(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874727
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】補綴弁支持構造
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20160218BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】25
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-527123(P2013-527123)
(86)(22)【出願日】2011年8月24日
(65)【公表番号】特表2013-539391(P2013-539391A)
(43)【公表日】2013年10月24日
(86)【国際出願番号】US2011048988
(87)【国際公開番号】WO2012030598
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2014年8月25日
(31)【優先権主張番号】61/379,115
(32)【優先日】2010年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512306863
【氏名又は名称】メドトロニック ヴァスキュラー ゴールウェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】コヴァリスキー イゴール
(72)【発明者】
【氏名】トゥヴァル ヨッシ
【審査官】
宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−525291(JP,A)
【文献】
特表2005−505343(JP,A)
【文献】
特表2004−500189(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0114913(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端部と遠位端部を有する支持構造と、
前記支持構造の前記遠位端部に取り付けられた制動部材とを備え、
前記制動部材が前記支持構造の前記遠位端部の半径方向への拡大を制限するように構成され、
前記支持構造の近位端部に取り付けられているシール部材をさらに備え、
前記シール部材が患者の心臓の小葉間三角形と合致する形状で構成されている、
ことを特徴とする弁補綴具。
【請求項2】
前記制動部材が、前記支持構造が剛性の円形フレームで構成されている、
請求項1記載の補綴具。
【請求項3】
前記支持構造がその遠位部分に複数の支柱を備え、
前記剛性の円形フレームが前記複数の支柱のそれぞれの遠位端部に取り付けられている、
請求項2記載の補綴具。
【請求項4】
前記制動部材が複数の剛性のアーチ部分を備え、
各剛性のアーチ部分が隣接する支柱間に延びていることを特徴とする、
請求項1記載の補綴具。
【請求項5】
各剛性のアーチが前記隣接する支柱の近位端部に取り付けられている、
請求項4記載の補綴具。
【請求項6】
前記剛性のアーチが全体として実質的に円形の形状を形成している、
請求項4記載の補綴具。
【請求項7】
前記剛性のアーチが補綴具挿入プロセス中に収縮・拡大するのに十分な程度の可撓性を有している、
請求項4記載の補綴具。
【請求項8】
前記剛性のアーチが含まれる平面が、前記支持構造を通じて延びている長手方向軸線に対して一定の角度を形成しており、その角度が30度から120度の範囲である、
請求項4記載の補綴具。
【請求項9】
前記支持構造が複数の支柱をその遠位端部に備え、
前記制動部材が複数の線状支持要素を備え、各線状支持要素が隣接する支柱間に延びている、
請求項1記載の補綴具。
【請求項10】
各線状支持要素が前記隣接する支柱の遠位端部に取り付けられている、
請求項9記載の補綴具。
【請求項11】
各線状支持要素が非剛性素材で形成されている、
請求項9記載の補綴具。
【請求項12】
各線状支持要素が剛性の素材で形成されている、
請求項9記載の補綴具。
【請求項13】
線状支持要素が、直列に接続された線状支持用副要素である、
請求項9記載の補綴具。
【請求項14】
前記制動部材が前記複数の支柱の半径方向への動きを制限するように構成されている、
請求項3記載の補綴具。
【請求項15】
前記支持構造がその遠位端部に複数の支柱を備え、
前記シール部材が複数の密封要素を備え、各密封要素が対応する支柱と整列するように位置決めされている、
請求項1記載の補綴具。
【請求項16】
前記シール部材が前記支持構造の近位端部の周辺に延びていることを特徴とする、
