(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874889
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/095 20060101AFI20160218BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20160218BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20160218BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
H01L29/80 E
H01L29/80 H
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-266130(P2010-266130)
(22)【出願日】2010年11月30日
(65)【公開番号】特開2012-94798(P2012-94798A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2010年11月30日
【審判番号】不服2014-13004(P2014-13004/J1)
【審判請求日】2014年7月4日
(31)【優先権主張番号】099136116
(32)【優先日】2010年10月22日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】598139748
【氏名又は名称】國立交通大學
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】張 翼
(72)【発明者】
【氏名】許 恒通
【合議体】
【審判長】
小野田 誠
【審判官】
鈴木 匡明
【審判官】
飯田 清司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−010640(JP,A)
【文献】
特開平02−049465(JP,A)
【文献】
特開2000−208722(JP,A)
【文献】
特開2008−205146(JP,A)
【文献】
特開2000−332234(JP,A)
【文献】
特開平06−326131(JP,A)
【文献】
特開昭63−107174(JP,A)
【文献】
米国特許第5276340(US,A)
【文献】
米国特許第4729000(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0014473(US,A1)
【文献】
特許第2949518(JP,B2)
【文献】
特開2006−278813(JP,A)
【文献】
特開2004−079874(JP,A)
【文献】
特開2008−235952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 28/80 〜29/812
H01L 27/095
H01L 21/338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を準備する工程と、
前記基板上にバッファ層を形成させる工程と、
前記バッファ層上にバリア層を形成させ、前記バッファ層と前記バリア層との間の異種材料接合界面が有する二次元電子ガスに対して能動領域を定義する工程と、
フォトリソグラフィープロセス若しくはエッチングプロセスで前記基板の表面までに前記バッファ層、前記バリア層及び前記能動領域を貫通したことで凹溝を形成すると共に前記凹溝に絶縁材料を充填することによって少なくとも1つの隔離機構を形成させ、隔離機構により少なくとも2つの高電子移動度トランジスターが定義される工程と、
前記各高電子移動度トランジスターのバリア層上に前記能動領域に電気的に接続するソース電極とドレイン電極を形成させる工程と、
前記各高電子移動度トランジスターのバリア層上に前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に位置するとともに前記能動領域に電気的に接続するゲート電極を形成させる工程と、
一方の前記ソース電極が他方の前記ドレイン電極に接続され、且つ前記ゲート電極が互いに接続されるように少なくとも2つの高電子移動度トランジスターを直列接続させ、前記少なくとも2つの高電子移動度トランジスターの直列接続による相加効果によって前記ソース電極と前記ドレイン電極との間のブレークダウン電圧を向上させる直列接続式の高電子移動度トランジスターを形成させる工程と、を含むことを特徴とする直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記ソース電極とドレイン電極を形成させる工程において、前記ソース電極と前記ドレイン電極は、オーミック接触の方法で能動領域に電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載の直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの高電子移動度トランジスターを直列接続させ、直列接続式の高電子移動度トランジスターを形成させる工程において、半導体製造プロセスにより内部接続線路を形成し、前記少なくとも2つの高電子移動度トランジスターが直列接続されることを特徴とする請求項1に記載の直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスの製造方法。
【請求項4】
基板上に形成され隔離機構で隔離された互いに接続される少なくとも2つの高電子移動度トランジスターを含み、
前記各高電子移動度トランジスターは、
