特許第5874692号(P5874692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ベークライト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5874692-無機充填材の回収方法 図000006
  • 特許5874692-無機充填材の回収方法 図000007
  • 特許5874692-無機充填材の回収方法 図000008
  • 特許5874692-無機充填材の回収方法 図000009
  • 特許5874692-無機充填材の回収方法 図000010
  • 特許5874692-無機充填材の回収方法 図000011
  • 特許5874692-無機充填材の回収方法 図000012
  • 特許5874692-無機充填材の回収方法 図000013
  • 特許5874692-無機充填材の回収方法 図000014
  • 特許5874692-無機充填材の回収方法 図000015
  • 特許5874692-無機充填材の回収方法 図000016
  • 特許5874692-無機充填材の回収方法 図000017
  • 特許5874692-無機充填材の回収方法 図000018
  • 特許5874692-無機充填材の回収方法 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874692
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】無機充填材の回収方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/24 20060101AFI20160218BHJP
   C08G 8/04 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   C08J11/24ZAB
   C08G8/04
【請求項の数】7
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2013-156653(P2013-156653)
(22)【出願日】2013年7月29日
(62)【分割の表示】特願2010-528635(P2010-528635)の分割
【原出願日】2009年9月9日
(65)【公開番号】特開2013-249477(P2013-249477A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2013年8月6日
(31)【優先権主張番号】特願2008-234627(P2008-234627)
(32)【優先日】2008年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-330855(P2008-330855)
(32)【優先日】2008年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 純也
(72)【発明者】
【氏名】石川 真毅
(72)【発明者】
【氏名】織原 保
(72)【発明者】
【氏名】小出 太一
【審査官】 原 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−160794(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/032047(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00−11/28
C08G 8/00−8/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一モノマーおよび第二モノマーから構成される樹脂成分と無機充填材とを含む高分子材料と、前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体と、を混合した状態で前記樹脂成分を化学的に分解するステップと、
前記高分子材料と前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体との混合物から分解した前記樹脂成分を除去し、未分解の前記樹脂成分の残存率を算出するステップと、
前記樹脂成分を分解する反応系内における前記第一モノマーのモル数に対する前記第二モノマーのモル数の比率と算出された前記残存率との関係をあらかじめ取得するステップと、
前記関係に基づいて、前記高分子材料に添加する前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体の添加量を決定するステップと、
決定した前記添加量の前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体と前記高分子材料とを混合するステップと、
前記高分子材料と前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体との混合物から分解した前記樹脂成分を除去して前記無機充填材を回収するステップと、
決定した前記添加量の前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体を超臨界または亜臨界状態にするステップと、
を含み、
前記第一モノマーがフェノール類化合物であり、前記第二モノマーがアルデヒド類化合物であり、
前記超臨界または亜臨界状態にするステップにおいて、前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体と前記高分子材料とを混合した状態で前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体を超臨界または亜臨界状態にする、無機充填材の回収方法。
【請求項2】
前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体の添加量を決定する前記ステップにおいて、前記樹脂成分の残存率が10%以下となる前記比率を選択し、前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体の添加量を選択することを特徴とする請求項1に記載の無機充填材の回収方法。
【請求項3】
前記フェノール類化合物が、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾールおよびp−クレゾールの中から選択された1種または2種以上である請求項1に記載の無機充填材の回収方法。
【請求項4】
前記高分子材料が架橋型高分子を含むことを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の無機充填材の回収方法。
【請求項5】
前記無機充填材がケイ素酸化物を含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の無機充填材の回収方法。
【請求項6】
前記無機充填材がガラス繊維を含むことを特徴とする請求項1乃至いずれかに記載の無機充填材の回収方法。
【請求項7】
前記無機充填材が炭素繊維を含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の無機充填材の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料の分解処理方法、その方法を用いて生成した化学原料を用いて再生樹脂を製造する再生樹脂の製造方法、その方法により得られる再生樹脂、これを用いた再生樹脂組成物、無機充填材の回収方法、その方法により得られる無機充填材、これを含む高分子材料に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの中でも熱硬化性樹脂は、優れた電気絶縁性・耐熱性・機械的強度を示す。そのため、熱硬化性樹脂は、電気・電子部品、自動車部品等の材料として広く用いられている。
【0003】
熱硬化性樹脂は、いったん硬化すると、熱により軟化・融解せず、溶剤にも溶解しない。そのため、その硬化物から有価な化学原料を再生することは、技術的に困難であった。しかし、環境保全と資源循環型社会構築の必要性が検討されている昨今、熱硬化性樹脂のリサイクルに関しても様々な研究が行われている。
【0004】
これらの課題を克服するため、特許文献1には、フェノール樹脂を樹脂の構成モノマーであるフェノールに溶解させて、フェノールなどの低分子量化合物まで分解する一方で、有機充填材を回収する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、超臨界または亜臨界状態のアルコールをフェノール樹脂に接触させてフェノールに分解し、回収する技術が開示されている。また、特許文献2には、回収されたフェノールとホルムアルデヒドとの反応によりフェノール樹脂を生成することができる旨が記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の技術においては、再生した熱硬化性樹脂の歩留まりが良くなかった。
【0007】
そこで、特許文献3では、超臨界または亜臨界状態の溶媒中で熱硬化性樹脂を分解し、得られるオリゴマーの分子量分布が一定になったところで多官能性化合物を添加し、熱硬化性樹脂の再生を行っている。こうすることで、再生した樹脂の品質を安定させることが可能となる。
【0008】
また、上記熱硬化性樹脂の分解効率を向上させる技術も知られている。特許文献4には、熱硬化性樹脂を反応溶媒とフェノール樹脂からなる分散剤とを混合してスラリー化する技術が記載されている。これにより、高濃度スラリー中の固体分の凝集・沈降を抑制して、安定して高い分解率を達成できることが記載されている。
【0009】
さらに、特許文献5には、上記熱硬化性樹脂の無機充填材等を含む分解残渣を特定の範囲に調整する工程を加えることで、分解残渣を用いて機械強度が良好なフェノール樹脂成形材料が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−054138号公報
【特許文献2】特開2001−055468号公報
【特許文献3】国際公開第2007/032047号パンフレット
【特許文献4】特開2003−253041号公報
【特許文献5】特開2006−233141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献3の技術では、熱硬化性樹脂に対して樹脂の構成モノマーがどの程度反応系に存在すれば目的の分解反応を進行させることができるのか、明らかではなかった。そのため、過剰量の構成モノマーを使用しているのが現状であった。したがって、適量の構成のモノマーを使用することでより高効率的に分解反応を行えることが期待された。
【0012】
また、特許文献4の技術によれば、熱硬化性樹脂の樹脂成分や有機充填材を確実に分解することができるため、無機充填材を純度よく回収できることが期待される。しかしながら、本発明者らの知見によれば、ある程度未分解の樹脂成分を含む無機充填材回収物を使用して成形材料を製造しても、バージン品と遜色のない性能の成形材料を得ることができる。したがって、樹脂成分の残存率を制御することができれば、目的の仕様に応じた無機充填材を回収できることが期待される。また、特許文献4の技術のように分散剤を用いずに分解率を高めることができれば、製造工程をより簡易にすることができる。
【0013】
また、特許文献5の技術では、分解残渣を特定の範囲に調整する工程を必要とするため、スループットの向上が望まれていた。
【0014】
さらに、上記のように、熱硬化性樹脂をはじめとする架橋型高分子の分解反応は、高分子材料のリサイクル手段として利用されている。そのため、適量の試薬を使用することでより高効率的で品質の安定した樹脂を再生することができ、かつ、環境負荷の低減を図ることが期待される。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の第一の目的は、高分子材料の分解反応において、反応系に適量のモノマーを使用することを可能とすることにある。
【0016】
また、本発明の第二の目的は、高分子の分解反応から得られた化学原料に対し反応系に適量のモノマーを使用して再生樹脂を製造することにある。
【0017】
さらに、本発明の第三の目的は、高分子材料から無機充填材を回収する方法において、未分解の樹脂成分の含有量を制御することにある。
【0018】
本発明の発明者らは、第一モノマーおよび第二モノマーから構成される樹脂成分を含む高分子材料の分解反応について鋭意検討を重ねたところ、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と分解反応で生成される化学原料の分子量とが一定の関係にあることを見いだし、第一の本発明を完成するに至った。
【0019】
