(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る珪窒化物蛍光体用窒化珪素粉末は、珪素元素と窒素元素と酸素元素とを含有する珪窒化物蛍光体であり、具体的には、Sr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体又はβ−サイアロン蛍光体を製造するための原料として使用する結晶質窒化珪素粉末である。本発明において、結晶質窒化珪素としてはα型窒化珪素が好ましい。
【0015】
本発明に係る珪窒化物蛍光体用窒化珪素粉末の酸素含有量は、0.2〜0.9wt%である。従来の蛍光体原料としての窒化珪素粉末の酸素含有量は、1.0〜2.0wt%であり、本発明のように、酸素含有量の少ない窒化珪素粉末を蛍光体原料に用いることにより、従来の蛍光体よりも蛍光強度の高いSr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体又はβ−サイアロン蛍光体を得ることができる。窒化珪素中の酸素含有量は、好ましくは、0.2〜0.8wt%、さらに好ましくは、0.2〜0.4wt%である。酸素含有量を0.2wt%以下にする事は製造上難しく、酸素含有量が0.9wt%以上では蛍光特性の顕著な向上が認められないので、好ましくない。なお、酸素含有量の測定は、LECO社製酸素窒素同時分析装置で測定した。
【0016】
また、本発明に係る珪窒化物蛍光体用窒化珪素粉末の平均粒子径は、1〜12μmが好ましく、さらに好ましくは、1〜8μmである。平均粒子径が1μm未満では、酸素含有量が増加する傾向があり、蛍光特性の効果が小さくなる。平均粒子径が12μmを超えると、製造が難しく実用的ではない。なお、平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真から次のようにして測定した。即ち、走査型電子顕微鏡像写真内に円を描き、その円に接する個々の粒子について、粒子に内接する最大の円を定め、その円の直径をその粒子の径とし、それらの粒子の径の平均をとることにより粒子の平均粒子径を算出した。対象とする測定粒子の数は、約50〜150個になるようにした。
【0017】
また、本発明に係る珪窒化物蛍光体用窒化珪素粉末の比表面積は、0.2〜4.0m
2/gが好ましく、さらに好ましくは0.3〜3.0m
2/gである。本発明に係る珪窒化物蛍光体用窒化珪素粒子の比表面積を0.2m
2/g未満にする事は、製造上難しく実用的ではなく、素子化する上で不都合を生じる。比表面積が4m
2/gを超えると、蛍光特性の効果が小さくなるので、0.2〜4m
2/gが好ましい。なお、比表面積は、島津社製フローソーブ2300型比表面積測定装置(窒素ガス吸着法によるBET法)で測定した。
【0018】
本発明に係る珪窒化物蛍光体用窒化珪素粉末は、含窒素シラン化合物および/または非晶質(アモルファス)窒化珪素粉末を熱分解して得ることができる。含窒素シラン化合物としては、シリコンジイミド(Si(NH)
2)、シリコンテトラアミド、シリコンニトロゲンイミド、シリコンクロルイミド等が挙げられる。これらは、公知方法、例えば、四塩化珪素、四臭化珪素、四沃化珪素等のハロゲン化珪素とアンモニアとを気相で反応させる方法、液状の前記ハロゲン化珪素と液体アンモニアとを反応させる方法などによって製造される。
【0019】
また、非晶質窒化珪素粉末は、公知方法、例えば、前記含窒素シラン化合物を窒素又はアンモニアガス雰囲気下に1200〜1460℃の範囲の温度で加熱分解する方法、四塩化珪素、四臭化珪素、四沃化珪素等のハロゲン化珪素とアンモニアとを高温で反応させる方法などによって製造されたものが用いられる。非晶質窒化珪素粉末及び含窒素シラン化合物の平均粒子径は、通常、0.003〜0.05μmである。
【0020】
