(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物を含有する液体成分(A)と充填剤を含有する粉体成分(B)とを混合し、前記液体成分(A)と前記粉体成分(B)とのペースト状混合物を得る混合工程と、
前記混合工程の後、前記ペースト状混合物中の残存水分の少なくとも一部を除去する脱水工程と、
1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(C)と、前記脱水工程後の前記ペースト状混合物とを混合し、前記ポリイソシアネート化合物(C)と前記ペースト状混合物中の前記ポリオール化合物との反応により生成するウレタンプレポリマーを含む混合物を得るプレポリマー生成工程と、
前記混合物と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物(D)とを混合し、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を得る組成物生成工程と、
を備える1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法。
前記組成物生成工程において、更に、前記1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の湿気硬化を誘導するための硬化触媒を添加する、請求項1または2に記載の1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法。
前記プレポリマー生成工程において、前記ポリイソシアネート化合物(C)と、前記混合工程により得られた前記ペースト状混合物とを、この順に添加し、混合する、請求項1〜3のいずれかに記載の1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法。
前記プレポリマー生成工程において、前記ポリイソシアネート化合物(C)と、前記混合工程により得られた前記ペースト状混合物とを混合した後に、更に、前記ウレタンプレポリマーの生成反応を促進する金属触媒を混合する、請求項1〜4のいずれかに記載の1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法。
前記脂肪族イソシアネート化合物(D)が、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応生成物、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、および、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載の1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」という。)は、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物を含有する液体成分(A)と充填剤を含有する粉体成分(B)とを混合し、上記液体成分(A)と上記粉体成分(B)とのペースト状混合物を得る混合工程と、上記混合工程の後、上記ペースト状混合物中の残存水分の少なくとも一部を除去する脱水工程と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(C)と、上記脱水工程後の上記ペースト状混合物とを混合し、上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記ペースト状混合物中の上記ポリオール化合物との反応により生成するウレタンプレポリマーを含む混合物を得るプレポリマー生成工程と、上記混合物と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物(D)とを混合し、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を得る組成物生成工程と、を備える1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法である。
【0010】
本発明の製造方法によれば、上記プレポリマー生成工程と上記組成物生成工程とを別々に設けて、上記ウレタンプレポリマーを生成させた後に、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)を後添加することで、上記ウレタンプレポリマーと上記脂肪族イソシアネート化合物(D)とを共存させた1液湿気硬化型ポリウレタン組成物が得られる。
このようにして得られた1液湿気硬化型ポリウレタン組成物は、自動車ボデーを構成する塗装鋼板等に対する接着性に優れる。これは、上記ウレタンプレポリマーの骨格に必要なイソシアネート種(上記ポリイソシアネート化合物(C))とは別に、接着に寄与するイソシアネート種(上記脂肪族イソシアネート化合物(D))が存在することで、接着性が良好になるものと考えられる。
このような効果は、後述[実施例]において、上記プレポリマー生成工程で、上記ポリイソシアネート化合物(C)と同時に、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)を添加して得られた組成物の接着性が不十分であることによっても裏付けられる(比較例2〜4参照)。この場合、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)は、ウレタンプレポリマーと一体になっており、共存した状態ではないものと考えられる。
【0011】
以下、本発明の製造方法の各成分および各工程について、詳述する。
【0012】
<液体成分(A)>
上記液体成分(A)は、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物を含有する成分であれば特に限定されず、該ポリオール化合物のみ含有するものであってもよく、該ポリオール化合物以外に、例えば、可塑剤等を含有するものであってもよい。
