(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関と車輪とを結ぶ動力伝達経路に、前記内燃機関の側から順に、係合装置、回転電機、及び変速機構が設けられた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置であって、
少なくとも前記係合装置、前記回転電機、及び前記変速機構に供給される油の温度を検出油温として検出する油温検出部と、
前記検出油温に基づいて、前記油の温度を上昇させる昇温制御を実行するか否かを判定する昇温実行判定部と、
前記回転電機に用いられる蓄電装置の充電状態を検出する充電状態検出部と、
前記充電状態検出部により検出された前記充電状態に基づいて、前記昇温制御を実行する際に、前記蓄電装置から放電するか、前記蓄電装置に充電するかを判定する充放電判定部と、
前記昇温実行判定部が前記昇温制御を実行すると判定した場合に、前記係合装置を滑り係合状態に制御し、前記内燃機関にその回転方向のトルクを出力させ、前記回転電機にその回転方向又は回転逆方向のトルクを出力させることにより前記昇温制御を実行する昇温制御部と、を備え、
前記昇温制御部は、前記昇温制御を実行する際に、前記充放電判定部が放電すると判定した場合は、前記回転電機にその回転方向のトルクを出力させ、前記充放電判定部が充電すると判定した場合は、前記回転電機にその回転逆方向のトルクを出力させる車両用駆動装置の制御装置。
前記変速機構は、前記回転電機と前記車輪との間で動力を伝達する伝達状態と、前記回転電機と前記車輪との間で動力を伝達しない非伝達状態とに状態変更可能に構成され、
前記動力伝達経路の各部において前記内燃機関の回転が伝達されている状態での回転方向が正方向、それとは逆方向が負方向であり、
前記昇温制御部は、前記変速機構が伝達状態であって、前記充放電判定部が放電すると判定した場合は、前記回転電機を正方向に回転させると共に前記回転電機にその回転方向のトルクを出力させ、
前記昇温制御部は、前記変速機構が伝達状態であって、前記充放電判定部が充電すると判定した場合は、前記回転電機を正方向に回転させると共に前記回転電機にその回転逆方向のトルクを出力させ、
前記昇温制御部は、前記変速機構が非伝達状態であって、前記充放電判定部が放電すると判定した場合は、前記回転電機を負方向に回転させると共に前記回転電機にその回転方向のトルクを出力させ、
前記昇温制御部は、前記変速機構が非伝達状態であって、前記充放電判定部が充電すると判定した場合は、前記回転電機を正方向に回転させると共に前記回転電機にその回転逆方向のトルクを出力させる請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置。
前記昇温制御部は、前記変速機構が伝達状態である場合は、前記回転電機の出力トルクと前記係合装置の伝達トルクとの合計トルクが、前記車輪の駆動のために要求されているトルクである車両要求トルクに近づくように、前記内燃機関の出力トルク、前記係合装置の伝達トルク、及び前記回転電機の出力トルクを制御し、
前記変速機構が非伝達状態である場合は、前記回転電機の出力トルクと前記係合装置の伝達トルクとの合計トルクがゼロに近づくように、前記内燃機関の出力トルク、前記係合装置の伝達トルク、及び前記回転電機の出力トルクを制御する請求項1又は2に記載の車両用駆動装置の制御装置。
前記充放電判定部は、前記充電状態検出部により検出された前記充電状態としての充電量が、放電判定しきい値より高い場合には前記蓄電装置から放電すると判定し、前記充電量が、前記放電判定しきい値と同じ又は異なる値に設定された充電判定しきい値より低い場合には前記蓄電装置に充電すると判定する請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る車両用駆動装置1の制御装置30(以下、単に制御装置30と称す)の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る車両用駆動装置1及び制御装置30の概略構成を示す模式図である。この図において、実線は駆動力の伝達経路を示し、破線は油ATF(作動油)の供給経路を示し、一点鎖線は信号の伝達経路を示している。この図に示すように、本実施形態に係る車両用駆動装置1は、概略的には、エンジンE及び回転電機MGを駆動力源として備え、これらの駆動力源の駆動力を、動力伝達機構を介して車輪Wへ伝達する構成となっている。車両用駆動装置1には、エンジンEと車輪Wとを結ぶ動力伝達経路2に、エンジンEの側から順に、第一係合装置CL1、回転電機MG、及び変速機構TMが設けられている。ここで、第一係合装置CL1は、その係合状態に応じて、エンジンEと回転電機MGとの間を選択的に連結した状態又は分離した状態とする。なお、第一係合装置CL1が、本発明における「係合装置」に相当する。
【0020】
変速機構TMには複数の係合装置が備えられており、複数の係合装置の係合の状態が制御されることにより、変速機構TMは、回転電機MGと車輪Wとの間で動力を伝達する伝達状態と、回転電機MGと車輪Wとの間で動力を伝達しない非伝達状態とに状態変更可能に構成されている。
図1などには、変速機構TMの伝達状態と非伝達状態とを変更するための係合装置として、模式的に第二係合装置CL2を示している。すなわち、第二係合装置CL2が係合状態に制御されると変速機構TMが伝達状態になり、第二係合装置CL2が解放状態に制御されると変速機構TMが非伝達状態になると模式的に示している。
【0021】
ハイブリッド車両には、車両用駆動装置1を制御対象とする制御装置30が備えられている。本実施形態に係わる制御装置30は、回転電機MGの制御を行う回転電機制御ユニット32と、変速機構TM、第一係合装置CL1、及び第二係合装置CL2の制御を行う動力伝達制御ユニット33と、これらの制御装置を統合して車両用駆動装置1の制御を行う車両制御ユニット34と、を有している。また、ハイブリッド車両には、エンジンEの制御を行うエンジン制御装置31も備えられている。
【0022】
制御装置30は、
図2に示すように、油温検出部45、昇温実行判定部46、充電状態検出部47、充放電判定部48、及び昇温制御部49などの機能部を備えている。
油温検出部45は、少なくとも第一係合装置CL1、回転電機MG、及び変速機構TMに供給される油の温度を検出油温として検出する。昇温実行判定部46は、検出油温に基づいて、油の温度を上昇させる昇温制御を実行するか否かを判定する。充電状態検出部47は、回転電機MGに用いられる蓄電装置BTの充電状態を検出する。充放電判定部48は、充電状態検出部47により検出された充電状態に基づいて、昇温制御を実行する際に、蓄電装置BTから放電するか、蓄電装置BTに充電するかを判定する。
そして、昇温制御部49は、昇温実行判定部46が昇温制御を実行すると判定した場合に、第一係合装置CL1を滑り係合状態に制御し、エンジンEにその回転方向のトルクを出力させ、回転電機MGにその回転方向又は回転逆方向のトルクを出力させることにより昇温制御を実行する。
このような構成において、昇温制御部49は、昇温制御を実行する際に、充放電判定部48が放電すると判定した場合は、回転電機MGにその回転方向のトルクを出力させ、充放電判定部48が充電すると判定した場合は、回転電機MGにその回転逆方向のトルクを出力させる点に特徴を有している。
以下、本実施形態に係る車両用駆動装置1及び制御装置30について、詳細に説明する。
【0023】
1.車両用駆動装置1の構成
まず、本実施形態に係るハイブリッド車両の車両用駆動装置1の構成について説明する。
