(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、レジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜及びパターン形成方法についてこの順で詳述する。
【0028】
<レジスト下層膜形成用組成物>
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、レジスト下層膜表面にシリコン系酸化膜を形成し、このシリコン系酸化膜をウエットエッチングする工程を含む多層レジストプロセスに用いられ、ガラス転移温度(Tg)が、0℃以上180℃以下である[A]重合体を含有する。本発明のレジスト下層膜形成用組成物が含有する[A]重合体のTgは、0℃以上180℃以下であることを特徴とし、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜は、被加工基板との密着性に優れ、被加工基板から剥れる不都合を抑制することができる。本発明のレジスト下層膜形成用組成物が特定のTgを有する[A]重合体を含むことで、加熱後におけるレジスト下層膜の残留応力を小さくなるためと推察される。
また、レジスト膜形成後にウエットエッチングの工程を含む多層レジストプロセスであっても、当該レジスト下層膜形成用組成物は、ウエットエッチング耐性に優れることからエッチングに起因する外部刺激によるレジスト下層膜のパターン倒れを抑制することができる。
なお、[A]重合体はガラス転移温度(Tg)を2つ以上有していてもよい。[A]重合体がガラス転移温度(Tg)を2つ以上有する場合、[A]重合体は0℃以上180℃以下の温度範囲に少なくとも一つガラス転移温度(Tg)を有していればよく、0℃未満又は180℃を超えた温度範囲にガラス転移温度(Tg)を有していてもよい。
【0029】
当該レジスト下層膜形成用組成物は、好ましくは[B]ガラス転移温度(Tg)が180℃を超える重合体(以下、「[B]重合体」ともいう)、[C]酸発生体、溶媒を含有する。さらに、当該レジスト下層膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0030】
<[A]重合体>
[A]重合体は、Tgが0℃以上180℃以下の重合体である。[A]重合体としては、例えばオレフィン系重合体、ノボラック系重合体等が挙げられる。上記オレフィン系重合体としては、アクリルエステル系重合体、アクリルアミド系重合体、ビニルエーテル系重合体、スチレン系重合体、シクロオレフィン系重合体が好ましい。
【0031】
当該レジスト下層膜形成用組成物に含有される[A]重合体のガラス転移温度(Tg)としては、0℃以上180℃以下であり、好ましくは40℃以上160℃以下、より好ましくは70℃以上120℃以下である。
【0032】
[A]重合体のTgの上限としては、175℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、165℃以下がさらに好ましく、160℃以下が特に好ましい。
【0033】
[A]重合体のTgの下限としては、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましく、40℃以上が特に好ましい。
【0034】
[A]重合体としては、上記式(1)で表される構造単位(I)、上記式(2)で表される構造単位(II)、−CH
2OH基及び芳香族基を有する構造単位(III)、並びに上記式(3)で表される構造単位(IV)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位を含むことが好ましい。なお、構造単位(I)〜(IV)のそれぞれについて、各構造単位を2種以上含んでいてもよい。以下、各構造単位を詳述する。
【0035】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は上記式(1)で表される。[A]重合体が、上記構造単位(I)を含むことで、[A]重合体のTgを比較的低くすることができる。その結果、[A]重合体を含有する当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜は、被加工基板との密着性に優れ、かつウエットエッチング耐性に優れる。
【0036】
上記式(1)中、R
1は、水素原子、フッ素原子又はメチル基である。このメチル基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。Eは、酸素原子、−CO−O−*又は−CO−NH−*である。*は、R
2との結合部位を示す。R
2は、1価の炭化水素基である。この炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。なお、構造単位(I)は、−CH
2OH基及び芳香族基をともに有する構造単位は除く。
【0037】
上記R
1が示すメチル基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基等が挙げられる。
【0038】
上記R
2が示す1価の炭化水素基としては、炭素数1〜20の1価の炭化水素基であることが好ましく、この炭化水素基としては、例えば1価の芳香族炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、1価の鎖状炭化水素基、又はこれらの基を組み合わせた基等が挙げられる。
【0039】
上記1価の芳香族炭化水素基としては、例えば炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。これらの中で、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基が好ましく、詳細には、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記1価の脂環式炭化水素基としては、例えば炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。これらの中で、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基が好ましく、詳細には、例えばシクロペンチル基、1−メチルシクロペンチル、2−エチルシクロペンチル、シクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、2−メチル−2−アダマンチル基等が挙げられる。
上記1価の鎖状炭化水素基としては、例えば炭素数1〜20の1価の鎖状炭化水素基等が挙げられる。これらの中で、炭素数1〜12の鎖状炭化水素基が好ましく、詳細には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0040】
上記R
2が示す1価の炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、チオール基、シアノ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。なお、上記R
2が示す1価の炭化水素基は、置換基を有していないことがより好ましい。
【0041】
上記ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
上記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
上記アシルオキシ基としては、例えばホルミルオキシ基、アセチルオキシ基等が挙げられる。
上記アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
上記アミド基としては、例えばアセトアミド基、プロピオンアミド基、ブチルアミド基、ベンズアミド基等が挙げられる。
【0042】
上記式(1)で表される構造単位としては、下記式(1−1)で表される構造単位であることが好ましい。
【0043】
【化4】
上記式(1−1)中、R
1及びR
2は、式(1)と同義である。
【0044】
構造単位(I)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0046】