ここで、後述する混合工程の混合時の温度で液体となる観点、および、ウレタンプレポリマー生成時の粘度の観点から、液体成分(A)中のポリオール化合物の融点が80℃以下であるのが好ましく、60℃以下であるのがより好ましい。
【0013】
上記ポリオール化合物は、ヒドロキシ基(OH基)を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、その具体例としては、低分子多価アルコール類、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオール等が挙げられる。
【0014】
低分子多価アルコール類としては、具体的には、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール、(1,3−または1,4−)ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,5−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどの低分子ポリオール;ソルビトールなどの糖類;等が挙げられる。
【0015】
次に、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールとしては、通常、上記低分子多価アルコール類から導かれるものが用いられるが、本発明においては、更に以下に示す芳香族ジオール類、アミン類、アルカノールアミン類から導かれるものも好適に用いることができる。
ここで、芳香族ジオール類としては、具体的には、例えば、レゾルシン(m−ジヒドロキシベンゼン)、キシリレングリコール、1,4−ベンゼンジメタノール、スチレングリコール、4,4′−ジヒドロキシエチルフェノール;下記に示すようなビスフェノールA構造(4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン)、ビスフェノールF構造(4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン)、臭素化ビスフェノールA構造、水添ビスフェノールA構造、ビスフェノールS構造、ビスフェノールAF構造のビスフェノール骨格を有するもの;等が挙げられる。
【0017】
また、アミン類としては、具体的には、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられ、アルカノールアミン類としては、具体的には、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン等が挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、上記低分子多価アルコール類、上記芳香族ジオール類、上記アミン類および上記アルカノールアミン類として例示した化合物から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド(テトラメチレンオキサイド)、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキサイドおよびスチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール等が挙げられる。
このようなポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
【0019】
同様に、ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記低分子多価アルコール類、上記芳香族ジオール類、上記アミン類および上記アルカノールアミン類のいずれかと、多塩基性カルボン酸との縮合物(縮合系ポリエステルポリオール);ラクトン系ポリオール;ポリカーボネートポリオール;等が挙げられる。
ここで、上記縮合系ポリエステルポリオールを形成する多塩基性カルボン酸としては、具体的には、例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、ピロメリット酸、他の低分子カルボン酸、オリゴマー酸、ヒマシ油、ヒマシ油とエチレングリコール(もしくはプロピレングリコール)との反応生成物などのヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
また、上記ラクトン系ポリオールとしては、具体的には、例えば、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン等のラクトンを適当な重合開始剤で開環重合させたもので両末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0020】
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、アクリルポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオールなどの炭素−炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオール;等が挙げられる。
【0021】
本発明においては、以上で例示した種々のポリオール化合物を1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、ポリプロピレングリコールであるのが、液体成分(A)を含有する1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の硬度と破断伸びのバランスおよびコストのバランスに優れる理由から好ましい。
また、重量平均分子量が100〜10000程度であるポリオールが好ましく、1000〜5000であるポリオールがより好ましい。重量平均分子量がこの範囲であると、後述するポリイソシアネート化合物(C)との反応によって生成するウレタンプレポリマーの物性(例えば、硬度、破断強度、破断伸び)および粘度が良好となる。
【0022】
