【文献】
稲田 智弘 他,OFDMにおける信号の圧縮・伸張によるPAPR低減法,2005年電子情報通信学会総合大会講演論文集 通信1,2005年 3月 7日,p.497,B-5-48
【文献】
Miin-Jong Hao et al.,PAPR reduction with Adjustable Circle Constrain for OFDM systems,Intelligent Signal Processing and Communication Systems, 2009. ISPACS 2009. International Symposium on,2009年12月 9日,pp.323-326
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
OFDM方式の通信では、PAPRを低減することが課題となっている。特許文献1では、PAPRを低減する最適位相を算出するために繰り返し計算処理を行い、サブキャリアごとに位相を制御する必要がある。また特許文献1に開示されている技術では、PAPRの低減の程度を制御することはできない。
【0006】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、OFDM方式の通信において、PAPRを低減し、さらにPAPRの低減の程度を制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る通信機は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機であって、
入力信号を所定の変調方式で変調し、周波数成分が互いに直交するサブキャリアに割り当て、サブキャリア変調信号を生成する変調手段と、
前記サブキャリア変調信号の逆高速フーリエ変換を行って変換後データを生成するIFFT手段と、
それぞれが定めた値の範囲であるレンジであって、互いに値の範囲が重複しない前記レンジ、および前記レンジごとに定めた振幅係数および補正係数を用い、前記レンジのそれぞれについて、前記変換後データの要素の内、絶対値が該レンジに属する要素に、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該レンジに対して定めた前記振幅係数である複素数を加算し、前記変換後データの要素の内、絶対値が該レンジに属さない要素を、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該レンジに対して定めた前記補正係数である複素数で置き換えて演算データを生成する演算手段と、
前記演算手段で前記レンジのそれぞれについて生成した前記演算データを並べて合成し、合成したデータに基づきベースバンド信号を生成する合成手段と、
前記ベースバンド信号から送信信号を生成して送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記演算手段は、複数個の前記レンジを用いる。
【0009】
本発明の第2の観点に係る通信機は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機であって、
送信信号を受信してベースバンド信号を生成する受信手段と、
前記ベースバンド信号を直並列変換し、並列信号を生成する直並列手段と、
前記並列信号を所定の数に等分割してサブ並列信号を生成する分割手段と、
前記サブ並列信号ごとに定めた、それぞれが定めた値の範囲であるレンジおよび振幅係数を用い、前記サブ並列信号のそれぞれについて、該サブ並列信号の要素の内、絶対値が該サブ並列信号に対して定めた前記レンジに属する要素を0で置き換え、該サブ並列信号の要素の内、絶対値が該レンジに属さない要素から、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該サブ並列信号に対して定めた前記振幅係数である複素数を減算して逆演算データを生成する逆演算手段と、
前記逆演算手段で前記サブ並列信号のそれぞれについて生成した前記逆演算データを合算し、合算したデータの高速フーリエ変換を行ってサブキャリア変調信号を生成するFFT手段と、
前記サブキャリア変調信号を所定の復調方式で復調する復調手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の観点に係る通信方法は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機が行う通信方法であって、
入力信号を所定の変調方式で変調し、周波数成分が互いに直交するサブキャリアに割り当て、サブキャリア変調信号を生成する変調ステップと、
前記サブキャリア変調信号の逆高速フーリエ変換を行って変換後データを生成するIFFTステップと、
