特許第5874733号(P5874733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許58747332ストロークエンジンのポーティング構成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874733
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】2ストロークエンジンのポーティング構成
(51)【国際特許分類】
   F02B 25/16 20060101AFI20160218BHJP
   F02B 75/32 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   F02B25/16 F
   F02B75/32 B
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-538005(P2013-538005)
(86)(22)【出願日】2011年11月11日
(65)【公表番号】特表2014-500428(P2014-500428A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】AU2011001456
(87)【国際公開番号】WO2012061894
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年4月10日
(31)【優先権主張番号】2010241402
(32)【優先日】2010年11月12日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】313015672
【氏名又は名称】シーアイティーエス エンジニアリング ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ルーイェン,バジル
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第00948336(US,A)
【文献】 特開昭54−55208(JP,A)
【文献】 特開2003−74352(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/004641(WO,A1)
【文献】 特開2002−276377(JP,A)
【文献】 特開昭47−20511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 25/16
F02B 75/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2ストローク内燃機関のシリンダ用ガス移送ポートシステムにあって;前記シリンダが、前記シリンダを上方セクションおよび下方セクションに分割する固定分離プレートを備え;前記シリンダ内のピストンが、前記分離プレートおよびシリンダヘッドの間を往復運動し;前記分離プレートから下降する環状スカートが、前記スカートおよび前記シリンダの内面の間に少なくとも環状ウェルの部分を形成し;前記シリンダが前記2ストローク内燃機関のクランクケースから分離されるように、前記ウェルが底部で密封され;前記ガス移送ポートシステムが、前記環状ウェルの下部を前記シリンダの壁の中のガス移送ポート出口開口と接続する少なくとも1つの長いガス移送ポートを含み;前記ガス移送ポートシステムが、前記固定分離プレートの上面近傍の入口開口および前記出口開口を接続する短いガス移送ポートをさらに含み;前記出口開口が、前記長いガス移送ポートおよび前記短いガス移送ポートの両方に共通であるガス移送ポートシステム。
【請求項2】
前記長いガス移送ポートおよび前記短いガス移送ポートが、多対のガス移送ポートのうち少なくとも1対を形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記固定分離プレートが前記環状スカートの上方閉鎖を形成し;前記環状スカートの外面の直径が前記シリンダの内径より小さく、その結果、前記環状スカートの外周の少なくとも一部に対して、前記環状スカートの前記外面および前記シリンダの前記内径の間に前記環状ウェルが形成される、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記固定分離プレートおよび前記環状スカートが、前記シリンダを前記エンジンのクランクケースから分離し;前記環状スカートの下方端部が、前記シリンダの基部で環状レッジに対して密封する、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記ピストンがBDCまで下降するときに、前記ウェルが排気制御スカートを収容する程度に十分な深さであり;前記排気制御スカートが前記ピストンの下面リムから垂れ下がる、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記シリンダの排気ポートが、前記シリンダの入口ポートと直径方向に対向して配置される、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記シリンダが4対の前記多対のガス移送ポートを備え;前記4対が、前記排気ポートおよび前記入口ポートの間に直径方向に対向する2対の多対の形で配置される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
