【実施例1】
【0024】
図1は、実施例1のダイオードの構成を示した図である。実施例1の縦型ダイオードは、
図1に示すように、基板10と、基板10上に位置するn層11と、n層11上に位置するp層12と、を有している。また、基板10のn層11形成側とは反対側の面には、n電極13が基板10に接して位置し、p層12上の一部領域にはp電極14が位置している。また、実施例1の縦型ダイオードは、保護膜16、フィールドプレート電極17によるフィールドプレート構造を有している。また、素子分離溝15の側面15a、底面15bに露出したn層11表面にはp型領域18が形成されている。また、実施例1の縦型ダイオードは平面視において円形であり、その直径は200μmである。なお、平面視における形状は円形以外でもよく、矩形などであってもよい。矩形とする場合には、その角を丸めることが望ましい。耐圧性能を向上させることができる。
【0025】
基板10は、n−GaNからなる。n−GaN以外にも、導電性を有し、III 族窒化物半導体の成長基板となる任意の材料の基板を用いることができる。たとえば、ZnO、Siなどを用いることも可能である。ただし、格子整合性の点から、本実施例のようにGaN基板を用いることが望ましい。
【0026】
n層11は、厚さ10μm、キャリア濃度1.6×10
16/cm
3 のn
- −GaNからなり、p層12は、厚さ600nm、Mg濃度2×10
19/cm
3 のp
+ −GaNからなる。n層11、p層12は不純物濃度の異なる複数の層であってもよい。また、n層11、p層12をIII 族窒化物半導体として、組成比の異なる複数の層で構成してもよい。n層11とp層12との間に他の層を有していてもよく、たとえば、真性の導電性であるi層を有していてもよい。
【0027】
n層11のn型不純物濃度は、p層12のp型不純物濃度の1/1000以下であることが望ましい。n層11とp層12のpn接合界面19から空乏層が十分に広がり、n層11およびp層12の構造が耐圧性能に与える影響を低減することができる。そのため、実施例1の縦型縦型ダイオードの耐圧設計が容易となる。
【0028】
n電極13はTi/Alからなり、p電極14はNi/Auからなる。ここで「/」は積層であることを意味し、A/BはA層を成膜した後B層を成膜することを意味する。以下、材料の説明において同様である。n電極13としては、n型のIII 族窒化物半導体に対してオーミックコンタクトをとれる材料が好ましい。たとえば、Ti/Al/Ni/Au、TiN/Al、Pd/Ti/Alなども用いることができる。また、p電極14も同様に、p型のIII 族窒化物半導体に対してオーミックコンタクトをとれる材料が好ましく、たとえば、Pd/Au、Co/Auなども用いることができる。
【0029】
素子の外周には、その外周に沿って素子分離溝15が形成されている。素子分離溝15は、p層12表面(p電極14形成側の面)からn層11に達する深さに形成されている。そのため、素子分離溝15側面15aには、p層12とn層11とのpn接合界面19の端部19aが露出する。素子分離溝15の側面15aは、素子分離溝15の底面15bに対して垂直であってもよいし、角度を成していてもよい。角度を成すようにすると、つまり側面15aを傾斜させると、側面15aでの電界強度が緩和され、耐圧を向上させることができる。素子分離溝15側面15aが素子分離溝15底面15bに対して成す角度は、70〜90°とすることが望ましい。
【0030】
素子分離溝15底部の角15c(素子分離溝15側面15aと底面15bとが交わる部分)は、丸められていることが望ましい。角15cを丸めることにより、その角に電界が集中するのを緩和することができるため、耐圧を向上することができる。素子分離溝15底部の角15cを丸めるのは、素子分離溝15を形成する際のドライエッチングの条件を制御することで可能となる。角15cを丸める場合、その曲率半径は0.01μm以上とすることが望ましい。また、同様に、素子分離溝15上部の角15d(素子分離溝15側面15aとp層12表面とが交わる部分)も丸められていることが望ましい。
【0031】
フィールドプレート構造を構成する保護膜16は、素子分離溝15底面15b、側面15aに連続して覆うように形成されている。保護膜16は厚さ800nmのSiO
2 からなる。さらにp層12表面(p電極14側の面)であって、素子分離溝15側面15a近傍の領域にも保護膜16が形成されている。保護膜16は、必ずしもp層12表面に形成されている必要はなく、素子分離溝15底面15bおよび側面15aに連続して形成されていればよい。
【0032】
保護膜16は、上記のように単層のSiO
2 に限るものではない。単層の複数の層で構成されていてもよいし、単層であってもよい。単層とする場合、たとえば、SiN
x 、Al
2 O
3 、HfO
2 、ZrO
2 、AlN、HfON、ZrONなどを用いることができる。また、複数の層とする場合、たとえば、Al
2 O
3 /SiO
2 、SiO
2 /ZrO
2 、SiO
2 /ZrON、SiO
2 /Al
2 O
3 、SiO
2 /HfO
2 、SiN/SiO
2 、Al
2 O
3 /ZrO
2 、SiN/SiO
