特許第5874819号(P5874819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874819
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】電界効果型トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20160218BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20160218BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20160218BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20160218BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20160218BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20160218BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   H01L29/78 617T
   H01L21/312 C
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 617V
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 280
   H01L29/28 250E
   H01L21/28 301B
   H01L21/28 301R
   H01L29/28 390
【請求項の数】12
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-513392(P2014-513392)
(86)(22)【出願日】2014年3月11日
(86)【国際出願番号】JP2014056280
(87)【国際公開番号】WO2014142105
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2015年7月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-51218(P2013-51218)
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 清一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 真衣子
(72)【発明者】
【氏名】真多 淳二
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩二
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−001859(JP,A)
【文献】 特開2012−119423(JP,A)
【文献】 特開2006−083319(JP,A)
【文献】 特開2006−073889(JP,A)
【文献】 特開2007−154164(JP,A)
【文献】 特開2012−160698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336−27/28、29/786、
51/00−51/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート絶縁層、ゲート電極、半導体層、ソース電極、およびドレイン電極を有する電界効果型トランジスタであって、前記ゲート絶縁層は、ケイ素と炭素の結合を含む有機化合物と、金属原子および酸素原子の結合を含む金属化合物を含み、前記ゲート絶縁層において、炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対して前記金属原子が10〜60重量部含まれることを特徴とする電界効果型トランジスタ。
【請求項2】
前記ゲート絶縁層において、炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対して前記金属原子が17〜30重量部含まれる請求項1記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項3】
前記金属原子がアルミニウムである請求項1または2に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項4】
前記ゲート絶縁層の膜厚が0.05μm〜5μmである請求項1〜3いずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項5】
前記半導体層が単層カーボンナノチューブを含む請求項1〜4いずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項6】
前記単層カーボンナノチューブが、半導体型単層カーボンナノチューブを90重量%以上含む請求項5記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項7】
(a)一般式(1)で表される金属キレート、(b)重量平均分子量が1000以上のポリマー、および(c)溶媒を含有し、(a)一般式(1)で表される金属キレート100重量部に対して(b)重量平均分子量が1000以上のポリマーが5〜90重量部含まれることを特徴とする組成物。
M(ORy−x (1)
(ここで、Rは1価の2座配位子を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。Rは水素、アルキル基、アシル基またはアリール基を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。Mはy価の金属原子を示す。yは1〜6である。xは1〜yの整数を示す。)
【請求項8】
(a)一般式(1)で表される金属キレート100重量部に対して(b)重量平均分子量が1000以上のポリマーが10〜30重量部含まれる請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
(b)重量平均分子量が1000以上のポリマーがポリシロキサンである請求項7または8記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリシロキサンが、少なくとも一般式(3)で表されるシラン化合物および一般式(4)で表されるエポキシ基含有シラン化合物を共重合成分とする請求項9記載の組成物。
Si(OR4−m (3)
(ここで、Rは水素、アルキル基、複素環基、アリール基またはアルケニル基を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。Rは水素、アルキル基、アシル基またはアリール基を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。mは1〜3の整数を示す。)
Si(OR4−n−l (4)
(ここで、Rは1つ以上のエポキシ基を鎖の一部に有するアルキル基を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。Rは水素、アルキル基、複素環基、アリール基またはアルケニル基を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。Rは水素、アルキル基、アシル基またはアリール基を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。lは0〜2の整数、nは1または2を示す。ただし、l+n≦3である。)
【請求項11】
前記金属キレートが下記一般式(2)で表されるアルミニウムキレートであることを特徴とする請求項7〜10いずれかに記載の組成物。
Al (2)
(ここで、Rは一般式(1)におけるものと同じであり、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。)
【請求項12】
ゲート絶縁層、ゲート電極、半導体層、ソース電極、およびドレイン電極を有する電界効果型トランジスタの製造方法であって、請求項7〜11いずれかに記載の組成物を基板上に塗布および乾燥して、前記ゲート絶縁層を形成する工程を含むことを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果型トランジスタ、組成物およびそれを用いた電界効果型トランジスタの製造方法に関する。より詳しくは、半導体素子や電界効果型トランジスタにおける絶縁層に適用可能な組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
低温かつ大気圧プロセスで形成可能な電界効果型トランジスタ(以下、FETという)は、樹脂などのフレキシブル基板を用いることでディスプレイの軽量化やフレキシブルディスプレイの実現が可能になることから、近年開発が活発化している。特に、低コストで簡便な印刷プロセスでFETを形成できることが望ましく、インク化が容易な有機半導体やカーボンナノチューブなどの素材が盛んに検討されている。
【0003】
このような低コストで簡便な印刷プロセスでFETを形成するためには、半導体材料だけではなくゲート絶縁材料などの全ての構成要素を印刷などの塗布プロセスで形成できることが好ましい。
【0004】
有機溶媒に可溶な塗布型ゲート絶縁材料の例としてポリビニルフェノール(例えば、非特許文献1参照)、ポリイミド(例えば、特許文献1参照)などのポリマーが挙げられる。しかしながら、ポリマーをゲート絶縁膜に用いたFETはフレキシブル性に優れるものの、移動度、しきい値電圧などのFET特性が十分でない。
【0005】
ポリマーに添加成分を加えた絶縁組成物として、ポリシロキサン中に金属アルコキシド化合物や金属キレート化合物を添加した例が開示されている(例えば、特許文献2、3参照)。これらの金属化合物を加えることによりポリシロキサンの重合や絶縁膜の硬化が促進される。また、高誘電率の絶縁膜を利用することでFET特性を向上させるため、誘電率の高いチタニウム化合物、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物、アルミニウム化合物などの有機金属化合物をポリマー中に添加する方法が知られている(例えば、特許文献4、5参照)。他には、ポリマーに金属原子と有機分子を添加することで、高い誘電率と絶縁性を有した塗布型ゲート絶縁材料が知られている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−4394号公報
【特許文献2】国際公開第2009/116373号
【特許文献3】特開2002−311591号公報
【特許文献4】特開2007−154164号公報
【特許文献5】特開2012−111864号公報
【特許文献6】特開2010−267657号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“APPLIED PHYSICS LETTERS,vol.82,p.4175−4177(2003年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、低コストで簡便な塗布プロセスが適用できる材料であって、十分なFET特性を発揮するに至らしめるものは得られていなかった。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑み、高移動度、低しきい値電圧でかつリーク電流が抑制されたFETおよびそれを作成するための材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。すなわちゲート絶縁層、ゲート電極、半導体層、ソース電極およびドレイン電極を有する電界効果型トランジスタであって、前記ゲート絶縁層は、ケイ素と炭素の結合を含む有機化合物と、金属原子および酸素原子の結合を含む金属化合物を含み、前記ゲート絶縁層において、炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対して前記金属原子が10〜60重量部含まれることを特徴とする電界効果型トランジスタである。
【0011】
また本発明は、(a)一般式(1)で表される金属キレート、(b)重量平均分子量が1000以上のポリマー、および(c)溶媒を含有し、(a)一般式(1)で表される金属キレート100重量部に対して(b)重量平均分子量が1000以上のポリマーが5〜90重量部含まれることを特徴とする組成物である。
【0012】
M(ORy−x (1)
(ここで、Rは1価の2座配位子を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。Rは水素、アルキル基、アシル基またはアリール基を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。Mはy価の金属原子を示す。yは1〜6である。xは1〜yの整数を示す。)
さらに本発明は、前記組成物を基板上に塗布および乾燥して、ゲート絶縁層を形成する工程を含む電界効果型トランジスタの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低コストで簡便な塗布プロセスが適用でき、高移動度、低しきい値電圧でかつリーク電流が抑制されたFETが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一態様であるFETを示した模式断面図
図2】本発明の別の態様であるFETを示した模式断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<電界効果型トランジスタ(FET)>
本発明のFETは、少なくともゲート絶縁層、ゲート電極、半導体層、ソース電極およびドレイン電極を有するFETである。図1および図2は、本発明のFETの例を示す模式断面図である。図1では、ゲート絶縁層3で覆われたゲート電極2を有する基板1上に、ソース電極5およびドレイン電極6が形成された後、さらにその上に半導体層4が形成されている。図2では、ゲート絶縁層3で覆われたゲート電極2を有する基板1上に半導体層4が形成された後、さらにその上にソース電極5およびドレイン電極6が形成されている。