図1に示すように、ハイブリッド車両は、車両の駆動力源としてエンジンE及び回転電機MGを備え、これらのエンジンEと回転電機MGとが直列に駆動連結されるパラレル方式のハイブリッド車両となっている。ハイブリッド車両は、変速機構TMを備えており、当該変速機構TMにより、中間軸Mに伝達されたエンジンE及び回転電機MGの回転速度を変速すると共にトルクを変換して出力軸Oに伝達する。
【0024】
エンジンEは、燃料の燃焼により駆動される内燃機関であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の各種エンジンを用いることができる。本例では、エンジンEのクランクシャフト等のエンジン出力軸Eoが、第一係合装置CL1を介して、回転電機MGに駆動連結された入力軸Iと選択的に駆動連結される。すなわち、エンジンEは、摩擦係合要素である第一係合装置CL1を介して回転電機MGに選択的に駆動連結される。また、エンジン出力軸Eoには、図示しないダンパが備えられており、エンジンEの間欠的な燃焼による出力トルク及び回転速度の変動を減衰して、車輪W側に伝達可能に構成されている。
【0025】
回転電機MGは、非回転部材に固定されたステータStと、このステータStと対応する位置で径方向内側に回転自在に支持されたロータRoと、を有している。この回転電機MGのロータRoは、入力軸I及び中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。すなわち、本実施形態においては、入力軸I及び中間軸MにエンジンE及び回転電機MGの双方が駆動連結される構成となっている。回転電機MGは、直流交流変換を行うインバータINを介して蓄電装置BTに電気的に接続されている。そして、回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。すなわち、回転電機MGは、インバータINを介して蓄電装置BTからの電力供給を受けて力行し、或いはエンジンEや車輪Wから伝達される回転駆動力により発電(回生)し、発電された電力は、インバータINを介して蓄電装置BTに蓄電される。
本実施形態では、蓄電装置BTとして、バッテリが用いられている。なお、蓄電装置BTとして、キャパシタなどの他の蓄電装置が用いられ、或いは複数種類の蓄電装置が併用されることも可能である。
【0026】
駆動力源が駆動連結される中間軸Mには、変速機構TMが駆動連結されている。本実施形態では、変速機構TMは、変速比の異なる複数の変速段を有する有段の自動変速機構である。変速機構TMは、これら複数の変速段を形成するため、遊星歯車機構等の歯車機構と複数の係合装置とを備えている。本実施形態では、複数の係合装置の中の一つを、第二係合装置CL2として示している。この変速機構TMは、各変速段の変速比で、中間軸Mの回転速度を変速するとともにトルクを変換して、出力軸Oへ伝達する。変速機構TMから出力軸Oへ伝達されたトルクは、出力用差動歯車装置DFを介して左右二つの車軸AXに分配されて伝達され、各車軸AXに駆動連結された車輪Wに伝達される。ここで、変速比は、変速機構TMにおいて各変速段が形成された場合の、出力軸Oの回転速度に対する中間軸Mの回転速度の比であり、本願では中間軸Mの回転速度を出力軸Oの回転速度で除算した値である。すなわち、中間軸Mの回転速度を変速比で除算した回転速度が、出力軸Oの回転速度になる。また、中間軸Mから変速機構TMに伝達されるトルクに、変速比を乗算したトルクが、変速機構TMから出力軸Oに伝達されるトルクになる。
【0027】
本例では、変速機構TMの複数の係合装置(第二係合装置CL2を含む)、及び第一係合装置CL1は、それぞれ摩擦材を有して構成されるクラッチやブレーキ等の摩擦係合要素である。これらの摩擦係合要素は、供給される油圧を制御することによりその係合圧を制御して伝達トルク容量の増減を連続的に制御することが可能とされている。このような摩擦係合要素としては、例えば湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキ等が好適に用いられる。
【0028】
摩擦係合要素は、その係合部材間の摩擦により、係合部材間でトルクを伝達する。摩擦係合要素の係合部材間に回転速度差(滑り)がある場合は、動摩擦により回転速度の大きい方の部材から小さい方の部材に伝達トルク容量の大きさのトルク(スリップトルク)が伝達される。摩擦係合要素の係合部材間に回転速度差(滑り)がない場合は、摩擦係合要素は、伝達トルク容量の大きさを上限として、静摩擦により摩擦係合要素の係合部材間に作用するトルクを伝達する。ここで、伝達トルク容量とは、摩擦係合要素が摩擦により伝達することができる最大のトルクの大きさである。伝達トルク容量の大きさは、摩擦係合要素の係合圧に比例して変化する。係合圧とは、入力側係合部材(摩擦板)と出力側係合部材(摩擦板)とを相互に押し付け合う圧力である。本実施形態では、係合圧は、供給されている油圧の大きさに比例して変化する。すなわち、本実施形態では、伝達トルク容量の大きさは、摩擦係合要素に供給されている油圧の大きさに比例して変化する。
【0029】
本実施形態において、係合状態とは、摩擦係合要素に伝達トルク容量が生じている状態であり滑り係合状態と直結係合状態とが含まれる。解放状態とは、摩擦係合要素に伝達トルク容量が生じていない状態である。また、滑り係合状態とは、摩擦係合要素の係合部材間に回転速度差(滑り)がある係合状態であり、直結係合状態とは、摩擦係合要素の係合部材間に回転速度差(滑り)がない係合状態である。また、非直結係合状態とは、直結係合状態以外の係合状態であり、解放状態と滑り係合状態とが含まれる。
【0030】
なお、摩擦係合要素には、制御装置30により伝達トルク容量を生じさせる指令が出されていない場合でも、係合部材(摩擦部材)同士の引き摺りによって伝達トルク容量が生じる場合がある。例えば、ピストンにより摩擦部材同士が押圧されていない場合でも、摩擦部材同士が接触し、摩擦部材同士の引き摺りによって伝達トルク容量が生じる場合、或いは摩擦部材間の油の粘性抵抗によりトルク伝達が生じる場合がある。そこで、「解放状態」には、制御装置30が摩擦係合装置に伝達トルク容量を生じさせる指令を出していない場合に、摩擦部材同士の引き摺りにより、伝達トルク容量が生じている状態も含まれるものとする。
【0031】
2.油圧制御系の構成
車両用駆動装置1の油圧制御系は、車両の駆動力源や専用のモータによって駆動される油圧ポンプOPから供給される油ATFの油圧を所定圧に調整するための油圧制御装置PCを備えている。ここでは詳しい説明を省略するが、油圧制御装置PCは、油圧調整用のリニアソレノイド弁からの信号圧に基づき一又は二以上の調整弁の開度を調整することにより、当該調整弁からドレインする油ATFの量を調整して油ATFの油圧を一又は二以上の所定圧に調整する。所定圧に調整された油ATFは、それぞれ必要とされるレベルの油圧で、作動油、冷媒、又は潤滑油として、変速機構TM、第一係合装置CL1、及び回転電機MGなどの各部に供給される。
【0032】
3.制御装置の構成
次に、車両用駆動装置1の制御を行う制御装置30及びエンジン制御装置31の構成について、
図2を参照して説明する。
制御装置30の制御ユニット32〜34及びエンジン制御装置31は、CPU等の演算処理装置を中核部材として備えるとともに、当該演算処理装置からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)や、演算処理装置からデータを読み出し可能に構成されたROM(リード・オンリ・メモリ)等の記憶装置等を有して構成されている。そして、制御装置のROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、制御装置30の各機能部41〜49などが構成されている。また、制御装置30の制御ユニット32〜34及びエンジン制御装置31は、互いに通信を行うように構成されており、センサの検出情報及び制御パラメータ等の各種情報を共有するとともに協調制御を行い、各機能部41〜49の機能が実現される。