また、本発明の発明者らは、第一モノマーおよび第二モノマーから構成される樹脂成分を含む高分子材料を分解し得られる分解物から再生樹脂を製造する方法について鋭意検討を重ねたところ、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と再生樹脂の物性値とが一定の関係にあることを見いだし、第二の本発明を完成するに至った。
【0020】
さらに、本発明の発明者らは、第一モノマーおよび第二モノマーから構成される樹脂成分を含む高分子材料の分解反応について鋭意検討を重ねたところ、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と回収無機充填材に含まれる未分解の樹脂成分の残存率とが一定の関係にあることを見いだし、第三の本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0021】
すなわち、第一の態様としては、第一モノマーおよび第二モノマーから構成される樹脂成分を含む高分子材料と前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体とを混合した状態で前記樹脂成分を化学的に分解し、前記高分子材料を再生する原料となる化学原料を生成する高分子材料の分解処理方法であって、
前記樹脂成分を分解する反応系内における前記第一モノマーのモル数に対する前記第二モノマーのモル数の比率と、前記反応系内で生成される前記化学原料の分子量と、の関係をあらかじめ取得するステップと、
前記関係に基づいて、前記高分子材料に添加する前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体の添加量を決定するステップと、
決定した前記添加量の前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体と前記高分子材料とを混合するステップと、
を含むことを特徴とする高分子材料の分解処理方法がる。
【0026】
第一の態様によれば、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と反応系内で生成される化学原料の分子量との関係をあらかじめ取得することで、取得した関係に基づいて、高分子材料に添加する第一モノマーの添加量を決定し、所望の化学原料を得るために適量の第一モノマーと高分子材料とを混合する。こうすることにより、必要最小限の第一モノマーを用いて高分子材料を分解することができる。したがって、高分子材料の分解処理を高効率的に行うことができ、かつ、環境負荷の低減を図ることが可能となる。
【0029】
また、第二の態様としては、第一モノマーおよび第二モノマーから構成される樹脂成分を含む高分子材料と、前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体と、を混合した状態で前記樹脂成分を化学的に分解し、分解した前記樹脂成分と前記第二モノマーまたは前記第二モノマーの誘導体とを混合させて再生樹脂を製造する再生樹脂の製造方法であって、
分解した前記樹脂成分から前記再生樹脂を製造する反応系内における、前記第一モノマーのモル数に対する前記第二モノマーのモル数の比率と前記再生樹脂の物性値との関係を、あらかじめ取得するステップと、
前記関係に基づいて、分解した前記樹脂成分に添加する前記第二モノマーまたは前記第二モノマーの誘導体の添加量を決定するステップと、
決定した前記添加量の前記第二モノマーまたは前記第二モノマーの誘導体と分解した前記樹脂成分とを混合するステップと、
を含むことを特徴とする再生樹脂の製造方法がある
【0030】
第二の態様によれば、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と反応系内で生成される再生樹脂の物性値との関係をあらかじめ取得することで、取得した関係に基づいて、第一モノマーおよび第二モノマーから構成される樹脂成分の分解物に添加する第二モノマーの添加量を決定し、所望の物性値を有する再生樹脂を得るために適量の第二モノマーと分解した樹脂成分とを混合する。こうすることにより、必要最小限の第二モノマーと分解した樹脂成分とを混合状態にして再生樹脂を製造することができる。したがって、再生樹脂の歩留まりを改良しつつ、かつ、環境負荷を低減することができる。
【0031】
また、第二の態様としては、第一モノマーおよび第二モノマーから構成される樹脂成分を含む高分子材料と、前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体と、を混合した状態で前記樹脂成分を化学的に分解し、分解した前記樹脂成分と前記第二モノマーまたは前記第二モノマーの誘導体とを混合させて再生樹脂を製造する再生樹脂の製造方法であって、
分解した前記樹脂成分から前記再生樹脂を製造する反応系内に前記第二モノマーを添加するステップと、
前記反応系内に生成した前記再生樹脂の分子量を反映する物性値を観測するステップと、
前記反応系内における、前記第一モノマーのモル数に対する前記第二モノマーのモル数の比率と前記物性値との関係に基づいて、分解した前記樹脂成分に添加する前記第二モノマーまたは前記第二モノマーの誘導体の添加量を決定するステップと、
決定した前記添加量の前記第二モノマーまたは前記第二モノマーの誘導体と分解した前記樹脂成分とを混合するステップと、
を含むことを特徴とする再生樹脂の製造方法もある
【0034】
第二の態様によれば、分解した樹脂成分から再生樹脂を製造する反応系内に第二モノマーを添加しつつ反応系内に生成した再生樹脂の分子量を反映する物性値を観測し、反応系内における、第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と物性値との関係に基づいて、分解した樹脂成分に添加する第二モノマーの添加量を決定する。こうすることにより、必要最小限の第二モノマーを用いて再生樹脂を製造することができる。したがって、再生樹脂の歩留まりを改良しつつ、かつ、環境負荷を低減することができる。
【0037】
発明によれば、第一モノマーおよび第二モノマーから構成される樹脂成分と無機充填材とを含む高分子材料と、前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体と、を混合した状態で前記樹脂成分を化学的に分解するステップと、
前記高分子材料と前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体との混合物から分解した前記樹脂成分を除去し、未分解の前記樹脂成分の残存率を算出するステップと、
前記樹脂成分を分解する反応系内における前記第一モノマーのモル数に対する前記第二モノマーのモル数の比率と算出された前記残存率との関係をあらかじめ取得するステップと、
前記関係に基づいて、前記高分子材料に添加する前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体の添加量を決定するステップと、
決定した前記添加量の前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体と前記高分子材料とを混合するステップと、
前記高分子材料と前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体との混合物から分解した前記樹脂成分を除去して前記無機充填材を回収するステップと、
決定した前記添加量の前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体を超臨界または亜臨界状態にするステップと、
を含み、
前記第一モノマーがフェノール類化合物であり、前記第二モノマーがアルデヒド類化合物であり、
前記超臨界または亜臨界状態にするステップにおいて、前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体と前記高分子材料とを混合した状態で前記第一モノマーまたは前記第一モノマーの誘導体を超臨界または亜臨界状態にする、無機充填材の回収方法が提供される。
【0040】
発明によれば、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と高分子材料の残存率との関係をあらかじめ取得することで、取得した関係に基づいて、高分子材料に添加する第一モノマーの添加量を決定し、高分子材料の分解効率を制御することができる。したがって、未分解の樹脂成分をリサイクル可能な所望の範囲で含有する無機充填材を回収することができ、かつ、環境負荷の低減を図ることが可能となる。
【0041】
また、本発明において、第一モノマーの添加量を決定するステップでは、取得した上記関係から所望の残存率に対応する上記比率を選択し、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率が選択した比率の所定範囲内となるように第一モノマーの添加量を決定することができる。
【0042】
なお、本発明において、「高分子材料」とは、熱可塑性樹脂、及び/または熱硬化性樹脂の少なくともいずれか一方を含む樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いた製品をいい、前記樹脂組成物は、充填材、添加剤等を含む複合材料であっても良い。
【0043】
高分子材料は、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂組成物と無機充填材とを含む成形材料や封止材料、或いは、熱硬化性樹脂を無機基材や有機基材に含浸させて製造した積層板、これに金属箔を張り合わせた金属張り積層板、さらには熱硬化性樹脂製品などが挙げられる。
【0044】
また、本発明において、高分子材料の分解処理とは、高分子材料の化学的な分解処理であってもよいし、高分子材料の化学的な分解処理を含んでいてもよい。また、高分子材料の可溶化処理であってもよいし、高分子材料の可溶化処理を含んでいてもよい。
【0045】
本発明によれば、高分子材料の分解処理に適量の試薬を用いて、高分子材料の分解処理を高効率的に行うことができ、かつ、環境負荷を低減することができる。
【0047】
さらに、本発明によれば、高分子材料に含まれる樹脂成分の分解効率を容易に制御することができ、未分解の樹脂成分を所望の範囲で含有する無機充填材を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0049】
図1】実施の形態に係る分解処理方法を示すフローチャートである。
図2】実施の形態に係る再生樹脂の製造方法を示すフローチャートである。
図3】実施の形態に係る分解反応を示す模式図である。
図4】実施の形態に係る高分子材料を分解する反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と、反応系内で生成される化学原料の分子量と、の関係を示す図である。
図5】実施の形態の無機充填材の回収方法を説明するフローチャートである。
図6】高分子材料から化学原料および無機充填材を得る工程を説明するフローチャートである。
図7】実施の形態の再生樹脂の製造方法を説明するフローチャートである。
図8】実施の形態の再生樹脂の製造方法の変形例を説明するフローチャートである。
図9】実施例1の結果を示す図である。
図10】実施例1の結果を示す図である。
図11】実施例2の結果を示す図である。
図12】実施例3の結果を示す図である。
図13】実施例3の結果を示す図である。
図14】実施例4の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0051】
(第1の実施形態)
本実施の形態は、第一モノマーおよび第二モノマーから構成される高分子材料と第一モノマーまたは第一モノマーの誘導体とを混合した状態で樹脂成分を化学的に分解し、高分子材料を再生する原料となる化学原料を生成する高分子材料の分解処理方法である。本明細書において、「化学原料」とは、モノマー、オリゴマーまたはこれらの混合物からなる樹脂成分の分解物である。
【0052】
図1は、本実施の形態の高分子材料の分解処理方法を示すフローチャートである。図1で示すように、まず、樹脂成分を分解する反応系内における第一モノマーのモル数(物質量)に対する第二モノマーのモル数(物質量)の比率と、反応系内で生成される化学原料の分子量との関係をあらかじめ取得する(S101)。ついで、上記関係に基づいて、高分子材料に添加する第一モノマーの添加量を決定する(S102)。ついで、決定した添加量の第一モノマーと高分子材料とを混合する(S103)。その後、第一モノマーを超臨界または亜臨界状態にする(S104)。これにより、高分子材料の分解処理が進行し、化学原料を得る(S105)。
【0053】
以下、本実施の形態の高分子材料の分解処理方法について詳細に説明する。
【0054】