それぞれが定めた値の範囲であるレンジであって、互いに値の範囲が重複しない前記レンジ、および前記レンジごとに定めた振幅係数および補正係数を用い、前記レンジのそれぞれについて、前記変換後データの要素の内、絶対値が該レンジに属する要素に、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該レンジに対して定めた前記振幅係数である複素数を加算し、前記変換後データの要素の内、絶対値が該レンジに属さない要素を、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該レンジに対して定めた前記補正係数である複素数で置き換えて演算データを生成する演算ステップと、
前記演算ステップで前記レンジのそれぞれについて生成した前記演算データを並べて合成し、合成したデータに基づきベースバンド信号を生成する合成ステップと、
前記ベースバンド信号から送信信号を生成して送信する送信ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記演算ステップにおいて、複数個の前記レンジを用いる。
【0012】
本発明の第4の観点に係る通信方法は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機が行う通信方法であって、
送信信号を受信してベースバンド信号を生成する受信ステップと、
前記ベースバンド信号を直並列変換し、並列信号を生成する直並列ステップと、
前記並列信号を所定の数に等分割してサブ並列信号を生成する分割ステップと、
前記サブ並列信号ごとに定めた、それぞれが定めた値の範囲であるレンジおよび振幅係数を用い、前記サブ並列信号のそれぞれについて、該サブ並列信号の要素の内、絶対値が該サブ並列信号に対して定めた前記レンジに属する要素を0で置き換え、該サブ並列信号の要素の内、絶対値が該レンジに属さない要素から、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該サブ並列信号に対して定めた前記振幅係数である複素数を減算して逆演算データを生成する逆演算ステップと、
前記逆演算ステップで前記サブ並列信号のそれぞれについて生成した前記逆演算データを合算し、合算したデータの高速フーリエ変換を行ってサブキャリア変調信号を生成するFFTステップと、
前記サブキャリア変調信号を所定の復調方式で復調する復調ステップと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、OFDM方式の通信において、PAPRを低減し、さらにPAPRの低減の程度を制御することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。以下の説明において、IFFT(Inverse Fast Fourier Transformation:逆高速フーリエ変換)は、IFFTとIDFT(Inverse Discrete Fourier Transformation:逆離散フーリエ変換)を含む概念とする。したがって本発明の実施の形態においては、IFFTの代わりに、IDFTを行うよう構成してもよい。同様にFFT(Fast Fourier Transformation:高速フーリエ変換)は、FFTとDFT(Discrete Fourier Transformation:離散フーリエ変換)を含む概念とする。またIDFTおよびDFTを行う場合は、以下の説明におけるFFTサイズとは、DFTのサイズを意味する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る通信機の構成例を示すブロック図である。通信機1は、OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式の無線通信により他の機器と通信を行う。通信機1は、アンテナ10、変調部11、直並列変換部12、IFFT部13、演算部14、合成部15、送信部16、およびコントローラ20を備える。
【0017】
コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)21、RAM(Random Access Memory)23、およびROM(Read-Only Memory)24を備える。複雑化を避け、理解を容易にするために、コントローラ20から各部への信号線が省略されているが、コントローラ20は通信機1の各部にI/O(Input/Output)22を介して接続しており、それらの処理の開始、終了、処理内容の制御を行う。
【0018】
RAM23には、例えば送信フレームを生成するためのデータが記憶されている。ROM24は、コントローラ20が通信機1の動作を制御するための制御プログラムを格納する。コントローラ20は、制御プログラムに基づいて、通信機1を制御する。
【0019】
図2は、実施の形態に係る通信機の異なる構成例を示すブロック図である。上述の通信機1に受信機能をもたせるため、
