特許第5874569号(P5874569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874569
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】防水コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20160218BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   H01R13/52 A
   H01R13/42 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-173015(P2012-173015)
(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公開番号】特開2014-32861(P2014-32861A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 康雄
(72)【発明者】
【氏名】田端 正明
(72)【発明者】
【氏名】相澤 武史
(72)【発明者】
【氏名】武田 和亜希
(72)【発明者】
【氏名】内山 義裕
(72)【発明者】
【氏名】高木 康平
(72)【発明者】
【氏名】森川 悟史
(72)【発明者】
【氏名】外崎 貴志
(72)【発明者】
【氏名】児嶋 映二
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−142198(JP,A)
【文献】 特開2003−297490(JP,A)
【文献】 特開平09−219241(JP,A)
【文献】 特開昭50−027092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌側コネクタが内部に嵌合可能なフード部が設けられた雄側ハウジングと、前記雌側コネクタに設けられた雌型端子と接続される雄型端子とを備えた防水コネクタであって、
前記雄型端子は、前記フード部の奥壁に設けられた端子挿通孔から前記フード部の内部空間に突出した形態で、前記雄側ハウジングに形成されたキャビティ内に収容されて、このキャビティの内壁から嵌合方向前側に向かって片持ち状に延びる弾性変形可能なランスによって嵌合方向後側から係止されることで、前記雄側ハウジング内に保持されており、
前記フード部の奥壁における前記端子挿通孔の開口縁には、前記フード部の奥壁から突出した前記雄型端子の基端部を覆う立設壁が形成されており、
前記立設壁には、前記ランスの前方に位置する部分を嵌合方向に切り欠いた形態で前記ランスを嵌合方向前側に臨ませる治具挿入孔が形成されており、
前記立設壁は、前記フード部と前記雌側コネクタとが嵌合した際に、前記雌側コネクタに設けられた雌側キャビティ内に挿入されて、前記雌側キャビティの内周面に接触するようになっており、
前記治具挿入孔の開口縁は、前記フード部と前記雌側コネクタとが嵌合した際に、前記雌側キャビティの開口縁と嵌合方向に当接するように形成されている防水コネクタ。
【請求項2】
前記フード部の奥壁における前記端子挿通孔の開口縁は、矩形状に形成されており、
前記立設壁は、前記端子挿通孔の開口縁に対応するように角筒状に形成されている請求項1記載の防水コネクタ。
【請求項3】
前記立設壁の基端部は、前記フード部の奥壁に向かうほど拡幅するテーパ状に形成されており、
前記治具挿入孔の開口縁に配された前記立設壁の基端部は、前記フード部と前記雌側コネクタとが嵌合した際に、前記雌側キャビティの開口縁に面接触するように形成されている請求項1または請求項2記載の防水コネクタ。
【請求項4】
前記立設壁において、前記端子挿通孔の軸心を中心に前記治具挿入孔と対向する位置には、前記立設壁を嵌合方向と交差する方向に切り欠いた形態の切欠孔が形成されており、