[A]重合体における構造単位(I)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、1モル%〜50モル%が好ましく、5モル%〜40モル%がより好ましい。構造単位(I)の含有率を上記範囲とすることで、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜は、被加工基板との密着性に優れる。
【0047】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は上記式(2)で表される。[A]重合体が、上記構造単位(II)を含むことで、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜のドライエッチング耐性を向上させることができる。従って、例えば[A]重合体が、上記構造単位(I)と共に構造単位(II)を含む場合、[A]重合体を含有する当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜は、被加工基板との密着性及びドライエッチング耐性に優れる。
【0048】
上記式(2)中、R
3は、水素原子、フッ素原子又はメチル基である。このメチル基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。R
4は、単結合又は炭素数1〜4の鎖状炭化水素基である。Arは、1価の芳香族炭化水素基である。この芳香族炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。なお、構造単位(II)は、−CH
2OH基及び芳香族基をともに有する構造単位は除く。
【0049】
上記R
4が示す炭素数1〜4の鎖状炭化水素基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
【0050】
上記Arが示す1価の芳香族炭化水素基としては、例えば炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。これらの中で、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基が好ましく、詳細には、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
【0051】
上記R
3のメチル基が有していてもよい置換基としては、例えばフッ素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基等が挙げられる。
上記Arの1価の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、チオール基、シアノ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。なお、上記Arが示す1価の芳香族炭化水素基は、置換基を有していないことがより好ましい。
【0052】
上記アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミド基としては、例えば上記R
2が示す1価の炭化水素基が有していてもよい置換基として例示したそれぞれの基と同様の基等が挙げられる。
【0053】
構造単位(II)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0055】
[A]重合体における構造単位(II)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、1モル%〜80モル%が好ましく、10モル%〜70モル%がより好ましい。構造単位(II)の含有率を上記範囲とすることで、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜は、ドライエッチング耐性に優れる。
【0056】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、−CH
2OH基及び芳香族基を有する。[A]重合体が、上記構造単位(III)を含むことで、[A]重合体の架橋性が向上する。
【0057】
構造単位(III)としては、例えば下記式(4)で表される構造単位等が挙げられる。
【0058】
【化7】
上記式(4)中、R
5は、水素原子、フッ素原子又はメチル基である。このメチル基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。E
1は、単結合、炭素数1〜4の鎖状炭化水素基、酸素原子、−CO−O−*又は−CO−NH−*である。*は、上記Ar
3との結合部位を示す。Ar
3は、−CH
2OH基を有する1価の芳香族炭化水素基である。この芳香族炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。
【0059】
上記R
5が示すメチル基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基等が挙げられる。
【0060】
上記E
1で表される炭素数1〜4の鎖状炭化水素基としては、例えば上記R
4で表される炭素数1〜4の鎖状炭化水素基として例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0061】
上記Ar
3における1価の芳香族炭化水素基としては、例えば炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。これらの中で、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基が好ましく、詳細には、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
【0062】
上記芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、チオール基、シアノ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。
【0063】
上記ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基及びアミド基としては、例えば上記R
2が示す1価の炭化水素基が有していてもよい置換基として例示したそれぞれの基と同様の基等が挙げられる。
【0064】
構造単位(III)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0066】
[A]重合体における構造単位(III)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、1モル%〜50モル%が好ましく、5モル%〜40モル%がより好ましい。構造単位(III)の含有率を上記範囲とすることで、[A]重合体の架橋性をより適切化することができる。
【0067】
[構造単位(IV)]
構造単位(IV)は上記式(3)で表される。[A]重合体が、上記構造単位(IV)を含むことで、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜のドライエッチング耐性が向上する。
【0068】
上記式(3)中、Ar
2は、(m11+m12+1)価の芳香族基である。R
10は、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数6〜14のアリール基、グリシジルエーテル基、アルキル部の炭素数が1〜6のアルキルグリシジルエーテル基、又は−OR(Rは解離性官能基)である。上記アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、グリシジルエーテル基及びアルキルグリシジルエーテル基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。Z
0は、単結合、メチレン基、炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜14のアリーレン基又はアルキレンエーテル基である。このメチレン基、アルキレン基、アリーレン基及びアルキレンエーテル基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。*は、結合部位を示す。m11は、Z
0がAr
2に結合している数を示し、1〜6の整数である。m12は、R
10がAr
