(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のPONブランチのうちの1つに各々が属する複数の光回線終端装置のうちのいずれかを送信先とする通信データを、PONブランチ群毎に多重して複数系列の多重データを生成する多重化手段と、
前記通信データ毎に前記PONブランチに対応する送信波長を指定する波長指定手段と、
前記多重データを構成する通信データの各々を当該指定された送信波長を搬送波として送信する複数の送信手段と、
当該送信された通信データの各々をその送信波長に応じて前記複数のPONブランチのうちのから選択した1つに送出する選択送出手段と、
前記通信データのトラフィック量に基づいて前記PONブランチ群に含まれるPONブランチの組合せを変更する組合せ変更手段と、を含む収容局装置であって、
前記組合せ変更手段は、
前記通信データの総トラフィック量の平均値を断続的に算出する平均値算出手段と、
前記平均値の変化に基づいて閾値を設定する閾値設定手段と、
前記PONブランチの各々についての要求帯域の加算値が前記閾値を超えないように前記複数のPONブランチのうちのいずれかを組み合わせて前記PONブランチ群とする組合せ手段と、を含むことを特徴とする収容局装置。
複数のPONブランチのうちの1つに各々が属する複数の光回線終端装置から光伝送路を介して到来した通信データをその送信波長に応じて複数の出力ポートのうちから選択した1つに多重して送出する選択送出手段と、
前記出力ポートの1つを介して前記通信データを各々が受信する複数の受信手段と、
前記光回線終端装置の各々の要求帯域に基づいて前記複数のPONブランチをPONブランチ群に群分けする群分け手段と、
前記PONブランチ群の1つからの前記通信データの各々が前記選択送出手段により前記出力ポートの1つに送出されるように前記光回線終端装置の各々に対して前記送信波長を指定する送信波長指定手段と、を含む収容局装置であって、
前記群分け手段は、
前記光回線終端装置の総要求帯域の平均値を断続的に算出する平均値算出手段と、
前記平均値の変化に基づいて閾値を設定する閾値設定手段と、
前記PONブランチの各々についての現在要求帯域の加算値が前記閾値を超えないように前記複数のPONブランチを組み合わせて前記PONブランチ群とする組合せ手段と、を含むことを特徴とする収容局装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施例について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
<第1の実施例>
図1には、本発明の実施例である収容局装置10の構成が示されている。収容局装置10は、波長分割多重(WDM)技術と時分割多重(TDM)技術とを併用するPONシステムにおいて通信事業者側の光回線終端装置(OLT:Optical Line Terminal)として動作し、光ファイバ等の光伝送路30−1〜30−M(Mは2以上の整数)を介して加入者側の光ネットワークユニットであるONU群40−1〜40−Mを収容している。ONU群40−1〜40−MはそれぞれPONブランチB−1〜B−Mに属している。上位ネットワークである通信網20からONU群40−1〜40−Mへの通信方向を「下り」と称し、その逆方向を「上り」と称する。
【0013】
以下、下り方向通信時の実施例について説明する。
【0014】
L2スイッチ11は、上位ネットワークである通信網20から到来したデータ(以下、下りデータと称する)を受信してONU毎のデータに分離する。なお、本実施の形態に係る通信網20の代わりにデータを生成するサーバ等の装置がL2スイッチ11と接続してもよい。
【0015】
バッファ12a−1〜12a−N(Nは2以上の整数)は、当該分離されたデータをONU毎に蓄積する。
【0016】
管理部13は、L2スイッチ11又はバッファ12a−1〜12a−Nを監視し、ONU毎のトラフィック量からPONブランチB−1〜B−M毎の要求帯域を算出する。そして、管理部13は、当該要求帯域に基づいてPONブランチB−1〜B−Mを複数のPONブランチ群に群分けする。管理部13は、PONブランチ群に含まれるPONブランチの組合せを周期的又は断続的に変更する(組合せ変更手段)。管理部13は、PONMAC14にその組合せを通知する。以下、当該通知を組合せ通知と称する。また、管理部13は、後述するPONMAC14からのタイムスロット構成通知に基づいて、各タイムスロットに割り当てられたデータについての送信波長指定を送信部15a−1〜15a−Nの各々に対して行う(波長指定手段)。
【0017】
PONMAC14は、バッファ12a−1〜12a−Nに蓄積されている下りデータを、管理部13からの組合せ通知が示すPONブランチ群毎に時分割多重して複数系列の時分割多重データを生成する(多重化手段)。また、PONMAC14は、下りデータが時分割多重されたタイムスロットの構成を示す情報の通知(タイムスロット構成通知)を管理部13に与える
送信部15a−1〜15a−Nは、時分割多重された下りデータを、当該下りデータ毎に指定された送信波長を搬送波として送信する。送信波長の指定は管理部13によってなされる。送信部15a−1〜15a−Nは、例えばレーザーダイオードからなる。
【0018】
WDM15c−1〜15c−Nは、送信部15a−1〜15a−Nによって送信されたデータの戻り光が受信部15b−1〜15b−Nに影響することを防止する為に、光伝送路30−1〜30−Mを介して到来した上りデータについて波長選択を行なう。
【0019】
AWG16は、当該送信された下りデータの各々を、その送信波長に応じて光伝送路30−1〜30−Mのうちのから選択した1つを方路として送出する(選択送出手段)。
【0020】
図2には、管理部13の構成が示されている。
【0021】
要求帯域算出部13aは、L2スイッチ11におけるONU毎の通過トラフィック量、又は、バッファ12a−1〜12a−Nに蓄積されたONU毎のトラフィック量を監視し、ONU毎の要求帯域(以下、ONU要求帯域と称する)を周期的又は断続的に算出する。更に、要求帯域算出部13aは、全てのONUについてのONU要求帯域を加算して総要求帯域を算出する。
【0022】
ONU要求帯域をtraffic(t,n)とすると(tは最小時間単位、nはONUの総数)、総要求帯域all_traffic(t)は以下の式により算出される。
【0024】