【0033】
また、車両用駆動装置1は、センサSe1〜Se4を備えており、各センサから出力される電気信号は制御装置30及びエンジン制御装置31に入力される。制御装置30及びエンジン制御装置31は、入力された電気信号に基づき各センサの検出情報を算出する。
入力回転速度センサSe1は、入力軸I及び中間軸Mの回転速度を検出するためのセンサである。入力軸I及び中間軸Mには回転電機MGのロータRoが一体的に駆動連結されているので、回転電機制御ユニット32は、入力回転速度センサSe1の入力信号に基づいて回転電機MGの回転速度(角速度)、並びに入力軸I及び中間軸Mの回転速度を検出する。出力回転速度センサSe2は、出力軸Oの回転速度を検出するためのセンサである。動力伝達制御ユニット33は、出力回転速度センサSe2の入力信号に基づいて出力軸Oの回転速度(角速度)を検出する。また、出力軸Oの回転速度は、車輪Wの回転速度及び車速に比例するため、動力伝達制御ユニット33は、出力回転速度センサSe2の入力信号に基づいて、車輪Wの回転速度及び車速を算出する。エンジン回転速度センサSe3は、エンジン出力軸Eo(エンジンE)の回転速度を検出するためのセンサである。エンジン制御装置31は、エンジン回転速度センサSe3の入力信号に基づいてエンジンEの回転速度(角速度)を検出する。
【0034】
充電状態検出センサSe4は、蓄電装置BTの充電状態を検出するためのセンサである。本実施形態では、充電状態検出センサSe4は、蓄電装置BTの電圧を検出するための電圧センサ、蓄電装置BTの充電又は放電電流を検出するための電流センサ、及び蓄電装置BTの温度を検出するための温度センサなどから構成されたセンサである。
【0035】
3−1.エンジン制御装置31
エンジン制御装置31は、エンジンEの動作制御を行うエンジン制御部41を備えている。本実施形態では、エンジン制御部41は、車両制御ユニット34からエンジン要求トルクが指令されている場合は、車両制御ユニット34から指令されたエンジン要求トルクを出力トルク指令値に設定し、エンジンEが出力トルク指令値のトルクを出力するように制御するトルク制御を行う。
【0036】
3−2.動力伝達制御ユニット33
動力伝達制御ユニット33は、変速機構TMの制御を行う変速機構制御部43と、第一係合装置CL1の制御を行う第一係合装置制御部44と、を備えている。
【0037】
3−2−1.変速機構制御部43
変速機構制御部43は、変速機構TMに変速段を形成する制御を行う。変速機構制御部43は、車速、アクセル開度、及びシフト位置などのセンサ検出情報に基づいて変速機構TMにおける目標変速段を決定する。そして、変速機構制御部43は、油圧制御装置PCを介して変速機構TMに備えられた複数の係合装置に供給される油圧を制御することにより、各係合装置を係合又は解放して目標とされた変速段を変速機構TMに形成させる。具体的には、変速機構制御部43は、油圧制御装置PCに各係合装置の目標油圧(指令圧)を指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(指令圧)の油圧を各係合装置に供給する。本実施形態では、変速機構制御部43は、第一係合装置制御部44と同様の方法により、第二係合装置CL2の係合の状態を制御する第二係合装置制御部としても機能する。
【0038】
本実施形態では、変速機構制御部43は、シフト位置がニュートラルレンジ又はパーキングレンジであると検出した場合は、変速機構TMにいずれの変速段も形成しないように、複数の係合装置を解放状態に制御して、変速機構TMを非伝達状態する。一方、変速機構制御部43は、シフト位置が前進ドライブレンジ又は後進ドライブレンジであると検出した場合は、変速機構TMにいずれかの変速段を形成するように、形成する変速段に対応する係合装置を係合状態に制御して、変速機構TMを伝達状態にする。
【0039】
3−2−2.第一係合装置制御部44
第一係合装置制御部44は、第一係合装置CL1の係合の状態を制御する。本実施形態では、第一係合装置制御部44は、第一係合装置CL1の伝達トルク容量が、車両制御ユニット34から指令された第一目標トルク容量に近づくように、油圧制御装置PCを介して第一係合装置CL1に供給される油圧を制御する。具体的には、第一係合装置制御部44は、第一目標トルク容量に基づき設定した目標油圧(指令圧)を、油圧制御装置PCに指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(指令圧)を制御目標として第一係合装置CL1に供給する油圧を制御する。
【0040】
3−3.回転電機制御ユニット32
回転電機制御ユニット32は、回転電機MGの動作制御を行う回転電機制御部42を備えている。本実施形態では、回転電機制御部42は、車両制御ユニット34から回転電機要求トルクが指令されている場合は、車両制御ユニット34から指令された回転電機要求トルクを出力トルク指令値に設定し、回転電機MGが出力トルク指令値のトルクを出力するように制御する。具体的には、回転電機制御部42は、インバータINが備える複数のスイッチング素子をオンオフ制御することにより、回転電機MGの出力トルクを制御する。
【0041】
3−4.車両制御ユニット34
車両制御ユニット34は、エンジンE、回転電機MG、第一係合装置CL1、及び変速機構TM等に対して行われる各種トルク制御、及び各係合装置の係合制御等を車両全体として統合する制御を行う機能部を備えている。
【0042】
車両制御ユニット34は、アクセル開度、車速、及び蓄電装置BTの充電量等に応じて、車輪Wの駆動のために要求されているトルクであって、中間軸M側から出力軸O側に伝達される目標駆動力である車両要求トルクTrqを算出するとともに、エンジンE及び回転電機MGの運転モードを決定する。そして、車両制御ユニット34は、エンジンEに対して要求する出力トルクであるエンジン要求トルク、回転電機MGに対して要求する出力トルクである回転電機要求トルク、及び第一係合装置CL1に対して要求する伝達トルク容量である第一目標トルク容量を算出し、それらを他の制御ユニット32、33及びエンジン制御装置31に指令して統合制御を行う機能部である。
本実施形態では、車両制御ユニット34は、油温検出部45、昇温実行判定部46、充電状態検出部47、充放電判定部48、及び昇温制御部49などを備えており、油ATFの温度を上昇させる昇温制御を行うように構成されている。
以下、昇温制御について詳細に説明する。
【0043】
3−4−1.油温検出部45
油温検出部45は、少なくとも第一係合装置CL1、回転電機MG、及び変速機構TMに供給される油ATFの温度を検出する機能部である。
【0044】
<油ATF>
本実施形態では、油ATFは、変速機構TMに供給される、いわゆる自動変速機油とされている。そして、油ATFは、変速機構TMに加えて、第一係合装置CL1及び回転電機MGにも供給されるように構成されている。
具体的には、油ATFは、変速機構TMが備える複数の係合装置の油圧シリンダなどに供給されて、その係合の状態を制御するための作動油、当該複数の係合装置の係合部材間に生じる摩擦熱を冷却するための冷媒として用いられる。また、油ATFは、第一係合装置CL1の油圧シリンダなどに供給されて、その係合の状態を制御するための作動油、及び第一係合装置CL1の係合部材間に生じる摩擦熱を冷却するための冷媒として用いられる。また、油ATFは、回転電機MGのコイルなどを冷却するための冷媒として用いられる。また、油ATFは、車両用駆動装置1の各部の潤滑油として用いられる。なお、本実施形態では、油ATFは、エンジンEには供給されず、エンジンEには、エンジンオイルが供給される。すなわち、油ATFは、車両用駆動装置1における、エンジンEを除く、第一係合装置CL1、回転電機MG、及び変速機構TMなどの各部の冷媒、作動油、又は潤滑油として共通して用いられる油である。
