【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するため、本発明者らは、まず、TFTの動作層;チャネル領域、ドレイン領域・ソース領域に、絶縁性透明基板側から光照射されている際、光リーク電流が生成される機構を考察した。
【0023】
例えば、
図2に示すトップゲート型結晶性シリコンTFT、特に、Pチャネル型TFTでは、n型の結晶性シリコン膜に対して、p型不純物を高濃度ドープして、p
+領域を形成して、ドレイン領域・ソース領域を作製している。また、ゲート電極の両側に、n型の結晶性シリコン膜の表面側からp型不純物を低濃度ドープして、p領域を形成して、低濃度不純物ドープ領域を設けている。ドレイン領域・ソース領域に挟まれた部分のうち、低濃度不純物ドープ領域を除いた部分は、n型の結晶性シリコン領域となっている。ゲート電極直下のn型の結晶性シリコン領域は、チャネル領域となっている。ゲート電極の両側に設ける低濃度不純物ドープ領域は、所謂、LDD構造を構成する、LDD領域として機能する。
【0024】
ドレイン領域/LDD領域/チャネル領域は、p
+/p/nの構造となっており、LDD領域/チャネル領域の境界にpn接合が形成されている。ソース領域/LDD領域/チャネル領域も、p
+/p/nの構造となっており、LDD領域/チャネル領域の境界にpn接合が形成されている。該Pチャネル型TFTが「オフ状態」である場合、該Pチャネル型TFTのゲート電極に印加される、「オフ状態」のゲート電圧Vg(OFF)は、ドレイン電極に印加されるドレイン電圧V
D、ソース電極に印加されるソース電圧V
Sに対して、通常、Vg(OFF)>V
S>V
Dとなる範囲に設定される。
【0025】
従って、該Pチャネル型TFTが「オフ状態」であり、Vg(OFF)>V
S>V
Dである場合、ドレイン側のpn接合は、逆バイアス状態である。その結果、該Pチャネル型TFTのゲート電極に「オフ状態」のゲート電圧Vg(OFF)が印加されている場合、ドレイン側のpn接合部分では、p
+/p/nの構造中、p領域(LDD領域)/チャネル領域(n領域)の境界部分に幅広い空乏層が形成されている。
【0026】
加えて、ドレイン側のLDD領域/下地層の界面は、p領域/下地層(絶縁膜)の接合となっており、この接合に起因して、下地層と接するドレイン側のLDD領域に空乏化領域が形成されている。
【0027】
一方、該Pチャネル型TFTが「オフ状態」である際、ソース側のpn接合は、通常、順バイアス状態/零バイアス状態となっている。なお、ソース側のpn接合部分でも、p
+/p/nの構造中、p領域(LDD領域)/チャネル領域の境界部分に空乏層が形成されている。特に、ゲート絶縁膜側において、ソース側のpn接合も逆バイアス状態となる場合には、ソース側のLDD領域/チャネル領域のpn接合に空乏層が形成されている。一方、ゲート電極の直下のチャネル領域は、n型の結晶性シリコン層で構成されており、該Pチャネル型TFTが「オフ状態」である際、ゲート絶縁膜側のチャネル領域の大半は空乏していない。
【0028】
絶縁性透明基板側から光照射すると、絶縁性透明基板と下地層を透過した光が結晶性シリコン膜に入射される。結晶性シリコン膜に入射される光のうち、結晶性シリコンの禁制帯幅Egよりも高いエネルギーを有する光のみが、結晶性シリコン膜で吸収され、電子と正孔の対が生成される。p
+領域(ドレイン領域・ソース領域)では、高密度の正孔が存在するため、生成した電子は、正孔と再結合して消滅する。また、該Pチャネル型TFTのゲート電極に「オフ状態」のゲート電圧Vg(OFF)が印加されている場合、ゲート電極直下のチャネル領域(n領域)では、相当の密度の電子が存在するため、生成した正孔の相当部分は、電子と再結合して消滅する。
【0029】
一方、ドレイン側のLDD領域/チャネル領域の境界には、pn接合に起因する空乏層が形成され、さらに、ドレイン側のLDD領域と下地層との界面にも、空乏化領域が形成されている。そのため、前記空乏層ならびに空乏化領域中で生成した電子と正孔は、殆ど再結合せず、空乏層ならびに空乏化領域中の電界によって、正孔はp
+領域(ドレイン領域)へ、電子はチャネル領域(n領域)へと走行する。
【0030】
また、ゲート絶縁膜側において、ソース側のpn接合も逆バイアス状態となる際、ソース側のLDD領域/チャネル領域のpn接合にも、空乏層が形成されている。このソース側の空乏層中で生成した電子と正孔は、正孔はチャネル領域側から注入される電子と再結合し、電子は、LDD領域側から注入される正孔と再結合する。
【0031】
結果として、ドレイン側のLDD領域/チャネル領域の境界部分(pn接合部分)の空乏層、ドレイン側のLDD領域/下地層の境界部分(接合部分)の空乏化領域に入射した光によって、前記空乏層ならびに空乏化領域中で生成した電子と正孔が、光リーク電流を生成する主な原因となることに想到した。
【0032】
従って、ドレイン側のLDD領域/チャネル領域の境界部分(pn接合部分)の空乏層、ならびに、ドレイン側のLDD領域/下地層の境界部分(接合部分)の空乏化領域に入射する光を遮光することで、光リーク電流の生成を効果的に抑制できることに想到した。
【0033】
実際に、遮光膜を絶縁性透明基板の上面に設け、絶縁性透明基板と下地層を透過し、結晶性シリコン膜に入射される光を遮光する際、該Pチャネル型TFTのゲート電極直下のチャネル領域(n型の結晶性シリコン)部分は、遮光膜で覆われていないが、ドレイン側のLDD領域/チャネル領域の境界部分の空乏層、ならびに、ドレイン側のLDD領域/下地層の境界部分(接合部分)の空乏化領域に入射する光を遮光することで、光リーク電流の生成を効果的に抑制できることを確認した。
【0034】
その際、遮光膜に対して、一定の電位を印加する電極を設けない構造を選択するが、該Pチャネル型TFTのゲート電極直下のチャネル領域(n型の結晶性シリコン)部分は、遮光膜で覆われていないため、該チャネル領域(n型の結晶性シリコン)部分に対する、遮光膜の電位変動の影響は軽減される。従って、遮光膜の電位の変動に起因する、TFTの閾値電圧のシフト量は、抑制されることとも確認した。
【0035】
一方、該Pチャネル型TFTのドレイン領域(p
+領域)とドレイン側のLDD領域(p領域)、ならびに、ソース領域(p
+領域)とソース側のLDD領域(p領域)は、それぞれ、分割された遮光膜の二つの領域で覆われている。ドレイン領域とドレイン側のLDD領域は、遮光膜のドレイン側領域の電位(V
BD(t))の影響を受ける。ソース領域とソース側のLDD領域は、遮光膜のソース側領域の電位(V