前記切欠孔の開口縁に配された前記立設壁の基端部は、前記フード部と前記雌側コネクタとが嵌合した際に、前記雌側キャビティの開口縁に面接触するように形成されている請求項3記載の防水コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、防水コネクタとして、下記特許文献1に記載のものが知られている。この防水コネクタは、雌側コネクタが内部に嵌合されるフード部を有する雄側ハウジングと、この雄側ハウジングに保持される雄型端子とを備えて構成されている。雄型端子は、フード部の奥壁に設けられた端子挿通孔からフード部の内部空間に突出した形態で雄側ハウジングに保持されている。また、フード部の奥壁における端子挿通孔の開口縁には、フード部の内部空間に突出した雄型端子の基端部を保護するように立設壁が全周に亘って形成されている。立設壁は、雄側ハウジングのフード部と雌側コネクタが嵌合すると、雌側コネクタの前壁に設けられたシール部材の貫通孔に挿入されて、立設壁が貫通孔の内周面に密着することで、フード部と雌側コネクタの前壁との間が防水されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−297479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような防水コネクタに、ランスによって後方から係止される雄型端子を適用させることが検討されている。
ところが、このような構成にすると、メンテナンス作業のために、雄型端子とランスとの係止状態を解除するランス操作用の治具を挿入する治具挿入孔をフード部の奥壁に形成することになる。しかしながら、治具挿入孔を端子挿通孔とともに一括して形成しようとすると、治具挿入孔を形成した分だけ立設壁が大型化してしまい、これに伴って、フード部も大型化してしまう。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、治具挿入孔を端子挿入孔と一括して形成しつつ、フード部が大型化することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、雌側コネクタが内部に嵌合可能なフード部が設けられた雄側ハウジングと、前記雌側コネクタに設けられた雌型端子と接続される雄型端子とを備えた防水コネクタであって、前記雄型端子は、前記フード部の奥壁に設けられた端子挿通孔から前記フード部の内部空間に突出した形態で、前記雄側ハウジングに形成されたキャビティ内に収容されて、このキャビティの内壁から嵌合方向前側に向かって片持ち状に延びる弾性変形可能なランスによって嵌合方向後側から係止されることで、前記雄側ハウジング内に保持されており、前記フード部の奥壁における前記端子挿通孔の開口縁には、前記フード部の奥壁から突出した前記雄型端子の基端部を覆う立設壁が形成されており、前記立設壁には、前記ランスの前方に位置する部分を嵌合方向に切り欠いた形態で前記ランスを嵌合方向前側に臨ませる治具挿入孔が形成されており、前記立設壁は、前記フード部と前記雌側コネクタとが嵌合した際に、前記雌側コネクタに設けられた雌側キャビティ内に挿入されて、前記雌側キャビティの内周面に接触するようになっており、前記治具挿入孔の開口縁は、前記フード部と前記雌側コネクタとが嵌合した際に、前記雌側キャビティの開口縁と嵌合方向に当接するように形成されているところに特徴を有する。
このような構成の防水コネクタによると、治具挿入孔を端子挿入孔と一括して形成することができ、嵌合方向前側から治具挿入孔を通じて、ランスを操作する治具を挿入することができる。これにより、治具挿入孔と端子挿通孔とを一括して形成しつつも、治具挿入孔が形成された分だけ立設壁が大型化することを抑制することができる。この結果、フード部が大型化することを抑制することができる。
また、立設壁と雌側キャビティの内周面とを接触させると共に、治具挿入孔の開口縁を雌側キャビティの開口縁に当接させることで、立設壁と雌側コネクタとの間をシールすることができる。これにより、立設壁やフード部が大型化することを抑制しつつ、さらにキャビティを個別に防水することができる。
【0007】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
前記フード部の奥壁における前記端子挿通孔の開口縁は、矩形状に形成されており、前記立設壁は、前記端子挿通孔の開口縁に対応するように角筒状に形成されている構成としてもよい。ここで、「矩形状」とは、角部が鋭角な矩形のみならず、矩形の角部が僅かに丸みを帯びたものも含むことを意味し、「角筒状」とは、角部が鋭角な角筒のみならず、角部が僅かに丸みを帯びたものも含むことを意味する。
