(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0014】
<金属樹脂複合体>
まず、本実施形態に係る金属樹脂複合体100について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の金属樹脂複合体100の構造の一例を示す斜視図である。
図8は、本発明に係る実施形態の金属部材102表面の凹部201の断面形状の例を説明するための模式図であり、金属部材102表面に設けられた凹部の断面形状を表す。
金属樹脂複合体100は、樹脂部材101と金属部材102とが接合されており、樹脂部材101と金属部材102とを接合することにより得られる。
【0015】
樹脂部材101は、樹脂成分として熱硬化性樹脂(A)を含む熱硬化性樹脂組成物(P)からなる。金属部材102は、少なくとも樹脂部材101と接合する接合面103の見掛け表面積に対する窒素吸着BET法による実表面積の比(以下、単に比表面積とも呼ぶ。)が、100以上400以下である。ここで、本実施形態における見掛け表面積は、金属部材102の表面が凹凸のない平滑状であると仮定した場合の表面積を意味する。例えば、その表面形状が長方形の場合には、縦の長さ×横の長さで表される。一方、本実施形態における窒素吸着BET法による実表面積は、窒素ガスの吸着量により求めたBET表面積を意味する。例えば、真空乾燥した測定対象試料について、自動比表面積/細孔分布測定装置(BELSORPminiII、日本ベル社製)を用いて、液体窒素温度における窒素吸脱着量を測定し、その窒素吸脱着量に基づいて算出することができる。
【0016】
金属樹脂複合体100は、樹脂部材101の25℃からガラス転移温度までの範囲における線膨張係数α
Rと、金属部材102の25℃から樹脂部材101の上記ガラス転移温度までの範囲における線膨張係数α
Mとの差(α
R−α
M)の絶対値が、好ましくは25ppm/℃以下であり、より好ましくは10ppm/℃以下である。上記線膨張係数の差が上記上限値以下であれば、金属樹脂複合体100が高温下に晒された際に発生する、線膨張の差による熱応力を抑制することができる。そのため、上記線膨張係数の差が上記上限値以下であれば、高温下でも、樹脂部材101と金属部材102との接合強度を維持することができる。すなわち、上記線膨張係数の差が上記上限値以下であれば、金属樹脂複合体100の温度サイクルの信頼性を向上させることができる。
なお、本実施形態において、線膨張係数に異方性がある場合は、それらの平均値を表す。例えば、樹脂部材101がシート状の場合、流動方向(MD)の線膨張係数と、それと垂直方向(TD)の線膨張係数とが異なる場合、それらの平均値が樹脂部材101の線膨張係数α
Rとなる。
【0017】
金属樹脂複合体100は、特に限定されないが、樹脂部材101と金属部材102とが接着剤を介在することなく接合されているのが好ましい。金属樹脂複合体100は、接着剤を介在しなくても優れた接合強度を有する。そのため、金属樹脂複合体100の製造工程を簡略化することができる。
【0018】
<金属部材>
つぎに、本実施形態に係る金属部材102について説明する。
(比表面積)
金属部材102は、少なくとも樹脂部材101と接合する接合面103の比表面積が100以上であり、好ましくは150以上である。上記比表面積が上記下限値以上であると、樹脂部材101と金属部材102との接合強度を向上させることができる。また、上記比表面積が400以下であり、好ましくは380以下であり、より好ましくは300以下である。上記比表面積が上記上限値以下であると、樹脂部材101と金属部材102との接合強度を向上させることができる。
【0019】
(比表面積の技術的意義)
上記比表面積が上記範囲内であると、接合強度に優れた金属樹脂複合体100が得られる理由は必ずしも明らかではないが、樹脂部材101の接合面103の表面が、樹脂部材101と金属部材102との間のアンカー効果が強く発現できる構造となっているからだと考えられる。
上記比表面積が上記下限値以上であると、樹脂部材101と金属部材102の接触面積が大きくなり、樹脂部材101と金属部材102とが相互に侵入する領域が増える。その結果、アンカー効果が働く領域が増え、樹脂部材101と金属部材102との接合強度が向上すると考えられる。
一方、上記比表面積が大きすぎると、樹脂部材101と金属部材102とが相互に侵入した領域の金属部材102の割合が減るため、この領域の機械的強度が低下してしまう。そのため、上記比表面積が上記上限値以下であると、樹脂部材101と金属部材102とが相互に侵入した領域の機械的強度が向上し、その結果、樹脂部材101と金属部材102との接合強度を向上させることができると考えられる。
以上から、上記比表面積が上記範囲内であると、樹脂部材101の接合面103の表面が、樹脂部材101と金属部材102との間のアンカー効果が強く発現できる、バランスの良い構造となっていると推察される。
【0020】
(粗化層)
金属部材102は、少なくとも樹脂部材101と接合する接合面103に複数の凹部201を有し、凹部201の断面形状は、凹部201の開口部203から底部205までの間の少なくとも一部に開口部203の断面幅D1よりも大きい断面幅D2を有する形状となっていることが好ましい。
図8に示すように、凹部201の断面形状は、D2がD1よりも大きければ特に限定されず、様々な形状を取り得る。凹部201の断面形状は、例えば、電子顕微鏡(SEM)により観察することができる。
【0021】
凹部201の断面形状が上記形状であると、接合強度により一層優れた金属樹脂複合体100が得られる理由は必ずしも明らかではないが、接合面103の表面が、樹脂部材101と金属部材102との間のアンカー効果がより一層強く発現できる構造となっているからだと考えられる。