2に結合している数を示し、1〜6の整数である。m11及びm12がそれぞれ複数の場合、複数のZ
0及びR
10は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0069】
上記Ar
2が示す(m11+m12+1)価の芳香族基としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、インデン環、フルオレニリデンビフェニル環等のベンゼン系芳香環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ホスホール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環等の複素芳香環等から(m11+m12+1)個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0070】
上記R
10が示す炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
上記R
10が示す炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
上記R
10が示す炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
上記R
10が示すアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記R
10が示すアルキル部の炭素数が1〜6のアルキルグリシジルエーテル基としては、例えばメチルグリシジルエーテル基、エチルグリシジルエーテル基、プロピルグリシジルエーテル基、ブチルグリシジルエーテル基等が挙げられる。
【0071】
上記Rが示す解離性官能基としては、例えば塩基の存在下(例えば、23℃のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38質量%水溶液中)で解離する基(以下、「塩基解離性官能基」とも称する)、酸の存在下で解離する基(以下、「酸解離性官能基」とも称する)、レジスト下層膜成膜時の加熱で解離する基(以下、「熱解離性官能基」とも称する)等が挙げられる。
【0072】
上記塩基解離性官能基としては、例えばフッ素原子含有アルキルカルボニル基、ベンジル基、N−イミドメチル基等が挙げられる。
酸解離性官能基としては、例えばt−BuOCO−等のアルコキシカルボニル基、メトキシメチル基等のアルコキシ置換メチル基等が挙げられる。
熱解離性官能基としては、例えばt−BuOCOCH
2−等のアルコキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
【0073】
上記Z
0が示す炭素数2〜20のアルキレン基としては、例えばエチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−プロピレン基等のプロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基等が挙げられる。
上記Z
0が示す炭素数6〜14のアリーレン基としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等が挙げられる。
上記Z
0が示すアルキレンエーテル基としては、アルキレン部位の炭素数は2〜20であることが好ましい。このようなアルキレンエーテル基としては、例えばエチレンエーテル基;1,3−プロピレンエーテル基、1,2−プロピレンエーテル基等のプロピレンエーテル基;テトラメチレンエーテル基、ペンタメチレンエーテル基、ヘキサメチレンエーテル基等が挙げられる。
【0074】
構造単位(IV)としては、例えば下記式(3−1)、(3−2)で表される構造単位等が挙げられる。
【化9】
【0075】
上記式(3−1)及び(3−2)中、R
11及びR
12は、それぞれ上記式(3)におけるR
10と同義である。Z
1及びZ
2は、それぞれ上記式(3)におけるZ
0と同義である。
【0076】
m1は、Z
1が芳香環に結合している数を示し、1〜6の整数である。m2は、R
11が芳香環に結合している数を示し、1〜6の整数である。m3は、Z
2が芳香環に結合している数を示し、1〜4の整数である。m4は、R
12が芳香環に結合している数を示し、1〜4の整数である。但し、m1+m2≦7、m3+m4≦5である。
【0077】
なお、R
11、R
12、Z
1及びZ
2がそれぞれ複数の場合、複数のR
11、R
12、Z
1及びZ
2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、m1及びm3がそれぞれ2以上の場合、Z
1及びZ
2がそれぞれ芳香環に2つ以上結合していることを示し、この芳香環を有する[A]重合体が分岐構造又は網目構造を有することを表す。
【0078】
上記式(3)、式(3−1)及び式(3−2)における、R
10、R
11、R
12、Z
0、Z
1及びZ
2で表される各基が有していてもよい置換基としては、それぞれ、例えばハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数6〜22のアリール基等が挙げられる。
【0079】
上記ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0080】
上記炭素数6〜22のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0081】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば所定の各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、又はこの単量体とパラホルムアルデヒド等のアルデヒド類とを酸存在下で縮合させることで、適当な溶媒中で重合することにより合成できる。合成方法としては、単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等が好ましい。
【0082】
これらの合成方法における反応温度としては、使用する開始剤の種類によって適宜決定されるが、通常30℃〜180℃であり、40℃〜160℃が好ましく、50℃〜140℃がより好ましい。滴下時間を含む全反応時間としては、反応温度、使用する開始剤の種類、反応させる単量体等の条件によって適宜決定されるが、通常、30分〜12時間であり、1時間〜8時間が好ましい。
【0083】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル等が挙げられる。これらの開始剤は単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0084】
重合溶媒としては、重合を阻害する溶媒(重合禁止効果を有するニトロベンゼン、連鎖移動効果を有するメルカプト化合物等)以外の溶媒であって、単量体、及びこの単量体から合成される重合体を溶解可能な溶媒であれば特に限定されない。重合溶媒としては、例えばケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル・ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0085】
重合反応により得られた重合体は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の重合体を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、重合体を回収することもできる。
【0086】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、特に限定されないが、1,000以上50,000以下が好ましく、2,000以上40,000以下がより好ましい。なお、[A]重合体のMwが1,000未満であると、レジスト下層膜を形成したときの成膜性が低下する傾向がある。一方、[A]重合体のMwが50,000を超えると、レジスト下層膜としたときの密着性が低下する傾向がある。
【0087】
なお、本明細書のMwは、GPCカラム(東ソー製、G2000HXL 2本、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値をいう。