【0045】
油ATFは、オイルパンなどにより構成された、共通の油溜に貯蔵されるように構成されており、油溜に貯蔵されている油ATFは、油圧ポンプOPにより吸引されて、冷媒、作動油、又は潤滑油として車両用駆動装置1の各部に供給された後、再び油溜に戻され、循環するように構成されている。
本実施形態では、油温検出部45は、油溜内に配置された温度センサの出力信号に基づいて、油溜に貯蔵されている油ATFの温度を検出するように構成されている。
【0046】
3−4−2.昇温実行判定部46
昇温実行判定部46は、油温検出部45が検出した油ATFの検出油温に基づいて、油の温度を上昇させる昇温制御を実行するか否かを判定する機能部である。
本実施形態では、昇温実行判定部46は、油ATFの検出温度が予め設定された判定温度未満である場合に、昇温制御を実行すると判定し、検出温度が判定温度以上である場合に、昇温制御を実行しないと判定するように構成されている。判定温度は、油ATFの粘性が適度に低くなる温度、例えば、80℃に設定される。
【0047】
3−4−3.充電状態検出部47
充電状態検出部47は、回転電機MGに用いられる蓄電装置BTの充電状態を検出する機能部である。
本実施形態では、充電状態検出部47は、充電状態検出センサSe4の入力信号に基づいて、蓄電装置BTの充電状態として充電量を推定するように構成されている。なお、蓄電装置BTの充電状態として、蓄電装置BTの電圧など、他の充電状態を表す指標が用いられてもよい。
【0048】
3−4−4.充放電判定部48
充放電判定部48は、充電状態検出部47により検出された充電状態に基づいて、昇温制御を実行する際に、蓄電装置BTから放電するか、蓄電装置BTに充電するかを判定する機能部である。
本実施形態では、充放電判定部48は、充電状態としての充電量が、充放電判定しきい値より高い場合には蓄電装置BTから放電すると判定し、充電量が充放電判定しきい値より低い場合には蓄電装置BTに充電すると判定するように構成されている。
具体的には、充放電判定部48は、充電量が、放電判定しきい値より高い場合には蓄電装置BTから放電すると判定し、充電量が、放電判定しきい値と同じ又は異なる値に設定された充電判定しきい値より低い場合には蓄電装置BTに充電すると判定するように構成されている。
【0049】
単純には、充電判定しきい値を、放電判定しきい値と同じ値に設定することができる。
但し、充電判定しきい値と放電判定しきい値が同じ値に設定されると、放電判定と充電判定とが短い周期で交互に変化する、チャタリングが生じる可能性がある。昇温制御では、放電又は充電の判定結果に応じて、昇温制御の制御モードが切り替えられ、エンジンE、第一係合装置CL1、及び回転電機MGに対する制御が変更される。このため、放電又は充電の判定結果にチャタリングが生じると望ましくない。
また、昇温制御中は、充電又は放電のいずれかの判定をさせて、回転電機MGのコイルに通電させ発熱させることが望ましい。
【0050】
よって、本実施形態では、充放電判定しきい値にヒステリシス特性を設けるように構成されている。すなわち、
図13に示すように、充放電判定部48は、充電量が、放電判定しきい値を低い側から高い側に跨いだ場合に、放電すると判定し、充電量が、放電判定しきい値より低い値に設定された充電判定しきい値を高い側から低い側に跨いだ場合に、充電すると判定するように構成されている。このようにヒステリシス特性を設けると、
図13に示すように、昇温制御中は、充電又は放電のいずれかの判定がされ、回転電機MGのコイルに通電させ発熱させることができる。
【0051】
3−4−5.昇温制御部49
昇温制御部49は、昇温実行判定部46が昇温制御を実行すると判定した場合に、第一係合装置CL1を滑り係合状態に制御し、エンジンEにその回転方向のトルクを出力させ、回転電機MGにその回転方向又は回転逆方向のトルクを出力させることにより昇温制御を実行する機能部である。
【0052】
<昇温制御の必要性>
油ATFの温度が低い状態では、油ATFの粘性(粘度)が高いため、各回転部材に供給されている油ATFの粘性抵抗によるトルク損失が大きくなる。特に、変速機構TMにおいて、解放状態に制御されている係合装置の係合部材間に供給されている油ATFの粘性が高くなると、粘性抵抗により油ATFを介して係合部材間を伝達するトルク(引き摺りトルク)が大きくなる。この引き摺りトルクによって変速機構TMのトルク損失が大きくなり、燃費悪化要因となったり、車輪Wに伝達されるトルクの制御性の悪化要因となったりする。変速段数の多い変速機構TMでは、係合装置の数が多くなるため、引き摺りトルクによる影響が大きくなる。
また、油ATFの粘性が高いと、油圧ポンプOPから各部に油ATFを供給する際の粘性抵抗が大きくなり、油圧ポンプOPの駆動損失が大きくなったり、係合装置に供給される作動油の制御性の悪化要因となったりする。
このため、車両用駆動装置1の運転開始後、油ATFの温度をできるだけ早期に上昇させて、燃費の悪化を抑制したり、車輪Wに伝達されるトルクの制御性の悪化を抑制したりすることが望まれる。
【0053】
しかし、本実施形態に係る車両用駆動装置1には、従来の車両用駆動装置とは異なり、トルクコンバータが備えられていない。従来では、トルクコンバータのポンプインペラとタービンランナとの間で作動油を介してトルクを伝達させる際に、エネルギ損失が生じ、当該損失エネルギにより作動油が加熱される。トルクコンバータ内の作動油を冷却するために、油溜からトルクコンバータ内に油ATFが供給されて、加熱された油ATFがトルクコンバータから油溜に戻される。すなわち、従来のように、トルクコンバータが備えられる車両用駆動装置では、トルクコンバータが加熱源となり、油ATFの温度は比較的早期に上昇する。
一方、本実施形態に係わる車両用駆動装置1には、加熱源となるトルクコンバータが備えられておらず、油ATFの温度が早期に上昇し難い。
【0054】
<昇温制御による油ATFの温度上昇>
そこで、昇温制御部49は、第一係合装置CL1を滑り係合状態に制御し、エンジンEにトルクを出力させ、回転電機MGにトルクを出力させて、油ATFの温度を上昇させる昇温制御を実行するように構成されている。
第一係合装置CL1を滑り係合状態に制御して、第一係合装置CL1の係合部材間の摩擦によりエンジンEの出力トルクを回転電機MG側に伝達させると、第一係合装置CL1に摩擦熱が発生する。摩擦熱は、第一係合装置CL1に供給される油ATFにより冷却される。摩擦熱の冷却により温度が上昇した油ATFは、油溜に戻される。すなわち、滑り係合状態において生じた第一係合装置CL1の摩擦熱は、第一係合装置CL1に供給された油ATFに伝達され、油ATFの温度が上昇する。
【0055】
しかし、第一係合装置CL1のみでは発生させることができる熱量に限界があり、油ATFの温度上昇の早期化には限界がある。そこで、昇温制御部49は、回転電機MGにその回転方向又は回転逆方向のトルクを出力させて、銅損、鉄損などにより回転電機MGに熱を発生させるように構成されている。すなわち、回転電機MGにその回転方向又は回転逆方向のトルクを出力させるために、回転電機MGのコイルに電流を流すと、電気抵抗により電気エネルギの損失(銅損)が発生し、コイルが発熱する。また、回転電機MGにトルクを出力させる際に、コイルが巻かれた鉄心を交流で磁化したときに失われる電気エネルギ(鉄損)により、鉄心が発熱する。
