特許第5874561号(P5874561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5874561-帯電防止性剥離フィルム 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874561
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】帯電防止性剥離フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20160218BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
   C09J7/02 Z
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-164389(P2012-164389)
(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公開番号】特開2014-24206(P2014-24206A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長島 稔
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−201118(JP,A)
【文献】 特開2012−099265(JP,A)
【文献】 特開2011−001396(JP,A)
【文献】 特開2000−108241(JP,A)
【文献】 特開平10−147750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C09J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの片面に帯電防止層が形成され、その帯電防止層上に更にシリコーン系剥離層が形成されてなる帯電防止性剥離フィルムにおいて、該帯電防止層が、以下の成分(a)〜(c):
(a)アルキルシリケートの加水分解物100質量部に対し、カップリング剤200〜300質量部を縮合反応させて得た縮合反応物;
(b)水溶性成膜用樹脂;及び
(c)帯電防止剤
を含有する帯電防止性剥離フィルム。
【請求項2】
アルキルシリケートが、式(1)
【化1】
(式(1)中、R1はアルキル基であり、nは1以上の整数である。)
で表される化合物である請求項1記載の帯電防止性剥離フィルム。
【請求項3】
アルキルシリケートの加水分解物の数平均分子量が、200〜500である請求項1又は2記載の帯電防止性剥離フィルム。
【請求項4】
R1が炭素数1〜3のアルキル基であり、nが3〜8の整数である請求項2記載の帯電防止性剥離フィルム。
【請求項5】
R1がメチル基であり、nが5である請求項4記載の帯電防止性剥離フィルム。
【請求項6】
アルキルシリケートの加水分解の程度が、全OR1基の数の50%以上が加水分解を受けて水酸基となる程度である請求項1〜5のいずれかに記載の帯電防止性剥離フィルム。
【請求項7】
カップリング剤が、式(2)
【化2】
(式(2)中、R2はアルコキシ基で置換されてもよいアルキル基又はアシルオキシ基であり、Yはグリシジルオキシ基、エポキシ基、アミノ基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メルカプト基、イソシアネート基又はウレイド基、炭素数1〜3のアルキルチオ基であり、pは0〜2の整数であり、qは0〜3の整数である。)
で表される化合物である請求項1〜6のいずれかに記載の帯電防止性剥離フィルム。
【請求項8】
R2がメチル基であり、Yがグリシジルオキシ基であり、pが0であり、qが3である請求項7記載の帯電防止性剥離フィルム。
【請求項9】
水溶性成膜用樹脂が、20℃の水100gに対し、少なくとも10g溶解するポリエステル樹脂である請求項1〜のいずれかに記載の帯電防止性剥離フィルム。
【請求項10】
成分(c)の帯電防止剤が、導電性高分子である請求項1〜のいずれかに記載の帯電防止性剥離フィルム。
【請求項11】
導電性高分子が、以下の式(3)又は(4)
【化3】

(式中、mは繰り返し単位数である。)
で表される構造を有する請求項10記載の帯電防止性剥離フィルム。
【請求項12】
帯電防止層が、成分(a)の縮合反応物を45〜65質量%、成分(b)の水溶性成膜用樹脂を10〜30質量%、成分(c)の帯電防止剤を20〜30質量%含有し、成分(a)と成分(b)との質量基準の含有割合が100:200〜300である請求項1〜11のいずれかに記載の帯電防止性剥離フィルム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の帯電防止性剥離フィルムに、両面粘着フィルムが積層されている剥離フィルム付き粘着テープ。
【請求項14】