【0088】
<[B]重合体>
[B]重合体は、ガラス転移温度(Tg)が180℃を超える重合体である。この[B]重合体は、0℃以上180℃以下の温度範囲にガラス転移温度(Tg)を有しない。
【0089】
[B]重合体としては、上記性質を有していれば特に限定されないが、[B]重合体のガラス転移温度(Tg)は、200℃以上が好ましく、230℃以上がより好ましい。
【0090】
[B]重合体としては、例えばポリアリーレンエーテル系重合体、ポリアリーレンケトン系重合体、ポリアリーレンエーテルケトン系重合体、ポリアリーレンスルホン系重合体、ポリアリーレンスルフィド系重合体、ポリアリーレンエーテルスルホン系重合体、ポリイミド系重合体、ポリエーテルイミド系重合体、ポリベンゾイミダゾール系重合体、ポリベンゾチアゾール系重合体、ポリベンゾオキサゾール系重合体、アセナフチレン系重合体又はノボラック系重合体等の芳香族系重合体などが挙げられる。
【0091】
当該レジスト下層膜形成用組成物が[B]重合体を含む場合、[B]重合体の含有量としては、[A]重合体と[B]重合体との合計100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下が好ましい。
【0092】
<[B]重合体の合成方法>
[B]重合体は、公知の方法を用いて合成することができる。また、市販品を用いてもよい。
【0093】
[B]重合体のMwとしては、特に限定されないが、1,000以上200,000以下が好ましく、2,000以上100,000以下がより好ましい。[B]重合体のMwが1,000未満であると、レジスト下層膜を形成したときの成膜性が低下する傾向がある。一方、[B]重合体のMwが200,000を超えると、レジスト下層膜としたときの密着性が低下する傾向がある。
【0094】
<[C]酸発生体>
当該レジスト下層膜形成用組成物は、[C]酸発生体を含有することが好ましい。[C]酸発生体は、露光又は加熱により酸を発生する成分であり、当該レジスト下層膜形成用組成物が、[C]酸発生体を含有することで、[A]重合体の架橋反応をより促進させることができる。当該レジスト下層膜形成用組成物における[C]酸発生体の含有形態としては、後述するような化合物の態様(以下、この態様を「[C]酸発生剤」とも称する)でも、重合体の一部として組み込まれた態様でも、これらの両方の態様でもよい。
【0095】
[C]酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物等が挙げられる。[C]酸発生剤としては、オニウム塩化合物が好ましい。
【0096】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む)、ヨードニウム塩等が挙げられる。
【0097】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート等が挙げられる。これらのうち、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート及びトリフェニルホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネートが好ましい。
【0098】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。これらのテトラヒドロチオフェニウム塩のうち、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート及び1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0099】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。これらのヨードニウム塩のうち、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0100】
スルホンイミド化合物としては、例えばN−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。これらのスルホンイミド化合物のうち、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドが好ましい。
【0101】
これらの[C]酸発生剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。[C]酸発生体が[C]酸発生剤である場合の使用量としては、[A]重合体100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下が好ましく、1質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0102】
<溶媒>
当該レジスト下層膜形成用組成物は通常、溶媒を含有する。溶媒としては、例えばケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独又は2種以上を併用できる。
【0103】
エーテル系溶媒としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
【0104】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0105】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0106】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0107】
その他の溶媒としては、例えば
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒等が挙げられる。
【0108】
これらの溶媒のうち、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチル、シクロヘキサノンが好ましい。
【0109】
<その他の任意成分>
当該レジスト下層膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、架橋剤、界面活性剤、促進剤等のその他の任意成分を含有できる。以下、これらの任意成分について詳述する。かかるその他の任意成分は、それぞれを単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。また、その他の任意成分の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0110】
[架橋剤]
当該レジスト下層膜形成用組成物が含有してもよい架橋剤としては、例えば縮合多環骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、オキサゾリドン環の骨格を有するエポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、アルコキシメチル化されたアミノ基を有する化合物等が挙げられる。上記縮合多環骨格とは、2つ以上の単環がそれぞれの辺を互いに共有して形成される環状炭化水素、又はヘテロ原子を含む環状化合物である。上記単環は、飽和結合からなる環でも、不飽和結合を有する環でもよい。不飽和結合とは、炭素−炭素2重結合、炭素−窒素2重結合及び炭素−炭素3重結合から選ばれる結合である。上記縮合多環骨格としては、例えばナフタレン、フルオレン、ジシクロペンタジエン、アントラセン等が挙げられる。
【0111】
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、例えばエピクロン(登録商標)HP4032、同HP4032D、同HP4700、同HP4770(以上、大日本インキ化学工業製)、NC−7000、NC−7300(以上、日本化薬製)、ESN−175、ESN−360(以上、東都化成製)等が挙げられる。
【0112】
フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、例えばオンコート(登録商標)EX−1010、同EX−1011、同EX−1012、同EX−1020、同EX−1030、同EX−1040、同EX−1050、同EX−1051(長瀬産業製)等が挙げられる。
【0113】
ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、例えばエピクロン(登録商標)HP7200、同HP7200L、同HP7200H(以上、大日本インキ化学工業製)、Tactix558(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル製)、XD−1000−1L、XD−1000−2L、XD−1000−1L、XD−1000−2L(以上、日本化薬製)等が挙げられる。
【0114】
アントラセン骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、例えばjER(登録商標)YX8800(ジャパンエポキシレジン製)等が挙げられる。
【0115】
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、例えばjER(登録商標)YX4000H、同YX4000、同YL6616、同YL6121H、同YL6640(以上、ジャパンエポキシレジン製)、NC3000(日本化薬製)等が挙げられる。
【0116】
オキサゾリドン環の骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、例えばAER4152、XAC4151(以上、旭化成エポキシ製)等が挙げられる。なお、オキサゾリドン環の骨格を有するエポキシ樹脂は、例えば特開2003−119253等に記載された方法、即ちエポキシ樹脂とイソシアネート化合物とを、触媒の存在下反応させることによって得ることもできる。
【0117】
これらのエポキシ樹脂のうち、オキサゾリドン環の骨格、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂は、弾性率と靭性のバランスが良好であることから好ましい。
【0118】
アミン型エポキシ樹脂としては、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルキシリレンジアミン、並びにこれらのハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、アリール置換体、アリールオキシ置換体及び水添物等が挙げられる。
【0119】
上記テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品としては、例えばスミエポキシ(登録商標)ELM434(住友化学工業製)、YH434L(東都化成製)、jER(登録商標)604(ジャパンエポキシレジン製)、アラルダイド(登録商標)MY720、同MY721(ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ製)等が挙げられる。
【0120】
上記トリグリシジルアミノフェノール又はトリグリシジルアミノクレゾールの市販品としては、スミエポキシ(登録商標)ELM100、同ELM120(住友化学工業製)、アラルダイド(登録商標)MY0500、同MY0510、同MY0600(ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ製)、jER(登録商標)630(ジャパンエポキシレジン製)等が挙げられる。
【0121】
上記ジグリシジルアニリンの市販品としては、例えばGAN(日本化薬製)等が挙げられる。
【0122】
上記ジグリシジルトルイジンの市販品としては、例えばGOT(日本化薬製)等が挙げられる。
【0123】
上記テトラグリシジルキシリレンジアミン及びその水素添加品の市販品としては、例えばTETRAD(登録商標)−X、TETRAD(登録商標)−C(三菱ガス化学製)等が挙げられる。
【0124】
アルコキシメチル化されたアミノ基を有する化合物としては、例えばヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン等のメラミン化合物、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシグリコールウリル等のグリコールウリル化合物等が挙げられる。
【0125】
これらのうち、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン及びテトラブトキシグリコールウリルが、下層膜に弾性率と塑性変形能力とのバランス向上に加え、高い靭性を与えることから好ましい。
【0126】
その他、併用して用いることができる架橋剤としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0127】
上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては例えばjER(登録商標)152、同154(以上、ジャパンエポキシレジン製)、エピクロン(登録商標)N−740、同N−770、同N−775(以上、大日本インキ化学工業製)等が挙げられる。
【0128】
上記クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えばエピクロン(登録商標)N−660、同N−665、同N−670、同N−673、同N−695(以上、大日本インキ化学工業製)、EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−104S(以上、日本化薬製)等が挙げられる。
【0129】
上記レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えばデナコール(登録商標)EX−201(ナガセケムテックス製)等が挙げられる。
【0130】
上記トリフェニルメタン型エポキシ樹脂の市販品としては、例えばTactix742(ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ製)、EPPN−501H、EPPN−502H(以上、日本化薬製)等が挙げられる。
【0131】
上記テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂としては、例えばjER(登録商標)1031S(ジャパンエポキシレジン製)等が挙げられる。
【0132】
[界面活性剤]
界面活性剤は塗布性、ストリエーション等を改良する作用を示す成分である。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名として、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、大日本インキ化学工業製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子製)等が挙げられる。
【0133】
[促進剤]
促進剤は、酸化架橋に必要な脱水素反応を十分に引き起こすための一電子酸化剤等である。一電子酸化剤とは、それ自身が1電子移動を受ける酸化剤をいう。例えば、硝酸セリウム(IV)アンモニウムの場合、セリウムイオン(IV)が一電子を得てセリウムイオン(III)へと変化する。また、ハロゲン等のラジカル性の酸化剤は、一電子を得てアニオンへと転化する。このように、一電子を被酸化物(基質や触媒等)から奪うことにより、被酸化物を酸化する現象を一電子酸化と称し、この時一電子を受け取る成分を一電子酸化剤という。
【0134】
一電子酸化剤としては、例えば金属化合物、過酸化物、ジアゾ化合物、ハロゲン原子又はハロゲン酸等が挙げられる。
【0135】
上記金属化合物としては、例えばセリウム、鉛、銀、マンガン、オスミウム、ルテニウム、バナジウム、タリウム、銅、鉄、ビスマス、ニッケル等を含む金属化合物が挙げられる。具体的には、例えば
硝酸セリウム(IV)アンモニウム、酢酸セリウム(IV)、硝酸セリウム(IV)、硫酸セリウム(IV)等のセリウム塩;
四酢酸鉛、酸化鉛(IV)等の鉛化合物;
酸化銀(I)、酸化銀(II)、炭酸銀(Fetizon試薬)等の銀化合物;
過マンガン酸塩、活性二酸化マンガン、マンガン(III)塩等のマンガン化合物;
四酸化オスミウム等のオスミウム化合物;
四酸化ルテニウム等のルテニウム化合物;
VOCl
3、VOF
3、V
2O
5、NH
4VO
3、NaVO
3等のバナジウム化合物; 酢酸タリウム(III)、トリフルオロ酢酸タリウム(III)、硝酸タリウム(III)等のタリウム化合物;
