(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
真空容器内に配置されたアンテナに高周波電流を流すことによって前記真空容器内に誘導電界を発生させて誘導結合型のプラズマを生成し、当該プラズマを用いて基板に処理を施すプラズマ処理装置であって、
前記アンテナは、絶縁パイプと、その中に配置されていて内部に冷却水が流される中空のアンテナ本体とを備えており、
前記アンテナ本体は、(a)複数の金属パイプを、隣り合う金属パイプ間に中空絶縁体を介在させて直列接続した構造をしていて、当該接続部は真空および前記冷却水に対するシール機能を有しており、(b)かつ前記中空絶縁体の部分に設けられたコンデンサを有していて、前記中空絶縁体の両側の前記金属パイプと当該コンデンサとを電気的に直列接続した構造をしており、
前記中空絶縁体および前記コンデンサは前記真空容器内に配置されており、
更に、前記アンテナ本体の一方端部である給電端部に接続されていて前記アンテナ本体に前記高周波電流を供給する高周波電源を備えており、
かつ、前記アンテナ本体の他方端部である終端部をコイルを介して接地している、ことを特徴とするプラズマ処理装置。
前記コンデンサは、前記中空絶縁体の外周部に配置された層状のコンデンサであり、(a)前記中空絶縁体の外周部に配置された電極であって、当該中空絶縁体の一方側に接続された前記金属パイプに電気的に接続された第1の電極と、(b)前記中空絶縁体の外周部に、前記第1の電極と重なるように配置された電極であって、当該中空絶縁体の他方側に接続された前記金属パイプに電気的に接続された第2の電極と、(c)前記第1の電極および第2の電極間に配置された誘電体とを有している請求項1記載のプラズマ処理装置。
前記位相制御器は、前記第1の高周波電源から出力する高周波電流と前記第2の高周波電源から出力する高周波電流との間の位相差を実質的に180度に制御するものである請求項6記載のプラズマ処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に記載の技術は、アンテナ導体とコンデンサとが直列接続された構造であるので、電位の反転によるループ状アンテナ全体の両端間の電位差を低減させることはできるけれども、プラズマ発生に直接関わる、誘電体窓に近接する導体は直線状導体であるので、基板の大型化に対応する等のために当該直線状導体を長くすると、それに伴って個々の直線状導体のインピーダンスが増加する。その結果、誘電体窓に近接する個々の直線状導体の両端間に発生する電位差が大きくなり、プラズマの均一性を低下させる。また、個々の直線状導体のインピーダンス増加に伴い、高周波電流が流れにくくなり、誘導結合状態が効率的に得られなくなる。
【0010】
更に、外部アンテナであって誘電体窓を通しての誘導結合であるため、誘電体窓材の厚みのためにプラズマ空間までの距離が遠く、内部アンテナに比べてプラズマ生成の効率が低下する。
【0011】
上記特許文献2に記載の技術では、基板の大型化に対応する等のために各アンテナを長くすると、それに伴って個々のアンテナのインピーダンスが増加する。その結果、個々のアンテナの両端間に発生する電位差が大きくなり、プラズマの均一性を低下させる。また、個々のアンテナのインピーダンス増加に伴い、高周波電流が流れにくくなり、誘導結合状態が効率的に得られなくなる。
【0012】
上記特許文献3に記載の技術は、内部アンテナであるので外部アンテナに比べてプラズマ生成の効率が高く、かつ平面状アンテナの真空容器内側の主面に設けた1以上の溝内にコンデンサをそれぞれ設けているので、基板の大型化に対応する等のために平面状アンテナを長くしてもその両端間に発生する電位差を小さく抑えることができるという特長を有しているけれども、パイプ状のアンテナに比べて、平面状アンテナはその平面内で2次元方向の電位分布を持ちやすく、それに相当するプラズマ分布が発生し、それが基板表面の膜に転写されやすいという課題がある。
【0013】
そこでこの発明は、真空容器内に配置されたアンテナに高周波電流を流すことによって真空容器内に誘導結合型のプラズマを生成する装置であって、アンテナ導体に金属パイプを用いており、しかもアンテナを長くする場合でもそのインピーダンスの増大を抑えることができるプラズマ処理装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係るプラズマ処理装置は、真空容器内に配置されたアンテナに高周波電流を流すことによって前記真空容器内に誘導電界を発生させて誘導結合型のプラズマを生成し、当該プラズマを用いて基板に処理を施すプラズマ処理装置であって、前記アンテナは、絶縁パイプと、その中に配置されていて内部に冷却水が流される中空のアンテナ本体とを備えており、前記アンテナ本体は、(a)複数の金属パイプを、隣り合う金属パイプ間に中空絶縁体を介在させて直列接続した構造をしていて、当該接続部は真空および前記冷却水に対するシール機能を有しており、(b)かつ前記中空絶縁体の部分に設けられたコンデンサを有していて、前記中空絶縁体の両側の前記金属パイプと当該コンデンサとを電気的に直列接続した構造をしており、前記中空絶縁体および前記コンデンサは前記真空容器内に配置されており、更に、前記アンテナ本体の一方端部である給電端部に接続されていて前記アンテナ本体に前記高周波電流を供給する高周波電源を備えており、かつ、前記アンテナ本体の他方端部である終端部をコイルを介して接地している、ことを特徴としている。
【0015】
このプラズマ処理装置によれば、アンテナを構成するアンテナ本体は、複数の金属パイプを、中空絶縁体の部分に設けられたコンデンサで電気的に直列接続した構造をしていて、アンテナ本体の合成リアクタンスは、簡単に言えば、誘導性リアクタンスから容量性リアクタンスを引いた形になるので、アンテナのインピーダンスを低減させることができる。その結果、アンテナを長くする場合でもそのインピーダンスの増大を抑えることができる。
【0016】
しかも、アンテナ本体の終端部をコイルを介して接地しているので、当該コイルの両端に発生する電圧によってアンテナ全体の電位を持ち上げることができる。その結果、アンテナに高周波電流を流すことによって発生する誘導電界によってプラズマを生成する、いわゆる誘導結合モードによるプラズマ生成に加えて、アンテナと真空容器の内壁等との間に発生する高周波電界によってプラズマを生成する、いわゆる容量結合モードによるプラズマ生成を利用することができるので、プラズマ生成の効率をより向上させることができ、それによって基板処理の効率をより向上させることができる。
