(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本実施形態では圧電振動デバイスとして水晶振動子を例に挙げ、水晶振動片と当該水晶振動片を収容する容器との接合を中心に図面を参照しながら説明する。まず、完成品における水晶振動子の構成部材について概要を説明した後、水晶振動片と容器との接合について説明する。
【0022】
図1は本発明の実施形態に係る水晶振動子の上面模式図であり、封止前の状態を表した上面図となっている。本実施形態における水晶振動子1は、水晶振動片2が、容器3の内部に導電性バンプ4(以下、バンプ4と略記)を介して片持ち接合され、封止材を介して蓋を容器に接合することによって水晶振動片2を気密に封止した構造となっている。
【0023】
容器1は
図1乃至2に示すように、上部に開口部30を有する断面視凹形状の箱状体となっている。容器1はセラミックからなる複数のシートが積層された後、焼成よって一体成形されており、容器1の内部には水晶振動片2を搭載するための段部14が形成されている。段部14の上面には一対の搭載電極5,5が印刷技術により形成されており、搭載電極5はタングステンを印刷焼成した後に、表面に金メッキ処理が施されている。なお搭載電極5は、容器内部に形成された配線導体(図示省略)を介して容器底面33の外部接続端子(図示省略)と電気的に接続されている。
【0024】
容器1の開口部30の周囲には堤部31が形成されており、堤部31の上面には複数層からなる金属膜(図示省略)が周状に形成されている。前記金属膜は3層で構成されており、下からタングステン、ニッケル、金の順で積層されている。タングステンはメタライズ技術により、セラミック焼成時に一体的に形成され、ニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。なお、前記タングステンの層にモリブデンを使用してもよい。
【0025】
本実施形態において水晶振動片2は、所定の角度で切断された平面視矩形状のATカット水晶振動板である。水晶振動片2は、振動領域である薄肉に加工された薄肉領域20と、薄肉領域20の周囲の厚肉領域21を有している(いわゆる逆メサ形状)。本実施形態において薄肉部20はウエットエッチングによって成形されており、厚肉部と薄肉部の境界部分は水晶の結晶方位固有の角度で現れる傾斜面となっている。本実施形態では水晶振動子1の発振周波数は600MHzとなっている。なお本発明の適用は本発振周波数に限定されるものではない。また、水晶振動片の形状は前述した逆メサ形状の水晶振動片だけなく、平板状の水晶振動片や周縁部分が薄肉となった、いわゆるメサ形状、あるいはメサ形状と逆メサ形状とを組み合わせた形状の水晶振動片においても適用可能である。
【0026】
図2に示すように、薄肉領域20の表裏主面には励振電極22,25が真空蒸着法によって形成されている。前記励振電極は一対で形成されているが、水晶振動片の表裏の区別のために異なる番号を付している。励振電極22は水晶振動板の一主面200側に形成され、引出電極23を経由して水晶振動板の一主面200の角部周辺と当該角部近傍の短辺および長辺の各側面に回り込むようにして他主面210側へ導出されている(
図1参照)。励振電極22から導出された電極の終端部分は接続電極24となっている。一方、励振電極25は水晶振動板の他主面210側に形成され、引出電極26を経由して水晶振動板の一主面210の角部周辺と角部近傍へと導出されている(
図1参照)。励振電極25から導出された電極の終端部分は接続電極27となっている。すなわち水晶振動板の他主面210側の一短辺縁部近傍に異極の接続電極24,27が形成されている。なお、
図2にでは引出電極および接続電極の記載は省略している。本実施形態では励振電極および引出電極、接続電極ともにクロム(Cr)を下地層とし、その上層に金(Au)が積層された構成となっている。
【0027】
図1乃至2に示すように、水晶振動板の他主面210の一短辺側には一対の凹部6,6が形成されている。凹部6は多段状となっており、一主面200から水晶振動板2の厚さ方向に段階的に開口寸法が減少している。凹部6の内周面全体に励振電極22,25から導出された前述の金属層が形成されることによって接続電極24,27(
図2では図示省略)が形成されている。
図2では水晶振動片2が、搭載電極5上に金からなるバンプ4を介して接合された状態となっており、バンプ4の一部が凹部6の内部に埋没している。そして平面視ではバンプ4は凹部6に内包される状態となっている。