また、要求帯域算出部13aは、ONU要求帯域からPONブランチB−1〜B−Mの各々についての要求帯域(以下、ブランチ要求帯域と称する)を算出する。ある1つのPONブランチについてのブランチ要求帯域は、当該1つのPONブランチに属するONUの各々のONU要求帯域を加算することにより得られる。
【0025】
記憶部13bは、要求帯域算出部13aによって周期的又は断続的に算出された総要求帯域を記憶する。また、記憶部13bは、後述の閾値更新部13cによって算出された平均要求帯域についても記憶する。
【0026】
閾値更新部13cは、更新時刻が到来する毎に設定閾値を更新する。更新時刻は一定の更新間隔毎に到来する。詳細には、閾値更新部13cは、先ず、更新時刻が到来したときに、記憶部13bに記憶されている総要求帯域を用いて、更新間隔内(前回の更新時刻から現在の更新時刻までの間)に含まれる総要求帯域の平均値(以下、平均要求帯域と称する)を算出する。算出された平均要求帯域は、記憶部13bに記憶される。
【0027】
更新間隔をTとすると、平均要求帯域ave_traffic(T)は以下の式により算出される。
【0029】
次に、閾値更新部13cは、スロープ値を算出する。詳細には、閾値更新部13cは、現在の平均要求帯域が直前の平均要求帯域と比較して、大きい場合にはプラス、小さい場合にはマイナス、同一である場合には0の符号とする。また、閾値更新部13cは、現在の平均要求帯域に対する、直前の平均要求帯域からの変化量(以下、帯域変化量と称する)を求める。
【0030】
送信部15a−1〜15a−Nの各々のラインレートをRL、PONブランチの総数をMmaxとすると、スロープ値slop(T)は以下の式により算出される。
【0032】
例えば、RL=10Gbps、Mmax=8、且つ、現在の平均要求帯域が直前の平均要求帯域よりも10Gbpsだけ大きい場合には、スロープ値は0.125となる。
【0033】
次に、閾値更新部13cは、スロープ値に基づいて設定閾値を増減する。詳細には、閾値更新部13cは、スロープ値がプラスである場合には設定閾値を小さくし、スロープ値がマイナスである場合には設定閾値を大きくし、スロープ値が0である場合には設定閾値を変化させない。この際、閾値更新部13cは、帯域変化量が大きいほど設定閾値の変化量を大きくする。例えば、スロープ値が+0.125である場合に設定閾値を1Gbpsだけ減少させ、スロープ値が+0.5Gbpsである場合に設定閾値を5Gbpsだけ減少させる。
【0034】
閾値更新部13cは、例えば
図3に示される帯域閾値テーブルを保持している。帯域閾値テーブルにおいては、スロープ値と閾値増減量とが対応付けられている。閾値更新部13cは、この対応関係に基づいて設定閾値の増減量を決定する。例えば、スロープ値が+0.250Gbpsである場合には設定閾値を3Gbpsだけ減少させる。また、スロープ値が−0.250Gbpsである場合には設定閾値を3Gbpsだけ増加させる。
【0035】
図4には、閾値更新部13cによって更新される設定閾値が、総要求帯域及び平均要求帯域と共に示されている。更新間隔p2の設定閾値は、更新間隔p1の設定閾値よりも小さくなっている。これは、更新間隔p1の平均要求帯域が更新間隔p0の平均要求帯域よりも大きくなっていることに対応させて閾値更新部13cが設定閾値を小さくしたからである。また、更新間隔p3の設定閾値は、更新間隔p2の設定閾値よりも大きくなっている。これは、更新間隔p2の平均要求帯域が更新間隔p1の平均要求帯域よりも小さくなっていることに対応させて閾値更新部13cが設定閾値を大きくしたからである。
【0036】
更新間隔p2の設定閾値から更新間隔p3の設定閾値への変動量は、更新間隔p1の設定閾値から更新間隔p2の設定閾値への変動量に比較して小さい。これは、更新間隔p1の平均要求帯域から更新間隔p2の平均要求帯域への変化量が、更新間隔p0の平均要求帯域から更新間隔p1の平均要求帯域への変化量よりも小さいからである。設定閾値は、更新間隔p3以降についても同様に更新される。
【0037】
組合せ変更部13dは、設定閾値の更新後、ブランチ要求帯域の合計が設定閾値を超えないようにPONブランチの組合せを決定する。
【0038】
図5には、送信部15a−1〜15a−5に対するPONブランチの組合せの一例が示されている。
図5の例においては、PONブランチB1が1つのPONブランチ群として送信部15a−1に割り当てられ、PONブランチB2とB5とが1つのPONブランチ群として組み合わされて送信部15a−2に割り当てられ、PONブランチB3と4とが1つのPONブランチ群として組み合わされて送信部15a−3は割り当てられている。例えば送信部15a−2に関しては、PONブランチB2のブランチ要求帯域とPONブランチB5のブランチ要求帯域との合計値は設定閾値以下であり、最大ラインレートに対して帯域余裕がある。送信部15a−1及び15a−3に関しても同様に最大ラインレートに対して帯域余裕がある。それ故、組合せ決定後に各ブランチ要求帯域が増加した場合であっても帯域不足になり難くなる。なお、設定閾値は、最大ラインレートよりも小さい値に設定される。PONブランチが割り当てられない送信部15a−4及び15a−5はスリープ状態とすることができる。組合せ変更部13dは、当該組合せを示す組合せ通知をPONMAC14に与える。
【0039】
送信波長指定部13eは、PONMAC14から各タイムスロットへのデータ割り当ての構成についての通知(以下、タイムスロット構成通知と称する)に応じて、タイムスロット毎(データ毎)の送信波長指定を送信部15a−1〜15a−Nに対して行なう。
【0040】
図6には、ONU群40−1に含まれるONU40−1−1の構成が通信端末60と共に示されている。
【0041】
WDM51は、光伝送路30−1を介して到来した下りデータを受信部52bに供給する。この際、WDM51は、送信部52aによって送信されたデータの戻り光が受信部52bに影響することを防止する為に、光伝送路30−1を介して到来した下りデータについて波長選択を行なう。
【0042】
受信部52bは、波長選択後の下りデータを受信して、当該データを光電変換する。受信部52bは、例えばフォトダイオードからなる。
【0043】
PONMAC53は、光電変換されたデータからの指示情報の読み取りや、当該下りデータについてEPONシステムのフレームフォーマットからEthernet(登録商標)のフレームフォーマットに変換する等の所定のデータ処理を施す。
【0044】
バッファ54bは、データ処理後のデータを一時的に蓄積する。
【0045】