酢酸銅(II)、銅(II)トリフルオロメタンスルホネート、銅(II)トリフルオロボレート、塩化銅(II)、酢酸銅(I)等の銅化合物;
塩化鉄(III)、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム等の鉄化合物;
ビスマス酸ナトリウム等のビスマス化合物;
過酸化ニッケル等のニッケル化合物等が挙げられる。
【0136】
上記過酸化物としては、例えば
過酢酸、m−クロロ過安息香酸等の過酸;
過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド等のアルキルヒドロキシペルオキシド等のヒドロキシペルオキシド類;
過酸化ジアシル、過酸エステル、過酸ケタール、ペルオキシ二炭酸塩、過酸化ジアルキル、過酸ケトン等が挙げられる。
【0137】
上記ジアゾ化合物としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0138】
上記ハロゲン又はハロゲン酸としては、例えば塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子や、過ハロゲン酸、ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、次亜ハロゲン酸及びこれらの塩等が挙げられる。
【0139】
これらの一電子酸化剤のなかでも、基板上に金属残留物等が付着する不都合がすくないことから過酸化物、ジアゾ化合物が好ましく、m−クロロ過安息香酸、t−ブチルヒドロペルオキシド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルがより好ましい。
【0140】
<レジスト下層膜形成用組成物の調製方法>
当該レジスト下層膜形成用組成物は、例えば上記溶媒中で[A]重合体、[B]重合体、[C]酸発生体及びその他の任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。溶媒としては、[A]重合体、[B]重合体、[C]酸発生体及びその他の任意成分を溶解又は分散可能であれば特に限定されない。当該レジスト下層膜形成用組成物は通常、その使用に際して溶媒に溶解した後、例えば孔径0.1μm程度のフィルターでろ過することによって、調製される。
【0141】
<レジスト下層膜>
本発明には、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜も含まれる。当該レジスト下層膜は、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるため、被加工基板との密着性に優れる。
【0142】
また、当該レジスト下層膜は、水との静的接触角が70°以上が好ましく、73°以上がより好ましく、76°以上であることがさらに好ましく、79°以上が特に好ましい。当該レジスト下層膜の静的接触角が70°以上であることで当該レジスト下層膜の疎水性が高くなり、例えばレジスト膜成膜後のウエットエッチング等における水溶液による外部刺激が低減され、レジスト下層膜のパターン倒れをより抑制することができる。また、上記静的接触角の上限は、89°以下であることが好ましく、86°以下であることがより好ましく、83°以下であることがさらに好ましい。
【0143】
<レジスト下層膜の形成方法>
当該レジスト下層膜の形成方法としては、例えば被加工基板や他の下層膜(反射防止膜)等の表面に塗布することにより、レジスト下層膜形成用組成物の塗膜を形成し、この塗膜を加熱処理、又は紫外光の照射及び加熱処理を行うことにより硬化させることで形成できる。レジスト下層膜形成用組成物を塗布する方法としては、例えばスピンコート法、ロールコート法、ディップ法等が挙げられる。また、加熱温度しては、通常150℃〜500℃であり、好ましくは180℃〜350℃である。加熱時間としては、通常30秒〜1200秒であり、好ましくは45秒〜600秒である。レジスト下層膜の膜厚としては、通常、0.05μm〜5μmである。
【0144】
<パターン形成方法>
当該レジスト下層膜形成用組成物を用いたパターン形成方法は、
(1)被加工基板上に当該レジスト下層膜形成用組成物を用いてレジスト下層膜を形成する工程(以下、「工程(1)」と称する)、
(2)上記レジスト下層膜表面にシリコン系酸化膜を形成する工程(以下、「工程(2)」と称する)、及び
(3)上記シリコン系酸化膜をウエットエッチングする工程(以下、「工程(3)」と称する)を含む。
【0145】
当該パターン形成方法は、当該レジスト下層膜形成用組成物を用いるため、被加工基板との密着性に優れ、ウエットエッチング等により被加工基板から剥れる不都合を抑制することができる。
【0146】
また、当該パターン形成方法は、
上記工程(2)と工程(3)の間に、
(a)上記シリコン系酸化膜上にレジスト組成物を塗布し、レジストパターンを形成する工程(以下、「工程(a)」と称する)、並びに
(b)上記レジストパターンをマスクとしてシリコン系酸化膜及びレジスト下層膜を順次ドライエッチングする工程(以下、「工程(b)」と称する)
を含むことが好ましい。
【0147】
当該パターン形成方法が上記工程を含むことで、微細なパターンを形成することができる。
【0148】
また、当該パターン形成方法は、
上記工程(3)の後に、
(c)上記シリコン系酸化膜がウエットエッチングされたレジスト下層膜をマスクとして被加工基板をドライエッチングする工程(以下、「工程(c)」と称する)
をさらに含むことがより好ましい。
【0149】
当該パターン形成方法が上記工程を含むことで、より微細なパターンを形成することができる。
【0150】
当該レジスト下層膜形成用組成物は、ウエットエッチング耐性に優れることから、シリコン系酸化膜等の中間塗膜をウエットエッチングにより除去するプロセスを含む多層レジストプロセスにおいても好適に使用することができる。以下、各工程について、詳述する。
【0151】
[工程(1)]
本工程では、当該レジスト下層膜形成用組成物を用いて被加工基板上にレジスト下層膜を形成する。上記被加工基板としては、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、ポリシロキサン等の絶縁膜、並びに市販品であるブラックダイヤモンド(AMAT製)、シルク(ダウケミカル製)、LKD5109(JSR製)等の低誘電体絶縁膜で被覆したウェハ等の層間絶縁膜が挙げられる。また、この被加工基板としては、配線講(トレンチ)、プラグ溝(ビア)等のパターン化された基板を用いてもよい。なお、工程(1)におけるレジスト下層膜の形成方法については、上述の「レジスト下層膜の形成方法」の項にて詳述しているので、ここでは説明を省略する。
【0152】
また、上記被加工基板には、予め本発明のレジスト下層膜形成用組成物を用いて得られるレジスト下層膜とは異なる他の下層膜(以下、「他の下層膜」と称する)が形成されていてもよい。この他の下層膜は、反射防止機能、塗布膜平坦性、CF
4等のフッ素系ガスに対する高エッチング耐性等が付与された膜である。この他の下層膜としては、例えばNFC HM8006(JSR製)、NFC CT08(JSR製)等の市販品を使用することができる。
【0153】
[工程(2)]
本工程は、上記レジスト下層膜表面にシリコン系酸化膜を形成する。シリコン系酸化膜形成用組成物としては、例えば、NFC SOG508(JSR製)等が挙げられる。シリコン系酸化膜の形成方法は特に限定されないが、例えばスピンコート法、塗布法、CVD法等が挙げられる。また、加熱温度しては、通常150℃〜500℃であり、好ましくは180℃〜350℃である。加熱時間としては、通常30秒〜1200秒であり、好ましくは45秒〜600秒である。シリコン系酸化膜の膜厚としては、通常、0.01μm〜0.3μmであり、0.02μm〜0.1μmが好ましい。
【0154】
[工程(a)]
本工程では、上記シリコン系酸化膜上にレジスト組成物を塗布し、レジストパターンを形成する。上記レジスト組成物としては、例えば光酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等が挙げられる。なお、本発明のパターン形成方法においては、このようなレジスト組成物として、市販品のレジスト組成物を使用することもできる。レジスト組成物の塗布方法としては、例えばスピンコート法等の従来の方法によって塗布することができる。なお、レジスト組成物を塗布する際には、得られるレジスト塗膜が所望の膜厚となるように、塗布するレジスト組成物の量を調整する。
