特許第5874591号(P5874591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874591
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】送信装置および送信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/60 20060101AFI20160218BHJP
【FI】
   H04B1/60
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-207367(P2012-207367)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-64133(P2014-64133A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】山岸 亨
(72)【発明者】
【氏名】白石 憲一
(72)【発明者】
【氏名】細野 英一
(72)【発明者】
【氏名】石川 竜史
【審査官】 北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−236005(JP,A)
【文献】 特開2014−053804(JP,A)
【文献】 特開2005−341167(JP,A)
【文献】 特開2007−286776(JP,A)
【文献】 特開2003−032751(JP,A)
【文献】 特開2007−104018(JP,A)
【文献】 特開2005−244335(JP,A)
【文献】 特開平08−330983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を送信する送信部と、
前記送信部の動作を制御する制御部と、
前記制御部においてなされる制御の内容を設定する設定部とを備え、
前記制御部は、前記送信部が通常状態と異なった場合に、前記送信部の動作を停止させ、
前記設定部は、(1)本送信装置が技術基準適合証明を取得している場合、前記送信部が通常状態に復帰したときに、前記送信部の動作を自動的に再開させることを設定可能であり、(2)本送信装置が技術基準適合証明を未取得である場合、前記送信部が通常状態に復帰したときに、前記送信部の動作を自動的に再開させることを第1のユーザによって設定不可能であり、前記送信部が通常状態に復帰したときに、前記送信部の動作を自動的に再開させることを、第1のユーザよりも設定自由度が上位の第2のユーザによって設定可能であることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記送信部は、外部から取得した基準となる時刻情報にしたがった第1時刻を受けつけるか、手動による設定にしたがった第2時刻を受けつけており、
前記制御部は、前記送信部が受けつけている第1時刻あるいは第2時刻に対して、通常状態であるか否かを検出し、
前記設定部は、前記送信部が第1時刻を受けつけている場合、前記送信部が通常状態に復帰したときに、前記送信部の動作を自動的に再開させることを設定可能であり、前記送信部が第2時刻を受けつけている場合、前記送信部の動作を自動的に再開させることを設定不可能であることを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
制御の内容を設定するステップと、
設定にしたがって動作を制御するステップと、
前記制御するステップでの制御にしたがって、信号を送信するステップとを備え、
前記制御するステップは、前記送信するステップが通常状態と異なった場合に、前記送信するステップの動作を停止させ、
前記設定するステップは、(1)技術基準適合証明を取得している場合、前記送信するステップが通常状態に復帰したときに、前記送信するステップの動作を自動的に再開させることを設定可能であり、(2)技術基準適合証明を未取得である場合、前記送信するステップが通常状態に復帰したときに、前記送信するステップの動作を自動的に再開させることを第1のユーザによって設定不可能であり、前記送信するステップが通常状態に復帰したときに、前記送信するステップの動作を自動的に再開させることを、第1のユーザよりも設定自由度が上位の第2のユーザによって設定可能であることを特徴とする送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信技術に関し、特に所定の信号を送信する送信装置および送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ周辺機器としてのプリンタは、使用者が設定する操作仕様に基づき一連の操作を実行する機器の一例である。