前記含窒素シラン化合物、非晶質窒化珪素粉末は、加水分解し易く、酸化され易い。したがって、これらの原料粉末の秤量は、不活性ガス雰囲気中で行う。本材料は、反応容器材質および粉末取り扱い機器における粉末と金属との擦れ合い状態を改良した公知の方法により、非晶質窒化珪素粉末に混入する金属不純物は10ppm以下に低減される。また、非晶質窒化珪素粉末を得るための加熱炉に流通させる窒素ガス中の酸素濃度を0〜2.0vol%の範囲で制御できる。加熱分解時の雰囲気中の酸素濃度を、例えば、100ppm以下、好ましくは10ppm以下などに規定して、低酸素含有量の非晶質窒化珪素粉末を得る。非晶質窒化珪素粉末の酸素含有量が低いほど、得られる結晶質窒化珪素粒子の酸素含有量も低くなる。
【0021】
次に、含窒素シラン化合物および/または非晶質窒化珪素粉末を1300〜1700℃の範囲、窒素又はアンモニアガス雰囲気下で焼成して結晶質窒化珪素を得る。焼成の条件(温度と昇温速度)を制御することで、粒子径を制御する。本発明の場合、低酸素の結晶質窒化珪素を得るためには、含窒素シラン化合物から非晶質窒化珪素粉末を焼成する際の窒素ガス雰囲気焼成に同時含有させる酸素を制御する必要がある。大きな粒子径の結晶質窒化珪素を得るためには、非晶質窒化珪素粉末から結晶質窒化珪素粉末を焼成する際、40℃/時以下のようなゆっくりとした昇温が必要である。このようにして得られた結晶質窒化珪素は
図1に示すように、大きな一次粒子がほぼ単分散の状態にあり、凝集粒子、融着粒子はほとんどない。得られた結晶質窒化珪素は、金属不純物100ppm以下の高純度粉末である。また、この結晶質窒化珪素粉末を酸洗浄するなど化学的処理をする事で低酸素の結晶質窒化珪素が得られる。このようにして、本発明に係る酸素含有量が0.2〜0.9wt%の珪窒化物蛍光体用窒化珪素粉末を得ることができる。
【0022】
また、このようにして得られた窒化珪素粉末は、金属シリコンの直接窒化法により製造された窒化珪素と違って、強力な粉砕を必要とせず、そのため、不純物量が100ppm以下ときわめて少ないという特徴がある。本発明に係る珪窒化物蛍光体用窒化珪素粉末に含まれる不純物(Al、Ca、Fe)は、100ppm以下、好ましくは20ppm以下とすることで、蛍光強度の高い蛍光体が得られるので好ましい。
【0023】
次に、本発明に係る珪窒化物蛍光体用窒化珪素粉末を用いて、Sr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体を製造する方法について説明する。本発明に係るSr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体とは、Sr
3Al
3Si
13O
2N
21の結晶構造で、Srの一部が、Euなどの希土類付活元素で置換された蛍光体をいう。
【0024】
本発明に係るSr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体の製造方法は、平均粒子径が1.0〜12μmであり、酸素含有量が0.2〜0.9wt%の前記結晶質窒化珪素粉末と、Sr
3N
2などのストロンチウム源となる物質と、AlN、Al
2O
3などのアルミニウム源となる物質と、EuNなどのユウロピウム源となる物質とを一般式(Eu
xSr
1−x)
3Al
3Si
13O
2N
21になるように混合し、0.05〜100MPaの窒素雰囲気中、1400〜2000℃で焼成することを特徴とする。
【0025】
ストロンチウム源となる物質としては、窒化ストロンチウム(Sr
3N
2,Sr
2N)以外に、金属ストロンチウムが挙げられる。アルミニウム源となる物質としては、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、金属アルミニウムが挙げられる。ユウロピウム源となる物質としては、窒化ユウロピウム以外に、金属ユウロピウム、酸化ユウロピウムが挙げられる。
【0026】
本発明に係るSr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体は、Sr元素の一部をCa、Baで置換してもよいが、Srであることが望ましい。