EtherMAC55は、バッファ54bに蓄積されているデータを通信端末60に送信する。
【0046】
なお、送信部52a及びバッファ54a等の上り方向に関連する構成については、第2の実施例において説明する。
【0047】
ONU40−1−2〜40−1−Rの各々も、ONU40−1−1と同様の構成である。また、ONU群40−2〜40−Mの各々も、ONU群40−1と同様の構成である。
【0048】
以下、
図7を参照しつつ、下り通信時における管理部13によるPONブランチ組合せ変更処理について説明する。収容局装置10は、EPONにおける通常の通信確立処理に従って、ONU群40−1〜40−Mとの間で通信を開始する。
【0049】
通信開始後、要求帯域算出部13aは、L2スイッチ11におけるONU毎の下り通信についての通過トラフィック量、又は、バッファ12a−1〜12a−Nに蓄積されたONU毎の下り通信についてのトラフィック量の監視を開始する。そして、要求帯域算出部13aは、周期的又は断続的に、全てのONUについての要求帯域(ONU要求帯域)を加算して総要求帯域を算出する(ステップS11)。総要求帯域は記憶部13bに記憶される。
【0050】
閾値更新部13cは、更新時刻が到来する度に設定閾値を更新する(ステップS12)。
【0051】
先ず、閾値更新部13cは、記憶部13bに記憶されている総要求帯域を用いて、前回の更新時刻から現在の更新時刻までの間に含まれる総要求帯域の平均値(平均要求帯域)を算出する(ステップS13)。
【0052】
次に、閾値更新部13cは、スロープ値を算出する(ステップS14)。この際、閾値更新部13cは、現在の平均要求帯域と直前の平均要求帯域の大きさの比較、及び、直前の平均要求帯域からの変化量に基づいてスロープ値を算出する。閾値更新部13cによって算出されるスロープ値は、例えば+0.125である。
【0053】
次に、閾値更新部13cは、スロープ値に基づいて設定閾値を更新する(ステップS15)。例えば、スロープ値が+0.125であり且つ閾値更新部13cが
図3に示される帯域閾値テーブルを保持している場合、閾値更新部13cは、設定閾値を1Gbps減少させる。
【0054】
閾値更新部13cによる設定閾値の更新後、組合せ変更部13dは、PONブランチの組合せを決定する。(ステップS16)。この際、組合せ変更部13dは、各PONブランチについての要求帯域(ブランチ要求帯域)の合計が設定閾値を超えないように組合せを決定する。なお、ブランチ要求帯域は、1つのPONブランチに属するONUの各々のONU要求帯域を加算することにより得られる。
【0055】
組合せ変更部13dは、例えば
図5に示されるように、PONブランチB1を1つのPONブランチ群として送信部15a−1に割り当て、PONブランチB2とB5とを1つのPONブランチ群として組み合わせて送信部15a−2に割り当て、PONブランチB3と4とを1つのPONブランチ群として組み合わせて送信部15a−3は割り当てる。
【0056】
次に、組合せ変更部13dは、当該組合せを示す組合せ通知をPONMAC14に対して与える(ステップS17)。PONMAC14は、組合せ通知により示される組合せに従って各ONUについてのデータをタイムスロットに収容し、送信部15a−1〜15a−Nに供給する。PONMAC14は、各データが割り当てられたタイムスロットの構成を示す情報の通知(タイムスロット構成通知)を送信波長指定部13eに与える。
【0057】
送信波長指定部13eは、タイムスロット構成通知に基づいて、各タイムスロットに割り当てられたデータについての送信波長指定を送信部15a−1〜15a−Nに与える(ステップS18)。送信部15a−1〜15a−Nは、各データを当該送信波長指定により指定される送信波長を搬送波として送信する。AWG16は、各データの波長に応じて当該データを光伝送路30−1〜30−Mのいずれかに振り分ける。
【0058】
また、組合せ変更部13dは、組合せの結果、送信部15a−1〜15a−NのうちのPONブランチが割り当てられないものをスリープ状態とする(ステップS18)。
【0059】
図8には、下り通信時におけるAWG16の波長ルーティングの様子が示されている。送信部15a−1が、波長λ1のデータ71、波長λ2のデータ72、波長λ3のデータ73が時系列的にタイムスロットに割り当てられたデータ群70を送信した場合の例が示されている。AWG16は、波長λ1のデータ71を光伝送路30−1に送信し、波長λ2のデータ72を光伝送路30−2に送信し、波長λ3のデータ73を光伝送路30−3に送信する。データ71はPONブランチB1に属するONU群40−1によって受信され、データ72はPONブランチB2に属するONU群40−2によって受信され、データ73はPONブランチB3に属するONU群40−3によって受信される。なお、
図8は、3つの波長の場合の例であるが、AWG16は、4以上の波長の場合にも同様に、波長に応じてデータの送信先を決定する。
【0060】
図9には、要求帯域、設定閾値、従来技術による割当帯域、及び本発明による割当帯域のシミュレーション結果が示されている。送信部15a−1〜15a−8の各々のデータレートを10Gbps、PONブランチ数(送信部の数)を8個、設定閾値の最大値を10Gbps、最小値を7Gbps、組合せの更新間隔を50time[a.u.]としたときのシミュレーション結果である。
【0061】
横軸は時間を示し、第1縦軸は総要求帯域及び割当帯域を示し、第2縦軸は設定閾値を示す。総要求帯域は全てのPONブランチについての要求帯域の合計値である。各PONブランチの要求帯域は等しく単純増加とした。
【0062】
割当帯域は、送信部15a−1〜15a−8のうちの動作中の(すなわちスリープ状態のものを除いた)送信部の数とデータレートとの乗算値である。上記条件の場合、割当帯域の最大値は80Gbpsとなる。割当帯域が40Gbpsの場合、PONブランチを4グループに分けて4台の送信部が動作していることになる。
【0063】
図9に示されるように、本発明による割当帯域は、総要求帯域の増加に伴って10Gbpsから7Gbpsに段階的に減少している。割当帯域は、総要求帯域の変動量に応じて変動している。例えば、総要求帯域の急峻な増加に応じて割当帯域の減少量も比較的大きくなっている。割当帯域は段階的に増加し、最終的には80Gbpsとなっている。これは、設定閾値を低下させ、1つの送信器に対するPONブランチの組合せ数を制限していることを示している。組合せ数の制限により、帯域余裕が確保される。