使用者の設定入力ミスに起因するプリンタのエラーが発生した場合、プリンタは停止されるとともに、使用者のコンピュータディスプレイ上に警告情報が表示される。このような機器の制御方法として、検知したエラー履歴を記憶するとともに、エラー履歴と設定情報とに基づき、設定入力に対するエラー発生危険度が演算され、エラー発生危険度に応じた警告を表示することがなされている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−56889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
技術基準適合証明(以下、「技適」ともいう)とは、特定無線設備(小規模な無線局に使用するための無線設備)が電波法令の技術基準に適合していることを証明することである。これは、総務省令の特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則により実施される。そのため、技適によって、ある限られた状態で届出などの手続きを行わずに、当該特定無線設備の使用が可能になる。特定無線設備がエリア放送の送信装置である場合、出力レベル、チャンネルなどの設定を特定の状態にして、技適が取得される。技適を取得すると、技適の番号を書いたシールが送信装置に貼られる。そうすると技適を取得したチャンネル、出力レベル、アンテナでしか送信装置を使えない。一方、技適にて許可された出力レベル以外の出力レベルや、他のアンテナによって送信装置を使用することも可能である。その場合は、技適のシールをはがして、その出力レベルで予備免許を取得し、登録点検を行い、免許を取得することが必要である。
【0005】
技適を取得したチャンネル、出力、もしくはこれに付随する電波の質を守るために、装置の異常な状態を検出した場合、電波の送信が停止されるべきである。エリア放送の送信装置の場合、異常な状態が検出されたとに、次のような動作がなされる。ひとつ目の動作では、温度異常が検出された場合、特にRF系の温度が保証すべき温度外であることが検出された場合に、電波の送信が停止される。ふたつ目の動作では、電波産業会(ARIB:Association of Radio Industries and Businesses)の規格で定められている時刻の精度である±500msを超える場合に、電波の送信が停止される。3つ目の動作では、SFN(Single Frequency Network)機能に対応したマスターとスレーブの送信装置がそれぞれ存在し、スレーブ側の送信装置において、マスターの送信装置からの信号やクロックが途切れた場合、同期が取れなくなったと判断して電波の送信が停止される。
【0006】
このような状態で電波を停止した場合に、電波の送信をどのように再開するかが課題になる。一般的に、電波を一度停止すると、管理者あるいは運用者が送信装置を手動で再開することが必要になる。そのため、電波の送信を再開するまでに時間を要する。なお、エリア放送において技適を取得している場合、電波を送信するために無線従事者は不要である。一方、技適を取得していない場合、電波を送信するために無線従事者がその場で設定を行う必要があり、その手間がかかる。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、送信を停止した場合に、送信の再開を開始する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の送信装置は、信号を送信する送信部と、送信部の動作を制御する制御部と、制御部においてなされる制御の内容を設定する設定部とを備える。制御部は、送信部が通常状態と異なった場合に、送信部の動作を停止させ、設定部は、(1)本送信装置が技術基準適合証明を取得している場合、送信部が通常状態に復帰したときに、送信部の動作を自動的に再開させることを設定可能であり、(2)本送信装置が技術基準適合証明を未取得である場合、送信部が通常状態に復帰したときに、送信部の動作を自動的に再開させることを第1のユーザによって設定不可能であり、送信部が通常状態に復帰したときに、送信部の動作を自動的に再開させることを、第1のユーザよりも設定自由度が上位の第2のユーザによって設定可能である。
【0009】
