【実施例】
【0037】
以下、本発明を下記の実施例及び比較例によってより詳しく説明する。しかし、これらは本発明の一例であって、これらによる本発明の権利範囲が限定されるものではない。
<実施例及び比較例>
実施例及び比較例で使用された物質、製造方法、射出方法及び物性測定方法は下記の通りである。
【0038】
(1) ポリ乳酸樹脂
L−ポリ乳酸樹脂としては、NatureWorks LLCで製造された4032Dを使用した。
(2) ポリアルキレングリコール
ポリアルキレングリコールは、Du Pont、 Huntsman、 Lonza、 Basf、 Aldrich 等で製造された末端がアミンに改質されたものを使用した。
(3) 製造方法
ポリ乳酸樹脂とポリアルキレングリコール、および選択的に結晶化核剤を二軸押出し機(twin-screw extruder)を利用して溶融混練した。この時ポリアルキレングリコールは液体注入器(liquid feeder)を利用して押出し温度が180〜200℃の押出し機に注入し、溶融混練後ぺレツタイザー(pelletizer)を利用してペレット(pellet)を得た。
【0039】
(4) 射出方法
前記(3)の製造方法によって製造されたペレットを80℃で4時間以上乾燥後、射出成形機を使用して、シリンダー温度200℃、金型温度110℃、成形サイクルを60秒に設定し、ASTM4号 試験片を射出成形して物性試片を得た。
(5) 熱変形温度
熱変形温度(HDT)はASTM D648に準じて測定した。
(6) 射出成形の容易性
押出し反応後、得られたペレットを110℃で2時間以上乾燥時、表面に未反応ポリアルキレングリコールの表面流出現象が無いので、射出成形が可能であれば○(優秀)に、表面流出現象が無いが射出成形サイクル時間が1分以上であれば△(良好)に、表面流出現象が甚だしいので射出成形が不可能であれば×(不良)に評価した。
【0040】
(7) 熱量測定方法
示差走査熱量計(DSC)を利用して樹脂組成物を200℃で3分間溶融した後、20℃/minで室温(23度)まで減温してT
CとΔH
Cを測定し、再び10℃/minで200℃まで昇温してT
mとΔH
mとを測定した。
【0041】
(8) 結晶化度が50%に及ぶ時間(t
1/2;結晶化速度)測定方法
樹脂組成物を200℃で溶融した後、スライドガラスの上に厚さが薄いフィルムを作りカバーガラスを載せた。スライドガラスを温度が110℃に予熱された加熱板(Linkam Scientific Instruments Ltd.)の上に載せた後、偏光顕微鏡(Olympus BX51)で樹脂組成物の結晶化速度を観察した。更に詳しくは波長が632.8nmの偏光He-Neレーザーをフィルムに透過させて樹脂が結晶化するに従って差減される光の強度(intensity)を利用して結晶化度を測定した(Hamanstu Photonics Co. の 38−channel photodiodiode array). 時間による結晶化度(relative crystallinity Xc) は、下記数式1によって計算して、その値をXc 対比時間(秒)でグラフに表記し、Xc が0.5のとき該当する時間をt
1/2に定義した。
【0042】
【数1】
【0043】
(前記数式1で、I(t)は時間tにおける光の強度であり、I(0)は樹脂の結晶化が始まる前の光の強度であり、 I
∞ は結晶化が完了されたときの光の強度である。)
(9) 結晶化度の計算方法
結晶化度は下記数式2を使用して計算した。
【0044】
【数2】
【0045】
(前記数式2において、ΔH
m は樹脂の溶融時熱量の実験値であり、ΔH
0m は ポリ乳酸樹脂の溶融時の熱量の計算値であって、93.1J/gであり、この値は非特許文献3(Kolloid Z. Z. Polym. 251、 980 (1973))に報告されたことを根拠とした。)
【0046】
実施例1〜7及び比較例1〜6