また、発光源としてEu元素以外にMn、Ce、Pr、Nd、Sm、Ybでも発光するが、Euを含むことが好ましく、Euであることが望ましい。
【0027】
得られるSr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体は、一般式(Eu
xSr
1−x)
3Al
3Si
13O
2N
21で表される蛍光体であり、Sr
3Al
3Si
13O
2N
21のSrの一部がEuで置換されている。その置換量xは特に限定されないが、通常、0.03<x<0.3である。
【0028】
一般的には、原料としては、窒化珪素(Si
3N
4)、窒化ストロンチウム(Sr
3N
2)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化ユウロピウム(EuN)が好適に用いられる。原料の作製方法としては、最終的に前記窒化物を得ることができる方法であれば、如何なる方法でも採用することができる。
【0029】
次に、本発明に係る珪窒化物蛍光体用窒化珪素粉末を用いて、β−サイアロン蛍光体を製造する方法について説明する。本発明に係るβ−サイアロン蛍光体とは、β型Si
3N
4結晶構造を持った結晶に、Euなどの希土類付活が固溶した蛍光体をいう。
【0030】
本発明に係るβ−サイアロン蛍光体の製造方法は、酸素含有量が0.2〜0.9wt%の前記結晶質窒化珪素粉末と、AlN、Al
2O
3などのアルミニウム源となる物質と、Eu
2O
3などのユウロピウム源となる物質とを一般式Si
6−zAl
zO
zN
8−z:Eu
xになるように混合し、0.05〜100MPaの窒素雰囲気中、1400〜2000℃で焼成することを特徴とする。
【0031】
アルミニウム源となる物質としては、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、金属アルミニウム、が挙げられる。ユウロピウム源となる物質としては、酸化ユウロピウム以外に、金属ユウロピウム、窒化ユウロピウムが挙げられる。
【0032】
発光源としてEu元素以外にMn、Ce、Pr、Nd、Sm、Ybでも発光するが、Euを含むことが好ましく、Euであることが望ましい。
【0033】
得られるβ−サイアロン蛍光体は、一般式Si
6−zAl
zO
zN
8−z:Eu
xで表される蛍光体である。好ましいzの値は0.3〜2.0の範囲で、より好ましい範囲は0.3〜1.0の範囲で、強い蛍光が得られる。E
uが固溶する本蛍光体は緑色の蛍光特性に優れる。xの範囲は、0.005〜0.08の範囲で、より好ましい範囲は、0.008〜0.06の範囲である。
【0034】
一般的には、原料としては、窒化珪素(Si
3N
4)、酸化ユウロピウム(Eu
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)が好適に用いられる。原料の作製方法としては、最終的に前記酸窒化物を得ることができる方法であれば、如何なる方法でも採用することができる。
【0035】
本発明に係るSr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体及びβ−サイアロン蛍光体の製造方法において、前記した各出発原料を混合する方法については、特に制約は無く、それ自体公知の方法、例えば、乾式混合する方法、原料各成分と実質的に反応しない不活性溶媒中で湿式混合した後に溶媒を除去する方法などを採用することができる。混合装置としては、V型混合機、ロッキングミキサー、ボールミル、振動ミル、媒体攪拌ミルなどが好適に使用される。
【0036】
出発原料の混合物は、1気圧の窒素含有不活性ガス雰囲気中1400〜1800℃、好ましくは1500〜1700℃で焼成され、目的とする蛍光体が得られる。焼成温度が1400℃よりも低いと、所望の蛍光体の生成に長時間の加熱を要し、実用的でない。また、生成粉末中における蛍光体の生成割合も低下する。焼成温度が1800℃を超えると、ストロンチウム、ユウロピウム、カルシウムの蒸発が著しくなり明るい蛍光体を得ることができない。