単一ガス移送ポートが、前記入口ポートの出口開口と軸方向に整列して配置され;前記ピストンがBDCにあるときに、前記単一ガス移送ポートが、前記分離プレートの前記上面のレベルの下から、前記ピストンの前記上面の上まで伸び;前記入口ポートの出口開口が、前記単一ガス移送ポートに通じている、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記ピストンが入口ポート制御スカートを備え;前記ピストンがBDCまで下降するときに、前記入口ポート制御スカートが前記ピストンの下面リムから垂れ下がって、前記ピストンの下面および前記固定分離プレートの前記上面の間から、前記入口ポートの出口開口の中にガスが通過するのを十分に遮り;前記ピストンがBDCにあるときに、前記スカートが前記分離プレートの前記上面の前記レベルの下に伸びる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
共通の前記出口開口から流出するガスフローが、前記入口ポートに向かっておよび前記入口ポートの上に流れの方向がかたよるように、前記多対の短いおよび長いガス移送ポートの各々の通路が、共通の前記出口開口近傍で湾曲している、請求項〜9のうちいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記環状ウェルの部分が、前記ウェルの容積を低減するように遮られ;容積の前記削減により、前記シリンダの利用可能な圧縮比が増大する、請求項2〜10のうちいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記ピストンの下面が、前記シリンダの入口ポート側および排気ポート側の間にある、直径に沿った中心線から上向きに広がる斜めの面で形作られ;前記ピストンがBDCに接近したときに、前記斜めの面が、前記ピストンの前記下面および前記分離プレートの前記上面の間から、多対の短いおよび長い移送ポートのうち前記直径方向に対向する2対の前記短いガス移送ポートの前記入口開口の中にガスフローを向ける、請求項6〜11のうちいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
2ストロークエンジンのシリンダのピストンの下面からガスを移送する方法であって;前記方法が、前記シリンダの壁の中の共通の出口開口に接続される少なくとも1対の短いおよび長いガス移送ポートを提供するステップを含み;各前記短いガス移送ポートが、前記シリンダを上方および下方セクションに分割する固定分離プレートの上面近傍の入口開口から伸び;各前記長いガス移送ポートが、前記下方セクション内のウェルの底部部分近傍の入口開口から伸び;前記ピストンがBDCにあるときに、前記共通の出口開口が前記ピストンの上面の上に配置され;前記ウェルが、前記シリンダの内面および前記固定分離プレートから垂れ下がる環状スカートの間に形成される方法。
【請求項14】
前記ピストンが前記シリンダ内でBDCにあるときに、前記短いガス移送ポートが、前記ピストンの下面の下のレベルから、前記ピストンの前記上面の上の前記共通の出口開口まで伸びる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ウェルが、前記固定分離プレートから垂れ下がる前記環状スカートを少なくとも部分的に取り囲み;前記分離プレートおよび前記環状スカートが、前記シリンダの上方セクションを前記エンジンのクランクケースから分離する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ピストンがTDCに向かって上昇するときに、空気または空気/燃料混合気を備えるガスのチャージが、入口ポートを通り、前記環状ウェル、ならびに前記ピストンの前記下面および前記固定分離プレートの上面の間により規定される容積の中に引き込まれる、請求項13〜15のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ピストンがTDCからBDCに向かって下降するときに、ガスの前記チャージが前記容積の中に圧縮され;前記ピストンの前記上面が前記1対の前記ガス移送ポートの前記共通の出口開口の上方端部の下に