【0017】
前記コンデンサは、前記中空絶縁体の外周部に配置された層状のコンデンサであっても良い。
【0018】
前記アンテナは直線状のアンテナであり、当該アンテナを複数、前記基板の表面に沿う方向に並列に配置している、という構成を採用しても良い。
【0019】
前記複数のアンテナを、隣り合うアンテナが異なるグループに属するように第1および第2のグループに分けており、前記第1のグループに属するアンテナのアンテナ本体に高周波電流を供給する第1の高周波電源と、前記第2のグループに属するアンテナのアンテナ本体に高周波電流を供給する第2の高周波電源と、前記第1の高周波電源から出力する高周波電流と前記第2の高周波電源から出力する高周波電流との間の位相差を制御する位相制御器とを備えている、という構成を採用しても良い。
【0020】
更にその他の変形例を採用しても良い。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、アンテナは、真空容器内に配置された内部アンテナであるので、外部アンテナに比べてプラズマ生成の効率が高い。
【0022】
しかも、アンテナを構成するアンテナ本体は、複数の金属パイプを、中空絶縁体の部分に設けられたコンデンサで電気的に直列接続した構造をしていて、アンテナ本体の合成リアクタンスは、簡単に言えば、誘導性リアクタンスから容量性リアクタンスを引いた形になるので、アンテナのインピーダンスを低減させることができる。その結果、アンテナを長くする場合でもそのインピーダンスの増大を抑えることができる。従って、当該アンテナの両端部間に大きな電位差が発生するのを抑えることができる。それによって均一性の良いプラズマを発生させることが可能になる。
【0023】
また、アンテナを長くする場合でもそのインピーダンスの増大を抑えることができるので、アンテナに高周波電流が流れやすくなり、誘導結合型のプラズマを効率良く発生させることが可能になる。ひいては基板処理の効率を高めることができる。
【0024】
更に、アンテナ本体の終端部をコイルを介して接地しているので、当該コイルの両端に発生する電圧によってアンテナ全体の電位を持ち上げることができる。その結果、アンテナに高周波電流を流すことによって発生する誘導電界によってプラズマを生成する、いわゆる誘導結合モードによるプラズマ生成に加えて、アンテナと真空容器の内壁等との間に発生する高周波電界によってプラズマを生成する、いわゆる容量結合モードによるプラズマ生成を利用することができるので、プラズマ生成の効率をより向上させることができ、それによって基板処理の効率をより向上させることができる。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、アンテナ本体は、中空絶縁体の外周部に配置された層状のコンデンサを有しているので、金属パイプとその外側の絶縁パイプとの間の距離をあまり増大させずに済み、かつ内部に流される冷却水の流れに対する抵抗をあまり増大させずに済む。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、直線状のアンテナを複数、基板の表面に沿う方向に並列に配置しているので、より広い領域で均一性の良いプラズマを発生させることができ、従ってより大型の基板処理に対応することができる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3記載の発明の効果と同様の効果に加えて、次の更なる効果を奏する。即ち、複数のアンテナのアンテナ本体の終端部を一括してコイルを介して接地しているので、コイルの数が少なくて済む。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、直線状のアンテナを複数、基板の表面に沿う方向に並列に配置しているので、より広い領域で均一性の良いプラズマを発生させることができ、従ってより大型の基板処理に対応することができる。
【0029】
しかも、複数のアンテナを、隣り合うアンテナが異なるグループに属するように第1および第2のグループに分けており、かつ第1のグループに属するアンテナに高周波電流を供給する第1の高周波電源から出力する高周波電流と、第2のグループに属するアンテナに高周波電流を供給する第2の高周波電源から出力する高周波電流との間の位相差を制御する位相制御器とを備えていて、両グループに属するアンテナに流す高周波電流に位相差を付けることができるので、隣り合うアンテナ間に電位差を生じさせることができる。この電位差によって、隣り合うアンテナ間にいわゆる容量結合モードによってプラズマを生成することができるので、プラズマ生成の効率をより向上させることができると共に、複数のアンテナの並び方向におけるプラズマ密度分布の均一性を向上させることができる。
【0030】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5記載の発明の効果と同様の効果に加えて、次の更なる効果を奏する。即ち、第1のグループに属するアンテナのアンテナ本体の終端部を一括して第1のコイルを介して接地し、第2のグループに属するアンテナのアンテナ本体の終端部を一括して第2のコイルを介して接地しているので、コイルの数が少なくて済む。更に、上記のようにアンテナのグループごとにコイルを設けると、一方のグループに属するアンテナの終端部から他方のグループに属するアンテナの終端部を経由して高周波電力が他方の高周波電源に戻って干渉を起こす等の不具合が発生することを防止することができる。
【0031】
請求項7に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、両高周波電源から出力する高周波電流の位相差を実質的に180度にすることによって、隣り合うアンテナ間の電位差を最大にすることができるので、容量結合モードによって隣り合うアンテナ間に効率良くプラズマを生成することができる。その結果、プラズマ生成の効率を更に向上させることができると共に、複数のアンテナの並び方向におけるプラズマ密度分布の均一性を向上させることがより容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に、この発明に係るプラズマ処理装置の一実施形態を示し、
図2に
図1中のアンテナのコンデンサ周りの一例を拡大して示す。
【0034】