図3には、高分子材料を分解する反応系の模式図を示す。高分子材料中の樹脂成分は第一モノマー(分子量:α)と第二モノマー(分子量:β)とが化学結合することにより構成されている。この高分子材料に第一モノマーまたはその誘導体を加えると第一モノマーと樹脂成分とが反応する。たとえば、図3(a)で示すように、分子量(4α+5β)の樹脂成分1分子に対して第一モノマーを1分子添加すると、樹脂成分に第一モノマーが付加し、分子量(5α+5β)の化学原料1分子が生成する。また、図3(b)で示すように、上記樹脂成分1分子に対して第一モノマーを2分子添加すると、樹脂成分が分解し、数平均分子量{(6α+5β)/2}の化学原料2分子が生成する。また、図3(c)で示すように、上記樹脂成分1分子に対して第一モノマーを4分子添加すると、樹脂成分が分解し、数平均分子量{(8α+5β)/3}の化学原料3分子が生成する。
【0055】
そこで、S101では、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマー数の比率を横軸にプロットし、生成する化学原料の数平均分子量(Mn)を縦軸にプロットする。こうすることで、図4で示すようなグラフを取得することができる。第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率が1.0以上では、高分子材料に第一モノマーが付加する付加反応が進行し、生成する化学原料の分子量を制御することができない。しかし、第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率が1.0未満になることで高分子材料の分解反応が進行する。このとき、第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率が一定範囲にあるとき、この比率と生成する化学原料の分子量とが近似的に比例関係になる。第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率がある一定値に達すると、生成する化学原料の数平均分子量も一定となる。
【0056】
なお、生成する化学原料の数平均分子量(Mn)にかえて重量平均分子量(Mw)を縦軸にプロットしてもよい。
【0057】
ついで、S102では、図4で示すグラフをもとに第一モノマーの添加量を決定する。具体的には、高分子材料の第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率から分解反応のメカニズムを予測し、あらかじめ目的とする分子量範囲を決定する。そして、対応する第一モノマーのモル数と第二モノマーのモル数との比率の範囲を決めて、それに応じた第一モノマーの添加量を決定する。
【0058】
なお、S101では、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率が1.0未満となる範囲で任意の2点に対応する化学原料の分子量を調べてもよい。このとき、S102では、得られた2点間を補完する上記比率および化学原料の分子量から第一モノマーの添加量を決定する。
【0059】
このようにS102において決定した量の第一モノマーを添加して高分子材料に混合する(S103)。その後、第一モノマーを超臨界または亜臨界状態にする(S104)。このとき、第一モノマーとともに反応溶媒を添加してもよい。
【0060】
ここで、本明細書において、超臨界状態とは、第一モノマーまたは反応溶媒の臨界点(臨界温度、臨界圧力)よりも高温高圧の状態とすることをいう。超臨界状態となることで、第一モノマーは、物質を容易に溶解し、大きな拡散速度を示す、液体と気体との両方の性質を持つ状態になる。また、亜臨界状態とは、臨界点より温度と圧力の両方がやや低い臨界点の近傍にある領域、もしくは臨界点より温度または圧力のどちらかがやや低い臨界点の近傍にある領域をいう。
【0061】
つづいて、本明細書における第一モノマーまたは反応溶媒の超臨界状態または亜臨界状態の温度・圧力の範囲を説明する。第一モノマーの臨界温度をTc[K]、臨界圧力をPc[MPa]、温度:T[K]を臨界温度で除した還元温度をTr(=T/Tc)、圧力:P[MPa]を臨界温度で除した還元圧力をPr(=P/Pc)とする。
【0062】
本明細書において、超臨界または亜臨界状態とは、具体的には、高分子材料と第一モノマーとの混合物を、0.7≦Tr≦1.3、かつ0.3≦Pr≦6.0の範囲の温度(T)・圧力(P)の状態にすることをいう。好ましくは、0.8≦Tr≦1.2、かつ0.4≦Pr≦4.0の範囲である。本明細書においては、上記の温度(T)・圧力(P)の範囲において、1.0≦Trかつ1.0≦Prの場合を超臨界状態と定義して、それ以外の範囲を亜臨界状態と定義する。
【0063】
以下に、具体的な温度・圧力の範囲を例示する。第一モノマーがフェノールの場合、フェノールの臨界温度は694K(421℃)、臨界圧力は6.1MPaであるため、超臨界または亜臨界状態とは、温度が486K(213℃)以上で902K(629℃)以下、かつ圧力が1.8MPa以上で36.6MPa以下の範囲である。好ましくは、温度が555K(282℃)以上で833K(560℃)以下、かつ圧力が2.4MPa以上で24.4MPa以下の範囲である。
【0064】
また、反応溶媒としてメタノールを用いる場合、メタノールの臨界温度は513K(240℃)、臨界圧力は8.1MPaであるため、超臨界または亜臨界状態とは、温度が359K(86℃)以上で667K(394℃)以下、かつ圧力が2.4MPa以上で48.6MPa以下の範囲である。好ましくは、温度が410K(137℃)以上で616K(343℃)以下、かつ圧力が3.2MPa以上で32.4MPa以下の範囲である。
【0065】
また、反応溶媒として水を用いる場合、水の臨界温度は648K(374℃)、臨界圧力は22.1MPaであるため、超臨界または亜臨界状態とは、温度が453K(180℃)以上で841K(568℃)以下、かつ圧力が6.6MPa以上で132.6MPa以下の範囲である。好ましくは、温度が518K(245℃)以上で776K(503℃)以下、かつ圧力が8.8MPa以上で88.4MPa以下の範囲である。
【0066】
以上のように、第一モノマーまたは反応溶媒およびこれらの混合物を超臨界または亜臨界状態にすることで、高分子材料の分解処理が進行し、所定の後処理を行って化学原料を含む生成物を回収する。
【0067】
このようにして得られた回収物に含まれる化学原料により、高分子材料を再生することができる。
【0068】
また、本実施の形態の方法では、第一モノマーに代えて第一モノマーの誘導体を高分子材料に添加して化学原料を得てもよい。こうして得られた化学原料を用いることで分解処理した高分子材料とは異なる樹脂を製造することができる。
【0069】
本実施の形態で得られた化学原料から製造した高分子化合物を以下「再生樹脂」という。
【0070】
図2には、本実施の形態の分解処理を用いた再生樹脂の製造方法を説明するフローチャートを示す。
【0071】
まず、S201において、図1で示した本実施の形態の高分子材料の分解処理を実行し、化学原料を得る。ついで、S202において、S201で得られた化学原料から再生樹脂を製造する。
【0072】
具体的には、S202では、S201で生成した化学原料に多官能性化合物を添加する。多官能性化合物としては第二モノマーまたは第二モノマーの誘導体を用いることができる。
【0073】
以下、本実施の形態で実行する高分子材料の分解反応についてより具体的に説明する。
【0074】
本実施の形態で実行する高分子材料の分解反応は、高分子材料を加熱加圧処理容器中で、第一モノマーを必須成分とする超臨界または亜臨界状態の溶媒中で分解および/または可溶化することにより化学原料を得るものである。
【0075】
(a)高分子材料
本実施の形態において、分解処理する高分子材料は、第一モノマーおよび第二モノマーから構成される。具体的には、高分子材料は、直鎖状高分子、および/または架橋型高分子を用いる。直鎖状高分子としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ナイロン66などの熱可塑性樹脂から選ばれ、架橋型高分子としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、ラジカル硬化性樹脂からなる群から選択される。
【0076】
本実施の形態に適用される熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂について、特に効果的に適応できる。さらには、フェノール樹脂を含むものが、より好ましい。
【0077】
このようなフェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、および桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性のレゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。
【0078】
(b)第一モノマー
本実施の形態に用いる第一モノマーとしては、フェノール類化合物、尿素、メラミン化合物、およびこれらのモノマーの誘導体が挙げられる。
【0079】
このような第一モノマーとしては、たとえば芳香環の炭素に結合する水素の少なくとも一つがヒドロキシル基に置換しているフェノール類化合物を選択することができる。このフェノール類化合物は、単独または他の溶媒との混合物として、超臨界または亜臨界状態で溶媒として機能し、高分子材料を分解および/または可溶化処理し得る。フェノール類化合物として、たとえば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール類、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール類、2,3,5−トリメチルフェノール等のトリメチルフェノール類、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール等のエチルフェノール類、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール等のアルキルフェノール類、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のナフタレンジオール類、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、ピロガロール、フルオログルシン等の多価フェノール類、アルキルレゾルシン、アルキルカテコール、アルキルハイドロキノンなどのアルキル多価フェノール類が挙げられる。これらのうち、コスト面および分解反応に与える効果から、フェノールが好ましい。
【0080】
または、第一モノマーとしては、メラミン化合物を選択することができる。メラミン化合物として、たとえば、メラミン、あるいは、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のメラミンのアミノ基が他の官能基で置換された化合物が好適に用いられる。
【0081】
第一モノマーとしては、これらの一種または二種以上組合せて用いることができる。
【0082】
(c)第二モノマー
本実施の形態に用いる高分子材料を構成する第二モノマーとしては、多官能性化合物を用いる。この多官能性化合物としては、たとえば、アルデヒド類化合物が挙げられ、中でもホルムアルデヒド類化合物が好適に使用される。このホルムアルデヒド類化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、ジヒドロキシベンズアルデヒド、トリヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−メトキシアルデヒドパラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0083】
第二モノマーとしては、これらの一種または二種以上を組合せて用いることができる。
【0084】
(d)処理条件
高分子材料の分解処理条件は、第一モノマーを必須成分とする溶媒を超臨界または亜臨界状態にすればよく、主に温度および圧力により調整することができる。なお、分解処理設備としては、この処理条件を実施できる形式であれば良く、バッチ式、セミバッチ式、連続式のいずれの形式でも良い。
【0085】
高分子材料は、硬化した樹脂、未硬化もしくは半硬化の樹脂、これらの樹脂を含有するワニスなどを含んでもよい。
【0086】
高分子材料としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等を含む熱硬化性樹脂組成物とシリカ等の無機充填材とを含む封止材料などが挙げられる。また、ガラス不織布のような無機基材、もしくは、紙、布等の有機基材に含浸させて製造した積層板、これに銅箔等の金属箔を張り合わせた金属張り積層板、または、これを加工して得られるプリント回路板等の熱硬化性樹脂製品を高分子材料としてもよい。
【0087】