矩形状の端子挿通孔の開口縁に対して、端子挿入孔を塞がないように、立設壁を円筒状に形成すると、立設壁の内周面と端子挿入孔の開口縁との間には、円弧状のギャップが形成されてしまい、その円弧状のギャップの分だけ、立設壁が無駄に大型化してしまう。ところが、上記の構成によると、立設壁が端子挿通孔の開口縁に対応するように角筒状に形成されていることから、端子挿入孔の開口縁と立設壁との間にギャップが生じることを防ぐことができる。これにより、立設壁を円筒状に形成する場合に比べて、立設壁を小型化することができる。ひいては、フード部が大型化することを抑制することができる。
【0009】
前記立設壁の基端部は、前記フード部の奥壁に向かうほど拡幅するテーパ状に形成されており、前記治具挿入孔の開口縁に配された前記立設壁の基端部は、前記フード部と前記雌側コネクタとが嵌合した際に、前記雌側キャビティの開口縁に面接触するように形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、治具挿入孔が形成された立設壁の基端部を雌側キャビティの開口縁に面接触させることにより、キャビティの外側とキャビティの内側との間の距離を大きくすることができる。これにより、キャビティの外側から治具挿入孔を通じてキャビティの内側に水が浸入することをより確実に防ぐことができる。
【0010】
前記立設壁において、前記端子挿通孔の軸心を中心に前記治具挿入孔と反対側の位置には、前記立設壁を嵌合方向と交差する方向に切り欠いた形態の切欠孔が形成されており、前記切欠孔の開口縁に配された前記立設壁の基端部は、前記フード部と前記雌側コネクタとが嵌合した際に、前記雌側キャビティの開口縁に面接触するように形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、治具挿入孔側だけでなく、治具挿入孔とは反対側にも切欠孔を形成しているので、立設壁を切り欠いた分だけ、治具挿入孔および切欠孔が並んだ方向に立設壁をさらに小型化することができる。これにより、立設壁およびフード部が大型化することをさらに抑制することができる。また、切欠孔においても、切欠孔が形成された立設壁の基端部を雌側キャビティの開口縁に面接触させていることから、切欠孔からキャビティ内に水が浸入することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、治具挿入孔を端子挿入孔と一括して形成しつつ、フード部が大型化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】雄側コネクタと雌側コネクタとが嵌合する前の状態を示す断面図
図2】雄側コネクタと雌側コネクタとが嵌合した状態を示す断面図
図3】雄側ハウジングの正面図
図4】雌側ハウジングの正面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明の実施形態について図1乃至図4を参照して説明する。
本実施形態の防水コネクタは、複数の雄型端子50を収容して、雌側コネクタ40と嵌合される雄側コネクタ10を例示している。なお、以下の説明において、上下方向とは、図1における上下方向を基準とし、前後方向とは、図1における雌側コネクタ40と雄側コネクタ10との嵌合方向を基準として、互いに嵌合する側を前側とする。
【0014】
雌側コネクタ40は、図1および図2に示すように、複数の雌型端子20を収容する雌側ハウジング41と、雌側ハウジング41の上面に上下方向に弾性変形可能に設けられたロックアーム42とを有している。
雌型端子20は、導電性に優れた金属板材をプレス加工することにより形成されており、角筒状の接続筒部21と、接続筒部21の後方に設けられた電線圧着部22とを備えて構成されている。接続筒部21は前後方向に開口しており、前側開口から雄側コネクタ10の雄型端子50が挿入されることで、雄型端子50と電気的に接続されるようになっている。電線圧着部22は、前後一対ずつの計4つかしめ片23を有している。前側のかしめ片23が電線Wの端末において露出された芯線に圧着され、後側のかしめ片23が電線Wに外嵌された円筒状のゴム栓Gに圧着されることにより、雌型端子20が電線Wの端末に接続されている。
【0015】
雌側ハウジング41は、前後方向に長いブロック状をなしており、雌側ハウジング41の内部には、前後方向に貫通する雌側キャビティ43が複数形成されている。雌側キャビティ43の上側内壁には、斜め下前方に向かって延びる片持ち状の端子係止部44が形成されている。端子係止部44は、雌側キャビティ43内に挿入された雌型端子20を後方から係止することで、雌型端子20を雌側ハウジング41内に保持している。また、雌型端子20が雌側ハウジング41内に収容されると、電線Wに装着されたゴム栓Gが雌側キャビティ43の後側内周面に密着して、各雌側キャビティ43の後側開口から内部に水が浸入することが防止される。