上記可塑剤としては、具体的には、例えば、アジピン酸ジイソノニル(DINA);フタル酸ジイソノニル(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジイソノニル(DINP)を用いるのが、コストや相溶性に優れる理由から好ましい。
【0023】
なお、上記液体成分(A)が上記可塑剤を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物(C)との合計100質量部に対して、20〜80質量部が好ましく、30〜70質量部がより好ましい。
【0024】
<粉体成分(B)>
上記粉体成分(B)は、充填剤を含有する成分であれば特に限定されず、該充填剤のみ含有するものであってもよく、該充填剤以外に、例えば、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を含有するものであってもよい。
【0025】
上記充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、カーボンブラック、重質炭酸カルシウムであるのが、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の粘度やチクソ性を調製しやすくなる理由から好ましく、具体的には、カーボンブラックを用いた場合には物性(例えば、硬度、伸び等)に優れ、重質炭酸カルシウムを用いた場合には深部硬化性に優れる。
また、ペレットカーボンブラックであるのが、作業性が良好となるのみならず、後述するように、上記液体成分(A)との混合工程において、カーボンブラックのみならず、上記液体成分(A)の脱水がより促進する理由から好ましい。
【0026】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
【0027】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩などの無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラックなどの有機顔料;等が挙げられる。
【0028】
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、エアロジル(日本エアロジル社製)、ディスパロン(楠本化成社製)等が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0029】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、具体的には、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
【0030】
なお、上記粉体成分(B)の配合量は、特に限定されないが、上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物(C)との合計100質量部に対して、50〜150質量部が好ましく、70〜130質量部がより好ましい。
【0031】
<ポリイソシアネート化合物(C)>
上記ポリイソシアネート化合物(C)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;これらのポリイソシアネート化合物のカルボジイミド変性ポリイソシアネート、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、上記ポリイソシアネート化合物(C)としては、生成するウレタンプレポリマーが、後述する脂肪族イソシアネート化合物(D)と混ざり合いにくくなり、互いに共存しやすくなることで、接着性がより良好になるという理由から、芳香族ポリイソシアネートであるのが好ましく、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)であるのがより好ましい。
【0032】
なお、上記ポリイソシアネート化合物(C)の配合量は、特に限定されないが、例えば、上記ポリイソシアネート化合物(C)のイソシアネート基(NCO)と上記ポリオール化合物のヒドロキシ基(OH)との当量比が、例えば、1.1〜2.5となる量が好ましい。
【0033】
<脂肪族イソシアネート化合物(D)>
上記脂肪族イソシアネート化合物(D)としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物であれば特に限定されず、例えば、上記ポリイソシアネート化合物(C)の例として記載した脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
即ち、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
また、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)としては、上記脂肪族ポリイソシアネートのほか、例えば、上記脂肪族ポリイソシアネートとトリオールとの反応生成物;上記脂肪族ポリイソシアネートのビウレット体、イソシアヌレート体などの変性体;等であってもよく、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ここで、上記トリオールとしては、1分子中に3個のヒドロキシ基を有するものであれば特に限定されないが、例えば、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−プロパントリオール、1,2,3−ベンゼントリオール、1,2,4−ベンゼントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
このような上記脂肪族イソシアネート化合物(D)としては、接着性の効果がより優れるという理由から、HDIとトリメチロールプロパンとの反応生成物、HDIのビウレット体、および、HDIのイソシアヌレート体からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0035】