【0016】
基板1に用いられる材料としては、例えば、シリコンウエハ、ガラス、アルミナ焼結体等の無機材料、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン等の有機材料が挙げられる。
【0017】
ゲート電極2、ソース電極5およびドレイン電極6に用いられる材料としては、一般的に電極として使用されうる導電材料であればいかなるものでもよく、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物、あるいは白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、モリブデン、アモルファスシリコンやポリシリコンなどの金属やこれらの合金、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体など、ヨウ素などのドーピングなどで導電率を向上させた導電性ポリマーなど、炭素材料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの電極材料は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
【0018】
本発明のFETにおいて、ゲート絶縁層3はケイ素と炭素の結合を含む有機化合物と、金属原子および酸素原子の結合を含む金属化合物を含む。有機化合物としては、後述の一般式(3)で表されるシラン化合物、後述の一般式(4)で表されるエポキシ基含有シラン化合物、またはこれらの縮合物またはこれらを共重合成分とするポリシロキサン等が挙げられる。これらの中でより好ましいのはポリシロキサンである。また金属化合物は、金属原子と酸素原子の結合を含むものであれば特に制限はなく、例えば金属酸化物、金属水酸化物等が例示される。金属化合物に含まれる金属原子は、金属キレートを形成するものであれば特に限定されないが、マグネシウム、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ルテニウム、パラジウム、インジウム、ハフニウム、白金などが挙げられる。中でも、入手容易性、コスト、金属キレートの安定性の点からアルミニウムが好ましい。
【0019】
ゲート絶縁層3において、炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対して前記金属原子が10〜180重量部含まれる。この範囲であることにより、FETの低しきい値電圧と低リーク電流が両立できる。より好ましい範囲は、炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対して前記金属原子が10〜60重量部の範囲である。さらに好ましくは、炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対して前記金属原子が17〜30重量部の範囲である。この範囲とすることで、リーク電流低減効果、しきい値電圧の低減効果がより大きくなる。
【0020】
ゲート絶縁層中の炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対する前記金属原子の重量比はX線光電子分光(XPS)により判定することができる。
【0021】
ゲート絶縁層3の膜厚は0.05〜5μmが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。この範囲の膜厚にすることにより、均一な薄膜形成が容易になり、さらにゲート電圧によって制御できないソース・ドレイン間電流を抑制し、高いオンオフ比が可能となる。膜厚は、原子間力顕微鏡やエリプソメトリ法などにより測定できる。
【0022】
上記のようなゲート絶縁層の作製方法は特に制限はないが、例えば後述の組成物を用いて後述の方法を適用することにより作製することができる。例えば、後述する(a)一般式(1)で表される金属キレート、(b)重量平均分子量が1000以上のポリマー、および(c)溶媒を含有し、(a)一般式(1)で表される金属キレート100重量部に対して(b)重量平均分子量が1000以上のポリマーが5〜90重量部含まれる組成物であるものから、概ね、ケイ素と炭素の結合を含む有機化合物と、金属原子および酸素原子の結合を含む金属化合物を含み、炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対して前記金属原子が10〜180重量部含まれるゲート絶縁層が形成される。好ましくは、(a)一般式(1)で表される金属キレート100重量部に対して(b)重量平均分子量が1000以上のポリマーが10〜30重量部含まれる組成物から、概ね、ケイ素と炭素の結合を含む有機化合物と、金属原子および酸素原子の結合を含む金属化合物を含み、炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対して前記金属原子が17〜30重量部含まれるゲート絶縁層が形成される。
【0023】
なお、上述の組成物とゲート絶縁層における原子の含有比率の関係は大まかな傾向であり、例えば金属原子の種類等によっては必ず上述の関係が満たされるわけではない。
【0024】
半導体層4に用いられる材料は、半導体性を示す材料であれば特に限定されず、キャリア移動度の高い材料が好ましく用いられる。また、低コストで簡便な塗布プロセスが適用できるものが好ましく、有機半導体やカーボン材料が好ましい例として挙げられる。有機半導体としては、具体的にポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリベンゾチオフェンなどのポリチオフェン類、ポリ(2,5−ビス(2−チエニル)−3,6−ジペンタデシルチエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(4,8−ジヘキシル−2,6−ビス(3−ヘキシルチオフェン−2−イル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)、ポリ(4−オクチル−2−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チアゾール)、ポリ(5,5’−ビス(4−オクチルチアゾール−2−イル)−2,2’−ビチオフェン)などのチオフェンユニットを主鎖中に含む化合物、ポリピロール類、ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリジアセチレン類、ポリカルバゾール類、ポリフラン、ポリベンゾフランなどのポリフラン類、ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどの含窒素芳香環を構成単位とするポリヘテロアリール類、アントラセン、ピレン、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ルブレンなどの縮合多環芳香族化合物、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどの含窒素芳香族化合物、4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルに代表される芳香族アミン誘導体、ビス(N−アリルカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類、銅ポルフィリンなどの金属ポルフィリン類、ジスチリルベンゼン誘導体、アミノスチリル誘導体、芳香族アセチレン誘導体、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸ジイミドなどの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、メロシアニン、フェノキサジン、ローダミンなどの有機色素などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0025】
カーボン材料としては、カーボンナノチューブ(以下、CNTという)、グラフェン、フラーレンなどが挙げられるが、塗布プロセスへの適性や高移動度の点でCNTが好ましい。CNTとしては、1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT、複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTのいずれを用いてもよく、これらを2種以上用いてもよい。半導体の特性を示すという観点から単層CNTを用いることが好ましく、中でも単層CNTが半導体型単層CNTを90重量%以上含むことがより好ましい。さらに好ましくは単層CNTが半導体型単層CNTを95重量%以上含むことである。半導体型単層CNTの含有比率は、可視−近赤外吸収スペクトルの吸収面積比により算出できる。CNTは、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)、レーザー・アブレーション法等の方法により得ることができる。さらに、表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したCNT(以下、CNT複合体という)は、溶液中での分散安定性に優れ、高移動度が得られるため、特に好ましい。
【0026】
共役系重合体がCNTの表面の少なくとも一部に付着した状態とは、CNT表面の一部、あるいは全部を共役系重合体が被覆した状態を意味する。共役系重合体がCNTを被覆できるのはそれぞれの共役系構造に由来するπ電子雲が重なることによって相互作用が生じるためと推測される。CNTが共役系重合体で被覆されているか否かは、被覆されたCNTの反射色が被覆されていないCNTの色から共役系重合体の色に近づくことで判別できる。定量的には元素分析やX線光電子分光法などによって付着物の存在とCNTに対する付着物の重量比を同定することができる。また、CNTに付着させる共役系重合体は、分子量、分子量分布や構造に関わらず用いることができる。
【0027】
共役系重合体をCNTに付着させる方法は、(I)溶融した共役系重合体中にCNTを添加して混合する方法、(II)共役系重合体を溶媒中に溶解させ、この中にCNTを添加して混合する方法、(III)CNTを溶媒中で予め超音波等で予備分散しておいた所に共役系重合体を添加し混合する方法、(IV)溶媒中に共役系重合体とCNTを入れ、この混合系に超音波を照射して混合する方法等が挙げられる。本発明では、複数の方法を組み合わせてもよい。
【0028】
本発明において、CNTの長さは、ソース電極とドレイン電極間の距離(チャネル長)よりも短いことが好ましい。CNTの平均長さは、チャネル長によるが、好ましくは2μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。一般に市販されているCNTは長さに分布があり、チャネル長よりも長いCNTが含まれることがあるため、CNTをチャネル長よりも短くする工程を加えることが好ましい。例えば、硝酸、硫酸などによる酸処理、超音波処理、または凍結粉砕法などにより短繊維状にカットする方法が有効である。またフィルターによる分離を併用することは、純度を向上させる点でさらに好ましい。
【0029】
また、CNTの直径は特に限定されないが、1nm以上100nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以下である。
【0030】
本発明では、CNTを溶媒中に均一分散させ、分散液をフィルターによってろ過する工程を設けることが好ましい。フィルター孔径よりも小さいCNTを濾液から得ることで、チャネル長よりも短いCNTを効率よく得られる。この場合、フィルターとしてはメンブレンフィルターが好ましく用いられる。ろ過に用いるフィルターの孔径は、チャネル長よりも小さければよく、0.5〜10μmが好ましい。
【0031】
上記のCNTを被覆する共役系重合体としては、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリ−p−フェニレン系重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体、チオフェンユニットとヘテロアリールユニットを繰り返し単位中に有するチオフェン−ヘテロアリーレン系重合体などが挙げられ、これらを2種以上用いてもよい。上記重合体は、単一のモノマーユニットが並んだもの、異なるモノマーユニットをブロック共重合したもの、ランダム共重合したもの、また、グラフト重合したものなどを用いることができる。
【0032】
また、半導体層4は、CNT複合体と有機半導体を混合して用いてもよい。有機半導体中にCNT複合体を均一に分散させることにより、有機半導体そのものの特性を維持しつつ、高い移動度を実現することが可能となる。
【0033】
CNT複合体と有機半導体を含む半導体層中のCNT複合体の含有量は、有機半導体100重量部に対して0.01重量部以上3重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。
【0034】
また半導体層4は、さらに絶縁性材料を含んでもよい。ここで用いられる絶縁性材料としては、本発明の絶縁材料組成物や、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリマー材料が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0035】
半導体層4は単層でも複数層でもよく、膜厚は1nm以上200nm以下が好ましく、100nm以下がさらに好ましい。この範囲の膜厚にすることにより、均一な薄膜形成が容易になり、さらにゲート電圧によって制御できないソース・ドレイン間電流を抑制し、FETのオンオフ比をより高くすることができる。膜厚は、原子間力顕微鏡やエリプソメトリ法などにより測定できる。
【0036】
