(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材、及び(D)炭素数5〜80の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物を、一般式(1)で示される化合物の存在下で、炭素数5〜25のアルコールでエステル化した化合物を含む。これにより、酸化が進行した銅製リードフレームに対する接着性、及び成形時の離型性、連続成形性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。本発明の半導体装置は、上述の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で、素子が封止されていることを特徴とする。これにより、信頼性に優れた半導体装置を得ることができる。以下、本発明について詳細に説明する。
【0026】
先ず、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物について説明する。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物において用いられる(A)成分のエポキシ樹脂は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているもので特に制限はないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールA/D等のジグリシジルエーテル、アルキル置換又は無置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂のエポキシ化物、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノ−ル類の共縮合樹脂のエポキシ化物であるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、1−アルケン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、及びこれらのエポキシ樹脂をシリコーン、アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン系ゴム、ポリアミド系樹脂等により変性したエポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
中でも、酸化が進行した銅製リードフレームに対する接着性の観点から一般式(5)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂、一般式(6)で示されるフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、及び一般式(7)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。
(一般式(5)において、R
4〜R
7は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、および炭素数6〜10のアラルキル基からなる群より選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよく、nは0〜3の整数を示す。)
(一般式(6)において、R
8〜R
10は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、および炭素数6〜10のアラルキル基からなる群より選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよく、nは0〜20の整数を示す。)
(一般式(7)において、R
11〜R
19は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、および炭素数6〜10のアラルキル基からなる群より選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよく、nは0〜3の整数を示す。)
【0028】
一般式(5)中のR
4〜R
7は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、および炭素数6〜10のアラルキル基からなる群から選ばれる。炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。炭素数6〜10のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。上記置換基は、水素原子がハロゲン、水酸基、アミノ基、シアノ基等で置換されていてもよい。上記置換基の中でも、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0029】
一般式(5)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂としては、4,4'−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル又は4,4'−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3',5,5'−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと4,4'−ビフェノール又は4,4'−(3,3',5,5'−テトラメチル)ビフェノールとを反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられ、中でも、4,4'−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3',5,5'−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂がより好ましく、例えば、YX−4000K、YX−4000H(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。このビフェニル型エポキシ樹脂を使用する場合、酸化が進行した銅製リードフレームに対する接着性が向上する。その配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量に対して20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
【0030】
一般式(6)中のR
8〜R
10は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、および炭素数6〜10のアラルキル基からなる群から選ばれる。炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。炭素数6〜10のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。上記置換基は、水素原子がハロゲン、水酸基、アミノ基、シアノ基等で置換されていてもよい。上記置換基の中でも水素原子又はメチル基が好ましい。
【0031】
一般式(6)で示されるフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂としては、n=0を主成分とするエポキシ樹脂がより好ましく、例えば、NC2000(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。このフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂を使用する場合、架橋点間距離が広がるため、硬化物の弾性率を低減できる。その配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量に対して10質量%以上とすることが好ましく、20質量%以上がより好ましい。
【0032】
一般式(7)中のR
11〜R
19は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、および炭素数6〜10のアラルキル基からなる群から選ばれる。炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。炭素数6〜10のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。上記置換基は、水素原子がハロゲン、水酸基、アミノ基、シアノ基等で置換されていてもよい。上記置換基の中でも水素原子又はメチル基が好ましい。
【0033】
一般式(7)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂としては、n=0を主成分とするエポキシ樹脂がより好ましく、例えば、NC−3000L(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。このビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂を使用する場合、架橋点間距離が広がるため、硬化物の弾性率を低減できる。その配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量に対して10質量%以上とすることが好ましく、20質量%以上がより好ましい。
【0034】
一般式(5)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂、一般式(6)で示されるフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、及び一般式(7)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合には、それらの配合量はエポキシ樹脂全量に対して合計で50質量%以上とすることが好ましく、70質量%以上とすることがより好ましい。