銅損、鉄損による回転電機MGの発熱(以下、代表して電気損失熱と称す)は、回転電機MGに供給される油ATFにより冷却される。電気損失熱の冷却により温度が上昇した油ATFは、油溜に戻される。すなわち、昇温制御では、第一係合装置CL1を滑り係合状態に制御することに加えて、回転電機MGにトルクを出力させることにより、第一係合装置CL1の摩擦熱に加えて、回転電機MGの電気損失熱を油ATFに加えることができ、油ATFの温度上昇を更に早期化させることができる。
【0056】
<充電状態に応じた力行又は回生の変更>
昇温制御部49は、このような昇温制御を実行する際に、充放電判定部48が放電すると判定した場合は、回転電機MGにその回転方向のトルクを出力させ、充放電判定部48が充電すると判定した場合は、回転電機MGにその回転逆方向のトルクを出力させるように構成されている。
昇温制御部49は、蓄電装置BTの充電量が高く、充放電判定部48が放電すると判定した場合は、回転電機MGに力行をさせて回転電機MGに電気損失熱を発生させ、蓄電装置BTの充電量が低く、充放電判定部48が充電すると判定した場合は、回転電機MGに回生をさせて回転電機MGに電気損失熱を発生させる。すなわち、昇温制御部49は、蓄電装置BTの充電状態に応じて、回転電機MGに力行又は回生をさせて、蓄電装置BTの充電状態を適切な状態に保ちつつ、回転電機MGに電気損失熱を発生させることができる。
【0057】
<第一係合装置CL1の滑り係合状態>
昇温制御部49は、第一係合装置CL1を滑り係合状態に制御する際に、第一係合装置CL1のエンジンE側の係合部材の回転速度が、回転電機MG側の係合部材の回転速度より高くなるように制御する。これにより、回転速度の高いエンジンE側の係合部材から、回転速度の低い回転電機MG側の係合部材に、第一係合装置CL1の伝達トルク容量の大きさのトルクが伝達される。すなわち、昇温制御中の第一係合装置CL1の伝達トルクTclは、その伝達トルク容量の大きさの回転方向(正方向)のトルクとなる(Tcl≧0)。
なお、本発明において、動力伝達経路2の各部においてエンジンEの回転が伝達されている状態での回転方向が正方向、それとは逆方向が負方向であると定義する。
【0058】
<変速機構TMの動力伝達状態に応じた、制御モードの決定>
上記のように、変速機構TMは、回転電機MGと車輪Wとの間で動力を伝達する伝達状態と、回転電機MGと車輪Wとの間で動力を伝達しない非伝達状態とに状態変更可能に構成されている。
【0059】
本実施形態では、昇温制御部49は、
図3及び
図4に示すように、変速機構TMが伝達状態又は非伝達状態のいずれであるか、及び充放電判定部48による充電又は放電の判定結果に応じて、制御モードを1から4のいずれかに決定して、昇温制御の制御内容を変更するように構成されている。
具体的には、昇温制御部49は、変速機構TMが伝達状態であって、充放電判定部48が放電すると判定した場合は、制御モードを1に決定して、回転電機MGを正方向に回転させると共に回転電機MGにその回転方向(すなわち正方向)のトルクを出力させる。
昇温制御部49は、変速機構TMが伝達状態であって、充放電判定部48が充電すると判定した場合は、制御モードを2に決定して、回転電機MGを正方向に回転させると共に回転電機MGにその回転逆方向(すなわち負方向)のトルクを出力させる。
【0060】
昇温制御部49は、変速機構TMが非伝達状態であって、充放電判定部48が放電すると判定した場合は、制御モードを3に決定して、回転電機MGを負方向に回転させると共に回転電機MGにその回転方向(すなわち負方向)のトルクを出力させる
昇温制御部49は、変速機構TMが非伝達状態であって、充放電判定部48が充電すると判定した場合は、制御モードを4に決定して、回転電機MGを正方向に回転させると共に回転電機MGにその回転逆方向(すなわち負方向)のトルクを出力させる。
【0061】
<変速機構TMの動力伝達状態に応じた、トルク制御の変更>
昇温制御部49は、変速機構TMが伝達状態である場合(制御モード1又は2)は、次式に示すように、回転電機MGの出力トルクTmgと第一係合装置CL1の伝達トルクTclとの合計トルクTdr(駆動トルクTdrとも称す)が、車輪Wの駆動のために要求されているトルクである車両要求トルクTrqに近づくように、エンジンEの出力トルクTe、第一係合装置CL1の伝達トルクTcl、及び回転電機MGの出力トルクTmgを制御するように構成されている。
Trq=Tdr=Tcl+Tmg ・・・(1)
また、昇温制御部49は、変速機構TMが非伝達状態である場合(制御モード3又は4)は、次式に示すように、回転電機MGの出力トルクTmgと第一係合装置CL1の伝達トルクTclとの合計トルクTdrがゼロに近づくように、エンジンEの出力トルクTe、第一係合装置CL1の伝達トルクTcl、及び回転電機MGの出力トルクTmgを制御するように構成されている。
0=Tdr=Tcl+Tmg ・・・(2)
【0062】
<第一係合装置CL1の摩擦熱及び回転速度差>
本実施形態では、昇温制御部49は、第一係合装置CL1の耐熱性の観点から、第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqが制限値(以下、摩擦熱制限値Eclqmxと称す)以下になるように、第一係合装置CL1の伝達トルクTcl及び第一係合装置CL1の係合部材間の回転速度差Δωを制御するように構成されている。
第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqは、次式に示すように、その伝達トルクTclと回転速度差Δωとを乗算した値になり、摩擦熱制限値Eclqmx以下になるように制御される。
Eclq=Tcl×Δω ・・・(3)
Eclq≦Eclqmx
【0063】
本実施形態では、第一係合装置CL1に最大限の摩擦熱を発生させて昇温させるため、次式に示すように、第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqが摩擦熱制限値Eclqmxになるように、第一係合装置CL1の伝達トルクTcl、回転速度差Δωが制御されるように構成されている。
Eclqmx=Eclq=Tcl×Δω ・・・(4)
Δω≦Δωmx
但し、回転速度差Δωが、大きくなり過ぎることを抑制するため、速度差制限値Δωmx以下になるように制御される。このため、車両要求トルクTrqが小さく、第一係合装置CL1の伝達トルクTclが小さくなる場合は、第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqは、摩擦熱制限値Eclqmxより小さくなる。
【0064】
なお、第一係合装置CL1の回転速度差Δωは、次式に示すように、エンジンEの回転速度ωeから回転電機MGの回転速度ωmを減算した値になる。また、エンジンEの回転速度ωeは、回転電機MGの回転速度ωmより大きくなる(ωe>ωm)ように制御される。
Δω=ωe−ωm ・・・(5)
以下、各制御モードについて詳細に説明する。
【0065】
3−4−5−1.制御モード1
上記のように、昇温制御部49は、変速機構TMが伝達状態であって、充放電判定部48が放電すると判定した場合は、制御モードを1に決定して、回転電機MGを正方向に回転させると共に回転電機MGにその回転方向(すなわち正方向)のトルクを出力させる。
また、本実施形態では、昇温制御部49は、回転電機MGの出力トルクTmgと第一係合装置CL1の伝達トルクTclとの合計トルクTdrが、車両要求トルクTrqに近づくように、エンジンEの出力トルクTe、第一係合装置CL1の伝達トルクTcl、及び回転電機MGの出力トルクTmgを制御するように構成されている。