半導体層4の形成方法としては、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、CVDなど乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から塗布法を用いることが好ましい。塗布法としては、前記組成物の説明と同様の方法を用いることができ、塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択できる。また、形成した塗膜に対して、大気下、減圧下または不活性ガス雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)でアニーリング処理を行ってもよい。
【0037】
また、ゲート絶縁層3と半導体層4の間に配向性層を設けることもできる。配向性層には、シラン化合物、チタン化合物、有機酸、ヘテロ有機酸など、公知の材料を用いることができ、特に有機シラン化合物が好ましい。前記有機シラン化合物としては、特に限定されないが、具体的には、フェニルトリクロロシラン、ナフチルトリクロロシラン、アントラセントリクロロシラン、ピレントリクロロシラン、ペリレントリクロロシラン、コロネントリクロロシラン、チオフェントリクロロシラン、ピロールトリクロロシラン、ピリジントリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、アントラセントリメトキシシラン、アントラセントリエトキシシラン、ピレントリメトキシシラン、ピレントリエトキシシラン、チオフェントリメトキシシラン、チオフェントリエトキシシラン、フェニルメチルトリクロロシラン、フェニルエチルトリクロロシラン、フェニルプロピルトリクロロシラン、フェニルブチルトリクロロシラン、フェニルヘキシルトリクロロシラン、フェニルオクチルトリクロロシラン、ナフチルメチルトリクロロシラン、ナフチルエチルトリクロロシラン、アントラセンメチルトリクロロシラン、アントラセンエチルトリクロロシラン、ピレンメチルトリクロロシラン、ピレンエチルトリクロロシラン、チオフェンメチルトリクロロシラン、チオフェンエチルトリクロロシラン、アミノフェニルトリクロロシラン、ヒドロキシフェニルトリクロロシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、ジクロロフェニルトリクロロシラン、トリクロロフェニルトリクロロシラン、ブロモフェニルトリクロロシラン、フルオロフェニルトリクロロシラン、ジフルオロフェニルトリクロロシラン、トリフルオロフェニルトリクロロシラン、テトラフルオロフェニルトリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルトリクロロシラン、ヨードフェニルトリクロロシラン、シアノフェニルトリクロロシランなどが挙げられる。
【0038】
配向性層は、好ましくは有機シラン化合物を含む単分子層または分子の集合体で形成されるが、配向性層の抵抗を考慮すると、配向性層の膜厚は10nm以下が好ましく、さらに好ましくは単分子膜である。またシラン化合物を含む配向性層は、シラン化合物中の官能基とゲート絶縁層表面とが化学結合して形成されたものも含む。前記官能基(例えば、トリクロロシリル基)とゲート絶縁層表面が化学的に反応することで、緻密で強固な膜を形成することができる。反応後の強固な膜の上に、未反応のシラン化合物が積層している場合は、洗浄などをすることによって、未反応のシラン化合物を除去し、前記官能基とゲート絶縁層表面とが化学結合して形成された単分子膜を得ることができる。
【0039】
配向性層の形成方法としては、特に限定されないが、CVD法などの気相法や、スピンコート法や浸漬引き上げ法などの液相を用いた方法が挙げられる。
【0040】
配向性層を形成する前に、その下地となるゲート絶縁層表面をUVオゾン法や酸素プラズマ法などの方法を用いて親水化処理してもよい。これにより、前記官能基とゲート絶縁層表面の化学反応を容易にすることができる。
【0041】
本発明では、半導体層4に対してゲート絶縁層3と反対側に第2絶縁層を有してもよい。ここで、半導体層に対してゲート絶縁層と反対側とは、例えば、半導体層の上側にゲート絶縁層を有する場合は半導体層の下側を指す。これにより、しきい値電圧やヒステリシスを低減することができ、高性能なFETが得られる。第2絶縁層に用いられる材料としては特に限定されないが、具体的には酸化シリコン、アルミナ等の無機材料、ポリイミドやその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサンやその誘導体、ポリビニルフェノールやその誘導体等などのポリマー材料、あるいは無機材料粉末とポリマー材料の混合物や有機低分子材料とポリマー材料の混合物を挙げることができる。これらの中でも、インクジェット等の塗布法で作製できるポリマー材料を用いることが好ましい。特に、ポリフルオロエチレン、ポリノルボルネン、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネートまたはこれらの誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、またはこれらを含む共重合体を用いると、しきい値電圧およびヒステリシス低減効果がより大きくなるため好ましく、ポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、またはこれらを含む共重合体が特に好ましい。
【0042】
第2絶縁層の膜厚は、一般的には50nm〜10μm、好ましくは100nm〜3μmである。第2絶縁層は単層でも複数層でもよい。また、1つの層を複数の絶縁性材料から形成してもよいし、複数の絶縁性材料を積層して形成しても構わない。
【0043】
上記第2絶縁層7の形成方法としては、特に限定されず、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、CVDなど乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から塗布法を用いることが好ましい。塗布法として、前記組成物の説明と同様の方法を用いることができる。
【0044】
形成されたFETは、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流をゲート電圧を変化させることによって制御することができる。FETの移動度は、下記の(a)式を用いて算出することができる。
【0045】
μ=(δId/δVg)L・D/(W・ε・ε・Vsd) (a)
ただしIdはソース・ドレイン間の電流、Vsdはソース・ドレイン間の電圧、Vgはゲート電圧、Dはゲート絶縁層の厚み、Lはチャネル長、Wはチャネル幅、εはゲート絶縁層の比誘電率、εは真空の誘電率(8.85×10−12F/m)である。
【0046】
しきい値電圧は、Id−Vgグラフにおける線形部分の延長線とVg軸との交点から求めることができる。また、Vg=−20Vにおけるゲート電流値をリーク電流とした。
【0047】
<組成物>
本発明の組成物は、(a)一般式(1)で表される金属キレート、(b)重量平均分子量が1000以上のポリマー、および(c)溶媒を含有し、(a)一般式(1)で表される金属キレート100重量部に対して(b)重量平均分子量が1000以上のポリマーが5〜90重量部含まれることを特徴とする。
【0048】
M(ORy−x (1)
ここで、Rは1価の2座配位子を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。Rは水素、アルキル基、アシル基またはアリール基を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。Mはy価の金属原子を示す。yは1〜6である。xは1〜yの整数を示す。
【0049】
を表す1価の2座配位子とは、配位の対象となる金属に対して共有結合する基と配位結合する基をそれぞれ一つずつ有する化合物を示す。共有結合する基とは、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基など脱プロトンされることにより金属原子との共有結合が可能になる基が挙げられる。配位結合する基とは、カルボニル基、チオカルボニル基、ニトリル基、アミノ基、イミノ基、ホスフィンオキサイド基などが挙げられる。Rの炭素数は、特に限定されないが、膜形成時の熱分解性の観点から、3以上20以下が好ましく、より好ましくは3以上12以下である。
【0050】
におけるアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。置換基を有している場合の追加の置換基には特に制限はなく、例えば、アルコキシ基、アリール基等を挙げることができ、これらはさらに置換基を有していてもよい。また、アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、1以上20以下が好ましく、より好ましくは1以上8以下である。
【0051】
におけるアシル基とは、アセチル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基など、カルボニル結合の一方を脂肪族炭化水素基または芳香族基で置換した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基または芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。アシル基の炭素数は、特に限定されないが、2以上40以下の範囲が好ましい。
【0052】
におけるアリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基、およびフラニル基、チオフェニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ピリジル基、キノリニル基などの芳香族複素環基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は、特に限定されないが、3〜40の範囲が好ましい。
【0053】
また上記で置換基として挙げたアルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など、エーテル結合の一方を脂肪族炭化水素基で置換した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は、特に限定されないが、1以上20以下の範囲が好ましい。
【0054】
y価の金属原子としては、金属キレートを形成するものであれば特に限定されないが、マグネシウム、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ルテニウム、パラジウム、インジウム、ハフニウム、白金などが挙げられる。yは1〜6であり、金属原子の種類に応じて定まる値である。中でも、入手容易性やコストの点からアルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびインジウムからなる群より選ばれることが好ましい。
【0055】
金属キレートの中でも安定性に優れる下記一般式(2)で表されるアルミニウムキレートが好ましい。
【0056】
Al (2)
ここで、Rは一般式(1)におけるものと同じであり、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。
【0057】
一般式(1)および(2)において、Rは、中でも、低コストで入手でき、安定なキレート形成を可能とするβジケトン誘導体またはβケトエステル誘導体が好ましい。
【0058】
βジケトン誘導体としては、具体的には2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−デカンジオン、2,4−ドデカンジオン、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,6、6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,6、6−テトラメチル−3,5−オクタンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、3−エチル−3,5−ヘプタンジオン、ベンゾイルアセトン、ジベンソイルメタン、1−(ピリジル−2−イル)−1,3−ブタンジオン、1−(ピリジル−2−イル)−2,5−ペンタンジオン、1−アミノ−2,4−ペンタンジオンなどが挙げられる。
【0059】
βケトエステル誘導体としては、具体的にはメチルアセチルアセテート、エチルアセチルアセテート、イソプロピルアセチルアセテート、t−ブチルアセチルアセテート、n−ブチルアセチルアセテート、フェニルアセチルアセテート、エチルプロパノイルアセテート、エチルブタノイルアセテート、エチルペンタノイルアセテート、エチルヘキサノイルアセテート、エチルオクタノイルアセテート、エチルデカノイルアセテート、エチルドデカノイルアセテート、エチル−2−メチルプロパノイルアセテート、エチル−2、2−ジメチルブタノイルアセテート、エチルベンゾイルアセテート、エチル−p−アニソイルアセテート、エチル−2−ピリジロイルアセテート、エチルアクリリルアセテート、1−アミノブタノイルアセテート、エチル−α−アセチルプロパネートなどが挙げられる。
【0060】
一般式(2)で表されるアルミニウムキレートの中でも、溶媒中へのキレートの溶解性や組成物の安定性を考慮すると、一般式(2)における3つのRのうち少なくとも1つが他の2つとは異なることが好ましい。同様の理由で、Rの少なくとも一つがβケトエステル誘導体であることが好ましい。
【0061】
