(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を参照しながら、本発明に係る画像投射装置および画像投射方法の好適な実施形態を説明する。かかる実施形態に示す具体的な数値および外観構成などは、本発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本発明に直接関係のない要素は詳細な説明および図示を省略している。
【0016】
<第1の実施形態>
<画像投射装置の外観>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像投射装置(プロジェクタ装置)1の外観の例を示す図である。
図1(a)はプロジェクタ装置1を操作部が設けられる第1面側から見た斜視図、
図1(b)はプロジェクタ装置1を操作部と対向する側の第2面側から見た斜視図である。プロジェクタ装置1は、ドラム部10と基台20とを備える。ドラム部10は基台20に対して回転駆動が可能な回転体である。そして、基台20がそのドラム部10を回転可能に支持する支持部や、ドラム部10の回転駆動制御や画像処理制御等の各種制御を行う回路部を有する。
【0017】
ドラム部10は、基台20の一部である側板部21aおよび21bの内側に設けられた、ベアリングなどからなる、図示しない回転軸によって回転駆動可能に支持される。ドラム部10の内部には、光源と、光源から射出された光を画像データに従い変調する表示素子と、表示素子を駆動する駆動回路と、表示素子で変調された光を外部に投射する光学系を含む光学エンジン部と、光源などを冷却するためのファンなどによる冷却手段とが設けられている。
【0018】
ドラム部10は、窓部11および13が設けられる。窓部11は、上述した光学系の投射レンズ12から投射された光が外部に照射されるように設けられる。窓部13は、例えば赤外線や超音波などを利用して被投射媒体までの距離を導出する距離センサが設けられる。また、ドラム部10には、ファンによる放熱のための吸排気を行う吸排気口22aを備えている。
【0019】
基台20の内部には、回路部の各種基板や電源部、ドラム部10を回転駆動するための駆動部などが設けられている。なお、この駆動部によるドラム部10の回転駆動については、後述する。基台20の上記第1面側には、ユーザがこのプロジェクタ装置1を制御するために各種操作を入力するための操作部14と、ユーザが図示しないリモートコントロールコマンダを使用してこのプロジェクタ装置1を遠隔制御する際の、リモートコントロールコマンダから送信された信号を受信する受信部15とが設けられている。操作部14は、ユーザの操作入力を受け付ける各種操作子や、このプロジェクタ装置1の状態を表示するための表示部などを有している。
【0020】
基台20の上記第1面側および上記第2面側には、それぞれ吸排気口16aおよび16bが設けられ、回転駆動されてドラム部10の吸排気口22aが基台20側を向いた姿勢をとっている場合でも、ドラム部10内の放熱効率を低下させないよう、吸気または排気を行うことが可能となっている。また、筐体の側面に設けられる吸排気口17は、回路部の放熱のための吸排気を行う。
【0021】
<ドラム部の回転駆動>
図2は、基台20に設けられた駆動部32によるドラム部10の回転駆動について説明するための図である。
図2(a)は、ドラム部10のカバーなどを取り去った状態のドラム30と、基台20に設けられた駆動部32の構成を示す図である。ドラム30には、上述の窓部11に対応する窓部34と、窓部13に対応する窓部33とが設けられている。ドラム30は回転軸36を有し、この回転軸36により、支持部31aおよび31bに設けられた、ベアリングを用いた軸受け37に対して回転駆動可能に取り付けられる。
【0022】
ドラム30の一方の面には、円周上にギア35が設けられている。支持部31bに設けられた駆動部32により、ギア35を介してドラム30が回転駆動される。ギア35の内周部の突起46aおよび46bは、ドラム30の回転動作の始点ならびに終点を検出するために設けられる。
【0023】
図2(b)は、ドラム30および基台20に設けられた駆動部32の構成をより詳細に示すための拡大図である。駆動部32は、モータ40を有すると共に、モータ40の回転軸により直接駆動されるウォームギア41、ウォームギア41による回転を伝達するギア42aおよび42b、ならびに、ギア42bから伝達された回転をドラム30のギア35に伝達するギア43を含むギア群を有する。このギア群によりモータ40の回転をギア35に伝達することで、ドラム30をモータ40の回転に応じて回転させることができる。モータ40としては、例えば所定のパルス幅の駆動パルスにより所定角度毎の回転制御を行うステッピングモータを適用することができる。
【0024】
支持部31bに対して、フォトインタラプタ51aおよび51bが設けられる。フォトインタラプタ51aおよび51bは、それぞれ、ギア35の内周部に設けられる突起46bおよび46aを検出する。フォトインタラプタ51aおよび51bの出力信号は、後述する回転制御部104に供給される。第1の実施形態では、フォトインタラプタ51aに突起46bが検出されることで、回転制御部104は、ドラム30の姿勢が回転動作の終点に達した姿勢であると判断する。また、フォトインタラプタ51bに突起46aが検出されることで、回転制御部104は、ドラム30の姿勢が回転動作の始点に達した姿勢であると判断する。
【0025】
以下、フォトインタラプタ51bに突起46aが検出される位置から、フォトインタラプタ51aに突起46bが検出される位置まで、ドラム30の円周における長さが大きい方の弧を介してドラム30が回転する方向を、正方向とする。すなわち、ドラム30の回転角は、正方向に向けて増加する。
【0026】
なお、第1の実施形態では、フォトインタラプタ51bが突起46aを検出する検出位置と、フォトインタラプタ51aが突起46bを検出する検出位置との間の回転軸36を挟む角度が270°になるように、フォトインタラプタ51aおよび51b、ならびに、突起46aおよび46bがそれぞれ配される。
【0027】
例えば、モータ40としてステッピングモータを適用した場合、フォトインタラプタ51bによる突起46aの検出タイミングと、モータ40を駆動するための駆動パルス数とに基づき、ドラム30の姿勢を特定し、投射レンズ12による投射角を求めることができる。
【0028】
なお、モータ40は、ステッピングモータに限らず、例えばDCモータを適用することもできる。この場合、例えば、
図2(b)に示されるように、ギア43に対して同一軸上にギア43と共に回転するコードホイール44を設けると共に、支持部31bに対してフォトリフレクタ50aおよび50bを設け、ロータリエンコーダを構成する。
【0029】
コードホイール44は、例えば、半径方向に位相が異ならされる透過部45aおよび反射部45bが設けられる。フォトリフレクタ50aおよび50bにより、コードホイール44からのそれぞれの位相の反射光を受光することで、ギア43の回転速度と回動方向とを検出できる。そして、これら検出されたギア43の回転速度および回動方向に基づいてドラム30の回転速度および回動方向が導出される。導出されたドラム30の回転速度および回動方向と、フォトインタラプタ51aによる突起46bの検出結果とに基づき、ドラム30の姿勢を特定し、投射レンズ12による投射角を求めることができる。
【0030】
上述のような構成において、ドラム部10の初期姿勢を、投射レンズ12による投射方向が鉛直方向を向いている姿勢とする。したがって、初期状態では、投射レンズ12が完全に基台20に隠れている。
図3(a)は、初期姿勢のドラム部10の様子を示す。第1の実施形態では、この初期姿勢においてフォトインタラプタ51bに突起46aが検出され、後述する回転制御部104により、ドラム30が回転動作の始点に達していると判断される。
【0031】
なお、以下では、特に記載のない限り、「ドラム部10の方向」および「ドラム部10の角度」がそれぞれ「投射レンズ12による投射方向」および「投射レンズ12による投射角」と同義であるものとする。
【0032】
プロジェクタ装置1が起動されると、投射レンズ12による投射方向が上記第1面側を向くように、駆動部32がドラム部10の回転を開始する。その後、ドラム部10は、例えば、ドラム部10の方向すなわち投射レンズ12による投射方向が第1面側において水平になる位置まで回転し、回転を一旦停止したとする。この、投射レンズ12による投射方向が第1面側において水平になった場合の投射レンズ12の投射角を、投射角0°と定義する。
図3(b)に、投射角0°のときの、ドラム部10(投射レンズ12)の姿勢の様子を示す。以下、この投射角0°の姿勢のときを基準として、投射角θとなるドラム部10(投射レンズ12)の姿勢を、θ姿勢と呼ぶ。
【0033】
例えば、0°姿勢において画像データが入力され、光源が点灯されたとする。ドラム部10において、光源から射出された光が、駆動回路により駆動された表示素子により画像データに従い変調されて光学系に入射される。そして、画像データに従い変調された光が、投射レンズ12から水平方向に投射され、スクリーンや壁面などの被投射媒体に照射される。
【0034】
ユーザは、操作部14などを操作することで、画像データによる投射レンズ12からの投射を行ったまま、回転軸36を中心に、ドラム部10を回転させることができる。例えば、0°姿勢から正方向にドラム部10を回転させて回転角を90°として(90°姿勢)、投射レンズ12からの光を基台20の底面に対して垂直上向きに投射させることができる。
図3(c)は、投射角θが90°のときの姿勢、つまり90°姿勢のドラム部10の様子を示す。
【0035】
ドラム部10は、90°姿勢からさらに正方向に回転させることができる。この場合、投射レンズ12の投射方向は、基台20の底面に対して垂直上向きの方向から、上記第2面側の方向に変化していく。
図3(d)は、ドラム部10が
図3(c)の90°姿勢からさらに正方向に回転され、投射角θが180°のときの姿勢、つまり180°姿勢となった様子を示す。第1の実施形態に係るプロジェクタ装置1では、この180°姿勢においてフォトインタラプタ51aに突起46bが検出され、後述する回転制御部104により、ドラム30の回転動作の終点に達したと判断される。
【0036】
詳細は後述するが、第1の実施形態によるプロジェクタ装置1は、投射を行ったまま、例えば
図3(b)〜
図3(d)に示されるようにしてドラム部10を回転させることで、投射レンズ12による投射角に応じて、画像データにおける投射領域を変化(移動)させることができる。これにより、投射された画像の内容および当該投射された画像の被投射媒体における投射位置の変化と、入力された画像データに係る全画像領域における投射する画像として切り出された画像領域の内容および位置の変化とを対応させることができる。したがって、ユーザは、入力画像データに係る全画像領域中のどの領域が投射されているかを、投射された画像の被投影媒体における位置に基づき直感的に把握することができると共に、投射された画像の内容を変更する操作を直感的に行うことができる。
【0037】
また、光学系は、光学ズーム機構を備えており、操作部14に対する操作により、投射画像が被投射媒体に投射される際の大きさを拡大・縮小することができる。なお、以下では、この光学系による投射画像が被投射媒体に投射される際の大きさの拡大・縮小を、単に「ズーム」ということもある。例えば、光学系がズームを行った場合、投射画像は、そのズームが行われた時点の光学系の光軸を中心に拡大・縮小されることになる。
【0038】