下降するまで、前記1対のガス移送ポート内の圧力が最大値まで上昇し;次いで、前記チャージが前記共通の出口開口から流出し始める、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ピストンの前記下面および前記分離プレートの前記上面の間の分離が最小値に接近したときに、前記チャージの移送が、圧力の急上昇により増強され;圧力の前記急上昇により、前記短い移送ポートを通して前記ガスの移送が加速させられる、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記ピストンがBDCに接近したときに、単一ガス移送ポートが、前記ピストンの上面全体に前記チャージの流れを向け;前記単一ガス移送ポートが、前記シリンダの入口ポートの出口開口と通じており;前記単一ガス移送ポートが、前記分離プレートの下のレベルから、BDCにある前記ピストンの前記上面の上のレベルまで伸びる、請求項13〜18のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ピストンが、前記ピストンの端部から垂れ下がる短い入口ポートスカートを備え;前記ピストンがBDCにあるときに、前記短い入口スカートが、前記入口ポートの前記出口開口と実質的に同一の広がりを持つ、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2ストロークエンジンに関し、より詳細には、このようなエンジンのシリンダ内部のガスの移送に関する。
【背景技術】
【0002】
同等の排気量の4ストロークエンジンに対して比較的高い動力対重量比、およびより少ない可動部品を含む典型的な2ストローク内燃機関の利点は、以下の欠点により相殺される:
【0003】
2ストロークエンジンは、典型的には、強制潤滑システムを使用することができず、代わりに、シリンダ内部のピストンおよびクランクシャフト上のローラ軸受の潤滑を可能にするために、空気/燃料混合気にオイルが追加される。
【0004】
したがって、2ストロークエンジンはオイルを燃焼し、不要な汚染を引き起こす。
【0005】
強制潤滑システムの欠如により、より安価でより単純なスリッパ軸受と異なり、オイル/燃料混合気内で動作することが可能な、クランクシャフトおよびコネクティングロッド上のローラ軸受が必要である。これにより、ローラ軸受取付けを可能にするために、重く高価なクランク軸組立体が必要である。
【0006】
先行出願のオーストラリア特許出願第2009238281号明細書では、この出願は、各シリンダが、固定分離プレートにより上方および下方シリンダセクションに分割され、各ピストンが分離プレートおよびシリンダヘッドの間の上方セクション内で往復運動する2連シリンダ2ストロークエンジン構成を開示した。
【0007】
この構成には、いくつかではあるが例を挙げると、一次圧縮比の増加、ピストンの圧力注油、およびより単純でより安価なクランクシャフト構造を可能にするという非常に大きな利点があるが、分離プレートおよびピストンの下面の間の領域の中に最初に誘導されたガスをピストン上方の燃焼室の中に移送することが、最適の方法ではないことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】オーストラリア特許出願第2009238281号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の欠点のいくつかに対処する、または上述の欠点を少なくとも改善することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】

1.用語「備える(comprising)」(およびその文法的変形)は、本明細書では、「有する(having)」または「含む(including)」という包括的な意味で使用され、「だけから成る(consisting only of)」という排他的な意味で使用されない。
2.背景技術における先行技術の上記の考察は、そこで説明された任意の情報が引用可能な先行技術、または任意の国の当業者の、共通する一般的知識の一部であることを認めるものではない。
【0011】
したがって、本発明の主要な広範な形態においては、2ストローク内燃機関のためのシリンダ用ガス移送ポートシステムが提供され;前記シリンダが、前記シリンダを上方セクションおよび下方セクションに分割する固定分離プレートを備え;前記シリンダ内のピストンが、前記分離プレートおよびシリンダヘッドの間を往復運動し;前記分離プレートから下降する環状スカートが、前記スカートおよび前記シリンダの内面の間に少なくとも環状ウェルの部分を形成し;前記シリンダが前記エンジンのクランクケースから分離されるように、前記ウェルが底部で密封され;前記ガス移送ポートシステムが、前記環状ウェルの下部を前記シリンダの壁の中のガス移送ポート出口開口と接続する少なくとも1つの長いガス移送ポートを含む。