上記のような一般式(1)で挙げられる金属キレートとして、具体的には以下のような例が挙げられる。アルミニウムキレートとしては、ジエトキシアルミニウム(2,4−ペンタンジオナート)、ジイソプロポキシアルミニウム(2,4−ペンタンジオナート)、ジエトキシアルミニウム(2,4−ヘキサンジオナート)、ジエトキシアルミニウム(3,5−ヘキサンジオナート)、ジエトキシアルミニウム(2,4−オクタンジオナート)、ジエトキシアルミニウムベンゾイルアセトナート、ジエトキシアルミニウム(1−(ピリジル−2−イル)−1,3−ブタンジオナート)、ジエトキシアルミニウムメチルアセチルアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムメチルアセチルアセテート、ジエトキシアルミニウムエチルアセチルアセテート、ジエトキシアルミニウムイソプロピルアセチルアセテート、ジエトキシアルミニウム−t−ブチルアセチルアセテート、ジエトキシアルミニウムエチルブタノイルアセテート、ジエトキシアルミニウムエチルベンゾイルアセテート、エトキシアルミニウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、イソプロポキシアルミニウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、エトキシアルミニウムビス(2,4−ヘキサンジオナート)、エトキシアルミニウムビス(3,5−ヘキサンジオナート)、エトキシアルミニウムビス(2,4−オクタンジオナート)、エトキシアルミニウムビス(ベンゾイルアセトナート)、エトキシアルミニウムビス(1−(ピリジル−2−イル)−1,3−ブタンジオナート)、エトキシアルミニウムビス(エチルアクリリルアセテート)、エトキシアルミニウムビス(メチルアセチルアセテート)、イソプロポキシアルミニウムビス(メチルアセチルアセテート)、エトキシアルミニウムビス(エチルアセチルアセテート)、エトキシアルミニウムビス(イソプロピルアセチルアセテート)、エトキシアルミニウムビス(t−ブチルアセチルアセテート)、エトキシアルミニウムビス(エチルブタノイルアセテート)、エトキシアルミニウムビス(エチルベンゾイルアセテート)、エトキシアルミニウムビス(エチルアクリリルアセテート)、アルミニウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、アルミニウムトリス(1,3−テトラフルオロ−2,4−ペンタンジオナート)、アルミニウムトリス(2,4−ヘキサンジオナート)、アルミニウムトリス(3,5−ヘキサンジオナート)、アルミニウムトリス(2,4−オクタンジオナート)、アルミニウムトリス(ベンゾイルアセトナート)、アルミニウムトリス(1−(ピリジル−2−イル)−1,3−ブタンジオナート)、アルミニウムトリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、アルミニウムトリス(2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、アルミニウムトリス(2,2,6、6−テトラメチル−3,5−オクタンジオナート)、アルミニウムトリス(1−アミノ−2,4−ペンタンジオナート)、アルミニウムトリス(メチルアセチルアセテート)、アルミニウムトリス(メチルアセチルアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセチルアセテート)、アルミニウムトリス(イソプロピルアセチルアセテート)、アルミニウムトリス(t−ブチルアセチルアセテート)、アルミニウムトリス(エチルブタノイルアセテート)、アルミニウムトリス(エチルペンタノイルアセテート)、アルミニウムトリス(エチル−2−メチルプロパノイルアセテート)、アルミニウムトリス(エチルベンゾイルアセテート)、アルミニウムトリス(エチル−2−ピリジロイルアセテート)、アルミニウムトリス(1−アミノブタノイルアセテート)、アルミニウムトリス(エチル−α−アセチルプロパネート)、アルミニウムトリス(エチルアクリリルアセテート)、エトキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)モノ(イソプロピルアセトアセテート)、エトキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)モノ(3,5−ヘキサンジオナート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(イソプロピルアセトアセテート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(3,5−ヘキサンジオナート)、アルミニウムトリス(ジエチルマロネート)、アルミニウムトリス(ジオクチルマロネート)、アルミニウムトリス(ジエチル(メチルマロネート))、アルミニウムトリス(ジエチル(フェニルマロネート))、アルミニウムトリス(エチルチオアセトアセテート)、アルミニウムトリス(2−アセチルフェノラート)、アルミニウムトリス(2−(ピリジル−2−イル)フェノラート)などが挙げられる。
【0062】
ジルコニウムキレートとしては、トリスエトキシジルコニウム(2,4−ペンタンジオナート)、トリスイソプロポキシジルコニウム(2,4−ペンタンジオナート)、トリスエトキシジルコニウム(2,4−ヘキサンジオナート)、トリスエトキシジルコニウム(3,5−ヘキサンジオナート)、トリスエトキシジルコニウムベンゾイルアセトナート、トリスエトキシジルコニウムメチルアセチルアセテート、トリスイソプロポキシジルコニウムメチルアセチルアセテート、トリスエトキシジルコニウムエチルアセチルアセテート、トリスエトキシジルコニウムイソプロピルアセチルアセテート、トリスエトキシジルコニウム−t−ブチルアセチルアセテート、トリスエトキシジルコニウムエチルブタノイルアセテート、トリスエトキシジルコニウムエチルベンゾイルアセテート、ジエトキシジルコニウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、ジエトキシジルコニウムビス(2,4−ヘキサンジオナート)、ジエトキシジルコニウムビス(3,5−ヘキサンジオナート)、ジエトキシジルコニウムビス(ベンゾイルアセトナート)、ジエトキシジルコニウムビス(メチルアセチルアセテート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(メチルアセチルアセテート)、ジエトキシジルコニウムビス(エチルアセチルアセテート)、ジエトキシジルコニウムビス(イソプロピルアセチルアセテート)、ジエトキシジルコニウムビス(t−ブチルアセチルアセテート)、ジエトキシジルコニウムビス(エチルブタノイルアセテート)、ジエトキシジルコニウムビス(エチルベンゾイルアセテート)、エトキシジルコニウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、イソプロポキシジルコニウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、エトキシジルコニウムトリス(2,4−ヘキサンジオナート)、エトキシジルコニウムトリス(3,5−ヘキサンジオナート)、エトキシジルコニウムトリス(ベンゾイルアセトナート)、エトキシジルコニウムトリス(メチルアセチルアセテート)、イソプロポキシジルコニウムトリス(メチルアセチルアセテート)、エトキシジルコニウムトリス(エチルアセチルアセテート)、エトキシジルコニウムトリス(イソプロピルアセチルアセテート)、エトキシジルコニウムトリス(t−ブチルアセチルアセテート)、エトキシジルコニウムトリス(エチルブタノイルアセテート)、エトキシジルコニウムトリス(エチルベンゾイルアセテート)、ジルコニウムテトラキス(2,4−ペンタンジオナート)、ジルコニウムテトラキス(2,4−ヘキサンジオナート)、ジルコニウムテトラキス(3,5−ヘキサンジオナート)、ジルコニウムテトラキス(ベンゾイルアセトナート)、ジルコニウムテトラキス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、ジルコニウムテトラキス(2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、ジルコニウムテトラキス(メチルアセチルアセテート)、ジルコニウムテトラキス(メチルアセチルアセテート)、ジルコニウムテトラキス(エチルアセチルアセテート)、ジルコニウムテトラキス(イソプロピルアセチルアセテート)、ジルコニウムテトラキス(t−ブチルアセチルアセテート)、ジルコニウムテトラキス(エチルブタノイルアセテート)、ジルコニウムテトラキス(エチル−2−メチルプロパノイルアセテート)、ジルコニウムテトラキス(エチルベンゾイルアセテート)、ジルコニウムテトラキス(ジエチルマロネート)、ジルコニウムテトラキス(ジエチル(メチルマロネート))、エトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(イソプロピルアセトアセテート)、エトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(3,5−ヘキサンジオナート)、ジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)ビス(イソプロピルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)モノ(3,5−ヘキサンジオナート)などが挙げられる。
【0063】
チタンキレートとしてはトリスエトキシチタン(2,4−ペンタンジオナート)、トリスイソプロポキシチタン(2,4−ペンタンジオナート)、トリスエトキシチタン(2,4−ヘキサンジオナート)、トリスエトキシチタン(3,5−ヘキサンジオナート)、トリスエトキシチタンベンゾイルアセトナート、トリスエトキシチタンメチルアセチルアセテート、トリスイソプロポキシチタンメチルアセチルアセテート、トリスエトキシチタンエチルアセチルアセテート、トリスエトキシチタンイソプロピルアセチルアセテート、トリスエトキシチタンt−ブチルアセチルアセテート、トリスエトキシチタンエチルブタノイルアセテート、トリスエトキシチタンエチルベンゾイルアセテート、ジエトキシチタンビス(2,4−ペンタンジオナート)、ジイソプロポキシチタンビス(2,4−ペンタンジオナート)、ジエトキシチタンビス(2,4−ヘキサンジオナート)、ジエトキシチタンビス(3,5−ヘキサンジオナート)、ジエトキシチタンビス(ベンゾイルアセトナート)、ジエトキシチタンビス(メチルアセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(メチルアセチルアセテート)、ジエトキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)、ジエトキシチタンビス(イソプロピルアセチルアセテート)、ジエトキシチタンビス(t−ブチルアセチルアセテート)、ジエトキシチタンビス(エチルブタノイルアセテート)、ジエトキシチタンビス(エチルベンゾイルアセテート)、エトキシチタントリス(2,4−ペンタンジオナート)、イソプロポキシチタントリス(2,4−ペンタンジオナート)、エトキシチタントリス(2,4−ヘキサンジオナート)、エトキシチタントリス(3,5−ヘキサンジオナート)、エトキシチタントリス(ベンゾイルアセトナート)、エトキシチタントリス(メチルアセチルアセテート)、イソプロポキシチタントリス(メチルアセチルアセテート)、エトキシチタントリス(エチルアセチルアセテート)、エトキシチタントリス(イソプロピルアセチルアセテート)、エトキシチタントリス(t−ブチルアセチルアセテート)、エトキシチタントリス(エチルブタノイルアセテート)、エトキシチタントリス(エチルベンゾイルアセテート)、チタンテトラキス(2,4−ペンタンジオナート)、チタンテトラキス(2,4−ヘキサンジオナート)、チタンテトラキス(3,5−ヘキサンジオナート)、チタンテトラキス(ベンゾイルアセトナート)、チタンテトラキス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、チタンテトラキス(2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、チタンテトラキス(メチルアセチルアセテート)、チタンテトラキス(メチルアセチルアセテート)、チタンテトラキス(エチルアセチルアセテート)、チタンテトラキス(イソプロピルアセチルアセテート)、チタンテトラキス(t−ブチルアセチルアセテート)、チタンテトラキス(エチルブタノイルアセテート)、チタンテトラキス(エチル−2−メチルプロパノイルアセテート)、チタンテトラキス(エチルベンゾイルアセテート)、チタンテトラキス(ジエチルマロネート)、チタンテトラキス(ジオクチルマロネート)、チタンテトラキス(ジエチル(メチルマロネート))、トキシチタンビス(エチルアセトアセテート)モノ(3,5−ヘキサンジオナート)、チタンビス(エチルアセトアセテート)ビス(イソプロピルアセトアセテート)、チタントリス(エチルアセトアセテート)モノ(3,5−ヘキサンジオナート)などが挙げられる。
【0064】
インジウムキレートとしては、ジエトキシインジウム(2,4−ペンタンジオナート)、ジイソプロポキシインジウム(2,4−ペンタンジオナート)、ジエトキシインジウム(2,4−ヘキサンジオナート)、ジエトキシインジウム(3,5−ヘキサンジオナート)、ジエトキシインジウムベンゾイルアセトナート、ジエトキシインジウムメチルアセチルアセテート、ジイソプロポキシインジウムメチルアセチルアセテート、ジエトキシインジウムエチルアセチルアセテート、ジエトキシインジウムイソプロピルアセチルアセテート、ジエトキシインジウムt−ブチルアセチルアセテート、ジエトキシインジウムエチルブタノイルアセテート、ジエトキシインジウムエチルベンゾイルアセテート、エトキシインジウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、イソプロポキシインジウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、エトキシインジウムビス(2,4−ヘキサンジオナート)、エトキシインジウムビス(3,5−ヘキサンジオナート)、エトキシインジウムビス(ベンゾイルアセトナート)、エトキシインジウムビス(メチルアセチルアセテート)、イソプロポキシインジウムビス(メチルアセチルアセテート)、エトキシインジウムビス(エチルアセチルアセテート)、エトキシインジウムビス(イソプロピルアセチルアセテート)、エトキシインジウムビス(t−ブチルアセチルアセテート)、エトキシインジウムビス(エチルブタノイルアセテート)、エトキシインジウムビス(エチルベンゾイルアセテート)、インジウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、インジウムトリス(2,4−ヘキサンジオナート)、インジウムトリス(3,5−ヘキサンジオナート)、インジウムトリス(ベンゾイルアセトナート)、インジウムトリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、インジウムトリス(2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、インジウムトリス(メチルアセチルアセテート)、インジウムトリス(メチルアセチルアセテート)、インジウムトリス(エチルアセチルアセテート)、インジウムトリス(イソプロピルアセチルアセテート)、インジウムトリス(t−ブチルアセチルアセテート)、インジウムトリス(エチルブタノイルアセテート)、インジウムトリス(エチル−2−メチルプロパノイルアセテート)、インジウムトリス(エチルベンゾイルアセテート)、インジウムトリス(ジエチルマロネート)、インジウムトリス(ジオクチルマロネート)、インジウムトリス(ジエチル(メチルマロネート))などが挙げられる。
