特許第5874448号(P5874448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874448
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20160218BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20160218BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20160218BHJP
   H01R 43/048 20060101ALI20160218BHJP
   H01R 43/16 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
   H01R4/62 A
   H01R13/03 D
   H01R43/048 Z
   H01R43/16
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-47925(P2012-47925)
(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-182861(P2013-182861A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 拓次
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 純一
(72)【発明者】
【氏名】古川 欣吾
(72)【発明者】
【氏名】宗像 照善
(72)【発明者】
【氏名】大塚 保之
(72)【発明者】
【氏名】中井 由弘
(72)【発明者】
【氏名】西川 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】桑原 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】太田 肇
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓之
(72)【発明者】
【氏名】杉原 崇康
【審査官】 出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/096526(WO,A1)
【文献】 特開2010−165514(JP,A)
【文献】 特開2011−233328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 4/62
H01R 13/03
H01R 43/048
H01R 43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製またはアルミニウム合金製の素線を複数本撚り合わせた撚り線からなる芯線を、絶縁被覆で覆った電線と、前記電線の端末において前記絶縁被覆の剥離により露出した露出芯線に圧着される圧着片を有する端子と、を備える端子付き電線の製造方法であって、
銅製または銅合金製であって、表面には、イオン化傾向が、銅とアルミニウムとの間の金属を含むメッキ層が形成されている金属基材をプレスすることにより、前記圧着片を形成するプレス工程を実行した後、
前記圧着片の端面に、絶縁材料からなる絶縁被膜を形成する被膜形成工程を実行し、
前記プレス工程を実行することにより形成された前記圧着片を、前記電線の露出芯線に圧着する圧着工程を実行した後、前記圧着片において前記電線が載置される電線載置面とは反対側の面において、前記圧着工程において前記メッキ層が剥離した部分に、絶縁材料からなる絶縁被膜を形成する第2被膜形成工程を実行する端子付き電線の製造方法。
【請求項2】
前記メッキ層は、スズを含むメッキ層である請求項1に記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁被膜は、アルマイト、シリカ、酸化銅および硫化銅から選ばれる絶縁材料からなる請求項1または請求項2に記載の端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される端子付き電線としては、例えば、電線の端部における絶縁被覆を剥離して露出させた芯線に、端子の圧着片が圧着された構成が知られている。
【0003】