また、昇温制御部49は、第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqが摩擦熱制限値Eclqmx以下になるように、第一係合装置CL1の伝達トルクTcl及び第一係合装置CL1の回転速度差Δωを制御するように構成されている。
【0066】
<制御モード1における昇温制御の構成例>
上記のような制御モード1における昇温制御を、以下で説明する例のように構成することができる。
まず、トルク制御について、
図5を参照して説明する。
昇温制御部49は、車両要求トルクTrqを、第一係合装置CL1の伝達トルクTclと、回転電機MGの出力トルクTmgとに分担させて出力させる。
本例では、昇温制御部49は、次式に示すように、車両要求トルクTrqに基づいて、回転電機要求トルクTmgrq、及び第一目標トルク容量Tclrqを決定するように構成されている。ここで、配分係数K1は、0より大きく1より小さい値に設定される。また、配分係数K1は、後述する、第一目標トルク容量Tclrqに基づいて設定される目標回転速度差Δωoが適切な値になるように、車両要求トルクTrqに応じて変化されるように構成されている。
Trq=Tmgrq+Tclrq
Tmgrq=Trq×K1
Tclrq=Trq×(1−K1) ・・・(6)
0<K1<1
【0067】
本例では、昇温制御部49は、第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqが目標摩擦熱Eclqoになるように、次式に示すように、目標摩擦熱Eclqo及び第一目標トルク容量Tclrqに基づいて、第一係合装置CL1の回転速度差Δωの目標値(目標回転速度差Δωo)を決定するように構成されている。目標摩擦熱Eclqoは、摩擦熱制限値Eclqmx以下に設定されるが、本例では、摩擦熱制限値Eclqmxに設定されるように構成されている。また、昇温制御部49は、回転速度差Δωが大きくなり過ぎないように、目標回転速度差Δωoを速度差制限値Δωmxで上限制限する。
Δωo=Eclqo/Tclrq
Eclqo=Eclqmx ・・・(7)
Δωo≦Δωmx
そして、昇温制御部49は、次式に示すように、回転電機MGの回転速度ωmに、目標回転速度差Δωoを加算した値を、エンジンEの目標回転速度ωeoに設定する。
ωeo=ωm+Δωo ・・・(8)
そして、昇温制御部49は、エンジンEの回転速度ωeが目標回転速度ωeoに近づくように、エンジン要求トルクTerqを変化させる回転速度制御を行うように構成されている。少なくとも定常状態では、次式に示すようにエンジンEの出力トルクTeと第一係合装置CL1の伝達トルクTclとが一致する。
Te=Tcl ・・・(9)
【0068】
次に、エネルギの収支について、
図6を参照して説明する。なお、
図6、
図8、
図10、
図12において、車両用駆動装置1を収容するケースCs内において、油溜50に貯蔵された油ATFが油圧ポンプOPにより吸引されて、油供給部51から回転電機MG及び第一係合装置CL1に供給され、供給された油ATFが、回転電機MG及び第一係合装置CL1により加熱された後、油溜50に戻される構成を模式的に示している。
制御モード1では、蓄電装置BTからインバータINを介して回転電機MGに電気エネルギEinが供給される。電気エネルギEinの一部は電気損失熱Emgqになる。電気損失熱Emgqは回転電機MGに供給された油ATFにより冷却される。すなわち、油ATFは電気損失熱Emgqにより加熱される。次式に示すように、電気エネルギEinから電気損失熱Emgqを減算したエネルギが、回転電機MGの駆動エネルギEmgtrとなって回転軸(入力軸I及び中間軸M)に伝達される。なお、駆動エネルギは、トルクと回転速度とを乗算した値となる。
Emgtr=Ein−Emgq ・・・(10)
エンジンEの駆動エネルギEeの一部は、滑り係合状態に制御されている第一係合装置CL1を伝達する際に、係合部材間の摩擦熱Eclqとなる。摩擦熱Eclqは、第一係合装置CL1に供給された油ATFにより冷却される。すなわち、油ATFは摩擦熱Eclqにより加熱される。次式に示すように、エンジンEの駆動エネルギEeから摩擦熱Eclqを減算したエネルギが、第一係合装置CL1から回転電機MG側に伝達される駆動エネルギEcltrとなる。
Ecltr=Ee−Eclq ・・・(11)
そして、次式に示すように、回転電機MGの駆動エネルギEmgtrと第一係合装置CL1の駆動エネルギEcltrとの合計エネルギが、車両用駆動装置1の駆動エネルギEdrとなって、伝達状態とされた変速機構TMを介して車輪Wに伝達される。
Edr=Ecltr+Emgtr ・・・(12)
このように、昇温制御により、エンジンEの駆動エネルギEeの一部を第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqに変換して油ATFを加熱させるのに加えて、蓄電装置BTから供給された電気エネルギEinの一部を回転電機MGの電気損失熱Emgqに変化させて油ATFを加熱させることができる。
【0069】
3−4−5−2.制御モード2
上記のように、昇温制御部49は、変速機構TMが伝達状態であって、充放電判定部48が充電すると判定した場合は、制御モードを2に決定して、回転電機MGを正方向に回転させると共に回転電機MGにその回転逆方向(すなわち負方向)のトルクを出力させる。
また、本実施形態では、昇温制御部49は、回転電機MGの出力トルクTmgと第一係合装置CL1の伝達トルクTclとの合計トルクTdrが、車両要求トルクTrqに近づくように、エンジンEの出力トルクTe、第一係合装置CL1の伝達トルクTcl、及び回転電機MGの出力トルクTmgを制御するように構成されている。
また、昇温制御部49は、第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqが摩擦熱制限値Eclqmx以下になるように、第一係合装置CL1の伝達トルクTcl及び第一係合装置CL1の回転速度差Δωを制御するように構成されている。
【0070】
<制御モード2における昇温制御の構成例>
上記のような制御モード2における昇温制御を、以下で説明する例のように構成することができる。
まず、トルク制御について、
図7を参照して説明する。
昇温制御部49は、負方向のトルクとなる回転電機MGの出力トルクTmgを第一係合装置CL1の伝達トルクTclで補償して、車両要求トルクTrqを出力させる。
本例では昇温制御部49は、次式に示すように、車両要求トルクTrqに基づいて、回転電機要求トルクTmgrq、及び第一目標トルク容量Tclrqを決定するように構成されている。ここで、配分係数K2は、0より大きく1より小さい値に設定される。また、配分係数K2は、第一目標トルク容量Tclrqに基づいて設定される目標回転速度差Δωoが適切な値になるように、車両要求トルクTrqに応じて変化されるように構成されている。
Trq=Tmgrq+Tclrq
Tmgrq=Trq×(−K2)
Tclrq=Trq×(1+K2) ・・・(13)
0<K2<1
【0071】
制御モード1と同様に、昇温制御部49は、第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqが目標摩擦熱Eclqoになるように、式(7)に示したように、目標摩擦熱Eclqo及び第一目標トルク容量Tclrqに基づいて、第一係合装置CL1の目標回転速度差Δωoを決定するように構成されている。本例では、目標摩擦熱Eclqoは、摩擦熱制限値Eclqmxに設定されるように構成されている。
また、昇温制御部49は、式(8)に示したように、回転電機MGの回転速度ωmに、目標回転速度差Δωoを加算した値を、エンジンEの目標回転速度ωeoに設定するように構成されている。