図2に示す通信機1はさらに復調部31、並直列変換部32、FFT部33、受信側合成部34、逆演算部35、分割部36、受信部37、および送受信切替部38を備える。送信機能および受信機能を備える
図2に示す通信機1を用いて、通信機1が行う通信方法について以下に説明する。
【0020】
変調部11は、入力信号を所定の変調方式で変調し、変調信号を生成し、直並列変換部12に送る。変調方式として、例えばQPSK(Quadrature Phase-Shift Keying:四位相偏移変調)を用いる。直並列変換部12は、変調信号を直並列変換し、周波数成分が互いに直交するサブキャリアに割り当て、サブキャリア変調信号を生成する。そして、サブキャリア変調信号をIFFT部13に送る。IFFT部13は、サブキャリア変調信号のIFFTを行って変換後データを生成し、変換後データを演算部14に送る。
【0021】
演算部14は、それぞれが定めた値の範囲であるレンジであって、互いに値の範囲が重複しないレンジ、およびレンジごとに定めた振幅係数および補正係数を用い、レンジのそれぞれについて、変換後データの要素の内、絶対値が該レンジに属する要素に、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該レンジに対して定めた振幅係数である複素数を加算し、変換後データの要素の内、絶対値が該レンジに属さない要素を、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該レンジに対して定めた補正係数である複素数で置き換えて演算データを生成する。
【0022】
レンジの数は任意であり、1つのレンジを用いるよう構成してもよい。ただし、変換後データの各要素がいずれか1つのレンジに属するようにレンジを定める必要がある。例えばM個のレンジを用いて、絶対値が閾値τ
1より大きい値の範囲をレンジ1とし、絶対値が閾値τ
1以下であって閾値τ
2より大きい値の範囲をレンジ2とし、絶対値が閾値がτ
k−1以下であって閾値τ
kより大きい値の範囲をレンジkとし、絶対値が閾値τ
M−1以下である値の範囲をレンジMとする。ここでFFTサイズをNとし、変換後データの任意の要素u
iをx
i+jy
iで表す。ただしjは虚数単位である。変換後データの要素u
iの偏角を下記(1)式で表す。なおx
i=0であって、y
i>0であれば偏角はπ/2であり、x
i=0であって、y
i<0であれば偏角は3π/2である。またx
i=y
i=0の場合は、該要素の偏角は予め定めた任意の値とする。
【0024】
レンジkに対して定めた振幅係数をα
kとすると、レンジkについて、絶対値が該レンジに属する要素に、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該レンジに対して定めた振幅係数である複素数を加算した結果は、下記(2)式で表される。v
i(k)の添え字の括弧内の数字はレンジを識別するための番号である。振幅係数α
kは後述するようにPAPR(Peak-to-Average Power Ratio:ピーク対平均電力比)の低減の程度およびBER(Bit Error Rate:符号誤り率)の劣化の程度を考慮して予め定められている。また振幅係数α
kは、いずれのレンジにおいても、値が0でない変換後データの要素u
iについて、下記(2)式で表される演算結果が0にならないような値とする。例えば、振幅係数α
kとして正数を用いた場合には、いずれのレンジにおいても、変換後データの各要素の、下記(2)式で表される演算結果は0にならない。
【0026】
またレンジkに対して定めた補正係数をβ
kとすると、レンジkについて、絶対値が該レンジに属さない要素を、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該レンジに対して定めた補正係数である複素数で置き換えた結果は、下記(3)式で表される。
【0028】
ここで一例として、レンジkに対して定めた補正係数β
kを、下記(4)式で定義する。閾値τ
kはレンジkの下限値である。γ
kはレンジkに対して定めた閾値補正係数であり、任意の実数であるとする。
【0030】
演算部14は、例えば以下のように演算処理を行う。
図3は、実施の形態に係るIFFT部の演算結果の例を示す図である。軸は要素、縦軸は要素の値を表す。説明を簡易化するため、IFFT部13の演算結果である変換後データの各要素が実数である場合について説明する。この場合のFFTサイズは16である。ここで一例として、演算部14は、絶対値が閾値τ
1より大きい値の範囲をレンジ1とし、絶対値が閾値τ
1以下であって閾値τ
2より大きい値の範囲をレンジ2とし、絶対値が閾値がτ
2以下であって閾値τ
3より大きい値の範囲をレンジ3とし、絶対値が閾値τ
3以下である値の範囲をレンジ4として定めた4個のレンジを用いるとする。
【0031】
図4は、実施の形態に係る演算部が行う演算処理の例を示す図である。横軸は要素、縦軸は要素の値を表す。