ユーザがプロジェクタ装置1による投射画像の投射を終了し、操作部14に対してプロジェクタ装置1の停止を指示する操作を行いプロジェクタ装置1を停止させると、先ず、ドラム部10が初期姿勢に戻るように回転制御される。ドラム部10が鉛直方向を向き、初期姿勢に戻ったことが検出されると、光源が消灯され、光源の冷却に要する所定時間の後、電源がOFFとされる。ドラム部10を鉛直方向に向けてから電源をOFFとすることで、非使用時に投射レンズ12のレンズ表面が汚れるのを防ぐことができる。
【0039】
<プロジェクタ装置1の内部構成>
次に、上述したような、第1の実施形態に係るプロジェクタ装置1の動作を実現するための構成について説明する。
図4は、プロジェクタ装置1において、基台20内に設けられる回路部、ならびに、ドラム部10内に設けられる光学エンジン部110の一例の構成を示す。
【0040】
光学エンジン部110は、光源111、表示素子114および投射レンズ12を含む。光源111は、例えばそれぞれ赤色(R)、緑色(G)および青色(B)を発光する3のLED(Light Emitting Diode)を含む。光源111から射出されたRGB各色の光束は、それぞれ図示されない光学系を介して表示素子114に照射される。
【0041】
以下の説明において、表示素子114は、透過型液晶表示素子であり、例えば水平1280画素×垂直800画素のサイズを有するものとする。勿論、表示素子114のサイズはこの例に限定されるものではない。表示素子114は、図示されない駆動回路によって駆動され、RGB各色の光束を画像データに従いそれぞれ変調して射出する。表示素子114から射出された、画像データに従い変調されたRGB各色の光束は、図示されない光学系を介して投射レンズ12に入射され、プロジェクタ装置1の外部に投射される。
【0042】
なお、表示素子114は、透過型液晶表示素子を用いた構成に限定されない。例えば、表示素子114として、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)を用いた反射型液晶表示素子、あるいは、DMD(Digital Micromirror Device)で構成してもよい。その場合、適用する表示素子に応じた光学系および駆動回路でプロジェクタ装置1を構成するものとする。
【0043】
投射レンズ12は、組み合わされた複数のレンズと、制御信号に応じてレンズを駆動するレンズ駆動部とを有する。例えば、レンズ駆動部は、窓部13に設けられた距離センサからの出力信号に基づき測距された結果に従い投射レンズ12に含まれるレンズを駆動して、フォーカス制御を行う。また、レンズ駆動部は、後述する画角制御部106から供給されるズーム命令に従いレンズを駆動して画角を変化させ、光学ズームの制御を行う。
【0044】
上述したように、光学エンジン部110は、回転機構部105により360°の回動を可能とされたドラム部10内に設けられる。回転機構部105は、
図2を用いて説明した駆動部32と、ドラム部10側の構成であるギア35とを含み、モータ40の回転を利用してドラム部10を所定に回転させる。すなわち、この回転機構部105によって、投射レンズ12の投射方向が変更されることになる。
【0045】
プロジェクタ装置1の回路部は、画像切り出し部100と、メモリ101と、画像処理部102と、画像制御部103と、回転制御部104と、画角制御部106と、タイミングジェネレータ(TG)107と、CPU120とを含む。タイミングジェネレータ107は、垂直同期信号VDを生成し、画像処理部102と、画像制御部103と、回転制御部104と、表示素子114を駆動する図示されない駆動回路とに、生成した垂直同期信号VDを供給する。
【0046】
CPU(Central Processing Unit)120は、それぞれ図示を省略するROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)が接続され、ROMに予め記憶されたプログラムに従い、RAMをワークメモリとして用いて、投射画像の投射、投射角の変更、画像の切り出しといった、プロジェクタ装置1の各種処理を統括的に制御する。
【0047】
例えば、CPU120は、ユーザ操作に応じて操作部14から供給された制御信号に基づき、プログラムに従いこのプロジェクタ装置1の各部を制御する。これにより、ユーザ操作に従ったプロジェクタ装置1の動作が可能となる。これに限らず、CPU120は、例えば図示されないデータ入力部から入力されたスクリプトに従いプロジェクタ装置1の各部を制御する。これにより、プロジェクタ装置1の動作の自動制御が可能となる。
【0048】
静止画像または動画像の画像データがプロジェクタ装置1に入力され、画像切り出し部100に供給される。画像切り出し部100は、供給された画像データをメモリ101に格納する。メモリ101は、画像データを画像単位で格納する。すなわち、画像データが静止画像データの場合は1枚の静止画像毎に、動画像データの場合は当該動画像データを構成するフレーム画像毎に、対応するデータを格納する。メモリ101は、例えば、デジタルハイビジョン放送の規格に対応し、1920画素×1080画素のフレーム画像を1または複数枚格納可能とされている。画像切り出し部100は、メモリ101に格納された画像データに係るフレーム画像の全領域から、画像制御部103が指定した画像領域を切り出して(抽出して)画像データとして出力する。
【0049】
なお、入力画像データは、メモリ101における画像データの格納単位に対応したサイズに整形されて、プロジェクタ装置1に入力されると好ましい。この例では、入力画像データは、予め1920画素×1080画素に画像サイズを整形されてプロジェクタ装置1に入力される。これに限らず、任意のサイズで入力された画像データを1920画素×1080画素のサイズの画像データに整形する画像整形部を、プロジェクタ装置1の画像切り出し部100の前段に設けてもよい。
【0050】
画像処理部102に対して、画像切り出し部100から出力された画像データが供給される。画像処理部102は、画像処理を施した画像データを、タイミングジェネレータ107から供給される垂直同期信号VDに示されるタイミングに基づいて出力する。
【0051】
画像処理部102は、例えば図示されないメモリを用いて、供給された画像データに対して画像処理を施す。例えば、画像処理部102は、画像切り出し部100から供給された画像データに対して、サイズが表示素子114のサイズに合致するようにサイズ変換処理を施す。画像処理部102は、それ以外にも様々な画像の処理を施すことが出来る。例えば、画像データに対するサイズ変換処理を、一般的な線形変換処理を用いて行うことができる。なお、画像切り出し部100から供給された画像データのサイズが表示素子114のサイズと合致している場合は、当該画像データをそのまま出力してもよい。
【0052】
さらには、画像処理部102は、投射される画像に対し、いわゆるキーストン補正に関する処理を施すこともできる。
【0053】
また、画像のアスペクト比を一定にして補間(オーバーサンプリング)することにより所定の特性の補間フィルタをかけて画像の一部または全部を大きくする、折り返し歪みをとるために縮小率に応じたローパスフィルタをかけて間引き(サブサンプリング)することにより画像の一部または全部を小さくする、又はフィルタをかけずにそのままの大きさとすることもできる。
【0054】
また、画像が斜め方向に投射されたときに、周辺部でフォーカスがずれて画像がぼけてしまうのを防止するために、ラプラシアンなどのオペレータ(もしくは一次元フィルタを水平方向と垂直方向にかけること)によるエッジ強調処理を行うことで投射された、上述の周辺部のぼけた画像部分のエッジを強調することができる。
【0055】
さらには、上記キーストン補正などにより投射サイズ(面積)が変更されることで、画面全体の明るさが変化してしまうことを防止するために、明るさを均一に保つように、適応的な輝度調整を行うこともできる。そして、画像処理部102は、投射される画像テクスチャーの周辺部が斜め線を含むような場合には、エッジジャギが目立たないように、局所的なハーフトーンを混入したり、局所的なローパスフィルタを施したりして、エッジジャギをぼかすことで、斜め線がギザギザな線として観察されるのを防止することもできる。
【0056】
画像処理部102から出力された画像データは、表示素子114に供給される。実際には、この画像データは、表示素子114を駆動する駆動回路に供給される。駆動回路は、供給された画像データおよび垂直同期信号VDに基づいて表示素子114を駆動する。例えば駆動回路は、表示素子114による表示を、タイミングジェネレータ107から供給される垂直同期信号VDのタイミングに従い更新する。
【0057】
回転制御部104は、例えば操作部14に対するユーザ操作に応じたCPU120からの命令に従い、ステッピングモータであるモータ40を駆動するための所定のパルス幅の駆動パルスを生成し、回転機構部105に供給する。回転制御部104は、タイミングジェネレータ107から供給される垂直同期信号VDに対して同期的に駆動パルスを生成する。
【0058】
回転機構部105は、上述した駆動部32と、フォトインタラプタ51aおよび51bとを含む。回転機構部105において、駆動部32は、回転制御部104から供給される駆動パルスに従いモータ40を駆動して、ドラム部10(ドラム30)の回転動作を制御する。
【0059】
一方、回転制御部104に対して、回転機構部105から上述したフォトインタラプタ51aおよび51bの出力が供給される。回転制御部104は、例えばカウンタを有し、駆動パルスのパルス数を計数する。回転制御部104は、フォトインタラプタ51bの出力に基づき突起46aの検出タイミングを取得し、カウンタに計数されたパルス数を、この突起46aの検出タイミングでリセットする。回転制御部104は、カウンタに計数されたパルス数に基づき、ドラム部10(ドラム30)の角度を逐次的に求めることができ、ドラム部10の姿勢(角度)を取得できる。ドラム部10の角度を示す情報は、画像制御部103に供給される。このようにして、回転制御部104は、投射レンズ12の投射方向が変更された場合に、変更前の投射方向と変更後の投射方向との間の角度を導出することができる。
【0060】
画角制御部106は、例えば操作部14に対するユーザ操作に応じたCPU120からの命令に従い、投射レンズ12に対してズーム指示、つまり画角の変更指示を出す。投射レンズ12のレンズ駆動部は、このズーム指示に従いレンズを駆動し、ズーム制御を行う。画角制御部106は、ズーム指示、及びそのズーム指示に係るズーム倍率等から導出された画角に関する情報を画像制御部103に供給する。
【0061】
画像制御部103は、回転制御部104から供給される角度に関する情報と画角制御部106から供給される画角に関する情報とに基づき、画像切り出し部100による画像切り出し領域を指定する。このとき、画像制御部103は、画像データにおける切り出し領域を、投射レンズ12の変更の前後の投射方向間の角度に応じたライン位置に基づき指定する。画像制御部103は、画像切り出し部100に対して画像切り出し領域の指定を行う。さらに、画像制御部103は、画像切り出し部100に対して、指定した画像切り出し領域からの画像データの読み出しを、タイミングジェネレータ107から供給された垂直同期信号VDと同期して指示する。
【0062】
なお、上述では、画像切り出し部100、画像処理部102、画像制御部103、回転制御部104および画角制御部106がそれぞれ別個のハードウェアであるかのように説明したが、これはこの例に限定されない。例えば、これら各部は、CPU120上で動作するプログラムのモジュールにより実現されてもよい。
【0063】
<画像データの切り出し処理>