そして、昇温制御部49は、エンジンEの回転速度ωeが目標回転速度ωeoに近づくように、エンジン要求トルクTerqを変化させる回転速度制御を行うように構成されている。
【0072】
次に、エネルギの収支について、
図8を参照して説明する。
制御モード1と同様に、エンジンEの駆動エネルギEeの一部は、滑り係合状態に制御されている第一係合装置CL1を伝達する際に、係合部材間の摩擦熱Eclqとなる。油ATFは摩擦熱Eclqにより加熱される。式(11)に示したように、エンジンEの駆動エネルギEeから摩擦熱Eclqを減算したエネルギが、第一係合装置CL1から回転電機MG側に伝達される駆動エネルギEcltrとなる。
【0073】
制御モード2では、第一係合装置CL1の駆動エネルギEcltrの一部が、回生のための回転電機MGの駆動エネルギEmgtrとなり奪われる。すなわち、次式に示すように、第一係合装置CL1の駆動エネルギEcltrから回転電機MGの駆動エネルギEmgtrを減算したエネルギが、車両用駆動装置1の駆動エネルギEdrとなって、伝達状態とされた変速機構TMを介して車輪Wに伝達される。
Edr=Ecltr−Emgtr ・・・(14)
【0074】
回転電機MGの駆動エネルギEmgtrの一部は電気損失熱Emgqになる。油ATFは電気損失熱Emgqにより加熱される。次式に示すように、回転電機MGの駆動エネルギEmgtrから電気損失熱Emgqを減算したエネルギが、電気エネルギEinとなってインバータINを介して蓄電装置BTに供給される。
Ein=Emgtr−Emgq ・・・(15)
このように、昇温制御により、エンジンEの駆動エネルギEeの一部を第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqに変換して油ATFを加熱させるのに加えて、蓄電装置BTに電気エネルギEinを供給する回生のための回転電機MGの駆動エネルギEmgtrの一部を、回転電機MGの電気損失熱Emgqに変化させて油ATFを加熱させることができる。
【0075】
3−4−5−3.制御モード3
上記のように、昇温制御部49は、変速機構TMが非伝達状態であって、充放電判定部48が放電すると判定した場合は、制御モードを3に決定して、回転電機MGを負方向に回転させると共に回転電機MGにその回転方向(すなわち負方向)のトルクを出力させる。
また、本実施形態では、昇温制御部49は、回転電機MGの出力トルクTmgと第一係合装置CL1の伝達トルクTclとの合計トルクTdrがゼロに近づくように、エンジンEの出力トルクTe、第一係合装置CL1の伝達トルクTcl、及び回転電機MGの出力トルクTmgを制御するように構成されている。
また、昇温制御部49は、第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqが摩擦熱制限値Eclqmx以下になるように、第一係合装置CL1の伝達トルクTcl及び第一係合装置CL1の回転速度差Δωを制御するように構成されている。
【0076】
<制御モード3における昇温制御の構成例>
上記のような制御モード3における昇温制御を、以下で説明する例のように構成することができる。
まず、トルク制御について、
図9を参照して説明する。
本例では、昇温制御部49は、制御モード3における、エンジンEの目標回転速度ωeo、回転電機MGの目標回転速度ωmo、及び第一係合装置CL1の目標回転速度差Δωoを決定するように構成されている。
エンジンEの目標回転速度ωeoは、アイドル回転速度のような自律運転可能な回転速度以上に設定される。回転電機MGの目標回転速度ωmoは、負方向の回転速度に設定される。第一係合装置CL1の目標回転速度差Δωoは、次式に示すように、エンジンEの目標回転速度ωeoと回転電機MGの目標回転速度ωmoとの偏差となる。
Δωo=ωeo−ωmo ・・・(16)
ωmo<0
【0077】
昇温制御部49は、第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqが目標摩擦熱Eclqoになるように、次式に示すように、目標摩擦熱Eclqo及び第一係合装置CL1の目標回転速度差Δωoに基づいて、第一係合装置CL1の第一目標トルク容量Tclrqを決定するように構成されている。本例では、目標摩擦熱Eclqoは、摩擦熱制限値Eclqmxに設定されるように構成されている。
Tclrq=Eclqo/Δωo
Eclqo=Eclqmx ・・・(17)
【0078】
本例では、昇温制御部49は、エンジンEの回転速度ωeが、その目標回転速度ωeoに近づくように、エンジン要求トルクTerqを変化させる回転速度制御を行うように構成されている。また、昇温制御部49は、回転電機MGの回転速度ωmが、その目標回転速度ωmoに近づくように、回転電機要求トルクTmgrqを変化させる回転速度制御を行う。
これらの回転速度制御の結果、少なくとも定常状態では、次式に示すように、第一係合装置CL1の伝達トルクTclが、回転電機MGの出力トルクTmgで打ち消され、合計トルクTdrがゼロになる。また、少なくとも定常状態では、エンジンEの出力トルクTeと第一係合装置CL1の伝達トルクTclとが一致する。
Tcl+Tmg=0
Tmg<0 ・・・(18)
Te=Tcl
【0079】
次に、エネルギの収支について、
図10を参照して説明する。
制御モード3では、制御モード1と同様に、蓄電装置BTからインバータINを介して回転電機MGに電気エネルギEinが供給される。電気エネルギEinの一部は電気損失熱Emgqになる。油ATFは電気損失熱Emgqにより加熱される。式(10)に示したように、電気エネルギEinから電気損失熱Emgqを減算したエネルギが、回転電機MGの駆動エネルギEmgtrとなって回転軸に伝達される。なお、回転電機MGは、負方向に回転しながら、負方向のトルクを出力しているので、駆動エネルギEmgtrは正の値、すなわち力行となる。
【0080】
第一係合装置CL1から回転電機MG側に伝達される伝達トルクTclは正の値であるが、回転電機MGの回転速度は負の値であるので、第一係合装置CL1から回転電機MG側に伝達される駆動エネルギは負の値になる。すなわち、回転電機MG側から第一係合装置CL1に駆動エネルギEcltrが伝達される。そして、次式に示すように、エンジンE側から第一係合装置CL1に伝達されるエンジンEの駆動エネルギEeと、回転電機MG側から第一係合装置CL1に伝達される駆動エネルギEcltrとの合計エネルギが、係合部材間の摩擦熱Eclqとなる。油ATFは摩擦熱Eclqにより加熱される。
Eclq=Ee+Ecltr ・・・(19)
また、次式に示すように、第一係合装置CL1に伝達する駆動エネルギEcltrと、回転電機MGの駆動エネルギEmgtrとは同じ大きさになるので、回転電機MGの駆動エネルギEmgtrは、第一係合装置CL1に伝達され、摩擦熱Eclqに変換される。
Ecltr=Emgtr ・・・(20)
【0081】
このように、昇温制御により、エンジンEの駆動エネルギEeに加えて、蓄電装置BTから供給された回転電機MGの駆動エネルギEmgtrを、第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqに変換して油ATFを加熱させることができる。更に、蓄電装置BTから供給された電気エネルギEinの損失である電気損失熱Emgqにより、油ATFを加熱させることができる。すなわち、蓄電装置BTから供給された電気エネルギEinを、摩擦熱Eclq又は電気損失熱Emgqのいずれかに変換して、油ATFの加熱に用いることができる。
【0082】
3−4−5−4.制御モード4
上記のように、昇温制御部49は、変速機構TMが非伝達状態であって、充放電判定部48が充電すると判定した場合は、制御モードを4に決定して、回転電機MGを正方向に回転させると共に回転電機MGにその回転逆方向(すなわち負方向)のトルクを出力させる。
