(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電力削減、省エネルギの要請から、高輝度放電ランプの調光(dimming)が実行されている。調光とは、高輝度放電ランプを定格電力よりも低い電力、例えば、定格電力の70%、50%等の電力にて使用することをいう。調光により、消費電力を削減することができるが、放電管の内部温度が、定格電力使用時より低くなるため、白色領域から外れる光色シフトが生じる問題がある。即ち、定格電力使用時に白色光を発生するが調光時には特定の着色光を発生させる現象が起きる。これは、放電管に封入された複数の異なる発光物質の飽和蒸気圧の差異に起因して起きる。
【0006】
このような光色シフトを回避するには、その原因となる発光物質を用いなければよい。しかしながら、それでは、ランプ効率、色特性の低下等の他の好ましくない現象が生じる可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、ランプ効率と、相関色温度、色偏差、演色性等の色特性の両者を向上させると共に調光時に白色領域から外れる光色シフトが起きないセラミックメタルハライドランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の発明者は、ランプ効率及び色特性が良好でしかも調光時に白色領域から外れる光色シフトが起きない高輝度放電ランプを作成するために、放電管とそれに封入する発光物質を鋭意考察した。高輝度放電ランプでは、高いランプ効率が求められるため、発光物質としてタリウムTlを用いる。しかしながら、タリウムTlは、緑色領域(535nm付近)に発光ピークを有し、更に、他の発光物質に比較して蒸気圧が高い。そのため、タリウムTlは、調光時に緑色への光色シフトが生じる要因となる。そこで、タリウムTlに起因する緑色への光色シフトを抑制する手段を講じる必要がある。
【0009】
本発明によると、内部に発光物質と始動用ガスを封入した透光性セラミック製の放電管と、該放電管を収納する透光性外管と、を有するセラミックメタルハライドランプにおいて、
前記発光物質は、ヨウ化ナトリウムNaI、ヨウ化セリウムCeI
3、ヨウ化タリウムTlI、ヨウ化ジスプロシウムDyI
3、及び、ヨウ化インジウムInIを含み、
前記ヨウ化ジスプロシウムDyI
3の添加量をD[DyI
3]とすると、該添加量は次の式によって表され、
0.07mg/cm
3≦D[DyI
3]≦1.53mg/cm
3
前記発光物質に含まれるヨウ化タリウムTlIに対するヨウ化インジウムInIの重量比を、R[InI/TlI]とすると、該重量比は次の式によって表される。
【0010】
0<R[InI/TlI]≦0.23
本実施形態によるセラミックメタルハライドランプにおいて、前記発光物質に含まれる、ヨウ化タリウムTlIに対するヨウ化インジウムInIの重量比R[InI/TlI]は次の式によって表されることを特徴としてよい。
【0011】
0.05≦R[InI/TlI]≦0.23
本実施形態によるセラミックメタルハライドランプにおいて、前記発光物質に含まれる、ヨウ化ナトリウムNaIの添加量をD[NaI]、ヨウ化セリウムCeI
3の添加量をD[CeI
3]、ヨウ化タリウムTlIの添加量をD[TlI]とすると該添加量は次の式によって表されることを特徴としてよい。
【0012】
0.70mg/cm
3≦D[NaI]≦1.73mg/cm
3
0.15mg/cm
3≦D[CeI
3]≦0.29mg/cm
3
0.15mg/cm
3≦D[TlI]≦0.26mg/cm
3
本実施形態によるセラミックメタルハライドランプにおいて、ランプの定格電力は100〜400Wであり、ランプの壁面負荷は15〜40W/cm
2であり、前記放電管の有効長さをL、有効内径をIDとするとき、両者の比L/IDは、1.8≦L/ID≦2.3であり、ランプの定格電力の70%の電力を用いる場合には、ランプの壁面負荷は10.5〜28.0W/cm
2であり、ランプの定格電力の50%の電力を用いる場合には、ランプの壁面負荷は7.5〜20.0W/cm
2であることを特徴としてよい。
【0013】
本実施形態によるセラミックメタルハライドランプにおいて、前記発光物質はヨウ化カルシウムCaI