なお、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)の配合量は、特に限定されないが、接着性の効果がより優れるという理由から、上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物(C)との合計100質量部に対して、0.5〜15質量部が好ましく、2〜10質量部がより好ましい。
【0036】
[混合工程]
本発明の製造方法における混合工程は、上記液体成分(A)と上記粉体成分(B)とを混合し、上記液体成分(A)と上記粉体成分(B)とのペースト状混合物を得る工程である。
ここで、上記液体成分(A)と上記粉体成分(B)とを混合する方法は、従来公知の混合方法であれば特に限定されず、具体的には、ロール、ニーダー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、横型ミキサー(例えば、レーディゲミキサー等)、縦型ミキサー(例えば、プラネタリーミキサー等)、万能かくはん機等を用いて混合する方法が好適に例示される。
また、混合時の温度、時間は、上記液体成分(A)および上記粉体成分(B)の種類により異なるため特に限定されないが、20〜110℃程度、30分〜2時間であるのが好ましい。なお、上記液体成分(A)は混合工程の混合時の温度で液体となる必要があるから、例えば、混合時の温度が100℃である場合は、その温度より低い融点のポリオール化合物を含有する液体成分(A)を用いる必要がある。
【0037】
本発明においては、このような混合工程を具備することにより、上記液体成分(A)および上記粉体成分(B)中の水分の一部を除去することができる。
これは、上記液体成分(A)と上記粉体成分(B)との混合時に、トルエン等の溶剤が存在しないため上記粉体成分(B)が潰れやすく、その際に生じる圧力や発熱によって水分を除去することができると考えられる。
【0038】
また、本発明においては、上記粉体成分(B)としてペレットカーボンブラックを用いた場合、上記混合工程は、上記液体成分(A)とペレットカーボンブラックとを、ペレットカーボンブラックを粉砕しながら混合するのが好ましい。
これは、ペレットカーボンブラックの粉砕により、上述した圧力や発熱が増大し、上記液体成分(A)とペレットカーボンブラックの脱水がより促進するためである。
ここで、粉砕しながら混合する方法としては、上記で例示した混合方法のうち、混合時にペレットカーボンブラックに圧力が加わった状態で混合することができる横型ミキサー(例えば、レーディゲミキサー等)等を用いて混合する方法が好適に例示される。
【0039】
[脱水工程]
本発明の製造方法における脱水工程は、上記ペースト状混合物中の残存水分の少なくとも一部を除去する工程である。
ここで、残存水分を除去する方法としては、具体的には、例えば、30〜60℃下、真空(1.2kPa以下、好ましくは0.6〜1.2kPa)下で30分間以上乾燥する方法が挙げられる。
このような簡便な方法により残存水分を除去できるのは、混合物がペースト状であるためであり、また、上述したように、上記混合工程によっても粉体成分が潰れる際の圧力や発熱によって意外にも水分の一部を除去することができているためである。
【0040】
また、本発明者らは、上記ペースト状混合物中の脱水(乾燥)が不十分であると、後述する組成物生成工程で添加される上記脂肪族イソシアネート化合物(D)の存在に影響を与え、得られる組成物の接着性が低下する場合があることを見出した。
そのため、上記ペースト状混合物中を十分に脱水して接着性をより良好にするという観点から、30〜60℃下、1.2kPa以下で乾燥する場合においては、乾燥時間は、30〜180分であるのが好ましく、60〜150分であるのがより好ましい。
【0041】
また、同様の観点から、上記脱水工程においては、上記方法によって、上記ペースト状混合物の水分量を、0.050質量%以下にするのが好ましく、0.025質量%以下にするのがより好ましく、0.015質量%以下にするのがさらに好ましい。
なお、上記ペースト状混合物の水分量は、カールフィッシャー法によって測定される。具体的には、電量滴定法に従い、カールフィッシャー試薬としてヨウ化物イオン・二酸化硫黄・アルコールを主成分とする電解液(商品名 アクアミクロンCXU、エーピーアイコーポレーション社製)を用い、水分測定装置(三菱化学社製)を用いて測定できる。
【0042】
[プレポリマー生成工程]
本発明の製造方法におけるプレポリマー生成工程は、上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記脱水工程後の上記ペースト状混合物とを混合し、上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記ペースト状混合物中の上記ポリオール化合物との反応により生成するウレタンプレポリマーを含む混合物を得る工程である。
上記混合物は、上記ウレタンプレポリマーのほか、少なくとも、上記ペースト状混合物に由来する上記粉体(B)を含む。
【0043】
ここで、上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記ペースト状混合物とを混合する方法は、上記混合工程における混合方法と同様の方法が好適に例示される。
また、混合時の温度、雰囲気は、上記ペースト状混合物中のポリオール化合物や上記ポリイソシアネート化合物(C)の種類により異なるため特に限定されないが、ウレタンプレポリマーを生成する観点から、上記ポリイソシアネート化合物(C)の融点以上の温度で混合されるのが好ましく、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下または減圧下で混合されるのが好ましい。
【0044】
本発明においては、このようなプレポリマー生成工程を具備することにより、ウレタンプレポリマーのプレポリマー化に伴う増粘によって上記ペースト状混合物中の粉体成分(B)が潰れ、分散性が良好となり、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物のチクソ性が良好となる。