請求項1記載の補綴具。
【請求項17】
前記支持構造がその遠位端部に複数の支柱を備え、
前記シール部材が複数のシール用先端を備え、
前記シール部材が、各シール用先端を対応する支柱と整列させる向きになっている、
請求項1記載の補綴具。
【請求項18】
その遠位端部に設けられた複数の支柱と前記複数の支柱から近位方向に延びる波状部分を含む収縮拡張可能な支持構造と、
前記支持構造の近位端部に取り付けられた制動部材と、を備え、
前記制動部材が前記支持構造の近位端部の半径方向への動きを制限するように構成され、
前記支持構造の近位端部に取り付けられているシール部材をさらに備え、
前記シール部材が患者の心臓の小葉間三角形と合致する形状で構成されている、
ことを特徴とする弁補綴具。
【請求項19】
前記波状部分が複数の端点を含む拡開した近位部分を備え、
前記制動部材が複数のストラットを備え、
各ストラットが隣接する端点を結合させている、
請求項18記載の弁補綴具。
【請求項20】
前記波状部分が複数の端点を含む拡開した近位部分を含み、
前記制動部材が複数のストラットを備え、
複数のストラットが隣接端点を結合させている、
請求項18記載の弁補綴具。
【請求項21】
前記制動部材が前記支持構造と一体的である、
請求項18記載の弁補綴具。
【請求項22】
さらに、前記支持構造に取り付けられたシール部材を備え、
前記シール部材が患者の心臓の小葉間三角形と合致する形状で構成されている、
請求項18記載の弁補綴具。
【請求項23】
前記シール部材が複数の密封要素を備え、各密封要素が対応する支柱と整列するように、前記支持構造の近位端部に配置されている、
請求項22記載の弁補綴具。
【請求項24】
前記シール部材が前記支持構造の近位端部に配置され、前記支持構造の周辺に延びている、
請求項22記載の弁補綴具。
【請求項25】
前記シール部材が複数のシール用先端を備え、
前記シール部材が各シール用先端が対応する支柱と整列するような向きになっている、
請求項22記載の弁補綴具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願データ]
本願は、2010年9月1日付けて出願された米国仮出願第61/379,115号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は補綴弁とそれを移植する方法に関する。より具体的には、本発明はカテーテルを通じて移送するように構成された補綴弁支持構造に関する。
【背景技術】
【0003】
重篤な弁疾患を有する患者における大動脈弁の取り換えは一般的に行われる外科的な処置である。この取り換えは通常は開心臓手術において行われ、この手術においては、心臓は通常は止められて、患者には心臓バイパス装置が取り付けられる。経心尖あるいは経皮アプローチなど侵襲を最小限に抑えた手順を用いて移植される補綴心臓弁を備えた補綴具が開発されている。これらの方法はその補綴具を半径方向に縮小させ、直径を小さくするステップ、補綴具をカテーテルなどの移送器具に挿入するステップ、及び、その移送器具を心臓の正確な解剖学的位置に前進させるステップを備えている。適切に配置されると、その補綴具は自然の弁輪内で半径方向に拡張して配置される。
【0004】
このような補綴具は補綴心臓弁をその場所に保持するための支持構造を含み得る。その補綴具の流入部分は左心室流出管(LVOT)などの身体管腔による半径方向の干渉に曝されて、それがその補綴具に対する円周半径方向圧力を発生させ得る。補綴具の流入部分に対するこうした半径方向の干渉はその補綴具の流出部分での半径方向の動きにつながってしまう可能性がある。そのような動きは良くないかもしれない。
【0005】
さらに、補綴具は、例えば弁機能及び心臓収縮によって、流入部分での半径方向の動きを受けり得る。そうした半径方向の動きはその流入部分の直径を循環的に収縮・膨張を繰り返させ得る。こうした収縮・膨張がその補綴具を不必要に疲労させてしまう可能性がある。
【0006】
さらに、患者の解剖学的構造と補綴具の形状が必ずしも完全に一致しているわけではないから、弁周囲での漏出が起きる可能性がある。例えば、補綴具とLVOT壁との間の漏洩の重大な原因の1つは小葉間三角形と呼ばれる波状小葉間につくられる隙間である。
【0007】
従って、流出部分と流入部分がお互いに無関係に半径方向の動くことができ、患者の解剖学的構造により一致した補綴具に対する必要性がある。
【0008】
ここで参照することでその全体が本明細書に組み込まれるSchwammenthalらに対するPCT公報WO 05/002466号は、大動脈弁狭症を措置するための補綴具装置を開示している。
【0009】