【0035】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いられる(A)成分のエポキシ樹脂全体の配合割合としては、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中に、1質量%以上、15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上、10質量%以下であることがより好ましい。(A)成分のエポキシ樹脂全体の配合割合が上記下限値以上であると、流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。(A)成分のエポキシ樹脂全体の配合割合が上記上限値以下であると、耐半田性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0036】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物において用いられる(B)成分の硬化剤は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているもので特に制限はないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
中でも、流動性、低吸湿性の観点から、一般式(8)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂が好ましい。
(一般式(8)において、R
20〜R
28は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、および炭素数6〜10のアラルキル基からなる群から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、nは0〜10の整数を示す。)
【0038】
上記一般式(8)中のR
20〜R
28は全てが同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、および炭素数6〜10のアラルキル基からなる群から選ばれる。炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。炭素数6〜10のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。上記置換基は、水素原子がハロゲン、水酸基、アミノ基、シアノ基等で置換されていてもよい。上記置換基の中でも、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0039】
一般式(8)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂としては、例えば、R
20〜R
28が全て水素原子である化合物等が挙げられ、中でも溶融粘度の観点から、nが0の成分を50質量%以上含む縮合体の混合物が好ましい。このような化合物としては、MEH−7851SS(明和化成株式会社製商品名)が市販品として入手可能である。このビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂を使用する場合、その配合量は、その性能を発揮するために硬化剤全量に対して50質量%以上とすることが好ましく、70質量%以上がより好ましい。
【0040】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いられる(B)成分の硬化剤の配合割合は、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中に、0.5質量%以上、12質量%以下であることが好ましく、1質量%以上、9質量%以下であることがより好ましい。(B)成分の硬化剤の配合割合が上記下限値以上であると、流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。(B)成分の硬化剤の配合割合が上記上限値以下であると、耐半田性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0041】
(A)成分のエポキシ樹脂と(B)成分の硬化剤との当量比、すなわち、エポキシ樹脂中のエポキシ基数/硬化剤中の水酸基数の比は、特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために0.5〜2の範囲に設定されることが好ましく、0.6〜1.5の範囲に設定されることがより好ましい。また、成形性、耐リフロー性に優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得るためには0.8〜1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0042】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物において用いられる(C)成分の無機充填材は、吸湿性低減、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び強度向上のために半導体封止用エポキシ樹脂組成物に配合されるものであり、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填材としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。これらの無機充填材は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の無機充填材の中で、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましく、充填材形状は成形時の流動性及び金型摩耗性の点から球形が好ましい。
【0043】
無機充填材(C)の配合量は、成形性、吸湿性、線膨張係数の低減及び強度向上の観点から、半導体封止用エポキシ樹脂組成物に対して80質量%以上、96質量%以下の範囲が好ましく、82質量%以上、92質量%以下の範囲がより好ましく、86質量%以上、90質量%以下の範囲がさらに好ましい。下限値未満では信頼性が低下する傾向があり、上限値を超えると成形性が低下する傾向がある。
【0044】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、離型剤として、(D)炭素数5〜80の1−アルケンと無水マレイン酸の共重合体を、一般式(1)で示される化合物の存在下で、炭素数5〜25のアルコールを用いてエステル化した化合物を含む。特に(D)成分を全離型剤中に55〜100質量%含有することがより好ましい。(D)成分の化合物は、(A)成分のエポキシ樹脂中での分散性が高く、酸化が進行した銅に対する接着力と離型性とのバランスに優れる。
(一般式(1)において、R
1は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、および炭素数6〜10の芳香族基からなる群から選ばれる。)
【0045】
本発明において、酸化が進行した銅に対する接着力と離型性とのバランスを向上させるためには、1−アルケンと無水マレイン酸の共重合物をアルコールでエステル化する際の触媒として、一般式(1)で示される化合物を使用することが重要である。触媒として一般式(1)で示される化合物を用いることにより、従来の方法である触媒を用いない場合や他の触媒を用いた場合等と比較して、1−アルケンと無水マレイン酸の共重合物をアルコールでエステル化する際のエステル化が効率よく進行するため、未反応アルコールの残留が少なく、生成した(D)成分をエポキシ樹脂組成物に配合した場合に、酸化が進行した銅に対する接着力と離型性とのバランスを優れたものとすることができ、かつ連続成形性を向上させることができる。
【0046】
一般式(1)中のR
1は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、および炭素数6〜10の芳香族基からなる群から選ばれる。炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2−ブロモエチル基等が挙げられる。炭素数6〜10の芳香族基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。これらの芳香族基の水素原子はハロゲン、水酸基、アミノ基、シアノ基等で置換されていてもよい。このような置換基を有する芳香族基としては、トリル基のメチル基の水素原子がフッ素に置換したトリフルオロメチルフェニル基、フェニル基の水素がフッ素に置換したペンタフルオロフェニル基、ヒドロキシフェニル基、シアノフェニル基、アミノフェニル基等が挙げられる。
【0047】
一般式(1)で示される化合物としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、m−キシレン−4−スルホン酸、p−キシレン−2−スルホン酸、メシチレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−(2−ブロモエチル)べンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。中でも、トリフルオロメタンスルホン酸および一般式(3)で示される化合物がより好ましい。
(一般式(3)において、R
3は、炭素数1〜5のアルキル基、および炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基から選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよく、aは0〜5の整数である。)
【0048】
一般式(3)中のaは0〜5の整数であり、R
3は、炭素数1〜5のアルキル基、および炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基から選ばれる。炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられ、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2−ブロモエチル基等が挙げられる。