本発明の別の態様は、送信方法である。この方法は、制御の内容を設定するステップと、設定にしたがって動作を制御するステップと、制御するステップでの制御にしたがって、信号を送信するステップとを備える。制御するステップは、送信するステップが通常状態と異なった場合に、送信するステップの動作を停止させ、設定するステップは、(1)技術基準適合証明を取得している場合、送信するステップが通常状態に復帰したときに、送信するステップの動作を自動的に再開させることを設定可能であり、(2)技術基準適合証明を未取得である場合、送信するステップが通常状態に復帰したときに、送信するステップの動作を自動的に再開させることを第1のユーザによって設定不可能であり、送信するステップが通常状態に復帰したときに、送信するステップの動作を自動的に再開させることを、第1のユーザよりも設定自由度が上位の第2のユーザによって設定可能である。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、送信を停止した場合に、送信の再開を開始できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1に係る送信装置の構成を示す図である。
図2図1の送信装置に運用者権限でログインした場合のメニューのデータ構造を示す図である。
図3図1の送信装置に設定者権限でログインした場合のメニューのデータ構造を示す図である。
図4図1の表示部によって表示される技適対応設定メニューを示す図である。
図5図1の表示部によって表示される電波復帰設定メニューを示す図である。
図6図1の送信装置による設定手順を示すフローチャートである。
図7図1の送信装置による再開手順を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施例2に係る送信装置の構成を示す図である。
図9図8の設定部に記憶されたテーブルのデータ構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例1)
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例1は、例えば、エリア放送用の送信装置のごとく、技適を取得することによって信号の送信が可能になる送信装置に関する。このような送信装置では、一般的に工場から出荷される際に技適が取得されており、それを証明するためのシール(以下、「技適シール」という)が貼り付けられている。運用者は、送信装置をそのまま使用できる。しかしながら、送信装置の設定環境によっては、技適で許可されたアンテナ、出力レベル、周波数を変更する必要が発生する。その際は、管理者(以下、「設定者」という)が、技適シールを外したうえで、技適で許可された組合せを変更することによって、送信装置が使用される。このような送信装置において異常が発生した場合、前述のごとく、送信装置からの送信が停止される。このような状況下において、送信の再開を早期かつ簡易に実行するために、本実施例は次の処理を実行する。なお、ここでは、送信装置の使用者であって、かつ設定者以外の使用者であって設定可能パラメータが無線従事者より制限される、すなわち設定自由度が下位の使用者を「運用者」という。
【0014】
設定者、運用者は、送信装置にログインする。その際、設定者と運用者とではパスワードが異なる。設定者としてログインした場合、送信装置が、技適に適合しているかあるいは技適に適合していないかを選択するための画面が表示される。設定者は、この画面をみながら、技適に適合しているか否かを設定する。また、技適に適合するか、技適に適合しないかに関わらず、送信の自動的な再開も設定可能である。一方、運用者としてログインした場合、技適に適合しているか否かが設定不可能である。また、技適に適合する場合、設定者の場合と同様に、送信の自動的な再開も設定可能である。技適に適合しない場合、送信の自動的な再開は設定不可能である。つまり、異常が発生して、電波の送信を停止しなければならない状態が発生した場合、その後自動復帰するか否かを指定するユーザインターフェイスが設けられる。
【0015】
図1は、本発明の実施例1に係る送信装置100の構成を示す。送信装置100は、送信部10、設定部12、入力部14、表示部16、外部クロック入力部18、外部クロック監視部20、温度監視部22、制御部24を含む。
【0016】
送信部10は、アンテナから信号を送信する。ここで、送信装置100は、エリア放送に対応する。エリア放送とは、地上デジタル放送の送信電力よりも小さい送信電力によって、狭いエリアに限定的にコンテンツデータを送信するサービスである。エリア放送では、その放送エリアが一般の地上デジタル放送に比べてはるかに狭いので、いろいろな分野やさまざまな場所で運用されることが期待されている。また、地上デジタル放送は、放送事業者によって設置されており、エリア放送は、前述の運用者あるいは設定者によって設置されている。送信部10は、地上デジタル放送と同様に、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)処理を実行することによって、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調波を生成する。送信部10に対する制御は、制御部24によってなされる。