このプラズマ処理装置は、真空容器2内に配置されたアンテナ20に高周波電流I
R を流すことによって真空容器2内に誘導電界を発生させて誘導結合型のプラズマ16を生成し、当該プラズマ16を用いて基板10に処理を施す装置である。より具体的には、このプラズマ処理装置は、真空排気されかつガス8が導入される真空容器2と、この真空容器2内に配置されていて高周波電流I
R が流されて真空容器2内に誘導電界を発生させて誘導結合型のプラズマ16を発生させるためのアンテナ20と、このアンテナ20に高周波電流I
R を供給する高周波電源56とを備えていて、発生させたプラズマ16を用いて基板10に処理を施すように構成されている。
【0035】
基板10は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等であるが、これに限られるものではない。
【0036】
基板10に施す処理は、例えば、プラズマCVD法等による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等である。
【0037】
このプラズマ処理装置は、プラズマCVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、スパッタリングを行う場合はプラズマスパッタリング装置とも呼ばれる。
【0038】
真空容器2は、例えば金属製の容器であり、その内部は真空排気装置4によって真空排気される。真空容器2はこの例では電気的に接地されている。
【0039】
真空容器2内に、例えば流量調節器(図示省略)およびガス導入管6を経由して、ガス8が導入される。ガス導入管6は、一つでも良いし、この実施形態のようにアンテナ20の長手方向(X方向)に沿って複数配置しても良い。ガス8は、基板10に施す処理内容に応じたものにすれば良い。例えば、プラズマCVD法によって基板10に膜形成を行う場合は、ガス8は、原料ガスを希釈ガス(例えばH
2 )で希釈したガスである。より具体例を挙げると、原料ガスがSiH
4 の場合はSi 膜を、SiH
4 +NH
3 の場合はSiN膜を、SiH
4 +O
2 の場合はSiO
2 膜を、SiF
4 +N
2 の場合はSiN:F膜(フッ素化シリコン窒化膜)を、それぞれ基板10の表面に形成することができる。
【0040】
真空容器2内に、基板10を保持する基板ホルダ12が設けられている。この例のように、基板ホルダ12にバイアス電源14からバイアス電圧を印加するようにしても良い。バイアス電圧は、例えば負の直流電圧、負のパルス電圧等であるが、これに限られるものではない。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマ16中の正イオンが基板10に入射するときのエネルギーを制御して、基板10の表面に形成される膜の結晶化度を制御することができる。この例のように、基板ホルダ12内に、基板10を加熱するヒータ13を設けておいても良い。
【0041】
アンテナ20は、この例では直線状のアンテナであり、真空容器2内の上部付近に、基板10の表面に沿うように(例えば、基板10の表面と実質的に平行に)配置されている。真空容器2内に配置するアンテナ20は、一つでも良いし、複数でも良い。複数にする場合の一例を、後で
図8等を参照して説明する。
【0042】
アンテナ20は、絶縁パイプ22と、その中に配置されていて内部に冷却水44が流される中空のアンテナ本体24とを備えている。アンテナ本体24は、この例では、絶縁パイプ22内に空間23を介して配置されている。その理由は後述する。
【0043】
絶縁パイプ22の材質は、例えば、石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコン、シリコン等であるが、これらに限られるものではない。
【0044】
絶縁パイプ22を設ける理由は次のとおりである。即ち、公知のように、導体と高周波プラズマとが近接する構造の場合、プラズマ中のイオンよりも電子の方が軽くて遥かに多く導体に入射するので、プラズマ電位が導体よりも正側に上昇する。これに対して、上記のような絶縁パイプ22を設けておくと、絶縁パイプ22によって、プラズマ16中の荷電粒子がアンテナ本体24を構成する金属パイプ26に入射するのを抑制することができるので、金属パイプ26に荷電粒子(主として電子)が入射することによるプラズマ電位の上昇を抑制することができると共に、金属パイプ26が荷電粒子(主としてイオン)によってスパッタされてプラズマ16および基板10に対して金属汚染(メタルコンタミネーション)が生じるのを抑制することができる。
【0045】
アンテナ本体24は、複数の金属パイプ26を、隣り合う金属パイプ26間に中空絶縁体28を介在させて直列接続した構造をしていて、各接続部は真空および冷却水44に対するシール機能を有している。このシール機能は、公知のシール手段で実現することができる。例えば、パッキンを用いても良いし、
図4に示すような管用テーパねじ構造を用いても良い。これについては後述する。
【0046】
この例では金属パイプ26の数は二つであり、従って中空絶縁体28(ひいては当該中空絶縁体28の部分に設けられたコンデンサ30)の数は一つであるが、金属パイプ26の数は三つ以上でも良く、いずれにしても中空絶縁体28(ひいては当該中空絶縁体28の部分に設けられたコンデンサ30)の数は金属パイプ26の数よりも一つ少ないものになる。
【0047】
アンテナ本体24は、中空絶縁体28の部分に設けられたコンデンサ30を有していて、中空絶縁体28の左右両側の金属パイプ26と当該コンデンサ30とを電気的に直列接続した構造をしている(
図5の等価回路参照)。中空絶縁体28およびコンデンサ30は真空容器2内に配置されている。
【0048】
コンデンサ30は、この実施形態では、中空絶縁体28の外周部に配置された層状のコンデンサである。このコンデンサ30は、主に
図2を参照して、(a)中空絶縁体28の外周部に配置された電極であって、当該中空絶縁体28の一方側に接続された金属パイプ26に電気的に接続された第1の電極32と、(b)中空絶縁体28の外周部に、第1の電極32と重なるように配置された電極であって、当該中空絶縁体28の他方側に接続された金属パイプ26に電気的に接続された第2の電極34と、(c)第1の電極32および第2の電極34間に配置された誘電体36とを有している。電極32、34のリード部と金属パイプ26とは、例えば、半田付け等による接合、熱収縮チューブを用いての圧接等によって電気的に接続しても良い。