BS(t))の影響を受ける。その際、LDD領域(p領域)が形成されている部分において、影響が及ぶ範囲は、主に、下地層と接する部分となっている。そのため、該Pチャネル型TFTが「オン状態」となった際、オン抵抗値は、主に、ゲート絶縁膜側に形成されるPチャネルとLDD領域の抵抗となっている。すなわち、LDD領域の下地層と接する領域は、オン抵抗値に実質的な寄与を持っていない。そのため、周期的なオン/オフ動作に伴って、遮光膜のドレイン側領域の電位(V
BD(t))、遮光膜のソース側領域の電位(V
BS(t))が、「オフ状態の電位」と「オン状態の電位」の間で変動しても、該Pチャネル型TFTのオン抵抗値の上昇は、実質的に生じないことも確認した。
【0036】
特に、分割された遮光膜の二つの領域、遮光膜のドレイン側領域と遮光膜のソース側領域が、結晶性シリコン膜が形成されていない領域において電気的に連結される構造を採用すると、この連結部によって、遮光膜のドレイン側領域の電位(V
BD(t))と遮光膜のソース側領域の電位(V
BS(t))は、実質的に等しい電位とできる(V
BD(t)≒V
BS(t))ことを見出した。
【0037】
Pチャネル型TFTにおいて、遮光膜のドレイン側領域と遮光膜のソース側領域が電気的に連結される構造では、ドレイン領域/下地層/遮光膜のドレイン側領域からなるMIS接合(キャパシタC
D)と、ソース領域/下地層/遮光膜のソース側領域からなるMIS接合(キャパシタC
S)とが、直列に連結されている状態に相当する。その状況では、ドレイン領域の電位(V
D(t))とソース領域の電位(V
S(t))が、V
S(t)>V
D(t)である場合、遮光膜のドレイン側領域の電位(V
BD(t))と遮光膜のソース側領域の電位(V
BS(t))は、V
S(t)>V
BS(t)≒V
BD(t)>V
D(t)の条件を満足することを見出した。
【0038】
特に、V
S(t)>V
D(t)である場合、「オフ状態」の定常状態、すなわち、キャパシタC
D、キャパシタC
Sの充電が完了した状態に達すると、遮光膜のドレイン側領域の電位(V
BD(t))と遮光膜のソース側領域の電位(V
BS(t))は、V
S(t)>V
BS(t)=V
BD(t)>V
D(t)の条件を満足する。その際、遮光膜のドレイン側領域の電位(V
BD(t))と遮光膜のソース側領域の電位(V
BS(t))は、ドレイン領域の電位(V
D(t))とソース領域の電位(V
S(t))間の平均的な電位に保たれる。
【0039】
一方、Pチャネル型TFTにおいて、遮光膜のドレイン側領域と遮光膜のソース側領域が電気的に分離されている構造では、ドレイン領域/下地層/遮光膜のドレイン側領域からなるMIS接合(キャパシタC
D)、遮光膜のドレイン側領域/下地層/遮光膜のソース側領域からなるMIM接合(キャパシタC
DIS)、ソース領域/下地層/遮光膜のソース側領域からなるMIS接合(キャパシタC
S)が、直列に連結されている状態に相当する。その状況では、ドレイン領域の電位(V
D(t))とソース領域の電位(V
S(t))が、V
S(t)>V
D(t)であるとすると、遮光膜のドレイン側領域の電位(V
BD(t))と遮光膜のソース側領域の電位(V
BS(t))は、V
S(t)≧V
BS(t)>V
BD(t)≧V
D(t)の条件を満足することを見出した。
【0040】
特に、V
S(t)>V
D(t)である場合、「オフ状態」の定常状態、すなわち、キャパシタC
D、キャパシタC
DIS、キャパシタC
Sの充電が完了した状態に達すると、遮光膜のドレイン側領域の電位(V
BD(t))と遮光膜のソース側領域の電位(V
BS(t))は、V
S(t)>V
BS(t)>V
BD(t)>V
D(t)の条件を満足する。
【0041】
例えば、遮光膜のドレイン側領域と遮光膜のソース側領域が電気的に連結される構造では、遮光膜のドレイン側領域と遮光膜のソース側領域が対称的な配置とすると、ドレイン・バイアス(V
D)とソース・バイアス(V
S)を周期的に反転させる操作を継続しても、「オフ状態」の定常状態では、遮光膜のドレイン側領域の電位(V
BD(t))と遮光膜のソース側領域の電位(V
BS(t))は、実質的に、V
BD(t)=V
BS(t)に維持される状態となる。また、周期的なオン/オフ動作を行う際、ドレイン領域/下地層/遮光膜のドレイン側領域からなるMIS接合(キャパシタC
D)、ソース領域/下地層/遮光膜のソース側領域からなるMIS接合(キャパシタC
S)の充放電が速やかに起こらなくとも、「オフ状態」における、遮光膜のドレイン側領域の電位(V
BD(t))と遮光膜のソース側領域の電位(V
BS(t))の経時的なシフトは抑制されることを見出した。
【0042】
一方、遮光膜のドレイン側領域と遮光膜のソース側領域が電気的に分離される構造では、遮光膜のドレイン側領域と遮光膜のソース側領域が対称的な配置としても、ドレイン・バイアス(V
D)とソース・バイアス(V
S)を周期的に反転させると、遮光膜のドレイン側領域の電位(V
BD(t))と遮光膜のソース側領域の電位(V
BS(t))は周期的に変動する。また、周期的なオン/オフ動作を行う際、ドレイン領域/下地層/遮光膜のドレイン側領域からなるMIS接合(キャパシタC
D)、ソース領域/下地層/遮光膜のソース側領域からなるMIS接合(キャパシタC
S)、遮光膜のドレイン側領域/下地層/遮光膜のソース側領域からなるMIM接合(キャパシタC
DIS)の充放電が速やかに起こらないと、「オフ状態」における、遮光膜のドレイン側領域の電位(V
BD(t))と遮光膜のソース側領域の電位(V
BS(t))の経時的なシフトが引き起こされることが想定される。
【0043】
従って、ドレイン・バイアス(V
D)とソース・バイアス(V
S)を周期的に反転させる操作を継続する場合、また、周期的なオン/オフ動作を行う際、連結部を設けることで、遮光膜のドレイン側領域の電位(V
BD(t))と遮光膜のソース側領域の電位(V
BS(t))の経時的なシフトを実質的に抑制できることを見出した。勿論、周期的なオン/オフ動作を行っても、「オフ状態」における、遮光膜のドレイン側領域の電位(V
BD(t))、遮光膜のソース側領域の電位(V
BS(t))は実質的に一定に保持されるため、該Pチャネル型TFTのオン抵抗値は、経時的にシフトすることはないことを見出した。
【0044】
以上の一連の知見に基づき、本発明者らは、本発明を完成させた。
【0045】
まず、本発明の第一の形態は、下記の薄膜トランジスタの発明である。すなわち、本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタは:
透明基板上に形成されるトップゲート型薄膜トランジスタであって、
該薄膜トランジスタにおいては、