以上が完成品における水晶振動子の構成部材についての概要である。次に水晶振動片と容器との接合について説明する。
【0028】
まず凹部6について
図3を参照しながら説明する。
図3は本発明の実施形態に係る水晶振動片の部分拡大図であり、接続電極が形成されていない状態となっている。
図3において凹部6の外縁は平面視略円形となっており、凹部6の内部には階段状の複数の段部63,65,67,69が仮想点Pを中心として略同心円状に形成されている。前記複数の段部63,65,67,69は前記仮想点Pを基準として放射状に、かつ仮想点Pから遠ざかるにしたがって凹部内底面61よりも段階的に高く(厚く)なるように形成されている(
図4参照)。したがって凹部6の内部における最深部は凹部内底面61となる。なお、本実施形態では前記複数の段部は略一定の間隔(幅)で形成されている。
【0029】
図3乃至4において凹部6および段部63,65,67,69は、ウエットエッチングおよびフォトリソグラフィ技術を用いて成形されている。本実施形態では凹部6が形成される厚肉部21の厚みは約0.04mmとなっており、凹部6の深さhは約0.01〜0.015mmであり、連続する各段部の高さ(厚み)は約0.002〜0.003mmとなっている。凹部の深さhおよび各段部の高さ(厚み)の前記数値範囲は一例であり、当該数値範囲に限定されるものではない。例えば各段部の高さ(厚み)は約0.005〜0.01mmでもよい。なお凹部の深さについては、凹部が形成される圧電振動片の厚みに対して半分以下の深さに設定するのが、圧電振動片の強度確保の点から望ましい。
【0030】
図3に示すように凹部6の平面視形状は略同心円状であるため、接続電極とバンプとのFCB法による接合の際に加わる応力を放射状に分散させることができる。これにより、接合時の応力に起因する水晶振動片の欠け等の発生を抑制することができる。また水晶振動片と容器との接合後の残留応力を低減させることができるため、応力開放による周波数の経年変化量を抑制することができる。
【0031】
接続電極24,27は、
図4に示す凹部6の内周面全体、つまり凹部開口部側面62全体と、各段部63,65,67,69および当該各段部の側面64,66,68,70と、凹部内底面61とを覆うように金属膜が配されることによって形成される。接続電極24,27は真空蒸着法によって励振電極22,25および引出電極23,26と同時に形成される。このようにして形成された接続電極24,27の断面形状は
図4に示す形状となっている。
【0032】
次に水晶振動片と容器との接合について
図4乃至5を参照して説明する。一対の搭載電極5,5の各上面には、導電性バンプ(金からなるスタッドバンプ)4がキャピラリから射出形成される。搭載電極5,5上に形成されたバンプ4,4は、
図4に示すように凸状の頂部40を有しており、平面視では略同心円,断面視では略釣鐘状となっている。
【0033】
そして、水晶振動板の他主面210に形成された接続電極24(27)の凹部6が、平面視でバンプ4に重なるようにバンプ4の上部に、水晶振動片2を画像認識手段を用いて一対一で位置決め載置する。ここで、凹部6の開口部の寸法d1(
図4に示す左右の開口端60の間の寸法)は、バンプ4の最大径d2よりも大きくなっている。そして凹部6の深さについては、バンプ4の全高よりも浅く(低く)なっている。このような相対関係により、水晶振動片の搭載電極への位置決め載置完了時点では、凹部6の内部にバンプ4の一部が内包された状態となる。なお本実施形態ではd1>d2の関係となっているが、d1=d2またはd1<d2の関係となっていてもよい。d1<d2の関係の場合、接合電極とバンプとの接合後に、凹部6からはみ出したバンプによって絶縁不良が発生しない開口寸法に設定する。
【0034】
凹部6はバンプ4と対応しているため、バンプの最大径d2よりも小さな開口部d1を有する凹部6において、開口端60がガイドの役目を果たし、バンプ4が凹部6の内部に誘導されやすくなる。このとき凹部6は多段状に形成され、水晶振動片の他主面210から水晶振動片の厚さ方向に段階的に開口寸法が減少しているため、バンプ4の頂部40に連なる曲面に沿うようにしてバンプの頂部が凹部内に入り込みやすくなる。
【0035】
また、このような開口寸法を有する凹部であれば、前述のガイド機能を有するとともに、水晶振動片2の搭載電極5上への搭載位置ずれに対しても有効に機能する。これは、予めバンプ4が配された搭載電極5上に水晶振動片2を位置決め載置する際に、僅かな位置ずれが発生した場合であっても、凹部6の開口部の寸法d1を想定ずれ量以上の開口寸法に設定することによって、バンプ4を凹部内に収めることができるからである。