凹部201の断面形状が上記形状であると、樹脂部材101が凹部201の開口部203から底部205までの間で引っかかるため、アンカー効果が効果的に働く。そのため、樹脂部材と金属部材との接合強度が向上すると考えられる。
【0022】
金属部材102の接合面103には、樹脂部材101と金属部材102との接合強度をより一層向上させる観点から、複数の凹部201が設けられた粗化層が形成されているのが好ましい。ここで、粗化層とは、金属部材102の表面に設けられた複数の凹部201を有する領域をいう。
金属部材102は、上記粗化層の厚みが、好ましくは3μm以上40μm以下であり、より好ましくは4μm以上32μm以下であり、特に好ましくは5μm以上25μm以下である。上記粗化層の厚みが上記範囲内であると、樹脂部材101と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができる。ここで、本実施形態において、粗化層の厚みは、複数の凹部201の中で、最も深さが大きいものの深さD3を表し、電子顕微鏡(SEM)写真から算出することができる。
【0023】
凹部201の深さは、好ましくは0.5μm以上40μm以下の範囲内にあり、より好ましくは0.5μm以上20μm以下の範囲内にある。凹部201の深さが上記範囲内であると、樹脂部材101と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができる。凹部201の深さは、例えば、電子顕微鏡(SEM)写真から測定することができる。
【0024】
(表面粗さ)
金属部材102の接合面103の表面粗さRaは、好ましくは1.0μm以上40.0μm以下であり、より好ましくは1.0μm以上20.0μm以下であり、特に好ましくは1.0μm以上10.0μm以下である。上記表面粗さRaが上記範囲内であると、樹脂部材101と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができる。
また、金属部材102の接合面103の10点平均粗さRzは、好ましくは1.0μm以上40.0μm以下であり、より好ましくは5.0μm以上30.0μm以下である。上記10点平均粗さRzが上記範囲内であると、樹脂部材101と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができる。なお、RaおよびRzは、JIS−B0601に準拠して測定することができる。
【0025】
(光沢度)
金属部材102は、少なくとも樹脂部材101と接合する接合面103の光沢度が、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは1以上である。上記光沢度が上記下限値以上であると、樹脂部材101と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができる。また、上記光沢度が、好ましくは30以下であり、より好ましくは25以下であり、特に好ましくは20以下である。上記光沢度が上記上限値以下であると、樹脂部材101と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができる。ここで、本実施形態における光沢度は、ASTM−D523に準拠して測定した測定角度60°の値を示す。光沢度は、例えば、ディジタル光沢度計(20°、60°)(GM−26型、村上色彩技術研究所社製)を用いて測定することができる。
上記光沢度が上記範囲内であると、接合強度により一層優れた金属樹脂複合体100が得られる理由は必ずしも明らかではないが、樹脂部材101の接合面103の表面がより一層乱雑な構造となり、樹脂部材101と金属部材102との間のアンカー効果がより一層強く発現できる構造となっているからだと考えられる。
【0026】
(金属材料)
金属部材102を構成する金属材料は特に限定されないが、入手の容易さや価格の観点から、鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅および銅合金などを挙げることができる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。これらの中でも、軽量かつ高強度の点から、アルミニウムおよびアルミニウム合金が好ましい。
【0027】
金属部材102の形状は、樹脂部材101と接合する接合面103を有する形状であれば特に限定されず、例えば、平板状、曲板状、棒状、筒状、塊状などとすることができる。また、これらの組み合わせからなる構造体であってもよい。こうした形状の金属部材102は、前述した金属材料を公知の加工法により加工することにより得ることができる。
また、樹脂部材101と接合する接合面103の形状は、特に限定されないが、平面、曲面などが挙げられる。
【0028】
(接合面103の形成方法)
次に、本実施形態に係る接合面103の形成方法について説明する。
【0029】
本実施形態に係る金属部材102の接合面103は、例えば、表面処理剤を用いて、金属部材102の表面を化学的処理することにより形成することができる。表面処理剤を用いて金属部材102の表面を化学的処理すること自体は従来技術においても行われてきた。しかし、本実施形態では、(1)金属部材と化学的処理剤の組み合わせ、(2)化学的処理の温度および時間、(3)化学的処理後の金属部材表面の後処理、などの因子を高度に制御している。本実施形態に係る金属部材102の接合面103を得るためには、これらの因子を高度に制御することが特に重要となる。
以下、本実施形態に係る金属部材102の製造方法の一例を示す。ただし、本実施形態に係る金属部材102の製造方法は、以下の例に限定されない。
【0030】
はじめに、(1)金属部材と表面処理剤の組み合わせを選択する。
鉄やステンレスから構成される金属部材を用いる場合は、無機酸、塩素イオン源、第二銅イオン源、チオール系化合物を必要に応じて組合せた水溶液を選択するのが好ましい。