前記透明基板上に、
パターン化された遮光膜と、
下地層と、
パターン化された結晶性シリコン膜と、
ゲート絶縁膜と、
パターン化されたゲート電極膜が順次積層されており;
前記パターン化した結晶性シリコン膜は、
前記パターン化したゲート電極膜と重なるチャネル領域と、
前記チャネル領域に接する二つの低濃度不純物領域を有しており;
前記パターン化した遮光膜は、前記チャネル領域と重ならないように配置され、かつ、前記二つの低濃度不純物領域の何れの低濃度不純物領域においても少なくとも一部が重なるように配置されている
ことを特徴とする薄膜トランジスタである。
【0046】
なお、本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタでは、
前記チャネル領域は、第一の導電型の領域からなり、
前記二つの低濃度不純物領域は、ともに第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域からなる構造を選択することが好ましい。例えば、前記チャネル領域は、キャリアが電子である第一の導電型の領域からなり、前記二つの低濃度不純物領域は、キャリアが正孔である第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域からなる構造を選択することが好ましい。
【0047】
前記透明基板として、絶縁性透明基板を利用することが望ましい。また、前記下地層として、光透過性絶縁性材料からなる下地層を利用することが望ましい。勿論、前記パターン化した遮光膜は、光不透過性導電性材料からなることが望ましい。さらに、前記パターン化された結晶性シリコン膜は、ドレイン領域、ソース領域として使用される、二つの第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域を有していることが望ましい。
【0048】
さらには、前記透明基板は、絶縁性透明基板であり;
前記下地層は、光透過性絶縁性材料からなる層であり;
前記パターン化された遮光膜は、その膜全面が前記透明基板ならびに下地層により囲まれ、電気的に孤立されている形態とすることが好ましい。
【0049】
また、前記パターン化された遮光膜は、
前記パターン化された結晶性シリコン膜の直下に位置しない、第3の領域を有しており、
チャネル領域を挟んで分割されている、前記遮光膜のドレイン側の領域と遮光膜のソース側の領域は、前記遮光膜の第3の領域を介して、電気的に相互接続されている形態とすることが好ましい。
【0050】
例えば、本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタの一態様は、
絶縁性透明基板上に形成されるトップゲート型結晶性シリコン薄膜トランジスタであって、
該薄膜トランジスタは、
絶縁性透明基板と、
絶縁性透明基板の上面上に形成される、パターン化された遮光膜と、
パターン化された遮光膜と絶縁性透明基板の上面を被覆するように形成される、光透過性絶縁性材料からなる下地層と、
下地層の上面上に形成される、パターン化された結晶性シリコン膜と、
パターン化された結晶性シリコン膜と下地層の上面を被覆するように形成される、ゲート絶縁膜と、
ゲート絶縁膜の上面上に形成される、パターン化されたゲート電極膜を具え;
前記パターン化されたゲート電極膜からなる、ゲート電極と、
前記ゲート絶縁膜と、
ゲート絶縁膜と接するパターン化された結晶性シリコン膜の、ゲート電極の直下の第一の導電型の領域からなる、チャネル領域と、
パターン化された結晶性シリコン膜に形成される、第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域からなる、ドレイン領域と、
パターン化された結晶性シリコン膜に形成される、第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域からなる、ソース領域と、
チャネル領域の両側において、パターン化された結晶性シリコン膜のゲート絶縁膜と接する面側に形成される、第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域からなる、LDD領域と、
ドレイン領域とソース領域の上面とそれぞれ電気的に接続されるように形成される、電極膜からなる、ドレイン電極とソース電極とによって、
電界効果トランジスタを構成しており;
該電界効果トランジスタのオン状態では、
ゲート電極に閾値電圧を超えるゲート電圧を印加することで、チャネルが形成され、
ドレイン領域とソース領域との間に、前記チャネルとその両側のLDD領域を経由するキャリアの流路が形成され;
前記パターン化された遮光膜は、
光不透過性導電性材料からなり、
絶縁性透明基板と下地層とで取り囲まれ、電気的に孤立された状態となっており;
前記チャネル領域の直下には、前記パターン化された遮光膜は存在してなく、
少なくとも、該パターン化された遮光膜の形成領域は、前記ドレイン領域の直下の領域の一部と、ならびに、前記ソース領域の直下の領域の一部と、それぞれ重なり、
前記チャネル領域の両側に設けるLDD領域のそれぞれに対して、該LDD領域の直下の領域の一部と、該パターン化された遮光膜の形成領域は重なるように配置されている
ことを特徴とする薄膜トランジスタである。
【0051】
また、本発明の第二の形態は、下記の薄膜トランジスタの発明である。すなわち、本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタは:
透明基板上に形成されるトップゲート型薄膜トランジスタであって、
該薄膜トランジスタにおいては、
前記透明基板上に、
パターン化された遮光膜と、
下地層と、
パターン化された結晶性シリコン膜と、
ゲート絶縁膜と、
パターン化されたゲート電極膜が順次積層されており;
前記パターン化した結晶性シリコン膜は、
高濃度不純物ドープ領域からなる、ドレイン領域とソース領域と、
前記パターン化したゲート電極膜と重なる、長さLのチャネル領域と、
前記ゲート電極膜の両側に、前記チャネル領域に接して、低濃度不純物ドープ領域からなる長さdのドレイン側LDD領域と長さdのソース側LDD領域を有しており;
前記パターン化した遮光膜は、
チャネル領域を挟んで、ドレイン側の領域とソース側の領域に分割されており、
前記チャネル領域と重ならないように配置されており、
分割された遮光膜のドレイン側の領域とソース側の領域の間に、前記チャネル領域の長さL以上の間隔xの隙間を設けて、
分割された遮光膜のドレイン側の領域は、少なくとも、長さdのドレイン側LDD領域の一部とドレイン領域の一部と重なるように配置され、