2を含むことを特徴としてよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ランプ効率と、相関色温度、色偏差、演色性等の色特性の両者を向上させると共に調光時に白色領域から外れる光色シフトが起きないセラミックメタルハライドランプを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る高輝度放電ランプの実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中、同じ要素に対しては同じ参照符号を付して、重複した説明を省略する。
【0017】
図1〜
図3を参照して本発明に係る高輝度放電ランプの例を説明する。ここでは、高輝度放電ランプとして、セラミックメタルハライドランプの例を説明する。
図1を参照して本発明に係るセラミックメタルハライドランプの例を説明する。本例のセラミックメタルハライドランプ1は、放電管3と、放電管3を囲むように配置された円筒状の透光性スリーブ18と、片端に口金12が設けられた透光性外管13とを有する。本例では、外管13は円筒状のT型である。外管13には不活性ガスとして窒素ガスが封入されている。放電管3は、中央の発光部3Cとその両側に延びるキャピラリ3A、3Bを有する。放電管3の構造は
図4を参照して説明する。
【0018】
口金12のステム14に、2本の支柱15、16が装着されている。支柱15、16には、2つのサポートディスク17A、17Bが所定間隔にて装着されている。また、ディスク17A、17Bに透光性スリーブ18が固定されている。一方のディスク17Bにゲッタ20が装着されている。
【0019】
キャピラリ3A、3Bの両端から、電力供給リード7A、7Bが突出している。電力供給リード7A、7Bは、直接、又は、ニッケル線19A、19Bを介して、それぞれ、支柱15、16に接続される。こうして、放電管3の両端から延びる電力供給リード7A、7Bは、支柱15、16を介して、口金12に電気的に接続される。
【0020】
図2を参照して本発明に係るセラミックメタルハライドランプの他の例を説明する。本例のセラミックメタルハライドランプ1は、放電管3と、片端に口金12が設けられた外管13とを有する。本例では、外管13は回転楕円体状のB型である。口金12のステム14に、2本の支柱15、16が装着されている。一方の支柱16には、マウント支持板16Aとゲッタ20が装着されている。
【0021】
放電管3の両端から、電力供給リード7A、7Bが突出している。電力供給リード7A、7Bは、それぞれ、支柱15、16に接続される。こうして、放電管3の両端から延びる電力供給リード7A、7Bは、支柱15、16を介して、口金12に電気的に接続される。
【0022】
図3を参照して本発明に係るセラミックメタルハライドランプの更に他の例を説明する。本例のセラミックメタルハライドランプ1は、片端に口金12を形成した透光性外管13と、その内部に配置された放電管3と、放電管3を囲むように配置された円筒状の透光性スリーブ18を有する。口金12のステム14には支柱15、16が装着されている。支柱15には、サポートディスク17A、17Bが装着されている。サポートディスク17A、17Bには、透光性スリーブ18が固定されている。
【0023】
放電管3の両端から、電力供給リード7A、7Bが突出している。電力供給リード7A、7Bは、それぞれ、支柱15、16に接続される。
【0024】
図1〜
図3に示した本発明に係る高輝度放電ランプでは、片端に口金を備えた透光性外管13を備えるが、本発明に係る高輝度放電ランプでは、両側に口金を備えた透光性外管を備える構造であってもよい。
【0025】
図4を参照して本実施形態によるメタルハライドランプの放電管3の構造を説明する。放電管3は、中央の発光部3Cとその両端側に延びる一対のキャピラリ3A、3Bを有する。本例の発光部3Cは略回転楕円体の形状を有する。キャピラリ3A、3Bには、一対の電極アセンブリ6A、6Bが挿通されている。電極アセンブリ6A、6Bの内端には、それぞれ電極5A、5Bが設けられ、外端には、それぞれ電力供給リード7A、7Bが接続されている。キャピラリ3A、3Bの両端は、電気絶縁性を有するフリットガラスなどのシール材によって気密的にシールされると同時に、該シール材によって電極アセンブリ6A、6Bが、キャピラリ3A、3B内の定位置に固定されている。