【0016】
雌側キャビティ43の前側開口縁は、図4に示すように、略矩形状をなしており、雌側キャビティ43の前側開口縁には、前側に向かうほど拡幅するテーパ状の案内面45が全周に亘って形成されている。この案内面45は、雄側コネクタ10と雌側コネクタ40とを嵌合させる際に、雄型端子50の後述する電気接続部51を雌側キャビティ43内の雌型端子20に案内し、図2に示すように、雄型端子50を接続筒部21に挿入させるようになっている。これにより、雄型端子50と雌型端子20とが電気的に接続される。
【0017】
ロックアーム42は、図1および図2に示すように、前後方向に長い平板状に形成されており、ロックアーム42の前後方向略中央部を支点としてシーソー状に弾性変形可能とされている。また、ロックアーム42の前部には、ロックアーム42を上下方向に貫通するロック孔46が形成されている。
【0018】
雄側コネクタ10は、複数の雄型端子50を内部に収容する雄側ハウジング61を備えている。
雄型端子50は、雌型端子20の接続筒部21に挿入される細長いピン状の電気接続部51と、電気接続部51の後方に設けられた筒状の端子本体部52と、端子本体部52の後方に設けられた電線圧着部53とを備えて構成されている。
【0019】
端子本体部52は、前後方向に長い箱形状をなし、端子本体部52の上部には、端子本体部52の上面における前後方向略中央部を一段下げることにより、端子本体部52の前部にランス係止部54が形成されている。また、端子本体部52の下面における幅方向略中央部には、前側に切り立った面を有する係止突起55が突設されている。
【0020】
電線圧着部53は、前後一対ずつの計4つかしめ片56を有している。前側のかしめ片56が電線Wの端末において露出された芯線に圧着され、後側のかしめ片56が電線Wに外嵌された円筒状のゴム栓Gに圧着されることにより、雄型端子50が電線Wの端末に接続されている。
【0021】
雄側ハウジング61は、前側が雌側ハウジング41を内部に嵌合するフード部62とされ、後側が前後方向に長いブロック状の端子収容部63とされている。端子収容部63の内部には、雄型端子50を後方から収容する複数の雄側キャビティ64が形成されている。雄側キャビティ64は、上下二段に構成されており、各雄側キャビティ64の前端部における上側内壁には、斜め前下方に向かって延びる片持ち状のランス65が形成されている。このランス65は、ランス65の上方に形成された撓み空間Sに向かって弾性変形可能とされている。ランス65は、雄型端子50が雄側キャビティ64内に挿入される際に、雄型端子50の端子本体部52によって上方に押圧されることで撓み空間Sに向かって弾性変形する。そして、雄型端子50が雄側キャビティ64に対して正規の位置まで挿入されると、端子本体部52による押圧状態が解除され、ランス65が弾性復帰することで端子本体部52のランス係止部54が後方からランス65によって係止される。これにより、雄型端子50が後方に抜止された状態で端子収容部63内に保持されるようになっている。
【0022】
また、雄側キャビティ64の底壁における幅方向略中央部には、端子本体部52の係止突起55が通過可能な逃がし溝66が形成され、この逃がし溝66の前方に係止突起55を前方から係止する前止まり部67が形成されている。このため、雄側キャビティ64内に雄型端子50が挿入されると、係止突起55が逃がし溝66内を通過し、雄型端子50が正規の位置まで挿入されると前止まり部67によって係止突起55が前方から係止される。これにより、雄型端子50が前止まりされた状態で端子収容部63内に保持される。
【0023】
フード部62は、図1乃至図3に示すように、前方に向かって開口した形態をなし、フード部62の奥壁62Aには、前後方向に貫通する複数の端子挿通孔68が複数形成されている。各端子挿通孔68は、端子収容部63の各雄側キャビティ64と連通するように前方に向かって略矩形状に開口して形成されている。そして、端子収容部63内に雄型端子50が収容されると、雄型端子50の電気接続部51が端子挿通孔68に挿通され、電気接続部51がフード部62の奥壁62Aからフード部62の内部空間に向かって突出するようになっている。
【0024】