【0065】
マグネシウムキレートとしては、マグネシウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、マグネシウムビス(エチルアセチルアセテート)などが挙げられる。
【0066】
クロムキレートとしては、クロムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、クロムトリス(エチルアセチルアセテート)などが挙げられる。
【0067】
マンガンキレートとしては、マンガン(II)ビス(2,4−ペンタンジオナート)、マンガン(II)ビス(エチルアセチルアセテート)、マンガン(III)トリス(2,4−ペンタンジオナート)、マンガン(III)トリス(エチルアセチルアセテート)などが挙げられる。
【0068】
コバルトキレートとしては、コバルトトリス(2,4−ペンタンジオナート)、コバルトトリス(エチルアセチルアセテート)などが挙げられる。
【0069】
ニッケルキレートとしては、ニッケルビス(2,4−ペンタンジオナート)、ニッケルビス(エチルアセチルアセテート)などが挙げられる。
【0070】
銅キレートとしては、銅ビス(2,4−ペンタンジオナート)、銅ビス(エチルアセチルアセテート)などが挙げられる。
【0071】
亜鉛キレートとしては、亜鉛ビス(2,4−ペンタンジオナート)、亜鉛ビス(エチルアセチルアセテート)、ガリウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)などが挙げられる。
【0072】
ガリウムキレートとしては、ガリウムトリス(エチルアセチルアセテート)などが挙げられる。
【0073】
ルテニウムキレートとしては、ルテニウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、ルテニウムトリス(エチルアセチルアセテート)などが挙げられる。
【0074】
パラジウムキレートとしては、パラジウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、パラジウムビス(エチルアセチルアセテート)などが挙げられる。
【0075】
ハフニウムキレートとしては、ハフニウムテトラキスキス(2,4−ペンタンジオナート)、ハフニウムテトラキスキス(エチルアセチルアセテート)などが挙げられる。
【0076】
白金キレートとしては、白金ビス(2,4−ペンタンジオナート)、白金ビス(エチルアセチルアセテート)などが挙げられる。
【0077】
(a)一般式(1)で表される金属キレートは、例えば次の方法で得ることができる。金属アルコキシド中に規定量の配位子を滴下した後、加熱還流によりアルコキシド由来のアルコール成分を留出させることで所望の金属キレートを合成できる。また、2種類以上の配位子を順番に滴下させることで、異なる配位子を有する金属キレートが得られる。
【0078】
本発明の組成物は(b)重量平均分子量が1000以上のポリマーを含有する。この重量平均分子量(Mw)は、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定されるポリスチレン換算値である。Mwが1000より小さいと製膜性に与える効果が小さくなり、良質な膜形成が難しくなる。Mwは大きいほど膜形成性がよくなるので好ましい。ただし、あまり大きすぎると塗布プロセスにおけるフィルター透過性の悪化が懸念される。したがって、Mwは50万以下が好ましく、さらに好ましくは20万以下である。
【0079】
また、本発明の組成物中の(b)重量平均分子量が1000以上のポリマーの含有量は、(a)一般式(1)で表される金属キレート100重量部に対して5〜90重量部の範囲である。この範囲であることにより、良好な膜形成性が確保でき、組成物をFETのゲート絶縁膜に適用した場合の低しきい値電圧と低リーク電流が両立できる。(b)重量平均分子量が1000以上のポリマーの含有量が90重量部より多いと組成物をFETのゲート絶縁膜に適用した場合の低しきい値電圧と低リーク電流が両立しなくなってしまい、逆に5重量部より少ないと膜形成性が低下し、良質な絶縁膜を得ることは困難になる。より好ましい範囲は、(a)一般式(1)で表される金属キレート100重量部に対して(b)重量平均分子量が1000以上のポリマーの含有量が5〜60重量部の範囲である。ポリマーの含有量を60重量部以下とすることで、リーク電流低減効果がより大きくなる。さらに好ましい範囲は、(a)一般式(1)で表される金属キレート100重量部に対して(b)重量平均分子量が1000以上のポリマーの含有量が10〜60重量部の範囲である。ポリマーの含有量を10重量部以上とすることで、プロセス数を増やすことなくリーク低減に必要な膜厚を確保できる。さらに好ましい範囲は、(a)一般式(1)で表される金属キレート100重量部に対して(b)重量平均分子量が1000以上のポリマーの含有量が10〜30重量部の範囲である。ポリマーの含有量を30重量部以下とすることで、しきい値電圧の低減効果がより顕著になる。
【0080】
(b)重量平均分子量が1000以上のポリマーとしては、ヒドロキシル基、シラノール基、カルボキシル基、アミノ基およびメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を繰り返し単位中に有することが好ましい。これらの官能基は組成物の熱硬化時に金属キレートと反応するため、リーク電流が抑制され溶媒耐性にも優れた強固な膜形成を可能とする。このようなポリマーとして、具体的にはセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、フッ素置換ポリエチレンおよびこれらの誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらを含む共重合体などが挙げられる。これらの中でもポリシロキサンは絶縁性が高く、低温硬化が可能であるためより好ましい。
【0081】
前記ポリシロキサンの中でも、少なくとも一般式(3)で表されるシラン化合物および一般式(4)で表されるエポキシ基含有シラン化合物を共重合成分とするポリシロキサンが特に好ましい。
【0082】
Si(OR4−m (3)
ここで、Rは水素、アルキル基、複素環基、アリール基またはアルケニル基を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。Rは水素、アルキル基、アシル基またはアリール基を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。mは1〜3の整数を示す。
【0083】
Si(OR4−n−l (4)
ここで、Rは1つ以上のエポキシ基を鎖の一部に有するアルキル基を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。Rは水素、アルキル基、複素環基、アリール基またはアルケニル基を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。Rは水素、アルキル基、アシル基またはアリール基を示し、Rが複数存在する場合、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。lは0〜2の整数、nは1または2を示す。ただし、l+n≦3である。
【0084】
〜Rにおけるアルキル基、アシル基およびアリール基の説明は、上記Rの説明と同様である。
【0085】
およびRにおける複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、アミド環などの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環から導かれる基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は、特に限定されないが、2以上20以下の範囲が好ましい。
【0086】
およびRにおけるアルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、2以上20以下の範囲が好ましい。
【0087】
のエポキシ基を鎖の一部に有するアルキル基とは、隣り合う2つの炭素原子が1つの酸素原子と結合して形成される3員環エーテル構造を鎖の一部に有するアルキル基を示す。これは、アルキル基において炭素が最も長く連続する部分である主鎖に含まれる隣り合う2つの炭素原子が利用される場合と、主鎖以外の部分、いわゆる側鎖に含まれる隣り合う2つの炭素原子が利用される場合のいずれも含む。
【0088】
ポリシロキサンの共重合成分として一般式(3)で表されるシラン化合物を導入することにより、可視光領域において高い透明性を保ちつつ、組成物を用いて得られる膜の絶縁性、耐薬品性を高め、かつ組成物をFETのゲート絶縁膜に適用した場合にヒステリシスの原因となる絶縁膜内のトラップが少ない絶縁膜を形成できる。
【0089】
また、一般式(3)におけるm個のRの少なくとも1つがアリール基であると、絶縁膜の柔軟性が向上し、クラック発生が防止できるため好ましい。
【0090】
本発明に用いられる一般式(3)で表されるシラン化合物としては、具体的に、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、α−ナフチルトリメトキシシラン、β−ナフチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリエトキシシラン、トリフルオロエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリイソプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロエチルメチルジメトキシシラン、トリフルオロエチルメチルジエトキシシラン、トリフルオロエチルメチルジイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジイソプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジイソプロポキシシラン、トリフルオロエチルエチルジメトキシシラン、トリフルオロエチルエチルジエトキシシラン、トリフルオロエチルエチルジイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、トリルオロプロピルエチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジイソプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジイソプロポキシシラン、p−トリフルオロフェニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0091】
上記シラン化合物のうち、架橋密度を上げ、耐薬品性と絶縁特性を向上させるために、m=1であるビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシシラン、フェニルトリメトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、α−ナフチルトリメトキシシラン、β−ナフチルトリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリメトキシシラン、トリメトキシシラン、p−トリフルオロフェニルトリエトキシシランを用いることが好ましい。また、量産性の観点から、Rがメチル基であるビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、α−ナフチルトリメトキシシラン、β−ナフチルトリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリメトキシシラン、トリメトキシシランを用いることが特に好ましい。
【0092】
また、一般式(3)で表されるシラン化合物を2種以上組み合わせることが好ましい例として挙げられる。中でも、アルキル基を有するシラン化合物とアリール基を有するシラン化合物を組み合わせることにより、高い絶縁性とクラック防止のための柔軟性を両立できるため、特に好ましい。
【0093】
ポリシロキサンの共重合成分として一般式(4)で表されるエポキシ基含有シラン化合物を導入することにより、絶縁膜上へのレジストや半導体塗液の塗布性を良好にすることができる。
【0094】
本発明に用いられる一般式(4)で表されるエポキシ基含有シラン化合物としては、具体的に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0095】
これらのうち、架橋密度を上げ、耐薬品性と絶縁特性を向上させるために、n=1、l=0であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシランを用いることが好ましい。また、量産性の観点から、Rがメチル基であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシランを用いることが特に好ましい。
【0096】
上記ポリシロキサンは、一般式(3)および(4)で表されるシラン化合物以外に、その他のシラン化合物を共重合成分として含むことができる。その他のシラン化合物としては、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが挙げられる。