【0026】
発光部3Cとキャピラリ3A、3Bの間は、遷移曲面4A、4Bを介して連続的に形成されており角隅部が無い形状である。本例の放電管3は、発光部3Cとキャピラリ3A、3Bを透光性アルミナの粉末圧縮体を型取りして一体成形した所謂、1ピースタイプのものを用いている。
【0027】
放電管3の内側寸法として、有効長さLと有効内径IDを定義する。有効長さLは、直管状のキャピラリ3A、3Bの内径が拡大を開始する位置2A及び2Bの間の距離で定義される。有効内径IDは、1ピースタイプの放電管3の場合には、電極5A、5B間の発光部3Cの中央の最大内径で定義される。放電管3の有効長さLと有効内径IDの比L/IDをアスペクト比と称することとする。本実施形態によると、アスペクト比は、1.8≦L/ID≦2.3となるように設計されている。
【0028】
ランプ寿命及びランプ効率に影響を与えるパラメータとして壁面負荷が用いられる。壁面負荷は、ランプ電力P[W]を放電管3の発光部3Cの全内面積S[cm
2]で除した値で定義される。
【0029】
本実施形態によると、定格電力は100〜400Wである。本実施形態によると、定格電力使用時には、壁面負荷は15〜40W/cm
2である。調光時、例えば、定格電力の70%の電力を用いる場合には、壁面負荷は10.5〜28.0W/cm
2であり、定格電力の50%の電力を用いる場合には、壁面負荷は7.5〜20.0W/cm
2である。
【0030】
本発明の実施形態では、アスペクト比L/IDが、1.8〜2.3であるため、放電管3の発光部3Cの全内面積S[cm
2]が比較的大きくなり、壁面負荷を比較的小さくすることができる。そのため、ランプ寿命を犠牲にすることなく、高いランプ効率、高演色性を実現することができる。更に、本実施形態では、放電管3の発光部3Cの内壁面を構成する材料と、そこに封入する発光物質、特に、希土類金属ヨウ化物の化学反応速度を低く抑えることができ、ランプを長寿命化することができる。
【0031】
放電管3の発光部3Cの各部の温度は、壁面負荷、透光性外管内のガス圧力、放電管材質及び放電管のアスペクト比(L/ID)によって決まる。本実施形態によると、点灯時の放電管の最冷温度が800℃以上で且つ放電管の最高温度が1200℃以下となるように、放電管の壁面負荷、透光性外管内のガス圧力、放電管材質及び放電管のアスペクト比(L/ID)が設定されている。
【0032】
放電管3には、発光物質である水銀及び金属ハロゲン化物と始動用ガスが封入されている。ここでは、金属ハロゲン化物として金属ヨウ化物を用いる例を説明するが、金属臭素化物を用いてもよい。本実施形態では、金属ハロゲン化物として、アルカリ金属のヨウ化物、アルカリ土類金属のヨウ化物、希土類金属のヨウ化物、等を用いる。本実施形態では、金属ハロゲン化物として、ヨウ化ナトリウムNaI、ヨウ化カルシウムCaI
2、ヨウ化タリウムTlI、ヨウ化ジスプロシウムDyI
3、ヨウ化インジウムInI、及び、ヨウ化セリウムCeI
3を用いてよい。これらの発光物質の添加量については後に詳細に説明する。
【0033】
本願の発明者は、ランプ効率及び光特性が良好でしかも調光時に白色領域から外れる光色シフトをしない高輝度放電ランプを作成するために、放電管に封入する発光物質を鋭意考察した。高輝度放電ランプでは、高いランプ効率が求められるため、発光物質としてタリウムTlを用いる。しかしながら、タリウムTlは、緑色領域(535nm付近)に発光ピークを有し、更に、他の発光物質に比較して蒸気圧が高い。そのため、タリウムTlを用いると調光時に緑色への光色シフトが生じる。そこで、タリウムTlに起因する緑色への光色シフトを抑制する手段を講じる必要がある。
【0034】
本願の発明者は、先ず、ジスプロシウムDyに着目した。ジスプロシウムDyは、青色領域(421nm付近)に発光ピークを有する。ジスプロシウムDyに起因する青色とタリウムTlに起因する緑色を混合させることによって、緑色への光色シフトを抑制し、白色の発光を維持することができる。
【0035】