また、その他の高分子材料として、熱硬化性樹脂組成物を用いた成形材料、発泡材、摩擦材、鋳物、接着剤、耐火物、砥石などの熱硬化性樹脂製品なども挙げられる。熱硬化性樹脂組成物とは、たとえば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アルキル変性フェノール樹脂、フェノキシ変性フェノール樹脂、カシュー等のオイルにより変性されたフェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化性樹脂に、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維等の無機充填材や、木粉等の有機充填材、ゴム成分、その他添加剤を配合したものである。
【0088】
処理に供する高分子材料が固形状である場合、その形状や大きさには、特に制限はなく、粉砕に要するコスト、分解速度を考慮して、適当な大きさに粉砕すればよいが、通常は、粒子径1000μm以下であり、好ましくは500μm以下、さらに好ましくは250μm以下である。前記の粒子径の範囲であることにより、分解処理工程を短時間で行うことができ、効率的である。一方、前記下限値未満では、分解処理工程に供する前の粉砕工程においては、粉砕の膨大なコスト増加につながる場合がある。また前記下限値未満に粉砕しても、その後の分解処理工程における分解効率はそれほど良くならない。前記上限値より大きいと、比表面積の関係で分解効率が悪くなり、場合によっては、高分子材料が沈降し分解できないこともある。したがって、前記の粒子径の範囲において、分解処理工程と粉砕工程の双方のバランスがとれる粒子径を選定すれば良い。
【0089】
第一モノマーは、本実施の形態の高分子材料を分解した後、分離・精製して得られるものを含んでもよい。
【0090】
また、第一モノマーは他の溶媒と混合して用いてもよい。他の溶媒としては、水をはじめとして、メタノールおよびエタノール等のアルコール類、エチレングリコールおよびプロピレングリコール等のグリコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、有機酸類、酸無水物類など、通常の化学反応において溶媒として用いられるものは、いずれを用いてもよく、また、複数の溶媒を使用してもよい。これらの溶媒のうち、分解反応に与える効果、および、入手の容易さ等から水が好ましい。また、構成モノマー類に対する他の溶媒の混合割合としては、第一モノマー100重量部に対して他の溶媒1〜500重量部の割合で混合して用いることが好ましく、さらに好ましくは、第一モノマー100重量部に対して他の溶媒5〜50重量部の割合である。
【0091】
温度としては、通常、還元温度(Tr)が、0.7≦Tr≦1.3の範囲となる温度が好ましく、より好ましくは、0.8≦Tr≦1.2の範囲である。温度が低すぎると、高分子材料の分解速度が低下し、短時間での処理が困難になる場合がある。逆に高すぎると、熱分解や脱水反応などの副反応が併発して化学原料の化学構造が変化し、化学原料の再利用が困難になってしまう場合がある。そこで、温度を上記範囲とすることで、高い分解速度の維持と副反応の抑制を両立した、優れた方法となる。
【0092】
また、圧力としては、通常、還元圧力(Pr)が、0.3≦Pr≦6.0となる圧力の範囲が好ましく、より好ましくは、0.4≦Pr≦4.0の範囲である。圧力が低すぎると、第一モノマーが超臨界または亜臨界状態ではなく、蒸気または気体の状態となるため、分解速度が低下してしまう場合がある。逆に、圧力が高すぎると、より過酷な条件で運転可能な設備が必要となり、高圧を維持するために必要なエネルギーが増加する反面、分解速度はほとんど向上せず、格別な効果が得られない場合がある。そこで、圧力を上記範囲とすることで、高い分解速度の維持とエネルギー消費の抑制を両立した、優れた方法となる。
【0093】
また、分解処理は、化学原料の分子量分布(Mw/Mn)が一定の値になるまで続けられる。その反応時間としては、1〜60分、好ましくは3〜30分程度である。
【0094】
本実施の形態の方法は、高分子材料を分子量(Mw)が2.0×10以上2.5×10以下の化学原料に分解する方法として好ましく、この分子量はフェノール樹脂の場合、2〜25核体に相当する。より好ましくは、分子量が2.0×10以上1.5×10以下の範囲とすることができ、この分子量はフェノール樹脂の場合、2〜15核体に相当する。ここでいう、化学原料の分子量は、化学原料に含まれる樹脂成分がここで示した分子量の樹脂成分を50重量%以上含むことをいう。処理終了時の化学原料の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは、1.0以上3.0以下の範囲であり、より好ましくは、1.0以上2.0以下の範囲である。このように、本実施の形態では、一定の分子量分布を有する化学原料を得るため、次工程で得られる再生樹脂の品質が安定するようになる。
【0095】
なお、分解処理終了時における化学原料の分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定するのが好適である。このときの測定装置、条件の具体例としては、分離カラムは、東ソーTSKgelGMHL2本およびTSKgelG2000HL2本を使用し、溶離液としてはテトラヒドロフランを使用し、検量線はポリスチレン換算にて得て、検出器は示唆屈折計を使用し、流量1cm/min、温度:40℃とすることが挙げられる。
【0096】
本実施の形態の分解処理では、処理速度を促進するという観点からは、塩基性触媒の存在下で行うことが好ましい。その場合の塩基性触媒としては、特に限定はないが、たとえば、ブレンステッド塩基・ルイス塩基、あるいは、天然無機・有機化合物、さらには金属酸化物で水和反応等によって同等の効果を示す化合物などが挙げられ、これらの一種または二種以上を用いることができる。
【0097】
前記塩基性触媒の具体例としては、水酸化ベリリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムや、水和等によって同等の効能を発現する酸化物などの無機化合物、ピリジンおよびトリエチルアミンなどのアミン類、アセトアミジンおよびベンジルアミジンなどのアミジン類、ジアゾビシクロウンデセンなどのアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムヒドロキシドなどのホスホニウム塩などの有機化合物が挙げられる。
【0098】
以上のようにして本実施の形態の分解処理方法により得られた化学原料を多官能性化合物と反応させることで再生樹脂を製造することができる。このとき、化学原料として、分解処理工程(S201)終了後の回収物をそのまま用いてもよい。多官能性化合物としては、第二モノマーまたは第二モノマーの誘導体を用いることができる。
【0099】
再生樹脂は、たとえば、特許文献3で示す公知の方法で得ることができる。この再生樹脂の化学構造の代表的な例としては、高分子材料としてフェノール樹脂を用いた場合は、フェノール骨格の核間がメチレン結合で結合した、ノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。高分子材料がメラミン樹脂である場合、メラミン骨格の核間がメチレン結合で結合したメラミン樹脂が挙げられる。高分子材料が尿素樹脂である場合、尿素骨格の核間がメチレン結合で結合した尿素樹脂が挙げられる。高分子材料がエポキシ樹脂である場合、ビスフェノールA、ビスフェノールF,フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などの上記エポキシ樹脂の主骨格の核間がメチレン結合で結合した構造の化合物が挙げられる。なお、上記エポキシ樹脂から得られる再生樹脂に、さらにエピクロロヒドリンを加えて反応させた場合は、上記再生樹脂をエポキシ化した構造の化合物が挙げられる。また、原料の熱硬化性樹脂がフェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂を含む場合、これらそれぞれの樹脂や、フェノール骨格、メラミン骨格、尿素骨格、あるいはエポキシ樹脂の主骨格、それぞれの核間がメチレン結合で共重合した構造などが挙げられる。ただし、これらの化学構造は一例であり、得られる再生樹脂は、通常、2.0×10〜1.0×10の分子量を有する高分子成分を主体とし、分子量分布(Mw/Mn)が好ましくは2.0以上15以下の範囲であり、より好ましくは3.0以上10以下の範囲である。ここで、再生樹脂の成分の分子量とは、重量平均分子量(Mw)を意味するものとする。
【0100】
2.0×10〜1.0×10の分子量は、高分子材料を製造する際に用いられるプレポリマーと同程度であるため、必要に応じて精製を行うことによりプレポリマーとして再利用することができる。ここで、2.0×10〜1.0×10の分子量を有する高分子成分を主体とするとは、ここで示した分子量の高分子成分が50重量%以上含まれることをいうが、主体とする高分子成分の分子量の他に、分子量1.0×10を超える高分子成分も含まれる。また、2.0×10〜1.0×10の分子量を有する高分子成分としては、通常の高分子材料の場合は、原料モノマーの2.0〜1.0×10核体程度である。また、上記2.0×10〜1×10の分子量を有する高分子成分を主体とする化合物は、高分子材料から得られる成分だけでなく、高分子材料中に含まれる有機質系充填材や基材から得られる成分を含む場合がある。
【0101】
ここで、得られた再生樹脂は、溶媒および残渣などを分離した後、再生樹脂組成物の原料として再利用することができる。この分離の方法としては、特に限定されるものではなく、通常の固液分離で用いられる。サイクロン、ろ過、重力沈降などの方法が挙げられる。また、上記2.0×10〜1.0×10の分子量を有する高分子成分を主体とする再生樹脂、高分子材料の処理回収物を含む混合物を、有機溶媒で希釈した後に、サイクロン・ろ過・重力沈降などの固液分離操作をしてもよい。
【0102】
また、本実施の形態においては、未反応の第一モノマーを分離し、これを新たに高分子材料の分解処理に再利用することができる。さらには上記2.0×10〜1.0×10の分子量を有する高分子成分を主体とする再生樹脂に、蒸留や抽出などの方法を施し、第一モノマーを分離・回収して再利用することができる。ここで、未反応の第一モノマーを分離する方法には、特に限定はなく、フラッシュ蒸留、減圧蒸留、溶媒抽出など、いずれの方法を用いても良い。なお、本実施の形態の構成によれば、必要最小限の第一モノマーを反応系内に仕込むことができるため、上記の再利用操作は従来よりも軽減されることとなる。
【0103】
また、得られる再生樹脂には、上記2.0×10〜1.0×10の分子量を有する高分子成分以外に、第一モノマー、第二モノマー、水などの、未反応の反応試薬が少量含まれていてもよい。
【0104】
つづいて、本実施の形態の作用効果について説明する。本実施の形態で示す方法によれば、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と反応系内で生成される化学原料の分子量との関係をあらかじめ取得することで、取得した関係に基づいて、高分子材料に添加する第一モノマーまたは第一モノマーの誘導体の添加量を決定し、所望の化学原料を得るために適量の第一モノマーと高分子材料とを混合する。こうすることにより、必要最小限の第一モノマーと高分子材料とを混合状態にして高分子材料を分解することができる。したがって、高分子材料の分解処理を高効率的に行うことができ、環境負荷の低減を図ることが可能となる。
【0105】
また、本実施の形態の分解処理方法を用いて得られた化学原料を用いることで高分子材料を再生することができる。また、S102で第一モノマーの誘導体を添加したり、S202で第二モノマーの誘導体を用いたりすることで、任意の再生樹脂を製造することができる。したがって、過剰な試薬を使用することなく再生樹脂を得ることができ、より環境に対する負荷が低減されたリサイクル手段を提供することが可能となる。
【0106】
(第2の実施形態)
図5は、本実施の形態の無機充填材の回収方法を説明するフローチャートである。この無機充填材の回収方法は、第一モノマーおよび第二モノマーから構成される樹脂成分と無機充填材とを含む高分子材料と、第一モノマーまたは第一モノマーの誘導体と、を混合した状態で樹脂成分を化学的に分解するステップ(S301)と、高分子材料と第一モノマーまたは第一モノマーの誘導体との混合物から分解した樹脂成分を除去し、未分解の樹脂成分の残存率を算出するステップ(S302)と、樹脂成分を分解する反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と算出された残存率との関係をあらかじめ取得するステップ(S303)と、上記関係に基づいて、高分子材料に添加する第一モノマーの添加量を決定するステップ(S304)と、決定した添加量の第一モノマーと高分子材料とを混合するステップ(S305)と、高分子材料と第一モノマーとの混合物から分解した樹脂成分を除去して無機充填材を回収するステップ(S306)と、を含む。
【0107】