【0097】
また、ポリシロキサンのうち、一般式(4)で表されるエポキシ基含有シラン化合物に由来する構成単位の含有量は、ポリシロキサンの共重合成分であるシラン化合物の全構成単位に対して0.1モル%〜40モル%であることが好ましい。0.1モル%以上であれば、有機半導体塗液のはじきを抑制した良好な塗布性を得ることができ、1モル%以上がより好ましい。
【0098】
上記ポリシロキサンは、例えば次の方法で得ることができる。溶媒中にエポキシ基含有シラン化合物を含む全シラン化合物を溶解し、ここに酸触媒および水を1〜180分かけて添加した後、室温〜80℃で1〜180分加水分解反応させる。加水分解反応時の温度は、室温〜55℃がより好ましい。この反応液を、50℃以上、溶媒の沸点以下で1〜100時間加熱し、縮合反応を行うことにより、エポキシ基含有ポリシロキサンを得ることができる。この場合、一般式(4)で表されるエポキシ基含有シラン化合物のエポキシ基に水を付加させてジオールを形成させるため、全シラン化合物中のアルコキシル基と当量の水に加えて、エポキシ基と当量以上の水を添加する必要がある。
【0099】
組成物が(a)一般式(1)で表される金属キレートと(b)重量平均分子量が1000以上のポリマーを含むことは、元素分析、核磁気共鳴分析、赤外分光分析、X線光電子分光等の各種有機・無機分析手法を単独または複数組み合わせることにより判定することができる。
【0100】
(c)溶媒としては、特に限定されないが、具体的にはエチレングリゴールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のアセテート類、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これら溶媒は単独あるいは2種以上用いてもかまわない。
【0101】
本発明の組成物は、さらに(d)4官能シラン、または、4官能シランを加水分解、縮合させて得られる4官能シランオリゴマー(以下、「4官能シランまたは4官能シランオリゴマー」という)を含有することが好ましい。4官能シランまたは4官能シランオリゴマーを含有することにより、より低温で高密度な膜形成が可能になる。4官能シランとしては、具体的にはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−t−ブトキシシランなどが挙げられる。4官能シランオリゴマーとしては、具体的にはメチルシリケート51、メチルシリケート53A、エチルシリケート40、エチルシリケート48、EMS485(以上、商品名、コルコート(株)製)、Mシリケート51(商品名、多摩化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0102】
本発明の組成物は、さらに(e)粒子を含有してもよい。(e)粒子は絶縁膜の平坦性の観点から、粒子径100nm以下が好ましく、さらに好ましくは50nm以下である。粒子径とは、数平均としての平均粒子径を示し、粒子を乾燥後、焼成し、得られた粒子の比表面積を測定した後に、粒子を球と仮定して比表面積から平均粒子径を求める。用いる機器は特に限定されないが、アサップ2020(Micromeritics社製)などを用いることができる。また、ポリシロキサンとの相溶性の観点からゾル状態であることが好ましい。(e)粒子の具体例として、シリカ粒子、チタニア粒子、チタン酸バリウム粒子、ジルコニア粒子、硫酸バリウム粒子などが挙げられる。
【0103】
本発明の組成物は、さらに(f)光により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」という)を含有してもよい。(f)光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物などを例として挙げることができる。
【0104】
オニウム塩化合物の具体的な例としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、オキソニウム塩などを挙げることができる。好ましいオニウム塩としてはジフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフレート(商品名「TPS−105」 みどり化学(株)製)、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムトリフレート(商品名「WPAG−339」和光純薬工業(株)製)、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフレート(商品名「WPAG−370」和光純薬工業(株)製)、トリフェニルスルホニウムノナフレート(商品名「TPS−109」みどり化学(株)製)、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、(ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウムトルエンスルホネートなどが挙げられる。
【0105】
ハロゲン含有化合物の具体的な例としては、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物などが挙げられる。好ましいハロゲン含有化合物としては1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどを挙げることができる。
【0106】
ジアゾケトン化合物の具体的な例としては、1,3−ジケト−2−ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物などが挙げられる。好ましいジアゾケトン化合物は1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸と2,2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンとのエステル、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸と1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンとのエステルなどを挙げることができる。
【0107】
ジアゾメタン化合物の具体的な例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル−p−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル(ベンゾイル)ジアゾメタン等を挙げることができる。
【0108】
スルホン化合物の具体的な例としては、β−ケトスルホン化合物、β−スルホニルスルホン化合物などが挙げられる。好ましい化合物としては、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタンなどが挙げられる。
【0109】
スルホン酸エステル化合物の例としては、アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートなどが挙げられる。具体的な例としてはベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネートなどを挙げることができる。
【0110】
スルホンイミド化合物の具体的な例としてはN−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)フタルイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−フルオロフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド等を挙げることができる。
【0111】
上記以外にも(f)光酸発生剤として、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジルトリフレート(商品名「NDI−105」 みどり化学(株)製)、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジルトシレート(商品名「NDI−101」 みどり化学(株)製)、4−メチルフェニルスルフォニルオキシイミノ−α−(4−メトキシフェニル)アセトニトリル(商品名「PAI−101」 みどり化学(株)製)、トリフルオロメチルスルフォニルオキシイミノ−α−(4−メトキシフェニル)アセトニトリル(商品名「PAI−105」 みどり化学(株)製)、9−カンファースルフォニルオキシイミノ α−4−メトキシフェニルアセトニトリル(商品名「PAI−106」 みどり化学(株)製)、1,8−ナフタルイミジルブタンスルフォネート(商品名「NAI−1004」 みどり化学(株)製)、1,8−ナフタルイミジルトシレート(商品名「NAI−101」 みどり化学(株)製)、1,8−ナフタルイミジルトリフレート(商品名「NAI−105」 みどり化学(株)製)、1,8−ナフタルイミジル ノナフルオロブタンスルフォネート(商品名「NAI−109」 みどり化学(株)製)等が挙げられる。これらのうち、特に好ましくは、TPS−105、WPAG−339、WPAG−370、TPS−109、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、NDI−105、PAI−101、NAI−105である。
【0112】
さらに(f)光酸発生剤は、(g)増感剤と組み合わせて用いられることが好ましい。(g)増感剤は、光退色反応で着色を生じないため、ゲート絶縁膜に残存しても、高い透明性を維持しつつ、高感度化を達成できる。増感剤としては特に制限はなく公知の材料を用いることができるが、9,10−二置換アントラセン系化合物が特に好ましい。
【0113】
9,10−二置換アントラセン系化合物としては、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ビス(4−メトキシフェニル)アントラセン、9,10−ビス(トリフェニルシリル)アントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジペンタオキシアントラセン、2―t−ブチル−9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ビス(トリメチルシリルエチニル)アントラセンなどが挙げられる。これらの中で、特に好ましい化合物は、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセンである。
【0114】
本発明の組成物は、必要に応じて、粘度調整剤、界面活性剤、安定化剤などを含有することができる。
【0115】
界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤などを挙げることができる。
【0116】
フッ素系界面活性剤の具体的な例としては、1,1,2,2−テトラフロロオクチル(1,1,2,2−テトラフロロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフロロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロデカン、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N′−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルスルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)、モノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルなどが挙げられる。また、市販品としては、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、エフトップEF301、同303、同352(新秋田化成(株)製)、フロラードFC−430、同FC−431(住友スリーエム(株)製))、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭硝子(株)製)、BM−1000、BM−1100(裕商(株)製)、NBX−15、FTX−218((株)ネオス製)などを挙げることができる。
【0117】
シリコーン系界面活性剤としては、SH28PA、SH7PA、SH21PA、SH30PA、ST94PA(いずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、BYK−333(ビックケミー・ジャパン(株)製)などが挙げられる。その他の界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジステアレートなどが挙げられる。
【0118】
本発明の組成物は、これを用いて得られる膜の絶縁性、膜形成性、耐薬品性が高いことから広く絶縁膜形成用材料として用いることもできる。中でも、FETにおけるゲート絶縁膜用材料として利用すると、FETのしきい値電圧、リーク電流を低減でき、好ましいFET特性を発揮させることができる。本発明でいう絶縁膜とは、電気の通しにくさの指標である体積抵抗率が10Ω・cm以上の膜を指す。
【0119】
<電界効果型トランジスタの製造方法>
図1に示すFETの製造方法を示す。このFETの製造方法は、組成物を基板上に塗布および乾燥してゲート絶縁層を形成する工程を含む。なお、製造方法は下記に限定されるものではない。
【0120】
まず、基板1上にゲート電極2を形成する。形成方法は、例えば金属蒸着やスピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。なお、マスクなどを用いて直接パターン形成してもよいし、形成したゲート電極上にレジストを塗布し、レジスト膜を所望のパターンに露光・現像後、エッチングすることによりゲート電極をパターニングすることも可能である。
【0121】