分割された遮光膜のソース側の領域は、少なくとも、長さdのソース側LDD領域の一部とソース領域の一部と重なるように配置されている
ことを特徴とする薄膜トランジスタである。
【0052】
特には、前記チャネル領域の長さL、ドレイン側LDD領域の長さd、ソース側LDD領域の長さdに対して、
チャネル領域を挟んで分割されている、遮光膜のドレイン側の領域と遮光膜のソース側の領域の間に設ける、前記隙間の間隔xは、下記の式(1)を満足するように選択されている:
L+2d≧x≧L 式(1)
ことを特徴とする薄膜トランジスタである。
【0053】
なお、本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタでは、
前記チャネル領域は、第一の導電型の領域からなり、
前記ドレイン側LDD領域とソース側LDD領域は、ともに第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域からなる構造を選択することが好ましい。例えば、前記チャネル領域は、キャリアが電子である第一の導電型の領域からなり、前記二つの低濃度不純物領域は、キャリアが正孔である第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域からなる構造を選択することが好ましい。
【0054】
前記透明基板として、絶縁性透明基板を利用することが望ましい。また、前記下地層として、光透過性絶縁性材料からなる下地層を利用することが望ましい。勿論、前記パターン化した遮光膜は、光不透過性導電性材料からなることが望ましい。
【0055】
さらには、前記透明基板は、絶縁性透明基板であり;
前記下地層は、光透過性絶縁性材料からなる層であり;
前記パターン化された遮光膜は、その膜全面が前記透明基板ならびに下地層により囲まれ、電気的に孤立されている形態とすることが好ましい。
【0056】
また、前記パターン化された遮光膜は、
前記パターン化された結晶性シリコン膜の直下に位置しない、第3の領域を有しており、
チャネル領域を挟んで分割されている、前記遮光膜のドレイン側の領域と遮光膜のソース側の領域は、前記遮光膜の第3の領域を介して、電気的に相互接続されている形態とすることが好ましい。
【0057】
例えば、本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタの一態様は、
絶縁性透明基板上に形成されるトップゲート型結晶性シリコン薄膜トランジスタであって、
該薄膜トランジスタは、
絶縁性透明基板と、
絶縁性透明基板の上面上に形成される、パターン化された遮光膜と、
パターン化された遮光膜と絶縁性透明基板の上面を被覆するように形成される、光透過性絶縁性材料からなる下地層と、
下地層の上面上に形成される、パターン化された第一の導電型の結晶性シリコン膜と、
パターン化された結晶性シリコン膜と下地層の上面を被覆するように形成される、ゲート絶縁膜と、
ゲート絶縁膜の上面上に形成される、パターン化されたゲート電極膜を具え;
前記パターン化されたゲート電極膜からなる、ゲート長L
gateのゲート電極と、
前記ゲート絶縁膜と、
ゲート絶縁膜と接するパターン化された結晶性シリコン膜の、ゲート長L
gateのゲート電極の直下の第一の導電型の領域からなる、ゲート長L
gateと等しい長さLのチャネル領域と、
ゲート電極の両側、パターン化された結晶性シリコン膜に形成される、第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域からなる、長さL
Dのドレイン領域と長さL
Sのソース領域と、
チャネル領域と、ドレイン領域とソース領域との間に、パターン化された結晶性シリコン膜のゲート絶縁膜と接する面側に形成される、第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域からなる、長さdのドレイン側LDD領域と長さdのソース側LDD領域と、
ドレイン領域とソース領域の上面とそれぞれ電気的に接続されるように形成される、電極膜からなる、ドレイン電極とソース電極とによって、
電界効果トランジスタを構成しており;
該電界効果トランジスタのオン状態では、
ゲート電極に閾値電圧を超えるゲート電圧を印加することで、チャネルが形成され、
ドレイン領域とソース領域との間に、ドレイン領域、ドレイン側LDD領域、チャネル、ソース側LDD領域、ソース領域を経由するキャリアの流路が形成され;
前記パターン化された遮光膜は、
光不透過性導電性材料からなり、
絶縁性透明基板と下地層とで取り囲まれ、電気的に孤立された状態となっており;
該パターン化された遮光膜は、
チャネル領域を挟んで、ドレイン側の領域とソース側の領域に分割されており、
前記チャネル領域と重ならないように配置されており、
分割された遮光膜のドレイン側の領域とソース側の領域の間に、前記チャネル領域の長さL以上の間隔xの隙間を設けて、
分割された遮光膜のドレイン側の領域は、少なくとも、長さdのドレイン側LDD領域の一部とドレイン領域の一部と重なるように配置され、
分割された遮光膜のソース側の領域は、少なくとも、長さdのソース側LDD領域の一部とソース領域の一部と重なるように配置されている
ことを特徴とする薄膜トランジスタである。
【0058】
その際、本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタにおいては、
前記チャネル領域の長さL、ドレイン側LDD領域の長さd、ソース側LDD領域の長さdに対して、
チャネル領域を挟んで分割されている、遮光膜のドレイン側の領域と遮光膜のソース側の領域の間に設ける、前記隙間の間隔xは、下記の式(1)を満足するように選択されている:
L+2d≧x≧L 式(1)
ことが好ましい。
【0059】
また、チャネル領域を挟んで分割されている、遮光膜のドレイン側の領域と遮光膜のソース側の領域は、
該遮光膜のドレイン側の領域のゲート電極側の端部と、該遮光膜のソース側の領域のゲート電極側の端部は、
ゲート電極に対して、対称な位置となるように配置されていることが望ましい。
上記の本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタ、ならびに、本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタでは、
前記パターン化された遮光膜は、
前記パターン化された第一の導電型の結晶性シリコン膜の直下に位置しない、第3の領域を有しており、
チャネル領域を挟んで分割されている、前記遮光膜のドレイン側の領域と遮光膜のソース側の領域は、前記遮光膜の第3の領域を介して、電気的に相互接続されている構造を採用することが好ましい。