【0064】
比較対象である「従来方式による割当帯域」は、設定閾値を10Gbpsの固定値とした場合の結果である。10Gbpsは送信部の最大データレートである。従来方式の場合、割当帯域が総要求帯域を下回る箇所(符号E1、E2及びE3)が複数ある。これは、総要求帯域の急峻な増加に対応できず、帯域不足となっていることを示している。
【0065】
上記条件の場合、計算上、従来方式のときの帯域不足の合計は568Gbpsとなるのに対して、本発明によれば帯域不足の合計は77Gbpsにまで減少する。
【0066】
上記したように、本実施例の収容局装置10においては、下り通信の総要求帯域に応じて設定閾値を増減させる。設定閾値は、送信部の最大ラインレートよりも小さい値に設定される。そして、PONブランチの要求帯域の合計が設定閾値を超えないように、送信部毎にPONブランチの組合せを決定する。かかる動作により、各送信部におけるブランチ要求帯域の合計値は設定閾値以下となり、各送信部は最大データレートに対して帯域余裕を有する。それ故、PONブランチの組合せ決定後から次の組合せ更新時刻が到来するまでの間にブランチ要求帯域が増加した場合であっても、帯域不足になり難いという効果を奏する。
【0067】
このように、本実施例の収容局装置10においては、総帯域要求が増加した場合には設定閾値を小さくし、1つの送信部に対して割り当てられるPONブランチの数を制限することにより、帯域余裕を確保する。一方、総帯域要求が減少した場合には設定閾値を大きくし、1つの送信部に対して割り当てられるPONブランチの数を増やすことにより、PONブランチが割り当てられる送信部の数を減らして(すなわちスリープ状態とすることができる送信部の数を増やして)、消費電力を低減できる。
<第2の実施例>
以下、上り方向通信時の実施例について説明する。
【0068】
ONU群40−1の構成は、第1の実施例と同様に
図6に示される。
【0069】
EtherMAC55は、通信端末60からの入力データをバッファ54aに供給する。
【0070】
バッファ54aは、EtherMAC55から供給されたデータを一時的に蓄積する。
【0071】
PONMAC53は、バッファ54aに蓄積されているデータについてEthernetのフレームフォーマットからEPONシステムのフレームフォーマットに変換する等の所定のデータ処理を施す。また、PONMAC53は、バッファ54aの現在蓄積量(以下、バッファ蓄積量と称する)を周期的又は断続的に把握し、そのバッファ蓄積量を例えばEPONシステムにおいて一般に用いられるレポート信号に含めて、光伝送路30−1を介して収容局装置10に送信する。
【0072】
送信部52aは、PONMAC53によるデータ処理後のデータを光伝送路30−1を介して送信する。この際、送信部52aは、収容局装置10から指定された送信波長を搬送波としてデータ送信する。送信部52aは、例えばレーザーダイオードからなる。
【0073】
WDM51は、送信部52aによって送信されたデータの戻り光が受信部52bに影響することを防止する為に、光伝送路30−1を介して到来するデータについて波長選択を行なう。
【0074】
ONU40−1−2〜40−1−Rの各々も、ONU40−1−1と同様の構成である。また、ONU群40−2〜40−Mの各々も、ONU群40−1と同様の構成である。
【0075】
収容局装置10の全体構成は第1の実施例と同様に
図1に示される。
【0076】
AWG16は、複数の入力ポートと、波長によって当該入力ポートと対応付けられる複数の出力ポートとを有する。AWG16は、光伝送路30−1〜30−Mを介して到来した上りデータを入力ポートから受け入れ、AWGフィルタ機能により、当該上りデータの送信波長に応じて複数の出力ポートのうちから選択した1つの出力ポートに出力する。(選択送出手段)。かかる動作により、PONブランチ群毎に時分割多重された複数系列の時分割多重データがAWG16から出力される。
【0077】
図10には、上り通信時におけるAWG16の波長ルーティングの様子が示されている。光伝送路30−1を介して波長λ1のデータ81が到来し、光伝送路30−2を介して波長λ2のデータ82が到来し、光伝送路30−3を介して波長λ3のデータ83が到来した場合の例が示されている。
図10の例においては、PONブランチB1、B2及びB3が1つのPONブランチ群を構成する。入力ポートPI1、PI2及びPI3に入力されたデータ81、82及び83は、時分割多重されて1つの出力ポートPO1に送出されている。また、他のPONブランチ群についての時分割多重データ(図示せず)もAWG16から出力される。
図10は、3つの波長の場合の例であるが、AWG16は、4以上の波長の場合にも同様に、上りデータの送信波長に応じて当該上りデータの送出先となる出力ポート(例えばPO1〜PO3のいずれか)を決定する。
【0078】
WDM15c−1〜15c−Nは、光伝送路30−1〜30−Mを介して到来した上りデータを受信部15b−1〜15b−Nに供給する。この際、WDM15c−1〜15c−Nは、送信部15a−1〜15a−Nによって送信されたデータの戻り光が受信部15b−1〜15b−Nに影響することを防止する為に、光伝送路30−1〜30−Mを介して到来した下りデータについて波長選択を行なう。
【0079】
受信部15b−1〜15b−Nの各々は、出力ポートの1つを介してPONブランチ群毎の時分割多重データの1つを受信し、これをPONMAC14に与える。受信部15b−1〜15b−Nは、例えばフォトダイオードからなる。
【0080】
管理部13は、光伝送路30−1〜30−Mを介して到来したレポート信号に含まれるONU毎のバッファ蓄積量を要求帯域として、PONブランチB−1〜B−M毎の要求帯域を算出する。そして、管理部13は、当該要求帯域に基づいてPONブランチB−1〜B−Mを複数のPONブランチ群に群分けする。管理部13は、PONブランチ群に含まれるPONブランチの組合せを周期的又は断続的に変更する(組合せ変更手段)。管理部13は、PONMAC14にその組合せを通知する。
【0081】
また、管理部13は、当該組合せに基づく送信波長指定をONU群40−1〜40−Mの各々に対して行う。詳細には、ある1つのPONブランチ群に属するONUからの上りデータの各々がAWG16の出力ポートの1つに送出されるように当該ONUの各々に対して送信波長を指定する(送信波長指定手段)。送信波長指定は、例えば一般のEPONシステムにおいて使用される拡張OAM信号を用いて行なうことができる。