【0155】
上記レジスト塗膜は、上記レジスト組成物を塗布することによって形成された塗膜をプレベークすることにより、塗膜中の溶媒(即ち、レジスト組成物に含有される溶媒)を揮発させて形成することができる。プレベークの温度としては、[A]重合体のガラス転移温度(Tg)以上であることが好ましい。加熱時間としては、通常30秒〜200秒であり、好ましくは45秒〜120秒である。なお、このレジスト膜の表面にさらに他の塗膜を設けてもよい。レジスト膜の膜厚としては、通常、0.01μm〜0.5μmであり、0.02μm〜0.3μmが好ましい。
【0156】
次いで、得られたレジスト塗膜に、例えば、露光、加熱及び現像を行い、レジストパターンを形成する、具体的には、まず、フォトマスクを介して選択的に放射線を照射してレジスト塗膜を露光する。放射線としては、レジスト組成物に使用されている酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択されるが、遠紫外線であることが好ましく、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F
2エキシマレーザー光(波長157nm)、Kr
2エキシマレーザー光(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー光(波長134nm)、極紫外線(波長13nm等)がより好ましい。また、液浸露光法も採用することができる。
【0157】
露光後にレジスト膜の解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、ポストベークを行う。このポストベークの温度としては、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、通常、30℃〜200℃程度、好ましくは50℃〜150℃である。
【0158】
ポストベーク後、レジスト塗膜を現像して、レジストパターンを形成する。現像に用いる現像液としては、使用されるレジスト組成物の種類に応じて適宜選択することができる。ポジ型化学増幅型レジスト組成物やアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト組成物の場合には、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液が挙げられる。また、これらのアルカリ性水溶液は、水溶性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加したものであってもよい。
【0159】
また、ネガ型化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂を含有するネガ型レジスト組成物の場合には、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ類の水溶液等が挙げられる。
【0160】
[工程(b)]
本工程では、上記レジストパターンをマスクとしてシリコン系酸化膜及びレジスト下層膜を順次ドライエッチングする。ドライエッチングは、公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。また、ドライエッチング時のソースガスとしては、被エッチング物の元素組成にもよるが、O
2、CO、CO
2等の酸素原子を含むガス、He、N
2、Ar等の不活性ガス、Cl
2、BCl
4等の塩素系ガス、CHF
3、CF
4等のフッ素系ガス、H
2、NH
3のガス等を使用することができる。なお、これらのガスは混合して用いることもできる。
【0161】
[工程(3)]
本工程では、上記シリコン系酸化膜をウエットエッチングする。ウエットエッチングは、例えばフッ化水素水溶液、フッ化水素酸系緩衝溶液等を用いて行うことができる。フッ化水素酸系緩衝溶液としては、例えばフッ化水素水溶液と、弱アルカリのフッ化アンモニウムとの混合溶液等が挙げられる。
【0162】
[工程(c)]
本工程では、上記シリコン系酸化膜がウエットエッチングされたレジスト下層膜をマスクとして被加工基板をドライエッチングすることにより所望のパターンが施された基板を得ることができる。ドライエッチングは、公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。また、ドライエッチング時のソースガスとしては、上述の工程(b)に例示したものと同様のものを適用することができる。
【0163】
また、これらのプロセス後、被加工基板上に残存するレジスト下層膜を除去する工程を有していてもよい。
【0164】
レジスト下層膜を除去する工程では、プラズマアッシングによりレジスト下層膜を除去する。ここで、「プラズマアッシング」とは、気相中で、酸素等の反応ガスのプラズマを発生させ、このプラズマによって、レジスト下層膜等の有機物をCO
xやH
2O等に分解し、除去することを意味する。
【0165】
プラズマアッシングの条件としては、レジスト下層膜を除去することが可能である限り特に限定されないが、例えば、サセプタに印加する高周波電力が100W〜1,000Wであることが好ましく、100W〜500Wがより好ましい。また、サセプタ温度は20℃〜100℃が好ましく、20℃〜60℃がより好ましい。また、処理容器内の圧力としては、1mtorr〜300mtorrが好ましく、30mtorr〜100mtorrがより好ましい。
【0166】
プラズマアッシングに用いるガスとしては、レジスト下層膜を除去することが可能である限り特に限定されないが、例えばプラズマアッシングによる被加工基板の比誘電率の上昇を抑えるという観点から、窒素、水素、アンモニア及びアルゴンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものが好ましく、特に窒素と水素の混合ガス、アンモニアとアルゴンの混合ガス、アンモニア、窒素及び水素の混合ガスがより好ましい。
【0167】
また、窒素と水素の混合ガスを用いる場合には、容量比で、窒素100に対して、水素が20以下であることが好ましく、水素が1〜10であることがより好ましい。また、アンモニアとアルゴンの混合ガスを用いる場合には、容量比で、アンモニア100に対して、アルゴンが10以下であることが好ましい。
【実施例】
【0168】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0169】
実施例及び比較例に使用したレジスト下層膜形成用組成物中の[A]重合体及び[B]重合体について、示差走査熱量分析装置(DSC204 F1、NETZSCH製)を用いて、Tgを測定した。なお、200℃まで昇温してもTgが観測されなかった場合には「>200」とした。
【0170】
<[A]重合体の合成>
[合成例1]
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素下で構造単位(I)を与えるアクリル酸n−ブチル15質量部、構造単位(II)を与える2−ビニルナフタレン50質量部、構造単位(III)を与えるビニルベンジルアルコール35質量部、メチルエチルケトン300質量部、及び2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル5質量部を仕込み、80℃で6時間撹拌した。その後、反応溶液を多量のn−ヘプタン中に投入し、沈殿した重合体をろ過して、重合体(A−1)を得た。得られた重合体(A−1)のMwは、5,000であった。Tgは、75℃であった。
【0171】
[合成例2]
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素下で構造単位(I)を与えるアクリル酸エチル15質量部、構造単位(II)を与える2−ビニルナフタレン50質量部、構造単位(III)を与えるビニルベンジルアルコール35質量部、メチルエチルケトン300質量部、及び2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル5質量部を仕込み、80℃で6時間撹拌した。その後、反応溶液を多量のn−ヘプタン中に投入し、沈殿した重合体をろ過して重合体(A−2)を得た。得られた重合体(A−2)のMwは、5,000であった。Tgは、78℃であった。