【0049】
一般式(3)で示される化合物としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、m−キシレン−4−スルホン酸、p−キシレン−2−スルホン酸、メシチレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−(2−ブロモエチル)べンゼンスルホン酸等が挙げられる。中でも、p−トルエンスルホン酸が特に好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸(東京化成株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。このp−トルエンスルホン酸をエステル化触媒に使用する場合、エステル化が特に効率よく進行するため、未反応アルコールの残留がより少なく、生成した(D)成分をエポキシ樹脂組成物に配合した場合に、酸化が進行した銅に対する接着力と離型性とのバランスをより優れたものとすることができ、かつ連続成形性をより向上させることができる。
【0050】
一般式(1)で示される化合物の配合量は、その性能を発揮するために、1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物とアルコール全量に対して0.01〜5質量%とすることが好ましく、0.02〜2質量%とすることがより好ましい。上記下限値を下回ると、エステル化触媒として十分機能せず、上記上限値を超えると触媒残渣がCuワイヤ耐湿信頼性に悪影響を及ぼす傾向がある。
【0051】
1−アルケンと無水マレイン酸の共重合体をアルコールでエステル化した化合物の合成に用いられる1−アルケンモノマーとしては、炭素数5〜80であれば特に制限はないが、例えば、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコンテン、1−ヘキサコンテン、1−オクタコセン、1−トリアコンテン、1−ヘントリアコンテン、1−ドトリアコンテン、1−トリトリアコンテン、1−テトラトリアコンテン、1−ペンタトリアコンテン、1−ヘキサトリアコンテン、1−テトラコンテン、1−ヘンテトラコンテン、1−ドテトラコンテン、1−トリテトラコンテン、1−テトラテトラコンテン、1−ペンタコンテン、1−ヘンペンタコンテン、1−ドペンタコンテン、1−トリペンタコンテン、1−ペンタペンタコンテン、1−ヘキサコンテン、1−ヘプタコンテン、1−オクタコンテン等の直鎖型1−アルケン、3−メチル−1−トリアコンテン、3,4−ジメチル−トリアコンテン、3−メチル−1−テトラコンテン、3,4−ジメチル−テトラコンテン等の分岐型1−アルケンなどが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。1−アルケンと無水マレイン酸の共重合体をアルコールでエステル化した化合物の合成に用いられる1−アルケンモノマーの炭素数は、酸化が進行した銅製リードフレームに対する接着性の観点で10〜70がより好ましく、連続成形性(離型性)の観点から炭素数28〜60がさらに好ましく、1−オクタコセン、1−トリアコンテン、1−テトラコンテン、1−ペンタコンテン、1−ヘキサコンテンを含む混合物がより好ましい。
【0052】
本発明の(D)成分の合成に用いられる1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物は、特に制限はないが、例えば、一般式(9)で示される化合物、一般式(10)で示される化合物等が挙げられ、市販品としては、1−オクタコセン、1−トリアコンテン、1−テトラコンテン、1−ペンタコンテン、1−ヘキサコンテン等を原料として用いたダイヤカルナ(登録商標)30(三菱化学株式会社製商品名)が入手可能である。
【0053】
一般式(9)及び(10)中のRは、炭素数3以上の脂肪族炭化水素基を示し、nは1以上の整数である。mは、1−アルケンと無水マレイン酸の共重合比を示し、特に制限はないが、1−アルケンをXモル、無水マレイン酸をYモルとした場合、X/Y、すなわち、mは1/4〜5/1が好ましく、mは1/2〜2/1がより好ましく、ほぼ等モル程度の1/1前後がさらに好ましい。
【0054】
1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物の製造方法としては、特に制限はなく、原材料を反応させる等の一般的な共重合方法を用いることができる。反応には、1−アルケンと無水マレイン酸が溶解可能な有機溶剤等を用いてもよい。有機溶剤としては特に制限はないが、トルエンが好ましく、芳香族系溶剤、エーテル系溶剤、ハロゲン系溶剤等も使用できる。反応温度は、使用する有機溶剤の種類によっても異なるが、反応性、生産性の観点から、50〜200℃とすることが好ましく、100〜150℃とすることがより好ましい。反応時間は、共重合物が得られれば特に制限はないが、生産性の観点から1〜30時間とするのが好ましく、より好ましくは2〜15時間、さらに好ましくは4〜10時間である。反応終了後、必要に応じて、加熱減圧下等で未反応成分、溶剤等を除去することができる。その条件は、温度を100〜220℃、より好ましくは120〜180℃、圧力を13.3×10
3Pa以下、より好ましくは8×10
3Pa以下、時間を0.5〜10時間とすることが好ましい。また、反応には、必要に応じてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や過酸化ベンゾイル(BPO)等のラジカル重合系開始剤を加えてもよい。
【0055】
1−アルケンと無水マレイン酸の共重合体をアルコールでエステル化した化合物の合成に用いられるアルコールとしては、炭素数が5〜25であれば特に制限はないが、例えば、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、2−メチル−デカン−1−オール、2−エチル−デカン−1−オール、2−ヘキシル−オクタン−1−オール、等の直鎖型又は分岐型の脂肪族飽和アルコール、ヘキセノール、2−ヘキセン−1−オール、1−ヘキセン−3−オール、ペンテノール、2−メチル−1−ペンテノール等の直鎖型又は分岐型の脂肪族不飽和アルコールなどが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、離型荷重の観点から炭素数10〜25の直鎖型アルコールが好ましく、連続成形性の観点から炭素数15〜20の直鎖型脂肪族飽和アルコールがより好ましい。1−アルケンと無水マレイン酸の共重合体をアルコールでエステル化した化合物の合成に用いられるアルコールの炭素数が上記下限値未満では、連続成形性(離型性)が劣り、上記上限値を超えると酸化が進行した銅製リードフレームに対する接着性が低下する傾向がある。
【0056】
1−アルケンと無水マレイン酸の共重合物とアルコールとの反応モル比は、特に制限はなく、任意に設定可能であるが、この反応モル比を調整することによって、親水性の程度をコントロールすることが可能であるので、目的の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に合わせて適宜設定することが好ましい。反応には、1−アルケンと無水マレイン酸が溶解可能な有機溶剤等を用いてもよい。有機溶剤としては特に制限はないが、トルエンが好ましく、芳香族系溶剤、エーテル系溶剤、ハロゲン系溶剤等も使用できる。反応温度は、使用する有機溶剤の種類によっても異なるが、反応性、生産性の観点から、50〜200℃とすることが好ましく、100〜150℃がより好ましい。反応時間は、共重合物が得られれば特に制限はないが、生産性の観点から1〜30時間とするのが好ましく、より好ましくは2〜15時間、さらに好ましくは4〜10時間である。反応終了後、必要に応じて、加熱減圧下等で未反応成分、溶剤等を除去することができる。その条件は、温度を100〜220℃、より好ましくは120〜180℃、圧力を13.3×10
3Pa以下、より好ましくは8×10
3Pa以下、時間を0.5〜10時間とすることが好ましい。
【0057】
(D)1−アルケンと無水マレイン酸の共重合物を、一般式(1)で示される化合物を用いて、アルコールでエステル化した化合物としては、例えば、一般式(11)の(a)又は(b)で示されるジエステル、及び、一般式(11)の(c)〜(f)で示されるモノエステルから選ばれる1種以上を、繰り返し単位として構造中に含む化合物等が挙げられ、一般式(11)の(g)又は(h)で示されるノンエステルを構造中に含んでいても良い。このような化合物としては、(1)主鎖骨格中に一般式(11)の(a)〜(f)のいずれか1種単独で構成されるもの、(2)主鎖骨格中に一般式(11)の(a)〜(f)のいずれか2種以上をランダムに含むもの、規則的に含むもの、ブロック状に含むもの、(3)主鎖骨格中に一般式(11)の(a)〜(f)のいずれか1種又は2種以上と(g)及び/又は(h)をランダムに含むもの、規則的に含むもの、ブロック状に含むもの、等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、(4)主鎖骨格中に一般式(11)の(g)及び(h)をランダムに含むもの、規則的に含むもの、ブロック状に含むもの、及び/又は、(5)主鎖骨格中に一般式(11)の(g)又は(h)それぞれ単独で構成されるものを含んでいてもよい。1−アルケンと無水マレイン酸の共重合物をアルコールでエステル化した化合物のエステル化率は、離型性及び接着性の観点から、35モル%以上とすることが好ましく、1−アルケンと無水マレイン酸の共重合物をアルコールでエステル化した化合物としては一般式(11)の(c)〜(f)で示されるモノエステルのいずれか1種又は2種以上を合わせて70モル%以上含む化合物が好ましく、80モル%以上含む化合物がより好ましい。
【0058】
上記一般式(a)〜(h)中のRは炭素数3〜78の脂肪族炭化水素基、R