【0012】
好ましくは、前記長いガス移送ポートが、少なくとも1対のガス移送ポートの1つであり;各前記1対のガス移送ポートが、短いガス移送ポートおよび前記長いガス移送ポートを含む。
【0013】
好ましくは、前記固定分離プレートが前記環状スカートの上方閉鎖を形成し;前記環状スカートの外面の直径が前記シリンダの内径より小さく、その結果、前記環状スカートの外周の少なくとも一部に対して、前記外面および前記シリンダの前記内径の間に環状ウェルが形成される。
【0014】
好ましくは、前記固定分離プレートおよび前記環状スカートが、前記シリンダの前記上方セクションを前記エンジンのクランクケースから分離し;前記環状スカートの下方端部が、前記シリンダの基部で環状レッジに対して密封する。
【0015】
好ましくは、前記ピストンがBDCまで下降するときに、前記ウェルが排気制御スカートを収容する程度に十分な深さであり;前記排気制御スカートが前記ピストンの下面リムから垂れ下がる。
【0016】
好ましくは、前記シリンダの排気ポートが、前記シリンダの入口ポートと直径方向に対向して配置される。
【0017】
好ましくは、前記シリンダが4対の前記ガス移送ポートを備え;前記4対が、前記排気ポートおよび前記入口ポートの間に直径方向に対向する2対の多対の形で配置される。
【0018】
各前記短いガス移送ポートが、前記分離プレートの上面近傍に入口開口を有し;前記ピストンがBDCにあるときに、前記短いガス移送ポートが前記ピストンの上面の上に出口開口を有する。
【0019】
好ましくは、各前記長いガス移送ポートが、前記環状ウェルの底部近傍に入口を有し;前記長いガス移送ポートが、前記1対のガス移送ポートの対応する短いガス移送ポートの前記出口開口と共通の出口開口を有する。
【0020】
好ましくは、単一ガス移送ポートが、前記入口ポートの出口開口と軸方向に整列して配置され;前記ピストンがBDCにあるときに、前記単一ガス移送ポートが、前記分離プレートの前記上面の下から、前記ピストンの前記上面の上まで伸び;前記入口ポートの出口開口が、前記単一ガス移送ポートに通じている。
【0021】
好ましくは、前記ピストンが入口ポート制御スカートを備え;前記ピストンがBDCまで下降するときに、前記入口ポート制御スカートが前記ピストンの前記下方端部から垂れ下がって、前記ピストンの下面および前記分離プレートの前記上面の間から前記入口ポートの前記出口開口の中にガスが通過するのを十分に遮り;前記ピストンがBDCにあるときに、前記スカートが前記分離プレートの前記上面の下に伸びる。
【0022】
好ましくは、前記共通の出口開口から流出するガスフローが、前記入口ポートに向けておよび前記入口ポートの上に流れの方向がかたよるように、前記短いおよび長いガス移送ポートの通路が、前記共通の出口開口近傍で湾曲している。
【0023】
好ましくは、前記環状ウェルの部分が、前記ウェルの容積を低減するように遮られ;容積の前記低減により、前記シリンダの利用可能な圧縮比が増大する。
【0024】
好ましくは、前記ピストンの下面が、前記シリンダの入口ポート側および排気ポート側の間にある、直径に沿った中心線から上向きに広がる斜めの面で形作られ;前記ピストンがBDCに接近したときに、前記斜めの面が、前記ピストンの前記下面および前記分離プレートの前記上面の間から、前記短いガス移送ポートの前記入口開口の中にガスフローを向ける。
【0025】
本発明の他の広範な形態では、2ストロークエンジンのシリンダのピストンの下面からガスを移送する方法が提供され;前記方法が、前記ピストンがBDCにあるときに、環状ウェルの底部部分近傍の入口開口から、前記ピストンの上面の上に配置された出口開口まで伸びる少なくとも1つの長いガス移送ポートを提供するステップを含み;前記環状ウェルが、前記シリンダの内面および固定分離プレートから垂れ下がる環状スカートの間に形成される。
【0026】
好ましくは、前記長いガス移送ポートが、1対のガス移送ポートの一方であり;前記ピストンが前記シリンダ内でBDCにあるときに、前記1対の移送ポートのもう一方が、前記ピストンの下面の下のレベルから前記ピストンの前記上面の上の前記出口開口まで伸びる短いガス移送ポートであり;前記短いガス移送ポートが、前記長いガス移送ポートと共通の出口開口を有する。
【0027】
好ましくは、前記環状ウェルが、前記固定分離プレートから垂れ下がる前記環状スカートを少なくとも部分的に取り囲み;前記分離プレートおよび前記環状スカートが、前記シリンダの上方セクションを前記エンジンのクランクケースから分離する。
【0028】
好ましくは、前記ピストンがTDCに向かって上昇するときに、空気または空気/燃料混合気を備えるガスのチャージが、入口ポートを通り、前記環状ウェル、および前記ピストンの前記下面および前記固定分離プレートの上面の間により規定される容積の中に引き込まれる。