2 /ZrO
2 、SiO
2 /Al
2 O
3 /HfO
2 、などを用いることができる。保護膜16としてHfO
2 などの誘電率の高い材料を用いれば、保護膜16の厚さを薄くすることができ、その結果として素子分離溝15の深さを浅くすることができるので、素子分離溝15の形成に係る時間を短縮することができ、また素子分離溝15を形成する難易度も低減することができる。
【0033】
また、保護膜16は、側面15a部分の厚さ(側面15a部分において側面15aに対して垂直な方向の厚さ)と底面15b部分の厚さ(底面15b部分において底面15bに対して垂直な方向の厚さ)とが異なっていてもよい。特に、保護膜16の側面15a部分を薄く、底面15b部分を厚くするとよい。側面15a部分の厚さは、薄ければ薄いほど耐圧を向上させることができる。また、底面15b部分の厚さは、底面15b上に保護膜16を介して位置するフィールドプレート電極17端部17aでの電界集中を緩和するため、厚い方がよい。よって、側面15a部分の厚さが底面15b部分の厚さよりも薄くなるよう保護膜16を構成することが望ましい。また、保護膜16を複数の層で構成することで、保護膜16全体としての誘電率の調整をすることができ、所望の耐圧特性が得られるよう設計することが容易となる。
【0034】
同じくフィールドプレート構造を構成するフィールドプレート電極17は、保護膜16を介して、素子分離溝15底面15b、側面15a、p層12表面に連続して覆うように形成されている。さらには保護膜16の形成されていないp層12表面、およびp電極14上にも連続して形成されていて、フィールドプレート電極17とp電極14は接合している。フィールドプレート電極17の端部17aは、素子分離溝15底面15b上に保護膜16を介して位置している。
【0035】
保護膜16とフィールドプレート電極17によってフィールドプレート構造が構成されていることにより、n電極14、p電極15に逆電圧が印加された場合、p電極15に接続されたフィールドプレート電極17にも逆電圧が印加され、素子分離溝15側面15aや底面15b近傍のn層11に空乏層が広がる。そのため、フィールドプレート構造によると耐圧を向上させることができる。
【0036】
フィールドプレート電極17は、Alからなり、厚さは100nmである。フィールドプレート電極17は保護膜16との密着性がよく、かつ導電性を有した材料であればよく、Al以外にもNi、Au、TiN、ポリシリコンなどを用いることができる。なお、フィールドプレート電極17は、保護膜16およびp電極14の形成されずにp層12表面が露出した領域に、そのp層12表面に接してフィールドプレート電極17が位置しているが、保護膜16あるいはp電極14によって覆うことでp層12表面が露出した領域を形成しないようにし、フィールドプレート電極17とp層12表面とが直接接しないようにしてもよい。また、フィールドプレート電極17は、その形成領域によって厚さが異なっていてもよい。たとえば、側面15a部分の厚さと底面15b部分の厚さとが異なっていてもよい。
【0037】
素子分離溝15の側面15aおよび底面15bに露出するn層11表面(側面15aの一部と底面15bの全面)近傍には、p型領域18が形成されている。このp型領域18は、n層11表面にF(フッ素)がドープされて形成されたものである。FはIII 族窒化物半導体に対してアクセプタとして作用する。そのため、n層11表面においてFによってキャリアである電子が相殺されるが、F濃度がその相殺される濃度を越えているため、n層11表面がp型化してp型領域18を形成している。素子分離溝15の側面15aにこのようなp型領域18が形成されていることにより、pn接合界面19の端部19aにおいて空乏層が広がるため、実施例1のダイオードは高い耐圧を有している。
【0038】
p型領域18の厚さは、50nm以上であることが望ましい。厚さが50nm以上であれば、p型領域18を設けることによる耐圧向上効果が一層顕著となるためである。また、p型領域18の厚さの上限は、ダイオードに電圧を印加しない状態でp型領域18全体が空乏層となる厚さとするのがよい。この厚さを越えると、pn接合が崩れて順方向特性に影響が生じるとともに、素子分離溝15による素子分離の効果も減少してしまうためである。
【0039】
p型領域18のF濃度は、Fがドープされていないn層11のキャリア濃度の2倍以上の濃度とすることが望ましい。より高い耐圧向上効果が得られるためである。
【0040】
素子分離溝15およびp型領域18は、以下のように2段階のドライエッチングにより形成する。
【0041】
まず、素子外周を、Cl
2 ガスを用いてp層12表面からn層11に達する深さまでドライエッチングして、素子分離溝15を形成する(
図2(a)参照)。素子分離溝15側面15aには、pn接合界面19の端部19aが露出し、素子分離溝15の底面15bの全面、および側面15aの一部にn層11が露出する。
【0042】
この第1段階のドライエッチングは、次の第2段階のドライエッチングよりも高いエッチングレートであればよく、エッチングガスにはCl
2 以外にも、BCl
3 、SiCl
