特許第5874843号(P5874843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5874843タイヤパンクシール材及びこれを用いるタイヤパンク修理キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874843
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】タイヤパンクシール材及びこれを用いるタイヤパンク修理キット
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20160218BHJP
【FI】
   C09K3/10 A
   C09K3/10 G
   C09K3/10 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-549015(P2014-549015)
(86)(22)【出願日】2014年3月25日
(86)【国際出願番号】JP2014058347
(87)【国際公開番号】WO2014157239
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2014年12月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-66921(P2013-66921)
(32)【優先日】2013年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】岡松 隆裕
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−057145(JP,A)
【文献】 特開2011−225768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/10−3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂エマルジョンAと、天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンBとを含有し、
前記合成樹脂エマルジョンAの表面自由エネルギーが20〜50mJ/m2であり、
前記合成樹脂エマルジョンAの固形分が、前記天然ゴムラテックスの固形分及び/又は前記合成樹脂エマルジョンBの固形分100質量部に対して、5〜25質量部であって、
前記合成樹脂エマルジョンAが、シリコーンエマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、及び、ポリイソブチレンエマルジョンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記合成樹脂エマルジョンBが、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン及び/又はポリ酢酸ビニルエマルジョンである、タイヤパンクシール材。
【請求項2】
前記合成樹脂エマルジョンAが、シリコーンエマルジョンである請求項1に記載のタイヤパンクシール材。
【請求項3】
さらに凍結防止剤を含有し、前記凍結防止剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のタイヤパンクシール材。
【請求項4】
前記天然ゴムラテックス及び前記合成樹脂エマルジョンBを含有し、
前記天然ゴムラテックスの固形分及び前記合成樹脂エマルジョンBの固形分の合計100質量部中、前記天然ゴムラテックスの固形分が20〜85質量部であり、前記合成樹脂エマルジョンBの固形分が15〜80質量部である請求項1〜のいずれかに記載のタイヤパンクシール材。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載のタイヤパンクシール材を有するタイヤパンク修理キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤパンクシール材及びこれを用いるタイヤパンク修理キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤのパンクを修理するためにタイヤパンクシール材(タイヤパンク応急シール材)が使用されている。本願出願人は天然ゴムラテックスを含むタイヤパンクシール材を提案している(特許文献1、2)。
これまでタイヤパンクシール材の液量は、適用されるタイヤのサイズ(内面積)に応じて決定された。つまり、タイヤパンクシール材がタイヤ内面全体を均一に濡らす量を必要量としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−162681号公報
【特許文献2】特開2011−026533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、パンク修理に使用された後、ほとんどのタイヤパンクシール材がタイヤ内から回収され廃棄される。このため環境対策が必要と考えられる。