両面粘着フィルムが、異方性導電フィルムである請求項13記載の剥離フィルム付き粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材フィルムの片面に帯電防止層が形成され、その帯電防止層上に更にシリコーン系剥離層が形成された帯電防止性剥離フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電異方性導電フィルム(ACF)等に使用する剥離フィルムに対しては、良好な剥離性のみならず、帯電によるACFへの異物の付着や取扱性の低下を防止するために、良好な帯電防止性を示すことが求められており、そのような剥離フィルムとして、ポリエステルフィルムなどの基材フィルムに、イソシアネートと一般的に界面活性剤として使用されているアルキルアセチレンジオールとの反応物、及び帯電防止剤として導電性高分子を含有する帯電防止層を設け、更にその帯電防止層上にシリコーン系剥離層を設けたものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−83536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に提案されている帯電防止性剥離フィルムの場合、帯電防止層に含有されているアルキルアセチレンジオールが界面活性剤であるため、帯電防止層とシリコーン系剥離層との間の密着性が低下するという問題がある。この問題は、帯電防止性剥離フィルムが高温高湿環境下に長時間放置された場合に顕著に現れる傾向があった。そのため、帯電防止性剥離フィルム上にACFを積層した場合、ACFの特性の発揮を妨げるような、ACF側へのシリコーン系剥離層の転着が発生することが懸念されている。
【0005】
本発明の課題は、以上の従来の問題点を解決しようとするものであり、基材フィルムの片面に帯電防止層が形成され、その帯電防止層上に更にシリコーン系剥離層が形成された帯電防止性剥離フィルムにおいて、満足すべき剥離力及び表面抵抗値を示しながらも、帯電防止層とシリコーン系剥離層との間の密着性を高温高湿環境下に放置された場合でも良好なレベルとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、帯電防止層に、アルキルシリケートの加水分解物とカップリング剤とを縮合反応させて得た縮合反応物、水溶性成膜用樹脂、及び帯電防止剤を含有させることにより、上述の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、基材フィルムの片面に帯電防止層が形成され、その帯電防止層上に更にシリコーン系剥離層が形成されてなる帯電防止性剥離フィルムにおいて、該帯電防止層が、以下の成分(a)〜(c):
(a)アルキルシリケートの加水分解物と、カップリング剤とを縮合反応させて得た縮合反応物;
(b)水溶性成膜用樹脂;及び
(c)帯電防止剤
を含有する帯電防止性剥離フィルムを提供する。
【0008】
また、本発明は、この帯電防止性剥離フィルムに、両面粘着フィルムが積層されている剥離フィルム付き粘着テープを提供する。
【発明の効果】
【0009】
基材フィルムの片面に帯電防止層が形成され、その帯電防止層上に更にシリコーン系剥離層が形成されてなる本発明の帯電防止性剥離フィルムにおいて、その帯電防止層が、アルキルシリケートの加水分解物とカップリング剤とを縮合反応させて得た縮合反応物を含有している。このため、帯電防止層は、ポリエステルフィルムなどの基材フィルムに対して良好な密着性を確保すると共にシリコーン系剥離層に対しても、例え高温高湿環境下に放置された場合でも良好な密着性を確保することができる。また、水溶性成膜用樹脂は、縮合反応物及び帯電防止剤と共に水性の媒体中で均一に混合することができ、取扱性に優れた帯電防止層形成用塗料組成物を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の帯電防止性剥離フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の帯電防止性剥離フィルムは、図1に示すように、基材フィルム1の片面に帯電防止層2が形成され、その帯電防止層2上に更にシリコーン系剥離層3が形成された構造を有する。
【0012】
<<基材フィルム1>>
基材フィルム1は、従来の剥離フィルムの基材フィルムを適用することができ、通常厚さ10〜200μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム等を使用することができる。
【0013】
<<帯電防止層2>>
帯電防止層2は、通常、厚さ0.05〜0.5μmの、以下の成分(a)〜(c)を含有する層である。
【0014】
(a)アルキルシリケートの加水分解物と、カップリング剤とを縮合反応させて得た縮合反応物;
(b)水溶性成膜用樹脂;及び
(c)帯電防止剤。
【0015】
以下、これらの成分毎に詳細に説明する。
【0016】
<成分(a)>
成分(a)は、アルキルシリケートの加水分解物と、カップリング剤とを縮合反応させて得た縮合反応物である。