アルミニウムやアルミニウム合金から構成される金属部材を用いる場合は、アルカリ源、両性金属イオン源、硝酸イオン源、チオール化合物を必要に応じて組合せた水溶液を選択するのが好ましい。
マグネシウムやマグネシウム合金から構成される金属部材を用いる場合は、アルカリ源が用いられ、特に水酸化ナトリウムの水溶液を選択するのが好ましい。
銅や銅合金から構成される金属部材を用いる場合は、硝酸、硫酸などの無機酸、不飽和カルボン酸などの有機酸、過硫酸塩、過酸化水素、イミダゾールおよびその誘導体、テトラゾールおよびその誘導体、アミノテトラゾールおよびその誘導体、アミノトリアゾールおよびその誘導体などのアゾール類、ピリジン誘導体、トリアジン、トリアジン誘導体、アルカノールアミン、アルキルアミン誘導体、ポリアルキレングリコール、糖アルコール、第二銅イオン源、塩素イオン源、ホスホン酸系キレート剤酸化剤、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミンから選ばれる少なくとも1種を用いた水溶液を選択するのが好ましい。
【0031】
つぎに、(2)金属部材を表面処理剤に浸漬させ、金属部材表面に化学的処理をおこなう。このとき、処理温度は、例えば、30℃である。また、処理時間は選定する金属部材の材質や表面状態、表面処理剤の種類や濃度、処理温度などにより適宜決定されるが、例えば、30〜300秒である。このとき、金属部材の深さ方向のエッチング量を、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上にすることが重要である。金属部材の深さ方向のエッチング量は、溶解した金属部材の重量、比重および表面積から算出して、評価することができる。この深さ方向のエッチング量は、表面処理剤の種類や濃度、処理温度、処理時間などにより調整することができる。
【0032】
最後に、化学的処理後の金属部材表面に後処理をおこなう。まず、金属部材表面を水洗、乾燥する。次いで、化学的処理をおこなった金属部材表面を硝酸水溶液などで処理する。
以上の手順により、本実施形態に係る接合面103を有する金属部材102を得ることができる。
【0033】
<樹脂部材>
つぎに、本実施形態に係る樹脂部材101について説明する。
樹脂部材101は、樹脂成分として熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物(P)からなる。
【0034】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物(P)に含まれる熱硬化性樹脂(A)としては、フェノール樹脂(a)、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、オキセタン樹脂、マレイミド樹脂などが用いられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。
これらの中でも、耐熱性、加工性、機械的特性、電気特性、接着性および耐摩耗性に優れるフェノール樹脂(a)が好適に用いられる。
【0035】
(フェノール樹脂(a))
熱硬化性樹脂組成物(P)は、好ましくはフェノール樹脂(a)を含む。フェノール樹脂(a)としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂;メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油などで溶融した油溶融レゾールフェノール樹脂などのレゾール型フェノール樹脂;アリールアルキレン型フェノール樹脂などが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。
これらの中でも入手容易性、安価およびロール混練による作業性が良好などの理由からノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
【0036】
上記フェノール樹脂(a)において、ノボラック型フェノール樹脂を用いる場合は、通常、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを使用する。ヘキサメチレンテトラミンは、特に限定されないが、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、10〜25質量部使用することが好ましく、13〜20重量部使用することがより好ましい。ヘキサメチレンテトラミンの使用量が上記下限値以上であると、成形時の硬化時間を短縮することができる。また、ヘキサメチレンテトラミンの使用量が上記上限値以下であると、成形品の外観を向上させることができる。
【0037】
(充填材(b))
樹脂部材101は、機械的強度を向上させる観点から、充填材(b)をさらに含むことが好ましい。上記充填材(b)の含有量は、樹脂部材101の全体を100質量%としたとき、好ましくは30質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは40質量%以上70質量%以下である。充填材(b)の含有量を上記範囲内とすることにより、熱硬化性樹脂組成物(P)の作業性を向上させつつ、得られる樹脂部材101の機械的強度をより一層向上させることができる。また、上記充填材(b)の種類や含有量を調整することにより、得られる樹脂部材101の線膨張係数α
Rの値を調整することができる。
【0038】
上記充填材(b)としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンラバーなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。これらの中でもガラス繊維が好ましい。ガラス繊維を用いると、樹脂部材101の機械的強度を特に向上させることができる。