近年、車両の軽量化等の観点から、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の芯線を絶縁被膜で被覆してなる、いわゆるアルミ電線の需要が高まっている。このアルミ電線に接続される端子としては、銅又は銅合金製のものを用いるのが一般的である。
【0004】
このような構成では、電線の芯線と端子とが異種の金属からなるため、潮風に曝される、高温多湿等といった車両の使用環境により、芯線と端子との接続部分に僅かでも水分及び塩分が浸入すると、芯線と端子との間で電食が起こるおそれがある。そこで、従来から、電食を防止するための対策が検討されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−210593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、露出芯線を半田によってシールした状態で電線接続部が圧着される半田シールと、電線の絶縁被覆により被覆された部分と半田シールとの間をシールした状態でこれらを接続するシール接続部と、を備える構成とすることが提案されている。しかしながらこのような構成では、製造コストがかかるという問題があった。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、製造コストを抑えつつ電食を防止することが可能な端子付き電線およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
また、本発明は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の素線を複数本撚り合わせた撚り線からなる芯線を、絶縁被覆で覆った電線と、前記電線の端末において前記絶縁被覆の剥離により露出した露出芯線に圧着される圧着片を有する端子と、を備える端子付き電線の製造方法であって、銅製または銅合金製であって、表面には、イオン化傾向が、銅とアルミニウムとの間の金属を含むメッキ層が形成されている金属基材をプレスすることにより、前記圧着片を形成するプレス工程を実行した後、前記圧着片の端面に、絶縁材料からなる絶縁被膜を形成する被膜形成工程を実行し、前記プレス工程を実行することにより形成された前記圧着片を、前記電線の露出芯線に圧着する圧着工程を実行した後、前記圧着片において前記電線が載置される電線載置面とは反対側の面において、前記圧着工程において前記メッキ層が剥離した部分に、絶縁材料からなる絶縁被膜を形成する第2被膜形成工程を実行する端子付き電線の製造方法である。
【0010】
端子の圧着片は、例えば、銅製または銅合金製の金属基材を所定形状にプレスすることにより形成される。そのため、金属基材がメッキされているか否かにかかわらず、プレス後の圧着片の端面においては、金属基材を構成する金属材料である銅または銅合金が露出する。圧着片の端面において銅または銅合金が露出状態であると、ここに塩分を含んだ水が浸入することにより、素線に含まれるアルミニウムとの電位差により、銅が電極のように作用して腐食反応が促進され、素線からアルミニウムが急速に溶出することが懸念される。
【0011】
しかしながら、本発明においては、圧着片の端面に絶縁材料からなる絶縁被膜が形成されているので、圧着片の端面において銅または銅合金が露出していない。その結果、本発明によれば、少なくとも圧着片の端面に絶縁被膜を形成するだけで電食を防止することができるので、製造コストを抑えつつ電食を防止することが可能な端子付き電線およびその製造方法を提供することができる。
また、金属基材の表面に、銅よりもイオン化傾向が、芯線を構成する金属材料(アルミニウム)に近い金属によるめっきが施されるので、金属基材の表面と芯線とのイオン化傾向の差(電位差)が小さくなり、これにより電食が起こりにくくなるとともに、電食のスピードが抑制される。その結果、上記構成によれば、電食を確実に防止することができる。
また、メッキ層が形成されている金属基材からなる端子を用いた場合でも、圧着片を露出芯線に圧着させる作業において圧着金具と金属基材とが接触することによりメッキ層が剥離してしまう場合がある。このようなメッキ層が剥離した部分においては、金属基材を構成する銅(合金)が露出するため、電食の発生が懸念される。そこで、上記のような構成とすると、メッキ層が剥離した部分でも銅(合金)が露出しないので、電食を防止することができる。
【0015】
前記メッキ層は、スズを含むメッキ層であってもよい。
このような構成とすると、ピンホールが少なく、緻密で均一な被膜が得られるため、電食防止に適しており、また所定以上の電気導電率を確保できる。さらに、スズとアルミニウムとは、イオン化傾向の差が小さいので電食が生じたとしてもそのスピードが抑制される。