2は炭素数5〜25の炭化水素基を示す。nは1以上の整数である。mは、1−アルケンと無水マレイン酸の共重合比を示し、特に制限はないが、1−アルケンをXモル、無水マレイン酸をYモルとした場合、X/Y、すなわち、mは、1/4〜5/1が好ましく、mは1/2〜2/1がより好ましく、ほぼ等モル程度の1/1前後がさらに好ましい。
【0059】
(D)1−アルケンと無水マレイン酸の共重合物を、一般式(1)で示される化合物を用いて、アルコールでエステル化した化合物の数平均分子量は、一般式(11)の(a)〜(f)の構造の繰り返し単位が1以上であれば特に制限はなく、どの分子量領域でも、酸化が進行した銅製リードフレームに対する接着性と離型性との両立が実現できるが、好ましくは数平均分子量が2000〜10000である。
【0060】
(D)1−アルケンと無水マレイン酸の共重合物を、一般式(1)で示される化合物を用いて、アルコールでエステル化した化合物の配合量は、特に制限はないが、(A)成分のエポキシ樹脂100質量部に対して0.5質量部以上、10質量部以下が好ましく、1質量部以上、5質量部以下がより好ましい。配合量が上記下限値未満では離型性が低下する傾向があり、上記上限値を超えると、酸化が進行した銅製リードフレームに対する接着性が不十分となる傾向がある。
【0061】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、1−アルケンと無水マレイン酸の共重合物とアルコールのエステル化反応で副生する化合物であって、一般式(1)で示される化合物とアルコールとのエステル化合物である一般式(2)で示される化合物を含んでいてもよい。1−アルケンと無水マレイン酸の共重合物をアルコールでエステル化した化合物を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物が、一般式(2)で示される化合物を含んでいる場合、1−アルケンと無水マレイン酸の共重合物をアルコールでエステル化した化合物の合成過程において、1−アルケンと無水マレイン酸の共重合物をアルコールでエステル化する際に、一般式(1)で示される化合物を触媒として用いていたことを意味するものと考えられる。
(一般式(2)において、R
1は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、および炭素数6〜10の芳香族基からなる群から選ばれ、R
2は炭素数5〜25のアルキル基を表す。)
【0062】
一般式(2)中のR
1は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、および炭素数6〜10の芳香族基からなる群から選ばれる。上記一般式(1)中のR
1と同義である。また、R
2は、炭素数5〜25のアルキル基を表し、このような置換基としては、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、ベヘニル基、ペンタコシル基、2−メチル−オクチル基等が挙げられる。
【0063】
一般式(2)で示される化合物としては、p−トルエンスルホン酸オクタデシル、p−トルエンスルホン酸デシル、p−トルエンスルホン酸ベヘニル、ベンゼンスルホン酸オクタデシル、m−キシレン−4−スルホン酸オクタデシル、p−キシレン−2−スルホン酸オクタデシル、メシチレンスルホン酸オクタデシル、2−ナフタレンスルホン酸オクタデシル、4−(2−ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸オクタデシル、メタンスルホン酸オクタデシル、エタンスルホン酸オクタデシル、トリフルオロメタンスルホン酸オクタデシル等が挙げられる。
【0064】
一般式(1)で示される化合物として一般式(3)で示される化合物を用いた場合には、一般式(3)で示される化合物とアルコールとのエステル化合物である一般式(4)で示される化合物を含んでいてもよい。
(一般式(4)において、R
2は、炭素数5〜25のアルキル基を表し、R
3は、炭素数1〜5のアルキル基、および炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基から選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよく、aは0〜5の整数である。)
【0065】
一般式(4)中のaは0〜5の整数であり、R
2は、炭素数5〜25のアルキル基を表し、R
3は、炭素数1〜5のアルキル基、および炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基から選ばれる。一般式(4)中のR
3は、上記一般式(3)中のR
3と同義であり、R
2は、上記一般式(2)中のR
2と同義である。
【0066】
一般式(4)で示される化合物としては、p−トルエンスルホン酸オクタデシル、p−トルエンスルホン酸デシル、p−トルエンスルホン酸ベヘニル、ベンゼンスルホン酸オクタデシル、m−キシレン−4−スルホン酸オクタデシル、p−キシレン−2−スルホン酸オクタデシル、メシチレンスルホン酸オクタデシル、2−ナフタレンスルホン酸オクタデシル、4−(2−ブロモエチル)べンゼンスルホン酸オクタデシル等が挙げられる。
【0067】
一般式(2)で示される化合物の配合量の上限値は、特に限定されるものではないが、全樹脂組成物中に対して100ppm以下とすることが好ましく、40ppm以下とすることがより好ましい。上記上限値を超えると、Cuワイヤー耐湿信頼性が悪化する傾向がある。また、一般式(2)で示される化合物の配合量の下限値は、特に限定されるものではなく、定性的にその存在が確認できる程度でもよいが、全樹脂組成物中に対して0.4ppm以上とすることが好ましい。上記下限値を下回ると、接着性、耐半田性が不十分となる傾向がある。
【0068】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、炭素数5〜58の1−アルケンを含んでもよい。この炭素数5〜58の1−アルケンは、1−アルケンと無水マレイン酸との共重合工程において、未反応で残留している1−アルケンであり得る。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に含まれる炭素数5〜58の1−アルケンの量は、上記(D)成分100質量部に対して、8質量部以上、20質量部以下であることが好ましい。上記範囲内であると、良好な連続成形性が得られる。前記下限値未満だと離型性が低下する場合があり、前記上限値を超えると型汚れや接着性の低下が生じる場合がある。
【0069】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、硬化性と流動性の良好なエポキシ樹脂組成物を得る目的で、硬化促進剤を用いることができる。本発明で用いることができる硬化促進剤は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているもので特に制限はないが、例えば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物などのリン原子含有硬化促進剤;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾールなどの窒素原子含有硬化促進剤が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも成形性の観点から、有機リン化合物が好ましい。
【0070】
本発明の半導体封止用樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィンなどの第1ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィンなどの第2ホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの第3ホスフィンが挙げられる。
【0071】
本発明の半導体封止用樹脂組成物で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば一般式(12)で表される化合物などが挙げられる。
(一般式(12)において、Pはリン原子を表す。R
24、R
25、R
26およびR
27は芳香族基またはアルキル基を表す。Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。x、yは1〜3の整数、zは0〜3の整数であり、かつx=yである。)
【0072】
一般式(12)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(12)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(12)で表される化合物において、リン原子に結合するR
24、R
25、R
26およびR
27がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。
【0073】
本発明の半導体封止用樹脂組成物で用いることができるホスホベタイン化合物としては、例えば一般式(13)で表される化合物などが挙げられる。
(一般式(13)において、Pはリン原子を表し、X1は炭素数1〜3のアルキル基、Y1はヒドロキシル基を表す。fは0〜5の整数であり、gは0〜4の整数である。)
【0074】
一般式(13)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
【0075】
本発明の半導体封止用樹脂組成物で用いることができるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば一般式(14)で表される化合物などが挙げられる。
(一般式(14)において、Pはリン原子を表す。R
34、R
35およびR
36は炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R
31、R
32およびR