【0017】
温度監視部22は、送信部10の温度を監視する。温度監視部22は、測定した温度情報を制御部24に出力する。外部クロック入力部18は、制御部24によって送信部10が外部クロック同期モードに設定されている場合、外部からのクロックを受けつける。外部クロック入力部18は、例えばPLL(Phase Locked Loop)によって周波数を変換する。外部クロック入力部18は、変換した周波数のクロックを送信部10に出力する。送信部10は、外部クロック入力部18からのクロックを受けて、当該クロックに同期した信号をアンテナから送信する。
【0018】
外部クロック監視部20は、外部からのクロックが外部クロック入力部18に正常に入力されているか否かを監視する。外部からのクロックが外部クロック入力部18に入力されていない場合、外部クロック監視部20は、異常を検出し、異常信号を制御部24に出力する。これは、外部のクロックが停止している場合であり、外部クロック入力部18からのクロックに送信部10が同期できなくなった場合に相当する。
【0019】
制御部24は、送信部10の動作を制御する。制御部24は、温度監視部22からの温度情報を受けつける。制御部24は、温度がしきい値、例えば、80℃よりも高くなった場合、送信部10が異常であることを検出する。これは、送信部10が通常状態と異なった場合に相当する。その際、制御部24は、送信部10に対して、信号の送信を停止させる。また、制御部24は、外部クロック監視部20からの異常信号を受けつけた場合、送信部10が異常であることを認識する。これは、送信部10が通常状態と異なったことに相当する。この場合でも、制御部24は、送信部10に対して、信号の送信を停止させる。つまり、温度が上昇するか、あるいは外部クロックの供給がなくなるかすることによって、送信部10が通常状態と異なった場合に、制御部24は、送信部10の動作を停止させる。
【0020】
設定部12は、制御部24においてなされる制御の内容を設定する。設定はさまざまなものでかまわないが、ここでは、停止した送信部10の動作を自動的に再開させるか否かの設定であるとする。これ以外の設定は、例えば、送信スケジュールの設定である。設定部12は、入力部14を介して運用者、設定者からの設定の入力等を受けつけるが、そのような入力を容易にするために、設定の画面を表示部16に表示させる。このような設定の画面は、ユーザインターフェイスに相当する。設定の画面に関しては後述する。入力部14は、ボタン、マウス等によって構成されており、運用者、設定者等のユーザからの入力を受けつける。入力には、例えば、ID、パスワード、送信パラメータの設定が含まれる。なお、入力はこれらに限定されない。入力部14は、受けつけた入力を設定部12に出力する。
【0021】
設定部12は、初期の段階において、入力部14からID、パスワードを受けつける。設定部12は、運用者に対するIDとパスワードとの組合せ(以下、「第1の組合せ」という)と、設定者に対するIDとパスワードとの組合せ(以下、「第2の組合せ」という)とを予め記憶する。ここで、前述のごとく、設定者に対するIDとパスワードは、無線従事者のみに知らされている。設定部12は、受けつけたID、パスワードが、第1の組合せに該当すれば、運用者権限によるログインを許可し、第2の組合せに該当すれば、設定者権限によるログインを許可する。
【0022】
なお、ユーザインターフェイスに最初ログオンする際に、設定部12は、ログオンする権限を選択肢の中から選択させ、その権限に応じてパスワード等による認証方法を変える。この認証方法は運用者権限で最初ログオン後に設定者権限に入るにはさらに別の認証方法を採るなど別の方法であってもよいが、ユーザインターフェイス上で現在どの権限で操作しているのかがひとつに決まっていればよい。このように、ユーザインターフェイスを操作するための権限には、少なくとも2段階が規定される。一番低い権限が運用者権限が低い方の権限であり、運用者権限よりも高い権限が設定者権限である。
【0023】