更に、ジスプロシウムDyは、赤色領域に分子発光に起因した連続スペクトルを有する。ジスプロシウムDyに起因する赤色とタリウムTlに起因する緑色を混合させることによって、緑色への光色シフトを抑制し、白色を維持することができる。即ち、適量のジスプロシウムDyを添加することにより、調光時に白色を維持すると同時に、高いランプ効率と高い色特性を得ることができる。
【0036】
本願の発明者は、次に、インジウムInに着目した。インジウムInは、青色領域(450nm付近)に発光ピークを有する。そのため、インジウムInに起因する青色とタリウムTlに起因する緑色を混合させることによって、緑色への光色シフトを抑制し、白色を維持することができる。また、インジウムInは、蒸気圧が比較的高い。従って、タリウムTlに対するインジウムInの比を適当の値に選定することにより、タリウムTlに起因した緑色への光色シフトを抑制することができる。
【0037】
本願の発明者は、次に、ツリウムTmに着目した。ツリウムTmは、ランプ効率を向上させ、演色性を高める作用を有することが知られている。しかしながら、ツリウムTmは、青緑色領域(450〜530nm付近)に多数の発光ピークを有する。従って、ツリウムTmを使用すると、タリウムTlに起因した緑色への光色シフトを抑制するよりも寧ろそれを助長することとなる。そこで、本願の発明者は、ツリウムTmを使用しないこととした。ツリウムTmを使用しないことにより、タリウムTlに起因した緑色への光色シフトを抑制することができる。ツリウムTmを使用しなくても、ジスプロシウムDyを用いることにより、ランプ効率と演色性を維持することができる。
【0038】
一般に、ジスプロシウムDy、ホルミウムHo、セリウムCe、プラセオジムPr、ネオジムNdなどの希土類金属のハロゲン化物は、ランプ効率を向上させ、白色光を発生させる作用があることが知られている。希土類金属のハロゲン化物の封入量が多いと、放電管との間で反応生成物を生成し、光束維持率の低下を招く。従って、希土類金属のハロゲン化物の封入量は過度にならないように適量を設定する必要がある。本実施形態では、放電管に封入する添加物として、上述のようにタリウムTl、ジスプロシウムDy、インジウムInを用いるが、更に、セリウムCeのハロゲン化物を用いることとした。
【0039】
次に、本願の発明者が実施した実験について説明する。本願の発明者は、セラミックメタルハライドランプを試作し、従来のセラミックメタルハライドランプと比較した。本願の発明者が試作したランプには、発光物質として少なくとも、ヨウ化ナトリウムNaIが含まれる。更に、本願の発明者が試作したランプには、発光物質としてヨウ化セリウムCeI
3が含まれる。ヨウ化ナトリウムNaIの添加量をD[NaI]、ヨウ化セリウムCeI
3の添加量をD[CeI
3]とすると、これらは次の式によって表される。
【0040】
0.70mg/cm
3≦D[NaI]≦1.73mg/cm
3
0.15mg/cm
3≦D[CeI
3]≦0.29mg/cm
3 式(1)
本願の発明者は、放電管に封入する発光物質を変化させて、調光特性を調べた。先ず、ヨウ化ジスプロシウムDyI
3の添加量をパラメータとして調光特性を調べた。表1は、従来のランプ(従来例)と本願の発明者が試作したランプ(実施例1〜4)について、調光特性を調べた実験結果を示す。ヨウ化ジスプロシウムDyI
3の添加量は、従来のランプの場合ではゼロであるが、実施例1〜4では0.07〜0.92mg/cm
3である。定格電力使用時の色特性として、色温度CCT、色度偏差Duv、及び、演色指数CRIを測定した。色度偏差Duvは、色度図上における黒体軌跡(BBL)からのずれを表す。色度図上における黒体軌跡(BBL)は、太陽光による自然な色味を表す。Duv=0は、色度が黒体軌跡(BBL)上にあることを表す。
【0042】
表1に示すように、従来例では、定格電力使用時の光色はやや緑を帯びた白色であったが、調光時の光色は緑色であった。即ち、調光時の光色シフトが観察された。実施例1〜4では、定格電力使用時の光色も調光時の光色も、共に白色であった。即ち、調光時の光色シフトは観察されなかった。この結果から、適量のヨウ化ジスプロシウムDyI
3を添加することにより、調光時の白色領域から外れる光色シフトを抑制することができることが判明した。更に、ヨウ化ジスプロシウムDyI