また、本実施形態では、昇温制御部49は、回転電機MGの出力トルクTmgと第一係合装置CL1の伝達トルクTclとの合計トルクTdrがゼロに近づくように、エンジンEの出力トルクTe、第一係合装置CL1の伝達トルクTcl、及び回転電機MGの出力トルクTmgを制御するように構成されている。
また、昇温制御部49は、第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqが摩擦熱制限値Eclqmx以下になるように、第一係合装置CL1の伝達トルクTcl及び第一係合装置CL1の回転速度差Δωを制御するように構成されている。
【0083】
<制御モード4における昇温制御の構成例>
上記のような制御モード4における昇温制御を、以下で説明する例のように構成することができる。
まず、トルク制御について、
図11を参照して説明する。
本例では、昇温制御部49は、制御モード4における、エンジンEの目標回転速度ωeo、回転電機MGの目標回転速度ωmo、第一係合装置CL1の目標回転速度差Δωoを決定するように構成されている。
エンジンEの目標回転速度ωeoは、アイドル回転速度のような自律運転可能な回転速度以上に設定される。回転電機MGの目標回転速度ωmoは、エンジンEの目標回転速度ωeo未満の正の回転速度に設定される。第一係合装置CL1の目標回転速度差Δωoは、次式に示すように、エンジンEの目標回転速度ωeoと回転電機MGの目標回転速度ωmoとの偏差となる。
Δωo=ωeo−ωmo ・・・(21)
ωeo>ωmo>0
【0084】
昇温制御部49は、第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqが目標摩擦熱Eclqoになるように、式(17)に示すように、目標摩擦熱Eclqo及び第一係合装置CL1の目標回転速度差Δωoに基づいて、第一係合装置CL1の第一目標トルク容量Tclrqを決定するように構成されている。
【0085】
本例では、昇温制御部49は、エンジンEの回転速度ωeが、その目標回転速度ωeoに近づくように、エンジン要求トルクTerqを変化させる回転速度制御を行うように構成されている。また、昇温制御部49は、回転電機MGの回転速度ωmが、その目標回転速度ωmoに近づくように、回転電機要求トルクTmgrqを変化させる回転速度制御を行うように構成されている。
これらの回転速度制御の結果、少なくとも定常状態では、式(18)に示すように、第一係合装置CL1の伝達トルクTclが、回転電機MGの出力トルクTmgで打ち消され、合計トルクTdrがゼロになる。また、少なくとも定常状態では、エンジンEの出力トルクTeと第一係合装置CL1の伝達トルクTclとが一致する。
【0086】
次に、エネルギの収支について、
図12を参照して説明する。
エンジンEの駆動エネルギEeの一部は、滑り係合状態に制御されている第一係合装置CL1を伝達する際に、係合部材間の摩擦熱Eclqとなる。油ATFは摩擦熱Eclqにより加熱される。式(11)に示したように、エンジンEの駆動エネルギEeから摩擦熱Eclqを減算したエネルギが、第一係合装置CL1から回転電機MG側に伝達される駆動エネルギEcltrとなる。
制御モード4では、式(20)に示すように、第一係合装置CL1の駆動エネルギEcltrが、回生のための回転電機MGの駆動エネルギEmgtrとなり奪われる。
【0087】
回転電機MGの駆動エネルギEmgtrの一部は電気損失熱Emgqになる。油ATFは電気損失熱Emgqにより加熱される。式(15)に示すように、回転電機MGの駆動エネルギEmgtrから電気損失熱Emgqを減算したエネルギが、電気エネルギEinとなってインバータINを介して蓄電装置BTに供給される。
このように、昇温制御により、エンジンEの駆動エネルギEeの一部を第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqに変換して油ATFを加熱させるのに加えて、蓄電装置BTに電気エネルギEinを供給する回生のための回転電機MGの駆動エネルギEmgtrの一部を回転電機MGの電気損失熱Emgqに変化させて油ATFを加熱させることができる。
【0088】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0089】
(1)上記の実施形態においては、変速機構TMの複数の係合装置が、解放状態になることにより、変速機構TMが非伝達状態になる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、車両用駆動装置1は、回転電機MGと変速機構TMと間の動力伝達経路2に更に係合装置を備え、当該係合装置が、解放状態にされることにより、変速機構TMが非伝達状態になるように構成されてもよい。
【0090】
(2)上記の実施形態においては、変速機構TMは、有段の自動変速機構とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、変速機構TMは、中間軸Mの回転速度を、所定の変速比で、出力軸Oの回転速度に変速する変速機構であれば、いずれの変速機構であってもよく、例えば、無段の自動変速機構、手動変速機構、又は固定変速比の変速機構などとされてもよい。この場合でも、変速機構TMに備えられた係合装置、又は変速機構TMとは別に回転電機MGと車輪Wとの間の動力伝達経路2に備えられた係合装置が、係合状態又は解放状態にされることにより、変速機構TMが伝達状態又は非伝達状態になるように構成されてもよい。
【0091】
(3)上記の実施形態において、制御装置30は、複数の制御ユニット32〜34を備え、これら複数の制御ユニット32〜34が分担して複数の機能部41〜49を備える場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、制御装置30は、上述した複数の制御ユニット32〜34を任意の組み合わせで統合又は分割した制御装置として備えるようにしてもよく、複数の機能部41〜49の分担も任意に設定することができる。
【0092】
(4)上記の実施形態において、充電判定しきい値が、放電判定しきい値より低い値に設定され、ヒステリシス特性が設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、充電判定しきい値が、放電判定しきい値より高い値に設定されてもよく、充放電判定部48は、充電量が、放電判定しきい値以下になった場合に、放電すると判定し、充電量が、充電判定しきい値以上になった場合に、充電すると判定するように構成されてもよい。
【0093】
(5)上記の実施形態において、第一係合装置CL1の摩擦熱Eclqが摩擦熱制限値Eclqmxになるように、第一係合装置CL1の伝達トルクTcl及び第一係合装置CL1の回転速度差Δωが制御されるように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、昇温制御部49は、制御モードを1に決定している場合は、摩擦熱制限値Eclqmx以下の範囲内で、車両要求トルクTrqに応じて、目標摩擦熱Eclqoを設定するように構成されてもよい。上記の実施形態において、制御モード1では、車両要求トルクTrqがゼロに近づくにつれ、第一係合装置CL1の伝達トルクTclをゼロに近づける必要があり、目標摩擦熱Eclqoが摩擦熱制限値Eclqmxに設定されている場合は、式(7)から目標回転速度差Δωoが大きくなる。このため、
図14に示すように、目標摩擦熱Eclqoは、車両要求トルクTrqがゼロに近づくにつれゼロに近づくように設定される。