そこで、本発明は、タイヤパンクシール材の量を減らし、少量でもシール性能に優れるタイヤパンクシール材を提供することを目的とする。
一方、シリコーンエマルジョンは、タイヤの内部を構成するインナーライナーがシリコーンエマルジョンをはじいてしまいパンクをシールできないため、シリコーンエマルジョンはタイヤパンクシール材には使用されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、表面自由エネルギーが20〜50mJ/m2である合成樹脂エマルジョンを特定量で添加することによって、タイヤパンクシール材の量を減らすことができ、少量でもシール性能に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記1〜6を提供する。
1. 合成樹脂エマルジョンAと、天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンBとを含有し、
前記合成樹脂エマルジョンAの表面自由エネルギーが20〜50mJ/m2であり、
前記合成樹脂エマルジョンAの固形分が、前記天然ゴムラテックスの固形分及び/又は前記合成樹脂エマルジョンBの固形分100質量部に対して、5〜25質量部である、タイヤパンクシール材。
2. 前記合成樹脂エマルジョンAが、シリコーンエマルジョンである上記1に記載のタイヤパンクシール材。
3. 前記合成樹脂エマルジョンBが、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン及び/又はポリ酢酸ビニルエマルジョンである上記1又は2に記載のタイヤパンクシール材。
4. さらに凍結防止剤を含有し、前記凍結防止剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記1〜3のいずれかに記載のタイヤパンクシール材。
5. 前記天然ゴムラテックス及び前記合成樹脂エマルジョンBを含有し、
前記天然ゴムラテックスの固形分及び前記合成樹脂エマルジョンBの固形分の合計100質量部中、前記天然ゴムラテックスの固形分が20〜85質量部であり、前記合成樹脂エマルジョンBの固形分が15〜80質量部である上記1〜4のいずれかに記載のタイヤパンクシール材。
6. 上記1〜5のいずれかに記載のタイヤパンクシール材を有するタイヤパンク修理キット。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤパンクシール材は、従来のタイヤパンクシール材より少量で、シール性能に優れる。
本発明のタイヤパンク修理キットは、コンパクトでシール性能に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明のタイヤパンクシール材は、
合成樹脂エマルジョンAと、天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンBとを含有し、
前記合成樹脂エマルジョンAの表面自由エネルギーが20〜50mJ/m2であり、
前記合成樹脂エマルジョンAの固形分が、前記天然ゴムラテックスの固形分及び/又は前記合成樹脂エマルジョンBの固形分100質量部に対して、5〜25質量部である、タイヤパンクシール材である。
【0009】
本発明のタイヤパンクシール材は、合成樹脂エマルジョンAの表面自由エネルギーが20〜50mJ/m2であることによって、従来のタイヤパンクシール材より少量で、シール性能に優れると考えられる。
本発明のタイヤパンクシール材が従来のタイヤパンクシール材より使用量が少ないのは、表面自由エネルギーが小さい合成樹脂エマルジョンAを含むことによって、タイヤパンクシール材がゴムに対してぬれやすくなるからであると本願発明者は考える。
なお上記メカニズムは本願発明者の推察であり、メカニズムが異なったものであっても本願発明の範囲内である。
【0010】
合成樹脂エマルジョンAについて以下に説明する。本発明のタイヤパンクシール材に含有される合成樹脂エマルジョンAは、分散質として合成樹脂aを含み、分散媒として水を含む、分散系である。合成樹脂aは合成樹脂エマルジョンAに含まれるエマルジョン粒子を形成することができる。合成樹脂エマルジョンAは固形分として合成樹脂aを含む。
【0011】
本発明において、合成樹脂エマルジョンAの表面自由エネルギーは20〜50mJ/m2である。合成樹脂エマルジョンAの表面自由エネルギーは、タイヤパンクシール材がぬれやすくなりタイヤパンクシール材の使用量をより低減し、シール性能により優れるという観点から、20〜45mJ/m2であるのが好ましい。
【0012】
本発明において、合成樹脂エマルジョンの表面自由エネルギーは、合成樹脂エマルジョンに白金プレートを浸漬させ、白金プレートを10mm/分の速度で合成樹脂エマルジョンから引き揚げる際に発生するエネルギーを、表面張力計(協和界面科学社製)を用いて25℃の条件下で測定した。天然ゴムラテックス、タイヤパンクシール材についても同様である。
【0013】