設定部12は、運用者権限であるかあるいは設定者権限であるかに応じて、表示部16に表示させる画面の内容、画面のディレクトリ構造が異なる。図2は、送信装置100に運用者権限でログインした場合のメニューのデータ構造を示す。トップメニューの下に、送信スケジュール設定メニュー、電波復帰設定メニュー等が配置される。図3は、送信装置100に設定者権限でログインした場合のメニューのデータ構造を示す。トップメニューの下に、送信スケジュールメニュー、電波復帰設定メニュー、技適対応設定メニュー等が配置される。つまり、設定者権限の構造では、運用者権限の構造と比較して、技適対応設定メニューが追加されている。なお、追加になるメニューがこれら以外であってもよい。
【0024】
ここでは、設定者権限における技適対応設定メニューを説明する。設定部12は、技適対応設定メニューを表示部16に表示させる。前述のごとく、技適対応設定メニューを表示できるか否かはログインした権限によって決まる。つまり、運用者権限では、技適対応設定メニューを表示できず、設定者権限では、技適対応設定メニューを表示できる。図4は、表示部16によって表示される技適対応設定メニューを示す。図示のごとく、このメニューの中に、チェックボックスが含まれている。チェックボックスにチェックがなされていれば、設定部12は、技適対応の設定を実行しており、チェックがなされていなければ、設定部12は、技適対応の設定を実行していない。チェックボックスの設定は、入力部14のマウスでチェックボックスをクリックするなどして変更される。
【0025】
次に、電波復帰設定メニューを説明する。電波復帰設定メニューは、停止した送信部10の動作を自動的に再開させるかの設定を行うための画面である。当該メニューの表示は、技適を取得しているか否か、ログインしている権限によって異なる。本送信装置100が技適を取得している場合、設定者権限と運用者権限のいずれであっても、表示部16は、電波復帰設定メニューを表示する。そのため、本送信装置100が技適を取得している場合、設定部12は、設定者権限と運用者権限のいずれであっても、送信部10が通常状態に復帰したときに、送信部10の動作を自動的に再開させることを設定可能である。ここで、送信部10が通常状態に復帰したときは、外部からのクロックが外部クロック入力部18に入力されていない状態から、外部からのクロックが外部クロック入力部18に入力される状態に戻った場合に相当する。また、送信部10が通常状態に復帰したときは、制御部24において、温度がしきい値よりも高い状態から、温度がしきい値以下になった状態に戻った場合に相当する。その際、設定部12において再開が設定されている場合、制御部24は、送信部10に送信を再開させる。
【0026】
本送信装置100が技適を未取得である場合、設定部12は、運用者権限であれば、送信部10が通常状態に復帰したときに、送信部10の動作を自動的に再開させることを設定不可能である。そのため、この場合に、表示部16は、電波復帰設定メニューを表示しない。本送信装置100が技適を未取得である場合、設定部12は、管理者権限であれば、送信部10が通常状態に復帰したときに、送信部10の動作を自動的に再開させることを設定可能である。つまり、管理者権限であれば、技適を取得している場合と同様の処理がなされる。
【0027】
図5は、表示部16によって表示される電波復帰設定メニューを示す。図示のごとく、ふたつのチェックボックスが示される。上のチェックボックスは、「温度異常検出からの復帰をする」と示されている。これは、温度監視部22にて測定した温度が異常であった状態から、温度監視部22にて測定した温度がある程度まで低下した場合に、異常状態から復帰して、送信部10に対して送信を再開するかを設定するものである。例えば、異常になる温度が80℃として、70℃まで下がった場合に相当する。チェックが入っていると復帰が自動的になされる。チェックが入っていない場合には、一旦異常状態を検出した後に、温度監視部22で温度が十分下がっても、送信は再開されない。人間などが別の手段でマニュアルで送信を再開することになる。
【0028】
下のチェックボックスは、「クロック入力異常検出からの復帰をする」と示されている。これは、クロック入力異常検出からの復帰を行うかを設定するものである。前述のごとく、外部クロック入力部18が外部からのクロックを正常に受けつけておらず、外部クロック入力部18が外部のクロックに同期できなくなった場合に、外部クロック監視部20は、制御部24に対して異常信号を送る。これを受けて制御部24は、送信部10に対し、アンテナを通じての無線送信を停止するように制御する。その後、外部からのクロックが復活したことにより、外部クロック入力部18は、外部からのクロックを安定的に受信でき、これに同期できるようになったときに、外部クロック監視部20は、制御部24に対して異常信号の出力を停止する。この異常信号が出力されなくなったときに、このチェックボックスにチェックが入っていると、制御部24は、送信部10に対してアンテナを通じての無線送信を再開するように自動的に制御する。一方、チェックが入っていないと、制御部24は、何もせず、人間などが別の手段でマニュアルで出力を再開することになる。