基板上に設けられるバッファ層と、
バッファ層との間の異種材料接合界面が能動領域を定義する二次元電子ガスを有するバッファ層上に設けられるバリア層と、
バリア層上に設けられ、且つ能動領域に電気的に接続されるソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極とであって、前記少なくとも2つの高電子移動度トランジスターの一方のソース電極が他方のドレイン電極に接続されるとともにゲート電極が互いに接続されるソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、を含み、
前記隔離機構は、前記基板の表面までに前記バッファ層、前記バリア層及び前記能動領域を貫通して形成された凹溝に絶縁材料を充填したことによって、前記少なくとも2つの高電子移動度トランジスターにおける前記バッファ層、前記バリア層及び前記能動領域を絶縁的に隔離し、
前記少なくとも2つの高電子移動度トランジスターの直列接続による相加効果によって前記ソース電極と前記ドレイン電極との間のブレークダウン電圧を向上させることを特徴とする直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイス。
【請求項5】
前記ソース電極と前記ドレイン電極は、前記各高電子移動度トランジスターにおいて、オーミック接触により能動領域に電気的に接続されることを特徴とする請求項4に記載の直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイス。
【請求項6】
前記基板は、窒化ガリウム基板、シリコンカーバイド基板、窒化アルミニウム基板、窒化アルミニウムガリウム基板、ダイヤモンド基板、サファイア基板またはシリコン基板の何れかであることを特徴とする請求項4に記載の直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイス。
【請求項7】
前記バッファ層は、一層のドープまたはアンドープの第III族窒化物であることを特徴とする請求項4に記載の直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイス。
【請求項8】
前記バリア層は、単一層または多層のドープまたはアンドープの第III族窒化物であることを特徴とする請求項4に記載の直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスターの構造に関し、特に直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)や窒化ガリウムを主とする材料は、高温、高効率及び高周波のマイクロエレクトロニクス装置に応用可能である。上記材料には、エネルギーギャップが広い、ホットキャリア発生率が低い、高い絶縁破壊電界、高い電子移動度及び高い電子速度等の特性がある。よって窒化ガリウム系のトランジスターは、高速度、高温、高効率等の利点を有する。
【0003】
現在、第III族窒化物の材料を基礎とするデバイスに対する研究は、例えば携帯電話の基地局に設置された発信機など高効率、高周波の用途に向けたものが進められている。第III族窒化物のデバイスは、全体のデバイス構成が高い電子移動度を有しているため上記の特性が生み出される。また、ヘテロ構造電界効果トランジスター(HFET)、高電子移動度トランジスター(HEMT)あるいは変調ドープ電界効果トランジスター(MODFET)等の異なった名称を有する。これらのデバイスは、通常100Vまたはさらに高い範囲の高電圧に耐えることが可能であるとともに高周波(例えば2〜100GHz)の範囲で動作を行うことが可能である。
【0004】
半導体物理の角度から考察すると上記のデバイスは、圧電極化によって二次元電子ガス(2DEG)を発生して動作し、非常に低いインピーダンスでの損失によって非常に高い電流を伝送することが可能である。
【0005】
また、高温、高電圧の利用分野に対する開発は、急ピッチで進んでおり、これに伴い厳しい動作環境下におけるデバイスの信頼度がデバイス発展の重点となった。従来の高電圧におけるトランジスターを動作させる方法は、ゲート電極領域にフィールドプレートを設けるものがあるが、この技術では製造の困難度が大幅に増すとともにデバイスに対するブレークダウン電圧の調整がフィールドプレートにより制限されてしまう。
【0006】
また、もう1つの従来技術として、プロトン注入のプロセスによりプロトンをトランジスターのチャネル層に注入してデバイスのブレークダウン電圧を取り出す方法がある。しかしながら、この方法においては、格子欠陥の発生を引き起こして二次元電子ガスの分布に影響を及ぼす可能性があり、これによりデバイスの特性に影響を与えてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、ハイブレークダウン電圧のデバイスを提供することを1つの目的とする。
【0008】
また、本発明は、市場のニーズに対応すべく製造プロセスにおいて高電子移動度トランジスターを直列接続させることにより、製造プロセスを簡略化し、製造プロセスがデバイスの特性に与える影響を避けることを実現させるローコストの製造プロセスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスの製造方法を提供する。この直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスの製造方法は、基板を準備する工程と、基板上にバッファ層を形成する工程と、前記バッファ層上にバリア層を形成させ、前記バッファ層とバリア層との間の異種材料接合界面に含まれる二次元電子ガスに対して能動領域を定義する工程と、フォトリソグラフィープロセス若しくはエッチングプロセスで