ここで参照することでその全体が本明細書に組み込まれるSchwammenthalらに対するPCT公報WO 06/070372号は、対象者に移植するのに適した、そして液体流入口とその液体流入口に対しては遠位の分岐部分を形成する形状の、内部に単一の流動フィールドを有する補綴具装置を説明している。
【0010】
ここで参照することでその全体が本明細書に組み込まれるSchwammenthalらに対するPCT公報WO第2006/0149360号は、血管内の弁に取り付け可能な弁開口部取り付け部材と液体流入口を含み、その液体流入口から延びていてその液体流入口に近い方に近端部を有しその近位端部から離れた場所に遠位端分を有している分岐部材を備えている補綴具装置を説明している。その分岐部材の遠位部分はその近位部分より断面積が大きくなっており、そこを通じて液体が流動するようになっている。
【0011】
ここで参照することでその全体が本明細書に組み込まれるNguyenらに対する米国特許出願公報第2006/0259136号は、1つのスカート部分と複数の接合小葉を含む弁体を支持する自動拡大性の多重レベル・フレームを有する心臓弁補綴具を説明している。このフレームは、経皮経内腔移送を可能にする収縮された移送構成と非シンメトリックな砂時計状の形状を有する拡大展開された構成の間を移行する形状を有している。この弁体のスカート部分と小葉はその弁の接合面にかかる水平方向の力を減らすと同時に、その小葉に沿って、そしてそのフレームに対して働く力を効率的に分散伝播させるように、その接合の中心点を選択できるような構造になっている。あるいは、その弁体は外科的に埋め込み可能な代替弁補綴具として用いることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明はその遠位端部での半径方向の動きを制限する弁補綴具支持構造を提供する。
【0013】
本発明はまたその近位端部での半径方向の動きを制限する弁補綴具支持構造を提供する。
【0014】
本発明はまた弁周囲での漏出を防ぐシール部材を含む弁補綴具支持構造を提供する。
【0015】
本発明は近位端部と遠位端部を有する支持構造と、その支持構造の遠位端部に取り付けられた制動部材を備え、上記制動部材がその支持構造の遠位端部の半径方向への膨張を制限するように構成されていることを特徴とする補綴具を提供する。
【0016】
また、本発明は、その遠位端部に複数の支柱とその複数の支柱から近位方向に延びた波状部分を備えている収縮び拡大可能な支持構造と、その近位スカート部の近位端部に取り付けられた制動部材を含み、その制動部材が上記収縮可能な支持構造の遠位端部の半径方向を制限するように構成されていることを特徴とする弁補綴具支持構造を提供する。
【0017】
本発明はまた補綴具を身体内の望ましい場所に移送する方法を提供する。そうした方法の1つは、移送装置のシースを被術者の血管構造内に導入するステップを備え、そのシースの遠位部尖端にその補綴具が含まれており、さらにそのシースの先端を身体の望ましい位置に進ませて、身体内でその補綴具を放出させる。その補綴具は近位端部と遠位端部を有する支持構造とその支持構造の遠位端部に取り付けられる制動部材を備えている。
【0018】
以下に、本発明のさらなる特徴を説明する。上の一般的な説明と以下の詳細な説明の両方とも例示的なものであって、ここに権利請求されている発明をさらに説明するためのものである。
【0019】
本明細書に組み込まれている以下の添付図面は本明細書の一部を形成するものであり、本発明の例示的な実施の形態を示している。これらの図面は、説明と共に、当業者がここに述べられている例示的な実施の形態を作成・使用するのにさらに役立つであろう。以下の図面において、同じ参照番号は同一あるいは機能的に同様の要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、近位端部で半径方向の干渉を受ける弁補綴具の斜視図である。
【
図2】
図2は、近位端部で半径方向の干渉を受けない弁補綴具の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の1つの実施の形態による弁補綴具の斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の1つの実施の形態による弁補綴具の斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の1つの実施の形態による弁補綴具の斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の1つの実施の形態による弁補綴具の斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の1つの実施の形態による弁補綴具の斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の1つの実施の形態による弁補綴具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、例示的な実施の形態を示す添付図面を参照して、本発明を詳細に説明する。