フード部62の奥壁62Aにおける端子挿通孔68の開口縁には、フード部62内に突出した電気接続部51の基端部を覆う立設壁69が形成されている。立設壁69は、フード部62の奥壁62Aから前方に向かうほど先細りとなるテーパ状のテーパ部70と、テーパ部70から前方に向かって延びる延出部71とを備えて構成されている。
テーパ部70は、端子挿通孔68の開口縁を全周に亘って囲むように略角筒状に形成されており、テーパ部70の前端縁に延出部71が形成されている。
【0025】
ところで、例えば、矩形状の端子挿通孔の開口縁に対して、端子挿入孔を塞がないように、立設壁を円筒状に形成すると、立設壁の内周面と端子挿入孔の開口縁との間には、円弧状のギャップが形成されてしまい、その円弧状のギャップの分だけ、立設壁が無駄に大型化してしまう。
【0026】
ところが、本実施形態によると、立設壁69のテーパ部70が端子挿通孔68の略矩形状の開口縁に対応するように略角筒状に形成されていることから、端子挿通孔68の開口縁とテーパ部70との間にギャップが生じることを防ぐことができる。これにより、立設壁を円弧状に形成する場合に比べて、立設壁69が上下方向および幅方向に大型化することを抑制することができる。
【0027】
また、立設壁69は、図2に示すように、フード部62内に雌側ハウジング41が嵌合されると、電気接続部51と共に、雌側ハウジング41の雌側キャビティ43内に挿入されるようになっている。そして、フード部62と雌側ハウジング41とが正規の嵌合状態に至ると、延出部71の外周面と雌側キャビティ43の内周面とが面接触する。また、これと同時に、電気接続部51が雌型端子20の接続筒部21内に挿入され、雄型端子50と雌型端子20とが電気的に接続される。
【0028】
フード部62の上面には、雌側コネクタ40のロックアーム42におけるロック孔46に嵌まり込むロック突起72が形成されており、フード部62と雌側ハウジング41とが正規の嵌合状態に至ると、ロック孔46に弾性的に嵌まり込み、フード部62と雌側ハウジング41とを嵌合状態にロックするようになっている。
【0029】
さて、各立設壁69の上部には、図1乃至図3に示すように、ランス操作用の治具(図示せず)を挿入する治具挿入孔73が形成されている。治具挿入孔73は、雄側キャビティ64内のランス65およびランス65の撓み空間Sの前方に配された端子挿通孔68の上側内壁と立設壁69の上側内壁とを前後方向(嵌合方向)に切り欠くことで形成されており、立設壁69の上側のテーパ部70の前端面に開口した形態とされている。
立設壁69の上側内壁に形成された治具挿入孔73は、上側のテーパ部70の上側内壁を切り欠くとともに、上側のテーパ部70から前方に延びる上側の延出部71を全て切り欠くことによって形成されており、雄側キャビティ64内のランス65およびランス65の撓み空間Sが治具挿入孔73を通じて前方に臨んだ状態となっている。すなわち、立設壁69の内側に治具挿入孔73と端子挿通孔68とが一括して形成されており、立設壁69は上側の延出部71を切り欠いた分だけ上下方向に小型化されている。
【0030】
また、各立設壁69の下部には、切欠孔74が形成されている。切欠孔74は、端子挿通孔68の軸心を中心に治具挿入孔73と反対側の位置に配されている。この切欠孔74は、下側のテーパ部70の下側内壁を切り欠くとともに、下側のテーパ部70から前方に延びる下側の延出部71を上下方向に全て切り欠くことによって形成されており、立設壁69の下側のテーパ部70の前端面に開口した形態とされている。これにより、立設壁69が下側の突出部を取り除いた分だけ、上下方向に小型化されている。そして、各立設壁69における上下両側の延出部71を全て切り欠いたことにより、雄側キャビティ64間のピッチが格段に小さく設定されている。
【0031】
治具挿入孔73が形成された上側のテーパ部(治具挿入孔73の開口縁)70は、フード部62と雌側ハウジング41とが正規の嵌合状態に至ると、雌側キャビティ43の開口縁に設けられた案内面45の上側縁と面接触するように設定されている。また、切欠孔74が形成された下側のテーパ部(切欠孔74の開口縁)70は、フード部62と雌側ハウジング41とが正規の嵌合状態に至ると、雌側キャビティ43の開口縁に設けられた案内面45の下側縁と面接触するように設定されている。すなわち、フード部62と雌側ハウジング41とが正規の嵌合状態に至ると、治具挿入孔73の開口縁および切欠孔74の開口縁が雌側キャビティ43の案内面45によって塞がれるようになっている。