3の添加量を増加させることにより、定格電力使用時の色特性、特に、色度偏差Duv、及び、演色指数CRIが向上することが判明した。
【0043】
図5を参照して説明する。本願の発明者は、ヨウ化ジスプロシウムDyI
3の添加量をパラメータとしてランプ効率(発光効率)を調べた。その結果を
図5に示す。横軸は、ヨウ化ジスプロシウムDyI
3の添加量[mg/cm
3]、縦軸は、ランプ効率(発光効率)LPW[lm/W]である。ヨウ化ジスプロシウムDyI
3の添加量を増加させると、ランプ効率が低下することが判る。通常、ランプ効率が100以上であると、高効率であると言える。そこで、
図5の結果において、ランプ効率が100以上となるのは、ヨウ化ジスプロシウムDyI
3の添加量が1.53mg/cm
3以下の場合である。従って、高いランプ効率を維持し、且つ、調光時の白色領域から外れる光色シフトを抑制するためには、ヨウ化ジスプロシウムDyI
3の添加量が1.53mg/cm
3以下であることが好ましい。ヨウ化ジスプロシウムDyI
3の添加量をD[DyI
3] [mg/cm
3]とすると、この条件は次の式によって表される。
【0044】
0<D[DyI
3]≦1.53mg/cm
3 式(2)
ヨウ化ジスプロシウムDyI
3の添加量D[DyI
3]が少なすぎると、タリウムTlに起因する緑色への光色シフトを抑制することができなくなる。そこで、本実施形態では、表1の実施例1の結果から、ヨウ化ジスプロシウムDyI
3は少なくとも0.07mg/cm
3は必要であるとした。
【0045】
0.07mg/cm
3≦D[DyI
3]≦1.53mg/cm
3 式(3)
次に、本願の発明者は、ヨウ化タリウムTlIに対するヨウ化インジウムInIの比をパラメータとして調光特性を調べた。上述のようにヨウ化タリウムTlIは高いランプ効率を得るために必要であるが、調光時に緑色への光色シフトを生じさせる。そのため、ヨウ化タリウムTlIの添加量は適量に設定する必要がある。本願の発明者は、様々な実験結果から、本実施形態におけるヨウ化タリウムTlIの添加量を設定した。ヨウ化タリウムTlIの添加量をD[TlI][mg/cm
3]とすると、これは次の式によって表される。
【0046】
0.15mg/cm
3≦D[TlI]≦0.26mg/cm
3 式(4)
表2は、ヨウ化タリウムTlIに対するヨウ化インジウムInIの比をパラメータとして調光特性を調べた結果を示す。
【0048】
表2の結果から次のことが判る。適量のヨウ化インジウムを添加し、ヨウ化タリウムに対するヨウ化インジウムの比を適当な値に選択することにより、定格電力使用時における色特性、特に、色度偏差Duv、及び、演色指数CRIが向上する。インジウムInは極微量の封入でも青色の輝線発光を生じさせるので、タリウムTlによる緑色発光とのバランスを取るために寄与する。
【0049】
ここで、実施例11〜14のランプ仕様を説明する。ランプ構造は、片端に口金を備えた透光性の外管とその内部に放電管が収納された形式である。放電管は透光性セラミックからなり、両端にキャピラリを有する。キャピラリ内に電極アセンブリが装着されている。垂直点灯形であるが、点灯姿勢は任意であってよい。
【0050】
定格電力は270Wである。しかしながら、本発明の実施形態では、ランプの定格電力は100〜400Wであってよい。発光管の有効長さL[mm]と有効内径ID[mm]の比L/IDは1.82であった。また、定格電力時の壁面負荷は19.2W/cm
2である。
【0051】
発光物質として ヨウ化ナトリウムNaI、ヨウ化セリウムCeI
3、ヨウ化タリウムTlI、ヨウ化ジスプロシウムDyI
3、及び、ヨウ化インジウムInIを含む。更に、発光管の材料であるアルミナの腐食を抑制するために、全発光物質封入量に対して10モル%以下のヨウ化カルシウムCaI
2を含む。
【0052】
従来例では、調光時に白色領域から外れる光色シフトが観察された。実施例11〜14では、調光時に白色領域から外れる光色シフトは観察されなかった。尚、実施例11〜14の光色シフトについては後に詳細に説明する。
【0053】
図6を参照して説明する。本願の発明者は、ヨウ化タリウムTlIに対するヨウ化インジウムInIの比をパラメータとして色度偏差Duvを調べた。その結果を