他の実施の形態も可能であり、それらの実施の形態も本発明の範囲に含まれるものである。本発明の思想と範囲を逸脱せずに、ここに述べられている例示的な実施の形態に対して修正を行うことは可能である。従って、以下の詳細な説明は限定的なものではない。ここに示される例示的な実施の形態の作動及び挙動は、これらの例示的な実施の形態に対する修正及び変更が本発明の範囲内で為され得るということを前提として述べられるものである。
【0022】
図1は近位部で半径方向の干渉を受けている弁補綴具100の斜視図である。半径方向の干渉は、弁補綴具100の一部の直径の変化を余儀なくされ、あるいは変化させる。
図2は近位端部で半径方向の干渉を受けていない弁補綴具100の斜視図である。弁補綴具100は、その近位端部にある流入部分110とその遠位端部にある流出部分120を備えている。弁補綴具100は弁補綴具支持構造130も備えている。
【0023】
弁補綴具支持構造130は、流出部分120近くに支柱122(接合用支柱とも呼ばれる)と、流入部分110から支柱122に延びる近位スカート部分132を備えている。
【0024】
弁補綴具100は、好ましくは経カテーテル移送を容易にするために収縮可能である。弁補綴具100は経大腿部方式で移送できるのが好ましい。しかしながら、弁補綴具100は、経血管方式や経心尖方式でも移送可能である。弁補綴具100は心臓切開手術やそれに関連した方法でも移植することができる。弁補綴具100は目標部位に移送されると、その場所で半径方向に拡張することができる。その目標部位とは好ましくは被術者の自然の大動脈環状部であるが、本発明による弁は被術者の他の部位(例えば、自然の僧帽弁あるいは肺環状部など)に移植することもできる。
【0025】
例えば、弁補綴具100を備えているカテーテルのシースの遠位先端を患者の血管系に(例えば、大腿部動脈などの身体内腔経由で)挿入して、(もし使われているならば案内ワイヤーに沿って)自然の環状部の部位に前進させることができる。それら環状部の小葉体は弁補綴具100が埋め込まれる時にその場所にあってもよいし、あるいは移植を行う前に部分的に、あるいはすべてを取り除いておくこともできる。上記カテーテルの外側チューブは一定距離引き出して、近端スカート部132の近端部分を露出させることも可能である。この近端部分は大動脈環状部の心室側に噛み合うように配置することもできる。もし使われているならば、逆とげ(バーブ)134を弁補綴具100と弁保持スリーブの内部との主要な接触点として用い、それによって、弁補綴具100がカテーテルのシースに対して動いた場合に補綴具100上を摺動する弁保持スリーブの内面によって発生される可能性のある摩擦を減少させることができる。その補綴具100が環状部に適切に配置されていると判断されれば、外側チューブを完全に引き抜いて弁補綴具100を放出し、弁補綴具100を半径方向に拡張させて、その環状部と係合させることができる。部分的に放出させた後で、その補綴具が適切に配置されていないと判断されれば、流入部分110を外側チューブに再度はめて、配置し直すことができる。
【0026】
弁補綴具支持構造130は、例えばニチノールなどの拡張性素材でつくることができ、そうすれば、自然の環状部としっかり係合するのに十分な完全に拡張した位置に導かれる。身体内に配置されると、この傾向は弁補綴具支持構造130と患者の解剖学的構造の間に半径方向の力をつくり出し、弁補綴具100をその場所に固定させるのに役立つ。しかしながら、弁補綴具支持構造130によってかけられるこの圧力はそれ自体弁補綴具100を自然の環状部に固着させるのに十分である必要はない。自然の小葉の先端上を超えて弁補綴具100に対して軸方向の支えとなり、さらに、弁補綴具100が心臓サイクル中に自然の小葉を通じて心室に押し付けられるのを防いでいる軸方向支持アーム128も、弁補綴具100の移動を抑制することができる。支持アーム128はいろいろな構成と採ることができる。さらに、上に詳しく述べたように、流入部分110は自然の環状部の下方で心室と係合して、さらにしっかりと固着させる働きをする。
【0027】
