【実施例】
【0014】
図1〜
図5に実施例の走行車システムを示す。走行車の種類は天井走行車、無人搬送車など任意であるが、実施例では
図1の天井走行車2を想定する。天井走行車2は走行ルートの例である走行レールに沿って走行し、走行レールにはカーブ区間が含まれている。分岐部及び合流部はカーブを伴うので、カーブ区間は単純なカーブ区間の他に分岐部と合流部とを含んでいる。そして天井走行車2は前方の先行車を監視するために2種類の障害物センサS1,S2を備え、直進用の障害物センサS1は直進方向前方の先行車を検出し、カーブ用の障害物センサS2は扇状の範囲でカーブ方向前方の先行車を検出する。
【0015】
カーブ用の障害物センサS2は扇の中心の向き、扇の中心角(扇の両端間の角)、及び扇の半径を、前方を監視する必要がある範囲に応じて変更できる。障害物センサS1,S2は例えばレーザ距離センサ、超音波センサ等で構成され、一般に直進用の障害物センサS1は調整が容易であるが、カーブ用の障害物センサS2は微妙な調整を必要とし、調整がずれると先行車の検出が遅れることがある。例えばレーザ距離センサは先行車で反射したレーザ光が後行車に戻るまでの時間から、距離を検出する。先行車が直進していると、先行車の車体に垂直に入射して垂直に反射した光を検出できる。しかしカーブ区間では、先行車と後行車の車体の向きが異なるため、微弱な反射光を検出する。このため先行車の検出が難しくなり、先行車との車間距離が
異常に短くなるまで検出が遅れることがある。
【0016】
天井走行車2は、先行する他の天井走行車等の障害物を障害物センサS1,S2により検出すると、通常の減速、急な減速、停止等により干渉を回避する。車間距離が短すぎる状況でも、先行車と後行車が例えば等速走行していれば、後行車が急減速あるいは停止すれば干渉を回避できる。そこで急な減速と停止の頻度は、先行する他の天井走行車との距離が小さすぎる等の状況が生じた頻度を表している。ここで頻度は、急減速あるいは停止と、延べ走行距離あるいは延べ走行回数等との比として求めることができる。上記の頻度は、天井走行車2毎のカーブ用の障害物センサS2の信頼性を表している。
【0017】
図1に示すように、天井走行車2は通信部3を備えて、
図2,
図3の地上コントローラ24の通信部28と通信し、地上コントローラ24の制御下に走行する。機上コントローラ4は天井走行車2の各部を制御する。走行系5はサーボモータとそのコントローラ等から成り、天井走行車2を走行させる。分岐合流制御部6はガイドローラの出没機構から成り、走行レールの分岐部及び合流部での走行方向を制御する。なお無人搬送車は、所定の走行ルートを走行し、走行ルートには単純なカーブ区間、分岐部及び合流部の一部としてのカーブ区間が含まれている。無人搬送車の場合、分岐合流制御部6に代えて、操舵部を設ける。移載系7はホイスト、スカラアーム、スライドフォーク等から成り、設けなくても良い。
【0018】
図2に、地上コントローラ24の構成と共に、分岐部10を天井走行車がカーブ側14へ走行する状況を示す。地上コントローラ24はメモリ25を備えて、分岐部10等への走行許可を与えた天井走行車のIDと走行許可の種類とを記憶する。なおこれらのデータをブロッキングデータということがある。天井走行車2の走行ルートには、分岐部、合流部、単純なカーブ区間が各々複数あるので、個々の区間毎にブロッキングデータを記憶する。これらの区間を、カーブを伴うことに着目してカーブ区間といい、排他制御を行うことに着目してブロッキングエリアということがある。
【0019】
走行許可部26は、ブロッキングデータを参照して、カーブ区間への走行許可を天井走行車に与え、走行許可には、後述のように、区間の最先の先行車への第1の走行許可と後行車への下位の走行許可とがある。また天井走行車は、走行許可部26に天井走行車のID、走行許可を求めるカーブ区間のIDと共に走行許可を要求し、分岐部の場合は分岐部からの出口の方向も通知し、合流部の場合は合流部への入口の方向も通知する。またブロッキングエリアを天井走行車が抜け出すと、走行許可部26はメモリ25のブロッキングデータから抜け出した走行車へのブロッキング許可を削除する。