【0029】
好ましくは、前記ピストンがTDCからBDCに向かって下降するときに、ガスの前記チャージが前記容積の中に圧縮され;前記ピストンの前記上面が前記1対の前記ガス移送ポートの前記出口開口の上方端部の下に下降するまで、前記1対のガス移送ポート内の圧力が最大値まで上昇し;次いで、前記チャージが、前記出口開口から流出し始める。
【0030】
好ましくは、前記ピストンの前記下面および前記分離プレートの前記上面の間の分離が最小値に接近したときに、前記チャージの移送が、圧力の急上昇により増強され;圧力の前記急上昇により、前記短い移送ポートを通して前記ガスの移送が加速させられる。
【0031】
好ましくは、前記ピストンがBDCに接近したときに、単一ガス移送ポートが、前記ピストンの上面全体に前記チャージの流れを向け;前記単一ガス移送ポートが、前記シリンダの入口ポートの出口開口と通じており;前記単一ガス移送ポートが、前記分離プレートの下のレベルから、前記ピストンの前記上面の上のレベルまで伸びる。
【0032】
好ましくは、前記ピストンが、前記ピストンの端部から垂れ下がる短い入口ポートスカートを備え;前記ピストンがBDCにあるときに、前記短い入口スカートが、前記入口ポートの前記出口開口と実質的に同一の広がりを持つ。
【0033】
次に、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明のポーティング構成を利用する2ストローク内燃機関を表す概略図である。
図2図1のポーティング構成を組み入れる2ストロークエンジンの1対のシリンダおよび関連する構成要素の断面図である。
図3図2の1対のシリンダの更なる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1および図2を参照すると、好ましい構成では、本発明のポーティングシステムが、2ストロークエンジン14の1対のシリンダ10および12に適用される。本発明を利用するエンジンが、2シリンダエンジン、または1対のシリンダの他の組合せ、したがって、本発明のポーティング構成はまた、単一シリンダエンジンに適用されてもよいが。たとえば4、6または8シリンダエンジンであってもよい。しかしながら、以下の説明は、第1のシリンダが上死点(TDC)にあるときに、他方が下死点(BDC)にあるように、ピストンが180°の分離で移動する「V字」型対シリンダの、シリンダの一方(「第1のシリンダ」およびそれに関連する特徴)に焦点を当てる。
【0036】
また、好ましくは、図1および図2に示されるような1対のシリンダの場合、エンジン14は、本出願人の先行出願であるオーストラリア特許出願第2009238281号明細書ですでに説明された入口旋回弁16構成を備える。明らかなように、本発明のポーティング構成は、旋回弁発明の作動、完全性および効率を大きく増加させる。
【0037】
シリンダの各々が固定分離プレート18によりそれぞれ上方および下方シリンダセクション22および24に分割され、ピストン20が分離プレート18およびシリンダヘッド26(図2では取り除かれている)の間の上方セクション22内で往復運動するエンジンに本発明のポーティングシステムが適用可能である。したがって、ピストン20が、ピストン20の上方シリンダセクション22を、ピストンの上の燃焼室部分19、ならびにピストン20の下面および分離プレート18の上面の間の誘導または圧力室部分17に分割する。
【0038】
分離プレート18内の開口を通過する支柱28が、下方シリンダセクション24内でピストンと共に往復運動するガイド要素30とピストン20を相互接続する。通常のやり方では、ガイド要素30がピストンピン32によりコネクティングロッド34に旋回可能に接続され、今度は、コネクティングロッド34がクランクシャフトジャーナル36に回転可能に接続される。
【0039】
シリンダのこの下方セクションは、上方シリンダセクションの内径より直径が小さく、事実上、メインシリンダ本体の中への挿入物であり、分離プレート18、プレート18から垂れ下がる環状スカート21を備える逆「ビーカー」または「シンブル」形状を形成する。環状スカート21の外径は、たとえば、メインシリンダ本体の内径および環状スカート21の間に環状ウェル23を形成するようになっている。このウェル23は、2ストロークエンジンで一般的なように、ピストン20の下面リムから垂れ下がる排気ポート制御スカート25を収容する程度に十分な深さである。
【0040】
上方シリンダセクションおよび環状ウェルがエンジンのクランクケースの空隙29から分離されるように、環状スカート21の下方リムがシリンダ10内でレッジ27に対して密封される。
【0041】
各シリンダ10、12が、少なくとも1つの長いガス移送ポート44を備える。好ましくは、少なくとも1つの長いガス移送ポート44が、1対のガス移送ポート40の一方である。1対のガス移送ポートの他方が、短いガス移送ポート42である。