支持アーム128」は、例えば、被術者の大動脈洞内に少なくとも部分的に配置させたり、適用例によっては、その大動脈洞床と係合及び/又は載せたり、そして、その被術者の左心室に対して軸方向の力をかけたりするように構成することができる。支持アーム128は接合点で相互に向き合うこともできる。支持アーム128がそれぞれ個別のものとして製造されている場合は、それらの支持アームを接合点の向き合っている箇所で相互に機械的に係合させることができる。いくつかの適用例では、支持アーム128が相互に直接触れ合わず、各接合点に形成される領域を介して向き合う。通常は、支持アームはそれらの接合点で突出部を形成し、隣接突出部間に窪みを形成するように構成される。2007年3月23日に出願された米国特許出願第11/728,253号と2007年3月23日に出願された米国特許出願第11/726,889号は種々の支持アーム構造を詳述しており、これらの特許の内容はここで触れたことにより、その内容全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0028】
いくつかの例示的な実施の形態で、弁補綴具100は3つの支柱122を備え、これらの支柱は弁補綴具100の中央長手方向軸線の周りに配置され、支柱122からは波状の部分が近位方向に延びている。いくつかの例示的な実施の形態では、弁補綴具100は3つの支柱122より多い支柱あるいは少ない支柱、例えば、2つの支柱122あるいは4つの支柱122を含み得る。約90%のヒトは正確に3つの大動脈洞を有している。いくつかの実施の形態で提供される3つの支柱122はこれら3つの大動脈洞に対応している。患者のうちの約10%の場合は大動脈洞が2つだけであり、これらの患者に埋め込みを行うために、弁補綴具100は2つの支柱122だけをもつ構成にすることができる。
【0029】
弁補綴具100は、支柱122に結合された弁150を含み得る。弁150は逆行血流を防ぐために心臓拡張期中に内側に(つまり、弁補綴具100の中央長手方向軸線の方向に)折りたたまれて縮小し、収縮期中には外側に開いて弁補綴具100を通じて血液が流れるようにするように構成することができる。弁150は人造繊維でも自然の繊維でも形成することができる。例えば、弁150はウシやブタの囲心嚢で形成することができるし、あるいはいずれかの適切な人工素材で形成することもできる。
【0030】
図2は拡張された状態での弁補綴具100を示す斜視図で、この状態では、半径方向内向きの圧力あるいは干渉は流入部分110に対してかかっていない。この拡張された状態で、流入部分110は直径ID2を有しており、流出部分120は流出直径OD2を有している。
図1は流入部分110で半径方向内向きの圧力あるいは干渉を受けている弁補綴具100の斜視図である。それぞれの患者の環状部の形状応じて、流入部分110は流入部分110での半径方向の干渉を受けて
図1に示されているように少なくとも部分的にやや圧縮された状態にあることもしばしばある。この状態の場合、流出部分120はOD2より大きい流出直径OD1を有し、支柱122を弛緩された状態におけるよりもさらに相互に離れた配置させる。言い換えれば、流出部分120での弁補綴具100の流出直径と支柱122の位置は流入部分110での弁補綴具100にかかる半径方向の干渉に影響され、このことが弁補綴具100の性能特性を低下させてしまい得る。
【0031】
流出部分120の半径方向の動きを流入部分110での半径方向の干渉から切り離すことは患者固有の解剖学的構造の形状とは関係なくより予測可能で安定した弁の形状を提供してくれるので、大きな利点を提供してくれる可能性がある。
【0032】
図3は本発明の1つの実施の形態による弁補綴具300の斜視図である。
図4は弁補綴具300の平面図である。弁補綴具300の基本構造は全体としては弁補綴具100と同様である。弁補綴具300はその近位端部に流入部分310を有しており、その遠位端部には流出部分320を有している。弁補綴具支持構造330は流出部分320に近接して支柱322と、流入部分310から支柱322の方向に延びる遠位スカート部332を備えている。弁補綴具300も弁補綴具支持構造330を備えている。
【0033】
弁補綴具300は、さらに制動部材324を備えている。制動部材324は流出部分320の周辺に配置された実質的に剛性の円形のフレームを備えている。この実質的に剛性のほぼ円形のフレームは、好ましくは実質的に、患者の身体内腔内にあるような外力を受けた場合でもその形状を保持する。この実質的に剛性の円形のフレームは、例えば、従来ステント装置をつくるために用いられる外科用スチール材などのタイプの素材でつくることができる。制動部材324は、支柱322の遠位端部に取り付けられることで、弁補綴具支持構造330に搭載することができる。このような構成において、制動部材324は流出部分320の最大直径を制限することで支柱322の位置ずれを防ぎ、それによって、支柱322が制動部材324によって課される限界を超えて動くのを防いでくれる。制動部材324は、例えばニチノールなど、種々の素材でつくることができる。