【0039】
また、充填材(b)は、後述するシランカップリング剤(c)などのカップリング剤による表面処理が行われていてもよい。
【0040】
(シランカップリング剤(c))
樹脂部材101は、シランカップリング剤(c)をさらに含んでもよい。シランカップリング剤(c)を含むことにより、樹脂部材101と金属部材102との密着性を向上させることができる。また、シランカップリング剤(c)を含むことにより、充填材(b)と樹脂成分との親和性が向上し、その結果、樹脂部材101の機械的強度をより一層向上させることができる。
【0041】
シランカップリング剤(c)の含有量は、充填材(b)の比表面積に依存するので特に限定されないが、充填材(b)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上4.0質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上1.0質量部以下である。シランカップリング剤(c)の含有量が上記範囲内であると、充填材(b)を十分に被覆しつつ、樹脂部材101の機械的強度をより一層向上させることができる。
【0042】
上記シランカップリング剤(c)としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物;γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物;γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物;γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
これらは単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。これらの中でも、エポキシ基やアミノ基を有するアルコキシシランとメルカプト基を有するアルコキシシランを併用することが特に好ましい。
【0043】
(熱硬化性樹脂組成物(P))
熱硬化性樹脂組成物(P)の製造方法は特に限定されず、一般的に公知の方法により製造することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。まず、上記熱硬化性樹脂(A)、必要に応じて上記充填材(b)、上記シランカップリング剤(c)、硬化剤、硬化助剤、離型剤、顔料、難燃剤、耐候剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、摺動剤、発泡剤などを配合して均一に混合する。次いで、得られた混合物をロール、コニーダ、二軸押出し機などの混練装置単独で、またはロールと他の混練装置との組合せで加熱溶融混練する。最後に、得られた混合物を造粒または粉砕することにより、熱硬化性樹脂組成物(P)が得られる。
【0044】
熱硬化性樹脂組成物(P)からなる樹脂部材101の25℃からガラス転移温度までの範囲における線膨張係数α
Rは、好ましくは10ppm/℃以上50ppm/℃以下であり、より好ましくは15ppm/℃以上45ppm/℃以下である。線膨張係数α
Rが上記範囲内であると、金属樹脂複合体100の温度サイクルの信頼性をより一層向上させることができる。
【0045】
<金属樹脂複合体の製造方法>
つづいて、本実施形態に係る金属樹脂複合体100の製造方法について説明する。金属樹脂複合体100の製造方法としては特に限定されないが、例えば、射出成形法、移送成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法などが挙げられる。これらの中でも、射出成形法が特に適している。
【0046】
金属樹脂複合体100の製造方法は、例えば、以下の工程を含んでいる。
(1)少なくとも樹脂部材101と接合する接合面103の見掛け表面積に対する窒素吸着BET法による実表面積の比が100以上400以下である金属部材102を、金型105内に設置する工程
(2)金型105内に熱硬化性樹脂組成物(P)を注入し、熱硬化性樹脂組成物(P)の少なくとも一部が接合面103に接触した状態で熱硬化性樹脂組成物(P)を硬化することにより、熱硬化性樹脂組成物(P)からなる樹脂部材101と金属部材102とを接合する工程
【0047】
以下、金属樹脂複合体100の製造方法について、射出成形法を用いた場合を例に説明する。
図2は、本発明に係る実施形態の金属樹脂複合体100の製造装置の一例を模式的に示した断面図である。
まず、金型105を用意し、その金型105内に金属部材102を設置する。次いで、射出成形機107を用いて、金型105内に熱硬化性樹脂組成物(P)の少なくとも一部が、金属部材102の接合面103に接触するように、熱硬化性樹脂組成物(P)を射出する。つづいて、熱硬化性樹脂組成物(P)の少なくとも一部が接合面103に接触した状態で熱硬化性樹脂組成物(P)を硬化する。その後、金型105から金属樹脂複合体100を取り出し、金属樹脂複合体100が得られる。
【0048】
上記熱硬化性樹脂組成物(P)は、成形を良好におこなうために流動性が高いことが好ましい。そのため、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物(P)は、175℃での溶融粘度が、好ましくは10Pa・s以上3000Pa・s以下であり、より好ましくは30Pa・s以上2000Pa・s以下である。175℃での溶融粘度は、例えば、島津製作所社製の熱流動評価装置(フローテスタ)により測定することができる。
【0049】
本実施形態において、金属樹脂複合体100の成形条件は、採用する成形方法により異なるため特に限定されないが、採用する成形方法における一般的に公知の成形条件を採用することができる。成形方法として射出成形法を用いる場合、例えば、温度が160〜180℃、圧力10〜30MPa、硬化時間30秒間から5分間の成形条件を挙げることができる。