【0060】
さらには、
前記第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域は、下地層の上面に達しており、
前記第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域も、下地層の上面に達している構造を採用することが好ましい。
【0061】
上記の本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタ、ならびに、本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタでは、
前記トップゲート型の電界効果トランジスタは、
ゲート電極とゲート絶縁膜の上面を被覆するように形成される、層間絶縁膜を具えている構造とすることが望ましい。
【0062】
一方、本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタ、ならびに、本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタでは、
前記第一の導電型は、正孔をキャリアとする導電型であり、
前記第二の導電型は、電子をキャリアとする導電型であり、
構成される、前記トップゲート型の電界効果トランジスタは、N−チャネル型電界効果トランジスタである構成を選択することができる。
【0063】
あるいは、
前記第一の導電型は、電子をキャリアとする導電型であり、
前記第二の導電型は、正孔をキャリアとする導電型であり、
構成される、前記トップゲート型の電界効果トランジスタは、P−チャネル型電界効果トランジスタである構成を選択することができる。
【0064】
本発明の第三の形態は、上記の本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタを製造する方法の発明である。すなわち、本発明の第三の形態にかかる薄膜トランジスタの製造方法は:
透明基板上に、上記の構成を有する本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタを製造する方法であって、
該薄膜トランジスタの製造方法は、
前記透明基板上に、
パターン化された遮光膜と、
下地層と、
パターン化された結晶性シリコン膜と、
ゲート絶縁膜と、
パターン化されたゲート電極膜を、順次積層してなる構造を形成する工程を有しており;
前記パターン化した結晶性シリコン膜は、
前記パターン化したゲート電極膜と重なるチャネル領域と、
前記チャネル領域に接する二つの低濃度不純物領域を有しており;
前記パターン化した遮光膜は、前記チャネル領域と重ならないように配置され、かつ、前記二つの低濃度不純物領域の何れの低濃度不純物領域においても少なくとも一部が重なるように配置されている
ことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法である。
【0065】
なお、本発明の第三の形態にかかる薄膜トランジスタの製造方法では、
前記チャネル領域は、第一の導電型の領域からなり、
前記二つの低濃度不純物領域は、ともに第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域からなる構造を選択することが好ましい。例えば、前記チャネル領域は、キャリアが電子である第一の導電型の領域からなり、前記二つの低濃度不純物領域は、キャリアが正孔である第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域からなる構造を選択することが好ましい。
【0066】
前記透明基板として、絶縁性透明基板を利用することが望ましい。また、前記下地層として、光透過性絶縁性材料からなる下地層を利用することが望ましい。勿論、前記パターン化した遮光膜は、光不透過性導電性材料からなることが望ましい。さらに、前記パターン化された結晶性シリコン膜は、ドレイン領域、ソース領域として使用される、二つの高濃度不純物ドープ領域を有していることが望ましい。
【0067】
さらには、前記透明基板は、絶縁性透明基板であり;
前記下地層は、光透過性絶縁性材料からなる層であり;
前記パターン化された遮光膜は、その膜全面が前記透明基板ならびに下地層により囲まれ、電気的に孤立されている形態とすることが好ましい。
【0068】
また、前記パターン化された遮光膜は、
前記パターン化された結晶性シリコン膜の直下に位置しない、第3の領域を有しており、
チャネル領域を挟んで分割されている、前記遮光膜のドレイン側の領域と遮光膜のソース側の領域は、前記遮光膜の第3の領域を介して、電気的に相互接続されている形態とすることが好ましい。
【0069】
例えば、本発明の第三の形態にかかる薄膜トランジスタの製造方法の一態様は、
絶縁性透明基板上に、上述の本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタの一態様として例示する薄膜トランジスタを製造する方法であって、
該薄膜トランジスタの製造方法は、
前記絶縁性透明基板の上面上に、前記光不透過性導電性材料からなる膜を形成する工程(1);
前記光不透過性導電性材料からなる膜をパターニングして、前記パターン化された遮光膜を絶縁性透明基板の上面上に形成する工程(2);
前記パターン化された遮光膜と絶縁性透明基板の上面を被覆するように、光透過性絶縁性材料からなる膜を形成し、下地層を形成する工程(3);
前記下地層の上面上に、アモルファスシリコン膜を形成する工程(4);
前記下地層の上面上に形成されたアモルファスシリコン膜をエキシマレーザ等の照射により熱処理して、第一の導電型の結晶性シリコン膜を形成する工程(5);
前記第一の導電型の結晶性シリコン膜をパターニングして、前記パターン化された第一の導電型の結晶性シリコン膜を前記下地層の上面上に形成する工程(6);
前記パターン化された結晶性シリコン膜と下地層の上面を被覆するように、前記ゲート絶縁膜を形成する工程(7);
前記ゲート絶縁膜の上面上に、ゲート電極膜を形成する工程(8);
前記ゲート電極膜をパターニングして、前記パターン化されたゲート電極膜をゲート絶縁膜の上面上に形成する工程(9);
前記パターン化された第一の導電型の結晶性シリコン膜に、第二の導電性を付与する不純物を高濃度で注入してなる、ドレイン領域用の第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域とソース領域用の第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域を作製する工程(10);