【0034】
しかしながら、挿入過程での弁補綴具300の収縮に合わせることができるように、この制動部材324の剛性の円形のフレームは多少の可撓性を有している。
【0035】
それに代えて又はさらに、この制動部材324の剛性の円形のフレームは、支柱322の近位端部に取り付けられるか、支柱322の近位端部と遠位端部の間にある中間位置に取り付けることによって、弁補綴具支持構造330に搭載することができる。
【0036】
流出部分320の直径が制動部材324によって制限されているので、流出部分320の直径は実質的には流入部分310の直径の変化の影響を受けず、それによって、流出部分320の半径方向の動きが流入部分310での半径方向の干渉とは切り離される。従って、弁補綴具300は患者固有の解剖学的構造とは無関係に、予測可能で安定した弁形状を保持する。
【0037】
図5は、本発明の1つの実施の形態による弁補綴具500の斜視図である。
図6は、弁補綴具500の側面図である。上に述べた実施の形態と同じあるいは同様に作動する
図5と6に示す実施の形態の要素に関する説明は、省略したり簡略化してもよい。
【0038】
弁補綴具500は、近位端部に流入部分510を、遠位端部に流出部分520を備えている。弁補綴具500は、弁補綴具支持構造530と制動部材524も備えている。弁補綴具支持構造530は流出部分520に近接して支柱522を含むと同時に流入部分510から支柱522の方向に延びる近位スカート部532も備えている。
【0039】
制動部材524は流出部分520に近接して配置された剛性のアーチ部を備えている。剛性のアーチ部は、それぞれ2つの隣接した支柱522の近位端部に取り付けられることによって、弁補綴具支持構造530に搭載される。このようにして、制動部材524の剛性のアーチ部は共に流出部分520の周囲に延びている。こうした構成で、制動部材524は流出部分520の直径を制限することで支柱522の位置ずれを防ぎ、それによって、支柱522が制動部材524によって課される限界を超えて動くのを防いでいる。
【0040】
いくつかの実施の形態で、制動部材524の剛性のアーチ部は、全体で円形形状を形成していたり、あるいは、例えば、流出部分520の周辺でつながっている一連の連結された「こぶ」状の形状を形成することもできる。
【0041】
いくつかの実施の形態で、制動部材524の剛性のアーチ部分は挿入プロセス中に弁補綴具500と共に収縮できるのに十分な可撓性を有している。
【0042】
いくつかの実施の形態で、制動部材524の剛性のアーチ部分は支柱522の遠位端部に取り付けられるか、あるいは近位端部と遠位端部の間の支柱522の中間地点に取り付けられることによって、弁補綴具支持構造530に搭載される。
【0043】
いくつかの実施の形態で、制動部材524の剛性のアーチ部分は弁補綴具500を通じて延びている長手方向軸線に対して90度の角度で弁補綴具支持構造530から延びている構成も可能である。あるいは、制動部材524の剛性のアーチ部分は90度以外の角度、例えば、約30度、約45度、あるいは120度などの角度で弁補綴具支持構造530から延びる構成も可能である。さらに、その剛性のアーチ部分が他のアーチ部分と同じ角度で弁補綴具支持構造530から延びていなくてはならないという必要性はない。
【0044】
いくつかの実施の形態で、複数の剛性のアーチ部分が隣接する支柱522間に延びている構成も可能である。この中間的な接続は、隣接する支柱522間の間に延びている剛性のアーチ部分が連続して接続されているような構成で、隣接する剛性のアーチ部分間に形成することもできる。
【0045】
流出部分520の直径は制動部材524によって制限されているので、流入部分510での半径方向の干渉(例えば、直径の変化)によってそれほど大きな影響は受けず、そのことによって、流出部分520の半径方向の動きを流入部分510での半径方向の干渉から切り離すことができる。従って、弁補綴具500は患者固有の解剖学的構造とは無関係に予測可能で安定した弁形状を維持する。
【0046】
図7は本発明の1つの実施の形態による弁補綴具700の斜視図である。
図8はポンプ速度パターン700の側面図である。上に述べた実施の形態と同じあるいは同様に作動する
図7と
図8に示す実施の形態の要素に関する説明は、省略したり簡略化し得る。
【0047】
弁補綴具700はその近位端部に流入部分710を、そしてその遠位端部に流出部分720を備えている。弁補綴具700は弁補綴具支持構造730と制動部材724も備えている。
【0048】