33は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R
31とR
32が結合して環状構造となっていてもよい。)
【0076】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィンなどの芳香環に無置換またはアルキル基、アルコキシル基などの置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基などの置換基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0077】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
一般式(14)で表される化合物において、リン原子に結合するR
34、R
35およびR
36がフェニル基であり、かつR
31、R
32およびR
33が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が半導体封止用樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低く維持できる点で好ましい。
【0078】
硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限されるものではないが、エポキシ樹脂(A)に対して0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。下限値未満では短時間での硬化性に劣る傾向があり、上限値を超えると硬化速度が速すぎて未充填等により良好な成形品を得ることが困難になる傾向がある。
【0079】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、耐半田ストレス性と、流動性の良好なエポキシ樹脂組成物を得る目的で、シロキサン付加重合体を添加することができる。シロキサン付加重合体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ジメチルシロキサンのメチル置換基の一部を、アルキル基、エポキシ基、カルボキシル基、及びアミノ基等の置換基で置換した変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0080】
シロキサン付加重合体は1種又は2種以上混合して、エポキシ樹脂組成物全体に対し0.1質量%以上、2質量%以下の割合で使用することができる。配合量が上限値を超える場合には、表面汚染が発生しやすく、レジンブリードが長くなる恐れがあり、配合量が下限値未満の場合には、十分な低弾性率、離型剤の分散性を得ることができなくなるという問題点があり得る。
【0081】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、IC等の素子の耐湿性、高温放置特性を向上させる観点から、陰イオン交換体を添加することもできる。陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイトや、アンチモン、ビスマス、ジルコニウム、チタン、スズ、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、一般式(15)で示されるハイドロタルサイト及びビスマスの含水酸化物が好ましい。
Mg
1−XAl
X(OH)
2(CO
3)
X/2・mH
2O (15)
(一般式(15)において、0<X≦0.5、mは正の整数。)
【0082】
陰イオン交換体の配合量は、ハロゲンイオン等のイオン性不純物を捕捉できる十分な量であれば特に制限はないが、(A)成分のエポキシ樹脂100質量部に対して0.1質量部以上、30質量部以下が好ましく、1質量部以上、10質量部以下がより好ましく、2質量部以上、5質量部以下がさらに好ましい。配合量が下限値未満ではイオン性不純物の捕捉が不十分になる傾向があり、上限値を超えた場合それ以下に比べて効果に大差がないため経済的に不利である。
【0083】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、樹脂成分と無機充填材との接着性を高めるために、必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を添加することができる。これらを例示すると、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
カップリング剤の配合量は、(C)成分の無機充填材100質量部に対して0.05質量部以上、5質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上、2.5質量部以下であることがより好ましい。下限値未満では耐湿性が低下する傾向があり、上限値を超えるとパッケージの成形性が低下する傾向がある。
【0085】
さらに、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、その他の添加剤として、臭素化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む公知の有機又は無機の化合物、金属水酸化物などの難燃剤、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の着色剤、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、トリアジン等及びこれらの誘導体、アントラニル酸、没食子酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アミノフェノール、キノリン等及びこれらの誘導体、脂肪族酸アミド化合物、ジチオカルバミン酸塩、チアジアゾール誘導体等の接着促進剤などを必要に応じて配合することができる。
【0086】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、各種原材料を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、ニーダ、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。成形条件に合うような寸法及び質量でタブレット化すると使いやすい。
【0087】
また、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、各種有機溶剤に溶かして液状エポキシ樹脂組成物として使用することもでき、この液状エポキシ樹脂組成物を板又はフィルム上に薄く塗布し、樹脂の硬化反応が余り進まないような条件で有機溶剤を飛散させることによって得られるシートあるいはフィルム状のエポキシ樹脂組成物として使用することもできる。
【0088】
次に、本発明の半導体装置について説明する。本発明で得られる半導体封止用エポキシ樹脂組成物により素子を封止して得られる半導体装置としては、銅製リードフレームの支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で封止した、半導体装置などが挙げられる。このような半導体装置としては、例えば、銅製リードフレーム上に素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤーボンディングやバンプで接続した後、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いてトランスファー成形などにより封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J−lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型ICが挙げられる。また、MCP(Multi Chip Stacked Package)等のチップが多段に積層されたパッケージも挙げられる。
【0089】
図1は、本発明に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して素子1が2段に積層されて固定されている。素子1の電極パッドと銅製リードフレーム5との間はボンディングワイヤ4によって接続されている。素子1は、封止用樹脂組成物の硬化体6によって封止されている。
【0090】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。半導体封止用エポキシ樹脂組成物が常温で液状又はペースト状の場合は、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等が挙げられる。
【0091】
また、素子を直接樹脂封止する一般的な封止方法ばかりではなく、素子に直接エポキシ樹脂組成物が接触しない形態である中空パッケージの方式もあり、中空パッケージ用の封止用エポキシ樹脂組成物としても好適に使用できる。
【実施例】
【0092】
以下、本発明について実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されない。
【0093】
合成例1:炭素数28〜60の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物を、p−トルエンスルホン酸を用いて、炭素数18のアルコールでエステル化した化合物1の合成
1−オクタコセン、1−トリアコンテン、1−テトラコンテン、1−ペンタコンテン、1−ヘキサコンテン等の混合物と無水マレイン酸との共重合物(三菱化学株式会社製商品名ダイヤカルナ(登録商標)30)300g、ステアリルアルコール(東京化成製)140g及びp−トルエンスルホン酸一水和物(東京化成製)4gをトルエン500mlに溶解して110℃で8時間反応させた後、160℃まで段階的に昇温しながらトルエンを除去し、減圧下160℃で6時間反応を行うことにより溶剤を除去し、436gの化合物1を得た。分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、数平均分子量(Mn)=4100、分子量分布(Mw/Mn)=3.51であり、未反応のステアリルアルコール残留量から計算した化合物1のモノエステル化率は100モル%であった。GPCの面積比から、化合物1中に含まれる1−アルケン量は12%であった。GPCの保持時間17.2〜17.8分のピークを分取し、