【0017】
ここで、アルキルシリケートとは、加水分解を受け得る加水分解性基として、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を有するケイ酸エステルであり、具体的には式(1)に示す構造を有する化合物であり、市販品を使用することができる。
【0018】
【化1】
【0019】
式(1)中、R1はアルキル基、好ましくは沸点及び反応性の点から炭素数1〜3のアルキル基、特に好ましくは高い反応性の観点からメチル基又は低い環境負荷性の観点からエチル基であり、nはシロキサン単位の繰り返し数(重合度)を表し、1以上、好ましくは反応性の点から3〜8、特に好ましくは5の整数を表す。
【0020】
また、このようなアルキルシリケートは、以下のスキームに示すように、加水分解(換言すれば脱アルコール化)を受けると、脱水縮合反応(高分子化)や切断反応(低分子化)が生じ、2次元の広がりを有する加水分解物となるものと考えられる。なお、以下のスキームにおいて、R1は式(1)で定義したとおりである。
【0021】
【化2】
【0022】
ここで、アルキルシリケートの加水分解は、公知の手法を利用することができ、例えば、アルキルシリケートを塩酸やトルエンスルホン酸などの酸触媒の存在下で過剰量の水に、もしくは水とエタノールなどの水混和性溶媒との混合溶媒に溶解させ、室温〜80℃の温度で反応させることにより行うことができる。
【0023】
このようなアルキルシリケートの加水分解物の数平均分子量は、小さすぎると膜性が不十分となる傾向があり、大きすぎると可溶性が低下する傾向があるので、好ましくは200〜500、より好ましくは300〜400である。
【0024】
以上説明したアルキルシリケートの加水分解物の加水分解の程度は、小さすぎるとカップリング剤との反応性が低下するので、好ましくは全“OR1”基の数の50%以上、より好ましくは80%以上が加水分解を受けて水酸基となる程度である。
【0025】
以上説明したようなアルキルシリケートの加水分解物と縮合反応するカップリング剤とは、加水分解により水酸基を生じ得る加水分解性基、例えば、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基等を有し、有機物表面に対する親和性基もしくは反応性基を有し、無機物表面に対する親和性基もしくは反応性基を有する化合物であり、公知のカップリング剤、好ましくはシランカップリング剤、テトラアルコキシチタン等のチタンカップリング剤等を使用することができる。中でも、加水分解性の点からシランカップリング剤を好ましく使用することができる。このようなシランカップリング剤としては、式(2)で表されるものを好ましく使用することができる。
【0026】
【化3】
【0027】
式(2)中、R2はアルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜3のアルコキシ基)で置換されてもよい炭素数1〜3のアルキル基(炭素数1〜3のアルキル基)又はアシルオキシ基であり、Yはグリシジルオキシ基、エポキシ基、アミノ基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メルカプト基、イソシアネート基又はウレイド基、炭素数1〜3のアルキルチオ基であり、pは0〜2の整数であり、qは0〜3の整数である。
【0028】
式(2)のシランカップリング剤の特に好ましい具体例としては、R2がメチル基であり、Yがグリシジルオキシ基であり、pが0であり、qが3であるものを挙げることができる。
【0029】
成分(a)の縮合反応物は、前述したアルキルシリケートの加水分解物とシランカップリング剤とが縮合反応したものであるが、アルキルシリケートの加水分解物100質量部(但し、水もしくは水と水混和性溶媒(エタノール、メタノール、アセトン等)との混合溶媒を除いた質量基準)に対し、カップリング剤の反応量が少なすぎると反応性が低下する傾向があり、多すぎると親和性が乏しくなる傾向があるので、好ましくは100〜500質量部、より好ましくは200〜300質量部とを、縮合反応させたものである。
【0030】
かかる成分(a)の縮合反応物は、通常、好ましくは水もしくは水と水混和性溶媒(エタノール、メタノール、アセトン等)との混合溶媒中に理論固形分として0.5〜5質量%で溶解した状態で存在している。
【0031】
ここで、縮合反応条件としては、例えば、室温で24時間撹拌するという条件が挙げられる。
【0032】
<成分(b)>
成分(b)は水溶性成膜用樹脂であり、成分(a)の縮合反応物と混和するために水溶性であることが必要である。ここで、“水溶性”とは、20℃の水100gに対し少なくとも10g溶解する性質を意味する。このような水溶性成膜用樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カルボキシメチロール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等を挙げることができる。中でも、水溶性ポリエステル樹脂、特に、酸成分がフタル酸又はその誘導体であって、アルコール成分がエチレングリコールであるものを好ましく使用することができる。