弁補綴具支持構造730は、流出部分720に近接して支柱722を、そして支柱722から流入部分710の方向に延びる近位スカート部732を備えている。
【0049】
制動部材724は、流出部分720に近接して配置された線状の支持要素を備えている。この線状の支持要素のぞれぞれは、2つの隣接する支柱722の遠位端部に取り付けられることによって、弁補綴具支持構造730に搭載される。このようにして、制動部材724の線状の支持要素が全体として支柱722を結合させている。こうした構成で、制動部材724は流出部分720の直径を制限することで、支柱722の位置ずれを防ぎ、そのことによって、支柱722が制動部材724によって課せされる限度を超えて動くのを防いでいる。
【0050】
いくつかの実施の形態で、制動部材724の線状の支持要素は剛性ではなく、張力としてのみ機能する。例えば、こうした線状の支持要素は紐や針金や縫合糸などでつくることもできる。
【0051】
いくつかの実施の形態で、制動部材724のこの線状の支持要素は剛性である。
【0052】
いくつかの実施の形態で、制動部材724のこの線状の支持要素は、支柱722の遠位端部に取り付けられるか、あるいは、近位端部と遠位端部の間で、支柱722の中間地点に取り付けられることによって、弁補綴具支持構造730に搭載される。
【0053】
いくつかの実施の形態で
は、複数の線状支持用副要素が、隣接する線状支持用副要素間の中間接続部を備え隣接する支柱722間で延び、隣接する支柱の間で延びる線状支持用副要素は直列に接続されている。
【0054】
制動部材724によって流出部分720の直径は制限されているので、流入部分710で半径方向の干渉(例えば、直径の変化)には好ましくはほとんど影響されず、それによって、流出部分720の半径方向への動きを流入部分710での半径方向の干渉から切り離すことができる。従って、弁補綴具700は患者固有の解剖学的構造とは無関係に予測可能で安定した弁形状を維持する。
【0055】
図9は、本発明の1つの実施の形態による弁補綴具900の斜視図である。
図10は弁補綴具900の側面図である。上に述べた実施の形態と同じあるいは同様に作動する
図9と
図10に示す実施の形態の要素に関する説明は、省略したり簡略化してもよい。
【0056】
弁補綴具900はその近位端部に流入部分910を、そしてその遠位端部に流出部分920を備えている。弁補綴具900は弁補綴具支持構造930と制動部材926も備えている。
【0057】
弁補綴具支持構造930は、流出部分920に近接して支柱922と、流入部分910から支柱922の方向に延びる近位スカート部932を備えている。
【0058】
制動部材926は、流入部分910に近接して配置されたストラット支持要素を備えている。ストラット支持要素のそれぞれは、流入部分910の近位端部に取り付けられ、近位スカート部932の隣接する端点の間に延びている。このようにして、制動部材926のストラット支持要素は全体として流入部分910の端点を結合している。こうした構成で、制動部材926は流入部分910の直径を制限することで近位スカート部932の位置ずれを防ぎ、そのことで、近位スカート部932が制動部材926によって課される限界を超えて動くのを防いでいる。
【0059】
いくつかの実施の形態で、複数のストラット支持要素が近位スカート部932の隣接する端点間に延び、近位スカート部932の隣接する端点間の中間接続が、近位スカート部932の隣接する端点間に延びているストラット支持要素が連続して接続されている構成も可能である。
【0060】
いくつかの実施の形態で、制動部材926のストラット支持部材が組み込まれて近位スカート部932の一部を形成し、制動部材926と近位スカート部932が共に一体形成されている。
【0061】
いくつかの実施の形態で、制動部材926のストラット支持部材は剛性の。いくつかの実施の形態で、制動部材926のストラット支持部は剛性ではない。
【0062】
流入部分910の直径は、制動部材926によって制限されているので、弁機能及び心臓収縮によるその動きは適切な機能を発揮するのに必要な限度内の閉じ込めることが可能であり、それによって、不必要な半径方向への動きが一掃されるか、あるいは低減される。この不必要な半径方向への動きの低減は弁補綴具900が受ける疲労の低下につながり、それによって、その有効寿命が延び、後日の弁補綴具900の取り換えの必要性がなくなり、あるいは、適切な機能性を維持するための弁補綴具900を取り換えなければならない頻度の低下につながる。さらに、制動部材926が流入部分910の直径を制限するので、弁補綴具900は患者固有の解剖学的構造の形状とは無関係に、より予測可能で安定した弁動作及び弁形状を維持できる。さらに、流入部分910の直径を安定化させると、流出部分920の変形(例えば、直径の変化)が少なくなる。
