(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、柔らかい地盤においては、褶曲と呼ばれる現象が生じる。褶曲とは、堆積当時水平であった地層が、地殻変動のため、波状に曲がる現象のことである。褶曲は、広範囲に亘って緩やかに撓みを生じる。このため、柔らかい地盤に鋼管が埋設されている場合、地殻変動が生じると、鋼管には、広範囲に亘って軸圧縮変形を生じる。
【0005】
また、
図2,
図3に示すように、固い地盤の上に柔らかい地盤が重なっている地盤においては、撓曲と呼ばれる現象が生じる。撓曲とは、下部の固い地盤に断層が生じ、上部の柔らかい地盤に撓みを生じる現象のことである。ところが、断層面は、固い地盤に留まる場合もあれば、柔らかい地盤まで到達する場合もあり予想することは非常に困難である。このため、撓曲を生じる地盤に鋼管を埋設する場合、断層運動による局部的な曲げ圧縮変形と、撓曲による広範囲に亘る軸圧縮変形のいずれによっても破断や亀裂が発生することを回避する対策が必要である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、断層運動による局部的な曲げ圧縮変形と、撓曲による広範囲に亘る軸圧縮変形のいずれによっても破断や亀裂が発生することを回避することができる座屈波形鋼管を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る座屈波形鋼管では、
(1)
鋼管直管部と座屈波形部を有
し、撓曲を生じる地盤に埋設される座屈波形鋼管であって、前記座屈波形部は、1.72√(r・T)で表される圧縮局部座屈半波長の2.05〜4.32倍の座屈波長と、
前記鋼管直管部の管厚の8.00〜16.25倍で表される山高さとに基づいて定められる正弦波で表される形状であ
り、前記座屈波形部において前記地盤の断層運動による曲げ圧縮変形と撓曲による軸圧縮変形を吸収し前記鋼管直管部の変形を回避する、ことを特徴としている。ただし、rは鋼管直管部の管厚中心半径、Tは鋼管直管部の管厚である。
【0008】
(2)また、上記(1)の座屈波形鋼管において、前記座屈波形部は、前記座屈波形鋼管の軸方向において間隔を空けて配設されている、ことが好ましい。
【0010】
(3)また、上記
(2)の座屈波形鋼管において、前記座屈波形部は、断層面を挟んで所定距離離間して配設される、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る座屈波形鋼管によれば、断層運動による局部的な曲げ圧縮変形と、撓曲による広範囲に亘る軸圧縮変形のいずれによっても破断や亀裂が発生することを回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る座屈波形鋼管1の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
本発明の実施形態に係る座屈波形鋼管1は、
図4に示すように、断層運動による局部的な曲げ圧縮変形と、
図5に示すように、撓曲による広範囲に亘る軸圧縮変形のいずれによっても破断や亀裂が発生することを回避するものである。断層運動による局部的な曲げ圧縮変形は、断層面Fを挟んで所定距離(以下、「塑性ヒンジ間距離」という。)離間した部分に生じる。曲げ圧縮変形の生じた部分は、塑性ヒンジという。この曲げ圧縮変形は、局部的であり、かつ、変位が平均して数mに達するものである。撓曲による広範囲に亘る軸圧縮変形は、例えば、断層変位が鉛直方向に3m、水平方向に1.5mの場合、軸方向に200mに亘って緩やかな撓みを生じる。
【0015】
座屈波形鋼管1は、例えば、SS400を含む軟鋼(炭素含有率が0.13〜0.20%の炭素鋼)で構成される。座屈波形鋼管1は、
図6,
図7に示すように、鋼管直管部2と座屈波形部3とが軸方向に繰り返されて形成されている。
【0016】
座屈波形部3は、断層運動による局部的な曲げ圧縮変形と、撓曲による広範囲に亘る軸圧縮変形を吸収する部分である。座屈波形部3は、鋼管に生じる圧縮局部座屈に近似する形状に形成されている。地殻変動時、この座屈波形部3が変形することにより、座屈波形鋼管1は、変位を吸収する。座屈波形部3は、軸圧縮方向の反力が鋼管直管部2より低減されている。すなわち、座屈波形部3は、鋼管直管部2が変形するより前に変形することで、鋼管直管部2の変形を回避する。
【0017】
座屈波形部3は、鋼管直管部2の径方向外側に膨出して形成されている。座屈波形部3は、1.72√(r・T)で表される圧縮局部座屈半波長Lの2.05〜4.32倍の座屈波長L
nと、鋼管直管部2の管厚Tの8.00〜16.25倍で表される山高さhとに基づいて定められる正弦波で表される形状である。ここで、r=(D
0−T)/2である。ただし、rは鋼管直管部の管厚中心半径(鋼管の中心から管厚の中央までの距離)、D