【0018】
前記絶縁被膜は、アルマイト、シリカ、酸化銅および硫化銅から選ばれる絶縁材料からなる構成であってもよい。
このような構成とすると、絶縁被膜が電気絶縁性が高い材料から構成されるので、高い電食防止効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、製造コストを抑えつつ電食を防止することが可能な端子付き電線およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態1の端子付き電線の側面図
図2】端子付き電線の平面図
図3】連鎖端子の部分平面図
図4】露出芯線を圧着片により圧着する直前の状態を示す部分平面図
図5】端子の断面を模式的にあらわした部分断面図
図6】連鎖端子の部分裏面図
図7】実施形態2の端子付き電線を製造する工程において、露出芯線を圧着片により圧着する直前の状態を示す部分平面図
図8】他の実施形態(2)で説明する端子付き電線を作成するための連鎖端子の部分裏面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態1>
本発明を具体化した実施形態1の端子付き電線10を、図1ないし図6によって説明する。以下の説明においては、図1および図2における左側を前とし右側を後とする。また、図1および図5における上側を上とし下側を下とする。
【0022】
本実施形態の端子付き電線10は、図1および図2に示すように、電線40と、電線40の端末において露出する露出芯線41に圧着される芯線圧着片25(「圧着片」の一例)を有する端子11と、を備える。端子11は、銅または銅合金製の金属板の両面にメッキ層3を形成してなる金属基材1から構成されている。端子11は、図3に示すような展開形状の端子片11Aに曲げ加工などを施すことで図1に示すような形状に成形されている。
【0023】
金属基板に形成されるメッキ層3は、イオン化傾向が銅とアルミニウムとの間の金属を含むメッキ層3である。具体的には、ニッケルやスズ等の金属を含むメッキ層3があげられる。メッキ層3としては、スズを含むメッキ層3(例えばスズメッキ層)が好ましい。スズメッキ層は、ピンホールが少なく、緻密で均一な被膜が得られるため、電食防止に適しており、また所定以上の電気導電率を確保できるうえに、スズとアルミニウムとは、イオン化傾向の差が小さいので電食が生じたとしてもそのスピードが抑制されるので好ましい。
【0024】
本実施形態において、端子11は、前後に開口する略箱型をなす本体部12を備え、この本体部12内には、前方から相手となる雄型の端子のタブ(図示せず)が挿入可能とされている。端子11の本体部12の後側には、電線40を載置して接続する電線接続部23が設けられている(詳細は後述する)。
【0025】
端子11の本体部12は、図3に示す展開形状の端子片11Aを折曲線L1に沿って折り曲げることで角筒状に成形されている。本体部12は、前後に延出する底壁13と、底壁13の両側縁から立ち上げられる一対の側壁14,15と、側壁14から連なり底壁13と対向する天井壁16と、側壁15から連なり天井壁16の外側に重ね合わせられる外壁17とから構成されている。天井壁16の側縁には、側壁15側へ突出する支持片18が設けられ、この支持片18が外壁17に切り欠き形成された差込溝19内に差し込まれるとともに差込溝19の側縁(側壁15の上端面)に当接されることで、天井壁16を底壁13とほぼ平行な姿勢に支持可能とされている。
【0026】
底壁13の前端からはタブに対して弾性接触可能な弾性接触片20が設けられている。弾性接触片20の構造の詳細は図示しないが、図3に示す展開状態において底壁13から前方へ真っ直ぐに延出する舌片20Aを、本体部12における前端位置にて後方へ折り返した後、本体部12における長さ方向略中央位置にて前方へ折り返して形成されている。
【0027】
弾性接触片20のうち前後の折返部の間の部分が、天井壁16と対向するとともにタブに対して直接に接触可能なタブ接触部20aとされるのに対し、後側の折返部から前方へ突出する部分が、底壁13に当接可能とされる支持部20bとされ、その先端部20cは図1における上方へ向けて屈曲形成されている。
【0028】
弾性接触片20は、本体部12内に挿入されたタブを天井壁16とタブ接触部20aとの間で挟圧状態に保持可能とされ、タブにより押圧されることで弾性変形されるようになっており、このとき支持部20bが底壁13に当接されるとともに支持部20bの先端部20cがタブ接触部20aの裏側に当接されることで、弾性接触片20が過度撓みするのを規制可能とされる。