【0033】
<成分(c)>
成分(c)は、帯電防止剤であって、公知の帯電防止剤を適用することができる。中でも、表面抵抗の点から公知の導電性高分子を好ましく適用することができる。このような導電性高分子の具体例としては、以下の式(3)又は(4)に示すものを好ましく挙げることができる。
【0034】
【化4】
【0035】
式(3)及び式(4)中、mは繰り返し単位数であり、好ましくはそれぞれ独立的に20〜80の整数である。
【0036】
帯電防止層2における成分(a)の縮合反応物の含有量(理論固形分換算)は、少なすぎると密着不良が生ずる傾向があり、多すぎると膜が硬くなる傾向があるので、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは45〜65質量%である。
【0037】
帯電防止層2における成分(b)の水溶性成膜用樹脂の含有量は、少なすぎると膜が硬くなる傾向があり、多すぎると密着力不足となる傾向があるので、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
【0038】
帯電防止層2における成分(c)の帯電防止剤の含有量は、少なすぎると帯電防止能が不十分となる傾向があり、多すぎると表面抵抗が過小となる傾向があるので、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは20〜30質量%である。
【0039】
また、帯電防止層2における成分(a)の縮合反応物(理論固形分換算)と成分(b)の水溶性成膜用樹脂との質量基準の含有割合は、好ましくは100:200〜300である。成分(b)の水溶性成膜用樹脂の含有割合がこの範囲を大きく下回ると膜が硬くなる傾向があり、逆に大きく上回ると密着力不足となる傾向がある。
【0040】
以上説明した帯電防止層2は、アルキルシリケートの加水分解物(水アルコール溶液)にカップリング剤を添加し、撹拌することにより縮合反応物の水アルコール溶液を取得し、更に、その水アルコール溶液に水溶性成膜用樹脂と帯電防止剤とを均一に混合して帯電防止層形成用組成物を調製し、その組成物を基材フィルム1上に常法により塗布し、乾燥することにより成膜することができる。
【0041】
<<シリコーン系剥離層3>>
シリコーン系剥離層3としては、従来の剥離フィルムのシリコーン系剥離層を適用することができ、通常、その厚みは0.5〜0.5μmである。このようなシリコーン系剥離層は、通常、公知の剥離紙用シリコーンを帯電防止層2上に公知の手法により成膜することで形成することができる。公知の剥離紙用シリコーンとしては、縮合型シリコーン、例えばヒドロキシポリジメチルシロキサンとハイドロジェンポリジメチルシロキサンとを縮合させたものや、付加反応型シリコーン、例えば、グリシジルポリジメチルシロキサンを硬化剤により付加反応させたもの等が挙げられる。
【0042】
本発明の帯電防止性剥離フィルムは、公知の両面粘着フィルムの剥離フィルムとして使用することができる。このような剥離フィルムに両面粘着フィルムを積層し、必要に応じて合紙を挟みんで巻き回すことにより、ロール状に巻き取られた剥離フィルム付き粘着テープが得られる。ここで、好ましい両面粘着フィルムとして、異方性導電フィルムを適用することができる。異方性導電フィルムとしては、公知の異方性導電フィルムを採用することができる。
【0043】
なお、本発明の帯電防止性剥離フィルムの帯電防止性能は、帯電防止性剥離フィルムの使用目的に応じて適宜設定することができるが、好ましくは表面抵抗値が1×1011Ω/□以下、より好ましくは1×1010Ω/□以下である。他方、表面抵抗値が低すぎると、帯電防止能は申し分ないものの、絶縁性の低下というデメリットが生ずる場合があるので、好ましくは1×10Ω/□以上である。
【0044】
また、本発明の帯電防止性剥離フィルムの剥離性能は、帯電防止性剥離フィルムの使用目的に応じて適宜設定することができるが、シリコーン系剥離層に貼着した粘着フィルムの剥離力で評価することができる。例えば、シリコーン系剥離層に対し、アクリル系粘着フィルム(T4090、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株))を70℃の温度下で25g/cmの圧力で貼り合わせ、16時間経過後、剥離試験器(テンシロン万能試験機、オリエンテック社)で剥離力を測定したときに、好ましくは0.6N/5cm以下、より好ましくは0.4N/5cm以下の剥離強度であることが好ましい。他方、剥離力が低すぎると、剥離性能は申し分ないものの、剥離層に粘着層を保持しておくことが難しくなるというデメリットが生ずる場合があるので、好ましくは0.05N/5cm以上、より好ましくは0.1N/5cm以上である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0046】