前記基板の表面までに前記バッファ層、前記バリア層及び前記能動領域を貫通した
ことで凹溝を形成すると共に前記凹溝に絶縁材料を充填することによって少なくとも1つの隔離機構を形成させ、少なくとも2つの高電子移動度トランジスターを定義する工程と、前記各高電子移動度トランジスターのバリア層に、ともに能動領域に電気的に接続するソース電極とドレイン電極を形成させる工程と、前記各高電子移動度トランジスターのバリア層にソース電極とドレイン電極との間に位置しかつ能動領域に電気的に接続するゲート電極を形成させる工程と、一方のソース電極が他方のドレイン電極に接続されかつゲート電極が互いに接続されるように少なくとも2つの高電子移動度トランジスターを直列接続
させ、前記少なくとも2つの高電子移動度トランジスターの直列接続による相加効果によって前記ソース電極と前記ドレイン電極との間のブレークダウン電圧を向上させる直列接続式の高電子移動度トランジスターを形成させる工程とを含む。
【0010】
また、本発明は直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスを提供する。この直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスは、互いに直列接続される少なくとも2つの高電子移動度トランジスターからなり基板上に隔離機構で隔離されて形成される。各高電子移動度トランジスターは、基板上に設けられるバッファ層と、バッファ層上に設けられてバッファ層との間の異種材料接合界面が能動領域を定義する二次元電子ガスを有するバリア層と、それぞれバリア層上に設けられて能動領域に電気的に接続されるソース電極、ドレイン電極、ゲート電極であって、少なくとも2つの高電子移動度トランジスターの一方のソース電極が他方のドレイン電極に接続されかつゲート電極が互いに接続されるソース電極、ドレイン電極、ゲート電極とを含み、前記隔離機構は
、前記基板の表面までに前記バッファ層、前記バリア層及び前記能動領域を貫通
して形成された凹溝に絶縁材料を充填したことによって、前記少なくとも2つの高電子移動度トランジスターにおける前記バッファ層、前記バリア層及び前記能動領域を
絶縁的に隔離
し、前記少なくとも2つの高電子移動度トランジスターの直列接続による相加効果によって前記ソース電極と前記ドレイン電極との間のブレークダウン電圧を向上させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以下の有益な効果を有する。
【0012】
半導体製造プロセスの改善を主に利用し、製造プロセスでそれぞれの高電子移動度トランジスターを直列接続させるため、ローコストの製造プロセス、製造プロセスの順応性が高い利点を有し、また、製造された直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスは、累積可能なブレークダウン電圧を有するため、異なる応用に応じて多数のトランジスターを直列接続させることができる。
【0013】
よって本発明によるハイブレークダウン電圧のデバイスは、高温、高圧の電気回路に対する応用分野においてその需要を満足させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明における直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスの製造方法を示す図である。
【
図2】本発明における直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスの製造方法を示す図である。
【
図3】本発明における直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスの製造方法を示す図である。
【
図4】本発明における直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスの製造方法を示す図である。
【
図5】本発明における直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスの製造方法を示す図である。
【
図6】本発明における直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスの製造方法を示す図である。
【
図7】本発明における直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスの製造方法を示す図である。
【
図8】本発明における直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスの製造方法を示す図である。
【
図9】本発明における直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明に関する詳細な説明を行う。なお、図面は、参照及び説明に使用するものであり本発明を局限するものではない。
【0016】
本発明は、直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイス及びその製造方法を提供する。製造プロセスにおいて多数の高電子移動度トランジスター(HEMT)をまとめた単一または集積の直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスが形成され、これによりトランジスターデバイスのブレークダウン電圧が高まり、デバイスをハイパワーの電気回路システムまたは高温、高圧の動作環境に適用させることができる。