次に、第1の実施形態に係る、画像制御部103および画像切り出し部100による、メモリ101に格納される画像データの切り出し処理について説明する。
図5は、メモリ101に格納される画像データの切り出し処理を説明するための概念図である。
図5(a)を参照し、メモリ101に格納される画像データ140から指定された切り出し領域の画像データ141を切り出す例について説明する。
【0064】
メモリ101は、例えば垂直方向にライン単位、水平方向に画素単位でアドレスが設定され、ラインのアドレスは、画像(画面)の下端から上端に向けて増加し、画素のアドレスは、画像の左端から右端に向けて増加するものとする。
【0065】
画像制御部103は、画像切り出し部100に対して、メモリ101に格納されるQライン×P画素の画像データ140の切り出し領域として、垂直方向にラインq
0およびラインq
1をアドレス指定し、水平方向に画素p
0およびp
1をアドレス指定する。画像切り出し部100は、このアドレス指定に従い、メモリ101から、ラインq
0〜q
1の範囲内の各ラインを、画素p
0〜p
1にわたって読み出す。このとき、読み出し順は、例えば各ラインは画像の上端から下端に向けて読み出され、各画素は画像の左端から右端に向けて読み出されるものとする。メモリ101に対するアクセス制御の詳細については、後述する。
【0066】
画像切り出し部100は、メモリ101から読み出した、ラインq
0〜q
1、ならびに、画素p
0〜p
1の範囲の画像データ141を画像処理部102に供給する。画像処理部102では、供給された画像データ141による画像のサイズを表示素子114のサイズに合わせる、サイズ変換処理を行う。一例として、表示素子114のサイズがRライン×S画素である場合、下記の式(1)および式(2)を共に満たす、最大の倍率mを求める。そして、画像処理部102は、画像データ141をこの倍率mで拡大し、
図5(b)に例示されるように、サイズ変換された画像データ141’を得る。
m×(p
1−p
0)≦S …(1)
m×(q
1−q
0)≦R …(2)
【0067】
次に、第1の実施形態による、投射角に応じた切り出し領域の指定(更新)について説明する。
図6は、ドラム部10が0°姿勢、すなわち、投射角0°の場合の切り出し領域指定の例を示す。プロジェクタ装置(PJ)1において、投射レンズ12により、画角αで以て、スクリーンなどの被投射媒体である投射面130に対して、投射角0°で画像131
0を投射した場合の投射位置を、投射レンズ12から投射される光の光束中心に対応する位置Pos
0とする。また、投射角0°では、メモリ101に格納される画像データの、投射角0°の姿勢で投射を行うように予め指定された領域の下端のラインSから、ラインLまでの画像データによる画像が投射されるものとする。ラインSからラインLの領域には、ライン数lnのラインが含まれるものとする。
【0068】
なお、ライン数lnは、表示素子114の最大の有効領域のライン数である。また、画角αは、表示素子114において表示が有効とされている垂直方向の有効領域が最大値を取るときに画像を投射した場合、すなわち、ライン数lnの画像を投射した場合の、投射画像を投射レンズ12から垂直方向に見込む角である。
【0069】
画角αおよび表示素子114の有効領域について、より具体的な例を用いて説明する。表示素子114は、垂直方向のサイズが800ラインであるとする。例えば、投射画像データの垂直方向のサイズが800ラインであり、表示素子114の全てのラインを用いて投射画像データの投射を行う場合、表示素子114の垂直方向の有効領域が最大値の800ライン(=ライン数ln)となる。画角αは、この場合に投射レンズ12から投射画像の1〜800ラインを見込む角となる。
【0070】
また、投射画像データの垂直方向のサイズが600ラインであり、表示素子114の800ライン(=ライン数ln)のうち600ラインのみを用いて投射画像データの投射を行う場合も考えられる。このとき、表示素子114の垂直方向の有効領域が600ラインとなる。この場合は、画角αの、有効領域の最大値に対する投射画像データによる有効領域の部分のみが投射される。
【0071】
画像制御部103は、画像切り出し部100に対して、メモリ101に格納される画像データ140のラインSからラインLまでを切り出して読み出すように指示する。なお、ここでは、水平方向には、画像データ140の左端から右端までを全て読み出すものとする。画像切り出し部100は、画像制御部103の指示に従い、画像データ140のラインS〜Lの領域を切り出し領域に設定し、設定された切り出し領域の画像データ141を読み出して画像処理部102に供給する。
図6の例では、投射面130には、画像データ140のラインSからラインLまでの、ライン数lnの画像データ141
0による画像131
0が、投射位置Pos
0に投射される。この場合、画像データ140の全領域のうち、ラインLから上端のラインまでに係る領域の画像データ142による画像は、投射されないことになる。
【0072】
次に、例えば操作部14に対するユーザ操作によりドラム部10が回転され、投射レンズ12の投射角が角度θとなった場合について説明する。第1の実施形態では、画像制御部103は、メモリ101上の画像データ140に対する投射角θに応じた切り出し領域を、垂直同期信号VDに同期したタイミングで指定する。
【0073】
投射角θに対する切り出し領域の設定について、
図7を用いてより具体的に説明する。例えばドラム部10を、投射レンズ12による投射位置が0°姿勢から正方向に回転させ、投射レンズ12の投射角が角度θ(>0°)になった場合について考える。この場合、投射面130に対する投射位置が、投射角0°の投射位置Pos
0に対して上方の投射位置Pos
1に移動する。このとき、画像制御部103は、画像切り出し部100に対して、メモリ101に格納される画像データ140に対する切り出し領域を、次の式(3)および式(4)に従い指定する。式(3)は、切り出し領域の下端のラインR
Sを示し、式(4)は、切り出し領域の上端のラインR
Lを示す。
R
S=θ×(ln/α)+S …(3)
R
L=θ×(ln/α)+S+ln …(4)
【0074】
なお、式(3)および式(4)において、値lnおよび値αは、それぞれ上述したライン数lnおよび画角αを示す。また、値Sは、
図6を用いて説明した、0°姿勢における切り出し領域の下端のラインをそれぞれ示す。
【0075】
式(3)および式(4)において、(ln/α)は、画角αがライン数lnを投射する場合の、単位画角当たりのライン数(投射面の形状によって変化する略平均化されたライン数の概念を含む)を示す。したがって、θ×(ln/α)は、プロジェクタ装置1における、投射レンズ12による投射角θに対応するライン数を表す。これは、投射角が角度Δθだけ変化するとき、投射画像の位置が、投射画像におけるライン数{Δθ×(ln/α)}分の距離だけ移動することを意味する。したがって、式(3)および式(4)は、投射角が角度θの場合の投射画像の、画像データ140における下端および上端のライン位置をそれぞれ示す。これは、投射角θにおけるメモリ101上の画像データ140に対する読み出しアドレスに対応する。
【0076】
このように、第1の実施形態においては、メモリ101から画像データ140を読み出す際のアドレスが、投射角θに応じて指定される。これにより、例えば
図7の例では、メモリ101から、画像データ140の、投射角θに応じた位置の画像データ141
1が読み出され、読み出された画像データ141
1に係る画像131
1が、投射面130の投射角θに対応する投射位置Pos
1に投射される。
【0077】
これにより、第1の実施形態によれば、表示素子114のサイズよりも大きいサイズの画像データ140を投射する場合に、投射される画像内の位置と、画像データ内の位置との対応関係が保たれる。また、ドラム30を回転駆動するためのモータ40の駆動パルスに基づき投射角θを求めているため、ドラム部10の回転に対して略遅延の無い状態で投射角θを得ることができると共に、投射画像や周囲の環境に影響されずに投射角θを得ることが可能である。
【0078】
次に、投射レンズ12による光学ズームを行った場合の切り出し領域の設定について説明する。既に説明したように、プロジェクタ装置1の場合、レンズ駆動部が駆動され投射レンズ12の画角αが増加または減少されることで、光学ズームが行われる。光学ズームによる画角の増加分を角度Δとし、光学ズーム後の投射レンズ12の画角を画角(α+Δ)とする。
【0079】
この場合、光学ズームにより画角が増加しても、メモリ101に対する切り出し領域は変化しない。換言すれば、光学ズーム前の画角αによる投射画像に含まれるライン数と、光学ズーム後の画角(α+Δ)による投射画像に含まれるライン数は、同一である。したがって、光学ズーム後は、光学ズーム前に対して単位角度当たりに含まれるライン数が変化することになる。
【0080】
光学ズームを行った場合の切り出し領域の指定について、
図8を用いてより具体的に説明する。
図8の例では、投射角θの状態で、画角αに対して画角Δ分を増加させる光学ズームを行っている。光学ズームを行うことで、投射面130に投射される投射画像は、例えば投射レンズ12に投射される光の光束中心(投射位置Pos
2)を共通として、画像131
2として示されるように、光学ズームを行わない場合に対して画角Δ分拡大される。
【0081】
画角Δ分の光学ズームを行った場合、画像データ140に対して切り出し領域として指定されるライン数をlnラインとすると、単位角度当たりに含まれるライン数は、{ln/(α+Δ)}で表される。したがって、画像データ140に対する切り出し領域は、次の式(5)および式(6)により指定される。なお、式(5)および式(6)における各変数の意味は、上述の式(3)および式(4)と共通である。
R
S=θ×{ln/(α+Δ)}+S …(5)
R
L=θ×{ln/(α+Δ)}+S+ln …(6)
【0082】
画像データ140から、この式(5)および式(6)に示される領域の画像データ141
2が読み出され、読み出された画像データ141
2に係る画像131
2が、投射レンズ12により、投射面130の投射位置Pos
2に対して投射される。
【0083】
このように、光学ズームを行った場合には、単位角度当たりに含まれるライン数が光学ズームを行わない場合に対して変化し、投射角θの変化に対するラインの変化量が、光学ズームを行わない場合に比べて異なったものとなる。これは、メモリ101に対する投射角θに応じた読み出しアドレスの指定において、光学ズームにより増加した画角Δ分のゲインが変更された状態である。
【0084】
第1の実施形態においては、メモリ101から画像データ140を読み出す際のアドレスは、投射角θと投射レンズ12の画角αに応じて指定される。これにより、光学ズームを行った場合であっても、投射すべき画像データ141
2のアドレスを、メモリ101に対して適切に指定することができる。したがって、光学ズームを行った場合であっても、表示素子114のサイズよりも大きいサイズの画像データ140を投射する場合に、投射される画像内の位置と、画像データ内の位置との対応関係が保たれる。
【0085】
次に、画像の投射位置に対してオフセットが与えられた場合について、
図9を用いて説明する。プロジェクタ装置1の使用に際して、必ずしも0°姿勢(投射角0°)が投射位置の最下端になるとは限らない。例えば
図9に例示されるように、所定の投射角θ
ofstによる投射位置Pos
3を、最下端の投射位置にする場合も考えられる。この場合、画像データ141
3による画像131
3は、オフセットが与えられない場合に比べて、投射角θ