【0020】
抜け出した走行車がブロッキングエリアの最先行の走行車の場合、次の天井走行車への走行許可を下位の許可から第1の許可へ昇格させる。走行車履歴メモリ27は、ブロッキングエリアで先行の天井走行車と干渉もしくは急減速した回数と、天井走行車の延べ走行距離、延べ走行時間、延べ走行回数等の履歴を記憶する。なお干渉もしくは急減速した回数は、天井走行車からの報告に基づいてカウントする。干渉もしくは急減速した回数と延べ走行距離等の比は、カーブ用の障害物センサの調整の精度を示している。地上コントローラ24は通信部28を備えて、天井走行車2の通信部3と通信する。
【0021】
分岐部10で走行レールは直進側12とカーブ側14とに分岐する。分岐部10へ同時に進入できる天井走行車2を1台に制限すると、分岐部10が渋滞の原因となる。分岐用の障害物センサS2に頼り、複数台の天井走行車2を同時に分岐部10へ進入させると、追突等が生じる可能性がある。なお20は障害物センサS2の監視範囲で、調整によっては検出が遅れることがある。
【0022】
そこで分岐部10へ複数台の天井走行車2を同時に進入させ、後行車2rの障害物センサS2により先行車2fを監視することにより、天井走行車2,2間の干渉を防止する。後行車2rの走行には制限を課し、先行車2fよりも低速で走行させる。このようにすると、障害物センサS2による検出が遅れても、干渉する前に先行車2fを検出できるようになる。なお障害物センサS2は、先行車2fが直前に位置する場合は確実に検出できるが、先行車2fが遠方にいる場合は近接するまで検出できないことがある。このようにして干渉を回避すると、後行車2rが急減速する回数も減り、搬送中の物品への衝撃も回避できる。なお先行車2fが分岐部10から抜け出すと、後行車2rが分岐部10での先行車となるので、走行許可を第1の走行許可へ変更する。
【0023】
図3は、先行車2fと後行車2rが共に分岐部10を直進側12へ走行する状況を示す。なお
図3では先行車2fと後行車2rが共に直進するので、カーブ区間での走行制御を適用しない。22は直進用の障害物センサS1の監視範囲で、検出の信頼性は高い。そこで先行車2fと後行車2rに、共に直進側の制限速度で分岐部10を走行することを許可する。これは先行車2fと後行車2rに、共に第1の走行許可を与えることと類似である。なお直進する後行車は分岐する先行車を検出することが難しく、分岐する後行車は直進する先行車を検出することが難しい。そこで先行車と分岐/直進の方向が異なる後行車は、分岐部10への進入を許可しない。ただし分岐用の障害物センサS2の監視範囲を拡げ、走行方向が異なる先行車を検出できる場合、このような制限は不要である。
【0024】
図2,
図3では分岐部10を示したが、合流部でもカーブ側から合流するか直進側から合流するかの区別があり、同じ制御で複数の天井走行車2,2を同時に合流部を走行させることができる。分岐部10の出口は直進側12とカーブ側14とは限らず、2つの出口が共にカーブであることがある。また合流部でも同様に、入口が共にカーブであることがある。これらの場合も、
図2と同様の制御を施し、分岐部あるいは合流部での走行方向が同じであれば複数の天井走行車を同時に分岐部あるいは合流部へ進入させ、後行の天井走行車に対し速度等を制限する。
【0025】
走行レールにはカーブ区間があり、走行する天井走行車2に一律に低速走行を要求すると非効率である。また1個のカーブ区間を同時に走行できる天井走行車2を1台に制限しても、同様に非効率である。これに対して
図2と同様の制御をカーブ区間に施すと、複数台の天井走行車を同時にカーブ区間を走行させ、しかも天井走行車間の干渉を防止できる。
【0026】
図4,