【0050】
(用途)
本実施形態に係る金属樹脂複合体100は、生産性が高く、形状制御の自由度も高いので、様々な用途に展開することができる。例えば、航空機用部品、自動車用部品、電子機器用部品、家庭用電化製品用部品、産業機器用部品などに用いることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0052】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
<熱硬化性樹脂組成物(P1)の調製>
ノボラック型フェノール樹脂(PR−51305、住友ベークライト社製)を37.5質量%、ヘキサメチレンテトラミンを6.5質量%、酸化マグネシウムを0.5質量%、ガラス繊維(CS3E479、日東紡社製)を53.0質量%、ステアリン酸カルシウムを1質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−903、信越化学社製)を0.5質量%、カーボンブラックを1質量%、それぞれ乾式混合し、これを90℃の加熱ロールで溶融混練して、シート状にして冷却したものを粉砕して顆粒状の熱硬化性樹脂組成物(P1)を得た。流動特性評価装置(高化式フローテスター、CFT−500D)を用いて、175℃における熱硬化性樹脂組成物の粘度を測定したところ、1500Pa・sであった。
【0054】
<金属部材の表面処理>
表面処理がされていないアルミニウム合金シートとして、その表面が#4000の研磨紙で十分研磨されたJIS H 5302に規定された合金番号ADC12のアルミニウム合金シートA(80mm×10mm、厚さ1.0mm)を用意した。
KOH(16質量%)、塩化亜鉛(5質量%)、硝酸ナトリウム(5質量%)、チオ硫酸ナトリウム(13質量%)の水溶液を調製した。得られた水溶液(30℃)中に、アルミニウム合金シートAを浸漬して揺動させ、深さ方向に10μm(アルミニウムの減少した重量から算出)溶解させた。次いで、水洗を行い、35質量%の硝酸水溶液(30℃)中に浸漬して、20秒間揺動させた。その後、水洗、乾燥し、アルミニウム合金シート1を得た。
【0055】
<金属部材の評価方法>
(金属部材の表面粗さの測定)
超深度形状測定顕微鏡(キーエンス社製VK9700)を用いて、倍率50倍における金属部材の表面形状を測定した。表面粗さはRaおよびRzを測定した。RaおよびRzは、JIS−B0601に準拠して測定した。
【0056】
(比表面積の測定)
測定対象試料を120℃で、6時間真空乾燥した後、自動比表面積/細孔分布測定装置(BELSORPminiII、日本ベル社製)を用いて、液体窒素温度における窒素吸脱着量を測定した。窒素吸着BET法による実表面積はBETプロットから算出した。測定した窒素吸着BET法による実表面積を、見掛け表面積で割ることにより比表面積を算出した。
【0057】
(金属部材の表面の光沢度の測定)
金属部材の表面の光沢度は、ディジタル光沢度計(20°、60°)(GM−26型、村上色彩技術研究所社製)を用いて、ASTM−D523に準拠して測定角度60°で測定した。
【0058】
(金属部材の表面の観察)
金属部材の表面を電子顕微鏡(SEM)で撮影し、金属部材の表面に存在する粗化層の構造を観察した。
図3に、実施例1で得られたアルミニウム合金シート1の表面に存在する粗化層の拡大図を表す電子顕微鏡写真を示す。
【0059】
(線膨張係数α
Mの測定)
熱機械分析装置TMA(TAインスツルメント社製、EXSTAR6000)を用いて5℃/分の圧縮条件で線膨張係数α
Mを測定した。アルミニウム合金シート1の線膨張係数α
Mは23.0ppm/℃であった。
【0060】
<金属樹脂複合体の作製>
得られた熱硬化性樹脂組成物(P1)およびアルミニウム合金シート1を用いて、金属樹脂複合体1を作製した。具体的には、以下の手順により作製した。
はじめに、金型内に厚み1mmのアルミニウム合金シート1を配置する。次いで、硬化後の厚みが3mmとなるように、熱硬化性樹脂組成物(P1)を加熱溶融させて、上記金型内に所定量注入する。最後に、圧縮成形により熱硬化性樹脂組成物(P1)を硬化することにより、厚み3mmの樹脂部材シートと厚み1mmのアルミニウム合金シート1の2層シートである金属樹脂複合体1を得た。この金属樹脂複合体1を試験片1とした。なお、圧縮成形条件は、実効圧力20MPa、金型温度175℃、硬化時間3分間とした。
【0061】
(曲げ強さ及び曲げ弾性率)
得られた試験片の曲げ強さ及び曲げ弾性率をJIS K 6911に準じて、25℃雰囲気下で測定した。このとき、アルミニウム合金シート1を下側に配置して試験を行った。ここで、単位は、曲げ強度がMPa、曲げ弾性率がGPaである。
【0062】
(曲げ強さ及び曲げ弾性率試験後の剥離状態)
曲げ強さ及び曲げ弾性率試験後の試験片の剥離状態を観察し、以下の基準で評価した。
○:試験後も完全接着を維持
△:一部に剥離が見られる
×:明らかに剥離している
【0063】
(線膨張係数α
Rの測定)
熱機械分析装置TMA(TAインスツルメント社製、EXSTAR6000)を用いて5℃/分の圧縮条件で、樹脂部材シートの線膨張係数α
Rを測定した。熱硬化性樹脂組成物(P1)からなる厚み3mmの樹脂部材シートの線膨張係数α
Rは、流動方向で17ppm/℃、それと垂直方向で47ppm/℃であり、平均値は32ppm/℃であった。よって、線膨張係数の差(α
R−α
M)は9ppm/℃であった。
【0064】
(実施例2)
KOH(6質量%)、塩化亜鉛(5質量%)、硝酸カルシウム(22質量%)、チオ硫酸ナトリウム(13質量%)の水溶液を調製した。得られた水溶液(30℃)中に、実施例1で使用した表面処理がされていないアルミニウム合金シートAを浸漬して揺動させ、深さ方向に5μm(アルミニウムの減少した重量から算出)溶解させた。次いで、水洗を行い、35質量%の硝酸水溶液(30℃)中に浸漬して、20秒間揺動させ。その後、水洗、乾燥して、アルミニウム合金シート2を得た。