【0082】
PONMAC14は、管理部13からの組合せ通知の内容に基づいて、受信部15b−1〜15b−Nからのデータ群80を構成するデータを送信元ONU毎に分離する。
【0083】
バッファ12b−1〜12b−Nは、当該分離されたデータを送信元ONU毎に蓄積する。
【0084】
L2スイッチ11は、バッファ12b−1〜12b−Nに蓄積されているデータを多重化して通信網20に送出する。
【0085】
図11には、本実施例の管理部13の構成が示されている。
【0086】
要求帯域算出部13aは、上り信号の総要求帯域を算出する。上り信号の総要求帯域は、例えばONU群40−1〜40−M(
図1)からのレポート信号を利用して算出できる。要求帯域算出部13aは、レポート信号に含まれるバッファ蓄積量を要求帯域とし、レポート信号を受信する度にONU毎の要求帯域(ONU要求帯域)を算出する。更に、要求帯域算出部13aは、全てのONUについてのONU要求帯域を加算して総要求帯域を算出する。総要求帯域は第1の実施例と同様に式1により算出される。
【0087】
また、要求帯域算出部13aは、ONU要求帯域からPONブランチB−1〜B−Mの各々についての要求帯域(ブランチ要求帯域)を算出する。ある1つのPONブランチについてのブランチ要求帯域は、当該1つのPONブランチに属するONUの各々のONU要求帯域を加算することにより得られる。
【0088】
記憶部13bは、要求帯域算出部13aによって周期的又は断続的に算出された総要求帯域を記憶する。また、記憶部13bは、後述の閾値更新部13cによって算出された平均要求帯域についても記憶する。
【0089】
閾値更新部13cは、更新時刻が到来する度に設定閾値を更新する。更新時刻は一定の更新間隔毎に到来する。詳細には、閾値更新部13cは、先ず、更新時刻が到来したときに、記憶部13bに記憶されている総要求帯域を用いて、更新間隔内(前回の更新時刻から現在の更新時刻までの間)に含まれる総要求帯域の平均値(以下、平均要求帯域と称する)を算出する。算出された平均要求帯域は、記憶部13bに記憶される。平均要求帯域は式2によって算出される。
【0090】
次に、閾値更新部13cは、スロープ値を算出する。詳細には、閾値更新部13cは、現在の平均要求帯域が直前の平均要求帯域と比較して、大きい場合にはプラス、小さい場合にはマイナス、同一である場合には0の符号とする。また、閾値更新部13cは、現在の平均要求帯域に対する、直前の平均要求帯域からの変化量(以下、帯域変化量と称する)を求める。スロープ値は第1の実施例と同様に式3によって算出される。
【0091】
次に、閾値更新部13cは、スロープ値に基づいて設定閾値を増減する。詳細には、閾値更新部13cは、スロープ値がプラスである場合には設定閾値を小さくし、スロープ値がマイナスである場合には設定閾値を大きくし、スロープ値が0である場合には設定閾値を変化させない。この際、閾値更新部13cは、帯域変化量が大きいほど設定閾値の変化量を大きくする。閾値更新部13cは、例えば
図3に示される帯域閾値テーブルを保持し、当該テーブルにおけるスロープ値と閾値増減量との対応に基づいて設定閾値の増減量を決定する。設定閾値の変動は、第1の実施例と同様に
図4に示される。
【0092】
組合せ変更部13dは、設定閾値の更新後、ブランチ要求帯域の合計が設定閾値を超えないようにPONブランチの組合せを決定する。
【0093】
図12には、受信部15b−1〜15b−5に対するPONブランチの組合せの一例が示されている。
図12の例においては、PONブランチB1が1つのPONブランチ群として受信部15b−1に割り当てられ、PONブランチB2とB5とが1つのPONブランチ群として組み合わされて受信部15b−2に割り当てられ、PONブランチB3と4とが1つのPONブランチ群として組み合わされて受信部15b−3は割り当てられている。例えば受信部15b−2に関しては、PONブランチB2のブランチ要求帯域とPONブランチB5のブランチ要求帯域との合計値は設定閾値以下であり、最大ラインレートに対して帯域余裕がある。受信部15b−1及び15b−3に関しても同様に最大ラインレートに対して帯域余裕がある。それ故、組合せ決定後に各ブランチ要求帯域が増加した場合であっても帯域不足になり難くなる。なお、設定閾値は、最大ラインレートよりも小さい値に設定される。PONブランチが割り当てられない受信部15b−4及び15b−5はスリープ状態とすることができる。
【0094】
送信波長指定部13eは、組合せ変更部13dからの組合せ通知に基づいて、ONU群40−1〜40−Mの各々についての送信波長を決定し、これらに対して当該送信波長の指定を行なう。詳細には、送信波長指定部13eは、組合せ変更部13dによって1つの受信部に割り当てられたPONブランチに属する1つのONU群に対して、当該受信部に対応する波長の1つを送信波長として指定する。送信波長指定は、例えば一般のEPONシステムにおいて使用される拡張OAM信号を用いて行なうことができる。
【0095】
組合せ変更部13dにより、例えば
図12に示されるように、受信部15b−1にPONブランチB1が割り当てられ、受信部15b−2にPONブランチB2及びB5が割り当てられ、受信部15b−3にPONブランチB3及びB4が割り当てられたとする。また、組合せ変更部13dが、例えば
図13に示される入力ポートと出力ポートについての波長対応テーブルを有しているとする。この場合、送信波長指定部13eは、PONブランチB1に属するONU群40−1に対して送信波長λ1を指定する。また、送信波長指定部13eは、PONブランチB2に属するONU群40−2に対して例えば送信波長λ3を指定すると共に、PONブランチB5に属するONU群40−5に対して送信波長λ1を指定する。また、送信波長指定部13eは、PONブランチB3に属するONU群40−3に対して送信波長λ5を指定すると共に、PONブランチB4に属するONU群40−4に対して送信波長λ1を指定する。
【0096】
ONU群40−1〜40−5の各々が当該指定された送信波長を搬送波としてデータ送信すれば、AWG16は、組合せ変更部13dにより決定された組合せの通りに(例えば
図12に示されるように)受信部15b−1〜15b−5にデータを振り分けることができる。
【0097】
以下、
図14を参照しつつ、下り通信時における管理部13によるPONブランチ組合せ変更処理について説明する。収容局装置10は、EPONにおける通常の通信確立処理に従って、ONU群40−1〜40−Mとの間で通信を開始する。