【0045】
また、本発明においては、上記プレポリマー生成工程は、上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記ペースト状混合物とを、この順に添加して混合するのが以下に示す理由から好ましい。
即ち、この順で添加することにより、ポリイソシアネート化合物(C)中にポリオール化合物が添加されることになるため、安定したウレタンプレポリマーの反応が起こり、分子量が均一なウレタンプレポリマーが生成する。
一方、本発明においては、上記プレポリマー生成工程は、上記ペースト状混合物と上記ポリイソシアネート化合物(C)とを、この順に添加して混合するのが以下に示す理由から好ましい。
即ち、この順で添加することにより、例えば、上記ペースト状混合物を得るために上記混合工程で使用した横型ミキサー内に、上記ポリイソシアネート化合物(C)をそのまま添加し、上記プレポリマー生成工程を施すことができるため、作業性が良好になる。
【0046】
本発明においては、上記プレポリマー生成工程において、上記ポリイソシアネート化合物(C)と、上記ペースト状混合物とを混合した後に、更に、上記ウレタンプレポリマーの生成反応を促進する金属触媒を混合するのが好ましい。
これにより、生成するウレタンプレポリマーの粘度を良好に維持できる。これは、粉体成分(B)の存在下に金属触媒が添加されることにより、ウレタンプレポリマーの急激な生成反応が起きないため、粘度を良好に維持できるためと考えられる。
このような金属触媒としては、有機金属系触媒が挙げられ、具体的には、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ラウレート(DOTL)、ジオクチル錫ジラウレート、ビスマス系触媒(例えば、日東化成社製の無機ビスマス(ネオスタンU−600、U−660)等)が挙げられる。
【0047】
上記金属触媒を用いる場合、その配合量は、上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物(C)との合計100質量部に対して、0.001〜0.02質量部が好ましく、0.002〜0.01質量部がより好ましい。
【0048】
なお、上記プレポリマー生成工程において、上記ウレタンプレポリマーの生成率は、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)が上記ウレタンプレポリマーとより混ざり合いにくくなり、接着性がより良好になるという理由から、高い方が好ましく、少なくとも80%にするのが好ましい。
このとき、上記ウレタンプレポリマーの生成率は、塩酸逆滴定法で測定される上記混合物中のNCO%から求めることができる。
【0049】
[組成物生成工程]
本発明の製造方法における組成物生成工程は、上記混合物と上記脂肪族イソシアネート化合物(D)とを混合し、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を得る工程である。
得られる1液湿気硬化型ポリウレタン組成物は、少なくとも、上記粉体(B)、上記ウレタンプレポリマー、および、上記脂肪族イソシアネート(D)を含む。
【0050】
ここで、上記混合物と上記脂肪族イソシアネート化合物(D)とを混合する方法は、上記混合工程における混合方法と同様の方法が好適に例示される。
また、混合時の温度、雰囲気は、特に限定されないが、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)の融点以上の温度で混合されるのが好ましく、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下または減圧下で混合されるのが好ましい。
【0051】
本発明においては、上記プレポリマー生成工程で上記ウレタンプレポリマーを生成させた後に、上記組成物生成工程で上記脂肪族イソシアネート化合物(D)を後添加することで、上記ウレタンプレポリマーと上記脂肪族イソシアネート化合物(D)とを共存させた1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を得ることができ、この組成物は、塗装鋼板等に対する接着性が優れる。
【0052】
また、上記組成物生成工程においては、更に、得られる1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の湿気硬化を誘導するための硬化触媒を添加するのが好ましい。これにより、接着性の効果がより優れる。
このような硬化触媒としては、湿気硬化を誘導するものであれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、具体的には、例えば、上記プレポリマー生成工程で用いられる金属触媒の例として記載した有機金属系触媒が挙げられる。
【0053】
上記硬化触媒を用いる場合、その配合量は、上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記脂肪族イソシアネート化合物(D)との合計100質量部に対して、0.001〜0.05質量部が好ましく、0.002〜0.03質量部がより好ましい。
【0054】
以上説明したように、本発明の製造方法によって得られる1液湿気硬化型ポリウレタン組成物は、接着性に優れるから、例えば自動車用、建築用などの接着剤用途として好適である。
とりわけ、該組成物は、塗装鋼板に対する接着性が良好であるから、従来、自動車のウィンドウガラスをボデー(塗装鋼板)に取り付ける際に塗装鋼板と接着剤との界面に使用されていたプライマーの使用を回避することができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を用いて、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
<実施例1〜7>
(混合工程)