以下、本実施の形態について図5、6を用いつつ具体的に説明する。図6は、高分子材料から化学原料および無機充填材を得る工程を説明するフローチャートである。
[S301:高分子材料の分解処理]
まず、第一モノマーおよび第二モノマーから構成される樹脂成分と無機充填材とを含む高分子材料を用意する。高分子材料は、第1の実施形態で例示したものを用いることができる。また、第一モノマーおよび第二モノマーもまた、第1の実施形態で説明したものを用いることができる。
【0108】
本実施の形態において、無機充填材としては、シリカ等のケイ素酸化物、ガラス繊維、炭素繊維、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、水酸化アルミニウム、クレー、焼成クレー、タルク、ケイソウ土、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムを例示することができる。
【0109】
ついで、高分子材料に第一モノマーを添加して樹脂成分を化学的に分解する。このとき、第一モノマーは他の溶媒と混合して用いてもよい。他の溶媒としては、第1の実施形態で例示したものを用いることができる。
【0110】
ここで、第一モノマーと高分子材料とを混合した状態で第一モノマーと他の溶媒との混合物を超臨界または亜臨界状態にする。こうすることで、酸触媒や塩基性触媒などを加えることなく、短い反応時間で樹脂成分を分解することができる。ただし、より短い反応時間、より低い反応温度で分解するために、酸触媒、塩基触媒を用いても良い。このときの温度及び圧力は、第1の実施形態で説明したS104と同様にすることができる。
【0111】
[S302:未分解の樹脂成分の残存率の評価]
分解反応の終了後、分解生成物に任意の溶媒を添加する。ここで用いる溶媒は、分解した樹脂成分が溶解し、未分解の樹脂成分および無機充填材が溶解しないものを選択することができる。そして、フィルター濾過して、濾液を可溶分とする。また、濾過した後のフィルターに残った残渣を不可溶分とする。フィルターの孔径は、未分解の樹脂成分および無機充填材が残留すればよいが、好ましくは、0.1μm〜10μmとする。ついで、不可溶分を灰化処理して秤量する。残存率は式1によって求めることができる。
【0112】
(式1)
無機充填材回収物(1)に含まれる未反応樹脂成分の残存率 [%]
=[{無機充填材回収物(1)の重量(g)−灰化後の残渣(2)の重量(g)}/無機充填材回収物(1)の重量(g)]×100
【0113】
[S303:反応系内における第二モノマー/第一モノマーのモル比と未分解の樹脂成分の残存率との関係に関するデータの取得]
S303では、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマー数の比率を横軸にプロットし、S302の評価の結果、得られた残存率を縦軸にプロットする。第1の実施形態で説明したように、第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率が1.0未満になることで高分子材料の分解反応が進行する。このとき、第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率が一定範囲にあるとき、この比率と生成する化学原料の分子量とが近似的に比例関係になる。第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率がある一定値に達すると、生成する化学原料の数平均分子量や重量平均分子量も一定となる。分解率は、高分子材料に含まれる樹脂成分が化学原料に分解される割合と定義される。そのため、この原理によれば、第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率が一定範囲にあるとき、この比率と樹脂成分の分解率とが近似的に比例関係になり、ある一定値に達すると、分解率は100%に達する。また、残存率は、理論上は、分解生成物に含まれる未分解の樹脂成分の含有量と定義される。そのため、第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と残存率とは近似的に比例関係になり、ある一定値に達すると、残存率は0%に達する。
【0114】
[S304:高分子材料に添加する第一モノマーの添加量の決定]
ついで、S303で得られた比例関係に基づいて、高分子材料に添加する第一モノマーまたは第一モノマーの誘導体の添加量を決定する。具体的には、第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率から、目的の高分子材料中の残存率の範囲をあらかじめ決定する。そして、対応する第一モノマーのモル数と第二モノマーのモル数との比率の範囲を決めて、それに応じた第二モノマーの添加量を決定する。このとき、樹脂成分の残存率が10%以下となる比率を選択すると好ましく、残存率が5%以下となる比率を選択するとより好ましい。こうすることで、回収した無機充填材を使用して高品質の高分子材料を製造することができる。なお、任意の2点に対応する残存率を調べてもよい。このとき、得られた2点間を補完する上記比率および残存率から第一モノマーの添加量を決定する。そして、分解する高分子材料に含まれる樹脂成分を構成する第一モノマーおよび第二モノマーのモル数を換算し、反応系内における第一モノマーと第二モノマーとの比率が選択した比率となるように第一モノマーの添加量を選択する。こうすることで、再利用可能な程度の任意の範囲の樹脂成分を含む無機充填材を回収することができる。
【0115】
[S305:第一モノマーと高分子材料とを混合]
ついで、S304において決定した添加量の第一モノマーを高分子材料に添加して混合させた後、S301と同様に第一モノマーを超臨界または亜臨界状態にして高分子材料の分解処理を行う。このときもまた、S301のように、第一モノマーは他の溶媒として混合してもよい。また、第一モノマーに代えて第一モノマーの誘導体を高分子材料に添加してもよい。
【0116】
[S306:無機充填材の回収]
ついで、分解処理後の生成物を任意の溶媒で溶解・希釈させたのち、フィルターで濾過する。フィルターの孔径は、S302で用いたものと同様にすることができる。フィルターに残った不可溶化分を、乾燥させて無機充填材を回収する。
【0117】
回収した無機充填材は、プラスチックなどの高分子材料の充填材として再利用することができる。この再利用の方法としては、例えば、熱硬化性樹脂成形材料の原材料として再利用する場合、無機充填材回収物を他の原材料と混合して公知の製造方法により再利用できる。その際、新たな無機充填材を用いることなく、回収された無機充填材のみを原材料として用いてもよいし、他の化学原料および/または充填材と併用して用いてもよい。再利用される無機充填材の含有量としては、特に限定されないが、新たな熱硬化性樹脂成型材料全体に対して、2〜80重量%であり、好ましくは5〜60重量%である。
【0118】
無機充填材の回収物を他の化学原料と併用する場合、併用する化学原料としては、特に限定されないが、例えば、ノボラックフェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂などの樹脂が挙げられる。また、第1の実施形態で得られた化学原料を用いてもよい。
【0119】
また、熱硬化性樹脂成形材料の原材料として、無機充填材の回収物を通常の充填材と併用する場合、併用する充填材としては、特に限定されないが、通常の熱硬化性樹脂成形材料で用いる、無機基材および/または有機基材を充填材として用いることができる。無機基材としては、例えば、ガラス繊維、炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、シリカ、ケイソウ土、アルミナおよび酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらの無機基材は、成形品の用途等により必要に応じて選択することができる。また、有機基材としては、例えば、木粉、パルプ、合板粉、紙粉砕粉および布粉砕粉などが挙げられる。
【0120】
つづいて、本実施の形態の作用効果について説明する。本実施の形態によれば、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と高分子材料の残存率との関係をあらかじめ取得することで、取得した関係に基づいて、高分子材料に添加する第一モノマーの添加量を決定し、高分子材料の分解効率を制御することができる。したがって、未反応の樹脂成分を含有する無機充填材を回収することができ、かつ、環境負荷の低減を図ることが可能となる。
【0121】
高分子材料に含まれる無機充填材を回収して再利用する場合、未分解の樹脂成分が多いと、再利用によって得られた製品の特性が低下する。一方、高分子材料の分解率が高い条件では、分子量の大きい化学原料を得ることは困難である。
【0122】
しかしながら、本実施の形態の方法によれば、高分子材料に第一モノマーをどの程度添加すればよいかをあらかじめ把握することで、高分子材料を所望の分子量の化学原料に分解しつつ無機充填材を再利用可能な程度に回収することができる。したがって、高分子材料を構成する樹脂成分および無機充填材の両方を有効に再利用することができる。
【0123】
(第3の実施形態)
図7は、本実施の形態の再生樹脂の製造方法を説明するフローチャートである。この再生樹脂の製造方法では、第一モノマーおよび第二モノマーから構成される樹脂成分を含む高分子材料と、第一モノマーまたは第一モノマーの誘導体と、を混合した状態で樹脂成分を化学的に分解し、分解した樹脂成分と第二モノマーまたは第二モノマーの誘導体とを混合させて再生樹脂を製造する。そして、分解した樹脂成分から再生樹脂を製造する反応系内における、第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と再生樹脂の分子量との関係を、あらかじめ取得するステップ(S401)と、上記関係に基づいて、分解した樹脂成分に添加する第二モノマーまたは第二モノマーの誘導体の添加量を決定するステップ(S402)と、決定した添加量の第二モノマーまたは第二モノマーの誘導体と分解した樹脂成分とを混合するステップ(S403)と、を含む。
【0124】
以下、本実施の形態について具体的に説明する。
【0125】
[S401:反応系内における第二モノマー/第一モノマーのモル比と再生樹脂の分子量との関係を取得]
S401では、まず、第1の実施形態または第2の実施形態で説明したように高分子材料の分解反応を行い、得られた化学原料に、任意の量の第二モノマーを添加して第二モノマー/第一モノマーのモル比を求める。高分子材料及び第二モノマーは、第1の実施形態で説明したものを用いることができる。ついで、化学原料と第二モノマーとを重合反応させて再生樹脂を製造し、得られた再生樹脂の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定する。このときの測定装置、条件の具体例としては、分離カラムは、東ソーTSKgelGMHL2本およびTSKgelG2000HL2本を使用し、溶離液としてはテトラヒドロフランを使用し、検量線はポリスチレン換算にて得て、検出器は示唆屈折計を使用し、流量1cm/min、温度:40℃とすることが挙げられる。ついで、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマー数の比率を横軸にプロットし、生成する再生樹脂の分子量を縦軸にプロットする。縦軸にプロットする分子量は、数平均分子量(Mn)であってもよいし重量平均分子量(Mw)であってもよい。こうすることで、第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と生成する再生樹脂の分子量との間に存在する一定の相関関係に関するデータを取得することができる。
【0126】
本実施の形態の製造方法で用いる化学原料の分子量(Mw)は、2.0×10以上2.5×10以下の範囲であることが好ましく、この分子量はフェノール樹脂の場合、2〜25核体に相当する。より好ましくは、分子量が2.0×10以上1.5×10以下の範囲であり、この分子量はフェノール樹脂の場合、2〜15核体に相当する。分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上3.0以下の範囲であり、より好ましくは1.0以上2.0以下の範囲である。本実施の形態において化学原料の分子量とは、化学原料に含まれる樹脂成分の50重量%以上の樹脂成分が示す分子量をいう。
【0127】
また、本実施の形態の製造方法で得られる再生樹脂は、通常、2.0×10以上1.0×10以下の分子量(Mw)を有し、分子量分布(Mw/Mn)が好ましくは2.0以上15以下の範囲であり、より好ましくは3.0以上10以下の範囲である。本実施の形態において再生樹脂の分子量とは、再生樹脂に含まれる樹脂成分の50重量%以上の樹脂成分が示す分子量をいう。