【0098】
通信開始後、要求帯域算出部13aは、周期的又は断続的に光通信路30−1〜30−Mを介して到来するレポート信号に含まれる、ONU群40−1〜40−Mの各々についてのバッファ蓄積量を要求帯域としてONU毎の要求帯域(ONU要求帯域)を算出する。更に、要求帯域算出部13aは、全てのONUについてのONU要求帯域を加算して総要求帯域を算出する(ステップS21)。総要求帯域は記憶部13bに記憶される。
【0099】
閾値更新部13cは、更新時刻が到来する毎に設定閾値を更新する(ステップS22)。
【0100】
先ず、閾値更新部13cは、記憶部13bに記憶されている総要求帯域を用いて、前回の更新時刻から現在の更新時刻までの間に含まれる総要求帯域の平均値(平均要求帯域)を算出する(ステップS23)。
【0101】
次に、閾値更新部13cは、スロープ値を算出する(ステップS24)。この際、閾値更新部13cは、現在の平均要求帯域と直前の平均要求帯域についての大きさの比較、及び、直前の平均要求帯域からの変化量に基づいてスロープ値を算出する。閾値更新部13cによって算出されるスロープ値は、例えば+0.125である。
【0102】
次に、閾値更新部13cは、スロープ値に基づいて設定閾値を更新する(ステップS25)。例えば、スロープ値が+0.125であり且つ閾値更新部13cが
図3に示される帯域閾値テーブルを保持している場合、閾値更新部13cは、設定閾値を1Gbps減少させる。
【0103】
閾値更新部13cによる設定閾値の更新後、組合せ変更部13dは、PONブランチの組合せを決定する。(ステップS26)。この際、組合せ変更部13dは、各PONブランチについての要求帯域(ブランチ要求帯域)の合計が設定閾値を超えないように組合せを決定する。なお、ブランチ要求帯域は、1つのPONブランチに属するONUの各々のONU要求帯域を加算することにより得られる。
【0104】
組合せ変更部13dは、例えば
図12に示されるように、PONブランチB1を1つのPONブランチ群として受信部15b−1に割り当て、PONブランチB2とB5とを1つのPONブランチ群として組み合わせて受信部15b−2に割り当て、PONブランチB3と4とを1つのPONブランチ群として組み合わせて受信部15b−3は割り当てる。組合せ変更部13dは、当該組合せを示す組合せ通知をPONMAC14に対して与える(ステップS27)。また、組合せ変更部13dは、当該組合せを示す組合せ通知を送信波長指定部13eにも与える。
【0105】
送信波長指定部13eは、組合せ変更部13dからの組合せ通知に基づいて、ONU群40−1〜40−Mの各々についての送信波長を決定し、光伝送路30−1〜30−Mを介してONU群40−1〜40−Mの各々に対して当該送信波長の指定を行なう(ステップS28)。この際、送信波長指定部13eは、ある1つのPONブランチ群に属するONUからの上りデータの各々がAWG16の出力ポートの1つに送出されるように当該ONUの各々に対して送信波長を指定する。例えば、
図12に示されるように組合せが決定され、且つ、組合せ変更部13dが
図13に示される波長対応テーブルを有している場合には、送信波長指定部13eは、ONU群40−1、40−2、40−3、40−4、40−5に対して例えば送信波長λ1、λ3、λ5、λ1、λ1をそれぞれ指定する。
【0106】
組合せ変更部13dは、組合せの結果、受信部15b−1〜15b−NのうちのPONブランチが割り当てられないものをスリープ状態とする(ステップS29)。
【0107】
ONU群40−1〜40−Mに属する各ONUは、指定された送信波長を搬送波として上りデータを収容局装置10に送信する。AWG16は、各上りデータをその送信波長に応じて受信部15b−1〜15b−Nのいずれかに供給する。
【0108】
上記したように、本実施例の収容局装置10においては、上り通信の総要求帯域に応じて設定閾値を増減させる。設定閾値は、受信部の最大ラインレートよりも小さい値に設定される。そして、PONブランチの要求帯域の合計が設定閾値を超えないように、受信部毎にPONブランチの組合せを決定する。かかる動作により、各受信部におけるブランチ要求帯域の合計値は設定閾値以下となり、各受信部は最大データレートに対して帯域余裕を有する。それ故、PONブランチの組合せ決定後から次の組合せ更新時刻が到来するまでの間にブランチ要求帯域が増加した場合であっても、帯域不足になり難いという効果を奏する。
【0109】
このように、本実施例の収容局装置10においては、総帯域要求が増加した場合には設定閾値を小さくし、1つの受信部に対して割り当てられるPONブランチの数を制限することにより、帯域余裕を確保する。一方、総帯域要求が減少した場合には設定閾値を大きくし、1つの受信部に対して割り当てられるPONブランチの数を増やすことにより、PONブランチが割り当てられる受信部の数を減らして(すなわちスリープ状態とすることができる受信部の数を増やして)、消費電力を低減できる。
<第1の変形例>
以下に、上り通信時における管理部13によるPONブランチの組合せ決定動作の変形例について説明する。
【0110】
要求帯域算出部13aは、L2スイッチ11におけるONU毎の通過トラフィック量、又は、バッファ12a−1〜12a−Nに蓄積されたONU毎のトラフィック量を監視し、ONU毎の要求帯域(以下、ONU要求帯域と称する)を周期的又は断続的に算出する。
【0111】
更に、要求帯域算出部13aは、ONU要求帯域からPONブランチB−1〜B−Mの各々についての要求帯域(ブランチ要求帯域)を算出する。ある1つのPONブランチについてのブランチ要求帯域は、当該1つのPONブランチに属するONUの各々のONU要求帯域を加算することにより得られる。
【0112】
ONU要求帯域をtraffic(t,n)とすると(tは最小時間単位、nはONUの総数)、ブランチ要求帯域branch_traffic(t,m)は(mはPONブランチの総数)、以下の式により算出される。
【0114】
記憶部13bは、要求帯域算出部13aによって周期的又は断続的に算出されたブランチ要求帯域を記憶する。また、記憶部13bは、後述の閾値更新部13cによって算出されたブランチ平均要求帯域についても記憶する。
【0115】