【0037】
出発原料混合粉末を、加圧窒素ガス雰囲気下1600〜2000℃、好ましくは1600〜1900℃の温度範囲で焼成することもできる。この場合には、窒素ガス加圧によりユウロピウムの蒸発およびSi
3N
4の昇華分解が抑制され、短時間で所望の蛍光体を得ることができる。窒素ガス圧を高くすることで焼成温度を上げることができるが、例えば5気圧の窒素ガス加圧下では1600〜1850℃、10気圧の窒素ガス加圧下では1600〜2000℃で焼成することができる。
【0038】
粉末混合物の焼成に使用される加熱炉については、とくに制約は無く、例えば、高周波誘導加熱方式または抵抗加熱方式によるバッチ式電気炉、ロータリーキルン、流動化焼成炉、プッシャ−式電気炉などを使用することができる。
【0039】
前記Sr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体粉末及びβ−サイアロン蛍光体粉末の製造方法において、焼成後には、酸を含む溶液中で洗浄処理を施すことが好ましい。さらに、焼成後に、窒素、アンモニア、水素から選ばれる1種又は2種以上の雰囲気下で、300〜1000℃の温度範囲で、加熱処理することが好ましい。
【0040】
このようにして得られたSr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体粉末は、一般式(M
xSr
1−x)
3Al
3Si
13O
2N
21で表される。Mは発光源であり、Eu元素以外にMn、Ce、Pr、Nd、Sm、Ybでも発光するが、Euを含むことが好ましく、Euであることが望ましい。このようにして得られたSr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体及び一般式Si
6−zAl
zO
zN
8−z:Eu
xで表されるβ−サイアロン蛍光体は、従来の窒化珪素粉末を原料にして得られた蛍光体と比較して、蛍光強度の優れた蛍光体である。
【0041】
本発明に係るSr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体は、上記のようにして得られた蛍光体であり、より具体的には、上記の窒化珪素粉末とSr
3N
2粉末とAlN粉末とAl
2O
3粉末とEuN粉末との混合粉末を、窒素を含有する不活性ガス雰囲気中、1400〜2000℃で焼成することにより得られたSrの一部がEuで置換されたSr
3Al
3Si
13O
2N
21蛍光体が挙げられる。
【0042】
また、本発明に係るβ−サイアロン蛍光体は、上記のようにして得られた蛍光体であり、より具体的には、上記の窒化珪素粉末とAl
2O
3粉末とAlN粉末とEu
2O
3粉末との混合粉末を、窒素を含有する不活性ガス雰囲気中、1400〜2000℃で焼成することにより得られたβ−サイアロン蛍光体が挙げられる。
【0043】
本発明に係るSr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体及びβ−サイアロン蛍光体は、公知の方法でエポキシ樹脂やアクリル樹脂等の透明樹脂と混練されてコーティング剤が製造される。これを、励起光を発する発光ダイオードに塗布して光変換型の発光ダイオードを形成し、照明器具として利用される。また、本発明に係るSr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体又はβ−サイアロン蛍光体を含む薄い板を形成し、励起源となる発光ダイオードの光を吸収するように配置して、光変換型の発光ダイオードを作製、照明器具として利用することもできる。励起源となる発光ダイオードの波長は、Sr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体又はβ−サイアロン蛍光体の特性を生かすために300〜500nmの波長の光を発するものが望ましく、好ましくは、300〜470nmの紫外から青色の波長の光が望ましい。本発明に係るSr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体及びβ−サイアロン蛍光体は、緑色の蛍光を発するが、他の色を発する蛍光体、例えば、黄色を発する蛍光体、橙色を発する蛍光体、赤色を発する蛍光体、青色を発する蛍光体と混ぜて使用することも可能である。これらの蛍光体と混ぜると、本発明に係る蛍光体によって、放出される光の緑色の成分が増え、色調の制御が可能となる。