【0049】
金属パイプ26の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等であるが、これらに限られるものではない。
【0050】
中空絶縁体28は、
図2に示す例では絶縁パイプである。中空絶縁体28の材質は、例えば、アルミナ、フッ素樹脂、ポリエチレン(PE)、エンジニアリングプラスチック(例えばポリフェニンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など)等であるが、これらに限られるものではない。
【0051】
電極32、34は、例えば金属の膜、箔、フィルム、シート等である。電極32、34の材質は、例えば、アルミニウム、銅、これらの合金等であるが、これらに限られるものではない。
【0052】
コンデンサ30は、第1の電極32、第2の電極34および誘電体36を、それぞれ1層ずつ有していても良いし(
図2はこの場合の例を示す)、それぞれ複数層ずつ有していても良い。
【0053】
第1の電極32、第2の電極34および誘電体36は、中空絶縁体28の外周部にそれぞれ個別に配置しても良いし、例えば
図3に示す例のようなフィルム状(シート状とも言える。以下同様)の誘電体および電極を中空絶縁体28の外周部に巻き付けること等によって一括して配置しても良い。
【0054】
図3の例は、フィルム状の誘電体36の一方の主面に第1の電極32を例えば金属蒸着等によって形成し、他方の主面(紙面の裏側)であって電極32と重なる位置に第2の電極34を例えば金属蒸着等によって形成し、両電極32、34の取り出し部に接続導体38、40をそれぞれ接続した構造をしている。
【0055】
このようなフィルム状の誘電体および電極を、上記中空絶縁体28の外周部に所望回数(例えば1回または複数回)巻き付けて、接続導体38、40を左右の金属パイプ26にそれぞれ接続すれば良い。複数回巻き付ける場合は、間にもう1枚の誘電体フィルムを挟めば良い。複数回巻き付けることによって、簡単な方法で、第1の電極32、第2の電極34および誘電体36をそれぞれ複数層配置することができる。フィルム状の誘電体36の片面に電極(これは電極32または電極34に相当する)を設けたものを2枚重ねて中空絶縁体28の外周部に所望回数巻き付けても良い。電極32、34として、金属箔を用いても良い。コンデンサ30を構成する上記要素の固定・接続は、例えば、熱収縮チューブ等を用いて行っても良い。
【0056】
コンデンサ30の静電容量Cは、周知の次式で表すことができる。Sは対向している電極32、34の面積、dは両電極32、34間の距離、εは誘電体36の誘電率である。従って、これらS、d、εの内の一つ以上を変えることによって、静電容量Cを調整することができる。上述した電極32、34および誘電体36をそれぞれ複数層配置すると、上記面積Sが大きくなるので静電容量Cが大きくなる。
【0058】
左右の金属パイプ26と中空絶縁体28との各接続部には、
図4に示す例のような管用テーパねじ構造を用いても良い。即ちこの例では、左右の金属パイプ26の端部に、金属製で雌ねじのテーパねじ部42をそれぞれ接合しており、そこに、両端部に雄ねじのテーパねじ部29を有する中空絶縁体28をねじ込んでいる。この中空絶縁体28の材質は、前述した材質の内でもより硬いもの(例えばエンジニアリングプラスチック)が好ましい。各テーパねじ部42とテーパねじ部29との間には、シールテープを挟んでも良い。このような管用テーパねじ構造によっても、上記各接続部に真空および冷却水44に対するシール機能を持たせることができる。この中空絶縁体28の外周部に、前述したコンデンサ30を配置すれば良い。
【0059】
再び
図1を参照して、アンテナ20の両端部を真空容器2外へ貫通させる部分には、絶縁部46がそれぞれ設けられている。この各絶縁部46を、アンテナ本体24の両端部の金属パイプ26が貫通しており、その貫通部は例えばパッキン48によって真空シールされている。各絶縁部46と真空容器2との間も、例えばパッキン50によって真空シールされている。絶縁パイプ22は真空容器2内にあり、その両端部は絶縁部46によって支持されている。この例のように、真空領域から大気領域へのアンテナ20の取り出しは、金属パイプ26の部分で行う方が、加工が容易である。なお、絶縁パイプ22の両端部と絶縁部46間はシールしなくても良い。絶縁パイプ22内の空間23にガス8が入っても、当該空間23は小さくて電子の移動距離が短いので、通常は空間23にプラズマは発生しないからである。
【0060】
アンテナ本体24の内部、即ち金属パイプ26および中空絶縁体28の内部に流す冷却水44は、電気絶縁の観点から、高抵抗の水が好ましい。例えば純水またはそれに近い水が好ましい。金属パイプ26に高周波電流I
R を流すと、金属パイプ26は抵抗を有しているために発熱する(即ち、ジュール熱を発生する)。この熱は中空絶縁体28およびコンデンサ30にも伝わるけれども、これらの要素26、28、30は、上記冷却水44によって冷却して温度を下げることができる。コンデンサ30も、主として中空絶縁体28との間の熱伝導によって、冷却水44によって冷却することができる。
【0061】
コンデンサ30は、上記のような層状のコンデンサが好ましいけれども、アンテナ20のインピーダンスの増大を抑える作用の観点からは、それ以外のコンデンサでも良い。例えば、上記特許文献3の
図2等に記載のような電子部品(パーツ)としてのコンデンサ(即ち、それ自身で電子部品として完成していて、独立して電子部品として取り扱うことのできるコンデンサ)を中空絶縁体28の部分に設けても良い。例えば、電子部品としてのコンデンサを、中空絶縁体28の外部(但し絶縁パイプ22の内側)に取り付けても良いし、中空絶縁体28の内部に埋め込む等しても良い。層状のコンデンサが好ましい理由は後で詳述する。
【0062】
アンテナ20(より具体的にはそのアンテナ本体24)の一方端部である給電端部51には、整合回路58を介して、アンテナ20(より具体的にはそのアンテナ本体24)に高周波電流I
R を供給する高周波電源56が接続されており、他方端部である終端部52は、コイル66を介して接地している。
【0063】
高周波電源56から出力する高周波電力、高周波電流I
R の周波数は、例えば、一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではない。
【0064】
