【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施するための実施例を、添付図面を用いて説明する。
図1は本発明の鉄道車両の動揺防止制御装置の概略構成を説明する図である。
【0023】
1は台車2に車体3を搭載した鉄道車両であり、この鉄道車両1に本発明の動揺防止制御装置11が設けられる。なお、4は台車2に設置された輪軸、5は車体3を支持すべく台車に設けられた空気ばねを示す。
【0024】
12は、鉄道車両1の前後位の2箇所に設けられ、前記車体3と台車2の間に設けられたアクチュエータであり、後述する制御指令演算器14からの制御指令に従った力で、例えば車体3を台車2に対して車体の幅方向に相対移動させるものである。
【0025】
13は、車体3の前後位の2箇所に設けられ、走行時、車体3に作用する車体3の幅方向の加速度を所定の時間間隔で検出する加速度センサであり、これらの加速度センサ13で検出した車体3の幅方向の加速度は制御指令演算器14に出力される。
【0026】
制御指令演算器14は、加速度演算部、ヨーイング制御部、左右並進制御部、曲線判定部、制御指令選択判定部を備えており、前記加速度センサ13が検出した加速度に基づき、
図2に示すフローの制御を行う。
【0027】
すなわち、制御指令演算器14は、前記加速度センサ13が検出した前後位の加速度を読み込んだ後、加速度演算部で車体3のヨーイング加速度と左右並進加速度を算出する。算出したヨーイング加速度、左右並進加速度は、それぞれヨーイング制御部、左右並進制御部に出力される。
【0028】
そして、ヨーイング制御部は、入力されたヨーイング加速度にバンドパスフィルタ処理を行った後、ヨーイング制御指令を演算する(
図3参照)。また、左右並進制御部は、入力された左右並進加速度にバンドパスフィルタ処理を行った後、
図7に直線で示す制御ゲインをかけた直線区間用の左右並進制御指令と、
図7の破線で示す制御ゲインをかけた曲線区間用の左右並進制御指令を演算する一方、入力された前記左右並進加速度を曲線判定部に出力する(
図4参照)。
【0029】
曲線判定部は、入力された左右並進加速度にローパスフィルタ処理を行う。そして、ローパスフィルタ処理を行った後の左右並進加速度が予め定められた曲線判定閾値c1よりも大きいとき、或いは曲線判定閾値c1よりも小さく、かつ曲線判定閾値−c1より小さいときは曲線区間と判定する(c data=1)。一方、ローパスフィルタ処理を行った後の左右並進加速度が前記曲線判定閾値c1よりも小さく、かつ曲線判定閾値−c1より大きいときは直線区間と判断する(c data=0)。この曲線判定部における処理フローを
図5に示す。
【0030】
曲線判定部で判定した前記結果は、制御指令選択判定部に出力され、制御指令選択判定部は、
図6のフローに基づいて、直線区間用制御指令か曲線区間用制御指令の何れの指令をアクチュエータ12に出すかを選択する(
図4参照)。
【0031】
すなわち、制御指令選択判定部は、曲線判定部の判定結果が直線区間用制御指令(cosc=0)の場合は、直線区間用制御指令の選択状態継続時間i1が制御周期st当たりの直線区間用制御指令選択時間閾値t1より大きいか否かを判断する。
【0032】
そして、前記選択状態継続時間i1が制御周期st当たりの直線区間用制御指令選択時間閾値t1より大きい場合は曲線区間と判定し(c data=1)、前記選択状態継続時間i1が0の場合は曲線区間用制御指令(cosc=1)を選択する。一方、前記選択状態継続時間i1が制御周期st当たりの直線区間用制御指令選択時間閾値t1より小さい場合や、曲線区間と判定しない場合(c data=1でない場合)は当初に戻る。なお、直線区間用制御指令選択時間閾値t1は、例えば1〜1.5sとすればよい。
【0033】
また、曲線判定部の判定結果が直線区間用制御指令(cosc=0)でない場合で直線区間(c data=0)と判定する場合は、曲線区間終了後曲線用制御指令選択継続時間i2が制御周期st当たりの曲線区間終了後曲線区間用制御指令選択時間閾値t2より大きいか否かを判断する。
【0034】
そして、曲線区間終了後曲線用制御指令選択継続時間i2が制御周期st当たりの曲線区間終了後曲線区間用制御指令選択時間閾値t2より大きい場合は直線区間用制御指令(cosc=0)を選択する。一方、直線区間と判定しない場合で、曲線区間終了後曲線用制御指令選択継続時間i2が0の場合や、曲線区間終了後曲線用制御指令選択継続時間i2が制御周期st当たりの曲線区間終了後曲線区間用制御指令選択時間閾値t2より小さい場合は当初に戻る。なお、曲線区間終了後曲線区間用制御指令選択時間閾値t2は、例えば3〜8sとすればよい。
【0035】
制御指令選択判定部の前記選択結果に基づき、制御指令演算器14は前記アクチュエータ12に直線区間用制御指令、或いは曲線区間用制御指令を出力する。
【0036】
上記本発明の動揺防止制御装置11では、曲線区間通過中及び曲線区間通過後の一定時間は、制御指令演算器14は車体3の幅方向の加速度に基づいて演算した曲線区間用制御指令をアクチュエータ12に出力し、それ以外の場合は、直線区間用制御指令をアクチュエータ12に出力する。但し、制御指令選択結果が頻繁に切り替わるのを防ぐために、直線区間用制御指令を選択した場合はその状態を一定時間以上継続させる。
【0037】
本発明の効果を確認するために、曲線区間通過を模擬した下記条件の走行シミュレーションを行った。その結果を
図8に示す。
【0038】
・シミュレーション条件
曲線半径:400m
走行速度:90km/hr
緩和曲線長:80m
本曲線長:250m
カント高さ:105mm
【0039】
制御イは常に直線区間用制御指令を選択する場合(従来例1)、制御ロは曲線区間通過中のみ曲線区間用制御指令を選択し、それ以外では直線区間用制御指令を選択する場合(従来例2)、制御ハは曲線区間通過中及び曲線区間通過後の一定時間は曲線区間用制御指令を選択し、それ以外では直線区間用制御指令を選択する場合(発明例)である。直線区間用制御指令選択時間閾値t1は1s、曲線区間終了後曲線区間用制御指令選択時間閾値t2は7sとした。
【0040】
制御イでは、入口緩和曲線区間の通過中及び通過後、出口緩和曲線区間の通過中、曲線区間の通過後に制御指令値が飽和し(
図8(b))、その時の左右振動加速度の振幅が大きくなっており(
図8(a))、十分に制振効果が得られていないことが分かる。
【0041】
また、制御ロでは、入口緩和曲線区間の通過中及び通過後、出口緩和曲線区間の通過中は充分な制振効果が得られているが、出口緩和曲線区間を通過後に制御指令値が飽和し(
図8(b))、その時の左右振動加速度の振幅が大きくなって(
図8(a))、十分な制振効果が得られていないことが分かる。
【0042】
これに対して、制御ハでは、入口緩和曲線区間の通過中及び通過後、出口緩和曲線区間の通過中の何れも制御指令値が飽和せず(
図8(b))、常に十分な制振効果が得られていることが分かる。
【0043】
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0044】
例えば、曲線判定部は曲線区間か否かを判定できるものであれば、
図5に示すフローに限らない。