【0029】
また弾性接触片20は、底壁13よりも幅狭に形成されている。底壁13には、端子11をハウジング(図示せず)のキャビティ内に収容したときにキャビティ内に設けられたランスが進入して係止可能な係止孔21が開口して形成されている。また係止孔21の両側縁(両側壁14,15の下端)からは、キャビティ内への挿入動作の案内などに機能するスタビライザ22が一対突設されている。
【0030】
端子11の電線接続部23は、本体部12の底壁13の後端から後方へ延出されて設けられている。電線接続部23においては、本体部12の底壁13から連なって底壁13の幅方向に張り出し形成された2組の圧着片24,25が間隔をあけて設けられている。これら2組の圧着片24,25は、それぞれ、幅方向に対称に張り出し形成されている。
【0031】
電線接続部23に配される電線40は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の金属素線42を撚り合わせてなる芯線41を絶縁製の材料からなる絶縁被覆43で被覆したものである。電線40の端末は、絶縁被覆43が剥離されて芯線41が露出した状態になっている。電線40は、露出芯線41の端末を本体部12側に向けて端子11に接続される。
【0032】
電線接続部23の2組の圧着片24,25のうち、前側(本体部12側)の圧着片25は露出した芯線41を圧着して端子と接続する芯線圧着片25(圧着片の一例)とされ、後側(後端側)の圧着片24は電線40の絶縁被覆43により被覆されている部分を圧着して端子11と接続する絶縁被覆圧着片24とされる。
【0033】
芯線圧着片25の電線40が配置される面23A(電線載置面23A、図1における上側に配される面)には、電線40を圧着する際に芯線41の周囲に形成された酸化膜を破るための複数の凹部28が複数凹設されている(図3および図4を参照)。複数の凹部28が設けられている領域25Bは、電線40と芯線圧着片25とが電気的に接続される接続領域25Bである。
【0034】
凹部28の孔縁は電線40を圧着する前の状態において、図3の紙面を貫通する方向から見て平行四辺形状をなしている。複数の凹部28は、芯線圧着片25が芯線41に圧着された状態で芯線41が延びる方向について間隔を空けて配されるとともに、芯線41が延びる方向に交差する方向について間隔を空けて配されている(図4を参照)。
【0035】
さて、本実施形態では、図1図3に示すように、本体部12の後側の端面12Aから、芯線圧着片25の端面25Aを経由して絶縁被覆圧着片24の前側の端面24Aまでの端面に、絶縁材料からなる絶縁被膜29が形成されている(図中太線で示した部分)。芯線圧着片25の端面25Aの近傍においては、図5に示すように、銅(合金)層2と、銅(合金)層2を覆うメッキ層3と、露出芯線41を構成するアルミニウム(合金)層41Aが順に重なっており、メッキ層3の表面と、金属基材1の端面25Aを覆う絶縁被膜29が形成されている。
【0036】
また、端子11の電線載置面とは反対側の面23B(電線が配置される面とは反対側の面)は、図1及び図6に示すように、電線接続部23のほぼ全域が、絶縁性材料からなる絶縁被膜29で覆われている(図中網掛けで示した部分)。芯線圧着片25の電線載置面とは反対側の面23Bのメッキ層3は、露出芯線41に芯線圧着片25を圧着する際に圧着金具との接触により剥離することがあるが、本実施形態では、圧着の際等にメッキ層3が剥離した部分にも絶縁被膜29が形成されている。
【0037】
さらに、本実施形態では端子11の電線載置面23Aは、図3に示すように、露出芯線41が電気的に接続される接続領域25Bを除き、絶縁性材料からなる絶縁被膜29で覆われている。具体的には、電線載置面23Aにおいては、電線接続部23の前端から芯線圧着片25の前側縁部に至る領域および芯線圧着片25の後側縁部から絶縁被覆圧着片24の前端に至る領域が、絶縁材料からなる絶縁被膜29で覆われている(図中網掛けで示した部分)。上述したように、本実施形態においては、接続領域25Bに絶縁被膜29が形成されないので、端子11と電線40との電気的な接続に悪影響を与えることはない。
【0038】
絶縁被膜29は、電気絶縁性が高いという観点から、アルマイト、シリカ、酸化銅および硫化銅などから選ばれる絶縁材料からなる構成とするのが好ましい。
【0039】
次に、本実施形態の端子付き電線10の製造方法の一例を説明する。