【0042】
1対の移送ポートの長いガス移送ポート44が、環状ウェル23の底部近傍の開口46から、短いガス移送ポート42の共有される共通の出口開口45まで伸びる。図1の概略図から理解することができるように、ピストンがBDCにあるときに、短い移送ポート42が、固定分離プレート18の上面およびピストン20の下面の間の上方シリンダセクションの壁の中に配置される入口開口43から、ピストンの上面の上のシリンダ壁内の出口開口45まで伸びる。
【0043】
好ましくは、本発明の移送ポートシステムの用途のためのエンジンは、排気ポート48および入口ポート50がシリンダの直径方向に対向した側に配置されるという点で、クロス・フロー・エンジンである。明確にするために、単一の1対のガス移送ポートだけが図面に示されているが、本発明の移送ポートシステムは、図3から理解することができるように、多対の短いおよび長い移送ポートを、好ましくは、多対のうち2対が排気ポート48および入口ポート50の間に直径方向に対向して配置される4対の短いおよび長い移送ポートを含んでもよい。好ましくは、ピストン20がBDCにあるときに、4対の移送ポートの排気ポート48、入口ポート50および出口開口45の下方端部が、シリンダ壁内でピストン20の上面と同一レベルに配置される。これらのポートの上方端部の位置は、下降するピストンによるポートの開放に極めて重要であり、第一に、排気ガスが排気ポートを通って出始めることができるようになり、次いで、移送ポートを開放する。入口ポート50の出口開口は、排気ポート48の下方リップのレベルのやや下にある。
【0044】
図3で縦方向を向くシリンダ12から最もよく理解されるように、短いおよび長いガス移送ポートをそれらの個々の入口開口からそれらの共通の出口開口45へ連結する通路52が、入口ポート50に向かって開口から流出するガスの流れを向けるように、出口開口に隣接して湾曲し、排気ガスを燃焼室22から掃気する手助けをする。
【0045】
本発明のシステムが、典型的で共通の他の単一移送ポート54を提供することが、図2および図3から理解することができる。この単一ガス移送ポート54が、ピストンがBDCにあるときに、固定分離プレート18の上面のレベルの下のレベルから、ピストン20の上面の上のやや上の地点まで伸びる。
【0046】
このタイプのガス移送ポートは、一般に現代の2ストロークエンジンで使用され、ブースタ移送ポートとして知られている。このタイプのガス移送ポートは、入口ポート50の縦方向の突出部を形成し、ピストンがBDCの近くにあるときに、このポートを燃焼室22と接続し、ピストン20の下および上にそれぞれ形成される誘導/圧力室部分17および燃焼室部分19を接続する移送ポートのネットワーク間の連通をさらに可能にする。
【0047】
公知の2ストロークエンジンでのブースタ移送ポート54の機能は、誘導/圧力室部分からシリンダの燃焼室部分へのチャージ移送を増大させることだけでなく、ピストンの最上部から残留しているいかなる燃焼済みチャージでも取り除くことである。この移送ポートから流出するガスが排気ポートに向けられるので(シリンダの入口ポート側にチャージのガスフローを向ける、以下で説明されるような1対の移送ポート通路と異なる)、どんな過剰なチャージでも排気ポートを通して失われる(すなわち、短絡として知られる状態)ために、ブースタポートのサイズが比較的小さく保たれる。
【0048】
本発明では、この単一ガス移送ポート54が、入口ポートの出口に、追加の機能を有する。下降するピストン20が移送ポート出口開口45の上方端部を通り抜けるとすぐに、ピストン20が排気ポート48を開放した後に、排気スラッグを排気パイプの下流へ多量に流出することにより、燃焼室部分19内の残留圧力を周囲の大気圧以下まで低下させ、1対の移送ポート40を通して、誘導/圧力室部分17からピストン20の下にフレッシュチャージを引き込む。次いで、事実上、入口ポートの拡張である単一移送ポート54が開放して、シリンダの入口側に向けられる移送ポートの軌道のために取り残されることがある任意の残留している燃焼済みガスをピストンの上面から取り除く。単一ガス移送ポート54が、排気ポート48から入口ポート50への最も直線的なルートを提供し、その結果、低下した圧力、すなわち吸入力が、この単一移送ポート54を介して依然として閉鎖した旋回弁16により即時に伝達され、旋回弁16を開放し始める。
【0049】
この排気力がなければ、ピストンがBDCから上昇するときに、上昇するピストン20が移送ポート40の出口開口45を過ぎて上昇し、かつこの出口開口45を封鎖する時間まで、およびピストンがこの地点を通過すると作り出される吸入力だけの下で旋回弁16が開放する前に、ピストンが、入口ポート50からではなく、移送ポート40を通して燃焼室部分19から誘導/圧力室部分17まで「引っ込む」ことができる。