0は鋼管直管部の外径、Tは鋼管直管部の管厚である。
【0018】
座屈波形部3は、外径D
0、管厚T、山高さh、座屈波長L
n、材質(弾性係数)と、断層変位や地盤条件などを考慮してFEM(Finite Element Method、有限要素法)解析を行うことで最適な形状が決定される。ここで、FEM解析による最適形状の検討方法の一例を説明する。外径D
0および管厚T、は、座屈波形鋼管1として適用される口径(例えば、800A〜3000A)および厚さとする。座屈波長L
nは、座屈波長L
nを変数とし、山高さhと管厚Tとを変えずにFEM解析を行って得られた軸圧縮方向の反力と軸変位との関係に基づいて、縦軸を軸圧縮方向の反力とし横軸を軸変位とする曲線が、軸圧縮方向の反力の最大値に到達した後、緩やかな勾配で推移するものを最適な形状として選択する。また、山高さhは、山高さhを変数とし、座屈波長L
nと管厚Tとを変えずにFEM解析を行って得られた軸圧縮方向の反力と軸変位との関係に基づいて、縦軸を軸圧縮方向の反力とし横軸を軸変位とする曲線が、軸圧縮方向の反力の最大値に到達した後、緩やかな勾配で推移するものを最適な形状として選択する。さらに、管厚Tは、管厚Tを変数とし、座屈波長L
nと山高さhとを変えずにFEM解析を行って得られた軸圧縮方向の反力と軸変位との関係に基づいて、縦軸を軸圧縮方向の反力とし横軸を軸変位とする曲線が、軸圧縮方向の反力の最大値に到達した後、緩やかな勾配で推移するものを最適な形状として選択する。さらにまた、材質は、複数の弾性係数についてFEM解析を行って得られた軸圧縮方向の反力と軸変位との関係に基づいて、縦軸を軸圧縮方向の反力とし横軸を軸変位とする曲線が、軸圧縮方向の反力の最大値に到達した後、緩やかな勾配で推移するものを最適な材質として選択する。このようにして、選択された座屈波長L
n、山高さh、管厚T、材質を組み合わせて複数のケースを作成し、各ケースについてFEM解析を行って、軸圧縮方向の反力の最大値と許容変位の結果を算出する。得られた結果の中で、軸圧縮方向の反力の最大値がより小さく、かつ、許容変位が大きく取れるケースが望ましいケースである。
【0019】
上述のように、外径D
0、管厚T、山高さh、座屈波長L
n、材質(弾性係数)を変数としてFEM解析を行って、軸圧縮方向の反力を低減し、かつ、許容曲げ角度が最大となる座屈波形部3の最適形状を求めた例を表1に示す。
【0021】
表1に示した外径D
0、管厚T、山高さh、座屈波長L
nの座屈波形部3を有する座屈波形鋼管1は、管路の途中に配設された状態で、地中に埋設される。これらの座屈波形鋼管1は、地殻変動によって断層変位が生じた場合、座屈波形部3において変形することで、破断や亀裂が発生することが回避される。なお、これらの座屈波形鋼管1は、実管による変形確認実験およびFEM解析によって、座屈波形部3が変形することで、断層運動による局部的な曲げ圧縮変形と、撓曲による広範囲に亘る軸圧縮変形のいずれの変位も吸収し、かつ、鋼管直管部2における歪みを抑制することが確認された。
【0022】
実管による変形確認実験では、座屈波形鋼管1に軸圧縮方向の荷重を加えて、軸圧縮方向の反力と軸変位とを計測する。そして、実管による変形確認実験では、縦軸を軸圧縮方向の反力とし横軸を軸変位とする曲線が、上述したFEM解析によって得られた縦軸を軸圧縮方向の反力とし横軸を軸変位とする曲線を再現しているか否かを判定する。また、実管による変形確認実験では、変形後の座屈波形鋼管1を目視やピンホール検査で確認し、破断や亀裂の有無を確認する。
【0023】
FEM解析による確認では、座屈波形鋼管1が埋設される地盤を土質材料の連続体(ソリッド要素)であると設定し、座屈波形鋼管1を含む管路との接触を考慮した弾塑性モデルで非線形FEM解析を実施する。そして、FEM解析による確認では、座屈波形鋼管1の曲げ角度を算出し、許容角度以下であれば有効性があると判定する。
【0024】
表1より、上述したように、座屈波形部3の座屈波長L
nは、圧縮局部座屈半波長Lの2.05〜4.32倍であり、山高さhは、鋼管直管部2の管厚Tの8.00〜16.25倍である。
【0025】
具体的に、実施例1は、外径D
0が812.8mm、管厚Tが8.0mmであるため、圧縮局部座屈半波長Lは97.6mmと算出される。これにより、座屈波長L
n(=200mm)は、圧縮局部座屈半波長Lの2.05倍と算出される。同様に、他の実施例においても計算すると、座屈波長L
nは、圧縮局部座屈半波長Lの2.05〜4.32倍と算出される。
【0026】
また、具体的に、実施例1は、管厚Tが8.0mm、山高さhが64mmであるため、高さの比(h/T)は8.00倍と算出される。同様に、他の実施例においても同様に計算すると、高さの比(h/T)は、8.00〜16.25倍と算出される。