得られたアルミニウム合金シート2について、実施例1と同様の評価をおこなった。また、
図4に、実施例2で得られたアルミニウム合金シート2の表面に存在する粗化層の拡大図を表す電子顕微鏡写真を示す。
【0065】
アルミニウム合金シート1の代わりに、アルミニウム合金シート2を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体2を作製した。この金属樹脂複合体2を試験片2とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
【0066】
(実施例3)
KOH(6質量%)、塩化亜鉛(5質量%)、硝酸ナトリウム(5質量%)、チオ硫酸ナトリウム(13質量%)の水溶液を調製した。得られた水溶液(30℃)中に、実施例1で使用した表面処理がされていないアルミニウム合金シートAを浸漬して揺動させ、深さ方向に20μm(アルミニウムの減少した重量から算出)溶解させた。次いで、水洗を行い、35質量%の硝酸水溶液(30℃)中に浸漬して、20秒間揺動させた。その後、水洗、乾燥して、アルミニウム合金シート3を得た。
得られたアルミニウム合金シート3について、実施例1と同様の評価をおこなった。また、
図5に、実施例3で得られたアルミニウム合金シート3の表面に存在する粗化層の拡大図を表す電子顕微鏡写真を示す。
【0067】
アルミニウム合金シート1の代わりに、アルミニウム合金シート3を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体3を作製した。この金属樹脂複合体3を試験片3とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
【0068】
(実施例4)
KOH(6質量%)、塩化亜鉛(5質量%)、硝酸ナトリウム(5質量%)、チオ硫酸ナトリウム(13質量%)の水溶液を調製した。得られた水溶液(30℃)中に、実施例1で使用した表面処理がされていないアルミニウム合金シートAを浸漬して揺動させ、深さ方向に4μm(アルミニウムの減少した重量から算出)溶解させた。次いで、水洗を行い、35質量%の硝酸水溶液(30℃)中に浸漬して、20秒間揺動させた。その後、水洗、乾燥して、アルミニウム合金シート4を得た。
得られたアルミニウム合金シート4について、実施例1と同様の評価をおこなった。
アルミニウム合金シート1の代わりに、アルミニウム合金シート4を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体4を作製した。この金属樹脂複合体4を試験片4とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
【0069】
(実施例5)
KOH(6質量%)、塩化亜鉛(5質量%)、硝酸ナトリウム(5質量%)、チオ硫酸ナトリウム(13質量%)の水溶液を調製した。得られた水溶液(30℃)中に、実施例1で使用した表面処理がされていないアルミニウム合金シートAを浸漬して揺動させ、深さ方向に30μm(アルミニウムの減少した重量から算出)溶解させた。次いで、水洗を行い、35質量%の硝酸水溶液(30℃)中に浸漬して、20秒間揺動させた。その後、水洗、乾燥して、アルミニウム合金シート5を得た。
得られたアルミニウム合金シート5について、実施例1と同様の評価をおこなった。
アルミニウム合金シート1の代わりに、アルミニウム合金シート5を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体5を作製した。この金属樹脂複合体5を試験片5とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
【0070】
(比較例1)
実施例1で使用した表面処理がされていないアルミニウム合金シートAについて、実施例1と同様の評価をおこなった。また、
図6に、比較例1で使用したアルミニウム合金シートの表面の拡大図を表す電子顕微鏡写真を示す。
【0071】
また、表面処理をおこなわないアルミニウム合金シートAを用いた以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体6を作製した。この金属樹脂複合体6を試験片6とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
【0072】
(比較例2)
#80の耐水研磨紙を水で濡らした後、平滑な面に設置した。つぎに、この耐水研磨紙に、実施例1で使用した表面処理がされていないアルミニウム合金シートAを軽く押さえ付けながら10cm程度の距離を10回だけ往復させてアルミニウム合金シート7を得た。
得られたアルミニウム合金シート7について、実施例1と同様の評価をおこなった。また、
図7に、比較例2で使用したアルミニウム合金シートの表面の拡大図を表す電子顕微鏡写真を示す。
【0073】
アルミニウム合金シート1の代わりに、アルミニウム合金シート7を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体7を作製した。この金属樹脂複合体7を試験片7とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
【0074】
(比較例3)
KOH(16質量%)、塩化亜鉛(5質量%)、硝酸ナトリウム(5質量%)、チオ硫酸ナトリウム(13質量%)の水溶液を調製した。得られた水溶液(30℃)中に、実施例1で使用した表面処理がされていないアルミニウム合金シートAを浸漬して揺動させ、深さ方向に3μm(アルミニウムの減少した重量から算出)溶解させた。次いで、水洗を行い、35質量%の硝酸水溶液(30℃)中に浸漬して、20秒間揺動させた。その後、水洗、乾燥して、アルミニウム合金シート8を得た。