【0050】
この遅延は、前述の排気掃気により低減または除去される。対照的に、1対のシリンダの他方の第2のシリンダ12の対向するピストンが、TDCから下降を開始したとき、そのシリンダの誘導/圧力室部分17を即座に加圧し始め、そのシリンダの入口ポート内で動作している旋回弁のそのリーフを閉鎖し始めさせる。旋回弁の2つのリーフが(いくらかの屈曲を可能にするが)堅固に相互接続されるので、この上昇する圧力が、第1のシリンダ10の旋回弁リーフの開放運動を手助けする。したがって、BDCおよびTDCの間をそれぞれ対向するピストンが移動することによる2つの力が、密接に協働して作動する。対向するピストン運動により旋回弁リーフに作用する閉鎖および開放する流体力の任意の残っている進みまたは遅れが、相互接続されたリーフの複合材料の設計で考慮される屈曲により適応させられる。
【0051】
図面では見えないが、シリンダの入口ポート側および排気ポート側の間にある、直径に沿った中心線から上向きに広がって形作られる斜めの面は、ピストン20の下面の特徴である。ピストンがBDCに接近したときに、これらの斜めの面が、ピストン20の下面および固定分離プレート18の上面の間から、短いガス移送ポート42の入口開口43に向かってガスフローを向ける。
【0052】
固定分離プレートが可能にするエンジンの可能な圧縮比を最大にするために、図2の右側のシリンダの断面図で理解することができるように、環状ウェル23が下方シリンダセクションの周囲に完全に伸びない。この場合、環状ウェル23が長い移送ポートの入口開口と整列しない。
【0053】
従来の排気ポート制御スリーブ25と同様に、本発明のガス移送ポートシステムが適しているエンジンのピストンが、排気スカート25と直径方向に対向するより短いスカート56を備える。図2で最もよく理解することができるように、この入口ポートスカート56がピストン20から下方へ伸び、入口ポート50の出口開口の領域と実質的に同一の広がりを持つ。ピストン20がBDCに接近する間に、「スキッシュ」効果が開始するとき、ピストンの下面および固定分離プレート18の間で急速に圧縮するガスが、破壊的圧力波を入口ポートを通って、閉鎖位置にある旋回弁16の比較的壊れやすいリーフまで伝えることができる。この圧力波が、入口ポートスカート56の背後で取り込まれる。
【0054】
継続する排気掃気を適応させるためのさらなるチャージ移送は、単一またはブースタ移送ポート54の開放を介してピストン20の上で継続し、入口ポートスカート56により引き起こされるどんな制約でも補償する。さらに、スカート56により取り込まれた「スキッシュ」圧力が短いガス移送ポート42に転じられ、本発明の移送ポートシステムの動力学をさらに活用する。
使用時
【0055】
図1の左側のシリンダを参照すると、本発明のガス移送ポート構成では、空気または空気/燃料混合気のチャージが、入口ポート50を介して誘導または圧力室17の中に引き込まれる(誘導または圧力室17は、ピストンがBDCからTDCまで上昇するときに、環状ウェル23、ならびにピストン20の下面および固定分離プレート18の上面の間に作り出される空間を備える)。これは、ピストンの圧縮/誘導チャージングストロークであり、すでに燃焼室19に移送された、圧縮されたチャージが、ピストンがBDCに向かって下へ戻って駆動される動力ストロークを開始するように強熱される。
【0056】
この下降が、誘導または圧力室17内のフレッシュチャージを圧縮し始める。次に、チャージの誘導によりすでに開放された旋回弁16が、その閉位置に戻らされる(ピストンが上昇している右側のシリンダ12内に形成される部分的真空のために、弁の他方のリーフに対する吸入力により促進される)。
【0057】
誘導または圧力室17内の圧力が、下降するピストンが短いおよび長いガス移送ポートの出口開口45の覆いを取り始める直前の地点で最大値まで増大する。出口開口45の覆いが取られるので、チャージが燃焼室19の中に流出し、長いガス移送ポート44が圧縮/誘導室(環状ウェル23を含む)内に蓄積した圧力により駆動され、すべてが一方向に移動する。フレッシュチャージが誘導または圧力室部分17からこのように一様に流れることは、従来の2ストロークエンジンのクランクケースからの乱流移送とまったく異なる。
【0058】
ピストンの下面が固定分離プレート18に極めて接近するときであるが、BDCに到達する前に、短い移送ポート42の中にチャージ移送の加速させられたパルス(いわゆる「スキッシュ」効果)が存在する。このパルスには、長いガス移送ポート44を通して環状ウェル23からチャージを掃気する手助けをする効果がある。
【0059】
上記は本発明の一部の実施形態だけを説明しており、本発明の範囲を逸脱することなく、これらの実施形態に対して当業者にとっては明らかなように、修正を行うことができる。
図1
図2
図3