【0036】
前記位置決め載置後に、水晶振動片2に対して超音波ホーンを当接させ、所定方向に加圧させながら超音波を印加する。これにより、接合電極24(27)とバンプ4との間に金属拡散を生じさせ、水晶振動片2と容器1とを接合する。接合完了後の状態は
図5に示す。
図5に示すように、バンプ4は超音波の印加時の加圧によって潰れて押し拡げられ、凹部内にバンプの一部が埋没している。具体的に
図5ではバンプの一部が、凹部内底面61と、段部69とその側面70、段部67とその側面68の各々に被着された金属膜と接した状態で接合されている。
図5に示すバンプと凹部(接続電極)との接合状態は一例であり、凹部の開口寸法や段部の形成数および段部の幅寸法や高さ(厚み)等と、バンプの最大径等との相対関係に応じて変化し得る。
【0037】
凹部6は多段状でバンプ4と対応しており、水晶振動片の他主面210から厚さ方向に段階的に開口寸法が減少しているため、バンプ4との接合強度を高めることができる。前記FCB法による接合の際に、加圧によって潰れたバンプ4が凹部内を埋めるように配される。つまり凹部6が多段状で、バンプ形状に対応した複数の段部63,65,67,69が形成されることになる。これによりバンプとの接合領域の表面積が拡大し、狭小領域であっても接続電極とバンプとの接合強度を向上させることができる。また、水晶振動子が外部衝撃を受けて水晶振動片に対して水平方向の応力が加わった場合であっても、前記複数の段部が“楔”のように機能(いわゆるアンカー効果)するため水晶振動片と容器との接合強度を向上させることができる。
【0038】
さらに凹部6はバンプ4と対応しているため、潰れたバンプの凹部外へのはみ出し量を抑制することができる。凹部外へのバンプのはみ出し量が多いと、本来接触してはならない内部配線導体等に、はみ出したバンプが接触することによる絶縁不良の危険性が増大する。この問題は圧電振動デバイスが超小型になるほど顕著になってくる。これに対して本発明の水晶振動片によれば、凹部内にバンプの一部が埋没することによってバンプとの接合強度を高めつつ、接合時のバンプの潰れによる凹部外へのはみ出し量を抑制することができる。その結果、前記絶縁不良を防止することができる。
【0039】
さらにバンプ4の一部が凹部内に埋没することにより、接合後における凹部6からはみ出したバンプの厚み(高さ)を薄く(低く)することができる。これより、容器3への水晶振動片2の搭載高さが低くなり、水晶振動片と蓋との隙間を拡大することができる。その結果、片持ち支持された水晶振動片が外部衝撃を受けて自由端側が大きく撓んだ場合であっても、自由端側と蓋との接触を防止することができ、より信頼性の高い水晶振動子を得ることができる。
【0040】
本実施形態では凹部6の内部の連続する各段部の高さは略同一となっているが、各段部の高さ(厚み)が異なっていてもよい。また本実施形態では
図3に示すように凹部6の内部の各段部の間隔(形成幅)は略一定で、平面視略同心円状に整列した状態となっているが、各段部の間隔は異なっていてもよい。例えば
図6乃至7に示すような断面形状であってもよい。
【0041】
図6に示す断面形状の凹部10では、各段部の高さ(厚み)は略一定で,開口端11における開口寸法は
図4に示す開口寸法d1と略同一であるが、段部の形成幅は凹部10の内底面12に近づくにつれて段階的に減少している。つまり凹部10の各段部の稜部同士を結んで表わされる曲線は、
図4の凹部6の段部についての前記曲線に比べて曲率が大きく、急峻な形状となっている。このような形状であれば、スタッドバンプ4の頂部40に連なる曲面により近い形状となるため、前述のガイド機能を更に向上させることができる。また水晶振動片の厚みが非常に薄い場合には凹部を深く形成すると水晶振動片の機械的強度の低下が懸念されるが、
図6に示す形状であれば凹部の深さを変えることなく、バンプの頂部付近が接触する領域における接触面積を拡大させることによって、接続電極とバンプとの接合強度を向上させることができる。
【0042】
また
図7に示す断面形状の凹部13では、各段部の高さ(厚み)は略一定で,開口端14における開口寸法は
図4に示す開口寸法d1と略同一であるが、段部の形成幅は凹部12の内底面15から遠ざかるにつれて段階的に減少している。つまり凹部13の各段部の稜部同士を結んで表わされる曲線は、
図4の凹部6の段部についての前記曲線に比べて曲率が小さく、なだらかな形状となっている。このような形状であれば、開口端14付近における段部の形成幅が、内底面15付近における段部の形成幅よりも相対的に小さくなっているため、凹部13の内部の開口端14近傍領域における接触面積が増大し、開口端14におけるアンカー効果がより向上するようになる。