【0017】
図1〜8及び
図9を参照しながら説明する。本発明が提供する直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスの製造方法にかかる工程は以下の通りである。
【0018】
まず、
図1に示すように、例えば、窒化ガリウム(GaN)基板、シリコンカーバイド(SiC)基板、窒化アルミニウム(AlN)基板、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)基板、ダイヤモンド基板、サファイア(sapphire)基板またはシリコン基板などの高電子移動度トランジスターを搭載可能な基板10を準備する。本発明において基板10の材質に制限はなく、基板上に第III族窒化物を成長させることが可能であればよい。
【0019】
そして、バッファ層11を基板10上に形成させ、バッファ層11上にバリア層(barrier layer)12を形成させる。バッファ層11は一層のドープ(doped)またはアンドープ(undoped)の第III(GroupIII)族窒化物からなる高抵抗値の機構である。具体的実施例におけるバッファ層11は、いずれかの適切な方法で形成された窒化ガリウム(GaN)層である。具体的に説明すると、窒化ガリウムによるバッファ層11は、気相技術によって形成され、反応ガス種(例えば、アンモニア、トリメチルガリウム)が、上記基板10に設定する成長リアクターへ入り込んで、基板10の上方に堆積されてエピタキシャル薄膜(例えば、アンモニア分子からの窒素とトリメチルガリウム分子からのガリウムを添加して形成されたGaN薄膜)を形成させる。その反応は、例えば500℃〜1200℃の温度範囲、好ましくは700℃〜1100℃の比較的良い温度範囲、更に好ましくは900℃〜1000℃の温度範囲で行われる。リアクター内の圧力は、適切な条件(例えば20ミリバール〜950ミリバールの間)で維持する。
【0020】
バッファ層11と同じように、バリア層12はドープまたはアンドープの第III族窒化物である。具体的実施例におけるバリア層12は単一層のAlNやAlGaN、或いは多層の第III族窒化物(例えば、AlN及びAlGaN)を有する。バリア層12の特性は、バンドギャップ(bandgap)がバッファ層11のバンドギャップよりも大きいこと、特定のアルミニウム含有量が必要であること、バリア層12とバッファ層11との境界が高キャリアー濃度を有することである。言い換えれば、バッファ層11とバリア層12との間での異種材料接合界面(hetero-interface)は、高キャリアー濃度の要因により二次元電子ガス(two dimensional electron gas,2DEG)を有し、その二次元電子ガスに対して能動領域111を定義する。能動領域111は、おおよそバッファ層11に位置し、異種材料接合界面から約数十ミクロンの位置に近接される。
【0021】
次の工程では、少なくとも1つの隔離機構13を形成させ、少なくとも2つの高電子移動度トランジスターを定義する。
図2を参照しながら説明すると、本実施例では、二つの隔離機構13でなり、デバイスを三つのトランジスターの様態に分割して説明を行うが、これに限定されない。
【0022】
隔離機構13は、上記のバッファ層11、能動領域111及びバリア層12を多数の領域に分割させる。分割された領域は直列接続される高電子移動度トランジスターである。具体的に説明すると、隔離機構13は、
基板10の表面までにバッファ層11、バリア層12及び能動領域111を貫通
したことで凹溝を形成すると共に凹溝に絶縁材料を充填することによって直列接続式の高電子移動度トランジスターを形成させる。隔離機構13は、分割された二つの高電子移動度トランジスターの間に位置する。これにより、二つの高電子移動度トランジスターのバッファ層11、バリア層12及び能動領域111を隔離させる絶縁材料となる。なお、隔離機構13はフォトリソグラフィー、エッチング等の半導体製造プロセスで製造することができる。
【0023】
次の工程では、各高電子移動度トランジスターのバリア層12上にソース電極とドレイン電極を形成させる。
図3〜5に示すように、まずフォトリソグラフィープロセスを利用し、フォトレジストPR1でオーム接触領域(
図3参照)を定義し、次に金属層M1(
図4参照)を堆積させた後、フォトレジストPR1を除去し、上記のソース電極とドレイン電極を形成させる。図に示すように、本実施例では、最も左側の領域には、ソース電極S1とドレイン電極D1が形成され、中間の領域には、ソース電極S2とドレイン電極D2が形成され、最も右側の領域には、ソース電極S3とドレイン電極D3が形成される。また、ソース電極とドレイン電極はともに能動領域111に電気的に接続される。例を挙げると、アニール等の製造プロセスにより低抵抗値の接続を形成させてソース電極とドレイン電極をオーミック接触の方法で能動領域111に電気的に接続させる。また、本実施例におけるソース電極とドレイン電極はチタン、アルミニウム、金、ニッケルまたはその合金であるが、これに限定されない。
【0024】
次の工程では、各高電子移動度トランジスターのバリア層12にゲート電極を形成させる。ゲート電極は、ソース電極とドレイン電極との間に位置し能動領域111に電気的に接続される。
図6に示すように、まずフォトリソグラフィープロセスを利用し、フォトレジストPR2でゲート領域を定義し、金属層M2(