図4(a)はレンジ1、
図4(b)はレンジ2、
図4(c)はレンジ3、
図4(d)はレンジ4のそれぞれについて、
図3に示す変換後データの要素の内、絶対値が該レンジに属する要素を黒丸で表し、絶対値が該レンジに属さない要素を白丸で表したものである。演算部14は、各要素に上述の演算処理を施す。黒丸で表された要素の演算結果は上記(2)式で表され、白丸で表された要素の演算結果は上記(3)式で表される。
【0032】
図5は、実施の形態に係る演算部の演算結果の例を示す図である。
図5(a)はレンジ1、
図5(b)はレンジ2、
図5(c)はレンジ3、
図5(d)はレンジ4のそれぞれについて、
図3に示す変換後データの各要素を点線の白丸で表し、上述の演算を施して生成した演算データを黒丸で表したものである。この場合は、レンジごとに定めた補正係数が互いに同じ値となるように、振幅係数および閾値補正係数を定めた。
【0033】
図6は、実施の形態に係るIFFT部の演算結果の信号点配置図の例を示す図である。FFTサイズを2048とし、あるランダムデータを入力信号としてシミュレーションを行い、FFT部13が生成した変換後データを図示した。
図7は、実施の形態に係る演算部が行う演算処理に対応する信号点配置図の例を示す図である。
図3と同様に4つのレンジを用意し、閾値τ
1=0.05、閾値τ
2=0.04、閾値τ
3=0.02とし、振幅係数α
1=0.03、振幅係数α
2=0.04、振幅係数α
3=0.06、振幅係数α
4=0.08、閾値補正係数γ
1、γ
2、γ
3、γ
4を0.01とした。
図7(a)はレンジ1、
図7(b)はレンジ2、
図7(c)はレンジ3、
図7(d)はレンジ4のそれぞれについて、絶対値が該レンジに属さない要素を0として、絶対値が該レンジに属する要素を図示したものである。
【0034】
図8は、実施の形態に係る演算部の演算結果の信号点配置図の例を示す図である。
図8(a)はレンジ1、
図8(b)はレンジ2、
図8(c)はレンジ3、
図8(d)はレンジ4のそれぞれについて、
図6に示す変換後データに、上述の演算を施して生成した演算データを表したものである。
図8(e)は、各演算データを並べて合成したデータの信号点配置図を表す。
図6に示す変換後データに上述の演算を施すことで、複素平面上の点が、複素平面の原点を中心とする円周上に移動していることがわかる。この移動により、後述するようにPAPRを低減することが可能となる。
【0035】
図9は、実施の形態に係る演算部の演算結果の異なる例を示す図である。
図9(a)はレンジ1、
図9(b)はレンジ2、
図9(c)はレンジ3、
図9(d)はレンジ4のそれぞれについて、変換後データの各要素を点線の白丸で表し、上述の演算を施して生成した演算データを黒丸で表したものである。この場合は、レンジごとに定めた補正係数が互いに異なる値となるように、振幅係数および閾値補正係数を定めた。
【0036】
図10は、実施の形態に係る演算部の演算結果の信号点配置図の異なる例を示す図である。4つのレンジを用意し、閾値τ
1=0.05、閾値τ
2=0.04、閾値τ
3=0.02とし、振幅係数α
1=0.03、振幅係数α
2=0.04、振幅係数α
3=0.06、振幅係数α
4=0.08、閾値補正係数γ
1=0.01、γ
2=0.02、γ
3=0.03、γ
4=0.04とした。
図10(a)はレンジ1、
図10(b)はレンジ2、
図10(c)はレンジ3、
図10(d)はレンジ4のそれぞれについて、
図6に示す変換後データに、上述の演算を施して生成した演算データを表したものである。
図10(e)は、各演算データを並べて合成したデータの信号点配置図を表す。この場合についても、
図6に示す変換後データに上述の演算を施すことで、複素平面上の点が、複素平面の原点を中心とする円周上に移動していることがわかる。この移動により、後述するようにPAPRを低減することが可能となる。
【0037】
演算部14は、レンジのそれぞれについて、変換後データの各要素に上述の演算を施して生成した演算データを、合成部15に送る。
【0038】
合成部15は、演算データを並べて合成し、合成したデータに基づきベースバンド信号を生成する。演算部14で変換後データに上述の演算を施して生成した演算データを、並べて合成したデータは、下記(5)式で表される。すなわち、合成したデータの要素の数は、FFTサイズに演算データの数を乗算した値となる。なお演算データを並べる順序については、下記(5)式に表すような順序に限られない。
【0040】
合成部15は、ベースバンド信号を送信部16に送る。送信部16は、ベースバンド信号から送信信号を生成し、送受信切替部38およびアンテナ10を介して他の機器に送信信号を送る。
【0041】