【0027】
座屈波形部3は、断層面Fを挟んで塑性ヒンジ間距離離間して配設されている。ここで、塑性ヒンジ間距離は、座屈波形鋼管1を埋設する際の設計時に断層変位や地盤条件を考慮してFEM解析を行うことで最適な値が算出される。より詳しくは、塑性ヒンジ間距離は、座屈波形鋼管1の外径D
0の数倍である。
【0028】
次に、上記の構成を有する座屈波形鋼管1の作用を説明する。
【0029】
撓曲を生じる地盤に座屈波形鋼管1が埋設され、地殻変動によって断層変位が生じて座屈波形鋼管1の埋設深度に断層が到達した場合、すなわち、座屈波形鋼管1が断層面Fを横過している場合、座屈波形鋼管1は、
図4に示すように、曲げ圧縮変形を生じる。また、撓曲を生じる地盤の下部にある固い地盤(
図2,
図3に示す位置B)に座屈波形鋼管1が埋設され、地殻変動によって断層変位が生じた場合、座屈波形鋼管1が断層面Fを横過し、座屈波形鋼管1は、
図4に示すように、曲げ圧縮変形を生じる。
【0030】
また、撓曲を生じる地盤(
図2,
図3に示す位置A)に座屈波形鋼管1が埋設され、地殻変動によって断層変位が生じて座屈波形鋼管1の埋設深度に断層が到達しない場合、すなわち、座屈波形鋼管1の周囲の地盤が撓曲を生じている場合、座屈波形鋼管1は、
図5に示すように、軸圧縮変形を生じる。
【0031】
以上の座屈波形鋼管1は、座屈波形部3が鋼管直管部2より低反力であるので、座屈波形鋼管1が埋設されている地盤に地殻変動が生じて、断層運動による局部的な曲げ圧縮変形、または、撓曲による広範囲に亘る軸圧縮変形のいずれが生じても、座屈波形部3が鋼管直管部2に優先して変形する。すなわち、座屈波形鋼管1は、座屈波形部3において、断層運動による局部的な曲げ圧縮変形と撓曲による広範囲に亘る軸圧縮変形のいずれの変位も吸収することができる。
【0032】
座屈波形鋼管1は、座屈波形部3において、断層運動による局部的な曲げ圧縮変形と、撓曲による広範囲に亘る軸圧縮変形のいずれの変位も吸収することができる。このため、座屈波形鋼管1は、埋設する地盤に断層または撓曲のいずれを生じる場所であっても、敷設することができる。
【0033】
座屈波形鋼管1は、座屈波形部3が鋼管直管部2に優先して変形することにより、鋼管直管部2における歪みを抑制することができる。これにより、座屈波形鋼管1は、座屈波形部3が変形した場合であっても、鋼管直管部2の断面が大きく扁平して断面積が狭小になることを回避することができる。このため、座屈波形鋼管1は、石油、ガス、電気、水道などを運ぶ機能を維持することができる。
【0034】
座屈波形鋼管1は、座屈波形部3が座屈波形鋼管1の軸方向において間隔を空けて配設されている。このため、断層の位置が不明確な場合であっても、座屈波形鋼管1が埋設されている地盤に地殻変動が生じた際には、断層運動による局部的な曲げ圧縮変形と、撓曲による広範囲に亘る軸圧縮変形のいずれの変位も吸収することができる。
【0035】
座屈波形部3は、断層変位や地盤条件を考慮してFEM解析によって最適な塑性ヒンジ間距離を算出して、断層面Fを挟んで塑性ヒンジ間距離離間して配設することができる。これにより、座屈波形鋼管1は、より確実に断層運動による局部的な曲げ圧縮変形を吸収することができる。
【0036】
従って、実施形態に係る座屈波形鋼管1によれば、断層運動による局部的な曲げ圧縮変形と、撓曲による広範囲に亘る軸圧縮変形のいずれによっても破断や亀裂が発生することを回避することができる。
【0037】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配設箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0038】
座屈波形鋼管1がシールド内部に敷設され、シールドの内壁面によって座屈波形鋼管1の山高さhに制限がある場合、1つの塑性ヒンジを複数の座屈波形部3によって形成してもよい。この場合、複数の座屈波形部3は、座屈波長L
nの数分の1程度の距離(以下、「山間距離」という。)離間して配設する。ここで、山間距離は、座屈波形鋼管1を埋設する際の設計時に断層変位や地盤条件を考慮してFEM解析を行うことで最適な値が算出される。これにより、座屈波形鋼管1は、隣接する座屈波形部3における変形が干渉することで座屈波形鋼管1の断面積が狭小になることを回避することができる。
座屈波形部(3)を有する座屈波形鋼管(1)であって、前記座屈波形部(3)は、1.72√(r・T)で表される圧縮局部座屈半波長(L)の2.05〜4.32倍の座屈波長(L
)と、鋼管直管部(2)の管厚(T)の8.00〜16.25倍で表される山高さ(h)とに基づいて定められる正弦波で表される形状である、ことを特徴とする座屈波形鋼管(1)。ただし、rは鋼管直管部(2)の管厚中心半径、Tは鋼管直管部(2)の管厚である。