【0044】
本発明に係るSr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体又はβ−サイアロン蛍光体と励起源とを用いて、画像表示装置を作製することも可能である。この場合、励起源として、発光ダイオードだけではなく、電子線、電場、真空紫外線、紫外線を発する光源も採用される。本発明に係るSr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体粉末及びβ−サイアロン蛍光体粉末はこれらの励起源に対し輝度低下がないという特徴を有している。このようにして、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレー(FED)、プラズマディスプレーパネル(PDP)、陰極線管(CRT)に適用される。
【実施例】
【0045】
以下では、具体的例を挙げ、本発明を更に詳しく説明する。
【0046】
まず、本実施例において、結晶質窒化珪素粉末の比表面積は、島津社製フローソーブ2300型比表面積測定装置を用いて、窒素ガス吸着法によるBET法で測定した。酸素含有量は、LECO社製酸素窒素同時分析装置で測定した。平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真から粒子径を測定した。具体的には、走査型電子顕微鏡像写真内に円を描き、その円に接した約150個の個々の粒子について、粒子に内接する最大の円を定め、その円の直径をその粒子の径とし、それらの粒子の径の平均をとることにより粒子の平均粒子径を算出した。
【0047】
(結晶質窒化珪素粉末の作製)
(実施例1)
はじめに、本発明に必要な結晶質窒化珪素粉末を作製した。その方法は次の通りである。
四塩化珪素濃度が50vol%のトルエンの溶液を液体アンモニアと反応させ、粉体嵩密度(見掛け密度)0.13g/cm
3のシリコンジイミドを作製し、これを窒素ガス雰囲気下、1150℃で加熱分解して、0.25g/cm
3の粉体嵩密度(見掛け密度)を有する非晶質窒化珪素粉末を得た。本材料は、反応容器材質および粉末取り扱い機器における粉末と金属との擦れ合い状態を改良する公知の方法により、非晶質窒化珪素粉末に混入する金属不純物は10ppm以下に低減された。また、加熱炉に流通させる窒素ガス中の酸素濃度を0.5vol%で導入した。
【0048】
この非晶質窒化珪素を炭素製の坩堝に入れて、室温から1100℃までを1時間、1100℃から1400℃までを20℃/hrでゆっくりと昇温した。1400℃から1500℃まで1時間で昇温し、1500℃で1時間保持することで、実施例1に係る結晶質窒化珪素粉末を作製した。
【0049】
得られた結晶質窒化珪素粉末の粒子を
図1に示す。比表面積は1.0m
2/g、平均粒子径は3.0μm、酸素含有量が0.72wt%であった。
【0050】
蛍光X線による不純物分析を行った結果、Alは0ppm、Caは16ppm、Feは16ppmと不純物量は非常に微量であった。
【0051】
(実施例2)
シリコンジイミドを加熱して非晶質窒化珪素粉末を得るときの、加熱炉に流通させる窒素ガス中の酸素濃度を0.0006vol%以下で導入した。それ以外は実施例1と同じ方法によって、実施例2に係る結晶質窒化珪素粉末を作製した。得られた結晶質窒化珪素の比表面積は1.0m
2/g、平均粒子径は3.0μm、酸素含有量が0.34wt%であった。
【0052】
(実施例3)