【0128】
[S402:第二モノマーの添加量の決定]
ついで、S402では、S401で得られた関係から製造すべき再生樹脂の分子量に対応する比率を選択する。こうすることで、分解した樹脂成分に添加する第二モノマーまたは第二モノマーの誘導体の添加量を決定する。具体的には、化学原料の第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率から、目的の再生樹脂の分子量の範囲をあらかじめ決定する。そして、対応する第一モノマーのモル数と第二モノマーのモル数との比率の範囲を決めて、それに応じた第二モノマーの添加量を決定する。なお、S401では、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率が再生樹脂の分子量と相関関係を有する範囲で任意の2点に対応する再生樹脂の分子量を調べてもよい。このとき、S402では、得られた2点間を補完する上記比率および化学原料の分子量から第二モノマーの添加量を決定する。
【0129】
[S403:第二モノマーと化学原料とを混合]
ついで、第1の実施形態または第2の実施形態において説明したように、高分子材料に含まれる樹脂成分の化学的分解反応を行い、得られた化学原料に、S402において決定した添加量の第二モノマーまたは第二モノマーの誘導体を添加し、混合する。このとき、分解反応後の反応混合物から化学原料を分離した後に、第二モノマーまたは第二モノマーの誘導体を添加しても良いし、分離せずにそのまま該混合物に第二モノマーまたは第二モノマーの誘導体を添加しても良い。
【0130】
[S404:再生樹脂を得る]
S403で得られた第二モノマーと化学原料との混合物に対する処理条件は、主に温度と圧力により調整できる。温度としては、通常、100℃以上、前述の分解反応における温度以下であることが好ましく、より好ましくは150℃以上200℃以下である。こうすることで、再生樹脂成分のゲル化の促進を抑制しつつ早い高分子量化速度にて反応させることができる。
【0131】
また、圧力としては、通常、大気圧以上、前述の分解反応における圧力以下で行うことが好ましく、より好ましくは大気圧以上20MPa以下であると好ましい。こうすることで、ゲル化しない程度に高分子量化速度を維持することができ、かつ、エネルギー消費の抑制のバランスに優れるものとなる。
【0132】
さらに、雰囲気としては、空気雰囲気下、または、窒素などの不活性ガス雰囲気下のどちらを選択してもよく、開放系でも密封系でもどちらの系でも行うことができ、特に限定されることはない。また、処理時間は、1〜60分の範囲で調整できるが、通常は3〜30分程度で設定することが好ましい。
【0133】
本実施の形態においても、第1の実施形態で説明した再生樹脂の化学構造と同様の化学構造からなる再生樹脂が得られる。
【0134】
再生樹脂は、第1の実施形態で説明した分離方法により、溶媒及び残渣などを分離した後、再生樹脂組成物の原料として再利用することができる。
【0135】
また、得られる再生樹脂には、目的の分子量を有する樹脂成分を有する樹脂成分以外に、第一モノマーまたは第二モノマー、水などの反応溶媒が少量含まれていてもよい。
【0136】
再生樹脂組成物の製造方法としては、再生樹脂を他の原材料と混合して公知の製造方法により製造することができるが、その際、新たな原材料(バージン品)を用いることなく、再生樹脂のみを原材料として用いてもよいし、バージン品および/または充填材と併用して用いてもよい。再生樹脂の含有量は、特に限定されないが、再生樹脂組成物全体に対して、2〜80重量%であり、好ましくは5〜60重量%とする。
【0137】
再生樹脂を他の化学原料と併用して再生樹脂組成物を製造する場合、併用する化学原料としては、特に限定されないが、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂が挙げられる。
【0138】
ここで、例えば再生樹脂としてノボラック型フェノール樹脂を用い、他の化学原料である樹脂としてノボラック型フェノール樹脂を併用する場合、通常、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを使用するが、ヘキサメチレンテトラミンの含有量としては、通常の高分子材料と同様に、再生樹脂とノボラック型フェノール樹脂の合計100重量部に対して、10〜25重量部が好ましい。再生樹脂とノボラック型フェノール樹脂の合計の含有量は、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを使用する場合はそれも含めて、再生樹脂組成物全体に対して20〜80重量%とすることが好ましく、さらに好ましくは30〜60重量%である。また、硬化速度を調整するために、必要に応じて酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどを硬化助剤として用いることができる。
【0139】
また、本実施の形態の方法では、第二モノマーに代えて第二モノマーの誘導体を化学原料に添加して再生樹脂を得てもよい。こうして得られた再生樹脂を用いることで分解処理した高分子材料とは異なる樹脂を製造することができる。
【0140】
つづいて、本実施の形態の作用効果について説明する。本実施の形態によれば、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と反応系内で生成される再生樹脂の分子量との関係をあらかじめ取得することで、取得した関係に基づいて、第一モノマーおよび第二モノマーから構成される樹脂成分の分解物に添加する第二モノマーの添加量を決定し、所望の物性値を有する再生樹脂を得るために適量の第二モノマーと分解した樹脂成分とを混合する。こうすることにより、必要最小限の第二モノマーを用いて再生樹脂を製造することができる。したがって、再生樹脂の歩留まりを改良しつつ、かつ、環境負荷を低減することができる。
【0141】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0142】
たとえば、第3の実施形態では、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と反応系内で生成される再生樹脂の分子量との関係をあらかじめ取得する方法について例示した。しかしながら、分子量に換えて、再生樹脂の物性値との関係を、あらかじめ取得してもよい。
【0143】
また、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と反応系内で生成される再生樹脂の物性値との関係をあらかじめ取得するのではなく、分解した樹脂成分から再生樹脂を製造する反応系内に第二モノマーを添加しつつ反応系内に生成した再生樹脂の分子量を反映する物性値を観測する方法を採用してもよい。
【0144】
より精度を上げるべく、あらかじめ、反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と反応系内で生成される再生樹脂の物性値との関係をあらかじめ取得し、さらに、分解した樹脂成分から再生樹脂を製造する反応系内に第二モノマーを添加しつつ反応系内に生成した再生樹脂の分子量を反映する物性値を観測する方法を採用してもよい。
【0145】
具体的には、図8で示すように、再生樹脂の目標分子量を設定し(S501)、分解した樹脂成分から再生樹脂を製造する反応系内に第二モノマーを添加する(S502)。すなわち、第1の実施形態または第2の実施形態において説明したように、高分子材料に含まれる樹脂成分の化学的分解反応を行い、得られた化学原料に第二モノマーを添加する。ここで、第二モノマーの添加量は、第3の実施形態で説明したS401およびS402を行って決定してもよい。高分子材料及び第二モノマーは、第1の実施形態で説明したものを用いる。
【0146】
ついで、反応系内に生成した再生樹脂の分子量を反映する物性値を観測し(S503)、反応系内における、第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と物性値との関係を取得する(S504)。ついで、再生樹脂の目標分子量に到達したかどうかを判断し(S505)、到達していない場合(S505No)は、取得した関係に基づいて、分解した樹脂成分に添加する第二モノマーまたは第二モノマーの誘導体の添加量を再決定する(S506)。S506では、目的の再生樹脂の分子量に対応する物性値から第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率を選択し、化学原料に対する第二モノマーの添加量を決定する。ついで、決定した量の第二モノマーを反応系内に添加して混合する。こうすることで、所望の分子量を有する再生樹脂を得ることができる(S505Yes、S507)。
【0147】
物性値は、物性測定法、分離分析法、分光分析法、電磁気分析法、および、熱分析法のいずれかから選択される1種または2種以上の方法によって得られる測定値とすることができる。
【0148】
物性測定法は、粘度、比重、融点、pH、溶解度、粒度などを測定する方法をいう。分離分析法は、ガスクロマトグラフィー法、ゲル浸透クロマトグラフィー法、イオンクロマトグラフィー法および液体クロマトグラフィー法などをいう。分光分析法とは、光散乱法、赤外吸光法および紫外吸光法などいう。電磁気分析法とは、核磁気共鳴(NMR)法、質量分析(MS)法などをいう。熱分析法は、熱重量測定法および示差熱分析法などいう。
【0149】
以上の方法によれば、必要最小限の第二モノマーと分解した樹脂成分とを混合状態にして再生樹脂を製造することができる。したがって、再生樹脂の歩留まりを改良しつつ、かつ、環境負荷を低減することができる。
【実施例】
【0150】
(実施例1)
以下、実施例を挙げて図1を参照しつつ第一の本発明を詳細に説明するが、本発明は、これによって何ら限定されるものではない。
【0151】
[S101:反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と反応系内で生成される化学原料の分子量との関係に関するデータの取得]
高分子材料として、ガラス繊維強化フェノール樹脂成形材料(ガラス繊維:約60%を含む)の硬化物を粉砕後、ふるいわけして、粒子径を250μm以下に調整したものを用いた。この高分子材料では、第一モノマー(表1中モノマーA)がフェノールであり、第二モノマー(表1中モノマーB)がホルムアルデヒドである。高分子材料1gあたりの各モノマーの含有量は、第一モノマーが3.3×10−3mol/g、第二モノマーが5.5×10−3mol/gである。
【0152】
ここで、フェノール樹脂は、ヒドロキシフェニレン基とメチレン基で構成される基が複数結合して構成されている。フェノール樹脂を構成するヒドロキシフェニレン基の数を第一モノマーのモル数として換算し、フェノール樹脂を構成するメチレン基の数を第二モノマーのモル数として換算する。
【0153】
第一モノマーと水との混合液に上記の高分子材料を添加する際に、塩基触媒として粉末状の水酸化カルシウムを加えた。使用した各試薬量を表1に示す。得られた混合物を、オートクレーブ(日東高圧株式会社製 内容積:200cm)に仕込んだのち、300rpmで攪拌しながら、内温を260℃とすることで、反応器の内圧を3.5MPaまで上昇させ、30分間保持して、分解処理を行った。
【0154】
【表1】
【0155】
高分子材料の分解率は次の手順で評価した。分解処理後の生成物をテトラヒドロフラン(以下THFと略す)で溶解・希釈させたのち、1.0μmのフィルターでろ過した。フィルターに残ったTHF不溶残渣を、100℃で12時間乾燥させたのち秤量して、仕込んだ高分子材料の重量に対する重量減少を評価して、以下の式2〜5を用いて高分子材料の分解率を評価した。分解率は100%であった。
【0156】
(式2)
・分解率[%]={重量減少(g)/高分子材料の樹脂成分の量(g)}×100
(式3)
・重量減少=仕込んだ高分子材料の重量(g)−THF不溶残渣の重量(g)
(式4)
・高分子材料の樹脂成分の量=仕込んだ高分子材料の重量(g)−(仕込んだ高分子材料中のガラス繊維の重量(g))
(式5)
・仕込んだ高分子材料中のガラス繊維の重量=仕込んだ高分子材料の重量(g)×0.6
【0157】
分解処理後の回収物を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。このときの分離カラムは東ソーTSKgelGMHL2本、TSKgelG2000HL2本を使用し、溶離液としてはTHFを使用して、検量線はポリスチレン換算にて得て、検出器は示唆屈折計を使用し、流量1cm/min、温度:40℃とした。なお、GPC分析で得たチャートにおいて、第一モノマー(フェノール)のピークを除いて解析することで化学原料の分子量を数平均分子量および重量平均分子量として算出した。
【0158】