1H−NMR、IR、GC/MSで分析したところ、p−トルエンスルホン酸オクタデシルを化合物1中に2.0質量%含有していることが確認できた。また、未反応のステアリルアルコール残留量は化合物1全体の1質量%以下であった。
【0094】
合成例2:炭素数28〜60の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物を、ベンゼンスルホン酸を用いて、炭素数18のアルコールでエステル化した化合物2の合成
p−トルエンスルホン酸の代わりにベンゼンスルホン酸(東京化成製)4gを用いたことを除いては合成例1に記載の方法によって、モノエステル化率100モル%の化合物2を、428g得た。分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、数平均分子量(Mn)=4100、分子量分布(Mw/Mn)=3.72であり、ベンゼンスルホン酸オクタデシルを1.9質量%含有し、未反応のステアリルアルコール残留量は化合物2全体の1質量%以下であった。GPCの面積比から、化合物2中に含まれる1−アルケン量は12%であった。
【0095】
合成例3:炭素数28〜60の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物を、トリフルオロメタンスルホン酸を用いて、炭素数18のアルコールでエステル化した化合物3の合成
p−トルエンスルホン酸の代わりにトリフルオロメタンスルホン酸(東京化成製)0.1gを用いたことを除いては合成例1に記載の方法によって、モノエステル化率100モル%の化合物3を、438g得た。分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、数平均分子量(Mn)=4100、分子量分布(Mw/Mn)=3.53であり、トリフルオロメタンスルホン酸オクタデシルを480ppm含有し、未反応のステアリルアルコール残留量は化合物3全体の1%以下であった。GPCの面積比から、化合物3中に含まれる1−アルケン量は14%であった。
【0096】
合成例4:炭素数28〜60の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物を、p−トルエンスルホン酸を用いて、炭素数10のアルコールでエステル化した化合物4の合成
ステアリルアルコールの代わりに1−デカノール(東京化成製)68gを用いたことを除いては合成例1に記載の方法によって、モノエステル化率100モル%の化合物4を、340g得た。分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、数平均分子量(Mn)=3700、分子量分布(Mw/Mn)=3.84であり、p−トルエンスルホン酸デシルを1.7%含有し、未反応の1−デカノール残留量は化合物4全体の1%以下であった。GPCの面積比から、化合物4中に含まれる1−アルケン量は12%であった。
【0097】
合成例5:炭素数28〜60の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物を、p−トルエンスルホン酸を用いて、炭素数22のアルコールでエステル化した化合物5の合成
ステアリルアルコールの代わりにベヘニルアルコール(花王製)170gを用いたことを除いては合成例1に記載の方法によって、モノエステル化率100モル%の化合物5を、340g得た。分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、数平均分子量(Mn)=4400、分子量分布(Mw/Mn)=3.85であり、p−トルエンスルホン酸ベヘニルを2.1%含有し、未反応のベヘニルアルコール残留量は化合物5全体の1%以下であった。GPCの面積比から、化合物5中に含まれる1−アルケン量は12%であった。
【0098】
合成例6:炭素数20〜24の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物を、p−トルエンスルホン酸を用いて、炭素数18のアルコールでエステル化した化合物6の合成
1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセンの混合物(出光興産株式会社製商品名リニアレン2024)180gと無水マレイン酸58gをトルエン500mlに溶解し、110℃で加熱しながら20分毎に過酸化ベンゾイル(BPO)、0.16gを3回に分けて添加した。BPOを添加終了後、反応溶液をさらに7時間110℃で加熱した。この共重合物235gのトルエン溶液にステアリルアルコール160g、p−トルエンスルホン酸4.0gを添加して110℃で8時間反応させた後、160℃まで段階的に昇温しながらトルエンを除去し、減圧下160℃で6時間反応を行うことにより未反応成分を除去し、モノエステル化率100モル%の化合物6を、380g得た。分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、数平均分子量(Mn)=9800、分子量分布(Mw/Mn)=2.66であり、p−トルエンスルホン酸オクタデシルを2.3%含有し、未反応のステアリルアルコール残留量は化合物6全体の1%以下であった。GPCの面積比から、化合物6中に含まれる1−アルケン量は12%であった。
【0099】
合成例7:炭素数28〜60の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物を、p−トルエンスルホン酸(添加量:減量)を用いて、炭素数18のアルコールでエステル化した化合物7の合成
p−トルエンスルホン酸の添加量を2gに変更したことを除いては合成例1に記載の方法によって、モノエステル化率85モル%の化合物7を、340g得た。分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、数平均分子量(Mn)=4000、分子量分布(Mw/Mn)=3.87であり、p−トルエンスルホン酸オクタデシルを1.0%含有し、未反応のステアリルアルコール残留量は化合物7全体の5%であった。GPCの面積比から、化合物7中に含まれる1−アルケン量は12%であった。
【0100】
合成例8:炭素数28〜60の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物を、p−トルエンスルホン酸(添加量:増量)を用いて、炭素数18のアルコールでエステル化した化合物8の合成
p−トルエンスルホン酸の添加量を8gに変更したことを除いては合成例1に記載の方法によって、モノエステル化率85モル%の化合物8を、340g得た。分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、数平均分子量(Mn)=4100、分子量分布(Mw/Mn)=3.88であり、p−トルエンスルホン酸オクタデシルを4.0%含有し、未反応のステアリルアルコール残留量は化合物8全体の1%以下であった。GPCの面積比から、化合物8中に含まれる1−アルケン量は12%であった。
【0101】
合成例9:炭素数20〜24の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物を、触媒を用いずに、炭素数18のアルコールでエステル化した化合物9の合成
エステル化触媒のp−トルエンスルホン酸を添加しなかったことを除いては合成例6に記載の方法によって、モノエステル化率75モル%の化合物9を、380g得た。分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、数平均分子量(Mn)=9300、分子量分布(Mw/Mn)=2.62であり、未反応のステアリルアルコール残留量は化合物9全体の7%であった。GPCの面積比から、化合物9中に含まれる1−アルケン量は12%であった。
【0102】
以下合成例10は合成例3のエステル化触媒残渣の除去方法を変え、スルホン酸エステル等を低減させた場合の影響を調べたものである。
合成例10:炭素数28〜60の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物300.0g、およびステアリルアルコール141gを、70℃で溶融させた後に、10wt%トリフルオロメタンスルホン酸水溶液1gを添加した。得られた反応混合物を150℃で5時間攪拌した。
その後、液温を120℃まで冷却して、30Torrの減圧下で、3時間減圧蒸留することにより、遊離のトリフルオロメタンスルホン酸と水を除去して、化合物10を435g得た。化合物10はトリフルオロメタンスルホン酸オクタデシルを480ppm含有していた。GPCの面積比から、化合物10中に含まれる1−アルケン量は14%であった。
【0103】
以下合成例11は合成例1にエステル化触媒を溶剤洗浄で除去する工程を導入することにより、スルホン酸エステル等を低減させた場合の影響を調べたものである。
合成例11:炭素数28〜60の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物300.0g、およびステアリルアルコール141gを、70℃で溶融させた。その後、p-トルエンスルホン酸一水和物4gを添加し、混合物を150℃で8時間攪拌した。得られた反応混合物を80℃まで冷却して、アセトン500gを還流下で60分かけて滴下した。滴下後は攪拌を止め、液温70℃で60分間静置すると、反応母液が2層に分離した。未反応のステアリルアルコール及びスルホン酸成分を含む上層のアセトン層は除去した。この洗浄操作を2回繰り返した後、残る下層を30Torrの減圧下で、90℃で、6時間減圧留去することにより、残存するアセトンを除去して、p−トルエンスルホン酸オクタデシルを600ppm含有する化合物11を420g得た。GPCの面積比から、化合物11中に含まれる1−アルケン量は9%であった。