ofstに対応する高さだけ上にずれた位置に投射されることになる。この、画像データ140の最下端のラインを最下端とする画像を投射する際の投射角θを、オフセットによるオフセット角θ
ofstとする。
【0086】
この場合、例えば、このオフセット角θ
ofstを投射角0°と見做して、メモリ101に対する切り出し領域を指定することが考えられる。上述した式(3)および式(4)に当て嵌めると、下記の式(7)および式(8)のようになる。なお、式(7)および式(8)における各変数の意味は、上述の式(3)および式(4)と共通である。
R
S=(θ−θ
ofst)×(ln/α)+S …(7)
R
L=(θ−θ
ofst)×(ln/α)+S+ln …(8)
【0087】
ところで、上述した式(3)および式(4)による切り出し領域の指定方法は、投射レンズ12による投射を行う投射面130が、ドラム部10の回転軸36を中心とした円筒であると仮定した、円筒モデルに基づくものである。しかしながら、実際には、投射面130は、投射角θ=0°に対して90°の角をなす垂直な面(以下、単に「垂直な面」と呼ぶ)であることが多いと考えられる。画像データ140から同一のライン数の画像データを切り出して垂直な面に投射した場合、投射角θが大きくなるに連れ、垂直な面に投射される画像が縦方向に伸びることになる。そこで画像切り出し部100の後に画像処理部102において次のような画像処理を施す。
【0088】
図10および
図11を用いて、垂直な面に対して投射される画像について説明する。
図10において、位置Bをドラム部10の回転軸36の位置として、位置Bから距離rだけ離れた投射面Wに、投射レンズ12から画像を投射する場合について考える。
【0089】
上述の円筒モデルでは、位置Bを中心とする半径rの弧Cを投射面として投射画像が投射される。弧Cの各点は、位置Bから等距離であり、投射レンズ12から投射される光の光束中心は、弧Cを含む円の半径となる。したがって、投射角θを0°のθ
0からθ
1、θ
2、…と増加させても、投射画像は常に同じサイズで投射面に対して投射される。
【0090】
一方、垂直な面である投射面Wに対して投射レンズ12から画像を投射する場合、投射角θをθ
0からθ
1、θ
2、…と増加させると、投射レンズ12から投射された光の光束中心が投射面Wに照射される位置が、正接関数の特性に従い角度θの関数にて変化する。したがって、投射画像は、投射角θが大きくなるに連れ、下記の式(9)に示される比率Mに従い、上方向に伸びる。
M=(180×tanθ)/(θ×π) …(9)
【0091】
式(9)によれば、例えば投射角θ=45°の場合、約1.27倍の比率で投射画像が伸びることになる。また、投射面Wが半径rの長さに対してさらに高く、投射角θ=60°での投射が可能である場合、投射角θ=60°においては、約1.65倍の比率で投射画像が伸びることになる。
【0092】
また、投射面W上の投射画像におけるライン間隔も、
図11に例示されるように、投射角θが大きくなるに連れ広くなる。この場合、1つの投射画像内における投射面W上の位置に応じて、上述の式(9)に従いライン間隔が広くなることになる。
【0093】
そこで、プロジェクタ装置1は、投射レンズ12の投射角θに従って、上述の式(9)の逆数の比率で、投射を行う画像の画像データに対して縮小処理を行う。この縮小処理は、円筒モデルに基づいて切り取る画像データよりも大き目が望ましい。即ち、垂直な面である投射面Wの高さに依存するが、投射角θ=45°の場合、約1.27倍の比率で投射画像が伸びるので、その逆数の約78%程度に縮めることになる。そこで画像メモリを一杯に使い切るには、予め、22%程度以上、ライン数を多めに切り取っておき、投射される画像に対応する画像データの領域よりも大きい領域を切り出し領域の画像として読み込んでおいて画像処理部102に入力することが望ましい。
【0094】
一例として、画像制御部103は、プロジェクタ装置1に入力された画像データを画像切り出し部100によりメモリ101に格納する際に、当該画像データに対して、上述の式(9)の逆数の比率を用いて、画像データが投射される際の画像のライン毎に、当該画像データに対して予め縮小処理を施す。縮小処理は、投射角θに依存した縮小率で、ライン(垂直方向の画素)に対して数タップのローパスフィルタをかけて、ラインを間引く。正確には、ローパスフィルタの帯域の制限値も投射角θに依存して変更する必要がある。このとき、最大の投射角θに対応する縮小率で均一にフィルタの特性を決定する、最大の投射角θの、ほぼ1/2に対応する縮小率で均一にフィルタの特性を決定する、などの一般的な線形補間を利用することができる。また、そのフィルタ処理の後、間引くラインにおいて、画面内の投射角θに依存してサブサンプリングを行う必要がある。ここでも、最大の投射角θに対応する縮小率での均一に間引きを行う、最大の投射角θの、ほぼ1/2に対応する縮小率で均一に間引きを行う、などの処理を行うこともできる。ローパスフィルタ処理や間引き処理をより正確に行う場合には、幾つかのエリアに分割して、エリア毎に均一に処理を行うことで、よりよい特性を得ることが可能である。
【0095】
なお、この式(9)を利用した画像処理は、メモリ101に画像データを格納する際に行う例に限られない。この画像処理は、例えば画像処理部102で行ってもよい。
【0096】
また、実際にプロジェクタ装置1が使用される環境では、投射面Wの高さに制限があり、ある高さの位置Aで90°折り返して面Rが形成される場合が多いと考えられる。この面Rも、プロジェクタ装置1の投射面として用いることができる。この場合、投射面Rに投射される画像は、投射角θをさらに大きくして、投射位置が位置Aを越えて真上方向(投射角θ=90°)に向かうのに連れて、上述した投射面Wに投射される画像とは逆の特性で縮むことになる。
【0097】
そのため、画像データによる画像を投射角0°および90°で投射する場合は、投射する画像データに対する式(9)を用いた縮小処理を行わないようにする。また、投射面Wの長さ(高さ)と、投射面Rの長さとが略等しい場合には、投射する画像データに対する式(9)を用いた縮小処理を、投射角0°から投射面Wの最上部の位置Aまでの縮小処理と、位置Aから投射角90°までの縮小処理とで対称の処理として実行する。これにより、画像制御部103におけるこの縮小処理に対する負荷を低減することができる。
【0098】
上述の例では、投射角θ=0°に対して90°の角をなす垂直な面を想定して説明を行った。ドラム部10の回転角によっては、投射角θ=0°に対して180°の角をなす平面に投射することも考えられる。画像データ140から同一のライン数の画像データを切り出してこの面に投射した場合、投射角θが大きくなるに連れ、投射される画像が縦方向に縮むことになる。そこで画像切り出し部100の後に、画像処理部102において上述の説明とは逆の画像処理を施す。
【0099】
すなわち、投射角θをθ
0からθ
1、θ
2、…と増加させると、投射レンズ12から投射面までの距離が小さくなるよう変化する。そこで、プロジェクタ装置1は、投射レンズ12の投射角θに従って、上述した説明とは逆に、投射を行う画像の画像データに対して拡大処理を行うようにする。
【0100】
以上のように、画像投射装置1の画像切り出し部は、投射方向が第1の投射方向から第2の投射方向に変化するにつれて、投射部12から投射面までの距離が小さくなる場合には、切り出し画像データの画素毎に、投射角θに基づいた拡大処理を施すようにしてもよい。
【0101】
なお、以下では、特に記載のない限り、角度の記述は円筒モデルに基づくものとし、垂直面に対する投射の場合など、必要に応じて適宜、式(9)に基づく補正が行われるものとする。
【0102】
<メモリ制御について>
次に、
図12〜
図15を用いて、メモリ101のアクセス制御について説明する。画像データは、垂直同期信号VD毎に、画面上水平方向に各ライン毎に画像の左端から右端に向けて各画素が順次伝送され、各ラインは、画像の上端から下端に向けて順次伝送される。なお、以下では、画像データは、デジタルハイビジョン規格に対応した、水平1920画素×垂直1080画素(ライン)のサイズをもつ場合を例として説明する。
【0103】
以下では、メモリ101が、それぞれ独立してアクセス制御が可能な、4つのメモリ領域101Y
1、101Y
2、101T
1および101T
2を含む場合のアクセス制御の例について説明する。すなわち、
図12に示されるように、メモリ101は、それぞれ水平1920画素×垂直1080画素(ライン)のサイズで画像データの書き込み・読み出しに用いられるメモリ領域101Y
1および101Y
2と、それぞれ水平1080画素×垂直画素1920(ライン)のサイズで画像データの書き込み・読み出しに用いられるメモリ領域101T
1および101T
2とがそれぞれ設けられている。以下、各メモリ領域101Y
1、101Y
2、101T
1および101T
2を、それぞれメモリ領域Y
1、メモリ領域Y
2、メモリ領域T
1およびメモリ領域T
2として説明する。
【0104】
図13は、画像切り出し部100によるメモリ101に対するアクセス制御を説明するためのタイムチャートの一例である。
図13(a)は、投射レンズ12の投射角θ、
図13(b)は、垂直同期信号VDを示す。また、
図13(c)は、画像切り出し部100に入力される画像データD
1、D
2、…の入力タイミング、
図13(d)〜
図13(g)は、それぞれメモリ領域Y
1、T
1、Y
2およびT
2に対する画像切り出し部100からのアクセスの例を示す。なお、
図13(d)〜
図13(g)において、「R」が付されているブロックは、読み出しを示し、「W」が付されているブロックは、書き込みを示す。
【0105】
画像切り出し部100に対して、垂直同期信号VD毎に、それぞれ1920画素×1080ラインの画像サイズを持つ画像データD
1、D
2、D
3、D
4、D
5、D
6、…が入力される。各画像データD
1、D
2、…は、垂直同期信号VDに同期して、垂直同期信号VDの後から入力される。また、各垂直同期信号VDに対応する投射レンズ12の投射角を、それぞれ投射角θ
1、θ
2、θ
3、θ
4、θ
5、θ
6、…とする。投射角θは、このように垂直同期信号VD毎に取得される。
【0106】
先ず、画像切り出し部100に対して、画像データD
1が入力される。第1の実施形態によるプロジェクタ装置1は、上述したように、ドラム部10を回転させることで投射レンズ12による投射角θを変化させて投射画像の投射位置を移動させると共に、投射角θに応じて画像データに対する読み出し位置を指定する。そのため、画像データは、垂直方向により長いと都合がよい。一般的には、画像データは、水平方向のサイズが垂直方向のサイズよりも大きいことが多い。そこで例えば、ユーザがカメラを90°回転させて撮像を行い、この撮像で得られた画像データをプロジェクタ装置1に入力することが考えられる。
【0107】
すなわち、画像切り出し部100に入力される画像データD
1、D
2、…による画像は、
図14(a)にイメージとして示される画像160のように、画像の内容から判断して正しい向きの画像から90°回転された、横向きの画像とされている。
【0108】
画像切り出し部100は、入力された画像データD
1を、先ず、メモリ領域Y
1に対して、画像データD
1の入力タイミングに対応したタイミングWD
1で書き込む(
図13(d)のタイミングWD
1)。画像切り出し部100は、画像データD
1を、
図14(b)の左側に示されるように、水平方向に向けてライン順にメモリ領域Y
1に対して書き込む。
図14(b)の右側に、こうしてメモリ領域Y
1に書き込まれた画像データD
1による画像161をイメージとして示す。画像データD
1は、入力時の画像160と同じイメージの画像161として、メモリ領域Y