参考例1(アルキルシリケートの部分加水分解物の調製)
窒素導入管、温度計及び撹拌機を備えた反応容器に、メチルシリケート(メチルシリケート51、コルコート(株))100質量部に、エタノール15質量部、及び0.01質量%の硫酸を投入し、投入完了後更に1時間撹拌を続けた。撹拌終了後、エバポレーターを使用して反応物から、加水分解により生じたメタノール並びに投入したエタノールを留去した。得られた留去残渣を陽イオン交換樹脂カラムに通過させて過剰の硫酸を除去した。得られた部分加水分解物にイソプロピルアルコール100質量部を少しずつ添加しながら、撹拌を10時間続けた。これにより、数平均分子量350のメチルシリケートの部分加水分解物をイソプロピルアルコール溶液として得た。
【0047】
参考例2(縮合反応物の調製)
撹拌機を備えた反応容器に、参考例1で調製したメチルシリケートの部分加水分解物のイソプロピルアルコール溶液25質量部(理論−形分2質量%)を投入し、撹拌しながら、更にシランカップリング剤(A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)5質量部を徐々に添加し、縮合反応物をイソプロピルアルコール溶液として得た。
【0048】
参考例3(水溶性ポリエステル樹脂の調製)
ディーンスターク装置、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた反応容器に、テレフタル酸40質量部、イソフタル酸40質量部、エチレングリコール150質量部、及び酢酸亜鉛10質量部を仕込み、撹拌しながら210℃に昇温し、エステル化により生じた水を共沸除去しながら脱水縮合反応を行った。実際に留出した水が理論全留出量の75%に達した時点で、反応容器に5−ソジオスルホイソフタル酸10質量部を投入し、更に脱水縮合反応を続け、ガラス転移温度Tgが68℃の水溶性ポリエステル樹脂を得た。
【0049】
実施例1
(帯電防止層形成用組成物の調製)
反応容器中で、イオン交換水11質量部と参考例3の水溶性ポリエステル樹脂1質量部とを撹拌混合し、更にエタノール26質量部を投入し、均一に撹拌混合した。この混合物に、更に帯電防止剤(ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルフォネート;クレビオスP、HCスタルク社)20質量部を添加し、更に均一に撹拌混合した。得られた混合物に、更に参考例2の縮合反応物のイソプロピルアルコール溶液42質量部を投入し、更に均一に撹拌混合することにより、帯電防止層形成用組成物を得た。
【0050】
(シリコーン系剥離層形成用組成物の調製)
反応容器中で、硬化型シリコーン溶液(KS847、信越化学工業(株))10質量部と、白金系硬化剤(CAT−PL50T、信越化学工業(株))0.1質量部と、トルエン90質量部とを撹拌混合することによりシリコーン系剥離層形成用組成物を得た。
【0051】
(帯電防止性剥離フィルムの作成)
厚さ50μmのポリエステル基材フィルム(テトロンU2、帝人(株))の片面に、帯電防止層形成用組成物を、乾燥厚が0.1μmとなるように塗布し、160℃で1分間乾燥することにより帯電防止層を形成した。
【0052】
帯電防止層上に、シリコーン系剥離層形成用組成物を、乾燥厚が0.3μmとなるように塗布し、160℃で1分間乾燥することによりシリコーン系剥離層を形成した。これにより帯電防止性剥離フィルムを得た。
【0053】
実施例2
硬化型シリコーン溶液(KS847、信越化学工業(株))に代えて、別の硬化型シリコーン溶液(LTCF750A、SRX212、東レダウコーニング社)を使用すること以外、実施例1と同様に帯電防止性剥離フィルムを作成した。
【0054】
比較例1
帯電防止層形成用組成物の調製の際に、参考例2の縮合反応物のイソプロピルアルコール溶液42質量部に代えて、参考例3の水溶性ポリエステル樹脂42質量部を使用すること以外、実施例1と同様に帯電防止性剥離フィルムを作成した。
【0055】
比較例2
帯電防止層形成用組成物の調製の際に、参考例3の水溶性ポリエステル樹脂1質量部を使用しないこと以外、実施例1と同様に帯電防止性剥離フィルムを作成した。
【0056】
比較例3
帯電防止層形成用組成物の調製の際に、参考例2の縮合反応物のイソプロピルアルコール溶液42質量部を使用しないこと以外、実施例1と同様に帯電防止性剥離フィルムを作成した。
【0057】
比較例4
帯電防止層形成用組成物の調製の際に、参考例2の縮合反応物のイソプロピルアルコール溶液42質量部に代えて、参考例1の数平均分子量350のメチルシリケートの部分加水分解物のイソプロピルアルコール溶液42質量部を使用すること以外、実施例1と同様に帯電防止性剥離フィルムを作成した。
【0058】
<<評価>>