シリコンジイミドを加熱して非晶質窒化珪素粉末を得るときの、加熱炉に流通させる窒素ガス中の酸素濃度を0.6vol%で導入した。非晶質窒化珪素を焼成する際の1100℃から1400℃までを10℃/hでゆっくりと昇温した。それ以外は実施例1と同じ方法によって、実施例3に係る結晶質窒化珪素粉末を作製した。得られた結晶質窒化珪素の比表面積は0.3m
2/g、平均粒子径は8.0μm、酸素含有量が0.75wt%であった。
【0053】
(実施例4)
シリコンジイミドを加熱して非晶質窒化珪素粉末を得るときの、加熱炉に流通させる窒素ガス中の酸素濃度を0.0005vol%以下で導入した。それ以外は実施例3と同じ方法によって、実施例4に係る結晶質窒化珪素粉末を作製した。得られた結晶質窒化珪素の比表面積は0.3m
2/g、平均粒子径は8.0μm、酸素含有量が0.29wt%であった。
【0054】
(実施例5)
シリコンジイミドを加熱して非晶質窒化珪素粉末を得るときの、加熱炉に流通させる窒素ガス中の酸素濃度を0.5vol%で導入した。非晶質窒化珪素を焼成する際の温度は、1100℃から1400℃までを40℃/hでゆっくりと昇温した。それ以外は実施例1と同じ方法によって、実施例5に係る結晶質窒化珪素粉末を作製した。得られた結晶質窒化珪素の比表面積は3.0m
2/g、平均粒子径は1.0μm、酸素含有量が0.73wt%であった。
【0055】
(実施例6)
実施例5で使用した結晶質窒化珪素(比表面積が3.0m
2/g、平均粒子径は1.0μm、酸素含有量が0.73wt%)を、更にフッ酸:結晶質窒化珪素=0.5g:1.0gになる酸溶液に入れてボールミル混合した後、水洗洗浄することで、実施例6に係る結晶質窒化珪素粉末を作製した。得られた結晶質窒化珪素粉末の酸素含有量は、0.53wt%に低減した。
【0056】
(実施例7)
シリコンジイミドを加熱して非晶質窒化珪素粉末を得るときの、加熱炉に流通させる窒素ガス中の酸素濃度を0.0006vol%以下で導入した。それ以外は実施例5と同じ方法によって、実施例7に係る結晶質窒化珪素粉末を作製した。得られた結晶質窒化珪素の比表面積は3.0m
2/g、平均粒子径は1.0μm、酸素含有量が0.33wt%であった。
【0057】
(比較例1)
シリコンジイミドを加熱して非晶質窒化珪素粉末を得るときの、加熱炉に流通させる窒素ガス中の酸素濃度を1.3vol%で導入した。非晶質窒化珪素を焼成する際の温度は、1100℃から1400℃までを50℃/hでゆっくりと昇温した。それ以外は実施例1と同じ方法によって、比較例1に係る結晶質窒化珪素粉末を作製した。得られた結晶質窒化珪素の比表面積は10m
2/g、平均粒子径は0.2μm、酸素含有量が1.34wt%であった。
【0058】
(比較例2)
シリコンジイミドを加熱して非晶質窒化珪素粉末を得るときの、加熱炉に流通させる窒素ガス中の酸素濃度を0.4vol%で導入した。非晶質窒化珪素を焼成する際の温度は、1100℃から1400℃までを50℃/hでゆっくりと昇温した。それ以外は実施例1と同じ方法によって、比較例2に係る結晶質窒化珪素粉末を作製した。得られた結晶質窒化珪素の粒子を
図2に示す。比表面積は10m
2/g、平均粒子径は0.2μm、酸素含有量が0.89wt%であった。
【0059】
(比較例3)
シリコンジイミドを加熱して非晶質窒化珪素粉末を得るときの、加熱炉に流通させる窒素ガス中の酸素濃度を2.0vol%で導入した。非晶質窒化珪素を焼成する際の温度は、1100℃から1400℃までを40℃/hでゆっくりと昇温した。それ以外は実施例1と同じ方法によって、比較例3に係る結晶質窒化珪素粉末を作製した。得られた結晶質窒化珪素の比表面積は3.0m
2/g、平均粒子径は1.0μm、酸素含有量が1.65wt%であった。
【0060】
(比較例4)
シリコンジイミドを加熱して非晶質窒化珪素粉末を得るときの、加熱炉に流通させる窒素ガス中の酸素濃度を1.8vol%で導入した。非晶質窒化珪素を焼成する際の温度は、1100℃から1400℃までを20℃/hでゆっくりと昇温した。それ以外は実施例1と同じ方法によって、比較例4に係る結晶質窒化珪素粉末を作製した。得られた結晶質窒化珪素の比表面積は1.0m