追加帯域決定部13fは、更新時刻が到来する度にPONブランチ毎の追加帯域を決定する。更新時刻は一定の更新間隔毎に到来する。詳細には、追加帯域決定部13fは、先ず、更新時刻が到来したときに、記憶部13bに記憶されているブランチ要求帯域を用いて、更新間隔内(前回の更新時刻から現在の更新時刻までの間)に含まれるブランチ要求帯域の平均値(ブランチ平均要求帯域)をPONブランチ毎に算出する。算出されたブランチ平均要求帯域は、記憶部13bに記憶される。
【0116】
更新間隔をTとすると、ブランチ平均要求帯域bave_traffic(T)は以下の式により算出される。
【0118】
次に、追加帯域決定部13fは、PONブランチ毎のスロープ値(以下、ブランチスロープ値と称する)を算出する。詳細には、追加帯域決定部13fは、現在の平均要求帯域が直前の平均要求帯域と比較して、大きい場合にはプラス、小さい場合にはマイナス、同一である場合には0の符号とする。また、追加帯域決定部13fは、現在の平均要求帯域に対する、直前の平均要求帯域からの帯域変化量を求める。
【0119】
送信部15a−1〜15a−Nの各々のラインレートをRL、PONブランチの総数をMmaxとすると、ブランチスロープ値bslop(T)は以下の式により算出される。
【0121】
例えば、RL=10Gbps、Mmax=8、且つ、現在の平均要求帯域が直前の平均要求帯域よりも10Gbpsだけ大きい場合には、ブランチスロープ値は0.125となる。
【0122】
次に、追加帯域決定部13fは、ブランチスロープ値に基づいてPONブランチ毎の追加帯域を決定する。
【0123】
図16には、ブランチスロープ値と追加帯域との関係が示されている。追加帯域決定部13fは、あるPONブランチのブランチスロープ値がプラスである場合(
図16(a1)及び(b1))には、当該PONブランチの現在要求帯域に追加帯域を加える(
図16(a2)及び(b2))。この際、追加帯域決定部13fは、ブランチスロープ値が大きいほど追加帯域を大きくする。例えば、ブランチスロープ値が+0.125である場合に追加帯域を1Gbpsとし、ブランチスロープ値が+0.5である場合に追加帯域を5Gbpsとする。また、加帯域決定部13fは、あるPONブランチのブランチスロープ値がマイナス又は0である場合(
図16(c1))には、当該PONブランチの現在要求帯域に対して追加帯域を加えない(
図16(c2))。
【0124】
追加帯域決定部13fは、例えば
図17に示される追加帯域テーブルを保持している。追加帯域テーブルにおいては、ブランチスロープ値と追加帯域量とが対応付けられている。追加帯域決定部13fは、この対応関係に基づいて追加帯域量を決定する。例えば、ブランチスロープ値が+0.250である場合には追加帯域量を3Gbpsとする。また、ブランチスロープ値が−0.250である場合には追加帯域量を0Gbpsとする。以下、1つのPONブランチについてのブランチ要求帯域と追加帯域とを合わせた帯域を、当該1つのPONブランチについての確保帯域と称する。
【0125】
組合せ変更部13dは、追加帯域量の決定後、確保帯域の合計が最大データレートを超えないようにPONブランチの組合せを決定する。
【0126】
図18には、送信部15a−1に対するPONブランチの組合せの一例が示されている。PONブランチB1、B2及びB3が1つのPONブランチ群である。これらのPONブランチの確保帯域の合計は最大データレートよりも小さくなっており、帯域余裕が確保される。更に、PONブランチB1及びB2の各々についての追加帯域分も帯域余裕として確保される。例えば、PONブランチB1の要求帯域が増加した場合には、PONブランチB1についての追加帯域分で要求帯域の増加分をまかなうことができる。それ故、組合せ決定後に各ブランチ要求帯域が増加した場合であっても帯域不足になり難くなる。また、PONブランチ毎のブランチスロープ値に応じて追加帯域を決定しているので、帯域余裕の過不足が小さくなるようにPONブランチの組合せを決定することができる。なお、PONブランチが割り当てられない送信部についてはスリープ状態とすることができる。組合せ変更部13dは、当該組合せを示す組合せ通知をPONMAC14に与える。
【0127】
送信波長指定部13eは、PONMAC14から各タイムスロットへのデータ割り当ての構成についての通知(タイムスロット構成通知)に応じて、タイムスロット毎(データ毎)の送信波長指定を送信部15a−1〜15a−Nに対して行なう。
【0128】
以下、
図19を参照しつつ、下り通信時における管理部13によるPONブランチ組合せ決定処理について説明する。収容局装置10は、EPONにおける通常の通信確立処理に従って、ONU群40−1〜40−Mとの間で通信を開始する。
【0129】
通信開始後、要求帯域算出部13aは、L2スイッチ11におけるONU毎の下り通信についての通過トラフィック量、又は、バッファ12a−1〜12a−Nに蓄積されたONU毎の下り通信についてのトラフィック量の監視を開始する。そして、要求帯域算出部13aは、周期的又は断続的に、PONブランチ毎の要求帯域(ブランチ要求帯域)を算出する(ステップS31)。ブランチ要求帯域は記憶部13bに記憶される。
【0130】
追加帯域決定部13fは、更新時刻が到来する度にPONブランチ毎の追加帯域を決定する(ステップS32)。
【0131】
先ず、追加帯域決定部13fは、記憶部13bに記憶されているブランチ要求帯域を用いて、前回の更新時刻から現在の更新時刻までの間に含まれるPONブランチ毎のブランチ要求帯域の平均値(ブランチ平均要求帯域)を算出する(ステップS33)。
【0132】
次に、追加帯域決定部13fは、PONブランチ毎のブランチスロープ値を算出する(ステップS34)。この際、追加帯域決定部13fは、ある1つのPONブランチについての現在のブランチ平均要求帯域と直前のブランチ平均要求帯域の大きさの比較、及び、直前のブランチ平均要求帯域からの変化量に基づいて当該1つのPONブランチについてのブランチスロープ値を算出する。追加帯域決定部13fによって算出されるブランチスロープ値は、例えば+0.125である。
【0133】
次に、追加帯域決定部13fは、ブランチスロープ値に基づいてPONブランチ毎の追加帯域を決定する(ステップS35)。例えば、スロープ値が+0.125であり且つ追加帯域決定部13fが
図17に示される追加帯域テーブルを保持している場合、追加帯域決定部13fは、追加帯域を1Gbpsとする。
【0134】
追加帯域決定部13fによる追加帯域の決定後、組合せ変更部13dは、PONブランチの組合せを決定する。(ステップS36)。この際、組合せ変更部13dは、各PONブランチについての確保帯域(ブランチ要求帯域と追加帯域の合計)の合計が設定閾値を超えないように、例えば