4 などの塩素系ガスを用いることができる。複数種の塩素系ガスを混合して用いてもよいし、塩素系ガスと塩素系以外のガスとを混合して用いてもよい。
【0043】
次に、素子分離溝15の側面15aおよび底面15bを、CF
4 ガスを用いてドライエッチングする。このとき、素子分離溝15の側面15aおよび底面15bがドライエッチングされるとともに、素子分離溝15の側面15aおよび底面15bにFがドープされる。このFドープ量は、素子分離溝15の側面15aおよび底面15bに露出するn層11表面近傍がp型化するドープ量とする。これにより、素子分離溝15の側面15aおよび底面15bに露出するn層11表面にp型領域18を形成する(
図2(b)参照)。なお、素子分離溝15の側面15aのうち、p層12が露出した領域にもFがドープされるが、素子の特性には影響しない。
【0044】
エッチングガスにはCF
4 以外にも、CHF
3 、C
2 F
6 、C
3 F
8 、COF
2 、C
4 F
8 などの炭化フッ素系ガスを用いることができる。
【0045】
p型領域18の厚さやFドープ量は、たとえばエッチング時間やRFパワー、基板温度、用いる炭化フッ素系ガスの種類などによって制御することができる。また、炭化フッ素系ガスに他の種のガスを混合し、その混合割合によって制御することもできる。
【0046】
第1、2段階におけるドライエッチングでのマスク材としては、SiO
2 、フォトレジストなどを用いることができる。
【0047】
第1段階と第2段階のドライエッチングは、ICP型、ECR型、平行平板型、マグネトロン型など任意の方式の反応性イオンエッチングを用いることができる。第1段階と第2段階とで異なる方式のドライエッチングを用いてもよいし、同じ方式のドライエッチングを用いてもよい。
【0048】
このように、素子分離溝15およびp型領域18を2段階のドライエッチングにより形成し、Cl
2 ガスを用いた第1段階のドライエッチングは、CF
4 ガスを用いた第2段階のドライエッチングよりも十分に高いエッチングレートとしているため、次のような利点がある。
【0049】
第1に、CF
4 ガスを用いたドライエッチングのみにより素子分離溝15とp型領域18を形成する場合に比べて、短時間で形成することができ、生産性を向上させることができる。
【0050】
第2に、素子分離溝15の深さや形状等の制御と、p型領域18の厚さやF濃度の制御の両方をそれぞれ容易に制御することができる。素子分離溝15の深さや形状などは、第1段階のドライエッチングでほぼ決まり、第2段階のドライエッチングはあまり影響しない。また、p型領域18の厚さやF濃度は、第2段階のドライエッチングで決まり、第1段階のドライエッチングは影響しない。したがって、素子分離溝15の深さや形状等の制御は、第1段階のドライエッチングの条件でほぼ制御することができ、p型領域18の厚さやF濃度の制御は、第2段階のドライエッチングの条件で制御することができ、それぞれほぼ独立して制御することができる。
【0051】
以上、実施例1のダイオードでは、素子分離溝15の側面15aおよび底面15bに露出するn層11表面にp型領域18を形成することで、素子分離溝15側面15aに露出するpn接合界面19の端部19aにおいて空乏層が広がりやすくなり、耐圧を向上させることができる。また、電流リークパスとなりやすいダイオードの外周側面(素子分離溝15の側面15a)がp型化されるため、リーク電流を低減することができる。また、素子分離溝15の表面にのみp型領域18が形成されるため、ダイオードの順方向抵抗を上げることなく高耐圧化が可能である。
【0052】
実施例1のダイオードの耐圧について、p型領域18の厚さ依存性をシミュレーションした結果を
図3に示す。
図3において、横軸はp型領域18の厚さ、縦軸はダイオードの耐圧を示している。また、p型領域18のキャリア濃度は1×10
16/cm
3 とした。
図3のように、p型領域18が厚いほど、ダイオードの耐圧が向上することがわかる。また、p型領域18を形成しない場合の耐圧はおよそ870Vであるが、p型領域18の厚さが50nm以上で耐圧が870V以上となることがわかる。よって、p型領域18の厚さを50nm以上とすれば、耐圧向上の効果が得られることがわかる。
【0053】
実施例1のダイオードの耐圧について、p型領域18のキャリア濃度依存性をシミュレーションした結果を
図4に示す。p型領域18の厚さは300nmとした。比較のため、Fのドープ量をp型化しない程度とした場合についても考察した。
図4のように、Fのドープ量がp型化しない程度である場合、キャリアの相殺によって高抵抗化されるものの、Fをドープしない場合とさほど耐圧は変わらない。一方、p型化させてp型領域18を形成した場合には、Fをドープしない場合に比べて高い耐圧が得られることがわかる。特に、p型領域18のキャリア濃度(F濃度)が高いほど高耐圧となる傾向にあることもわかる。
【0054】
なお、実施例1は縦型ダイオードであるが、本発明は縦型のpn接合を有し、素子分離溝の側面にpn接合界面が露出した任意の構造の半導体装置に適用可能である。たとえば、pnダイオード、PINダイオード、FET、バイポーラトランジスタ、IGBTなどにも本発明は適用可能である。