その結果、第二モノマー/第一モノマーのモル比が1よりも小さい条件では、高分子材料の分解率は90%以上と高かった。これに対して、第二モノマー/第一モノマーのモル比が1よりも大きい条件では、高分子材料の分解率は5%程度と非常に低く、分解処理はほとんど進行しなかった。第二モノマー/第一モノマーのモル比が1よりも大きい条件における分解処理後の回収物からは、GPCでの分析では測定不能であった。
【0159】
図9図10は、第二モノマー/第一モノマーのモル比とGPCの測定結果から得られた化学原料の分子量との関係を示す。図9図10では、反応系内における第二モノマー/第一モノマーのモル比を横軸に示す。図9では、GPCの測定結果から得られた化学原料の数平均分子量(Mn)を縦軸に示す。図10では、GPCの測定結果から得られた化学原料の重量平均分子量(Mw)を縦軸に示す。
【0160】
図9および図10から、第二モノマー/第一モノマーのモル比が小さいほど、化学原料の分子量が小さくなることがわかる。すなわち、実際に分解処理を行う前にこの関係図を把握していれば、第二モノマー/第一モノマーのモル比を調整することで、回収される化学原料の分子量を制御することができる。また、同じく図9および図10から、第二モノマー/第一モノマーのモル比を小さくしても、ある一定値(閾値)よりも小さい分子量の化学原料は回収できないことがわかる。このことから、低分子量の化学原料を回収する場合に、閾値を求めることで必要最小限に第二モノマー/第一モノマーのモル比を小さくすること、すなわち、適量の第一モノマーを添加することで、高効率的に高分子材料を分解処理することができる。
【0161】
[S102:高分子材料に添加する第一モノマーの添加量の決定]
表1、図9(a)で示すデータのうち処方1−1、1−5、1−6のデータから図9(b)で示すように、近似曲線1を求めた。近似曲線1の近似式はy=1.9×10x−2.6×10であった。また、処方1−2、1−3、1−4のデータから近似曲線2を求めた。近似式はy=1.3×10x+3.8×10であった。近似曲線1および近似曲線2の交差する点から第二モノマー/第一モノマーのモル比の閾値を求めた。同様に、表1、図10(a)で示すデータから、図10(b)で示すように、近似曲線3、4を求め、第二モノマー/第一モノマーのモル比の閾値を求めた。その結果、閾値として0.4が得られた。
【0162】
ついで、高分子材料として、S101で用いた高分子材料を87.4g用意した。高分子材料を構成するフェノール(モノマーA)が0.29mol、ホルムアルデヒド(モノマーB)が0.48molであることから、フェノールを0.91mol添加することに決定した。
【0163】
[S103:第一モノマーと高分子材料とを混合]
フェノール0.91molと水21.3gとの混合液に上記の高分子材料87.4gを添加した。その際、塩基触媒として粉末状の水酸化カルシウム0.9gを加えた。
【0164】
[S104:第一モノマーを超臨界または亜臨界状態にする]
S103で得られた混合物を、オートクレーブ(日東高圧株式会社製 内容積:200cm)に仕込んだのち、300rpmで攪拌しながら、内温を260℃とすることで、反応器の内圧を3.5MPaまで上昇させ、30分間保持して、分解処理を行った。
【0165】
[S105:化学原料を得る]
分解処理後の回収物をS101と同様な方法でGPC測定した。その結果、数平均分子量(Mn):478、重量平均分子量(Mw):700からなる化学原料が生成されていることがわかった。
【0166】
つづいて、S105で生成した化学原料から再生樹脂を製造した。
【0167】
<評価1−1>
分解処理後の回収物に多官能性化合物としてホルマリン水溶液(ホルムアルデヒド:43%含有)18gを添加した。300rpmで攪拌しながら加熱して、内温を220℃とすることで、反応器の内圧を2MPaまで上昇させ、20分間保持して、多官能性化合物との反応処理を行った。ついで、分解処理後の生成物をメタノールで溶解・希釈させたのち、1.0μmのフィルターでろ過して、ろ液を回収した。ろ液を常圧・減圧下で加熱することで、メタノールや反応溶媒(水、フェノール)などの揮発成分を蒸発させて、不揮発成分として再生樹脂を回収した。得られた再生樹脂を、S101と同様な方法でGPCにより分析して、分子量を評価した。得られた再生樹脂の分子量は、数平均(Mn):914、重量平均(Mw):4658であった。
【0168】
<評価1−2>
多官能性化合物としてホルマリン水溶液(ホルムアルデヒド:43%含有)を21g添加した以外は、評価1−1と同様な手順で、ガラス繊維強化フェノール樹脂成形材料の分解処理と多官能性化合物との反応処理を行った。得られた再生樹脂の分子量は、数平均(Mn):995、重量平均(Mw):7289であった。
【0169】
<評価1−3>
多官能性化合物としてホルマリン水溶液(ホルムアルデヒド:43%含有)を27g添加した以外は、評価1−1と同様な手順で、ガラス繊維強化フェノール樹脂成形材料の分解処理と多官能性化合物との反応処理を行った。得られた再生樹脂の分子量は、数平均(Mn):1071、重量平均(Mw):14967であった。
【0170】
以上の結果から、再生樹脂の分子量は良好だった。また、ゲルタイム、曲げ強度および曲げ弾性率は従来と同等であり、従来の再生樹脂と遜色のない品質の再生樹脂が得られることがわかった。
【0171】
(実施例2)
さらに、実施例を挙げて図5を参照しつつ第三の本発明を詳細に説明するが、本発明は、これによって何ら限定されるものではない。
【0172】
[S301:高分子材料の分解処理]
高分子材料として、ガラス繊維強化フェノール樹脂成形材料(ガラス繊維:約60%を含む)の硬化物を粉砕後、ふるいわけして、粒子径を250μm以下に調整したものを用いた。この高分子材料では、第一モノマー(モノマーA)がフェノールであり、第二モノマー(モノマーB)がホルムアルデヒドである。高分子材料1gあたりの各モノマーの含有量は、第一モノマーが3.3×10−3mol/g、第二モノマーが5.5×10−3mol/gである。
【0173】
ここで、フェノール樹脂は、ヒドロキシフェニレン基とメチレン基で構成される基が複数結合して構成されている。フェノール樹脂を構成するヒドロキシフェニレン基の数を第一モノマーのモル数として換算し、フェノール樹脂を構成するメチレン基の数を第二モノマーのモル数として換算する。
【0174】
第一モノマーと水との混合液に上記の高分子材料を添加する際に、塩基触媒として粉末状の水酸化カルシウムを加えた。使用した各試薬量を表2に示す。得られた混合物を、オートクレーブ(日東高圧株式会社製 内容積:200cm)に仕込んだのち、300rpmで攪拌しながら、内温を260℃とすることで、反応器の内圧を3.5MPaまで上昇させ、30分間保持して、分解処理を行った。
【0175】
【表2】
【0176】
[S302:未分解の樹脂成分の残存率の評価]
未反応樹脂成分の残存率は次の手順で評価した。分解処理後の生成物をTHFで溶解・希釈させたのち、1.0μmのフィルターでろ過した。フィルターに残ったTHF不溶化分を、100℃で12時間乾燥させたのち秤量した。この乾燥後のTHF不溶残渣を無機充填材回収物(1)とした。5時間/500℃の条件で無機充填材回収物(1)を灰化処理することで、灰化後の残渣(2)を得て、第2の実施形態で示した式1を用いて無機充填材回収物(1)に含まれる未反応樹脂成分の残存率を算出した。
【0177】
また、THF可溶物を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。このときの分離カラムは東ソーTSKgelGMHL2本、TSKgelG2000HL2本を使用し、溶離液としてはTHFを使用して、検量線はポリスチレン換算にて得て、検出器は示唆屈折計を使用し、流量1cm/min、温度:40℃とした。なお、GPC分析で得たチャートにおいて、第一モノマー(フェノール)のピークを除いて解析することで算出することで分解された樹脂成分を含む化学原料の分子量を求めた。
【0178】
[S303:反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と未分解の樹脂成分の残存率との関係に関するデータの取得]
図11は、第二モノマー/第一モノマーのモル比と無機充填材回収物に含まれる未反応樹脂成分の残存率との関係を示す。図11から、第二モノマー/第一モノマーのモル比が小さいほど、残存率が小さくなることがわかる。すなわち、実際に分解処理を行う前にこの関係図を把握していれば、第二モノマー/第一モノマーのモル比を調整することで、無機充填材回収物に含まれる未反応樹脂成分の残存率を制御することができる。また、同じく図11から、第二モノマー/第一モノマーのモル比を小さくすると、ある一定値(閾値)から残存率を0%にすることできることがわかる。このことから、閾値を求めることで適量の第一モノマーを添加することができ、高効率的に高分子材料を分解処理することができることがわかる。
【0179】
[S304:高分子材料に添加する第一モノマーの添加量の決定]
表2、図11で示すデータから、未反応の樹脂成分の残存率が2、4、5、8、10%とすることができるように、第一モノマーを添加することとした、すなわち、高分子材料として、S301で用いた高分子材料を87.4g用意した。高分子材料を構成するフェノール(第一モノマー)が0.29mol、ホルムアルデヒド(第二モノマー)が0.48molであることから、フェノールを0.73、0.69、0.67、0.62、0.59molずつ添加することに決定した。
【0180】
[S305:第一モノマーと高分子材料とを混合]
フェノール0.69molと水41.9gとの混合液に上記の高分子材料87.4gを添加した。その際、塩基触媒として粉末状の水酸化カルシウム0.9gを加えた。これを実施例2−Aとした。また、フェノール0.67molと水43.9gとの混合液に上記の高分子材料87.4gを添加した。その際、塩基触媒として粉末状の水酸化カルシウム0.9gを加えた。これを実施例2−Bとした。また、フェノール0.62molと水48.9gとの混合液に上記の高分子材料87.4gを添加した。その際、塩基触媒として粉末状の水酸化カルシウム0.9gを加えた。これを実施例2−Cとした。また、フェノール0.59molと水51.9gとの混合液に上記の高分子材料87.4gを添加した。その際、塩基触媒として粉末状の水酸化カルシウム0.9gを加えた。これを実施例2−Dとした。また、フェノール0.73molと水38.3gとの混合液に上記の高分子材料87.4gを添加した。その際、塩基触媒として粉末状の水酸化カルシウム0.9gを加えた。これを実施例2−Eとした。実施例2−A、2−Bの実施数nはn=2とした。実施例2−Eは、n=3とした。その他は、n=1とした。S305で得られた各実施例の混合物を、オートクレーブ(日東高圧株式会社製 内容積:200cm)に仕込んだのち、300rpmで攪拌しながら、内温を260℃とすることで、反応器の内圧を3.5MPaまで上昇させ、30分間保持して、分解処理を行った。
【0181】
[S306:無機充填材の回収]
分解処理後の生成物をテトラヒドロフラン(以下THFと略す)で溶解・希釈させたのち、1.0μmのフィルターでろ過した。フィルターに残ったTHF不可溶分を、100℃で12時間乾燥させたのち秤量した。この乾燥後のTHF不溶残渣を無機充填材回収物とした。S302で示した方法で、得られた無機充填材回収物に含まれる未反応の樹脂成分の残存率を調べたところ、実施例2−Aの残存率は4%、実施例2−Bの残存率は5%、実施例2−Cの残存率は8%、実施例2−Dの残存率は10%、実施例2−Eの残存率は2%であった。
【0182】
<評価2−1>
つづいて、S306で回収した無機充填材を用いて成形材料を製造した。実施例2−A、2−B、2−C、2−Dで回収した無機充填材を原料として再利用した成形材料の特性を評価した。無機充填材回収物(10%)、ガラス繊維(50%)、フェノールノボラック樹脂・ヘキサメチレンテトラミン(合計40%)からなる成形材料を調整して、3分間/175℃の硬化条件にてトランスファー成形機で試験片を得た。JIS K 6911の試験方法に準じて、試験片の曲げ強度(曲げ強さ)を評価した。比較として、バージンの成形材料を用意した。すなわち、無機充填材回収物を用いずに、ガラス繊維(60%)、フェノールノボラック樹脂・ヘキサメチレンテトラミン(合計40%)からなる成形材料を用意し、同様な方法で曲げ強度を評価した。結果を表3に示す。
【0183】
【表3】
【0184】
表3で示すように、無機充填材回収物に含まれる未反応の樹脂成分の残存率が4、5、8、10%のいずれについても、比較のバージンの成形材料と遜色のない結果が得られた。
【0185】
<評価2−2>