図11は、実施の形態に係る通信機が行う送信制御の動作の一例を示すフローチャートである。変調部11は、入力信号を所定の変調方式で変調して変調信号を生成し、直並列変換部12は、変調信号を直並列変換し、周波数成分が互いに直交するサブキャリアに割り当て、サブキャリア変調信号を生成する(ステップS110)。IFFT部13は、サブキャリア変調信号のIFFTを行って変換後データを生成する(ステップS120)。
【0042】
演算部14は、レンジのそれぞれについて、変換後データの要素の内、絶対値が該レンジに属する要素に、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該レンジに対して定めた振幅係数である複素数を加算し、変換後データの要素の内、絶対値が該レンジに属さない要素を、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該レンジに対して定めた補正係数である複素数で置き換えて演算データを生成する(ステップS130)。
【0043】
合成部15は、演算データを並べて合成し、合成したデータに基づきベースバンド信号を生成する(ステップS140)。送信部16は、ベースバンド信号から送信信号を生成し、送受信切替部38およびアンテナ10を介して他の機器に送信信号を送る(ステップS150)。ステップS150の送信処理が完了すると、処理を終了する。
【0044】
受信側での処理を以下に説明する。受信部37は、アンテナ10および送受信切替部38を介して送信信号を受信し、ベースバンド信号を生成し、分割部36に送る。分割部36は、ベースバンド信号を直並列変換し、並列信号を生成する。分割部36は、並列信号を所定の数に等分割してサブ並列信号を生成する。所定の数とは、送信側の演算部14で生成した演算データの数であり、サブ並列信号はそれぞれ対応する送信側の演算部14で生成した演算データに一致する。したがって、送信側の演算部14で1つのレンジを用いた場合には、サブ並列信号の数は1つであるので、並列信号をサブ並列信号として後続の処理を行う。分割部36は、サブ並列信号を逆演算部35に送る。
【0045】
逆演算部35は、サブ並列信号ごとに定めた、それぞれが定めた値の範囲であるレンジおよび振幅係数を用い、サブ並列信号のそれぞれについて、該サブ並列信号の要素の内、絶対値が該サブ並列信号に対して定めたレンジに属する要素を0で置き換え、該サブ並列信号の要素の内、絶対値が該サブ並列信号に対して定めたレンジに属さない要素から、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該サブ並列信号に対して定めた振幅係数である複素数を減算して逆演算データを生成する。
【0046】
サブ並列信号に対して定めたレンジとは、該サブ並列信号に一致する演算データを生成するために、送信側の演算部14で用いたレンジであり、サブ並列信号に対して定めた振幅係数とは、送信側の演算部14で用いた該レンジに対して定めた振幅係数である。受信側では送信側の合成部15で演算データを合成する際の演算データの並び順、該演算データに対応する送信側の演算部14で用いたレンジ、および該レンジごとに定めた振幅係数および補正係数についての情報を予め保持しているものとする。
【0047】
例えば送信側の演算部14でM個のレンジを用いた場合、絶対値が閾値τ’
1以下であって閾値τ’
2より大きい値の範囲を受信側レンジ1とし、絶対値が閾値τ’
2以下であって閾値τ’
3より大きい値の範囲を受信側レンジ2とし、絶対値が閾値がτ’
k以下であって閾値τ’
k+1より大きい値の範囲を受信側レンジkとし、絶対値が閾値τ’
M以下である値の範囲を受信側レンジMとする。
【0048】
逆演算部35は、例えば各受信側レンジの上限値として下記(6)式で表される閾値を用いる。式中のδ
kは、レンジごとに定めた受信側閾値補正係数である。受信側閾値補正係数は、任意の値であり、伝送路において受ける雑音の影響を考慮して好適な値を定めればよい。
【0050】
サブ並列信号の任意の要素v
i(k)をx’
i+jy’
iで表し、上記(1)式と同様に、該要素の偏角を下記(7)式で表す。
【0052】
あるサブ並列信号に対して定めたレンジをレンジkとすると、該サブ並列信号の要素の内、絶対値が該レンジに属さない要素に、上述の演算を施した結果は、下記(8)式で表される。v
i(k)およびw
i(k)の添え字の括弧内の数字は、サブ並列信号を識別するための番号である。
【0054】
逆演算部35は、例えば以下のように演算処理を行う。
図12は、実施の形態に係る逆演算部が行う演算処理の例を示す図である。横軸は要素、縦軸は要素の値を表す。並列信号を4等分して生成したサブ並列信号をそれぞれ、サブ並列信号1、サブ並列信号2、サブ並列信号3、サブ並列信号4とし、それぞれ
図5に示す演算データに一致するものとする。逆演算部35は、サブ並列信号のそれぞれについて、同じ補正係数βに同じ受信側閾値補正係数δを加算した値を、該サブ並列信号に対して定めた受信側レンジの上限値として用いる。
図12(a)はサブ並列信号1、
図12(b)はサブ並列信号2、