図5に、実施例での制御アルゴリズムを示す。以下では分岐部、合流部ではカーブ走行の制御が本質的であることに着目して、これらも含めてカーブ区間の制御として示す。またカーブ区間で走行の許可を必要とする範囲をブロッキングエリアと呼び、
図4,
図5は地上コントローラでの処理である。カーブ区間への走行許可の要求を受け付けると(ステップ1)、地上コントローラはブロッキングエリア内の先行車の有無をチェックし(ステップ2)、無ければ第1の走行許可を与える(ステップ3)。第1の走行許可の意味は、カーブ区間での制限速度で走行することを許可することである。ブロッキングエリアを天井走行車が抜け出すと、その旨を地上コントローラへ報告する。地上コントローラがこの報告を受信すると(ステップ7)、走行許可を解除する。地上コントローラはブロッキングエリアの走行許可を管理し、走行許可の解除により第1の走行許可を有する天井走行車が無くなったことが分かる。
【0027】
ステップ2で先行車が存在する場合、後行車と先行車の走行方向が異なれば、ブロッキングエリアへの走行許可を与えず待機させる(ステップ4,6)。走行方向が同じ場合、第1の走行許可よりも低速でブロッキングエリアを走行する許可を与える(ステップ4,5)。低速で走行する許可が1種類の場合は第2の走行許可といい、複数種類の場合は第2の走行許可、第3の走行許可等といい、例えば後続の天井走行車ほど低速で走行させる。第2の走行許可等は、第1の走行許可よりも低速で走行させることにより、カーブ用の障害物センサでの検出が遅れても、確実に先行車との干渉を防止するためのものである。
【0028】
図4,
図5には示さないが、後行車がカーブ区間を走行する速度を、カーブ用の障害物センサの履歴に応じて変更しても良い。例えば過去の延べ走行距離、あるいは延べ走行回数、延べ走行時間当たりで、カーブ区間で先行車と干渉した回数、あるいはカーブ区間で急減速した回数を、地上コントローラで管理する。そして延べ走行距離等の要素により正規化した、カーブ区間での干渉の回数、あるいは急減速の回数が多いほど、後行車としての走行許可時に低い速度での走行を許可し、これらの回数が少ないほど、高い速度での走行を許可するようにしても良い。
【0029】
最先行の先行車がブロッキングエリアを抜け出す(ステップ8)と、干渉のおそれが解消するので次の走行車の走行許可を昇格し、例えば第2の走行許可を第1の走行許可とする(ステップ9)。そして後行車がブロッキングエリアを抜け出す(ステップ10)と、ブロッキングエリアへの走行許可を解除する。
【0030】
カーブ区間での天井走行車のステータスを
図5に示す。分岐部及び合流部のみのステータスとして、先行車と走行方向が異なる場合の「待機」があり、走行許可には「第1の走行許可」と「下位の走行許可」とがある。第1の走行許可はカーブ区間(ブロッキングエリア)を走行する先行車に与えられる。先行車がカーブ区間を抜け出し、後行車がカーブ区間での先行車となると、下位の走行許可が第1の走行許可に変更される。先行車がカーブ区間を走行中(先行車に走行許可済み)の場合、後行車には下位の走行許可が与えられ、低速で走行させることにより先行車との干渉等を防止する。
【0031】
以上のように実施例では、
1) 1個のカーブ区間を複数の走行車が同時に走行できるようにし、カーブ区間での渋滞を防止する。
2) また後行の走行車には下位の走行許可を与えることにより、先行の走行車との干渉等を防止する。
3) 先行の走行車がカーブ区間を抜け出すと、下位の走行許可を第1の走行許可に変更することにより、後行の走行車をより高速で走行させる。
4) これらのため、物品の搬送効率を向上させることができる。
【0032】
実施例では、単純なカーブ区間、分岐部、合流部の全てに対して、第1の走行許可と第2の走行許可による制御を行ったが、例えば分岐部のみに対して、あるいは分岐部と合流部のみに対して、実施例の制御を行っても良い。例えば単純なカーブ区間に対して、排他制御を行わずに、一律に第2の走行許可相当の低速で走行させても良い。