アンテナ20に高周波電流I
R を流すことによって、アンテナ20の周囲に高周波磁界が発生し、それによって高周波電流I
R と逆方向に誘導電界が発生する。この誘導電界によって、真空容器2内において、電子が加速されてアンテナ20の近傍のガス8を電離させてアンテナ20の近傍にプラズマ(即ち誘導結合型のプラズマ)16が発生する。このプラズマ16は基板10の近傍まで拡散し、このプラズマ16によって基板10に前述した処理を施すことができる。
【0065】
上記アンテナ20は、真空容器2内に配置された内部アンテナであり、当該アンテナ20を流れる高周波電流I
R によって作られる高周波磁場を近くからプラズマ16の生成に効果的に使うことができるので、外部アンテナに比べてプラズマ生成の効率が高い。
【0066】
しかも、アンテナ20を構成するアンテナ本体24は、複数の金属パイプ26を、中空絶縁体28の部分に設けられたコンデンサ30で電気的に直列接続した構造をしていて、アンテナ本体24の合成リアクタンスは、簡単に言えば、誘導性リアクタンスから容量性リアクタンスを引いた形になるので、アンテナ20のインピーダンスを低減させることができる。
【0067】
これを詳述すると、
図1に示すアンテナ20(より具体的にはそのアンテナ本体24)の等価回路を
図5(A)に示す。ここでは、各金属パイプ26のインダクタンスをL、抵抗をR、コンデンサ30の静電容量をCとしている。各金属パイプ26のインダクタンスLと抵抗Rは、各金属パイプ26を互いに実質的に同じ長さにすれば、実質的に同じ値にすることができる。このアンテナ20のインピーダンスZ
A は次式で表すことができる。ωは高周波電流I
R の角周波数、jは虚数単位である。
【0068】
[数2]
Z
A =2R+j(2ωL−1/ωC)
【0069】
上記式の虚数部がアンテナ本体24の合成リアクタンスであり、誘導性リアクタンス2ωLから容量性リアクタンス1/ωCを引いた形となっているので、コンデンサ30を直列接続することによって、アンテナ20のインピーダンスZ
A を低減させることができる。換言すれば、このアンテナ20によれば、そのアンテナ本体24を構成する金属パイプ26およびコンデンサ30の個数等を適宜選定することができるので、それによって、アンテナ20の長さに関わらず、アンテナ20のインピーダンスZ
A を適当な値に設計することができる。
【0070】
その結果、基板10の大型化に対応する等のためにアンテナ20を長くする場合でもそのインピーダンスZ
A の増大を抑えることができる。従って、当該アンテナ20の両端間に大きな電位差が発生するのを抑えることができる。それによって均一性の良いプラズマ16を発生させることが可能になる。ひいては、基板10の処理の均一性を高めることができる。
【0071】
また、アンテナ20を長くする場合でもそのインピーダンスZ
A の増大を抑えることができるので、アンテナ20に高周波電流I
R が流れやすくなり、誘導結合型のプラズマ16を効率良く発生させることが可能になる。ひいては、基板10の処理の効率を高めることができる。
【0072】
上記説明からも分るように、コンデンサ30の静電容量Cは、アンテナ本体24のインピーダンスの虚数部(例えば上記数2の虚数部)が、より厳密に言えばプラズマ16の生成時における当該虚数部が、できるだけ小さくなるように設定しておくのが好ましい。「プラズマ16の生成時」と言っているのは、プラズマ生成時に上記インダクタンスLが低下することが経験上分っており、この低下分を見込んで設計しておくのが好ましいからである。上記虚数部が0になるときが直列共振条件を満たしている場合であり、そのようにするのが好ましいけれども、必ずしも直列共振条件を満たしている必要はない。通常は誘導性リアクタンスの方が大きい場合が多く、従ってアンテナ20のインピーダンスZ
A は通常は誘導性の場合が多いが、それでも構わない。
【0073】
図5(A)の回路において、アンテナ20に高周波電流I
R を流したとき、上記直列共振条件を満たしている場合のアンテナ20の電位分布の一例を
図5(B)中に実線Aで示す。この
図5(B)では、説明の簡略化のために、抵抗Rを無視している。傾斜部S
1 は誘導性リアクタンスωLによる電位上昇分、傾斜部S
2 は容量性リアクタンス1/ωCによる電位降下分である。なお、アンテナ20の給電端部51の電圧V
1 および終端部52の電圧V
2 については後述する。
【0074】
図5(B)中の二点鎖線Bは、アンテナが上記コンデンサ30に相当するものを有していない従来の単なる導体の場合の電位分布である。
【0075】
この
図5(B)から分るように、上記アンテナ20の場合は、その両端部51、52間の電位差を小さく抑えることができる。従って、均一性の良いプラズマ16を生成することができ、ひいては基板処理の均一性を高めることができる。
【0076】
上述した直列共振条件を満たしていない場合は、例えば、
図5(B)中の点bの電位が幾らか正側(誘導性の場合)または負側(容量性の場合)にシフトし、それに応じて他の部分の電位もシフトすることになる。それでも、二点鎖線Bで示す従来の単なる導体の場合に比べれば、アンテナの両端部間の電位差を小さく抑えることができる。
【0077】
また、このプラズマ処理装置は、アンテナ本体24の終端部52をコイル66を介して接地しているので、当該コイル66の両端に発生する電圧V
2 によってアンテナ20全体の電位を持ち上げることができる。即ち、アンテナ20に流れる高周波電流をI
R 、コイル66が有する抵抗をR
1 、インダクタンスをL
1 とすると、コイル66の両端に発生する電圧V
2 は次式で表され、これが終端部52の電圧になり、この電圧V
2 ぶん、終端部52を直接接地(即ち、コイルやコンデンサを介さずに接地。以下同様)している場合に比べて、アンテナ20全体の電位が持ち上げられる。その様子の例を
図5(B)に示す。V
1 は給電端部51の電圧を示す。
【0078】
[数3]
V
2 =(R
1 +jωL
1 )I
R
【0079】
その結果、前述したようにアンテナ20に高周波電流I
R を流すことによって発生する誘導電界によってプラズマ16を生成する、いわゆる誘導結合モードによるプラズマ生成に加えて、アンテナ20と真空容器2の内壁等との間に発生する高周波電界によってプラズマ16を生成する、いわゆる容量結合モードによるプラズマ生成を利用することができるので、プラズマ生成の効率をより向上させることができ、それによって基板処理の効率をより向上させることができる。例えば、基板10に膜形成を行う場合は、成膜速度が増加する。基板10にエッチングを施す場合は、エッチング速度が増加する。