ゲート電極の両側に、前記パターン化された第一の導電型の結晶性シリコン膜に、第二の導電性を付与する不純物を低濃度で注入してなる、第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域を作製する工程(11);
前記第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域、ならびに第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域に、それぞれ注入されている第二の導電性を付与する不純物を活性化熱処理して、前記第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域から、前記ドレイン領域とソース領域を形成し、ならびに、前記第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域から、前記ゲート電極の両側に、それぞれLDD領域を形成する工程(12);
前記ドレイン領域とソース領域の上面を覆うゲート絶縁膜に電極形成用の開口部を設け、該開口部において、ドレイン領域とソース領域の上面とそれぞれ電気的に接続されるように電極膜を形成し、前記ドレイン電極とソース電極を作製する工程(13);
少なくとも、上記工程(1)〜工程(13)を具えており;
工程(9)で形成される、前記パターン化されたゲート電極膜の長さは、ゲート電極のゲート長と等しく選択され;
ゲート絶縁膜と接するパターン化された第一の導電型の結晶性シリコン膜の、ゲート長のゲート電極の直下の領域は、ゲート長と等しい長さのチャネル領域とされ;
工程(10)で作製される、前記第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域の長さは、それぞれ、前記ドレイン領域の長さL
Dとソース領域の長さL
Sと等しく選択され;
工程(11)でゲート電極とドレイン領域との間、ならびに、ゲート電極とソース領域との間に作製される、前記第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域の長さは、それぞれ、ドレイン側LDD領域の長さdとソース側LDD領域の長さdと等しく選択され;
工程(2)で形成される、前記パターン化された遮光膜のパターン形状は、
チャネル領域を挟んで、ドレイン側の領域とソース側の領域に分割されており、
前記チャネル領域と重ならないように配置されており、
少なくとも、該パターン化された遮光膜の形成領域は、前記ドレイン領域の直下の領域の一部と、ならびに、前記ソース領域の直下の領域の一部と、それぞれ重なり、
前記チャネル領域の両側に設けるLDD領域のそれぞれに対して、該LDD領域の直下の領域の一部と、該パターン化された遮光膜の形成領域は重なるように、
前記チャネル領域の長さ以上の間隔xの隙間を具える、パターン形状の選択がなされ、
工程(9)で形成される、前記パターン化されたゲート電極膜は、
工程(2)で形成される、前記パターン化された遮光膜のパターン形状に対して、
前記チャネル領域の長さ以上の間隔xの隙間に上部に、前記パターン化されたゲート電極膜の配置位置を選択し、
前記パターン化されたゲート電極膜の配置位置は、
前記パターン化されたゲート電極膜のドレイン領域側の側端と、前記ドレイン領域のゲート電極膜側の側端との間に、長さdの間隔を設け、
前記パターン化されたゲート電極膜のソース領域側の側端と、前記ソース領域のゲート電極膜側の側端との間に、長さdの間隔を設けるように、
前記パターン化されたゲート電極膜の配置位置の位置決めを行う
ことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法である。
【0070】
本発明の第四の形態は、上記の本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタを製造する方法の発明である。すなわち、本発明の第四の形態にかかる薄膜トランジスタの製造方法は:
透明基板上に、上記の構成を有する本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタを製造する方法であって、
該薄膜トランジスタの製造方法は、
前記透明基板上に、
パターン化された遮光膜と、
下地層と、
パターン化された結晶性シリコン膜と、
ゲート絶縁膜と、
パターン化されたゲート電極膜を、順次積層してなる構造を形成する工程を有しており;
前記パターン化した結晶性シリコン膜は、
高濃度不純物ドープ領域からなる、ドレイン領域とソース領域と、
前記パターン化したゲート電極膜と重なる、長さLのチャネル領域と、
前記ゲート電極膜の両側に、前記チャネル領域に接して、低濃度不純物ドープ領域からなる長さdのドレイン側LDD領域と長さdのソース側LDD領域を有しており;
前記パターン化した遮光膜は、
チャネル領域を挟んで、ドレイン側の領域とソース側の領域に分割されており、
前記チャネル領域と重ならないように配置されており、
分割された遮光膜のドレイン側の領域とソース側の領域の間に、前記チャネル領域の長さL以上の間隔xの隙間を設けて、
分割された遮光膜のドレイン側の領域は、少なくとも、長さdのドレイン側LDD領域の一部とドレイン領域の一部と重なるように配置され、
分割された遮光膜のソース側の領域は、少なくとも、長さdのソース側LDD領域の一部とソース領域の一部と重なるように配置されている
ことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法である。
【0071】
なお、本発明の第四の形態にかかる薄膜トランジスタの製造方法では、
前記チャネル領域は、第一の導電型の領域からなり、
前記ドレイン側LDD領域とソース側LDD領域は、ともに第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域からなる構造を選択することが好ましい。例えば、前記チャネル領域は、キャリアが電子である第一の導電型の領域からなり、前記二つの低濃度不純物領域は、キャリアが正孔である第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域からなる構造を選択することが好ましい。
【0072】
前記透明基板として、絶縁性透明基板を利用することが望ましい。また、前記下地層として、光透過性絶縁性材料からなる下地層を利用することが望ましい。勿論、前記パターン化した遮光膜は、光不透過性導電性材料からなることが望ましい。
【0073】