合成樹脂エマルジョンAは、タイヤパンクシール材がぬれやすくなりタイヤパンクシール材の使用量をより低減し、シール性能によりに優れるという観点から、シリコーンエマルジョン;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンエマルジョン(市販品として例えばオリオン化成製オリゾールC101:40mJ/m2);ポリイソブチレンエマルジョン(市販品として例えばBASF製ジョンクリル:38mJ/m2)であるのが好ましい。
シリコーンエマルジョンとしては、例えば、反応型シリコーンオイルのエマルジョン(触媒併用又は高温キュアにより架橋反応することができる。)、粘度が10,000mm2/s未満のジメチルシリコーンオイルのエマルジョン、長鎖アルキル基含有シリコーンオイルのエマルジョンが挙げられる。
【0014】
合成樹脂エマルジョンAはその製造について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。合成樹脂エマルジョンAはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
本発明において、合成樹脂エマルジョンAの固形分(固形分の量)は、天然ゴムラテックスの固形分及び/又は合成樹脂エマルジョンBの固形分100質量部(天然ゴムラテックス、合成樹脂エマルジョンBを併用する場合、これらの固形分の合計100質量部)に対して、5〜25質量部である。合成樹脂エマルジョンAの固形分は、タイヤパンクシール材がぬれやすくなりタイヤパンクシール材の使用量をより低減し、シール性能により優れるという観点から、上記固形分100質量部に対して、5〜20質量部であるのが好ましく、5〜15質量部であるのがより好ましい。
【0016】
天然ゴムラテックスについて以下に説明する。本発明のタイヤパンクシール材が含有することができる天然ゴムラテックスは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。天然ゴムラテックスはアンモニア等によって安定化されていてもよい。また脱蛋白された天然ゴムラテックスであってもよい。天然ゴムラテックスは固形分として天然ゴムを含む。
【0017】
合成樹脂エマルジョンBについて以下に説明する。本発明のタイヤパンクシール材が含有することができる合成樹脂エマルジョンBは、分散質として合成樹脂bを含み、分散媒として水を含む、分散系である。合成樹脂bは合成樹脂エマルジョンBに含まれるエマルジョン粒子を形成することができる。合成樹脂エマルジョンBは固形分として合成樹脂bを含む。
合成樹脂エマルジョンBの表面自由エネルギーは特に制限されない。例えば、これを50mJ/m2以上とすることができ、50mJ/m2を超える値とすることができ、55mJ/m2以上とすることができる。また、これを、例えば、80mJ/m2以下とすることができ、75mJ/m2以下とすることができる。
合成樹脂bの表面自由エネルギーは特に制限されない。例えば、50〜75mJ/m2とすることができ、50mJ/m2を超える値とすることができ、55mJ/m2以上とすることができる。
【0018】
合成樹脂エマルジョンBは、タイヤパンクシール材がぬれやすくなりタイヤパンクシール材の使用量をより低減し、シール性能により優れるという観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン及び/又はポリ酢酸ビニルエマルジョンであるのが好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンに含まれるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、モノマーとしてエチレン、酢酸ビニルを少なくとも使用して製造される共重合体であれば特に制限されない。エチレン、酢酸ビニル以外のモノマーとして例えば、バーサチック酸ビニルのようなビニル基含有化合物が挙げられる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(2元系)、エチレン酢酸ビニルバーサチック酸ビニル共重合体(3元系)が挙げられる。
【0019】
合成樹脂エマルジョンBはその製造について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。合成樹脂エマルジョンBはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
本発明のタイヤパンクシール材が天然ゴムラテックス及び合成樹脂エマルジョンBを含有する場合、合成樹脂エマルジョンBの固形分(固形分の量)は、タイヤパンクシール材がぬれやすくなりタイヤパンクシール材の使用量をより低減し、シール性能により優れるという観点から、天然ゴムラテックスの固形分及び合成樹脂エマルジョンBの固形分の合計100質量部中、15〜80質量部であるのが好ましく、15〜60質量部であるのがより好ましく、20〜50質量部であるのが更に好ましい。
また、天然ゴムラテックスの固形分(固形分の量)は、同様の理由から、上記合計100質量部中、20〜85質量部であるのが好ましく、20〜60質量部であるのがより好ましく、30〜50質量部であるのが更に好ましい。
【0021】