得られた実施例1及び2並びに比較例1〜4の帯電防止性剥離フィルムについて、以下に説明するように初期「剥離力」、初期「残留接着力」、「表面抵抗値」、エージング前後の「密着力」を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0059】
(初期剥離力)
帯電防止性剥離フィルムのシリコーン系剥離層面に、アクリル系粘着フィルム(T4090、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株))を70℃の温度下で25g/cmの圧力で貼り合わせ、16時間経過後、剥離試験器(テンシロン万能試験機、オリエンテック社)で剥離力を測定した。剥離力は、実用上、2N/5cm以下、好ましくは0.6N/5cm以下であることが望まれる。
【0060】
(初期残留接着力)
市販のポリエステル系粘着テープ(31B、日東電工(株))の帯電防止性剥離フィルムに対する「剥離力」の評価を上述のように行った後、シリコーン系剥離層と接触したポリエステル系粘着テープ面を、剥離処理されていないポリエチレンテレフタレート基材フィルム(ルミラーS10、東レ(株))に対し、同様に貼り合わせ、16時間経過後に剥離強度を測定した(剥離強度A)。これとは別に、テフロン(登録商標)フィルム上に、剥離力の評価を行っていない市販のポリエステル系粘着テープ(31B、日東電工(株))を、同様に貼り合わせ、20時間経過後に剥離し、テフロン(登録商標)フィルムを接触したポリエステル系粘着テープ面を、剥離処理されていないポリエチレンテレフタレート基材フィルム(ルミラーS10、東レ(株))に対し、同様に貼り合わせ、16時間経過後に剥離強度を測定した(剥離強度B)。そして剥離強度Aと剥離強度Bとを、以下の式(1)に代入して残留接着力を求めた。残留接着力は80%以上であることが望まれる。
【0061】
【数1】
【0062】
(表面抵抗)
帯電防止性剥離フィルムのシリコーン系剥離層側表面の表面抵抗[Ω/□]を、電気抵抗測定機(ハイレスター、三菱アナリティカル(株))を用いて測定した。表面抵抗値は1×1011Ω/□以上であることが望まれる。
【0063】
(密着力)
40℃で湿度95%の環境下に1ヶ月放置というエージングテストの前後における帯電防止性剥離フィルムのシリコーン系剥離層側表面を指で10往復擦り、剥離層が剥がれ落ちるか否かを、目視観察し、以下の基準に従って評価した。
【0064】
ランク 基準
A: 剥がれの発生が観察されない場合
B: 基材フィルムと帯電防止層との間で剥がれの発生が観察される場合
C: 帯電防止層と剥離層との間で剥がれの発生が観察される場合
【0065】
【表1】
【0066】
表1から分かるように、実施例1及び2の帯電防止性剥離フィルムは、初期剥離力、初期残留接着力、表面抵抗値については好ましい結果であり、また、エージング前後の密着力は共にA評価であった。
【0067】
他方、比較例1の帯電防止性剥離フィルムは、帯電防止層に、多量の水溶性成膜性樹脂を使用しているものの、アルキルシリケートの加水分解物とカップリング剤とを縮合反応させて得た縮合反応物を使用していないので、実施例に比べ初期残留接着力が非常に低く、表面抵抗値も高くなった。また、エージング前後の密着性もいずれもB評価であった。
【0068】
比較例2の帯電防止性剥離フィルムは、帯電防止層に、アルキルシリケートの加水分解物とカップリング剤とを縮合反応させて得た縮合反応物を使用しているものの、水溶性成膜性樹脂を使用していないので、エージング前の密着性がA評価であったが、エージング後の密着性がC評価であった。
【0069】
比較例3の帯電防止性剥離フィルムは、帯電防止層に、少量の水溶性成膜性樹脂を使用しているものの、アルキルシリケートの加水分解物とカップリング剤とを縮合反応させて得た縮合反応物を使用していないので、表面抵抗値が実施例に比べて高く、エージング前後の密着性がいずれもB評価であった。
【0070】
比較例4の帯電防止性剥離フィルムは、帯電防止層に、アルキルシリケートの加水分解物を使用しているものの、アルキルシリケートの加水分解物とカップリング剤とを縮合反応させて得た縮合反応物を使用していないので、実施例に比べ初期残留接着力が低くなった。また、エージング後の密着性もB評価であった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の帯電防止性剥離フィルムは、その帯電防止層が、アルキルシリケートの加水分解物とカップリング剤とを縮合反応させて得た縮合反応物を含有している。このため、帯電防止層は、ポリエステルフィルムなどの基材フィルムに対して良好な密着性を確保すると共にシリコーン系剥離層に対しても、例え高温高湿環境下に放置された場合でも良好な密着性を確保することができる。よって、異方性導電フィルムの剥離フィルムとして有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 基材フィルム
2 帯電防止層
3 シリコーン系剥離層
図1