さらには、前記透明基板は、絶縁性透明基板であり;
前記下地層は、光透過性絶縁性材料からなる層であり;
前記パターン化された遮光膜は、その膜全面が前記透明基板ならびに下地層により囲まれ、電気的に孤立されている形態とすることが好ましい。
【0074】
また、前記パターン化された遮光膜は、
前記パターン化された結晶性シリコン膜の直下に位置しない、第3の領域を有しており、
チャネル領域を挟んで分割されている、前記遮光膜のドレイン側の領域と遮光膜のソース側の領域は、前記遮光膜の第3の領域を介して、電気的に相互接続されている形態とすることが好ましい。
【0075】
例えば、本発明の第四の形態にかかる薄膜トランジスタの製造方法の一態様は、
絶縁性透明基板上に、上述の本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタの一態様として例示する薄膜トランジスタを製造する方法であって、
該薄膜トランジスタの製造方法は、
前記絶縁性透明基板の上面上に、前記光不透過性導電性材料からなる膜を形成する工程(1);
前記光不透過性導電性材料からなる膜をパターニングして、前記パターン化された遮光膜を絶縁性透明基板の上面上に形成する工程(2);
前記パターン化された遮光膜と絶縁性透明基板の上面を被覆するように、光透過性絶縁性材料からなる膜を形成し、下地層を形成する工程(3);
前記下地層の上面上に、アモルファスシリコン膜を形成する工程(4);
前記下地層の上面上に形成されたアモルファスシリコン膜をエキシマレーザ等の照射により熱処理して、第一の導電型の結晶性シリコン膜を形成する工程(5);
前記第一の導電型の結晶性シリコン膜をパターニングして、前記パターン化された第一の導電型の結晶性シリコン膜を前記下地層の上面上に形成する工程(6);
前記パターン化された結晶性シリコン膜と下地層の上面を被覆するように、前記ゲート絶縁膜を形成する工程(7);
前記ゲート絶縁膜の上面上に、ゲート電極膜を形成する工程(8);
前記ゲート電極膜をパターニングして、前記パターン化されたゲート電極膜をゲート絶縁膜の上面上に形成する工程(9);
ゲート電極の両側、前記パターン化された第一の導電型の結晶性シリコン膜に、第二の導電性を付与する不純物を高濃度で注入してなる、第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域を作製する工程(10);
ゲート電極の両側、ゲート電極と、前記第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域との間に、前記パターン化された第一の導電型の結晶性シリコン膜に、第二の導電性を付与する不純物を低濃度で注入してなる、第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域を作製する工程(11);
前記第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域、ならびに第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域に、それぞれ注入されている第二の導電性を付与する不純物を活性化熱処理して、前記第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域から、前記ドレイン領域とソース領域を、ならびに前記第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域から、前記ドレイン側LDD領域とソース側LDD領域を形成する工程(12);
前記ドレイン領域とソース領域の上面を覆うゲート絶縁膜に電極形成用の開口部を設け、該開口部において、ドレイン領域とソース領域の上面とそれぞれ電気的に接続されるように電極膜を形成し、前記ドレイン電極とソース電極を作製する工程(13);
少なくとも、上記工程(1)〜工程(13)を具えており;
工程(9)で形成される、前記パターン化されたゲート電極膜の長さは、ゲート電極のゲート長L
gateと等しく選択され;
ゲート絶縁膜と接するパターン化された第一の導電型の結晶性シリコン膜の、ゲート長L
gateのゲート電極の直下の領域は、ゲート長L
gateと等しい長さLのチャネル領域とされ;
工程(10)でゲート電極の両側に作製される、前記第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域の長さは、それぞれ、前記ドレイン領域の長さL
Dとソース領域の長さL
Sと等しく選択され;
工程(11)でゲート電極の両側に作製される、前記第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域の長さは、それぞれ、ドレイン側LDD領域の長さとソース側LDD領域の長さdと等しく選択され;
工程(2)で形成される、前記パターン化された遮光膜は、
チャネル領域を挟んで、ドレイン側の領域とソース側の領域に分割されており、
分割された遮光膜のドレイン側の領域とソース側の領域の間に、前記チャネル領域の長さL以上の間隔xの隙間を設けており;
前記チャネル領域の長さL以上の間隔xの隙間の上部に、前記パターン化されたゲート電極膜の配置位置を位置決めする際、
分割された遮光膜のドレイン側の領域は、少なくとも、長さdのドレイン側LDD領域の一部とドレイン領域の一部と重なり、
分割された遮光膜のソース側の領域は、少なくとも、長さdのソース側LDD領域の一部とソース領域の一部と重なるように、
前記パターン化されたゲート電極膜の配置位置の位置決めを行う
ことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法である。
【0076】
その際、前記チャネル領域の長さL、ドレイン側LDD領域の長さd、ソース側LDD領域の長さdに対して、
チャネル領域を挟んで分割されている、遮光膜のドレイン側の領域と遮光膜のソース側の領域の間に設ける、前記隙間の間隔xは、下記の式(1)を満足するように選択されている:
L+2d≧x≧L 式(1)
ことが好ましい。
【0077】
またチャネル領域を挟んで分割されている、遮光膜のドレイン側の領域と遮光膜のソース側の領域は、
該遮光膜のドレイン側の領域のゲート電極側の端部と、該遮光膜のソース側の領域のゲート電極側の端部は、
ゲート電極に対して、対称な位置となるように、
前記パターン化されたゲート電極膜の配置位置の位置決めを行うことが望ましい。
【0078】