本発明のタイヤパンクシール材は、さらに、凍結防止剤を含有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明のタイヤパンクシール材がさらに凍結防止剤を含有する場合貯蔵安定性に優れる。凍結防止剤は、シール性能により優れ、貯蔵安定性、作業性に優れるという観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
凍結防止剤の量は、シール性能により優れ、貯蔵安定性、作業性に優れるという観点から、合成樹脂エマルジョンAと、天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンBとの固形分の合計100質量部に対して、50〜400質量部であるのが好ましく、60〜350質量部であるのがより好ましい。
【0022】
本発明のタイヤパンクシール材は、さらに、界面活性剤を含有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。例えば、アルキル硫酸塩、ロジンのアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシモノおよびジスチリルフェニルエーテルスルホコハク酸モノエステル塩、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩などのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフエニルエーテルなどの非イオン性界面活性剤;テトラアルキルアンモニウムクロライド、トリアルキルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルアミン、モノオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどのカチオン性界面活性剤を挙げることができる。
界面活性剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の量は、合成樹脂エマルジョンAと、天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンBとの固形分の合計100質量部に対して、1〜5質量部であるのが好ましく、2〜4質量部であるのがより好ましい。
【0023】
本発明のタイヤパンクシール材は、上記の成分以外に、所望により必要に応じて、例えば、粘着付与剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、分散剤、脱水剤、帯電防止剤等の添加剤を含有することができる。
【0024】
本発明のタイヤパンクシール材はその製造について特に限定されない。例えば、容器に合成樹脂エマルジョンAと、天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンBと、所望により使用することができる、凍結防止剤、界面活性剤、添加剤を入れ、減圧下で混合ミキサー等のかくはん機を用いて混合して製造する方法が挙げられる。
【0025】
本発明のタイヤパンクシール材の表面自由エネルギーは、タイヤパンクシール材がぬれやすくなりタイヤパンクシール材の使用量をより低減し、シール性能により優れるという観点から、35〜60mJ/m2であるのが好ましい。
本発明のタイヤパンクシール材中の水の量は、特に制限されない。例えば、合成樹脂エマルジョンAと、天然ゴムラテックス及び/又は合成樹脂エマルジョンBとの固形分の合計100質量部に対して、30〜50質量部とすることができる。
【0026】
本発明のタイヤパンクシール材の使用量は、例えば、サイズ195/65R15のタイヤ1本当たり350〜400ミリリットルとすることができる。
タイヤ内部のゴムは特に制限されない。例えば、ブチルゴムが挙げられる。タイヤ内部のゴムの表面自由エネルギーは、タイヤパンクシール材とぬれやすくなりタイヤパンクシール材の使用量をより低減し、シール性能により優れるという観点から、35〜65mJ/m2であるのが好ましい。
また、本発明のタイヤパンクシール材の使用量はパンク穴の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0027】
本発明のタイヤパンクシール材は、例えば、手絞り対応タイヤ応急パンク修理液として使用することができる。
また、本発明のタイヤパンクシール材は、その使用方法について特に制限されない。例えば、まず、本発明のタイヤパンクシール材をタイヤの空気充填部からタイヤ内に注入する。本発明のタイヤパンクシール材をタイヤ内に注入する方法は、特に限定されず従来公知の方法を用いることができ、例えば、シリンジ、スプレー缶等を用いる方法が挙げられる。
次に、所定の空気圧まで空気を充填する。
その後、車を走行させる。タイヤが回転接地する際に受ける圧縮力や剪断力によって合成樹脂等の凝集体を形成し、パンク穴をシールすることができる。なお本発明のタイヤパンクシール材の使用方法は上記の方法に限定されない。
本発明のタイヤパンクシール材をタイヤパンク修理キットに組み込むことができる。
【0028】
本発明のタイヤパンク修理キットについて以下に説明する。