1に書き込まれる。
【0109】
画像切り出し部100は、
図14(c)に示されるように、メモリ領域Y
1に書き込んだ画像データD
1を、当該画像データD
1を書き込んだ垂直同期信号VDの次の垂直同期信号VDの開始と同時のタイミングRD
1で、メモリ領域Y
1から読み出す(
図13(d)のタイミングRD
1)。
【0110】
このとき、画像切り出し部100は、画像データD
1を、画像の左下隅の画素を読み出し開始画素として、垂直方向に順次ラインを跨いで画素毎に読み出していく。画像の上端の画素を読み出すと、次は、垂直方向の読み出し開始位置の画素の右隣の画素を読み出し開始画素として、垂直方向に各画素を読み出す。この動作を、画像の右上隅の画素の読み出しが終了するまで、繰り返す。
【0111】
換言すれば、画像切り出し部100は、ライン方向を画像の下端から上端に向けた垂直方向として、メモリ領域Y
1からの画像データD
1の読み出しを、当該垂直方向のライン毎に、画像の左端から右端に向けて画素毎に順次読み出す。
【0112】
画像切り出し部100は、このようにしてメモリ領域Y
1から読み出した画像データD
1の画素を、
図15(a)の左側に示されるように、メモリ領域T
1に対して、ライン方向に向けて画素毎に順次書き込んでいく(
図13(e)のタイミングWD
1)。すなわち、画像切り出し部100は、メモリ領域Y
1から例えば1画素を読み出す毎に、読み出したこの1画素をメモリ領域T
1に書き込む。
【0113】
図15(a)の右側は、こうしてメモリ領域T
1に書き込まれた画像データD
1による画像162のイメージを示す。画像データD
1は、水平1080画素×垂直1920画素(ライン)のサイズとしてメモリ領域T
1に書き込まれ、入力時の画像160が時計回りに90°回転されて水平方向と垂直方向とが入れ替えられた画像162とされる。
【0114】
画像切り出し部100は、メモリ領域T
1に対して画像制御部103に指定された切り出し領域のアドレス指定を行い、当該切り出し領域として指定された領域の画像データをメモリ領域T
1から読み出す。この読み出しのタイミングは、
図13(e)にタイミングRD
1として示されるように、画像データD
1が画像切り出し部100に入力されたタイミングに対して、2垂直同期信号VDの分だけ遅延することになる。
【0115】
第1の実施形態によるプロジェクタ装置1は、上述したように、ドラム部10を回転させることで投射レンズ12による投射角θを変化させて投射画像の投射位置を移動させると共に、投射角θに応じて画像データに対する読み出し位置を指定する。例えば、画像データD
1が、投射角θ
1のタイミングで画像切り出し部100に入力される。この画像データD
1による画像を実際に投射するタイミングにおける投射角θは、投射角θ
1から、投射角θ
1と異なる投射角θ
3に変化していることが有り得る。
【0116】
そのため、メモリ領域T
1から画像データD
1を読み出す際の切り出し領域は、この投射角θの変化分を見込んで、投射される画像に対応する画像データの領域よりも大きい範囲で読み出すようにする。
【0117】
図15(b)を用いてより具体的に説明する。
図15(b)の左側は、メモリ領域T
1に格納される画像データD
1による画像163のイメージを示す。この画像163において、実際に投射される領域を投射領域163aとし、他の領域163bは、非投射領域であるとする。この場合、画像制御部103は、メモリ領域T
1に対して、投射領域163aの画像に対応する画像データの領域よりも、少なくとも、2垂直同期信号VDの期間で投射レンズ12による投射角θが最大に変化した場合の変化分に相当するライン数分大きい切り出し領域170を指定する。
【0118】
画像切り出し部100は、画像データD
1をメモリ領域T
1に書き込んだ垂直同期信号VDの次の垂直同期信号VDのタイミングで、この切り出し領域170からの画像データの読み出しを行う。こうして、投射角θ
3のタイミングで、投射を行う画像データがメモリ領域T
1から読み出され、後段の画像処理部102を経て表示素子114に供給され、投射レンズ12から投射される。
【0119】
画像切り出し部100に対し、画像データD
1が入力された垂直同期信号VDの次の垂直同期信号VDのタイミングで、画像データD
2が入力される。このタイミングでは、メモリ領域Y
1は画像データD1が書き込まれている。そのため、画像切り出し部100は、画像データD
2をメモリ領域Y
2に書き込む(
図13(f)のタイミングWD
2)。このときの、画像データD
2のメモリ領域Y
2への書き込み順は、上述の画像データD
1のメモリ領域Y
1への書き込み順と同様であり、イメージも同様である(
図14(b)参照)。
【0120】
すなわち、画像切り出し部100は、画像データD
2を、画像の左下隅の画素を読み出し開始画素として、垂直方向に順次ラインを跨いで画素毎に画像の上端の画素まで読み出し、次に垂直方向の読み出し開始位置の画素の右隣の画素を読み出し開始画素として、垂直方向に各画素を読み出す(
図13(f)のタイミングRD
2)。この動作を、画像の右上隅の画素の読み出しが終了するまで、繰り返す。画像切り出し部100は、このようにしてメモリ領域Y
2から読み出した画像データD
2の画素を、メモリ領域T
2に対して、ライン方向に向けて画素毎に順次書き込んで(
図13(g)のタイミングWD
2)いく(
図15(a)左側参照)。
【0121】
画像切り出し部100は、メモリ領域T
2に対して画像制御部103に指定された切り出し領域のアドレス指定を行い、当該切り出し領域として指定された領域の画像データを、
図13(g)のタイミングRD
2でメモリ領域T
2から読み出す。このとき、上述したように、画像制御部103は、メモリ領域T
2に対して、投射角θの変化分を見込んだ、投射される画像に対応する画像データの領域よりも大きい領域を切り出し領域170として指定する。
【0122】
画像切り出し部100は、画像データD
2をメモリ領域T
2に書き込んだ垂直同期信号VDの次の垂直同期信号VDのタイミングで、この切り出し領域170からの画像データの読み出しを行う。こうして、投射角θ
2のタイミングで画像切り出し部100に入力された画像データD
2における切り出し領域170の画像データが、投射角θ
4のタイミングでメモリ領域T
2から読み出され、後段の画像処理部102を経て表示素子114に供給され、投射レンズ12から投射される。
【0123】
以降、同様にして、画像データD
3、D
4、D
5、…に対して、メモリ領域Y
1およびT
1の組と、メモリ領域Y
2およびT
2の組とを交互に用いて順次処理していく。
【0124】
上述のように、第1の実施形態では、メモリ101に対して、水平1920画素×垂直1080画素(ライン)のサイズで画像データの書き込み読み出しに用いられるメモリ領域Y
1、Y
2の領域と、水平1080画素×垂直1920(画素ライン)のサイズで画像データの書き込み読み出しに用いられるメモリ領域T
1、T
2の領域とをそれぞれ設けている。これは、一般に、画像メモリに用いられるDRAM(Dynamic Random Access Memory)は、水平方向のアクセスに対して、垂直方向のアクセスの方がアクセス速度が遅いためである。他の、水平方向と垂直方向とで同等のアクセス速度を得られる、ランダムアクセス容易なメモリを用いる場合、画像データに応じた容量のメモリを2面用いる構成としてもよい。
【0125】
<画像データの投射を行う処理の流れ>
次に、
図16のフローチャートを用いてプロジェクタ装置1において画像データによる画像を投射する際の処理の流れについて説明する。
【0126】
ステップS100で、画像データの入力に伴い、当該画像データによる画像の投射に係る各種設定値がプロジェクタ装置1に入力される。入力された各種設定値は、例えばCPU120に取得される。ここで取得される各種設定値は、例えば、画像データによる画像を回転させるか否か、すなわち、当該画像の水平方向と垂直方向とを入れ替えるか否かを示す値、画像の拡大率、投射の際のオフセット角θ
ofstを含む。各種設定値は、プロジェクタ装置1に対する画像データの入力に伴い、データとしてプロジェクタ装置1に入力してもよいし、操作部14を操作することで入力してもよい。
【0127】
次のステップS101で、プロジェクタ装置1に対して、1フレーム分の画像データが入力され、画像切り出し部100により、入力された画像データが取得される。取得された画像データは、メモリ101に書き込まれる。
【0128】
次のステップS102で、画像制御部103は、オフセット角θ
ofstを取得する。次のステップS103で、画像制御部103は、切り出しサイズすなわち入力された画像データにおける切り出し領域のサイズを取得する。画像制御部103は、切り出し領域のサイズを、ステップS100で取得された設定値から取得してもよいし、操作部14に対する操作に応じて取得してもよい。次のステップS104で、画像制御部103は、投射レンズ12の画角αを取得する。画像制御部103は、投射レンズ12の画角αを、例えば画角制御部106から取得する。さらに、次のステップS105で、画像制御部103は、投射レンズ12の投射角θを、例えば回転制御部104から取得する。
【0129】
次のステップS106で、画像制御部103は、ステップS102〜ステップS105で取得されたオフセット角θ
ofstと、切り出し領域のサイズと、画角αと、投射角θとに基づき、上述した式(3)〜式(8)を用いて、入力された画像データに対する切り出し領域を求める。画像制御部103は、画像切り出し部100に対して、求めた切り出し領域からの画像データの読み出しを指示する。画像切り出し部100は、画像制御部103からの指示に従い、メモリ101に記憶される画像データから切り出し領域内の画像データを読み出し、画像データの切り出しを行う。画像切り出し部100は、メモリ101から読み出した切り出し領域の画像データを画像処理部102に供給する。
【0130】
ステップS107で、画像処理部102は、画像切り出し部100から供給された画像データに対して、例えば上述した式(1)および式(2)に従いサイズ変換処理を施す。画像処理部102でサイズ変換処理を施された画像データは、表示素子114に供給される。表示素子114は、光源111からの光を画像データに従い変調して射出する。射出されたこの光は、投射レンズ12から投射される。
【0131】
次のステップS108で、CPU120は、上述のステップS101で入力された画像データの次のフレームの画像データの入力があるか否かを判定する。若し、次のフレームの画像データの入力があると判定された場合、CPU120は、処理をステップS101に戻し、当該次のフレームの画像データに対して上述したステップS101〜ステップS107の処理を行う。すなわち、このステップS101〜ステップS107の処理は、例えば画像データの垂直同期信号VDに従い、画像データのフレーム単位で繰り返される。したがって、プロジェクタ装置1は、投射角θの変化に対して、フレーム単位で各処理を追随させることができる。
【0132】
一方、ステップS108で、次のフレームの画像データが入力されないと判定した場合、CPU120は、プロジェクタ装置1における画像の投射動作を停止させる。例えば、CPU120は、光源111をオフにするように制御すると共に、回転機構部105に対してドラム部10の姿勢を初期姿勢に戻すように命令を出す。そして、CPU120は、ドラム部10の姿勢が初期姿勢に戻った後、光源111などを冷却するファンを停止させる。
【0133】