次に上記基板上にゲート絶縁層3を形成する。組成物をガラス基板やプラスチック基板に塗布し、乾燥することで得られたコーティング膜を必要に応じ熱処理することによって、絶縁膜を形成できる。ゲート絶縁層3の形成方法としては、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の塗布方法が挙げられる。コーティング膜の熱処理の温度としては、100〜300℃の範囲にあることが好ましい。プラスチック基板上への絶縁膜の形成という観点から、200℃以下であることがさらに好ましい。また、(f)光酸発生剤を含有する組成物の場合は、コーティング膜を、露光、現像した後に熱処理することによって、絶縁膜を形成できる。乾燥温度は50〜150℃が好ましい。
【0122】
ゲート絶縁層3は単層、もしくは複数層から構成される。複数層の場合には、本発明の絶縁膜を複数層にして積層してもよいし、本発明の絶縁膜と公知の絶縁膜を積層してもよい。公知の絶縁膜としては、特に限定されないが、酸化シリコン、アルミナ等の無機材料、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール(PVP)等のポリマー材料、あるいは無機材料粉末とポリマー材料の混合物を用いることができる。
【0123】
上記のようにしてゲート絶縁層を得る過程で、コーティング膜または絶縁膜にパターニングを施すことができる。一例として、(f)光酸発生剤を含有する組成物を用いたコーティング膜のパターン形成について説明する。コーティング膜の上方から所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射(露光)する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を利用することが好ましい。次に、露光したコーティング膜を現像する。現像液としては、テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましく、1種あるいは2種以上含有してもよい。また、これらのアルカリ水溶液に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクロン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを混合して用いることも可能である。現像後は通常、水でリンス処理するが、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理してもよい。
【0124】
また絶縁膜上にレジストを塗布し、レジスト膜を所望のパターンに露光・現像後、フッ酸等のエッチング液で処理することにより絶縁膜をパターニングすることも可能である。この方法であれば(f)光酸発生剤を含有する組成物を含有しない組成物であってもパターニングが可能である。
【0125】
次にソース電極およびドレイン電極を形成する。ソース電極5およびドレイン電極6の形成方法としては、前記ゲート電極2同様、例えば金属蒸着、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。なお、マスクなどを用いて直接パターン形成してもよいし、形成した電極上にレジストを塗布し、レジスト膜を所望のパターンに露光・現像後、エッチングすることによりソース電極およびドレイン電極をパターニングすることも可能である。
【0126】
次に半導体層4を前記形成方法にて形成し、FETを製造する。さらに、ゲート絶縁層3と半導体層4の間の配向性層、半導体層4に対してゲート絶縁層3と反対側に第2絶縁層を前記形成方法にて形成する工程を追加してもよい。
【0127】
本発明の組成物および絶縁膜は、薄膜の電界効果型トランジスタ、光起電力素子、スイッチング素子など、各種デバイスの製造に有利に用いることができる。
【実施例】
【0128】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。なお、実施例中における各評価法を以下の(1)〜(3)で説明する。
【0129】
(1)固形分濃度測定
アルミカップに測定したい溶液を1g秤取し、ホットプレートを用いて250℃で30分間加熱して液分を蒸発させた。加熱後のアルミカップに残った固形分を秤量して、溶液の固形分濃度を求めた。
【0130】
(2)重量平均分子量測定
ポリシロキサンの重量平均分子量はサンプルを孔径0.45μmメンブレンフィルターで濾過後、GPC(東ソー(株)製HLC−8220GPC)(展開溶剤:テトラヒドロフラン、展開速度:0.4ml/分)を用いてポリスチレン換算により求めた。
【0131】
(3)元素分析
測定したい膜に超高真空中において軟X線を照射し、表面から放出される光電子を検出するX線光電子分光(PHI社製 Quantera SXM)により膜中の元素情報、元素量を分析した。
【0132】
実施例1
(1)半導体溶液の作製
ポリ−3−ヘキシルチオフェン(アルドリッチ社製、レジオレギュラー、数平均分子量(Mn):13000、以下P3HTという)0.10gをクロロホルム5mlの入ったフラスコの中に加え、超音波洗浄機(井内盛栄堂(株)製US−2、出力120W)中で超音波撹拌することによりP3HTのクロロホルム溶液を得た。次いでこの溶液をスポイトにとり、メタノール20mlと0.1規定塩酸10mlの混合溶液の中に0.5mlずつ滴下して、再沈殿を行った。固体になったP3HTを0.1μm孔径のメンブレンフィルター(PTFE社製:4フッ化エチレン)によって濾別捕集し、メタノールでよくすすいだ後、真空乾燥により溶媒を除去した。さらにもう一度溶解と再沈殿を行い、90mgの再沈殿P3HTを得た。
【0133】
次に、CNT(CNI社製、単層CNT、純度95%)1.5mgと、上記P3HT1.5mgを15mlのクロロホルム中に加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザー(東京理化器械(株)製VCX−500)を用いて出力250Wで30分間超音波撹拌した。超音波照射を30分行った時点で一度照射を停止し、P3HTを1.5mg追加し、さらに1分間超音波照射することによって、CNT分散液A(溶媒に対するCNT複合体濃度0.1g/l)を得た。
【0134】
次に、半導体層4を形成するための半導体溶液の作製を行った。上記CNT分散液Aをメンブレンフィルター(孔径10μm、直径25mm、ミリポア社製オムニポアメンブレン)を用いてろ過を行い、長さ10μm以上のCNT複合体を除去した。得られたろ液5mlにジクロロベンゼン45mlを加え、半導体溶液A(溶媒に対するCNT複合体濃度0.01g/l)とした。
【0135】
(2)組成物(絶縁材料溶液)の作製
メチルトリメトキシシラン61.29g(0.45モル)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン12.31g(0.05モル)、およびフェニルトリメトキシシラン99.15g(0.5モル)をプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)203.36gに溶解し、これに、水54.90g、リン酸0.864gを撹拌しながら加えた。得られた溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分を留出せしめた。次いでバス温130℃で2.0時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水とプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、固形分濃度26.0重量%のポリシロキサン溶液Aを得た。得られたポリシロキサンの重量平均分子量は6000であった。
【0136】
得られたポリシロキサン溶液Aを10gはかり取り、アルミニウムビス(エチルアセチルアセテート)モノ(2,4−ペンタンジオナート)(商品名「アルミキレートD」、川研ファインケミカル(株)製、以下アルミキレートDという)13gとプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、PGMEAという)42gを混合して、室温にて2時間撹拌し、絶縁材料溶液A(固形分濃度24重量%)を得た。本溶液中の上記ポリシロキサンの含有量はアルミキレートD 100重量部に対して20重量部であった。前記絶縁材料溶液Aを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。
【0137】
(3)FETの作製
図1に示すFETを作製した。ガラス製の基板1(膜厚0.7mm)上に、抵抗加熱法により、マスクを通してクロムを5nmおよび金を50nm真空蒸着し、ゲート電極2を形成した。次に上記(2)に記載の方法で作製した絶縁材料溶液Aを上記ゲート電極が形成されたガラス基板上にスピンコート塗布(800rpm×20秒)し、120℃で5分間熱処理後、再度絶縁材料溶液Aをスピンコート塗布(800rpm×20秒)し、窒素気流下200℃で30分間熱処理することによって、膜厚400nmのゲート絶縁層3を形成した。次に、抵抗加熱法により、金を膜厚50nmになるように真空蒸着し、その上にフォトレジスト(商品名「LC100−10cP」、ローム・アンド・ハース(株)製)をスピンコート塗布(1000rpm×20秒)し、100℃で10加熱乾燥した。作製したフォトレジスト膜をパラレルライトマスクアライナー(キヤノン(株)製PLA−501F)を用いて、マスクを介してパターン露光した後、自動現像装置(滝沢産業(株)製AD−2000)を用いて2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液であるELM−D(商品名、三菱ガス化学(株)製)で70秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間洗浄した。その後、AURUM−302(商品名、関東化学(株)製)で5分間エッチング処理した後、水で30秒間洗浄した。AZリムーバ100(商品名、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)に5分間浸漬してレジストを剥離し、水で30秒間洗浄後、120℃で20分間加熱乾燥することでソース電極5およびドレイン電極6を形成した。
【0138】
これら両電極の幅(チャネル幅)は100μm、両電極の間隔(チャネル長)は10μmとした。電極が形成された基板上に上記(1)に記載の方法で作製した半導体溶液Aをインクジェット装置(クラスターテクノロジー(株)製)を用いて400pl滴下し、ホットプレート上で窒素気流下、150℃で30分の熱処理を行い、半導体層4を形成した。FETを得た。
【0139】
次に、上記FETのゲート電圧(Vg)を変えたときのソース・ドレイン間電流(Id)−ソース・ドレイン間電圧(Vsd)特性を測定した。測定には半導体特性評価システム4200−SCS型(ケースレーインスツルメンツ(株)製)を用い、大気中(気温20℃、湿度35%)で測定した。Vg=+20〜−20Vに変化させたときのVsd=−5VにおけるIdの値の変化から線形領域の移動度を求めたところ、0.42cm/V・secであった。また、Id−Vgグラフにおける線形部分の延長線とVg軸との交点からしきい値電圧を求めたところ、0.5Vであり、Vg=−20Vにおけるリーク電流値は、6.9pAであった。さらに、このときのゲート絶縁層をX線光電子分光法により分析したところ、炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対してアルミニウム原子が21.0重量部であった。
【0140】
比較例1
アルミキレートDを2.6g、PGMEAを52.4gとしたこと以外は実施例1の(2)と同様にして絶縁材料溶液Bを作製した。本溶液中のポリシロキサンの含有量はアルミキレートD 100重量部に対して100重量部であった。次に前記絶縁材料溶液Bを用いてゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。前記絶縁材料溶液Bを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。Vg=+20〜−20Vに変化させたときのVsd=−5VにおけるIdの値の変化から線形領域の移動度を求めたところ、0.38cm/V・secであった。また、Id−Vgグラフにおける線形部分の延長線とVg軸との交点からしきい値電圧を求めたところ、0.5Vであったが、Vg=−20Vにおけるリーク電流値は、56.5pAと大きかった。このときのゲート絶縁層をX線光電子分光法により分析したところ、炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対してアルミニウム原子が9.5重量部と少なかった。
【0141】
比較例2
アルミキレートDを1.3g、PGMEAを53.7gとしたこと以外は実施例1の(2)と同様にして絶縁材料溶液Cを作製した。本溶液中のポリシロキサンの含有量はアルミキレートD 100重量部に対して200重量部であった。次に前記絶縁材料溶液Cを用いてゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。前記絶縁材料溶液Cを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。Vg=+20〜−20Vに変化させたときのVsd=−5VにおけるIdの値の変化から線形領域の移動度を求めたところ、0.39cm/V・secであった。また、Id−Vgグラフにおける線形部分の延長線とVg軸との交点からしきい値電圧を求めたところ、1.2Vであったが、Vg=−20Vにおけるリーク電流値は、43.1pAと大きかった。このときのゲート絶縁層をX線光電子分光法により分析したところ、炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対してアルミニウム原子が7.5重量部と少なかった。
【0142】
比較例3