本発明のタイヤパンク修理キットは、本発明のタイヤパンクシール材を有するタイヤパンク修理キットである。
本発明のタイヤパンク修理キットに使用されるタイヤパンクシール材は、本発明のタイヤパンクシール材であれば特に制限されない。
本発明のタイヤパンク修理キットはタイヤパンクシール材以外に例えば、シリンジ、スプレー缶、コンプレッサー、エマルジョン凝固剤を有することができる。
本発明のタイヤパンク修理キットは、その使用方法について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
<タイヤパンクシール材の製造>
第1表に示す成分を同表に示す量(質量部)で用いて均一に混合し、タイヤパンクシール材を製造した。
<評価>
上記のとおり製造したタイヤパンクシール材を用いて、タイヤのパンクをシールできる、タイヤパンクシール材の使用量の下限を以下の方法で評価した。結果を第1表に示す。
まず、195/65R15のサイズのタイヤのトレッドショルダー部に、直径4mmの釘を貫通させて1個のパンク孔をあけた。
当該タイヤのトレッドショルダー部のゴムはブチルゴムであり、その表面自由エネルギーは50mJ/m2であった。ゴムの表面自由エネルギーは、液体として水とヨウ化メチレンの液滴を用いて、ゴム上にできた液滴の接触角を協和界面科学社製接触角計を用いて25℃の条件下で測定し、Fowkes式から求めた。
次いで、パンク孔を空けたタイヤをドラム試験機に装着し、上記のとおり製造したタイヤパンクシール材200〜600ミリリットルを、タイヤのバルブ口から注入し、タイヤ内圧が200kPaになるように空気を充填した。
その後、荷重350kg、時速30kmの条件下で上記タイヤを10分間走行させて、走行後に、目視による確認、及び、石鹸水をパンク孔付近に吹き付ける処理による評価をして、空気漏れがなくなるかどうかを確認した。空気漏れをなくすことができた、タイヤパンクシール材の使用量の下限値を第1表に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
第1表に示されている各成分の詳細は以下のとおりである。
・NRラテックス1:商品名Hytex HA、フェルフェックス社製、野村貿易社、天然ゴムラテックス
・EVAエマルジョン1:商品名スミカフレックスS400HQ、住化ケムテックス社製、エチレン酢酸ビニル共重合体の樹脂エマルジョン
・EVAエマルジョン2:商品名スミカフレックスS951HQ、住化ケムテックス社製、エチレン酢酸ビニルバーサチック酸ビニル共重合体の樹脂エマルジョン
・シリコーンエマルジョン1:商品名MF23、信越化学工業社製、反応型シリコーンオイルのエマルジョン
・シリコーンエマルジョン2:商品名オフコンT、信越化学工業社製、低粘度(10〜1,000mm2/s)ジメチルシリコーンオイルのエマルジョン
・シリコーンエマルジョン3:商品名x−52−8048、信越化学工業社製、長鎖アルキル基含有シリコーンオイルのエマルジョン
・シリコーンエマルジョン4:商品名KM797、信越化学工業社製、高粘度(10万〜100万mm2/s)ジメチルシリコーンオイルのエマルジョン
・シリコーンエマルジョン5:商品名KM862T、信越化学工業社製、中粘度(1万mm2/s)ジメチルシリコーンオイルのエマルジョン
・界面活性剤1 SDS:ラウリル硫酸ナトリウム、陰イオン性界面活性剤、和光純薬工業社製
・界面活性剤2 POE:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、非イオン性界面活性剤、エマルゲン109、花王社製
・凍結防止剤1:プロピレングリコール、和光純薬工業社製
・凍結防止剤2:エチレングリコール、和光純薬工業社製
・凍結防止剤3:ジエチレングリコール、和光純薬工業社製
・凍結防止剤4:グリセリン、和光純薬工業社製
【0032】
第1表に示す結果から明らかなように、合成樹脂エマルジョンAを含有しない比較例1、9は、パンク孔をシールするために必要なタイヤパンクシール材の使用量が非常に多かった。合成樹脂エマルジョンAの固形分が、天然ゴムラテックスの固形分及び/又は合成樹脂エマルジョンBの固形分100質量部に対して5質量部未満である比較例2〜4は、タイヤパンクシール材の使用量が非常に多かった。合成樹脂エマルジョンAの固形分が、天然ゴムラテックスの固形分及び/又は合成樹脂エマルジョンBの固形分100質量部に対して25質量部を超える比較例5〜6は、パンク孔をシールできなかった。合成樹脂エマルジョンすべての表面自由エネルギーが50mJ/m2を超える比較例7、8はタイヤパンクシール材の使用量が非常に多かった。
これに対して、実施例1〜8は、パンクをシールするために必要なタイヤパンクシール材の量が少なかった。
また、いずれの実施例・比較例でもパンク修理後に、使用されたタイヤパンクシール材の略全量が回収されたが、その回収量も、実施例は比較例より少なかった。
このように本発明のタイヤパンクシール材は、その使用量を低減でき、シール性に優れる。また使用後のタイヤパンクシール材の量(廃棄物量)を低減できる。タイヤパンクシール材の使用量を低減できることから、本発明のタイヤパンク修理キットはコンパクトで、当該キットにおけるコストダウン(MCD)にもなる。