【0029】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0030】
以上の構成による送信装置100の動作を説明する。図6は、送信装置100による設定手順を示すフローチャートである。技適を取得していれば(S10のY)、自動復帰には特に無線従事者の資格は不要であるから、設定部12は、自動復帰を設定可能である(S12)。技適を取得しておらず(S10のN)、管理者権限であれば(S14のY)、管理者権限があるのは無線従事者であるという前提で、無線従事者であれば送信を開始する権限を持っていることから、設定部12は、自動復帰を設定可能である(S16)。管理者権限でなければ(S14のN)、ステップ16はスキップされる。
【0031】
図7は、送信装置100による再開手順を示すフローチャートである。通常状態と異なれば(S40)、制御部24は、送信部10の動作を停止させる(S42)。通常状態に復帰しなければ(S44のN)、ステップ42に戻る。通常状態に復帰すれば(S44のY)、制御部24は、送信部10の動作を再開する(S46)。
【0032】
本発明の実施例によれば、技適を取得している場合、通常状態に復帰したときに、送信を自動的に再開させるので、無送信期間を短縮できる。また、技適を取得している場合、通常状態に復帰したときに、送信を自動的に再開させるので、管理者あるいは運用者の手間を省略できる。また、技適を未取得である場合、通常状態に復帰したときに、送信を自動的に再開させることを運用者によって設定不可能であるので、許可されない送信を回避できる。また、技適を未取得である場合、通常状態に復帰したときに、送信を自動的に再開させることを管理者すなわち無線従事者によって設定可能であるので、無線従事者が指示をしての送信を再開させると言う意味合いを持った上で無送信期間を短縮できる。
【0033】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を説明する。実施例2は、実施例1と同様に、送信停止および送信再開を実行可能な送信装置に関する。実施例1に係る送信装置では、温度および外部クロックに応じて送信停止および送信再開を自動的に実行している。実施例2では、時刻に応じて送信停止および送信再開を実行する送信装置に関する。
【0034】
図8は、本発明の実施例2に係る送信装置100の構成を示す。送信装置100は、送信部10、設定部12、入力部14、表示部16、GPS入力部30、地上デジタル放送入力部32、インターネット入力部34、電波時計入力部36を含む。制御部24は、時計部38を含む。
【0035】
時計部38は、時刻を計時する。なお、エリア放送では、放送に含まれる時刻が正確な時刻に対し±500msの誤差しか許容されていないため、時計部38は、基準となる正確な時刻を取得してそれに内部の時刻を合わせる。そのため、時計部38は、GPS入力部30から電波時計入力部36のいずれから取得した時刻への調節機能を有する。また、時計部38は、入力部14、設定部12を介して、管理者あるいは運用者からの手動による時刻の設定を受けつける。そのため、時計部38は、手動によって入力された時刻への調節機能も有する。
【0036】
GPS入力部30は、GPS(Global Positioning System)から時刻を取得するものである。GPS入力部30は、GPS信号を受信し、GPS信号から時刻を抽出する。GPS入力部30は、時刻を制御部24に出力する。地上デジタル放送入力部32は、地上デジタル放送から時刻を取得する。地上デジタル放送もエリア放送と同様に±500msの誤差で運用されている。地上デジタル放送入力部32は、地上デジタル放送を受信し、地上デジタル放送からTOT信号を抽出する。地上デジタル放送入力部32は、TOT信号を時刻として制御部24に出力する。
【0037】
インターネット入力部34は、インターネットに接続し、インターネット上のNTP(Network Time Protocol)サーバから時刻を取得する。インターネット入力部34は、時刻を制御部24に出力する。電波時計入力部36は、電波時計の電波を取得する。電波時計入力部36は、電波から時刻を抽出する。電波時計入力部36は、時刻を制御部24に出力する。
【0038】
