【実施例】
【0022】
以下、本発明の転炉の吹錬方法を実施した場合の結果について説明する。
実操業で本発明方法を検証するに当たり、サブランスプローブの浸漬時と引き抜き時の両方で溶鋼中の酸素濃度を測定するために、
図1に示すサブランスプローブを使用した。
【0023】
すなわち、
図1に示すサブランスプローブ1は、プローブ本体2の内部に、サンプリング孔2aからプローブ本体2の内部に取り込んだ溶鋼の凝固温度から溶鋼中のC濃度を測定する炭素センサー3が設けられている。
【0024】
また、プローブ本体2の先端に取り付けた鉄キャップ4の内部には、溶鋼の温度を測定する測温センサー5とサブランスプローブ1を溶鋼から引き抜く瞬間の酸素濃度を測定する第1の酸素センサー6が設けられている。一方、鉄キャップ4の外側にはサブランスプローブ1を溶鋼に浸漬する瞬間の酸素濃度を測定する第2の酸素センサー7が取り付けられている。
【0025】
そして、転炉吹錬時に、前記サブランスプローブを溶鋼に浸漬する瞬間と、上昇時にサブランスプローブを溶鋼から引き抜く瞬間に起こる酸素起電力を測定し、その変化タイミングから前記溶鋼に浸漬する瞬間と、溶鋼から引き抜く瞬間の溶鋼湯面高さh
a,h
bを求め、それらの精度を検証した。その結果を
図2に示す。
【0026】
そして、
図2に示したサブランスプローブを溶鋼に浸漬する瞬間と、上昇時にサブランスプローブを溶鋼から引き抜く瞬間の溶鋼湯面高さh
a,h
bより、下記(1)式を用いて当該チャージにおける溶鋼湯面高さhを求めた。
【0027】
h=α×h
a+(1−α)×h
b+Δh,0≦α≦1 …(1)
【0028】
上記(1)式において、Δhは吹錬開始前等の静止浴での溶鋼湯面高さを測定した結果と、吹錬中にサブランスプローブを溶鋼に浸漬する瞬間や上昇時に溶鋼湯面から引き抜く瞬間に測定した溶鋼湯面高さとのずれの平均値を表す。このΔhは、計算により推定することもできるが、今回はバックデータとして静止浴と動浴の両方を測定した結果から求めた。
【0029】
本実施例では、サブランスプローブの溶鋼への浸漬時と、サブランスプローブの上昇時で標準偏差の比が6:4であったため、上記(1)式においてα=0.6とし、Δhについては、
図2より、Δh=58mmとして当該チャージにおける溶鋼湯面高さhを求めた。
【0030】
この結果を反映して、次のチャージの溶鋼湯面の高さyを求めるには、下記(2)式を用いた。
【0031】
y=β×(溶銑の装入量)+γ …(2)
【0032】
ここで、(2)式中の定数βとγは、過去50チャージ分の溶銑の装入量と湯面高さの関係の回帰線から求めた。この時、1チャージ前を10倍、2チャージ前を5倍として重みをつけて、直近の炉形状情報などを強く反映できるようにした。
【0033】
本発明方法を用いて吹錬を行った場合の脱炭酸素効率のばらつきを
図3に示す。
図3には、比較として、1日1回溶鋼湯面高さレベルの測定専用のプローブで吹錬前に湯面測定を行い修正した従来方法も併せて示した。
【0034】
図3より明らかなように、従来方法と比較して、本発明方法を用いて吹錬した場合は、脱炭酸素効率のばらつきが減少した。その結果、
図4に示したように、従来方法の場合のスタティックモデルにおける推定炭素濃度[C]に対する標準偏差σは0.17%であったものが、本発明の方法の場合の標準偏差σは0.14%となって吹錬の再現性が向上した。
【0035】
更に、従来方法と、本発明の比較方法と、本発明方法を用いて求めた溶鋼湯面高さで吹錬した場合のサイクルタイムとスタティックモデルにおける推定炭素濃度[C]との誤差を求めた。
【0036】
従来法は、1日1回溶鋼湯面高さを測定した従来例1と、毎チャージ毎吹錬前に溶鋼湯面高さを測定した従来例2について求めた。また、比較法は、吹錬中、サブランスプローブの溶鋼への浸漬中に測定した酸素起電力から溶鋼湯面高さを求めた比較例1と、吹錬中、サブランスプローブを溶鋼から引き抜く際の上昇中に測定した酸素起電力から溶鋼湯面高さを求めた比較例2について求めた。
【0037】
一方、発明法は、吹錬中、サブランスプローブの溶鋼への浸漬中と溶鋼から引き抜く際の上昇中に測定した酸素起電力から溶鋼湯面高さを求めた発明例1と、発明例1における酸素起電力の測定時における溶鋼中のC濃度が共に0.10質量%〜0.35質量%の間になるよう制御した発明例2について求めた。
【0038】
その結果を下記表1に示す。下記表1中のサイクルタイムの評価は、従来例1を基準として、サイクルタイムが増加した場合を×、増加しない場合を○とした。また、スタティックモデルに対する誤差の評価は、スタティックモデルにおける推定炭素濃度[C]に対する標準偏差σが0.13%以下の場合を◎、0.13%を超え、0.14%以下の場合を○、0.14%を超え、0.15%以下の場合を△、0.15%を超える場合を×とした。また、総評は、サイクルタイムが×の場合はスタティックモデルにおける誤差の評価に拘わらず×、サイクルタイムが○の場合はスタティックモデルにおける誤差の評価を総評とした。
【0039】
【表1】
【0040】
表1より、発明例1の場合、サイクルタイムが悪化することなく、スタティックモデルにおける推定炭素濃度[C]に対する標準偏差σは0.14%となって、従来例1、比較例1,2よりも吹錬後における溶鋼中のC濃度の的中精度が上昇した。
【0041】
また、発明例2の場合は、スタティックモデルにおける推定炭素濃度[C]に対する標準偏差σは0.13%となって、更に吹錬後における溶鋼中のC濃度の的中精度が上昇した。
【0042】
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。