以上の通り、プロジェクタ装置1によれば、画像データの有する解像度を保持しながら、ユーザが、入力された画像データに係る画像における投射された被写体画像の位置を把握しやすい画像投射を行うことができる。
【0134】
<投射画像の高品位化(1)>
次に、第1の実施形態に係る投射画像を高品位化する第1の方法について説明する。上述したプロジェクタ装置1の制御によれば、メモリ101に格納される画像データから投射のための投射画像データを切り出す切り出し領域を、投射角θに応じて変更している。そのため、
図17(a)〜
図17(c)に例示されるように、被投射媒体に投射される投射画像を、投射角θに応じて入力画像データ200中で移動させ、入力画像データ200の全ての領域を投射させることができる。
【0135】
すなわち、
図17(a)に示されるように、例えば投射角0°の状態において、メモリ101に対して、入力画像データ200の下端を含む切り出し領域201aが指定され、当該切り出し領域201a内の画像データが投射画像データとして読み出され投射される。投射角θを増加させると、
図17(b)に示されるように、切り出し領域201aに対して、投射角θの増加分に対応する高さyだけ移動させた切り出し領域201bがメモリ101に対して指定され、切り出し領域201b内の画像データが投射画像データとして読み出される。さらに投射角θを増加させた場合についても同様に、
図17(c)に示されるように、メモリ101に対して、切り出し領域201bに対して投射角θの増加分に対応する高さyだけ移動させて指定された切り出し領域201cから投射画像データが読み出され、投射される。
【0136】
ところで、上述したように、メモリ101上で指定された切り出し領域に係る画像データの読み出しは、垂直同期信号VDに同期して行われ、表示素子114の表示は、垂直同期信号VDのタイミング毎に更新される。ここで、投射角θがある程度高速に変化した場合について、
図18を参照しながら説明する。
【0137】
当初、例えば投射角0°の状態において、
図18(a)に示されるように、メモリ101に対して指定された切り出し領域201a内の画像データが、垂直同期信号VDに基づき投射画像データとして読み出され投射されたものとする。この状態から投射角θを変化させると、t
1時間後には、被投射媒体上の投射位置が投射角θの変化分Δθ
1に応じた高さz
1だけ移動する。この様子を
図18(b)に示す。
【0138】
この
図18(b)の状態において、t
1時間がフレーム周期よりも短い場合、メモリ101に対する切り出し領域201aの変更、ならびに、表示素子114における表示の更新は行われず、投射レンズ12による投射方向のみが変化する。そのため、投射画像は、投射角0°の時点で切り出し領域201aから読み出された投射画像データが投射角θの変化分Δθ
1に対応する高さz
1だけ移動したものとなる。例えば、投射角0°の時点で指定された切り出し領域201aが入力画像データ200の下端部を含む場合、この下端部を含む投射画像がそのまま、投射角θの高さz
1だけ持ち上がって投射されることになる。
【0139】
次に、
図18(b)の状態からさらにt
2時間、投射角θを変化させ続け、
図18(a)の状態から1フレーム周期が経過したものとする。このとき、投射レンズ12による投射位置は、投射角θの変化分Δθ
2に応じて、
図18(b)の位置からさらに高さz
2だけ移動するものとする。この場合、
図18(c)に示されるように、投射画像データを切り出す切り出し領域が、
図18(a)の時点で指定された切り出し領域201aから、投射角θの増加分(Δθ
1+Δθ
2)だけ移動した切り出し領域201cに変更される。
【0140】
図18(a)〜
図18(c)の状態を比較する。入力画像データ200全体による画像が投射されたと仮想した場合の仮想的な投射画像(仮想投射画像と呼ぶ)を考えた場合、
図18(b)の状態は、
図18(a)の状態に対して、仮想投射画像の投射位置が投射角θの変化に応じて持ち上がっている。一方、
図18(c)の状態では、入力画像データ200内において切り出し領域が投射角θの変化に応じて移動しており(切り出し領域201c)、
図18(a)の状態に対して仮想投射画像の投射位置は、変化していない。
【0141】
したがって、投射画像が
図18(b)の状態から
図18(c)の状態へと変化した場合、仮想投射画像の投射位置が最初すなわち
図18(a)の投射位置に戻ることになる。そのため、この動作を繰り返すと、ユーザには、投射画像がフレーム周期で上下に振動しているように見えてしまう。
【0142】
この投射画像がフレーム周期で上下に振動しているように見えてしまう現象は、投射角θの変化を低速にするほど軽減される。しかしながら、例え投射角θの変化を微速なものとしても、モータ40を駆動する駆動パルスに応じた投射角θの変化の分解能に基づく誤差に起因する振動が残ってしまう。微小な動きに対する人間の眼の検知能力が、大きな動きに対する検知能力よりも高いことを鑑みると、この誤差に起因する振動が数ライン程度の振動であっても、画像のブレとしてユーザに認識されてしまう可能性がある。
【0143】
そこで、本発明に係る投射画像の高品位化の第1の方法では、投射角θの変化の分解能に対して制限を与えることで、上述したような、投射画像に対するユーザのブレの認識を抑制する。より具体的には、投射レンズ12の画角αと、表示素子114における有効領域の画素単位のサイズとに基づき、モータ40を駆動する駆動パルスによる投射角θの分解能を規定する。
【0144】
図19を用いてより具体的に説明する。
図19は、投射レンズ12から投射画像220が投射される様子を模式的に示す。
図19において、投射レンズ12は、画角αで投射画像220の投射を行う。
【0145】
表示素子114の最大の有効領域における垂直方向のサイズをライン数lnとした場合、投射レンズ12の画角αにおける1ライン当たりの角度は、角度(α/ln)で表される。
図19の例では、投射レンズ12の中心から、例えば第nラインと第(n+1)ラインとを見込む角が角度(α/ln)となる。
【0146】
一方、モータ40は、1の駆動パルスで、予め定められた角度(ステップ角)の回転を行う。また、上述したように、モータ40の回転は、ウォームギア41、ウォームギア41による回転を伝達するギア42a、42bおよびギア43を含むギア群を介してギア35に伝達され、ドラム30が回転される。したがって、ドラム30も、モータ40に対する1の駆動パルスで所定の角度λだけ回転し、投射レンズ12の投射方向が当該角度λだけ変化する。したがって、角度λは、モータ40の回転制御における投射角θの変化の分解能である。換言すれば、角度λは、投射角θの、モータ40の回転制御における最小の可変角度である。この角度λは、モータ40のステップ角と、ギア35を含めたギア群のギア比により決まる値である。
【0147】
投射画像高品位化の第1の方法では、上述した角度(α/ln)と角度λとの間の関係を、下記の式(10)のように定める。但し、角度λは0°を超える角度とする。
λ≦α/ln …(10)
【0148】
式(10)によれば、投射画像の、モータ40に対する駆動パルス毎の移動量が1ライン以下となる。そのため、投射レンズ12による投射角θを連続的に変化させた場合の、上述したような、投射画像に対するユーザのブレの認識を抑制することができ、投射画像の高画質化を図ることが可能となる。
【0149】
なお、上述したように、プロジェクタ装置1の光学系は、光学ズーム機構を備えており、光学ズームにより画角αを変えて投射画像の大きさを拡大・縮小させることができる。光学ズームでは、画角αを、光学系における下限の角度(最小画角α
MINとする)としたときに投射画像が最も小さくなり、投射レンズ12の画角における1ライン当たりの角度も最小となり、好ましい。
【0150】
したがって、角度λを、画角αが最小画角α
MINである場合に上述の式(10)を満たす角度として決めると、1駆動パルス当たりの投射角θの変化は、光学ズームにより画角αを変えた場合に常に1ラインに当たりの角度以内となるため、投射画像の上下の振動を効率的に抑制し、上述したような、投射画像に対するユーザのブレの認識を抑制することができる。
【0151】
<投射画像の高品位化(2)>
次に、第1の実施形態に係る投射画像を高品位化する第2の方法について説明する。上述したように、第1の実施形態に係るプロジェクタ装置1では、メモリ101からの投射画像データの読み出しや、表示素子114の表示の更新は、垂直同期信号VD毎に、すなわちフレーム周期で行われる。
【0152】
一方、プロジェクタ装置1では、例えば投射角θを高速に変化させる場合、フレーム周期内に複数回の駆動パルスをモータ40に供給する必要がある。この場合、1フレーム周期内において、投射画像の更新が行われずに投射角θすなわち投射位置のみが段階的に変化することになる。そのため、次フレームの先頭で投射画像の更新が行われる際に、前フレームで段階的に変化した各投射位置の投射画像が残像としてユーザに観察されてしまう。
【0153】
図20を用いて、この残像現象について概略的に説明する。
図20(a)は、垂直同期信号VDを示す。投射画像は、例えば垂直同期信号VDの立ち上がりエッジのタイミングで更新されるものとする。
図20(b)は、モータ40の駆動パルスを示す。この例では、1フレーム周期内に4回、所定のパルス幅を有する駆動パルスpl
11、pl
12、pl
13およびpl
14を、各駆動パルスpl
11〜pl
14間の時間間隔を等しくしてモータ40に対して与えている。より具体的には、回転制御部104(
図4参照)は、垂直同期信号VD
1のタイミングで駆動パルスpl
11を生成してモータ40に与え、以降、等間隔で(等しい時間間隔で)駆動パルスpl
12、pl
13、…を順次生成してモータ40に与える。
【0154】
図20(c)は、被投射媒体に投射画像が投射される様子を模式的に示し、図中の垂直方向の軸が投射位置hの高さを示す。なお、投射位置は、投射画像の下端を基準として示す。最初の垂直同期信号VD
1のタイミングで更新された投射画像230
1は、次の駆動パルスpl
12まで同じ位置h
0に投射され、当該駆動パルスpl
12において投射角θが変化して投射位置が次の位置h
1に移動される。以下同様に、投射画像230
1は、次の駆動パルスpl
13で投射位置が位置h
1から位置h
2へと移動され、次の駆動パルスpl
14でさらに位置h
3へと移動される。
【0155】
次の垂直同期信号VD
2のタイミングで次のフレーム周期先頭の駆動パルスが生成される。そのため、投射画像230
1が投射画像230
2に更新されると共に、投射位置が位置h
4へと移動される。
【0156】
図20(d)は、投射画像による残像画像を模式的に示す模式図である。
図20(c)と同様に、図中の垂直方向の軸が投射位置hの高さを示す。
図20(c)に示したように、投射画像230
1は、投射位置が位置h
0、h
1、…と、駆動パルス毎に順次移動されている。さらに、垂直同期信号VD
2のタイミングで投射画像230
1から投射画像230
2に更新されると共に、駆動パルスにより投射位置が位置h
4へと移動される。そのため、垂直同期信号VD
2にて更新される前の各位置h
0〜h
3の投射画像230
1が投射画像230
2に対して重なっていない部分aにおいて、ユーザに、各位置h
0〜h
3の投射画像230
1による残像が観察される可能性がある。
【0157】
この場合、各駆動パルスpl
11、pl
12、…間の時間間隔が等間隔であり、各位置h
0〜h
3の投射画像230
1がそれぞれ同程度にユーザに観察される。そのため、各位置h
0〜h
3の投射画像230
1による残像画像の強度が略等しくなり、滲んだような画像となって残像が観察される可能性がある。
【0158】