【0104】
以下合成例12は合成例11で溶剤洗浄工程を過剰に繰り返すことにより、1−アルケンを含む低分子量成分を低減させた場合の影響を調べたものである。
合成例12:炭素数28〜60の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物300.0g、およびステアリルアルコール141gを、70℃で溶融させた。その後、p-トルエンスルホン酸一水和物4gを添加し、混合物を150℃で8時間攪拌した。得られた反応混合物を80℃まで冷却して、アセトン500gを還流下で60分かけて滴下した。滴下後は攪拌を止め、液温70℃で60分間静置すると、反応母液が2層に分離した。未反応のステアリルアルコール及びスルホン酸成分を含む上層のアセトン層は除去した。この洗浄操作を5回繰り返した後、残る下層を30Torrの減圧下で、90℃で、6時間減圧留去することにより、残存するアセトンを除去して、p−トルエンスルホン酸オクタデシルを300ppm含有する化合物12を390g得た。GPCの面積比から、化合物12中に含まれる1−アルケン量は3%であった。
【0105】
実施例1〜14及び比較例1で用いた成分について、以下に示す。
【0106】
(A)成分のエポキシ樹脂:
エポキシ樹脂1:エポキシ当量185g/eq、融点108℃のビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシ株式会社製商品名エピコートYX−4000K)
エポキシ樹脂2:エポキシ当量237g/eq、軟化点52℃のフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬製商品名NC2000)
エポキシ樹脂3:エポキシ当量273g/eq、軟化点52℃のビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬製商品名NC−3000L)
エポキシ樹脂4:エポキシ当量220g/eq、軟化点52℃のオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製商品名EOCN−104S)
【0107】
(B)成分の硬化剤:
フェノール樹脂系硬化剤1:水酸基当量199g/eq、軟化点64℃のビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型フェノール樹脂(明和化成株式会社製商品名MEH−7851SS)
【0108】
(C)成分の無機充填材:
無機充填材1:平均粒径10.8μm、比表面積5.1m
2/gの球状溶融シリカ
【0109】
(D)成分:
化合物1:合成例1で得られた化合物1
化合物2:合成例2で得られた化合物2
化合物3:合成例3で得られた化合物3
化合物4:合成例4で得られた化合物4
化合物5:合成例5で得られた化合物5
化合物6:合成例6で得られた化合物6
化合物7:合成例7で得られた化合物7
化合物8:合成例8で得られた化合物8
化合物9:合成例9で得られた化合物9
化合物10:合成例10で得られた化合物10
化合物11:合成例11で得られた化合物11
化合物12:合成例12で得られた化合物12
【0110】
硬化促進剤:
硬化促進剤1:トリフェニルホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物
【0111】
その他の添加剤:
カップリング剤1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ製商品名S510=GPS−M)
着色剤1:カーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名カーボン#5)
【0112】
(実施例1〜14および比較例1)
上記成分をそれぞれ表1及び表2に示す質量部で配合し、混練温度100℃、混練時間30分の条件で二軸混練して冷却後粉砕し、エポキシ樹脂組成物を作製した。
【0113】
作製した実施例及び比較例のエポキシ樹脂組成物を、次の各試験により評価した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0114】
酸化銅との接着性:
220℃熱盤上で2分間加熱することで酸化させた酸化銅基材と、タブレット化したエポキシ樹脂組成物とを175℃、6.9MPa、2分の条件で一体成形して酸化銅基材(直径3.6mm、厚さ0.5mm)上に円錐台状の成形品(上径3mm×下径3.6mm×厚さ3mm、酸化銅基材と樹脂硬化物の接触面積10mm
2)を得た後、得られた各成形品の基材を固定し、エポキシ樹脂組成物の硬化部位を横方向から押し、そのトルク(N)を測定した。本評価は、半導体における耐半田リフロー性とある程度の相関を有するものであり、判定結果として、14N以上を◎、12N以上14N未満を○、12N未満を×とした。
【0115】
離型荷重:
離型時荷重評価用金型は、トランスファー成形型として上型、中型、下型からなる。
図2に成形後の中型の平面概略図を、
図3に
図2のA部における横断面図を、それぞれ示した。成形後に中型に付着する成形品の形状は、直径14.0mm、高さ1.5mm厚である。
図2及び
図3において、11は中型を示し、12はカルを示し、13はランナーを示す。14は成形品を示し、15はエアベントを示す。16は、取っ手、17はプッシュプルゲージ挿入用の穴を、それぞれ示す。
低圧トランスファー成形機(TOWA(株)製、Y−seriesマニュアルプレス)を用いて、上記離型時荷重評価用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間60秒の条件でエポキシ樹脂組成物を注入し、8個/ショットの成形品14をトランスファー成形した。成形後に中型11に付着した円形の成形品14に、中型の上部の穴17からプッシュブルゲージを当て(
図3参照)、成形品を突き出した際にかかる荷重を測定した。続けて評価用材料を20ショット成形した後半の10ショットの成形品について測定を行い、その平均値を離型荷重として示した。評価は、量産成形での安定生産性とある程度の相関を有するものであり、判定結果として、15N以下を◎、15N超、20N未満を○、20N以上を×とした。
【0116】
連続成形性(エアベントブロック及び型汚れ):
低圧トランスファー自動成形機(第一精工(株)製、GP−ELF)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間70秒の条件で、エポキシ樹脂組成物によりチップなどを封止して80ピンクワッドフラットパッケージ(80pQFP;銅製リードフレーム、パッケージ外寸:14mm×20mm×2mm厚、パッドサイズ:6.5mm×6.5mm、チップサイズ6.0mm×6.0mm×0.35mm厚)を得る成形を、連続で400ショットまで行った。
エアベントブロックの評価については、50ショット毎に金型を目視により観察することで、エアベントブロック(エアベント(幅0.5mm、厚さ50μm)部に樹脂硬化物が固着してエアベントを塞いだ状態)の有無を確認し、次の4段階で評価した。好ましい順は、A、B、C・・・の順であるが、Cランク以上であれば実用可能範囲である。評価結果を下記に示した。
A:400ショットまで問題なし
B:300ショットまでにエアベントブロック発生
C:200ショットまでにエアベントブロック発生
D:100ショットまでにエアベントブロック発生
型汚れについては、400ショット成形後の金型を観察し、ゲート口からの汚れの広がり具合の程度から、次の5段階で評価した。好ましい順は、A、B、C・・・の順であるが、Cランク以上であれば実用可能範囲である。
A:汚れなし
B:汚れの広がりがキャビティ表面の20面積%以下
C:汚れの広がりがキャビティ表面の20面積%超〜40面積%以下
D:汚れの広がりがキャビティ表面の40面積%超〜60面積%以下
E:汚れの広がりがキャビティ表面の60面積%超
【0117】
Auワイヤ信頼性試験用PKGの成形:
耐湿信頼性:アルミニウム回路を形成したTEGチップ(3mm×3.5mm、アルミニウム回路は保護膜なしの剥き出し)を16ピンSOPリードフレーム(パッケージサイズは7.2mm×11.5mm、厚さ1.95mm)のダイパッド部上に接着し、アルミニウムパッドと基板側端子を、Auワイヤ(ワイヤー径25μm、純度99.99%)を用いてワイヤピッチ80μmでワイヤボンディングした。これを、低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS−125)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間2分の条件でエポキシ樹脂組成物により封止成形して、16ピンSOPパッケージを作製した。作製したパッケージを、175℃、4時間で後硬化した。
【0118】
Cuワイヤ信頼性試験用PKGの成形:
耐湿信頼性:アルミニウム回路を形成したTEGチップ(3.5mm×3.5mm、アルミニウム回路は保護膜なしの剥き出し)を16ピンSOPリードフレーム(パッケージサイズは7.2mm×11.5mm、厚さ1.95mm)のダイパッド部上に接着し、アルミニウムパッドと基板側端子を、Cuワイヤ(ワイヤー径25μm、純度99.99%)を用いてワイヤピッチ80μmでワイヤボンディングした。これを、低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS−125)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間2分の条件でエポキシ樹脂組成物により封止成形して、16ピンSOPパッケージを作製した。作製したパッケージを、175℃、4時間で後硬化した。
【0119】
耐湿信頼性試験:
作製したパッケージを使用して、IEC68−2−66に準拠しHAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)試験を行った。試験条件は130℃、85%RH、20V印加、240時間(Cuワイヤは480時間)処理をして回路のオープン不良有無を測定した。結果を15個のパッケージ中の不良個数として示す。