図6に示す。横軸は、ヨウ化タリウムTlIに対するヨウ化インジウムInIの比、縦軸は、色度偏差Duvである。上述のように、色度偏差Duvの絶対値はできるだけ小さい方がよく、5より小さいことが好ましい。
図6の結果から、色度偏差Duvの絶対値を5より小さくするには、ヨウ化タリウムTlIに対するヨウ化インジウムInIの重量比を0.05〜0.23とするのがよい。ヨウ化タリウムTlIに対するヨウ化インジウムInIの重量比を、R[InI/TlI]とすると、本実施形態では、この比は次の式によって表される。
【0054】
0<R[InI/TlI]≦0.23 式(5)
更に好ましくは、重量比R[InI/TlI]は次の式によって表される。
【0055】
0.05≦R[InI/TlI]≦0.23 式(6)
表3〜表7は、従来のランプ(従来例)と本願の発明者が試作したランプ(実施例11〜14)について、調光条件を変化(定格電力の100%、70%、50%)させて、ランプ電圧VL[V]、光束Lumen[lm]、ランプ効率(発光効率)LPW[lm/W]、色温度CCT[K]、色度偏差Duv、演色指数CRI、色度図上の刺激値x、yを測定した結果を示す。色度図上の刺激値x、yについては後に
図7Aを参照して説明する。
【0061】
表3〜表7の結果から次のことが判る。適量のヨウ化ジスプロシウムDyI
3、ヨウ化タリウムTlI、及び、ヨウ化インジウムInIを添加することにより、定格電力使用時における色特性、特に、色度偏差Duv、及び、演色指数CRIが向上する。
【0062】
表3〜表7の第8列及び第9列に、定格電力使用時及び調光時の刺激値x、yの測定結果と、その偏差Δx、Δyの計算結果を示す。刺激値の偏差Δx、Δyは、定格電力使用時の刺激値を基準として各調光時の刺激値x、yの増減量を表す。
【0063】
先ず刺激値xの偏差Δxを考察する。実施例11〜14の刺激値xの偏差Δxの値は、従来例の刺激値xの偏差Δxの値より大きい。これは、実施例11〜14の場合、調光時に刺激値xの値が大きく変化することを意味する。
【0064】
次に刺激値yの偏差Δyを考察する。実施例11〜14の刺激値yの偏差Δyの値は、従来例の刺激値yの偏差Δyの値より十分に小さい。これは、実施例11〜14の場合、調光時に刺激値yの値が殆ど変化しないことを意味する。従って、実施例11〜14の場合、調光時に色度図上の光色を表す点がx軸に略平行に移動することになる。
【0065】
図7Aは、上述の従来例と実施例11〜14の結果を色度図上にプロットした結果を示す。
図7Aは、色度図の一部分を切り取って拡大した模式図である。色は、3つの刺激値x、y、zによって表されるが、3つの刺激値x、y、zの和は1である。そのため、2つの刺激値xyが決まれば他の刺激値zは一義的に決まる。色度図は、横軸を刺激値x、縦軸を刺激値yとする平面座標を表す。色度図上の点は、2つの刺激値x、yからなる座標値を有するが、それによって3つの刺激値x、y、zを有する色が特定される。
【0066】
色度図では、略中央に白色の領域が表示され、その周囲に、黄色、緑色、青色、紫色、赤色、橙色等の領域が連続的に変化するように描かれている。
【0067】
図7Aは、色度図の略中央の白色の領域と、その上側の黄緑色の領域と、やや黄みがかった緑色の領域を切り取って模式的に示す。ここでは、説明の便宜上、この色度図に、4つの線を描き、それらの線によって区分された領域を、黄みの緑、黄緑、及び、白色の領域とした。色度図上の破線の曲線は、従来例の光色を表す座標点の軌跡を表し、色度図上の実線の曲線は、実施例11〜14の光色を表す座標点の軌跡を表す。
【0068】
定格電力使用時の光色は、従来例では、やや緑を帯びた白色であったが、実施例11〜14では、白色であった。即ち、従来のランプも本実施形態に係るランプも、定格電力(100%)による使用時には、光色を表す座標点は、白色の領域にある。
【0069】
定格電力の70%の電力を用いる場合、従来例も実施例11〜14も、色度図上にて光色を表す座標点は移動する。従来例の場合、光色を表す座標点は左斜め上の方向に移動する。しかしながら、実施例11〜14の場合、光色を表す座標点は横軸に略平行な方向に移動する。
【0070】