2/g、平均粒子径は3.0μm、酸素含有量が1.55wt%であった。
【0061】
(比較例5)
シリコンジイミドを加熱して非晶質窒化珪素粉末を得るときの、加熱炉に流通させる窒素ガス中の酸素濃度を1.6vol%で導入した。非晶質窒化珪素を焼成する際の温度は、1100℃から1400℃までを10℃/hでゆっくりと昇温した。それ以外は実施例1と同じ方法によって、比較例5に係る結晶質窒化珪素粉末を作製した。得られた結晶質窒化珪素の比表面積は0.3m
2/g、平均粒子径は8.0μm、酸素含有量が1.42wt%であった。
【0062】
(Sr
3Al
3Si
13O
2N
21蛍光体の作製)
(実施例8〜14、比較例6〜10)
実施例1〜7、比較例1〜5に係る結晶質窒化珪素粉末を用いて、実施例8〜14、比較例6〜10に係る珪窒化物蛍光体を作製した。具体的には、組成が窒素ボックス中でEu
0.08Sr
2.92Al
3Si
13O
2N
21になるように、窒化珪素粉末と窒化ストロンチウム粉末と窒化アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末と窒化ユウロピウム粉末とを秤量した。これらの原料を窒素ガス雰囲気中で振動ミルにより1時間混合した。得られた混合物を窒化ホウ素製坩堝に入れた。つぎに、坩堝を、雰囲気加圧型の電気炉にセットした。油回転ポンプにより真空とした後、純度が99.999%の窒素を導入して圧力を0.8MPaとし、1000℃まで1時間、1200℃まで1時間、1825℃まで2時間の計4時間で1825℃まで昇温し、1825℃で8時間保持し、その後、炉冷し、坩堝を取り出した。合成した試料を軽く粉砕し、粉末X線回折測定(XRD)を行った。その結果、Srの一部がEuで置換された、Sr
3Al
3Si
13O
2N
21蛍光体であることを確認した。
【0063】
この粉末をめのう乳鉢・乾式粉砕機・湿式粉砕機を用いて粉砕した。所定の粒径にした後、日本分光社製、積分球付のFP−6500を用いて、励起450nmとして、蛍光特性を評価した。
【0064】
表1には、原料の結晶質窒化珪素粉末の比表面積、平均粒子径、酸素含有量、および、比較例6の蛍光強度を100とした時の、得られたSr
3Al
3Si
13O
2N
21系蛍光体の蛍光相対強度を示した。
【0065】
【表1】
【0066】
(β−サイアロン蛍光体の作製)
(実施例15〜21、比較例11〜15)
実施例1〜7、比較例1〜5に係る結晶質窒化珪素粉末を用いて、実施例15〜21、比較例11〜15に係る珪窒化物蛍光体を作製した。具体的には、組成が窒素ボックス中でSi
5.25Al
0.75O
0.786N
7.25:Eu
0.024になるように、窒化珪素粉末と窒化アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末と酸化ユウロピウム粉末とを秤量した。これらの原料を窒素ガス雰囲気中で振動ミルにより1時間混合した。得られた混合物を窒化ホウ素製坩堝に入れた。つぎに、坩堝を、雰囲気加圧型の電気炉にセットした。油回転ポンプにより真空とした後、純度が99.999%の窒素を導入して圧力を0.8MPaとし、1000℃まで1時間、1200℃まで1時間、1800℃まで2時間の計4時間で1800℃まで昇温し、1800℃で10時間保持し、その後、炉冷し、坩堝を取り出した。合成した試料を軽く粉砕し、粉末X線回折測定(XRD)を行った。その結果、Eu希土類付活のβ−サイアロン蛍光体であることを確認した。
【0067】
この粉末をめのう乳鉢・乾式粉砕機・湿式粉砕機を用いて粉砕した。所定の粒径にした後、日本分光社製、積分球付のFP−6500を用いて、励起450nmとして、蛍光特性を評価した。
【0068】
表2には、原料の結晶質窒化珪素粉末の比表面積、平均粒子径、酸素含有量、および、比較例11の蛍光強度を100とした時の、得られたβ−サイアロン蛍光体の蛍光相対強度を示した。
【0069】
【表2】