また、実施例2−Eで回収した無機充填材を原料として再利用した成形材料の特性を評価した。無機充填材回収物(20%)、ガラス繊維(40%)、フェノールノボラック樹脂・ヘキサメチレンテトラミン(合計40%)からなる成形材料A、無機充填材回収物(30%)、ガラス繊維(30%)、フェノールノボラック樹脂・ヘキサメチレンテトラミン(合計40%)からなる成形材料B、無機充填材回収物(60%)、フェノールノボラック樹脂・ヘキサメチレンテトラミン(合計40%)からなる成形材料Cをそれぞれ調整して、3分間/175℃の硬化条件にてトランスファー成形機で試験片を得た。JIS K 6911の試験方法に準じて、試験片の曲げ強度を評価した。比較として、バージンの成形材料を用意した。すなわち、無機充填材回収物を用いずに、ガラス繊維(60%)、フェノールノボラック樹脂・ヘキサメチレンテトラミン(合計40%)からなる成形材料を用意し、同様な方法で曲げ強度を評価した。結果を表3に示す。
【0186】
表3で示すように、無機充填材回収物に含まれる未反応の樹脂成分の残存率が2%については、無機充填材回収物の配合量をバージン品のガラス繊維の配合量と同等にしてもリサイクルの成形材料はバージンの成形材料と遜色のない結果が得られた。
【0187】
(実施例3)
さらに、実施例を挙げて図7を参照しつつ第二の本発明を詳細に説明するが、本発明は、これによって何ら限定されるものではない。
【0188】
[S401:反応系内における第一モノマーのモル数に対する第二モノマーのモル数の比率と再生樹脂の分子量との関係に関するデータの取得]
上記S301において得られた処方2−1の分解生成物に、第二モノマーとしてホルマリン水溶液(ホルムアルデヒド:43%含有)18gを添加した。使用した各試薬量を表4に示す。
【0189】
【表4】
【0190】
300rpmで攪拌しながら加熱して、内温を220℃とすることで、反応器の内圧を2MPaまで上昇させ、20分間保持して、多官能性化合物との反応処理を行った。ついで、反応処理後の生成物をメタノールで溶解・希釈させたのち、1.0μmのフィルターでろ過して、ろ液を回収した。ろ液を常圧・減圧下で加熱することで、メタノールや反応溶媒(水、フェノール)などの揮発成分を蒸発させて、不揮発成分として再生樹脂を回収した。
【0191】
回収した再生樹脂を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。このときの分離カラムは東ソーTSKgelGMHL2本、TSKgelG2000HL2本を使用し、溶離液としてはTHFを使用して、検量線はポリスチレン換算にて得て、検出器は示唆屈折計を使用し、流量1cm/min、温度:40℃とした。なお、GPC分析で得たチャートにおいて、反応溶媒として加えた第一モノマー(フェノール)のピークを除いて解析することで再生樹脂の分子量を算出した。
【0192】
図12図13には、第二モノマー/第一モノマーのモル比とGPCの測定結果から得られた再生樹脂の分子量との関係を示す。図12図13では、反応系内における第二モノマー/第一モノマーのモル比を横軸に示す。図12では、GPCの測定結果から得られた再生樹脂の数平均分子量(Mn)を縦軸に示す。図13では、GPCの測定結果から得られた再生樹脂の重量平均分子量(Mw)を縦軸に示す。
【0193】
図12および図13から、第二モノマー/第一モノマーのモル比と、再生樹脂の分子量との関係を把握することができる。すなわち、実際に再生処理を行う前にこの関係図を把握していれば、第二モノマー/第一モノマーのモル比を調整することで、再生樹脂の分子量を制御することができる。このことから、適量の第二モノマーを添加することで、高効率的に再生樹脂を製造することができる。
【0194】
[S402:化学原料に添加する第二モノマーの添加量の決定]
実施例3−A;Mn9.1×10、Mw4.7×10の再生樹脂を得ることを考えた。S401で得られた表4、図12、13を参照し、第二モノマー/第一モノマーのモル比を0.62とした。
実施例3−B;Mn1.0×10、Mw7.3×10の再生樹脂を得ることを考えた。S401で得られた表4、図12、13を参照し、第二モノマー/第一モノマーのモル比を0.65とした。
実施例3−C;Mn1.1×10、Mw1.5×10の再生樹脂を得ることを考えた。S401で得られた表4、図12、13を参照し、第二モノマー/第一モノマーのモル比を0.72とした。
【0195】
[S403:第二モノマーと化学原料とを混合]
実施例3−Aについて、表2で示す処方2−1の分解生成物にホルマリン水溶液(ホルムアルデヒド:43%含有)18gを添加した。実施例3−Bについて、表2で示す処方2−1の分解生成物にホルマリン水溶液(ホルムアルデヒド:43%含有)21gを添加した。実施例3−Cについて、表2で示す処方2−1の分解生成物にホルマリン水溶液(ホルムアルデヒド:43%含有)27gを添加した。各実施例について、300rpmで攪拌しながら加熱して、内温を220℃とすることで、反応器の内圧を2MPaまで上昇させ、20分間保持して、第二モノマーとの反応処理を行った。
【0196】
[S404:再生樹脂を得る]
各実施例について、反応後の生成物をメタノールで溶解・希釈させたのち、1.0μmのフィルターでろ過して、ろ液を回収した。ろ液を常圧・減圧下で加熱することで、メタノールや反応溶媒(水、フェノール)などの揮発成分を蒸発させて、不揮発成分として再生樹脂を回収した。得られた再生樹脂を、S401と同様な方法でGPCにより分析して、分子量を評価した。得られた再生樹脂の分子量は、実施例3−Aでは、数平均(Mn):913、重量平均(Mw):4705であった。また、実施例3−Bでは、数平均(Mn):1015、重量平均(Mw):7325であった。また、実施例3−Cでは、数平均(Mn):1092、重量平均(Mw):15117であった。
【0197】
以上の結果から、再生樹脂の分子量は良好だった。また、ゲルタイム、曲げ強度および曲げ弾性率は従来と同等であり、従来の再生樹脂と遜色のない品質の再生樹脂が得られることがわかった。
【0198】
(実施例4)
さらに、実施例を挙げて図8を参照しつつ第二の本発明の変形例を詳細に説明するが、本発明は、これによって何ら限定されるものではない。
【0199】
再生樹脂の製造装置として、原料供給部、分解反応部、重合反応部、固液分離部、蒸発部からなるパイロットプラントを用いた。原料供給部は、最大吐出圧15MPaのスラリー供給用のダイアフラムポンプ(スラリー供給ポンプ)と、最大吐出圧15MPaのホルマリン供給用のダイアフラムポンプ(ホルマリンポンプ)を備えている。分解反応部および重合反応部は、内径:16.7mmのSUS316製の管型反応器からなる。固液分離部は、遠心分離機(デカンター)からなる。蒸発部は流下液膜式蒸発器からなり、前記蒸発器の下流で得られる再生樹脂の溶融粘度をオンラインで測定できる振動式粘度計((株)セコニック製、FVM80A−EXHT)を備えている。本実施例において、再生樹脂の分子量を反映する物性値とは、前記の振動式粘度計により観測する、150℃、周波数1000Hzにおける溶融粘度である。
【0200】
まず、分子量の異なる再生樹脂を数種準備して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて分子量を測定した。実施例1と同様な装置構成、測定条件、解析方法にて、各々の再生樹脂の分子量を算出した。つづいて、再生樹脂製造設備(パイロットプラント)の蒸発部に装備された振動式粘度計で、前記の分子量の異なる再生樹脂の150℃における溶融粘度を評価した。図14にGPCで評価した再生樹脂の重量平均分子量(Mw)と、振動式粘度計で評価した再生樹脂の150℃、周波数1000Hzにおける溶融粘度を記す。この図の関係式により、再生樹脂の溶融粘度を測定することで、その分子量を推算することができる。
【0201】
[S501 再生樹脂の目標分子量の設定]
目標とする再生樹脂の重量平均分子量(Mw)を3.0×10として、目標値の±10%にあたる2.7×10〜3.3×10を許容範囲と設定した。
【0202】
[S502 化学原料に第二モノマーを添加]
高分子材料として、実施例1と同じガラス繊維強化フェノール樹脂成形材料(ガラス繊維:約60%を含む)の硬化物を粉砕後、ふるいわけして、粒子径を250μm以下に調整したものを用いた。この高分子材料では、第一モノマーがフェノールであり、第二モノマーがホルムアルデヒドである。高分子材料1gあたりの各モノマーの含有量は、第一モノマーが3.3×10−3mol/g、第二モノマーが5.5×10−3mol/gである。
前記高分子材料:34%、フェノール:55%、水:10%、水酸化カルシウム:1%のスラリーを調合した。再生樹脂製造装置(パイロットプラント)の原料供給部にあるスラリー供給ポンプで、前記スラリーを158.4kg/hrの流量で分解反応部に供給して、高分子材料中の樹脂成分の化学的な分解処理を施した。この際、反応温度は300℃、反応圧力は10MPaとした。
つぎに、ホルマリン供給ポンプで、前記の分解反応部の下流部にある重合反応部に、第二モノマーとしてホルマリン水溶液(ホルムアルデヒド:37%含有)を14.7kg/hrの流量で供給して、分解反応部での生成物と混合して反応処理を施した。この際、反応温度は170℃、反応圧力は10MPaとした。ついで、固液分離部にて、反応処理後の生成物に含まれる固体成分を取り除いた後、蒸発部にて未反応のフェノール、水を蒸発させて、再生樹脂を回収した。なお、前記の供給部、分解反応部、重合反応部、固液分離部、蒸発部は、全て連続的な流通プロセスで稼動させた。
【0203】
[S503 再生樹脂の分子量を反映する物性値を観測]
再生樹脂製造装置(パイロットプラント)の蒸発部で連続的に再生樹脂を回収する際に、備え付けの振動式粘度計にて、再生樹脂の150℃における溶融粘度をオンラインで観測した。溶融粘度は299mPa・sであった。
【0204】
[S504 第二モノマー/第一モノマーのモル比と再生樹脂の分子量との関係を取得]
ホルマリン水溶液の流量が14.7kg/hrにおける、反応系内のホルムアルデヒド/フェノール(第二モノマー/第一モノマー)のモル比を計算して、0.51と算出した。また、振動式粘度計にて観測した再生樹脂の溶融粘度と図14の相関式とから、再生樹脂の重量平均分子量(Mw)を2.6×10と推算した。
【0205】
[S505 再生樹脂の分子量が設定に到達したかの判断]
ホルマリン水溶液の流量が14.7kg/hrでの再生樹脂の重量平均分子量(Mw)は2.6×10と、目標範囲の2.7×10〜3.3×10よりも小さく、設定に到達していないと判断した。
【0206】
[S506 第二モノマーの添加量を再決定 (1回目)]
再生樹脂の分子量を上げるため、ホルムアルデヒド/フェノール(第二モノマー/第一モノマー)のモル比を0.53と再決定して、再生樹脂製造装置(パイロットプラント)供給部のホルマリンポンプでホルマリン水溶液の流量を14.7kg/hrから16.1kg/hrに上げた。
なお、ホルマリン水溶液の流量を変更する操作は、再生樹脂製造装置(パイロットプラント)を停止せずに稼動させたままで行った。また、ホルマリン水溶液の流量以外の条件は何も変更しなかった。
【0207】
S502からS505までのステップを経て、回収された再生レジンの溶融粘度は406mPa・sであった。図14の関係式より、再生樹脂の重量平均分子量(Mw)は3.6×10と推算して、目標範囲の2.7×10〜3.3×10よりも大きく、設定に到達していないと判断した。
【0208】
[S506 第二モノマーの添加量を再決定 (2回目)]
再生樹脂の分子量を下げるため、ホルムアルデヒド/フェノール(第二モノマー/第一モノマー)のモル比を0.52と再決定して、再生樹脂製造装置(パイロットプラント)供給部のホルマリンポンプでホルマリン水溶液の流量を16.1kg/hrから15.6kg/hrに下げた。
なお、ホルマリン水溶液の流量を変更する操作は、再生樹脂製造装置(パイロットプラント)を停止せずに稼動させたままで行った。また、ホルマリン水溶液の流量以外の条件は何も変更しなかった。
【0209】
S502からS505までのステップを経て、回収された再生レジンの溶融粘度は333mPa・sであった。図14の関係式より、再生樹脂の重量平均分子量(Mw)は3.0×10と推算した。目標範囲である2.7×10〜3.3×10に収まっており、設定に到達したと判断した。
【0210】
[S507 再生樹脂を得る]
ホルマリン水溶液の流量を15.6kg/hrで一定として、約6時間、再生樹脂製造装置(パイロットプラント)を稼動して、再生樹脂を得た。
【0211】
再生樹脂製造装置(パイロットプラント)の稼動を終えた後、得られた再生樹脂をGPCで分析した結果、重量平均分子量(Mw)は3.2×10と、目標範囲である2.7×10〜3.3×10に収まっていることを最終的に確認した。
【0212】
本実施例では、ホルマリンポンプの流量をマニュアルで設定変更することで、再生樹脂の溶融粘度を制御して、目標とする分子量の再生樹脂を得たが、これらのシステムを自動制御させることも可能である。例えば、溶融粘度の目標値を設定して、溶融粘度の実測値の情報をホルマリンポンプにフィードバックして、ホルマリン水溶液の流量をPID制御することで、目標とする溶融粘度の再生樹脂を得るような、システムを構築させることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14