【0172】
[合成例3]
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素下で構造単位(I)を与えるアクリル酸メチル15質量部、構造単位(II)を与える2−ビニルナフタレン50質量部、構造単位(III)を与えるビニルベンジルアルコール35質量部、メチルエチルケトン300質量部、及び2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル5質量部を仕込み、80℃で6時間撹拌した。その後、反応溶液を多量のn−ヘプタン中に投入し、沈殿した重合体をろ過して、重合体(A−3)を得た。得られた重合体(A−3)のMwは7,000であった。Tgは、80℃であった。
【0173】
[合成例4]
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素下で構造単位(I)を与えるアクリル酸n−ブチル15質量部、構造単位(II)を与える2−ビニルナフタレン50質量部、構造単位(III)を与える5−ヒドロキシメチルアセナフチレン35質量部、シクロヘキサノン300質量部、及び2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル5質量部を仕込み、80℃で6時間撹拌した。その後、反応溶液を多量のn−ヘプタン中に投入し、沈殿した重合体をろ過して、重合体(A−4)を得た。得られた重合体(A−4)のMwは、20,000であった。Tgは、110℃であった。
【0174】
[合成例5]
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素下でアセナフチレン100質量部、トルエン78質量部、ジオキサン52質量部及び2,2−アゾビスブチロニトリル3質量部を仕込み、70℃で5時間撹拌した。ここで得られた分子量10,000の重合体に、p−トルエンスルホン酸1水和物5.2質量部、パラホルムアルデヒド40質量部を添加して、120℃に昇温し、更に6時間撹拌した。その後、反応溶液を多量のイソプロパノール中に投入し、沈殿した重合体をろ過して、重合体(CA−1)を得た。得られた重合体(CA−1)のMwは、20,000であった。Tgは、>200℃であった。
【0175】
[合成例6]
コンデンサー、温度計及び撹拌装置を備えた反応装置に2,7−ジヒドロキシナフタレン100質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100質量部及びパラホルムアルデヒド50質量部を仕込み、蓚酸2質量部を添加し、脱水しながら120℃に昇温して、5時間反応させた後、下記式で表される構造単位を有する重合体(CA−2)を得た。得られた重合体(CA−2)のMwは、3,000であった。Tgは、>200℃であった。
【0176】
【化10】
【0177】
[合成例7]
コンデンサー、温度計及び攪拌装置を備えた反応装置にフェノール100質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100質量部及びパラホルムアルデヒド50質量部を仕込み、蓚酸2質量部を添加し、脱水しながら120℃に昇温して、5時間反応させた後、下記式で表される構造単位を有する重合体(A−5)を得た。得られた重合体(A−5)のMwは、7,000であった。Tgは、90℃であった。
【0178】
【化11】
【0179】
<[B]重合体の合成>
公知の合成方法を用い、下記式(b−1)で表される構造単位を有する重合体(B−1)、及び下記式(b−2)で表される構造単位を有する重合体(B−2)を合成した。なお、重合体(B−1)のMwは、50,000であり、Tgは、>200℃であった。また、重合体(B−2)のMwは、5,000であり、Tgは、>200℃であった。
【0180】
【化12】
【0181】
<レジスト下層膜形成用組成物の調製>
[実施例1]
[A]重合体としての重合体(A−1)10質量部、[C]酸発生剤としての熱酸発生剤であるジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート(以下、「C−1」と称する)0.3質量部及び下記式で表される架橋剤としての1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(以下、「D−1」と称する)1質量部を溶媒としての酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「E−1」と称する)90質量部に溶解した。この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して、実施例1のレジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0182】
【化13】
【0183】
[実施例2〜7及び比較例1〜2]
表1に示す種類、量の各成分を使用した以外は実施例1と同様に操作して、各レジスト下層膜形成用組成物を調製した。なお、表1中の溶媒(E−2)は、シクロヘキサノンを示す。また、「−」は該当する成分を使用しなかったこと又は該当する特性が無いことを示す。
【0184】
<評価>
上記のように形成したレジスト下層膜形成用組成物について、以下のように各種物性を評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0185】
[静的接触角(°)]
直径8インチのシリコンウェハー上に、調製した各レジスト下層膜形成用組成物をスピンコートで塗布した後、酸素濃度20容量%のホットプレート内にて180℃で60秒間加熱し、引き続き300℃で60秒間加熱して、膜厚0.1μmのレジスト下層膜を形成した。得られたレジスト下層膜と水との静的接触角(°)を、接触角測定装置(DLA10L2E、KURRS製)を用いて測定した。
【0186】
[ウエットエッチング耐性]
直径8インチのシリコンウェハー上に、調製した各レジスト下層膜形成用組成物をスピンコートで塗布した後、酸素濃度20容量%のホットプレート内にて180℃で60秒間加熱し、引き続き、300℃で60秒間加熱して、膜厚0.1μmのレジスト下層膜を形成した。得られたレジスト下層膜にシリコン系酸化膜形成用組成物としての3層レジストプロセス用ケイ素含有中間層形成組成物溶液(JSR製)をスピンコートで塗布し、200℃及び300℃のホットプレート上でそれぞれ60秒間加熱して、膜厚0.045μmシリコン系酸化膜を形成した。次いで、得られたシリコン系酸化膜に、レジスト組成物としてのArF用レジスト組成物溶液(アクリル系ArF用フォトレジスト、JSR製)をスピンコートで塗布し、130℃のホットプレート上で90秒間プレベークして、膜厚0.1μmのレジスト塗膜を形成した。その後、NIKON製ArFエキシマレーザー露光装置(レンズ開口数1.3、露光波長193nm)を用い、マスクパターンを介して、40nmのラインアンドスペースパターンを形成するように最適露光時間だけ露光した。次いで、130℃のホットプレート上で90秒間ポストベークしたのち、2.38%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、25℃で1分間現像、水洗、乾燥し、ArF用ポジ型レジストパターンを得た。その後、上記レジストパターンをマスクとしてシリコン系酸化膜及びレジスト下層膜をエッチング装置(東京エレクトロン製、条件:シリコン系酸化膜エッチングガスCF
4(CF
4:150mL/分、RFパワー:300W)、下層膜エッチングガスO
2/N
2(O
2:55mL/分、N
2:65mL/分、RFパワー:700W))によって、順次ドライエッチングした。次いで、シリコン系酸化膜を、0.1%フッ化水素/フッ化アンモニウム緩衝水溶液によりウエットエッチングした。ウエットエッチング後のパターン形状を走査型電子顕微鏡により観察し、レジスト下層膜のパターンが立っている状態の場合を「A」(良好と判断)、下層膜のパターンの上部のみ倒れている状態を「B」(まずまず良好と判断)、下層膜のパターンが下部から倒れたり剥がれたりしている状態の場合を「C」(不良と判断)とした。
【0187】
【表1】
【0188】
表1に示される結果から明らかなように、当該レジスト下層膜形成用組成物はウエットエッチング耐性に優れるパターンを形成できることがわかった。