図18のように組合せを決定する。
【0135】
次に、組合せ変更部13dは、当該組合せを示す組合せ通知をPONMAC14に対して与える(ステップS37)。PONMAC14は、組合せ通知により示される組合せに従って各ONUについてのデータをタイムスロットに収容し、送信部15a−1〜15a−Nに供給する。PONMAC14は、各データが割り当てられたタイムスロットの構成を示す情報の通知(タイムスロット構成通知)を送信波長指定部13eに与える。
【0136】
送信波長指定部13eは、タイムスロット構成通知に基づいて、各タイムスロットに割り当てられたデータについての送信波長指定を送信部15a−1〜15a−Nに与える(ステップS38)。送信部15a−1〜15a−Nは、各データを当該送信波長指定により指定される送信波長を搬送波として送信する。AWG16は、各データの波長に応じて当該データを光伝送路30−1〜30−Mのいずれかに振り分ける。
【0137】
また、組合せ変更部13dは、組合せの結果、送信部15a−1〜15a−NのうちのPONブランチが割り当てられないものをスリープ状態とする(ステップS38)。
【0138】
上記したように、本実施例の収容局装置10においては、PONブランチ毎の下り通信の要求帯域に応じて追加帯域を決定する。要求帯域と追加帯域の合計を確保帯域とし、確保帯域の合計が送信部の最大データレートを超えないように、送信部毎にPONブランチの組合せを決定する。かかる動作により、各送信部におけるブランチ要求帯域の合計値は最大データレートよりも小さくなり、各送信部は最大データレートに対して帯域余裕を有する。それ故、PONブランチの組合せ決定後から次の組合せ更新時刻が到来するまでの間にブランチ要求帯域が増加した場合であっても、帯域不足になり難いという効果を奏する。
【0139】
また、本変形例においてはPONブランチ毎のブランチスロープ値に応じて追加帯域を決定しているので、帯域余裕の過不足が小さくなるようにPONブランチの組合せを決定することができるという効果も奏する。
<第2の変形例>
上記の変形例は下り通信方向についての実施例であるが、上り通信方向の場合にも同様にPONブランチ毎のブランチスロープ値からPONブランチの組合せを決定することができる。なお、管理部13の構成は、第1の変形例と同様に
図15に示される。また、追加帯域テーブルは、第1の変形例と同様に
図17に示される。
【0140】
以下、
図20を参照しつつ、上り通信時における管理部13によるPONブランチ組合せ決定処理について説明する。収容局装置10は、EPONにおける通常の通信確立処理に従って、ONU群40−1〜40−Mとの間で通信を開始する。
【0141】
通信開始後、要求帯域算出部13aは、周期的又は断続的に光通信路30−1〜30−Mを介して到来するレポート信号に含まれる、ONU群40−1〜40−Mの各々についてのバッファ蓄積量を要求帯域としてONU毎の要求帯域(ONU要求帯域)を算出する。そして、要求帯域算出部13aは、ONU毎のONU要求帯域からPONブランチ毎の要求帯域(ブランチ要求帯域)を例えば式(4)により周期的又は断続的に算出する(ステップS41)。ブランチ要求帯域は記憶部13bに記憶される。
【0142】
追加帯域決定部13fは、更新時刻が到来する度にPONブランチ毎の追加帯域を決定する(ステップS42)。
【0143】
先ず、追加帯域決定部13fは、記憶部13bに記憶されているブランチ要求帯域を用いて、前回の更新時刻から現在の更新時刻までの間に含まれるPONブランチ毎のブランチ要求帯域の平均値(ブランチ平均要求帯域)を例えば式(5)により算出する(ステップS43)。
【0144】
次に、追加帯域決定部13fは、PONブランチ毎のブランチスロープ値を算出する(ステップS44)。この際、追加帯域決定部13fは、ある1つのPONブランチについての現在のブランチ平均要求帯域と直前のブランチ平均要求帯域の大きさの比較、及び、直前のブランチ平均要求帯域からの変化量に基づいて当該1つのPONブランチについてのブランチスロープ値を例えば式(6)により算出する。
【0145】
次に、追加帯域決定部13fは、ブランチスロープ値及び例えば
図17に示される追加帯域テーブルに基づいてPONブランチ毎の追加帯域を決定する(ステップS45)。
【0146】
追加帯域決定部13fによる追加帯域の決定後、組合せ変更部13dは、PONブランチの組合せを決定する。(ステップS46)。この際、組合せ変更部13dは、各PONブランチについての確保帯域(ブランチ要求帯域と追加帯域の合計)の合計が設定閾値を超えないように組合せを決定する。
【0147】
次に、組合せ変更部13dは、当該組合せを示す組合せ通知をPONMAC14に対して与える(ステップS47)。また、組合せ変更部13dは、当該組合せを示す組合せ通知を送信波長指定部13eにも与える。
【0148】
送信波長指定部13eは、組合せ変更部13dからの組合せ通知に基づいて、ONU群40−1〜40−Mの各々についての送信波長を決定し、光伝送路30−1〜30−Mを介してONU群40−1〜40−Mの各々に対して当該送信波長の指定を行なう(ステップS48)。この際、送信波長指定部13eは、ある1つのPONブランチ群に属するONUからの上りデータの各々がAWG16の出力ポートの1つに送出されるように当該ONUの各々に対して送信波長を指定する。
【0149】
組合せ変更部13dは、組合せの結果、受信部15b−1〜15b−NのうちのPONブランチが割り当てられないものをスリープ状態とする(ステップS48)。
【0150】
上記したように、本実施例の収容局装置10においては、PONブランチ毎の上り通信の要求帯域に応じて追加帯域を決定する。要求帯域と追加帯域の合計を確保帯域とし、確保帯域の合計が送信部の最大データレートを超えないように、受信部毎にPONブランチの組合せを決定する。かかる動作により、各受信部におけるブランチ要求帯域の合計値は最大データレートよりも小さくなり、各受信部は最大データレートに対して帯域余裕を有する。それ故、PONブランチの組合せ決定後から次の組合せ更新時刻が到来するまでの間にブランチ要求帯域が増加した場合であっても、帯域不足になり難いという効果を奏する。
【0151】
また、本変形例においてはPONブランチ毎のブランチスロープ値に応じて追加帯域を決定しているので、帯域余裕の過不足が小さくなるようにPONブランチの組合せを決定することができるという効果も奏する。