そこで、本発明に係る投射画像の高品位化の第2の方法では、フレーム周期内に駆動パルスを生成する際に、投射画像が更新されるタイミングと当該タイミングに隣接する駆動パルスとの間の時間間隔と、互いに隣接する駆動パルス間の時間間隔とのうち少なくとも一部が不均等になるようにする。これにより、1フレーム周期内で駆動パルスにより投射位置が変化する場合に、特定の投射位置の投射画像が他の投射位置の投射画像よりも長く投射されるようになり、当該特定の投射位置の投射画像がより長くユーザに観察される。そのため、各投射位置の投射画像による残像の強度が不均等になり、残像による画像の滲みが抑制される。
【0159】
図21は、投射画像高品位化の第2の方法によるモータ制御の一例を示す。
図21において、
図21(a)は垂直同期信号VD、
図21(b)は駆動パルス、
図21(c)は投射画像、
図21(d)は残像画像をそれぞれ示す。
図21の例は、
図21(b)に示されるように、1フレーム周期内で4の駆動パルスpl
21、pl
22、pl
23およびpl
24を、1フレーム周期内に均等な間隔で4の駆動パルスを生成する場合に比べて1/2の間隔で生成した例である。より具体的には、回転制御部104は、最初の駆動パルスpl
21を垂直同期信号VD
1のタイミングで生成する。そして、他の駆動パルスpl
22、pl
23およびpl
24を、垂直同期信号VD
1によるフレーム周期の後半側に寄せて、1フレーム周期内に均等な間隔で4の駆動パルスを生成する場合に比べて1/2の間隔で生成している。
【0160】
この場合、
図21(c)に示されるように、投射画像232
1は、垂直同期信号VD
1のタイミングで更新されると共に、当該タイミングの駆動パルスpl
21で位置h
0に投射画像232
1が投射される。投射画像232
1は、次の駆動パルスpl
22までの時間T
1の間、位置h
0に投射され続ける。そして、駆動パルスpl
22で投射位置が位置h
0から位置h
1に移動され、駆動パルスpl
22から時間T
2の間に、駆動パルスpl
23およびpl
24により位置h
1から位置h
2および位置h
3へと、順次、投射位置が移動される。そのため、垂直同期信号VD
2にて更新される前の各位置h
0〜h
3の投射画像232
1が投射画像232
2に重なって観察される。また、投射画像232
1と投射画像232
2が重なっていない部分に注目すると、
図21(d)の部分bにおける画像が投射画像232
2の表示期間にも残像として観察される。
【0161】
この場合、ユーザは、各位置h
1〜h
3の投射画像232
1の合計観察時間(時間T
2)よりも長い時間(時間T
1)、位置h
0の投射画像232
1を観察することになる。したがって、残像画像としては、位置h
0のものが主として観察され、他の位置h
1〜h
3のものは、極めて僅かしか観察されない。したがって、残像による画像の滲みをより効率的に抑制することができる。
【0162】
図22は、投射画像高品位化の第2の方法による駆動パルスの他の例を示す。
図22(a)は、垂直同期信号VDを示す。
図22(b)は、1フレーム周期内に2の駆動パルスpl
31およびpl
32を生成する例を示す。この場合、回転制御部104は、最初の垂直同期信号VDのタイミングの駆動パルスpl
31を生成すると共に、フレーム周期の中間に駆動パルスpl
32を生成する。最初の垂直同期信号VDのタイミングで更新された投射画像は、駆動パルスpl
32に応じて投射位置が移動される。
【0163】
このとき、回転制御部104は、駆動パルスpl
32を、フレーム周期の中央から後ろにずれたタイミングで生成し、フレーム周期の先頭から当該駆動パルスpl
32までの間隔aと、当該駆動パルスpl
32からフレーム周期の後端までの間隔bとを不均等にする。これにより、間隔aにおいて投射される投射画像が、間隔bにおいて投射される投射画像よりも長い時間、ユーザに観察されるため、残像による画像の滲みを抑制することができる。このように、1フレーム周期内に少なくとも2の駆動パルスが生成された場合に、投射画像高品位化の第2の方法を適用することができる。
【0164】
図22(c)は、
図21を用いて説明した、1フレーム周期内に4の駆動パルスを生成する場合において、垂直同期信号VDのタイミングの駆動パルスpl
41以外の駆動パルスpl
42〜pl
44間の時間間隔をさらに短くした例である(間隔d)。すなわち、1フレーム周期に占める時間的な割合が、
図21の時間T
1よりも
図22(c)の間隔cの方が大きい。そのため、
図21の例に対して、さらに効率的に残像による画像の滲みを抑制することができる。
【0165】
なお、上述では、1フレーム周期の前半側において駆動パルス間の時間間隔を長く取っているが、これはこの例に限定されず、1フレーム周期の後半側で駆動パルス間の時間間隔を長くしても良い。また、1フレーム周期内に1つの駆動パルスを生成する場合も、投射画像の更新タイミングと駆動パルスとの間の時間間隔を不均等にしてもよい。より具体的には、駆動パルスを1/2フレーム周期の位置ではなく、投射画像の更新タイミングとの一致を含む近傍に配置する。これにより、残像による画像の滲みを抑制することができる。
【0166】
<投射禁止期間の設定>
上述では、1フレーム周期内を通して投射画像の投射を行うように説明したが、これはこの例に限定されず、1フレーム周期内において、駆動パルスのタイミングに応じて投射画像の投射を禁止する投射禁止期間を設定することができる。投射禁止期間は、1フレーム周期内において、投射画像が更新されるタイミングと当該タイミングに隣接する駆動パルスとの間の時間間隔、または、隣接する駆動パルス間の時間間隔が最も大きな期間を除いた期間に対して設定する。
【0167】
図23を用いて、この投射禁止期間について、より具体的に説明する。
図23(a)は、垂直同期信号VDを示す。
図23(b)は、駆動パルスを示す。ここでは、
図21(b)と同様に、1フレーム周期内で4の駆動パルスpl
21、pl
22、pl
23およびpl
24を、1フレーム周期内に均等な間隔で4の駆動パルスを生成する場合に比べて1/2の時間間隔で生成している。
【0168】
この
図23(b)の例では、垂直同期信号VD
1によるフレーム周期内において、駆動パルスpl
21と駆動パルスpl
22との時間間隔(時間T
1)が、当該フレーム周期内で隣接する駆動パルス間の時間間隔が最も大きな期間となる。そのため、この期間を除く、駆動パルスpl
22〜フレーム周期後端までの期間(時間T
2)を、投射禁止期間に設定する。投射禁止期間は、例えば
図23(c)に例示されるようなマスク信号を用いて指定することができる。
図23(c)の例では、マスク信号は、ハイ(High)状態のマスク期間240により投射禁止期間を指定している。
【0169】
投射禁止期間において投射画像の投射を禁止する方法は、様々に考えられる。
図24−1は、光源111の点灯を制御することで投射禁止期間に投射を禁止するようにしたプロジェクタ装置1Aの一例の構成を示す。なお、この
図24−1、ならびに、後述の
図24−2、
図24−3および
図24−4において、上述の
図4と共通する部分については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0170】
図24−1において、回転制御部104は、タイミングジェネレータ107から供給される垂直同期信号VDに基づき駆動パルスを生成して回転機構部105に供給する。それと共に、回転制御部104は、生成した駆動パルスに基づきマスク信号を生成して、光源111に供給する。光源111は、マスク信号のマスク期間240に消灯し、マスク期間240以外の期間で点灯するように制御される。
【0171】
図24−2は、表示素子114の駆動のオン/オフを切り替えることで、投射禁止期間に投射を禁止するようにしたプロジェクタ装置1Bの一例の構成を示す。回転制御部104は、駆動パルスに応じて生成したマスク信号を、表示素子114を駆動する図示されない駆動回路に供給する。駆動回路は、例えば、マスク信号のマスク期間240において全画素を強制的に黒表示とするように表示素子114を駆動し、マスク期間240以外の期間では、画像処理部102から供給される画像データに従い表示素子114を駆動する。
【0172】
図24−3は、投射レンズ12に対してシャッタ115を設け、シャッタ115の開閉を切り替えることで投射禁止期間に投射を禁止するようにしたプロジェクタ装置1Cの一例の構成を示す。シャッタ115は、閉状態とすることで投射レンズ12から射出する光を遮断し、投射画像の投射を禁止する。シャッタ115は、機械的に光を遮断するメカニカルシャッタを用いてもよいし、液晶シャッタなど光の透過率や透過方向を制御することで光を遮断する方式を用いてもよい。
【0173】
回転制御部104は、駆動パルスに応じて生成したマスク信号を、シャッタ115を駆動する図示されないシャッタ駆動部に供給する。シャッタ駆動部は、例えばマスク信号のマスク期間240において閉状態とし、マスク期間240以外の期間では開状態となるようにシャッタ115を駆動する。
【0174】
なお、シャッタ115は、投射レンズ12に対して設ける例に限られない。例えば、シャッタ115を光源111と表示素子114との間に設けてもよい。
【0175】
図24−4は、画像処理部102において有効領域の全面が黒色の黒画像を挿入することで、投射禁止期間に投射を禁止するようにしたプロジェクタ装置1Dの一例の構成を示す。回転制御部104は、駆動パルスに応じて生成したマスク信号を、画像処理部102に供給する。
【0176】
画像処理部102は、マスク信号のマスク期間240の開始点で黒画像を表示するための黒画像データを生成し、生成した黒画像データを画像切り出し部100から供給される画像データとすげ替えて、表示素子114の駆動回路に供給する。黒画像データは、予め作成して図示されないメモリに格納しておいてもよい。図示は省略するが、マスク信号は、表示素子114の駆動回路にも供給され、当該駆動回路は、マスク期間240の開始点で表示素子114の表示を更新して黒画像データによる表示を行う。
【0177】
このように、1フレーム周期内において、投射画像が更新されるタイミングと当該タイミングに隣接する駆動パルスとの間の時間間隔、または、隣接する駆動パルス間の時間間隔が最も大きな期間を除いた期間における投射を禁止することで、残像の原因となる、例えば1フレーム周期内で当該フレーム先頭から投射される投射画像に対して位置の異なる投射画像の投射が禁止され、残像の発生が防止される。
【0178】
投射禁止期間は、1フレーム周期内の、投射画像が更新されるタイミングと当該タイミングに隣接する駆動パルスとの間の時間間隔のうちの一部、または、隣接する駆動パルス間の時間間隔が最も大きな期間を除いた期間のうちの一部であっても、残像の発生を軽減する効果を得ることができる。また、投射禁止期間を設けることによる輝度の低下を補償するために、例えば光源111に対して、投射期間内の光量を増加させる制御をさらに加えても良い。
【0179】
<投射画像高品位化の第1の方法と第2の方法との組み合わせ>
なお、上述した投射画像高品位化の第1の方法と第2の方法は、組み合わせて用いることができる。例えば、第2の方法で説明した、
図21(b)に示される各駆動パルスpl
21、pl
22、pl
23およびpl
24における投射レンズ12の投射方向の変化が、上述した式(10)に従って決定された角度λになるように、モータ40のステップ角と、ギア35を含めたギア群のギア比を決める。
【0180】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。上述の第1の実施形態では、ドラム部10が垂直方向に回動し、投射レンズ12による投射角に応じて投射領域を垂直方向に変化させているが、これはこの例に限定されない。第2の実施形態では、投射レンズ12による投射領域を水平方向に変化可能とする。