【0120】
耐半田性試験:
低圧トランスファー成形機(第一精工(株)製、GP−ELF)を用いて、酸化状態を再現するため、半導体素子(シリコンチップ)が搭載されたリードフレーム等を180℃の金型上にセット後、2分間予熱し、金型温度180℃、注入圧力7.4MPa、硬化時間120秒間の条件で、エポキシ樹脂組成物を注入して半導体素子(シリコンチップ)が搭載されたリードフレーム等を封止成形し、80pQFP(銅製リードフレーム、サイズは14×20mm×厚さ2.00mm、半導体素子は7×7mm×厚さ0.35mm、半導体素子とリードフレームのインナーリード部とは25μm径の金線でボンディングされている。)なる半導体装置を作製した。ポストキュアとして175℃で4時間加熱処理した半導体装置12個を、60℃、相対湿度60%で120時間加湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、JEDEC・Level3条件に従う)を行った。これらの半導体装置内部の剥離及びクラックの有無を超音波探傷装置(日立建機ファインテック製、mi−scope10)で観察し、剥離又はクラックのいずれか一方でも発生したものを不良とした。結果をn=6中の不良半導体装置の個数を表示した。不良個数が1以下であれば実用可能範囲である。
【0121】
【0122】
【0123】
実施例1〜14は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材、及び(D)1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物を、一般式(1)で示される化合物を用いて、アルコールでエステル化した化合物を含むものであり、(A)成分の種類、(D)成分の種類と配合量を変えたものを含むものである。実施例1〜14は、いずれも、酸化銅との接着強度が高く、酸化が進行した銅製リードフレームを用いた、加湿処理後のIRリフロー処理による耐半田性に優れる結果が得られた。特に、実施例1〜13は、いずれも、離型荷重が低く、かつ、素子等を封止成形した際の連続成形性(エアベントブロック及び型汚れ)や、耐湿信頼性にも優れる結果が得られた。
なかでも、(A)成分として一般式(5)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂であるエポキシ樹脂1、一般式(6)で示されるフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂であるエポキシ樹脂2、及び一般式(7)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂であるエポキシ樹脂3の少なくとも1種以上を(A)成分全量に対して50質量%以上用い、(D)成分として炭素数28〜60の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物を、p−トルエンスルホン酸を用いて、炭素数18のアルコールでエステル化した化合物1を用いた実施例1、9、10及び11は、酸化銅に対する接着強度、耐湿信頼性、耐半田性と、離型性(離型荷重)、連続成形性(エアベントブロック及び型汚れ)とのバランスに優れる結果が得られた。触媒残渣の除去方法が異なるが、化合物3と同量のトリフルオロメタンスルホン酸オクタデシルを含有する化合物10を使用した実施例12は実施例3と同等の特性であった。溶剤洗浄工程を追加し、触媒残渣を低減した化合物11を使用した実施例13は実施例1と比較してCuワイヤー耐湿信頼性が向上する結果であった。
【0124】
一方、(D)炭素数20〜24の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物を、触媒を用いずに、炭素数18のアルコールでエステル化した化合物9を用いた比較例1は、耐湿信頼性は良好であったが、酸化銅に対する接着強度、耐半田性、離型荷重、連続成形性の型汚れとエアベントブロックが劣る結果となった。1−アルケン含有量の少ない化合物12を用いた実施例14は耐湿信頼性、酸価銅に対する接着性、耐半田性は良好であるものの、連続成形性のエアベントブロック、離型荷重が劣る結果であった。
【0125】
本発明によれば、実施例で示したように酸化が進行した銅製リードフレームに対する接着性、離型性、連続成形性等に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得ることができるため、このエポキシ樹脂組成物を用いてIC、LSI等の電子部品、とりわけ、チップが多段に積層されたMCP(Multi Chip Stacked Package)等のように、銅製リードフレームの酸化が進行し易いパッケージに好適に用いることができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材、及び(D)炭素数5〜80の1−アルケンと無水マレイン酸との共重合物を、一般式(1)で示される化合物の存在下で、炭素数5〜25のアルコールでエステル化した化合物を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)において、R1は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、および炭素数6〜10の芳香族基からなる群から選ばれる。)
2.炭素数5〜58の1−アルケンをさらに含む、1.に記載のエポキシ樹脂組成物。
3.前記炭素数5〜58の1−アルケンの量が、前記(D)成分100質量部に対して、8質量部以上、20質量部以下である、2.に記載のエポキシ樹脂組成物。
4.一般式(2)で示される化合物をさらに含む、1.に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化2】
(一般式(2)において、R1は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、および炭素数6〜10の芳香族基からなる群から選ばれ、R2は炭素数5〜25のアルキル基を表す。)
5.前記一般式(2)で示される化合物が、全エポキシ樹脂組成物中に0.5ppm以上、100ppm以下の量で含まれる、4.に記載のエポキシ樹脂組成物。
6.前記一般式(1)で示される化合物が、トリフルオロメタンスルホン酸である、1.に記載のエポキシ樹脂組成物。
7.前記一般式(1)で示される化合物が、一般式(3)で示される化合物である、1.に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化3】
(一般式(3)において、R3は、炭素数1〜5のアルキル基、および炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基から選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよく、aは0〜5の整数である。)
8.前記一般式(2)で示される化合物が、一般式(4)で示される化合物である、4.に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化4】
(一般式(4)において、R2は、炭素数5〜25のアルキル基を表し、R3は、炭素数1〜5のアルキル基、および炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基から選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよく、aは0〜5の整数である。)
9.前記1−アルケンが、炭素数28〜60の1−アルケンである、1.に記載のエポキシ樹脂組成物。
10.前記アルコールが、ステアリルアルコールである、1.に記載のエポキシ樹脂組成物。
11.前記(A)エポキシ樹脂が、一般式(5)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂、一般式(6)で示されるフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、及び一般式(7)で示されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む、1.に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化5】
(一般式(5)において、R4〜R7は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、および炭素数6〜10のアラルキル基からなる群より選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよく、nは0〜3の整数を示す。)
【化6】
(一般式(6)において、R8〜R10は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、および炭素数6〜10のアラルキル基からなる群より選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよく、nは0〜20の整数を示す。)
【化7】
(一般式(7)において、R11〜R19は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、および炭素数6〜10のアラルキル基からなる群より選ばれ、全てが同一でも互いに異なっていてもよく、nは0〜3の整数を示す。)
12.1.に記載のエポキシ樹脂組成物で封止された半導体素子を含む、半導体装置。
13.銅製リードフレームのダイパッド上に前記半導体素子が搭載され、前記半導体素子の電極パッドと前記銅製リードフレームのインナーリードとがボンディングワイヤによって接続されている、12.に記載の半導体装置。
14.前記銅製リードフレームのダイパッド上に2以上の半導体素子が積層して搭載される、13.に記載の半導体装置。