【0080】
ちなみに、前述したように複数の金属パイプ26をコンデンサ30で電気的に直列接続した構成を採用することによって、アンテナ20の両端部間の電位差を小さくすることができるけれども、アンテナ20の終端部52を直接接地した場合は、当該終端部52が接地電位になるために、アンテナ20全体の電位も低くなり、上記の容量結合モードによるプラズマ生成を期待することはできない。従って、終端部52をコイル66を介して接地する場合に比べて、プラズマの生成効率は低い。例えば、プラズマCVD法によって基板10上に膜形成を行う場合は、成膜速度が小さい(後述する
図13およびその説明も参照)。
【0081】
また、アンテナ20の終端部52をコンデンサを介して接地することが考えられるけれども、それよりもコイル66を介して接地する方が有利である。これを以下に説明する。
【0082】
アンテナ20のインピーダンスZ
A は前述したように通常は誘導性の場合が多く、アンテナ20が誘導性の場合に、アンテナ20の終端部52をコイル66を介して接地した場合のアンテナ20の電位分布の例を簡略化して
図6に示す。アンテナ20の電位は、コンデンサ30を直列挿入しているために、細かく見れば例えば
図5(B)中に実線Aで示したように波打っているけれども、ここではその説明は重要ではないので、簡略化して直線で示している(
図7においても同様)。即ちこの
図6は、
図5(B)中の実線Aの場合を簡略化したものに相当する。
【0083】
アンテナ20の給電端部51と終端部52間の電圧をV
A (=Z
A ・I
R )とすると、アンテナ20のインピーダンスZ
A が誘導性であるので、終端部52を同じ誘導性リアクタンスを有するコイル66を介して接地した場合は、簡単に言えば、アンテナ20の上記電圧V
A と、終端部52の電圧V
2 とは互いに位相が近くなり、アンテナ20全体の電位は電圧V
2 によって持ち上げられるので、前述したようにアンテナ20全体の電位はかなり高くなる。それによって、前述したように、誘導結合モードによるプラズマ生成に加えて、容量結合モードによるプラズマ生成を利用することができるので、プラズマ生成の効率を向上させることができる。なお、アンテナ20に流すのは高周波電流I
R であるため、その周波数で、アンテナ20、給電端部51および終端部52の電圧は、
図6中に実線で示す状態と破線で示す状態との間で反転して振動する。
【0084】
一方、アンテナ20の終端部52を容量性リアクタンスを有するコンデンサを介して接地した場合は、簡単に言えば、終端部52の電圧は、位相の観点からは、コイル66を介して接地している
図6の場合とは逆向きの−V
2 となり、
図7に示す例のように、アンテナ20全体の電位は当該電圧−V
2 によって引き下げられるので、アンテナ20全体の電位はかなり低くなる。この場合も、アンテナ20に流す高周波電流I
R の周波数で、アンテナ20、給電端部51および終端部52の電圧は、
図7中に実線で示す状態と破線で示す状態との間で反転して振動する。
【0085】
従って、終端部52をコンデンサを介して接地した場合は、アンテナ20全体の電位はかなり低くなるので、前述した容量結合モードによるプラズマ生成を利用することが難しくなる。従って、コイル66を介して接地する場合に比べて、プラズマ生成の効率は低下する。
【0086】
また、コンデンサ接地の場合は、高周波電流I
R を流しても、
図7に示す例のように、アンテナ20の電位分布に、電位が殆ど変化しない節53が生じる。このような節53が生じると、それに対応する位置における基板10の処理状況が他の部分と異なったものになる可能性が生じる。例えば、基板10上に膜を形成する場合、節53に対応する位置の膜質が他とは変化する可能性が生じる。これは好ましくない。コイル66を介して接地する場合は、このような不都合の発生を防止することができる(
図6参照)。
【0087】
更に、終端部52に入れるのがコイル66の場合は、コンデンサに比べて、構造が簡単であるので部材コストおよび製作コストが安くて済み、かつ中空のコイル内に通水すれば冷却も容易であるので、コストおよび冷却の点でコンデンサに比べて有利である。
【0088】
ところで、前述したように、アンテナ本体24の中空絶縁体28の部分に設けるコンデンサ30は、前述したような層状のコンデンサにするのが好ましい。そのようにすると、金属パイプ26とその外側の絶縁パイプ22との間の距離をあまり増大させずに済み、かつ内部に流される冷却水44の流れに対する抵抗をあまり増大させずに済む。
【0089】
これを詳述すると、層状のコンデンサ30の代わりに、前述した電子部品(パーツ)としてのコンデンサを例えば中空絶縁体28の外側に取り付けると、当該コンデンサのぶん、絶縁パイプ22を太くしなければならなくなる。そのようにすると、(a)当該絶縁パイプ22の内側の金属パイプ26と外側のプラズマ16との間の距離が大きくなるので、プラズマ16の生成効率低下の要因になる、(b)太くした絶縁パイプ22内で不要なプラズマが発生する可能性が生じる、等の不都合が生じる可能性がある。層状のコンデンサ30によれば、このような不都合発生を防止することができる。
【0090】
また、電子部品(パーツ)としてのコンデンサを中空絶縁体28の内側に取り付けると、(a)当該コンデンサが冷却水44の流れを阻害してアンテナの冷却性能が低下する可能性が生じる、(b)これを改善するために金属パイプ26および中空絶縁体28をかなり太くすると、上記特許文献3の課題の所でも説明したように、金属パイプ26の面積が大きくなってその電位分布が基板表面の膜に転写されやすくなり膜厚分布が乱れる可能性が生じる、等の不都合が生じる可能性がある。層状のコンデンサ30によれば、このような不都合発生をも防止することができる。
【0091】
次に、アンテナ20の構造等の他の例を説明する。
【0092】
前述したように、アンテナ20のアンテナ本体24を構成する金属パイプ26を三つ以上にし、その各金属パイプ26間に上記中空絶縁体28およびコンデンサ30をそれぞれ設けても良い。そのようにすると、アンテナ20の電位分布を、
図5に示したものよりも小分けにして、アンテナ20の両端間の電位差をより小さくすることができる。
【0093】