【0181】
図25は、第2の実施形態による画像投射装置(プロジェクタ装置)1’の外観の例を示す図である。なお、
図25は、画像投射装置1’のカバーなどを取り去った状態を示し、上述した
図1および
図2と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0182】
プロジェクタ装置1’において、台座302に設けられたターンテーブル301に対して水平回転筐体300が取り付けられている。水平回転筐体300は、内部に投射レンズ12を備えるドラム30が、軸部38を中心に垂直方向に回動可能に取り付けられている。ターンテーブル301の回動に応じて水平回転筐体300が水平方向に回動し、それに伴い、投射レンズ12による投射方向が水平方向に変化するようになっている。
【0183】
図26は、台座302の外観の例を示す。台座302は、ターンテーブル301を備える。ターンテーブル301は、裏面側にギア304が取り付けられている。ターンテーブル301は、後述する駆動部313からギア304を介して伝達された回転により、軸303を中心に水平方向に回動するようになっている。また、台座302は、内部に回路部の各種基板や電源部などが設けられる。
【0184】
図27は、ターンテーブル301を裏面側から見た図である。駆動部313は、ギア304に回転を伝達し、ターンテーブル301を回動させる。より詳細には、駆動部313は、例えばステッピングモータであるモータ320を有すると共に、モータ320の回転軸により直接駆動されるウォームギア321と、ウォームギア321による回転を伝達するギア322と、ギア322から伝達された回転をターンテーブル301のギア304に伝達するギア323とを含むギア群を有する。このギア群によりモータ320の回転をギア304に伝達することで、ターンテーブル301をモータ320の回転に応じて回転させることができる。ターンテーブル301の回転速度は、モータ320の回転速度とギア群のギア比とにより決定される。
【0185】
ターンテーブル301に対して、突起312aおよび312bが設けられる。この突起312aおよび312bを、図示されないフォトインタラプタなどを用いて検知することで、基準の方向に対するターンテーブル301の方向を知ることができる。
【0186】
以下では、投射レンズ12の投射方向が第1面に対して垂直方向を向いている場合に、投射レンズ12による水平方向の投射角を投射角0°とし、この投射角0°を初期値とする。投射レンズ12による投射角は、ターンテーブル301上面側から見た場合に時計回りで増加するものとする。
【0187】
なお、プロジェクタ装置1’の動作を制御するための構成、ならびに、投射レンズ12を含む光学系の構成は、上述した
図4に示した回路部および光学エンジン部110と共通であるので、説明を省略する。ここで、第2の実施形態では、
図4における回転機構部105は、
図27を用いて説明した駆動部313、突起312aおよび312b、ならびに、図示されないフォトインタラプタを含むものとする。フォトインタラプタの出力は、
図4の回転制御部104に供給される。また、駆動部313のモータ320は、
図4の回転制御部104から供給される駆動パルスにより駆動される。
【0188】
第2の実施形態によるプロジェクタ装置1’の動作について、
図4の構成を参照しながら概略的に説明する。以下では、ドラム30は、垂直方向の回動を行わないものとして説明する。
【0189】
例えば所定の画像サイズに整形された画像データが、入力画像データとしてプロジェクタ装置1’に入力される。ここでは、入力画像データの画像サイズは、幅が表示素子114の幅よりも大きいものとする。この入力画像データは、画像切り出し部100を介してメモリ101に格納される。
図28は、第2の実施形態による、メモリ101に格納される入力画像データ330と、画像制御部103の指定に応じて画像切り出し部100が入力画像データ330から切り出した投射画像データ331との関係の例を模式的に示す。
【0190】
投射角0°において、画像制御部103は、回転制御部104から取得される投射角θの情報に従い、画像切り出し部100に対して、メモリ101に格納される入力画像データ330の切り出し領域331を指定する。例えば、投射角0°において、画像制御部103は、画像切り出し部100に対して入力画像データ330の左端から表示素子114の有効領域に応じた幅の画像領域331aを指定する。
【0191】
画像切り出し部100は、メモリ101に格納される入力画像データ330から切り出し領域として指定された画像領域331aを切り出して、画像データとして出力する。この画像データは、画像処理部102を介して表示素子114を駆動する駆動回路に供給される。駆動回路は、供給された画像データに従い表示素子114を駆動する。これにより、壁やスクリーンといった被投射媒体に対して、画像領域331aの投射画像が投射される。
【0192】
例えば操作部14に対するユーザ操作により投射角θの変更が指示されると、回転制御部104は、この指示に応じたCPU120からの命令に従い、モータ320を駆動する駆動パルスを生成し、回転機構部105に供給する。回転機構部105において、供給された駆動パルスによりモータ320が駆動されて、ターンテーブル301が駆動パルスに応じた角度だけ回転される。
【0193】
駆動パルスは、回転制御部104から画像制御部103へも供給される。画像制御部103は、駆動パルスに応じて、メモリ101に格納される入力画像データ330に対して切り出し領域を指定する。ここでは、画像制御部103は、駆動パルスに応じた投射角θの変化に対応して、画像領域331aに対してx
1画素分、水平方向に移動した画像領域331bを切り出し領域として指定する。
【0194】
画像切り出し部100は、メモリ101に格納される入力画像データ330から画像領域331bを切り出して、画像データとして出力する。この画像データが、画像処理部102を介して表示素子114の駆動回路に供給され、表示素子114が駆動される。これにより、被投射媒体に対して、画像領域331bの投射画像が、画像領域331aの投射画像に対して投射角θの変化分移動した位置に投射される。
【0195】
さらに投射角θの変更が指示されると、同様にして、回転制御部104の制御によりターンテーブル301が駆動パルスに応じた角度だけ回転され投射角θが変化される。それと共に、画像制御部103により、投射角θの変化に対応して、例えば画像領域331bに対してさらにx
2画素分、水平方向に移動した画像領域331cが切り出し領域として指定される。この画像領域331cの画像データに基づく投射画像が被投射媒体に投射される。
【0196】
このように、第2の実施形態のプロジェクタ装置1’によれば、幅が表示素子114の幅よりも大きい入力画像データ330を、入力画像データ330内の所定領域を水平方向に移動させながら、全て投射させることができる。
【0197】
<投射画像の高品位化(1)の適用>
第2の実施形態に対して、上述した第1の実施形態における投射画像高品位化の第1の方法を適用させることができる。この場合、投射画像を切り出す切り出し領域が、ターンテーブル301の回転に伴い入力画像データ330に対して水平方向に移動する。そのため、投射レンズ12による投射角θを連続的に変化させた場合、水平方向に対して、上述したような投射角θの分解能に基づく誤差に起因するブレがユーザに認識されてしまう。そのため、上述した投射画像高品位化の第1の方法をこの第2の実施形態に適用することで、水平方向についての投射画像に対するユーザのブレの認識を抑制する。
【0198】
ここで、上述した式(10)の画角αは、表示素子114において水平方向に最大の有効領域の画像を投射する際の、当該有効領域を投射レンズ12から水平方向に見込む角となる。
【0199】
また、式(10)におけるライン数lnは、表示素子114の有効領域の水平方向のサイズとなる。すなわち、第2の実施形態では、表示素子114の有効領域の、水平方向の各画素列において、垂直方向の位置が対応する画素からなる画素列をラインと定義し、このラインの、表示素子114における水平方向に最大の有効領域内の数をライン数lnとする。
【0200】
さらに、式(10)における角度λは、モータ320に対する1の駆動パルスで投射レンズ12の投射方向が水平方向に変化する角度となる。換言すれば、角度λは、投射角θの、モータ320の回転制御における最小の可変角度である。角度λは、上述と同様に、モータ320のステップ角と、ギア304を含めたギア群のギア比によって決まる値である。
【0201】
このように定義された画角α、ライン数lnおよび角度λが上述した式(10)を満たす場合に、投射画像の、モータ320に対する駆動パルス毎の移動量が1ライン未満となる。そのため、投射レンズ12による投射角θを連続的に変化させた場合の、投射画像に対するユーザのブレの認識を抑制することができ、投射画像の高画質化を図ることが可能となる。
【0202】
<投射画像の高品位化(2)の適用>
第2の実施形態に対して、上述した第1の実施形態における投射画像高品位化の第2の方法を適用させることができる。投射レンズ12の投射方向を水平方向に変化させた場合であっても、第1の実施形態の場合と同様に、フレーム周期内に駆動パルスをモータ320に供給する場合、1フレーム周期内において、投射画像の更新が行われずに投射位置のみが段階的に変化する。したがって、次フレームの先頭で投射画像の更新が行われる際に、前フレームで段階的に変化した各投射位置の投射画像が水平方向の残像としてユーザに観察されることになる。
【0203】
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様にして、フレーム周期内に駆動パルスを生成する際に、投射画像が更新されるタイミングと当該タイミングに隣接する駆動パルスとの間の時間間隔と、互いに隣接する駆動パルス間の時間間隔とのうち少なくとも一部が不均等になるようにすることで、各投射位置の投射画像による残像の強度が不均等になり、残像による画像の滲みを抑制することが可能である。
【0204】
また、その際に、第1の実施形態の場合と同様にして、1フレーム周期内において、投射画像が更新されるタイミングと当該タイミングに隣接する駆動パルスとの間の時間間隔、または、隣接する駆動パルス間の時間間隔が最も大きな期間を除いた期間に対して、駆動パルスのタイミングに応じて投射画像の投射を禁止する投射禁止期間を設定することができる。これにより、残像の原因となる、例えば1フレーム周期内で当該フレーム先頭から投射される投射画像に対して位置の異なる投射画像の投射が禁止され、残像の発生が防止される。
【0205】
投射禁止期間において投射画像の投射を禁止する方法は、
図24−1〜
図24−4を用いて説明した、光源111の点灯を制御する方法、表示素子114の駆動のオン/オフを切り替える方法、シャッタ115を用いる方法、黒画像を挿入する方法の何れも適用することができる。
【0206】
<投射画像高品位化の第1の方法と第2の方法との組み合わせ>
第2の実施形態においても、上述の第1の実施形態と同様に、投射画像高品位化の第1の方法と第2の方法を組み合わせて用いることができる。例えば、第2の方法で説明した、
図21(b)に示される各駆動パルスpl
21、pl
22、pl
23およびpl
24における投射レンズ12の投射方向の変化が、上述した式(10)に従って決定された角度λになるように、モータ320のステップ角と、ギア304を含めたギア群のギア比を決める。