時計部38は、GPS入力部30、地上デジタル放送入力部32、インターネット入力部34、電波時計入力部36のいずれかから入力した基準となる時刻情報に時刻を合わせる。時刻の調節に関しては公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。時計部38は、調節した時刻(以下、「第1時刻」という)を送信部10に出力する。時計部38は、前述のごとく、手動によって入力された時刻を受けつけることもある。時計部38は、受けつけた時刻に合わせた時刻(以下、「第2時刻」という)を送信部10に出力する。送信部10は、第1時刻あるいは第2時刻を受けつける。
【0039】
しかしながら、GPS入力部30、地上デジタル放送入力部32、インターネット入力部34、電波時計入力部36から時計部38への時刻情報の入力がない場合、あるいは時計部38への手動による設定がない場合、時計部38は自走する。そのため、時計部38を駆動している水晶発信器の精度に依存して、時刻がずれていく。例えば、0.1ppm精度の水晶または水晶発信器を使っていた場合には、1000万分の1であるので、1日=86400秒に対して0.00864秒ずれるおそれがある。1日に0.00864秒ずれると、エリア放送で規定されている±500msを超えてしまうまで、最初が完全に合っていたとすると、57.8日要する。これを考慮すると、例えば、時刻は、57日に一度補正されればよい。
【0040】
57日に一度補正するために、補正を行うためのアルゴリズムが毎日動作され、57日目に近づいた、例えば27日間補正のためのGPS、TOT、電波時計の信号が取得できなかったとしたときに、制御部24は、表示部16に「あと30日以内に補正信号が得られないと電波と停止します。」と表示させる。これは、警告の表示に相当する。電波停止の直前に表示しても対処が間に合わず、頻繁に表示してもわずらわしいので、取得間隔と方法と水晶の精度に依存する特定の時間(日単位)以内になったら警告が出力される。
【0041】
制御部24は、第1時刻あるいは第2時刻に対して、通常状態であるか否かを検出する。第1時刻に対する検出は、次のようになされる。GPS入力部30、地上デジタル放送入力部32、インターネット入力部34、電波時計入力部36から時計部38への時刻情報の入力がある場合、制御部24は、通常状態であると検出する。一方、GPS入力部30、地上デジタル放送入力部32、インターネット入力部34、電波時計入力部36から時計部38への時刻情報の入力がない場合、制御部24は、通常状態でないと検出する。なお、時刻を補正してから、エリア放送で規定されている±500msを超えてしまうまでの期間、例えば、前述の57日以内であれば、制御部24は、通常状態でないと検出してもよく、期間よりも長くなると、制御部24は、通常状態でないと検出してもよい。ただし、マニュアルでの設定の場合は、設定の精度が人間の反応時間に影響されるので、たとえば設定が±325msずれるとすると、残りは175msなので20日以内に設定を行う必要が出てくる。
【0042】
第2時刻に対する検出は、次のようになされる。手動による時刻の補正から、エリア放送で規定されている±500msを超えてしまうまでの期間、例えば、前述の57日以内であれば、制御部24は、通常状態でないと検出する。一方、期間よりも長くなると、制御部24は、通常状態でないと検出する。通常状態でない場合、実施例1と同様に、制御部24は、送信部10に送信を停止させる。
【0043】
送信を停止させた場合に、制御部24は、実施例1と同様に、設定に応じて、送信部10に送信を再開させる。ここで、GPS、TOT、NTPサーバ、電波時計からの入力をもとに時刻を補正している場合、これらの入力が一時的に途絶えたとしても、再度取得できれば、その時点から自動的に再開することが可能である。一方、手動(マニュアル)で時刻を設定した場合には、それ以後一方的に時刻のずれが大きくなっていくので、自動復帰はできない。つまり、自動復帰が可能な機能と不可能な機能が存在する。
【0044】
これに対応するために、設定部12は、送信部10が第1時刻を受けつけている場合、送信部10が通常状態に復帰したときに、送信部10の動作を自動的に再開させることを設定可能である。一方、設定部12は、送信部10が第2時刻を受けつけている場合、送信部10の動作を自動的に再開させることを設定不可能である。
【0045】
図9は、設定部12に記憶されたテーブルのデータ構造を示す。最上段の行には、時刻の補正手段が列挙されている。2行目には、自動復帰が可能か否かが示されている。前述のごとく、マニュアル設定の場合は不可、他のものは可となっている。3行目の補正は、入力部14により制御部24に対して設定されたものであり、どの補正手段を有効とするかが示されている。実際に使用する補正手段だけが設定される。4行目には、3行目において「する」と設定されている補正手段に対して、最後にその手段を使って補正した日付が示されている。