実施例1〜4及び比較例1〜4の各組成物に対する物性は下記表1に示し、 実施例5〜7及び比較例5〜6の各組成物に対する物性は下記表2に示した。
下記表1の実施例1〜4及び比較例1〜4において、下記表1の組成による成分及び含有量で混合した後、二軸押出し機で190℃で溶融混練して押出し加工した。ペレットサンプルは80℃で4時間以上乾燥後、射出金型の温度を110℃で維持させ、射出成形して常温で24時間放置後、試片等に対する物性は下記のような方法で測定して、その結果を下記表1に示した。
表2の実施例5〜7及び比較例5〜6の組成による物性測定のために、下記表1の組成と異なるようにして混合した以外は、実施例1〜4と同一な方法で試片を製造し、その物性を測定し、これを下記表2に示した。
【0047】
【表1】
【0048】
註1)A: ポリ乳酸: 商品名: LLC 4032D、 NatureWorks社製
2)B−1: 一方の末端がアミンで改質された重量平均分子量2000g/molのポリアルキレングリコール、 商品名: Jeffamine M-2070(登録商標)、 Huntsman Corporation社製
3)B−2:両側の末端がアミンで改質された重量平均分子量 2000g/molのポリアルキレングリコール、 商品名: Jeffamine
ED-2003(登録商標)、Huntsman Corporation社製
4)B−3:改質されない重量平均分子量が400g/molのポリエチレングリコール、 アルドリチ社製
5)C:粒子サイズが5〜6μmの滑石、KR8500、 (株)KOCH製
【0049】
前記表1に示した通り、 実施例1と実施例2は結晶化度が高く、 結晶化速度(t
1/2)が速く、未反応ポリアルキレングリコールの表面流出現象が無いので射出が容易であることが分かる。
実施例1と2の熱変形温度は78℃以上に測定され、これは一般のポリ乳酸の 熱変形温度である56℃ より約20℃高い。
【0050】
更に、実施例1及び2の共重合体に結晶化核剤を添加した実施例3と4をよく見ると、結晶化速度が確然に減るのを確認し、熱変形温度もまた110℃以上上昇したことが分かる。これと反対に、ポリアルキレングリコールを使用しない比較例1の場合、結晶化速度が遅いので射出成形が容易でないことを分かる。比較例2では、ポリアルキレングリコールの使用なしに、結晶化核剤だけを添加して結晶化速度を制御しようとしたが、組成物の結晶化度だけ向上させただけで熱変形温度と結晶化速度は向上されないことを分かる。更に、比較例3及び4の如く、末端がヒドロキシ基である一般的なポリアルキレングリコールを使用したときにはDSC分析過程で冷結晶化(cold crystallization)によってポリ乳酸組成物の結晶化度は向上されたが、結晶化速度が早くなく、押出し加工後ペレットの乾燥過程で未反応ポリアルキレングリコールの表面流出現象が甚だしいので射出成形自体が不可能であった。
【0051】
【表2】
【0052】
註1)A:ポリ乳酸: 商品名: LLC 4032D、 NatureWorks社製
2)B−1:一方の末端がアミンで改質された重量平均分子量2000g/molのポリアルキレンググリコール、商品名: Jeffamine
M-2070(登録商標)、Huntsman Corporation社製
3)C:粒子サイズが5〜6μmの滑石、KR8500、 (株)KOCH 製
【0053】
前記表2は、末端がアミンで改質されたポリアルキレングリコールの含有量による組成物の物性を表したものであって、実施例5〜7に記載された通り、ポリアルキレングリコールの使用量が5〜25重量%の範囲内では、結晶化度が高く、結晶化速度が速く、熱変形温度が高いことが分かる。しかし、比較例3及び4の如くポリアルキレングリコールの含量が30重量%以上添加されるとき、ポリアルキレングリコールの可塑化作用のため結晶化速度は100秒以下に維持されるが結晶化度が確然に低くなり、射出成形前、或いは後に未反応ポリアルキレングリコールの表面流出現象が観察されることが分かる。