コンデンサ30は、層状の場合、前述したように、第1の電極32、第2の電極34および誘電体36をそれぞれ複数層有していても良い。そのようにすると、コンデンサ30の静電容量Cを大きくすることが容易になり、それによって、アンテナ本体24の前記合成リアクタンスをより小さくしてアンテナ20のインピーダンスZ
A を低減させることがより容易になる。
【0094】
アンテナ20を構成するアンテナ本体24は、
図1等に示す例のように、絶縁パイプ22内に空間23を介して配置しておくのが好ましい。そのようにすると、当該空間23の存在によって絶縁パイプ22の表面の電位上昇を抑えることができ、それによってプラズマ電位の上昇を抑えることができる。
【0095】
これを詳述すると、前述したように、高周波電流I
R を流すことによってアンテナ本体24の電位は上昇する(例えば
図5参照)。その場合、アンテナ本体24と絶縁パイプ22間に空間23が存在していると、アンテナ本体24と絶縁パイプ22の表面との間には、当該空間23に存在する小さな静電容量C
3 と、絶縁パイプ22の厚さ内に存在する比較的大きな静電容量C
4 とが直列接続された形になるので、この直列合成静電容量は小さい。従って、絶縁パイプ22の表面はアンテナ本体24の電位上昇の影響を受けにくくなるので、絶縁パイプ22の表面の電位上昇を抑えることができる。それによって、プラズマ16の電位上昇を抑えることができる。これに対して、上記空間23を介さずにアンテナ本体24(具体的にはその金属パイプ26)が絶縁パイプ22の内壁に接していると、上記直列の静電容量C
3 が存在しなくなるので、絶縁パイプ22の表面はアンテナ本体24の電位上昇の影響を受けやすくなり、絶縁パイプ22の表面の電位上昇も大きくなる。それによって、プラズマ16の電位上昇も大きくなる。
【0096】
アンテナ20は、上述した直線状のものに限定されるものではなく、曲がっていても良い。その場合でも前述した作用効果を奏することができる。例えば、アンテナ20は、基板10の平面形状に沿うように曲がっていても良い。また、アンテナ20は、中間部で折り返した形状(例えば細長いU字状)等でも良い。
【0097】
次に、直線状のアンテナ20を複数有しているプラズマ処理装置の実施形態を幾つか説明する。以下においては、
図1等を参照して先に説明した実施形態との相違点、および以下の各実施形態間の相違点を主に説明する。
【0098】
図8は、直線状のアンテナ20を複数有しているプラズマ処理装置の一実施形態を示す概略横断面図である。この実施形態のように、真空容器2内に、直線状の前述したアンテナ20を複数、基板10の表面に沿う方向に(例えば基板10の表面と実質的に平行に)並列に配置しても良い。そのようにすると、より広い領域で均一性の良いプラズマを発生させることができ、従ってより大型の基板処理に対応することができる。
【0099】
この実施形態では、複数のアンテナ20のアンテナ本体24の給電端部51はそれぞれ同じ側(図中の左側)にあり、複数のアンテナ本体24の終端部52はそれぞれ給電端部51とは反対側の同じ側(図中の右側)にある。後述する他の実施形態においても同様である。そして、複数のアンテナ20のアンテナ本体24の給電端部51を、一つの高周波電源56に、一つの整合回路58を介して接続している。但し整合回路58は、各アンテナ20ごとに設けても良い。複数のアンテナ20のアンテナ本体24の終端部52は、この実施形態のように個々にコイル66を介して接地しても良いし、複数の終端部52を一括して一つのコイル66を介して接地しても良い。後者のようにするとコイル66の数が少なくて済む。
【0100】
なお、並列配置するアンテナ20の数は、図示例の4本に限られるものではなく、2本以上で任意である。偶数本でも奇数本でも良い。後述する他の実施形態においても同様である。
【0101】
図9に示す実施形態は、簡単に言えば、
図8に示す実施形態とは、各アンテナ20への高周波電流I
R の供給の仕方が異なる。即ちこの実施形態では、複数のアンテナ20を、隣り合うアンテナ20が異なるグループに属するように(換言すれば、一つ飛びに)第1および第2のグループに分けていて、各グループに属するアンテナ本体24の給電端部51をそれぞれ電気的に並列接続している。更にこの実施形態では、第1のグループに属するアンテナ20のアンテナ本体24に(より具体的にはその給電端部51に。以下同様)高周波電流I
R を供給する第1の高周波電源56aと、第2のグループに属するアンテナ20のアンテナ本体24に高周波電流I
R を供給する第2の高周波電源56bと、第1の高周波電源56aから出力する高周波電流I
R と第2の高周波電源56bから出力する高周波電流I
R との間の位相差を制御する位相制御器68とを備えている。
【0102】
両グループに属するアンテナ20のアンテナ本体24の終端部52は、この実施形態では個々にコイル66を介して接地している。
【0103】
この実施形態によれば、両グループに属するアンテナ20に流す高周波電流I
R に位相差を付けることができるので、隣り合うアンテナ20間に電位差を生じさせることができる。この電位差によって、隣り合うアンテナ20間にいわゆる容量結合モードによってプラズマを生成することができるので、プラズマ生成の効率をより向上させることができると共に、複数のアンテナ20の並び方向(この実施形態ではY方向)におけるプラズマ密度分布の均一性を向上させることができる。
【0104】
例えば、上記位相差をφとすると、隣り合うアンテナ20間の電位差ΔVは次式で表される。V
0 は振幅(最大値)、ωは前述した高周波電流I
R の角周波数、tは時間である。従って、隣り合うアンテナ20間でこの電位差ΔVを有効に使うことができる。
【0105】
[数4]
ΔV=V
0 sin(ωt)−V
0 sin(ωt+φ)
【0106】
上述した複数のアンテナ20の並び方向(Y方向)におけるプラズマ密度分布の均一性向上について、
図11を参照して更に説明する。
図11は、
図9中のアンテナを線D−Dに沿って簡略化して示す概略断面図(A)およびその場合の基板付近におけるプラズマ密度分布の概略例(B)を示す図である。
【0107】
アンテナ20の周りには、前述した高周波電流I
R を流すことによって高周波磁界が発生し、それによって前述した誘導結合モードによってプラズマ16aが生成される。プラズマ16aは、この図では、複数のアンテナ20によるプラズマを包括して示している。このプラズマ16aは、高周波磁界の広がりが大きいためにプラズマ生成領域が広くなり、その結果、複数のアンテナ20の並び方向(Y方向)の周辺部では比較的プラズマ密度の低下が起こりやすく、この誘導結合モードによって生成されるプラズマ16aの基板10付近における密度分布は、例えば