さらには、上記の本発明の第三の形態にかかる薄膜トランジスタの製造方法で作製される本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタ、ならびに、本発明の第四の形態にかかる薄膜トランジスタの製造方法で作製される本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタは、
前記パターン化された遮光膜は、
前記パターン化された第一の導電型の結晶性シリコン膜の直下に位置しない、第3の領域を有しており、
チャネル領域を挟んで分割されている、前記遮光膜のドレイン側の領域と遮光膜のソース側の領域は、前記遮光膜の第3の領域を介して、電気的に相互接続されていることが好ましい。
【0079】
また、
前記第二の導電型の高濃度不純物ドープ領域は、下地層の上面に達しており、
前記第二の導電型の低濃度不純物ドープ領域も、下地層の上面に達している構造を採用することが好ましい。
【0080】
さらには、
前記トップゲート型の電界効果トランジスタに対して、
ゲート電極とゲート絶縁膜の上面を被覆するように形成される、層間絶縁膜を形成する工程をさらに具えている製造プロセスとすることができる。
【0081】
上記の本発明の第三の形態にかかる薄膜トランジスタの製造方法で作製される本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタ、ならびに、本発明の第四の形態にかかる薄膜トランジスタの製造方法で作製される本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタは、
前記第一の導電型は、正孔をキャリアとする導電型であり、
前記第二の導電型は、電子をキャリアとする導電型であり、
構成される、前記トップゲート型の電界効果トランジスタは、N−チャネル型電界効果トランジスタである構造を選択することができる。
【0082】
あるいは、
前記第一の導電型は、電子をキャリアとする導電型であり、
前記第二の導電型は、正孔をキャリアとする導電型であり、
構成される、前記トップゲート型の電界効果トランジスタは、P−チャネル型電界効果トランジスタである構造を選択することもできる。
【0083】
本発明の第五の形態は、前記本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタ、あるいは、本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタの使用方法の発明に相当しており、具体的には、本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタ、あるいは、本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタを利用して、駆動される表示装置の発明である。すなわち、本発明の第五の形態にかかる表示装置は:
透明基板上に形成されるトップゲート型結晶性シリコン薄膜トランジスタを利用して、駆動される表示装置であって、
該表示装置において、駆動デバイスとして利用される、透明基板上に形成されるトップゲート型結晶性シリコン薄膜トランジスタは、
上述の本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタ、あるいは、本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタである
ことを特徴とする表示装置である。
【0084】
例えば、本発明の第五の形態にかかる表示装置の好ましい態様は、
絶縁性透明基板上に形成されるトップゲート型結晶性シリコン薄膜トランジスタを利用して、駆動される表示装置であって、
該表示装置において、駆動デバイスとして利用される、絶縁性透明基板上に形成されるトップゲート型結晶性シリコン薄膜トランジスタは、
上述の本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタ、あるいは、本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタである
ことを特徴とする表示装置である。
【0085】
該本発明の第五の形態にかかる表示装置の一態様は、本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタ、あるいは、本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタを利用して、駆動される液晶表示装置の発明である。すなわち、該本発明の第五の形態にかかる表示装置の一態様は:
絶縁性透明基板上に形成されるトップゲート型結晶性シリコン薄膜トランジスタを利用して、駆動される液晶表示装置であって、
該液晶表示装置は、
前記絶縁性透明基板側から、該液晶表示用のバック・ライト光を入射させる方式を採用しており;
前記バック・ライト光による光照射を受ける、絶縁性透明基板上に形成されるトップゲート型結晶性シリコン薄膜トランジスタ薄膜トランジスタとして、
上述の本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタの一態様として例示する薄膜トランジスタ、あるいは、上述の本発明の第二の形態にかかる薄膜トランジスタの一態様として例示する薄膜トランジスタを使用している
ことを特徴とする液晶表示装置である。
【0086】
本発明の第六の形態は、前記本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタ、あるいは、本発明の第一の形態にかかる薄膜トランジスタの使用方法の発明に相当しており、具体的には、前記本発明の第五の形態にかかる表示装置を組み込むことで構成される電子機器の発明である。すなわち、本発明の第六の形態にかかる電子機器は:
表示装置を具えてなる電子機器であって、
該電子機器で採用されている、表示装置は、
前記本発明の第五の形態にかかる表示装置である
ことを特徴とする電子機器である。
【0087】
該本発明の第六の形態にかかる電子機器の一態様は、前記本発明の第五の形態にかかる表示装置、特には、液晶表示装置を組み込むことで構成される電子機器の発明である。具体的には、該本発明の第六の形態にかかる電子機器の一態様は、
表示機構として、液晶表示装置を採用している電子機器であって、
該電子機器で採用されている、該液晶表示装置は、
前記絶縁性透明基板側から、該液晶表示用のバック・ライト光を入射させる方式を採用しており;
前記液晶表示装置は、前記本発明の第五の形態にかかる表示装置の一態様である、上記の液晶表示装置である
ことを特徴とする電子機器である。
【0088】
なお、本発明において、上記結晶性シリコン膜として、多結晶シリコン膜を採用できる。