆起させている。このように、操作面14bの表面を隆起させることによれば、操作面14bにおいて指が触れたおおよその位置を目視することなく運転者は把握することができる。このような実施形態であっても、起歪体の配置を第1、第3実施形態のように配置させることにより、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態の構造を起歪体に採用することにより、第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0064】
(その他の実施形態)
以上、本発明による第1〜第5実施形態について説明したが、本発明は、上記先の実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0065】
第1実施形態では、リム部240の形状を円環状のものとして説明した。リム部240の形状は、コア部220の外周側に配置され、運転者が把持することができれば直線状のものであっても良いし、円弧状のものであっても良い。これによっても、第1実施形態〜第6実施形態の作用効果を奏する。