まず、両面にメッキ層3が形成された銅または銅合金製の金属基材1を、所定形状(図3に示す形状)にプレスするプレス工程を実行する(プレス工程)と、2組の圧着片24,25等が形成される。
【0040】
次に、芯線圧着片25の接続領域25Bに、図示しない複数の凸部が突出形成された金型を用いてプレス加工を施すことにより、複数の凹部28を形成すると、図3に示す連鎖端子30が得られる。
【0041】
連鎖端子30においては、複数の端子片11Aがキャリア35に連結されている。連鎖端子30は、図3に示すように、図示横方向に沿って延出する帯状をなすキャリア35に対し、複数の端子片11Aを図示横方向、すなわちキャリア35の長手方向(延出方向)に沿ってほぼ等間隔に並んだ状態で連結した構成とされている。各端子片11Aは、その長さ方向を図示縦方向、すなわち連鎖端子30における幅方向に沿わせた姿勢とした状態で、前後の各一端部がそれぞれキャリア35の幅方向の一方の縁部に連結されている。
【0042】
端子片11Aの後端部は、図3における下側のキャリア35の側縁に突設された連結部36に連結されている。連結部36は、端子片11Aのうち絶縁被覆圧着片24の後端幅方向略中央に繋げられている。これら端子片11Aと連結部36とキャリア35とは、図示縦方向、すなわち連鎖端子30全体から見て幅方向に並んで配されている。このキャリア35には、連鎖端子30を送り出すために加工機に設けられた送り爪(図示せず)が係合可能な送り孔33,34が開口して形成されている。この送り孔33,34は、加工機の種類(例えばプレス機や圧着機)によって送り爪の形状が異なることから、その送り爪の形状に合わせて円形の送り孔33と方形の送り孔34の2種類が設けられている。
【0043】
次に、端子11の端面のうち、本体部12の後側の端面12Aから、芯線圧着片25の端面25Aを経由して絶縁被覆圧着片24の前側の端面24Aに至って絶縁被膜29を形成する(被膜形成工程)。また、本実施形態では、被膜形成工程において、電線載置面とは反対側の面23Bならびに、電線載置面23Aの接続領域25B以外の部分(電線接続部23の前端から芯線圧着片25の前側縁部に至る領域および芯線圧着片25の後側縁部から絶縁被覆圧着片24の前端に至る領域)にも絶縁被膜29を形成する。絶縁被膜29を形成する際には、凹部28が形成されている領域(接続領域25B)をマスクするなどにより接続領域25Bに絶縁被膜29が形成されないようにする。
【0044】
絶縁被膜29は、例えば、アルマイト処理、SiOをコーティングする方法、金属基材1を構成する銅または銅合金を露出させて、黒化処理または硫化処理を行うことにより形成することができる。ここで、プレス工程後の金属基材1の端面12Aにおいては、銅(合金)が露出しているので、黒化処理や硫化処理を行うときに銅(合金)を露出させる必要はない。
【0045】
アルマイト処理は、例えば、端子11にアルミニウムをメッキし、このアルミニウムメッキを陽極酸化処理することにより実行することができる。SiOのコーティングは、例えば、端子11をポリシラザンの有機溶液に浸漬した後、所定の温度で焼成することにより実行することができる。黒化処理は、例えば、NaClO、NaPO、及びNaOHを含む黒化処理液に、95℃以下で、3分から15分間、端子11を浸漬することにより実行することができる。硫化処理は、例えば、硫化アンモニウム、水酸化カリウムを含み、pHが12.3に調製された硫化処理液に、10℃で、2分間、端子11を浸漬することにより実行することができる。また硫化処理はHSガス処理によっても実行することができる。これらの方法は上記以外の公知の手法によっても実行可能である。
【0046】
次に、キャリア35に形成した送り孔33,34に送り爪を係合させることで、端子片11Aを順次加工機に送り、その過程で端子片11Aに対して曲げ加工などを施す。
【0047】
次に、個々の端子片11Aの電線接続部23に設けられた絶縁被覆圧着片24および芯線圧着片25を電線40に圧着させて、端子11と電線40とを接続する。具体的には、図4に示すように、端子片11Aの電線載置面23Aに、電線40の端末(露出芯線41)を載置してから、芯線圧着片25と絶縁被覆圧着片24とをそれぞれ電線40に圧着させる(圧着工程)。
【0048】