【0032】
本実施形態の雄側コネクタ10は以上のような構成であって、続いてその作用効果を説明する。
例えば、フード部の奥壁における端子挿通孔の開口縁に、立設壁が形成されたコネクタにおいて、端子挿通孔の奥部に配されたランスを操作するための治具挿入孔を端子挿通孔とともに一括して形成しようとすると、治具挿入孔を形成した分だけ立設壁が大型化してしまい、これに伴ってフード部も大型化してしまう。
【0033】
ところが、本実施形態の雄側コネクタ10によると、図1乃至図3に示すように、立設壁69の上側のテーパ部70の上側内壁を切り欠くと共に、立設壁69の上側の延出部71を全て切り欠くことにより、治具挿入孔73を形成している。これにより、立設壁69の内側に治具挿入孔73と端子挿通孔68とを一括して形成しつつ、上側の延出部71を切り欠いた分だけ立設壁69が上下方向に大型化することを抑制することができる。そして、メンテナンス作業の際には、雄側ハウジング61の前方から治具挿入孔73を通じてランス65を操作し、端子収容部63内のランス65と雄型端子50のランス係止部54との係止状態を解除することができる。
【0034】
また、本実施形態によると、立設壁69の下側の位置においても、切欠孔74を形成して、立設壁69の下側の延出部71を全て切り欠いていることから、立設壁69が大型化することをさらに抑制することができる。さらに、各立設壁69における上下方向の延出部71を全て切り欠いたから、雄側キャビティ64間のピッチを格段に小さくすることができ、結果としてフード部62を小型化することができる。
【0035】
ところで、上記のように、立設壁69に治具挿入孔73および切欠孔74を形成すると、上側の延出部71および下側の延出部71が切り欠かれてしまい、治具挿入孔73の開口縁と切欠孔74の開口縁から水が両キャビティ43,64内に浸入することが懸念される。
【0036】
ところが、本実施形態によると、フード部62と雌側ハウジング41とが正規の嵌合状態に至ると、治具挿入孔73が形成された上側のテーパ部(治具挿入孔73の開口縁)70および切欠孔74が形成された下側のテーパ部(切欠孔74の開口縁)70が雌側キャビティ43の開口縁に設けられた案内面45と面接触して、治具挿入孔73の開口縁および切欠孔74の開口縁が塞がれる。
すなわち、フード部62と雌側ハウジング41とが正規の嵌合状態に至ると、立設壁69の幅方向両側において、延出部71が雌側ハウジング41の雌側キャビティ43内に挿入されて、延出部71の外周面と雌側キャビティ43の内周面とが面接触する。また、これと同時に、立設壁69の上下方向両側において、上側のテーパ部(治具挿入孔73の開口縁)70および下側のテーパ部(切欠孔74の開口縁)70が雌側キャビティ43の案内面45と面接触する。これにより、立設壁69が大型化することを抑制しつつ、両ハウジング41,61の隙間から両キャビティ43,64内に水が浸入しないように両ハウジング41,61間をシールし、各キャビティ43,64を個別に防水することができる。
【0037】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、雄側キャビティを上下二段に構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、雄側キャビティを上下一段や上下三段以上に構成してもよい。
(2)上記実施形態では、立設壁69の下部に切欠孔74を構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、立設壁に切欠孔を設けず、下側のシール部が設けられた構成にしてもよい。
(3)上記実施形態では、立設壁69の上側のテーパ部70の上側内壁に治具挿入孔73が形成された構成にしたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、上側のテーパ部を全て切り欠いた構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10:雄側コネクタ(防水コネクタ)
20:雌型端子
40:雌側コネクタ
43:雌側キャビティ
50:雄型端子
61:雄側ハウジング
62:フード部
64:雄側キャビティ(キャビティ)
65:ランス
68:端子挿通孔
69:立設壁
73:治具挿入孔
74:切欠孔
図1
図2
図3
図4