図12(c)はサブ並列信号3、
図12(d)はサブ並列信号4のそれぞれについて、絶対値が該サブ並列信号に対して定めたレンジに属する要素を白丸で表し、絶対値が該サブ並列信号に対して定めたレンジに属さない要素を黒丸で表したものである。逆演算部35は、サブ並列信号の各要素に上述の演算を施す。黒丸で表された要素の演算結果は上記(8)式で表され、白丸で表された要素の演算結果は0である。
【0055】
図13は、実施の形態に係る逆演算部の演算結果の例を示す図である。横軸は要素、縦軸は要素の値を表す。
図13(a)はサブ並列信号1、
図13(b)はサブ並列信号2、
図13(c)はサブ並列信号3、
図13(d)はサブ並列信号4のそれぞれについて、サブ並列信号の各要素を点線の白丸で表し、上述の演算を施して生成した逆演算データを黒丸で表したものである。
図5に示すように、送信側の演算部14でレンジごとに定めた補正係数が互いに同じ値となるようにした場合には、受信側においては受信側レンジのそれぞれについて、同じ補正係数βに同じ受信側閾値補正係数δを加算した値を、受信側レンジの上限値として用いることができる。
【0056】
図14は、実施の形態に係る逆演算部が行う演算処理の異なる例を示す図である。この場合は、サブ並列信号のそれぞれが、
図9に示す演算データに一致するものとする。逆演算部35は、絶対値が閾値τ’
1以下であって閾値τ’
2より大きい値の範囲を受信側レンジ1とし、絶対値が閾値τ’
2以下であって閾値τ’
3より大きい値の範囲を受信側レンジ2とし、絶対値が閾値τ’
3以下であって閾値τ’
4より大きい値の範囲を受信側レンジ3とし、絶対値が閾値τ’
4以下である値の範囲を受信側レンジ4とする。
【0057】
上記(6)式で表されるように、サブ並列信号に一致する演算データに対して定めた、送信側の演算部14で用いた補正係数β
kにサブ並列信号ごとに定めた受信側閾値補正係数δ
kを加算した値τ’
kを、該サブ並列信号に対して定めたレンジの上限値として用いる。
図14(a)はサブ並列信号1、
図14(b)はサブ並列信号2、
図14(c)はサブ並列信号3、
図14(d)はサブ並列信号4のそれぞれについて、絶対値が該サブ並列信号に対して定めたレンジに属する要素を白丸で表し、絶対値が該サブ並列信号に対して定めたレンジに属さない要素を黒丸で表したものである。逆演算部35は、サブ並列信号の各要素に上述の演算を施す。黒丸で表された要素の演算結果は上記(8)式で表され、白丸で表された要素の演算結果は0である。
【0058】
図15は、実施の形態に係る逆演算部の演算結果の異なる例を示す図である。
図15(a)はサブ並列信号1、
図15(b)はサブ並列信号2、
図15(c)はサブ並列信号3、
図15(d)はサブ並列信号4のそれぞれについて、サブ並列信号の各要素を点線の白丸で表し、上述の演算を施して生成した逆演算データを黒丸で表したものである。
【0059】
逆演算部35は、サブ並列信号のそれぞれについて、サブ並列信号の各要素に上述の演算を施して生成した逆演算データを、受信側合成部34に送る。
【0060】
受信側合成部34は、逆演算データを合算し、合算したデータをFFT部33に送る。FFTサイズがN個の場合にレンジの数をM個とすると、合算したデータは、下記(9)式で表される。
図13、
図15に示す逆演算データを合算すると、それぞれ
図3に示す変換後データを得ることができる。
【0062】
FFT部33は、受信側合成部34から送られた、逆演算データを合算したデータのFFTを行い、サブキャリア変調信号を生成する。FFT部33は、サブキャリア変調信号を並直列変換部32に送る。
【0063】
並直列変換部32は、サブキャリア変調信号を並直列変換し、直列信号を生成して復調部31に送る。復調部31は、直列信号を所定の復調方式で復調する。例えば、復調部31は直列信号のQPSK復調を行う。これにより変調部11で変調した入力信号を復調部31で復調して出力することができる。
【0064】
図16は、実施の形態に係る通信機が行う受信制御の動作の一例を示すフローチャートである。受信部37は、アンテナ10および送受信切替部38を介して送信信号を受信し、ベースバンド信号を生成する(ステップS210)。分割部36は、ベースバンド信号を直並列変換し、並列信号を生成する(ステップS220)。分割部36は、並列信号を所定の数に等分割してサブ並列信号を生成する(ステップS230)。
【0065】
逆演算部35は、サブ並列信号のそれぞれについて、該サブ並列信号の要素の内、絶対値が該サブ並列信号に対応付けたレンジに属する要素を0で置き換え、該サブ並列信号の要素の内、絶対値が該サブ並列信号に対応付けたレンジに属さない要素から、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該サブ並列信号に対応付けた振幅係数である複素数を減算して逆演算データを生成する(ステップS240)。
【0066】