アルミキレートDを0.13g、PGMEAを54.4gとしたこと以外は実施例1の(2)と同様にして絶縁材料溶液Dを作製した。本溶液中のポリシロキサンの含有量はアルミキレートD 100重量部に対して2000重量部であった。次に前記絶縁材料溶液Dを用いてゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。前記絶縁材料溶液Dを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。Vg=+20〜−20Vに変化させたときのVsd=−5VにおけるIdの値の変化から線形領域の移動度を求めたところ、0.27cm/V・secであった。また、Id−Vgグラフにおける線形部分の延長線とVg軸との交点からしきい値電圧を求めたところ、10.5Vと大きかった。Vg=−20Vにおけるリーク電流値は、9.1pAであった。このときのゲート絶縁層をX線光電子分光法により分析したところ、炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対してアルミニウム原子が2.5重量部と少なかった。
【0143】
比較例4
ポリシロキサン溶液Aを用いなかったこと以外は実施例1の(2)と同様にして絶縁材料溶液Eを作製した。次に前記絶縁材料溶液Eを用いてゲート絶縁層を形成したが、均一な膜が得られず作製したFETは短絡してしまった。
【0144】
比較例5
ポリシロキサン溶液Aの代わりにエチルシリケート40(商品名、コルコート(株)製、重量平均分子量800)を用いたこと以外は実施例1の(2)と同様にして絶縁材料溶液Fを作製した。次に前記絶縁材料溶液Fを用いてゲート絶縁層を形成したが、均一な膜が得られず作製したFETは短絡してしまった。
【0145】
実施例2
ポリシロキサン溶液Aを5g、アルミキレートDを13g、PGMEAを47gとしたこと以外は実施例1の(2)と同様にして絶縁材料溶液Gを作製した。本溶液中のポリシロキサンの含有量はアルミキレートD 100重量部に対して10重量部であった。前記絶縁材料溶液Gを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。次に前記絶縁材料溶液Gを用いてスピンコート塗布を3回してゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、ゲート絶縁層における炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対するアルミニウム原子の含有量と、FET特性を測定した。
【0146】
実施例3
アルミキレートDを8.7g、PGMEAを46.3gとしたこと以外は実施例1の(2)と同様にして絶縁材料溶液Hを作製した。本溶液中のポリシロキサンの含有量はアルミキレートD 100重量部に対して30重量部であった。前記絶縁材料溶液Hを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。次に前記絶縁材料溶液Hを用いてゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、ゲート絶縁層における炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対するアルミニウム原子の含有量と、FET特性を測定した。
【0147】
実施例4
アルミキレートDを5.2g、PGMEAを49.8gとしたこと以外は実施例1の(2)と同様にして絶縁材料溶液Iを作製した。本溶液中のポリシロキサンの含有量はアルミキレートD 100重量部に対して50重量部であった。前記絶縁材料溶液Iを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。次に前記絶縁材料溶液Iを用いてゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、ゲート絶縁層における炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対するアルミニウム原子の含有量と、FET特性を測定した。
【0148】
実施例5
ポリシロキサン溶液Aを2.5g、アルミキレートDを13g、PGMEAを49.5gとしたこと以外は実施例1の(2)と同様にして絶縁材料溶液Jを作製した。本溶液中のポリシロキサンの含有量はアルミキレートD 100重量部に対して5重量部であった。前記絶縁材料溶液Jを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。次に前記絶縁材料溶液Jを用いてスピンコート塗布を4回してゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、ゲート絶縁層における炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対するアルミニウム原子の含有量と、FET特性を測定した。
【0149】
実施例6
アルミキレートDの代わりにアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)(商品名「ALCH−TR」、川研ファインケミカル(株)製)を用いたこと以外は実施例4と同様にして絶縁材料溶液Kを作製した。前記絶縁材料溶液Kを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。次に前記絶縁材料溶液Kを用いてゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、ゲート絶縁層における炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対するアルミニウム原子の含有量と、FET特性を測定した。
【0150】
実施例7
アルミキレートDの代わりにアルミニウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)(商品名「アルミキレートA(W)」、川研ファインケミカル(株)製)を用いたこと以外は実施例4と同様にして絶縁材料溶液Lを作製した。前記絶縁材料溶液Lを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。次に前記絶縁材料溶液Lを用いてゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、ゲート絶縁層における炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対するアルミニウム原子の含有量と、FET特性を測定した。
【0151】
実施例8
アルミキレートDの代わりにチタニウムテトラ(2,4−ペンタンジオナート)(商品名「オルガチックスTC−401」、マツモトファインケミカル(株)製)を用いたこと以外は実施例4と同様にして絶縁材料溶液Mを作製した前記絶縁材料溶液Mを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。次に前記絶縁材料溶液Mを用いてゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、ゲート絶縁層における炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対するチタン原子の含有量と、FET特性を測定した。
【0152】
実施例9
アルミキレートDの代わりにジルコニウムテトラ(2,4−ペンタンジオナート)(商品名「オルガチックスZC−150」、マツモトファインケミカル(株)製)を用いたこと以外は実施例4と同様にして絶縁材料溶液Nを作製した。前記絶縁材料溶液Nを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。次に前記絶縁材料溶液Nを用いてゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、ゲート絶縁層における炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対するジルコニウム原子の含有量と、FET特性を測定した。
【0153】
実施例10
アルミキレートDの代わりにインジウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)(和光純薬工業(株)製)を用いたこと以外は実施例4と同様にして絶縁材料溶液Oを作製した。前記絶縁材料溶液Oを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。次に前記絶縁材料溶液Oを用いてゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、ゲート絶縁層における炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対するインジウム原子の含有量と、FET特性を測定した。
【0154】
実施例11
ポリマーとして下記SPCR−69X(商品名、昭和電工(株)製、重量平均分子量15000)2.6g、アルミキレートD13g、PGMEA49.4gを混合して、室温にて2時間撹拌し、絶縁材料溶液P(固形分濃度24重量%)を得た。本溶液中のSPCR−69Xの含有量はアルミキレートD 100重量部に対して20重量部であった。前記絶縁材料溶液Pを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。次に前記絶縁材料溶液Pを用いてゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、ゲート絶縁層における炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対するアルミニウム原子の含有量と、FET特性を測定した。
【0155】
【化1】
【0156】
実施例12
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランの代わりに3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いたこと以外は実施例1の(2)と同様にしてポリシロキサン溶液Bを合成した。得られたポリシロキサンの重量平均分子量は5000であった。得られたポリシロキサン溶液Bを10gはかり取り、アルミキレートD13gとPGMEA42gを混合して、室温にて2時間撹拌し、絶縁材料溶液Q(固形分濃度24重量%)を得た。本溶液中のポリシロキサンの含有量はアルミキレートD 100重量部に対して20重量部であった。前記絶縁材料溶液Qを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。前記絶縁材料溶液Qにはエポキシ基を有しないシロキサンを用いたため、前記絶縁材料溶液Qを用いて形成した絶縁膜上にレジストを塗布したところ、レジスト現像時に一部レジスト剥がれが生じた。次に前記絶縁材料溶液Qを用いてゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、ゲート絶縁層における炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対するアルミニウム原子の含有量と、FET特性を測定した。
【0157】
実施例13
ポリシロキサン溶液Aを4g、アルミキレートDを13g、PGMEAを47g、(d)成分としてMシリケート51(商品名、多摩化学工業(株)製)1gを混合して、室温にて2時間撹拌し、絶縁材料溶液R(固形分濃度24重量%)を得た。本溶液中のポリシロキサンの含有量はアルミキレートD 100重量部に対して20重量部であった。前記絶縁材料溶液Rを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。次に前記絶縁材料溶液Rを用いて、加熱処理を窒素気流下150℃で30分間としてゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、ゲート絶縁層における炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対するアルミニウム原子の含有量と、FET特性を測定した。
【0158】
実施例14
アルミキレートDの代わりにALCH−TRを用いたこと以外は実施例3と同様にして絶縁材料溶液Sを作製した。前記絶縁材料溶液Sを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。次に前記絶縁材料溶液Sを用いてゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、ゲート絶縁層における炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対するアルミニウム原子の含有量と、FET特性を測定した。
【0159】
実施例15
アルミキレートDの代わりにアルミキレートA(W)を用いたこと以外は実施例3と同様にして絶縁材料溶液Tを作製した。前記絶縁材料溶液Tを大気中、室温で保存したところ、1週間後にゲル状に固化してしまった。次に前記絶縁材料溶液Lを用いてゲート絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、ゲート絶縁層における炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対するアルミニウム原子の含有量と、FET特性を測定した。
【0160】
【化2】
【0161】
実施例16
CNT(KH Chemicals社製、単層CNT、純度90%)の半導体型純度を95%としたものを用いた以外は実施例1(1)と同様にして半導体溶液Cを作製した。次に半導体溶液Cを用いて半導体層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、ゲート絶縁層における炭素原子とケイ素原子の合計100重量部に対するアルミニウム原子の含有量と、FET特性を測定した。
【0162】
実施例1〜16および比較例1〜3のFET評価結果を表1に示した。実施例1〜16および比較例1〜5の絶縁材料溶液組成を表2に示した。
【0163】
【表1】
【0164】
【表2】
【符号の説明】
【0165】
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁層
4 半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極
図1
図2