次に、圧着後の芯線圧着片25の、メッキ層3が剥離した部分等のように銅(合金)が露出した部分にも絶縁被膜29を形成する(第2被膜形成工程)。絶縁被膜29は、上述の被膜形成工程と同様に、アルマイト処理、SiO2をコーティングする方法、金属基材1を構成する銅または銅合金を露出させて、黒化処理または硫化処理を行うことにより形成することができる。第2被膜形成工程の実行により、図1及び図2に示す形状の端子付き電線10が得られる。
【0049】
次に、本実施形態の作用・効果について説明する。
本実施形態においては、圧着片25の端面25Aに絶縁材料からなる絶縁被膜29が形成されているので、芯線圧着片25の端面25Aにおいて銅(合金)が露出していない。その結果、本実施形態によれば、芯線圧着片25の端面25Aに絶縁被膜29を形成するだけで電食を防止することができるので、製造コストを抑えつつ電食を防止することが可能な端子付き電線10およびその製造方法を提供することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、芯線圧着片25のうち、露出芯線41が配置される面とは反対側の面23Bには、絶縁被膜29が形成されているから、この面において銅(合金)が露出するのを防止することができ、これにより確実に電食を防止することができる。
【0051】
特に、本実施形態によれば、端子11のメッキ層3が剥離した部分等のように銅(合金)が露出した部分にも、絶縁被膜29が形成されているから、芯線圧着片25を露出芯線41に圧着させることにより、圧着金具(図示せず)と金属基材1との接触によりメッキ層3が剥離してしまった場合であっても、銅(合金)が露出しないので、電食を防止することができる。
【0052】
加えて、本実施形態によれば、芯線圧着片25のうち露出芯線41が配置される面にも絶縁被膜29が形成されているから電食防止効果をさらに確実なものとすることができる。
【0053】
また、本実施形態においては、金属基材1の表面には、イオン化傾向が、銅とアルミニウムとの間の金属を含むメッキ層3が形成されているから、金属基材1の表面に、銅よりもイオン化傾向が、芯線41を構成する金属材料[アルミニウム(合金)]に近い金属によるめっきが施されるので、金属基材1の表面と芯線41とのイオン化傾向の差(電位差)が小さくなり、これにより電食が起こりにくくなるとともに、電食のスピードが抑制される。その結果、本実施形態によれば、電食を確実に防止することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、絶縁被膜29は、アルマイト、シリカ、酸化銅および硫化銅から選ばれる絶縁材料からなるので、絶縁被膜29が電気絶縁性が高い材料から構成され、高い電食防止効果を得ることができる。
【0055】
<実施形態2>
次に、本発明に係る実施形態2の端子付き電線を図7によって説明する。本実施形態の端子付き電線50は、絶縁被膜29が、芯線圧着片25の露出芯線41が配置される面には形成されていないという点で実施形態1と相違する。実施形態1と同様の構成については同一の符号を付す。
上記以外の構成は実施形態1と同様であるので、実施形態2によっても、実施形態1と同様な効果が得られる。
【0056】
なお、本実施形態の端子付き電線50は露出芯線41が配置され接続される面23Aに絶縁被膜29が形成されていないので、電線40と端子51との電気的な接続を良好なものとすることができるという効果がある。
【0057】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、芯線圧着片25のうち、露出芯線41が配置される面とは反対側の面23Bにも絶縁被膜29が形成された端子11を示したが、芯線圧着片の端面のみに絶縁被膜が形成されている端子であってもよい。
(2)露出芯線41が配置される面とは反対側の面23Bにおける絶縁被膜29の形成領域は、図6に示す領域に加えて絶縁被覆圧着片24の全域であってもよい(図8を参照)。
図8に示す形態は、露出芯線41が配置される面とは反対側の面23Bにおける絶縁被膜29の形成領域のみが図6に示す形態と相違するので、図6と同様の符号を付している。
【符号の説明】
【0058】
1…金属基材
2…銅(合金)層
3…メッキ層
10,50…端子付き電線
11,51…端子
23…電線接続部
23A…電線載置面(露出芯線が配置される面)
23B…露出芯線が配置される面とは反対側の面
25…芯線圧着片(圧着片)
25B…端面(圧着片の端面)
29…絶縁被膜
40…電線
41…芯線(露出芯線)
41A…アルミニウム(合金)層
42…素線
43…絶縁被覆
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8