図11(B)中に破線Fで示すように、山形分布を示す傾向がある。
【0108】
一方、上記位相差φによって隣り合うアンテナ20間に電位差ΔVを生じさせると、当該電位差ΔVによって、隣り合うアンテナ20間に前述した容量結合モードによってプラズマ16bをそれぞれ生成することができる。上記電位差ΔVは隣り合うアンテナ20間の狭い領域に発生し易く、隣り合うアンテナ20間の狭い領域が上記プラズマ16bの主な生成領域になり、各プラズマ16bの広がりは狭くなる。
【0109】
基板10付近に達する前述したプラズマ16は、上記プラズマ16aとプラズマ16bとを合成したものとなり、それによって、基板10付近におけるプラズマ密度分布は、例えば
図11(B)中に実線Gで示すように、複数のアンテナ20の並び方向(Y方向)の周辺部における密度低下が小さくなり、均一性が向上する。
【0110】
位相制御器68は、上記位相差φを実質的に180度(即ち、180度または約180度)に制御するものが好ましい。位相差φが180度の場合、上記電位差ΔVは次式で表される。即ち、単一アンテナの場合の2倍の電位差ΔVを得ることができる。
【0111】
[数5]
ΔV=2V
0 sin(ωt)
【0112】
このように、上記位相差φを実質的に180度にすることによって、隣り合うアンテナ20間の電位差ΔVを最大にすることができるので、容量結合モードによって隣り合うアンテナ20間に効率良くプラズマを生成することができる。その結果、プラズマ生成の効率を更に向上させることができると共に、複数のアンテナ20の並び方向におけるプラズマ密度分布の均一性を向上させることがより容易になる。
【0113】
図9に示した実施形態のコイル66側の変形例として、
図10に示す実施形態のように、第1のグループに属するアンテナ20のアンテナ本体24の終端部52を一括して第1のコイル66aを介して接地し、第2のグループに属するアンテナ20のアンテナ本体24の終端部52を一括して第2のコイル66bを介して接地しても良い。
【0114】
そのようにすると、
図9の実施形態に比べて、コイル66の数が少なくて済む。即ち、半分または約半分になる。
【0115】
なお、上記のように複数のアンテナ20を2グループに分けて高周波電力を供給する場合は、両グループのアンテナ20の終端部52を一括して一つのコイルを介して接地するのは好ましくない。仮にそのように一括すると、一方のグループに属するアンテナ20の終端部52から他方のグループに属するアンテナ20の終端部52を経由して高周波電力が他方の高周波電源56aまたは56bに戻って干渉を起こす等の不具合が発生するからである。
【0116】
これに対して、
図10に示す実施形態のように、アンテナ20のグループごとにコイル66a、66bを設けると、一方のグループに属するアンテナ20の終端部52から他方のグループに属するアンテナ20の終端部52を経由して高周波電力が他方の高周波電源56aまたは56bに戻って(例えば、
図10中に2点鎖線Hで示すルートで高周波電流が流れて)干渉を起こす等の不具合が発生することを防止することができる。
【0118】
図12に、終端部コイル66の有り無しの場合について、アンテナ20の端部(給電端部51および終端部52)の電圧を測定した実験結果の一例を示す。終端部コイル66有りとは、アンテナ20の終端部52を上記コイル66を介して接地した場合のことであり、終端部コイル66無しとは、終端部52をコイル66を介さずに直接接地した場合のことである(以下同様)。
【0119】
この場合の主な実験条件は次のとおりである。
装置構成:
図9に示す実施形態のもので、アンテナ20は6本
各アンテナ20が有するコンデンサ30の数:3個(従って金属パイプ26の数は4個)
絶縁パイプ22の材質:石英
2台の高周波電源56a、56b間の位相差:180度
各アンテナ20への供給高周波電力:500W/アンテナ
真空容器2内へのガス供給、プラズマ点灯:無し
各コイル66のインダクタンス:180nH
【0120】
この図から分るように、終端部コイル66有りの場合は、終端部コイル66無しの場合に比べて、給電端部51および終端部52、ひいてはアンテナ20全体の電圧(電位)が大きく持ち上げられている。従って、前述した誘導結合モードによるプラズマ生成に加えて、前述した容量結合モードによるプラズマ生成を効果的に利用することができる。
【0121】
図13に、終端部コイル66の有り無しの場合について、プラズマCVD法による基板10への成膜速度を測定した実験結果の一例を示す。基板10上に形成した膜はSiN:F膜(フッ素化シリコン窒化膜)である。
【0122】
この場合の主な実験条件は次のとおりである。
装置構成:
図9に示す実施形態のもので、アンテナ20は6本
各アンテナ20が有するコンデンサ30の数:3個(従って金属パイプ26の数は4個)
絶縁パイプ22の材質:石英
2台の高周波電源56a、56b間の位相差:180度
各アンテナ20への供給高周波電力:1.5kW/アンテナ
真空容器2内へのガス種と流量:SiF
4 /N
2 /H
2 =500/500/500ccm
真空容器2内の圧力:2.7Pa
各コイル66のインダクタンス:180nH
【0123】
この図から分るように、終端部コイル66有りの場合は、終端部コイル66無しの場合に比べて、どの基板温度においても、大きな成膜速度が得られている。これは、前述した誘導結合モードによるプラズマ生成に加えて、前述した容量結合モードによるプラズマ生成を効果的に利用することができたからであると考えられる。
【課題】 真空容器内に配置されたアンテナに高周波電流を流すことによって誘導結合型のプラズマを生成する装置であって、アンテナ導体に金属パイプを用いており、しかもアンテナを長くする場合でもそのインピーダンスの増大を抑えることができる装置を提供する。
【解決手段】 このプラズマ処理装置を構成するアンテナ20は、絶縁パイプ22とその中に配置された中空のアンテナ本体24とを備えている。アンテナ本体24は、複数の金属パイプ26を中空絶縁体を介在させて直列接続した構造をしており、かつ中空絶縁体の部分に設けられたコンデンサ30を有していて、金属パイプ26とコンデンサ30とを電気的に直列接続した構造をしている。アンテナ本体24の給電端部51に高周波電源56が接続されており、終端部52はコイル66を介して接地している。