定格電力の50%の電力を用いる場合、従来例の場合も実施例11〜14の場合も、色度図上にて光色を表す座標点は更に移動する。従来例の場合、光色を表す座標点は、更に左斜め上の方向に移動し、白色の領域から黄緑色の領域に移動する。しかしながら、実施例11〜14の場合、光色を表す座標点は、更に、横軸に略平行な方向に移動する。そのため、光色を表す座標点は、白色の領域に留まっている。
【0071】
即ち、従来例のランプでは、調光時に光色シフトすることによって光色が白色領域から外れ、例えば、緑色に着色したように見える。そのため、見る者に違和感を生じさせる。一方、本実施形態に係るランプでは、調光時に色温度は変化するが、その光色は白色領域内であるため、主観的には違和感を生じない。
【0072】
図7Bは、
図7Aの従来例と実施例11〜14のうち、実施例14のみを取り出して描いた図である。従来のランプと比較すると、調光時の光色シフトの差異が明確に理解できる。実施例11〜14のランプの定格電力は270Wである。しかしながら、本発明の実施形態では、ランプの定格電力は100〜400Wであってよい。実施例14の場合、定格電力を用いる場合には、壁面負荷は19.2W/cm
2であり、定格電力の70%の電力を用いる場合には、壁面負荷は13.4W/cm
2であり定格電力の50%の電力を用いる場合には、壁面負荷は9.6W/cm
2であった。
【0073】
本実施形態に係るランプでは、定格電力使用時には、壁面負荷は15〜40W/cm
2であり、定格電力の70%の電力を用いる場合には、壁面負荷は10.5〜28.0W/cm
2であってよく、定格電力の50%の電力を用いる場合には、壁面負荷は7.5〜20.0W/cm
2であってよい。
【0074】
図8Aは、定格電力(100%)を使用する場合のランプの波長スペクトルを示し、
図8B、及び、
図8Cは、定格電力の70%及び50%の電力を使用する場合のランプの波長スペクトルを、それぞれ、示す。実線の曲線は本発明の実施形態によるランプの波長スペクトルを示し、破線の曲線は従来のランプの波長スペクトルを示す。これらの図の横軸は波長[nm]、縦軸は分光強度比(任意単位)である。
【0075】
実線の曲線では、波長380〜480nmの領域に2つの波長ピークがある。これは、青色領域(421nm付近)に発光ピークを有するジスプロシウムDyと、青色領域(450nm付近)に発光ピークを有するインジウムInを表す。破線の曲線では、これらの波長ピークは現れない。これは、従来例では、ジスプロシウムDyとインジウムInを含まないからである。本発明の実施例ではジスプロシウムDyとインジウムInを含むため、緑色への色シフトを抑制することができる。
【0076】
また、波長480〜580nmの領域に1つの波長ピークがある。これは、緑色領域(535nm付近)に発光ピークを有するタリウムTlを表す。波長580〜680nmの領域に1つの波長ピークがある。これは、ナトリウムNaを表す。
【0077】
図8A〜
図8Cに示すランプの波長スペクトルによって本願の発明者が鋭意考察した発光物質の機能を説明することができる。高輝度放電ランプでは高いランプ効率を得るためにタリウムTlを用いる。しかしながら、タリウムTlは調光時に緑色に光色シフトを起こす要因となる。そこで、本願の発明者は、緑色を相殺するために緑色に対して補色の関係にある色を発色させる物質を鋭意検討した。そこで、青色領域(421nm付近)に発光ピークを有するジスプロシウムDy、及び、青色領域(450nm付近)に発光ピークを有するインジウムInに着目した。更に、ランプ効率を向上させ、演色性を高める作用を有するツリウムTmに着目したが、ツリウムTmは、青緑色領域(450〜530nm付近)に多数の発光ピークを有するため、緑色を相殺する作用を提供しないと考えた。本願の発明者は、ヨウ化タリウムTlI、ヨウ化ジスプロシウムDyI
3、ヨウ化インジウムInI、等の添加量を変化させて、それらの適量を求める実験を行った。
【0078】
以上、本実施形態に係る高輝度放電ランプについて説明したが、これらは例示であって、本発明の範囲を制限するものではない。当業者が、本実施形態に対して容易になしえる追加・削除・変更・改良等は、本発明の範囲内である。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の記載によって定められる。