受信側合成部34は、逆演算データを合算し、FFT部33は、逆演算データを合算したデータのFFTを行い、サブキャリア変調信号を生成する(ステップS250)。並直列変換部32は、サブキャリア変調信号を並直列変換して直列信号を生成し、復調部31は、直列信号を所定の復調方式で復調する(ステップS260)。ステップS260の復調処理が完了すると、処理を終了する。
【0067】
以上説明した原理に従って、通信機1は例えば以下のように通信を行う。FFTサイズが16の場合に、IFFT部13で生成した変換後データuが下記(10)式で表されるとする。添え字のTは行列を転置表示していることを示す。
【0069】
ここで一例として、演算部14は、
図3と同様に4つのレンジを用意し、閾値τ
1=6、閾値τ
2=4、閾値τ
3=2とし、振幅係数α
1=0、振幅係数α
2=2、振幅係数α
3=4、振幅係数α
4=6、閾値補正係数γ
1、γ
2、γ
3、γ
4を0.5として演算処理を行う。
【0070】
演算部14は、レンジのそれぞれについて、上記(10)式で表される変換後データuの要素の内、絶対値が該レンジに属する要素に、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該レンジに対して定めた振幅係数である複素数を加算し、上記(10)式で表される変換後データuの要素の内、絶対値が該レンジに属さない要素を、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該レンジに対して定めた補正係数である複素数で置き換えて演算データを生成する。演算データのそれぞれは、下記(11)式で表される。
【0072】
合成部15は、下記(12)式で表されるように演算データを並べて合成し、合成したデータからベースバンド信号を生成し、送信部16に送る。送信部16は、ベースバンド信号から送信信号を生成し、送受信切替部38およびアンテナ10を介して他の機器に送信信号を送る。
【0074】
受信部37は、アンテナ10および送受信切替部38を介して送信信号を受信し、ベースバンド信号を生成し、分割部36に送る。分割部36は、ベースバンド信号を直並列変換し、並列信号を生成する。分割部36は、並列信号を並列信号を所定の数に等分割してサブ並列信号を生成する。
【0075】
ここで一例として、逆演算部35は、
図12と同様に、サブ並列信号ごとに同じ補正係数β=5.5に同じ受信側閾値補正係数δ=0.25を加算した値を、該サブ並列信号に対して定めたレンジの上限値として用いる。
【0076】
逆演算部35は、サブ並列信号に対して定めた値の範囲であるレンジおよび振幅係数を用い、サブ並列信号のそれぞれについて、該サブ並列信号の要素の内、絶対値が該サブ並列信号に対応付けたレンジに属する要素を0で置き換え、該サブ並列信号の要素の内、絶対値が該サブ並列信号に対応付けたレンジに属さない要素から、偏角が該要素と同じであり、絶対値が該サブ並列信号に対応付けた振幅係数である複素数を減算して逆演算データを生成する。逆演算データのそれぞれは、下記(13)式で表される。
【0078】
受信側合成部34は、逆演算データを合算し、合算したデータをFFT部33に送る。合算したデータは、上記(10)式に一致する。したがって、受信側で入力信号を復元できることがわかる。
【0079】
以上説明したとおり、本発明の実施の形態に係る通信機1によれば、OFDM通信方式において、各レンジについて、IFFT後のデータに所定の演算を施して生成した演算データを合成して、ベースバンド信号を生成することでPAPRを低減することが可能となる。また後述するように、PAPRを低減し、PAPRの低減の程度を制御することが可能となる。
【0080】
(具体例)
次に、シミュレーションにより実施の形態に係る発明の効果を説明する。変調方式をQPSKとし、FFTサイズを2048として、PAPRのCCDF(Complementary Cumulative Distribution Function:相補累積分布関数)、すなわちPAPRの発生確率の特性を比較した。
図17は、シミュレーションしたCCDFの特性を示す図である。横軸はPAPR(単位:dB)、縦軸はPAPRのCCDFである。従来技術とは、上述のような演算を加えずにサブキャリア変調信号からベースバンド信号を生成する方法である。本実施の形態においては
図3と同様に4つのレンジを用意し、閾値τ
1=0.05、閾値τ
2=0.04、閾値τ
3=0.02とし、振幅係数α
1=0.03、振幅係数α
2=0.04、振幅係数α
3=0.06、振幅係数α
4=0.08とした。また閾値補正係数γ
1、γ
2、γ
3、γ
4を同じ値γとし、補正係数β
kは、上記(4)式で表されるものとし、γの値を変えてシミュレーションを行った。
【0081】