得られたアルミニウム合金シート8について、実施例1と同様の評価をおこなった。
アルミニウム合金シート1の代わりに、アルミニウム合金シート8を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体8を作製した。この金属樹脂複合体8を試験片8とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
【0075】
(比較例4)
KOH(16質量%)、塩化亜鉛(5質量%)、硝酸ナトリウム(5質量%)、チオ硫酸ナトリウム(13質量%)の水溶液を調製した。得られた水溶液(30℃)中に、実施例1で使用した表面処理がされていないアルミニウム合金シートAを浸漬して揺動させ、深さ方向に100μm(アルミニウムの減少した重量から算出)溶解させた。次いで、水洗を行い、35質量%の硝酸水溶液(30℃)中に浸漬して、20秒間揺動させた。その後、水洗、乾燥して、アルミニウム合金シート9を得た。
得られたアルミニウム合金シート9について、実施例1と同様の評価をおこなった。
アルミニウム合金シート1の代わりに、アルミニウム合金シート9を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体9を作製した。この金属樹脂複合体9を試験片9とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
【0076】
(比較例5)
50重量%の3−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液を調製し、得られた水溶液(30℃)中に、アルミニウム合金シートAを1時間浸漬させ、100℃で30分間乾燥して、アルミニウム合金シート10を得た。
得られたアルミニウム合金シート10について、実施例1と同様の評価をおこなった。
【0077】
アルミニウム合金シート1の代わりに、アルミニウム合金シート10を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体10を作製した。この金属樹脂複合体10を試験片10とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
【0078】
(比較例6)
アルミニウム合金シートを使用しない以外は実施例1と同様にして、樹脂部材シート1を作製した。この樹脂部材シート1を試験片11とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
【0079】
以上の評価結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
この出願は、2012年10月17日に出願された日本出願特願2012−230013号、および2012年10月17日に出願された特願2012−230014号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0082】
上述した本発明の実施形態に関し、本発明はさらに以下の金属樹脂複合体および金属樹脂複合体の製造方法を開示する。
【0083】
<付記>
(付記1)
熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂部材と金属部材とが接合された金属樹脂複合体であって、
前記金属部材は、少なくとも前記樹脂部材と接合する接合面に複数の凹部を有し、
前記凹部の断面形状は、前記凹部の開口部から底部までの間の少なくとも一部に前記開口部の断面幅よりも大きい断面幅を有する形状となっている、金属樹脂複合体。
(付記2)
付記1に記載の金属樹脂複合体において、
前記樹脂部材の25℃からガラス転移温度までの範囲における線膨張係数α
Rと、前記金属部材の25℃から前記樹脂部材の前記ガラス転移温度までの範囲における線膨張係数α
Mとの差(α
R−α
M)の絶対値が25ppm/℃以下である、金属樹脂複合体。
(付記3)
付記1または2に記載の金属樹脂複合体において、
前記金属部材の前記接合面には、複数の前記凹部が設けられた粗化層が形成されており、
前記粗化層の厚みが、3μm以上40μm以下である、金属樹脂複合体。
(付記4)
付記1乃至3いずれか一つに記載の金属樹脂複合体において、
前記凹部の深さが0.5μm以上40μm以下の範囲内にある、金属樹脂複合体。
(付記5)
付記1乃至4いずれか一つに記載の金属樹脂複合体において、
前記樹脂部材の25℃からガラス転移温度までの範囲における線膨張係数α
Rが、10ppm/℃以上50ppm/℃以下である、金属樹脂複合体。
(付記6)
付記1乃至5いずれか一つに記載の金属樹脂複合体において、
前記樹脂部材と前記金属部材とが、接着層を介在することなく接合されている、金属樹脂複合体。
(付記7)
付記1乃至6いずれか一つに記載の金属樹脂複合体において、
前記熱硬化性樹脂組成物は、フェノール樹脂を含む、金属樹脂複合体。
(付記8)
付記7に記載の金属樹脂複合体において、
前記フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂およびアリールアルキレン型フェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも一種である、金属樹脂複合体。
(付記9)
付記1乃至8いずれか一つに記載の金属樹脂複合体において、
前記樹脂部材は、充填材を含み、
前記充填材の含有量が、前記樹脂部材の全体を100質量%としたとき、30質量%以上80質量%以下である、金属樹脂複合体。
(付記10)
付記9に記載の金属樹脂複合体において、
前記充填材が、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンラバーからなる群から選ばれる少なくとも一種である、金属樹脂複合体。