【0063】
図11は本発明の1つの実施の形態による弁補綴具1100の斜視図である。上に述べた実施の形態と同じあるいは同様に作動する
図11に示す実施の形態の要素に関する説明は、省略、簡略化する。
【0064】
弁補綴具1100は、その近位端部に流入部分1110と、その遠位端部に流出部分1120とを備えている。弁補綴具1100は弁補綴具支持構造1130とシール部材1142も備えている。
【0065】
弁補綴具支持構造1130は、流出部分1120に近接して支柱1122と支柱1122から流入部分1110の方向に延びる近位スカート部1132を備えている。
【0066】
シール部材1142は、流入部分1110に近接して配置することができ、支柱1122と半径方向で対応するように位置決めすることができる。こうした位置決めは自然の接合面と対応しており、シール部材1142を患者の小葉間三角形と整列させる。シール部材1142はその小葉間三角形に適合するような形状とすることができ、あるいは、その小葉間三角形上に接触して置かれた場合にその小葉間三角形の形状に合致する素材で形成することができる。こうした方法で、シール部材1142は弁補綴具1100がその患者の環状部の解剖学的構造に高いレベルで合致できるように援助し、そのことで、弁周辺での漏出の可能性を防いだり、その可能性や重篤性を軽減させる。2011年4月21日に出願された米国特許出願第13/091,765号は補綴弁と共に用いるシール部材について論じており、この特許明細書はここに参照したことで、その全文が本明細書に組み込まれる。
【0067】
図12は、本発明の1つの実施の形態による弁補綴具1200の斜視図である。上に述べた実施の形態と同じあるいは同様に作動する
図12に示す実施の形態の要素に関する説明は、省略、簡略化する。
【0068】
弁補綴具1200は、その近位端部に流入部分1210を、そしてその遠位端部に流出部分1220を備えている。弁補綴具1200は弁補綴具支持構造1230とシール部材1242も備えている。
【0069】
弁補綴具支持構造1230は、流出部分1220に近接して支柱1222を含むと同時に支柱1222から流入部分1210の方向に延びる近位スカート部1232を備えている。
【0070】
シール部材1242は、流入部分1210に近接して配置することができ、近位スカート部1232の周囲に延在する構成も可能である。シール部材1242は支柱1222と半径方向で対応するように位置決めされたシール用先端1244を含み得る。こうした配置は自然の接合面と対応するものであり、シール用先端1244を患者の小葉間三角形と整列させる。シール用先端1244は小葉間三角形に適合するような形状とすることができ、あるいは、その小葉間三角形に接触する状態で配置された場合にその小葉間三角形の形状と合致する素材で形成することも可能である。このような方法で、シール用先端1244を備えているシール部材1242は、弁補綴具1200が患者の環状部の解剖学的構造に高いレベルで合致できるように援助し、そのことで、血管周辺での漏出を防いだり、その可能性を低減させる。
【0071】
いくつかの実施の形態で、シール用先端1244を備えているシール部材1242は、単一の素材で形成される。いくつかの実施の形態では、シール用先端1244はシール部材1242の他の部分とは異なった素材で形成される。例えば、シール用先端1244は患者の小葉間三角形に合致することができる柔らかな素材で形成することができるが、シール部材1242の他の部分はより剛性の素材で形成することもできる。
【0072】
いくつかの実施の形態で、シール部材1242は動き制限部材として機能し、流入部分1210の直径を制限して、それにより、近位スカート部1232の端点がシール部材1242によって課される限度を超えて動くのを防ぐ。このように、シール部材1242は制動部材926と類似している。
【0073】
本発明のさまざまな実施の形態を上に述べたが、これらは例示のためのみに述べられたのであって、発明の限定は意図していない。上に述べた実施の形態の要素は必ずしも相互に排他的なものではなく、当業者なら理解できる種々の必要性を満たすために入れ換えることも可能である。
【0074】
従って、形状及び詳細部分の種々の変更を、本発明の精神と範囲を逸脱せずにここに述べられている実施の形態に対して行うことができることは、当業者には自明であろう。ここに用いられている言葉づかいや用語は説明のためのものであって、発明の限定のためのものではない。従って、添付請求項の範囲あるいはそれと同等の範囲に入るものであれば、本発明はこの発明の修正及び変更をその範囲に含むことを意図している。