従来技術のPAPRのCCDF特性が太い実線のグラフであり、本実施の形態においてγ=0.02とした場合のCCDF特性が細い実線のグラフであり、γ=0.03の場合が点線のグラフであり、γ=0.04の場合が一点鎖線のグラフである。図に示す範囲において、本実施の形態に係る発明のPAPRはいずれの場合も従来技術と比べて低減されている。また閾値補正係数γを小さくするにつれて、PAPRがより低減されていることがわかる。上述のシミュレーションでは、閾値補正係数γの値を変化させたが、振幅係数α
kおよび補正係数β
kの値を変化させてもよい。補正係数β
kと振幅係数α
kの差分が小さくなるようにすることで、PAPRを低減することができる。
【0082】
γ=0.01として、サブキャリア変調信号の各要素の位相が同じである同一信号を入力信号としてシミュレーションを行った場合のPAPRは、従来技術が33.1dBであるのに対し、本実施の形態に係る発明のPAPRは23.2dBとなり、PAPRが大きく改善した。なおレンジの数を増やすことで、PAPRを低減することができるが、レンジの増加により伝送率が悪化する。
【0083】
同様にBERについてのシミュレーションを行った。受信側閾値補正係数δ
1、δ
2、δ
3、δ
4を同じ値δとし、δ=γ/2として、シミュレーションを行った。
図18は、シミュレーションしたBER特性を示す図である。横軸はEb/No(Energy per Bit to NOise power spectral density ratio:ビットエネルギー対雑音電力密度比)、縦軸はBERである。Eb/Noの単位はdBである。従来技術のBERはプロット点を四角で表したグラフであり、本実施の形態においてγ=0.02とした場合のBERがプロット点を三角で表したグラフであり、γ=0.03とした場合のBERがプロット点を丸で表したグラフであり、γ=0.04とした場合のBERがプロット点を菱形で表したグラフである。γ=0.03およびγ=0.04の場合は、従来技術よりもBERが改善しているが、γ=0.02の場合は、従来技術よりもBERが劣化しており、γを小さくするにつれて、BERが劣化することがわかる。これは、γを小さくすることで、上記(2)式で表される演算結果と上記(3)式で表される演算結果との差が小さくなり、伝送中に雑音の影響を受けると、受信側で上記(2)式の演算結果と上記(3)式の演算結果とを正しく区別することができなくなるためである。
【0084】
レンジの数、振幅係数、および閾値を上述のシミュレーションと同じ値とし、閾値補正係数γ=0.04とし、受信側閾値補正係数δ
1、δ
2、δ
3、δ
4を同じ値δとし、δの値を変えてシミュレーションを行った。横軸はEb/No(単位:dB)、縦軸はBERである。従来技術のBERはプロット点を四角で表した実線のグラフであり、本実施の形態においてδ=0.01とした場合のBERがプロット点を三角で表した実線のグラフであり、δ=0.02とした場合のBERがプロット点を丸で表した実線のグラフであり、δ=0.03とした場合のBERがプロット点を菱形で表した実線のグラフであり、δ=0.035とした場合のBERがプロット点を四角で表した点線のグラフである。この場合は、δ=0.03が、受信側で上記(2)式で表される演算結果と上記(3)式で表される演算結果とを正しく区別することができる好適な値であることがわかる。したがって、送信側で用いたレンジの数、振幅係数、補正係数、および閾値補正係数に応じて好適な受信側閾値補正係数を用いるよう構成すればよい。
【0085】
BERは、送信電力を上げることで、改善することが可能である。また予めシミュレーションを行って、好適な振幅係数、補正係数、閾値補正係数および受信側閾値補正係数の組み合わせを検出することで、BERを従来技術よりも改善することが可能である。
【0086】
上述のシミュレーションにより、各レンジについて、IFFT後のデータに所定の演算を施して生成した演算データを合成して、ベースバンド信号を生成することでPAPRを低減できることがわかった。また送信側で用いたレンジの数、振幅係数、補正係数、閾値補正係数、および受信側閾値補正係数を変更することでPAPRの低減の程度および符号誤り率を制御できることがわかった。
【0087】
本発明の実施の形態は上述の実施の形態に限られない。変調部11の変調方式は、QPSKに限られず、QPSK以外のPSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)やQAM(Quadrature Amplitude Modulation:直角位相振幅変調)などを用いることができる。変調部11と直並列変換部12の順序を変えて、入力信号を直並列変換してサブキャリア信号に割り当て、並列信号の各データを所定の変調方式で変調するよう構成してもよい。その場合、受信側では復調部31と並直列変換部32の順序を変えて、復調処理を行う。
【0088】
IFFT部13は、IFFTの代わりにIDFTを行うよう構成してもよいし、FFT部33は、FFTの代わりにDFTを行うよう構成してもよい。