まず、レーディゲミキサー(マツボー社製)に、ポリオール化合物1および2ならびに可塑剤を液体成分(A)として添加し、その後、カーボンブラックおよび炭酸カルシウムを粉体成分(B)として添加し、110℃、2時間かくはんしてペースト状混合物を調製した。なお、添加量(配合量)は、下記第1表に示すとおりである(以下同様)。
【0057】
(脱水工程)
次に、ペースト状混合物が入ったレーディゲミキサー内を30〜60℃、1.2kPa以下にして、下記第1表に示す時間(単位:分)乾燥した。乾燥後のペースト状混合物の水分量(単位:質量%)を測定した。結果を下記第1表に示す。
【0058】
(プレポリマー生成工程)
次に、プラネタリーミキサーに、MDIをポリイソシアネート化合物(C)として添加し、更に上記乾燥後のペースト状混合物を添加した後に、金属触媒を添加して、60℃、1時間かくはんして、MDIと該ペースト状混合物中のポリオール化合物1および2との反応によりウレタンプレポリマーを生成させた。
【0059】
(組成物生成工程)
次に、ウレタンプレポリマーを生成させたプラネタリーミキサーに、下記第1表に示す脂肪族イソシアネート化合物(D)を添加し、更に硬化触媒を添加して、60℃、10分間かくはんして、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)を調製した。
【0060】
<比較例1>
組成物生成工程において、脂肪族イソシアネート化合物(D)に代えて、芳香族イソシアネート化合物を添加した以外は、実施例1〜7と同様にして、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を調製した。
なお、芳香族イソシアネート化合物は、脂肪族イソシアネート化合物(D)ではないが、下記第1表では、便宜上、一括して「(D)添加工程」と記載している。
【0061】
<比較例2〜4>
プレポリマー生成工程において、ポリイソシアネート化合物(C)を添加する同時に、脂肪族イソシアネート化合物(D)を添加混合してウレタンプレポリマーを生成させ、組成物生成工程においては硬化触媒のみを添加した。それ以外は、実施例1〜7と同様にして、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を調製した。
【0062】
<比較例5>
組成物生成工程において、脂肪族イソシアネート化合物(D)を添加せずに、硬化触媒のみを添加した。それ以外は、実施例1〜7と同様にして、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を調製した。
なお、比較例5では、脂肪族イソシアネート化合物(D)を添加しなかったため、下記第1表の「(D)添加工程」には「−」を記載した。
【0063】
<接着性>
実施例1〜7および比較例1〜5の組成物を、塗料が塗布された塗装鋼板上に塗布し、20℃、60%RH(±5%)の雰囲気下で24時間放置して、試験片を得た。得られた試験片を用いて、ナイフカットによる手剥離試験を実施した。
手剥離試験の結果、組成物の全体が凝集破壊して界面剥離しなかったものを接着性に優れるものとして「◎」と評価し、塗布面積の20%未満が界面剥離して残りが凝集破壊したものを接着性にやや優れるものとして「○」と評価し、塗布面積の20%以上50%未満が界面剥離したものを接着性にやや劣るものとして「△」と評価し、塗布面積の50%以上が界面剥離したものを「×」とした。結果を下記第1表に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
上記第1表に示す各成分は、以下のとおりである。
・ポリオール化合物1:2官能ポリプロピレングリコール(EXCENOL 2020、旭硝子社製)
・ポリオール化合物2:3官能ポリプロピレングリコール(EXCENOL 5030、旭硝子社製)
・可塑剤:フタル酸ジイソノニル(ジェイ・プラス社製)
・カーボンブラック:カーボンブラック1(ニテロン ♯200、新日化カーボン社製)とカーボンブラック2(ニテロン ♯300、新日化カーボン社製)との混合物(質量比=75/25)
・炭酸カルシウム:重質炭酸カルシウム(スーパーS、丸尾カルシウム社製)
【0066】
・MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート(コスモネートPH、三井化学社製)
・金属触媒:ビスマス系触媒(ネオスタンU−600、日東化成社製)
・HDIビウレット体:ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(タケネートD−165N、三井化学社製)
・HDI TMPアダクト体:ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応生成物(タケネートD−160N、三井化学社製)
・HDIイソシアヌレート体:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(タケネートD−170N、三井化学社製)
・HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(デュラネート50M−HDI、旭化成社製)
・芳香族イソシアネート化合物:ジフェニルメタンジイソシアネート(コスモネートPH、三井化学社製)
・硬化触媒:スズ系触媒(ネオスタンU−810、日東化成社製)
【0067】
上記第1表に示す結果から明らかなように、ウレタンプレポリマーを生成させた後に脂肪族イソシアネート化合物(D)を添加混合して得られた実施例1〜7の組成物は、塗装鋼板に対する接着性が良好であることが分かった。
これに対して、脂肪族イソシアネート化合物(D)に代えて芳香族イソシアネート化合物を添加した比較例1の組成物は、接着性が劣っていた。
また、ウレタンプレポリマーを生成させる工程で、ポリイソシアネート化合物(C)と同時に脂肪族イソシアネート化合物(D)を添加した比較例2〜4の組成物も、接着性が劣っていた。
また、脂肪族イソシアネート化合物(D)を後添加しなかった比較例5は、比較例1〜4よりも接着性が劣っていた。