【0043】
本実施形態では凹部内の各段部は平面視略同心円状に形成されているが、当該形状以外の平面視形状であってもよい。例えば、凹部の外縁が平面視矩形であってもよい。つまり各段部が凹部内底面の中心を基準として異なった距離で放射状に拡がるとともに、前記中心から遠ざかるにつれて段階的に高く(厚く)なるように形成されていてもよい。
【0044】
本実施形態では圧電振動片として、ATカット水晶振動片を適用した例を挙げているが、本発明の他の実施形態として
図8に示すような音叉型水晶振動片に対しても適用可能である。
図8において音叉型水晶振動片8は、基部82と、基部82の一端側から伸長した一対の腕部81,81と、基部の側面部分から両外側に突出し、腕部の伸長方向と平行に延出された支持腕83,83を有している。
【0045】
このような形状の音叉型水晶振動片においては、屈曲振動を行う一対の腕部の振動エネルギーは腕部先端から遠ざかるにつれて減衰するため、腕部先端から最も離間した支持腕83の先端近傍の領域で、音叉型水晶振動片8を容器と接合するのが水晶振動子の特性面から好ましい。したがって
図8では支持腕83の先端近傍の領域に対応した容器内の位置に一対の搭載電極5’、5’が対向形成されている。そして支持腕83の搭載電極5’と接合される主面側の先端近傍の領域に、平面視略円状の凹部6’が形成されている。凹部6’は内部に複数の段部が略同心円状に形成されている(図示省略)。このような形態においても前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお音叉型水晶振動片の形状は
図8に示す形状に限定されるものではなく、その他の形状の音叉型水晶振動片にも適用可能である。例えば支持腕に相当する部位が基部の一側面からのみ外側に突出した,平面視アルファベットの「L」字状の支持腕を有する音叉型水晶振動片であってもよい。
【0046】
また本発明の実施形態の説明で用いた図面では、凹部内壁および段部側面の断面形状は主面に対して直角に掘り込まれた図となっているが、凹部内壁および段部側面が傾斜面となっていてもよい。例えば、
図9に示すようにウエットエッチングによって凹部16の開口端17から凹部内底面18にかけて傾斜した側面を有する段部19が複数形成されることにより、凹部16の開口端17において前述のガイドの機能を更に向上させることができる。そして各段部19の側面については凹凸の少ない滑らかな断面形状に近づけることができる。このような傾斜面が形成されることにより、凹部の断面形状が前述のスタッドバンプの形状に倣うようになり、凹部内底面18へより確実にバンプの頂部が誘導されやすくなる。これにより、水晶振動片とバンプとのより確実な接合を行うことができる。さらに多段状の段部19の各側面が傾斜面となることによって各段部の稜部の傾斜が緩やかになり、バンプとの接触によるチッピング等の発生を抑制することができる。
【0047】
さらに本発明の実施形態の説明で用いた図面では、凹部を構成する各面および段部を構成する各面が直線状であるとともに、隣接面が直角に交差した左右対称の形状となっている。しかしながらこれは説明のための一例であり、断面形状は上記形状のものに限定されるものではない。つまり、異方性材料である水晶(例えばZ板)を用いて、ウエットエッチングによって侵食孔(凹部)を形成する場合、結晶方位の相違によって凹部の断面形状は、凹部を構成する各面が直線あるいは弧状であるとともに、隣接面が90度以外の角度で交差して左右非対称となる。このような形状の凹部であっても本発明は適用可能である。例えば
図10に示すような断面形状を有する凹部71であっても、開口端72から凹部内底面73にかけて傾斜した側面を有する段部74が複数形成されることによって、前述した傾斜面の効果と同様の効果を得ることができる。
【0048】
また本発明の実施形態では、接続電極は水晶振動板の表裏主面のうち、一方の主面のみに形成されているが、水晶振動板の両主面(表裏主面)の各々に形成されていてもよい。水晶振動板の表裏主面の各々に前記接続電極を形成することによって、表裏いずれ主面においても水晶振動片を容器に搭載することができる。
【0049】
本発明の実施形態では水晶振動子を例にしているが、水晶振動子以外に、水晶フィルタ、水晶発振器などの他の圧電振動デバイスに対しても適用可能である。
【0050】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。