【0046】
5行目には、各補正手段の補正の最大間隔が示されている。この行の値は固定の値である。GPSなどは非常に正確なので、補正した後、前述のごとく例えば57日間にわたって補正しなくても、時刻の誤差は、規定の±500msの範囲に収まる。一方、地上デジタル放送は、元々の時刻情報が1秒単位でずれていることが予測されるので、GPSと比較して精度が低い。その結果、補正したとしてもその時刻がずれている可能性があるので、±500msずれるまでの期間が、57日よりも短くなる。地上デジタル放送と同様に、NTPサーバでも、回線が混雑した場合に誤差が大きくなりうるので、期間が短くなっている。また、マニュアル設定の場合は、人間の設定の反応時間に誤差があるので、GPSと比較して精度が低くなっている。時計部38の精度が0.1ppmである場合、完全に一致すれば57日間である。一方、100msずれる可能性がある場合には、57.8[日]×(1−100/500)=46.24[日]となり、Nmsずれる可能性がある場合には、57.8[日]×(1−N/500)[日]となる。
【0047】
6行目には、本日の日付を1月31日とした場合の補正の期限までの残り日数が示されている。例えば、GPSの場合、最終補正が1月12日になされているので、1月31日−1月12日=19日前ということになる。最大間隔が57日なので残り日数は57日−19日=38日となる。この行も3行目において、使用するとした補正手段に対してのみ計算がなされる。この残り日数の内のもっとも大きいものが、本送信装置100全体としてみた場合の補正までの残り日数となる。図9のマニュアルの補正手段のように残り日数が負の数になっても、すなわちその補正手段のみではすでに規格の±500msを超えてしまっている可能性があっても、他の手段の方が大きい残り日数であれば、そちらが有効となる。制御部24はこれらを毎日計算する。
【0048】
時刻が補正された場合には、制御部24は、使用した補正手段に対する4行目の最終補正の日付を更新する。残り日数欄の最大の日数がある特定の数値(例えば10日)以下になった場合、制御部24は、表示部16に「GPSによる時刻補正をあと38日以内に行わないと電波を停止いたします。」などと表示することにより、警告を発する。ここで、38日のところには、図9の6行目の残り日数の最大のものが表示され、GPSのところには、対応した補正手段が表示される。
【0049】
本発明の実施例によれば、基準となる時刻情報にしたがった時刻を受けつけている場合通常状態に復帰したときに、送信を自動的に再開させることが設定可能であるので、正確な時刻を使用可能であれば送信の再開をすぐに実行できる。また、手動による設定にしたがった時刻を受けつけている場合、送信を自動的に再開させることが設定不可能であるので、ずれたままの時刻の使用を回避できる。
【0050】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。たとえば、補正は複数あるうちの一つのみを有効にする、複数ある補正の優先順位をつけて行う等が考えられる。
【0051】
本発明の実施例において、送信装置100には、入力部14と表示部16とが備えられている。しかしながらこれに限らず例えば、入力部14と表示部16は、送信装置100に備えられずに、PCに備えられ、かつ送信装置100とPCがネットワークにて接続されてもよい。本変形例によれば、構成の自由度を向上できる。
【0052】
本発明の実施例1において、制御部24は、温度とクロックとをもとに、送信部10の送信を停止したり、再開させたりしている。しかしながらこれに限らず例えば、制御部24は、温度だけ、あるいはクロックだけをもとに、送信部10の送信を停止したり、再開させたりしてもよい。本変形例によれば、送信装置100の構成を簡易にできる。
【0053】
本発明の実施例2において、GPS等が、基準となる時刻として使用されている。しかしながらこれに限らず例えば、他の装置から、基準となる時刻として使用してもよい。本変形例によれば、装置構成の自由度を向上できる。
【0054】
実施例1と実施例2とを組み合わせてもよい。本変形例によれば、実施例1と実施例2とを組み合わせた効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0055】
10 送信部、 12 設定部、 14 入力部、 16 表示部、 18 外部クロック入力部、 20 外部クロック監視部、 22 温度監視部、 24 制御部、 100 送信装置。
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