図7参照)を堆積させた後、フォトレジストPR2を除去し、上記のゲート電極を形成させる。本実施例では、最も左側の領域には、ソース電極S1とドレイン電極D1との間に位置するゲート電極G1が形成され、中間の領域には、ソース電極S2とドレイン電極D2との間に位置するゲート電極G2が形成され、最も右側の領域には、ソース電極S3とドレイン電極D3との間に位置するゲート電極G3が形成される。
【0025】
上記のゲート電極は、ニッケル、金、チタン、クロム、プラチナまたはその合金であり、ゲート電極は、ソース電極及びドレイン電極と同じように、能動領域111に接続される。
【0026】
図8を併せて参照しながら説明すると、本実施例においては、三つの互いに隔離された高電子移動度トランジスターHEMT1、HEMT2、HEMT3が製造される。高電子移動度トランジスターHEMT1は、ゲート電極G1がバイアスを受けた場合に、能動領域111を形成する二次元電子ガスによって、ソース電極S1とドレイン電極D1との間に電子の流れが生成され、ON/OFFのスイッチング動作が行われる。
【0027】
次の工程では、少なくとも2つの高電子移動度トランジスターを直列接続して、直列接続式の高電子移動度トランジスターを形成させる。
図8に示すように、高電子移動度トランジスターHEMT1のドレイン電極D1が高電子移動度トランジスターHEMT2のソース電極S2に接続され、高電子移動度トランジスターHEMT2のドレイン電極D2が高電子移動度トランジスターHEMT3のソース電極S3に接続され、高電子移動度トランジスターHEMT1、HEMT2、HEMT3のゲート電極G1、G2、G3が互いに接続されることにより、高電子移動度トランジスターHEMT1、HEMT2、HEMT3が直列接続される。
高電子移動度トランジスターHEMT1、HEMT2、HEMT3に形成された高電子移動度トランジスターデバイスは、デバイスのブレークダウン電圧
(即ち、ソース電極S1とドレイン電極D1との間の耐圧)が電気回路の直列接続による相加効果によってハイブレークダウン電圧の効果を得ることができる。言い換えれば、本発明は、少なくとも2つの高電子移動度トランジスターの一方のソース電極が他方のドレイン電極に接続され、ゲート電極が互いに接続されることにより、トランジスターを直列接続する効果を達成する。
【0028】
本実施例では、
図9に示す本発明における直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスを示す平面図(高電子移動度トランジスターHEMT1、HEMT2の直列接続の機構のみを示す)にて開示するように、例えば、フォトリソグラフィー、エッチング、金属堆積などの半導体製造プロセスにより内部接続線路14を製造し、少なくとも2つの高電子移動度トランジスターを直列接続させ、ゲート電極G1、G2の間の内部接続線路14をさらにボンディングパッドP1に接続させて外部電気回路と接続する。ソース電極S1とドレイン電極D2は、ボンディングパッドP2、P3に接続させて電気回路の入力端と出力端として用いられる。
【0029】
上述したように、本発明における具体的実施例の方法によれば、互いに直列接続された少なくとも2つの高電子移動度トランジスター(例えば、高電子移動度トランジスターHEMT1、HEMT2、HEMT3)からなる直列接続式の高電子移動度トランジスターデバイスを提供し、その少なくとも2つの高電子移動度トランジスターは、基板10上に形成され、隔離機構13で隔離されている。各高電子移動度トランジスターは基板10上に設けられるバッファ層11と、バッファ層11上に設けられるバリア層12を含む。バッファ層11とバリア層12との間の異種材料接合界面は、能動領域111、ソース電極(例えば、S1、S2、S3)、ドレイン電極(例えば、D1、D2、D3)、ゲート電極(例えば、G1、G2、G3)を定義する二次元電子ガスを有し、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極はともにバリア層12上に設けられるとともに能動領域111に接続される。少なくとも2つの高電子移動度トランジスターの一方のソース電極が他方のドレイン電極に接続され、ゲート電極が互いに接続される。
【0030】
本発明にて提供された方法と構造により、高電子移動度トランジスターは、製造プロセスで直列接続を行うことが可能で、直列接続して形成されたデバイスは、ハイブレークダウン電圧の特性を有する。
【0031】
以上述べたように、本発明は以下の利点を有する。
【0032】
1、本発明では、種々の高電子移動度トランジスターを直列接続させるため、直列接続された等価回路がデバイス全体のブレークダウン電圧を大幅に向上させる。
【0033】
2、本発明で利用される製造プロセスは、複雑な工程を余分に増加させる必要がなく簡単であるため、ローコストでハイブレークダウン電圧の目的を達成する。特に本発明の製造プロセスには、デバイスのダメージに対する問題がない。
【0034】
3、本発明のハイブレークダウン電圧のデバイスは車両、宇宙分野への応用またはハイパワーデバイスなどの分野に適用し、パワーエレクトロニクス回路では、高温、高圧の環境下で作動する信頼度が向上される。
【0035】
上述の説明は、本発明を実施するための好ましい実施例であり、本発明の特許請求の範囲を局限するものではない。本発明による明細書と図面に開示される技術と等価の変形等は、本発明の範囲内に属する。
【符号の説明】
【0036】
10 基板
11 バッファ層
111 能動領域
12 バリア層
13 隔離機構
14 内部接続線路
PR1、PR2 フォトレジスト
M1、M2 金属層
HEMT1、HEMT2、HEMT3 高電子移動度トランジスター
S1、S2、S3 ソース電極
D1、D2、D3 ドレイン電極
G1、G2、G3 ゲート電極
P1、P2、P3 ボンディングパッド