(付記11)
付記9または10に記載の金属樹脂複合体において、
前記樹脂部材は、シランカップリング剤をさらに含み、
前記シランカップリング剤の含有量は、前記充填材100質量部に対して、0.01質量部以上4.0質量部以下である、金属樹脂複合体。
(付記12)
付記1乃至11いずれか一つに記載の金属樹脂複合体において、
前記金属部材は、鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅および銅合金からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属材料を含む、金属樹脂複合体。
(付記13)
付記1乃至12いずれか一つに記載の金属樹脂複合体の製造方法であって、
少なくとも前記樹脂部材と接合する前記接合面に複数の前記凹部を有する前記金属部材を、金型内に設置する工程と、
前記金型内に熱硬化性樹脂組成物を注入し、前記熱硬化性樹脂組成物の少なくとも一部が前記接合面に接触した状態で前記熱硬化性樹脂組成物を硬化することにより、前記熱硬化性樹脂組成物からなる前記樹脂部材と前記金属部材とを接合する工程と、
を含む、金属樹脂複合体の製造方法。
(付記14)
付記13に記載の金属樹脂複合体の製造方法において、
前記熱硬化性樹脂組成物の175℃での溶融粘度が10Pa・s以上3000Pa・s以下である、金属樹脂複合体の製造方法。
以下、参考形態の例を付記する。
(1)
熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂部材と金属部材とが接合された金属樹脂複合体であって、
少なくとも上記樹脂部材と接合する接合面の見掛け表面積に対する窒素吸着BET法による実表面積の比が100以上400以下である上記金属部材と、上記樹脂部材とを接合してなる、金属樹脂複合体。
(2)
上記(1)に記載の金属樹脂複合体において、
上記金属部材の上記接合面は複数の凹部を有し、
上記凹部の断面形状は、上記凹部の開口部から底部までの間の少なくとも一部に上記開口部の断面幅よりも大きい断面幅を有する形状となっている、金属樹脂複合体。
(3)
上記(2)に記載の金属樹脂複合体において、
上記金属部材の上記接合面には、複数の上記凹部が設けられた粗化層が形成されており、
上記粗化層の厚みが、3μm以上40μm以下である、金属樹脂複合体。
(4)
上記(2)または(3)に記載の金属樹脂複合体において、
上記凹部の深さが0.5μm以上40μm以下の範囲内にある、金属樹脂複合体。
(5)
上記(1)乃至(4)いずれか一つに記載の金属樹脂複合体において、
上記樹脂部材の25℃からガラス転移温度までの範囲における線膨張係数αRと、上記金属部材の25℃から上記樹脂部材の上記ガラス転移温度までの範囲における線膨張係数αMとの差(αR−αM)の絶対値が25ppm/℃以下である、金属樹脂複合体。
(6)
上記(5)に記載の金属樹脂複合体において、
上記樹脂部材の25℃からガラス転移温度までの範囲における線膨張係数αRが、10ppm/℃以上50ppm/℃以下である、金属樹脂複合体。
(7)
上記(1)乃至(6)いずれか一つに記載の金属樹脂複合体において、
上記樹脂部材と上記金属部材とが、接着層を介在することなく接合されている、金属樹脂複合体。
(8)
上記(1)乃至(7)いずれか一つに記載の金属樹脂複合体において、
上記熱硬化性樹脂組成物は、フェノール樹脂を含む、金属樹脂複合体。
(9)
上記(8)に記載の金属樹脂複合体において、
上記フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂およびアリールアルキレン型フェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも一種である、金属樹脂複合体。
(10)
上記(1)乃至(9)いずれか一つに記載の金属樹脂複合体において、
上記樹脂部材は、充填材を含み、
上記充填材の含有量が、上記樹脂部材の全体を100質量%としたとき、30質量%以上80質量%以下である、金属樹脂複合体。
(11)
上記(10)に記載の金属樹脂複合体において、
上記充填材が、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンラバーからなる群から選ばれる少なくとも一種である、金属樹脂複合体。
(12)
上記(10)または(11)に記載の金属樹脂複合体において、
上記樹脂部材は、シランカップリング剤をさらに含み、
上記シランカップリング剤の含有量は、上記充填材100質量部に対して、0.01質量部以上4.0質量部以下である、金属樹脂複合体。
(13)
上記(1)乃至(12)いずれか一つに記載の金属樹脂複合体において、
上記金属部材は、鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅および銅合金からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属材料を含む、金属樹脂複合体。
(14)
上記(1)乃至(13)いずれか一つに記載の金属樹脂複合体の製造方法であって、
少なくとも上記樹脂部材と接合する上記接合面の見掛け表面積に対する窒素吸着BET法による実表面積の比が100以上400以下である上記金属部材を、金型内に設置する工程と、
上記金型内に熱硬化性樹脂組成物を注入し、上記熱硬化性樹脂組成物の少なくとも一部が上記接合面に接触した状態で上記熱硬化性樹脂組成物を硬化することにより、上記熱硬化性樹脂組成物からなる上記樹脂部材と上記金属部材とを接合する工程と、
を含む、金属樹脂複合体の製造方法。
(15)
上記(14)に記載の金属樹脂複合体の製造方法において、
上記熱硬化性樹脂組成物の175℃での溶融粘度が10Pa・s以上3000Pa・s以下である、金属樹脂複合体の製造方法。